JP2015011736A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び、磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び、磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コロイダルシリカの研磨砥粒を用いた研磨後の洗浄処理においてガラス基板の表面を荒らすことなく、コロイダルシリカの研磨砥粒を容易に除去することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に、コロイダルシリカの研磨砥粒を含む研磨液を供給し、ガラス基板の主表面を研磨する研磨処理と、研磨処理によってガラス基板の表面に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された水をガラス基板に接触させてコロイダルシリカの研磨砥粒を除去する洗浄処理と、を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び、磁気ディスクの製造方法に関する。
今日、パーソナルコンピュータ、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)が内蔵されている。特に、ノート型パーソナルコンピュータ等の可搬性を前提とした機器に用いられるハードディスク装置では、ガラス基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッドで磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板として、金属基板(アルミニウム基板)等に比べて塑性変形し難い性質を持つガラス基板が好適に用いられる。
ハードディスク装置において記憶容量を増大させるために、磁気記録の高密度化が図られている。例えば、磁性層における磁化方向を基板の面に対して垂直方向にする垂直磁気記録方式を用いて、磁気記録情報エリアの微細化が行われている。これにより、1枚のディスク基板における記憶容量を増大させることができる。このようなディスク基板においては、磁性層の磁化方向が基板面に対して略垂直方向に向くように、基板表面を可能な限り平らにして磁性粒の成長方向を垂直方向に揃えることが好ましい。
さらに、記憶容量の一層の増大化のために、DFH(Dynamic Flying Height)機構を搭載した磁気ヘッドを用いて磁気記録面からの浮上距離を極めて短くすることにより、磁気ヘッドの記録再生素子と磁気ディスクの磁気記録層との間の磁気的スペーシングを低減して情報の記録再生の精度をより高める(S/N比を向上させる)ことも行われている。この場合においても、磁気ヘッドによる磁気記録情報の読み書きを長期に亘って安定して行うために、磁気ディスクの基板の表面凹凸は可能な限り小さくすることが求められる。
このような磁気ディスク用ガラス基板の製造方法として、ガラス基板の端面のエッジ部を平滑化するために、ガラス基板をフッ酸含有液に浸漬して表面凹凸を除去した後に10℃〜90℃の洗浄用温水に浸漬することで、磁気ディスク用ガラス基板を平坦化する方法がある(例えば、特許文献1)。
また、磁気ディスク用ガラス基板の最終的な研磨に、コロイダルシリカ(SiO)等の微細な研磨砥粒を含む研磨剤を用いる方法もある(例えば、特許文献2)。
特開平10−291837号公報 特開2003−36528号公報
ところで、シリカの基本骨格はガラスと同じであり、ガラス基板との親和性が高いため、コロイダルシリカの研磨砥粒はガラス基板の表面に強く付着しやすい。このため、コロイダルシリカの研磨砥粒を用いた研磨処理の後、ガラス基板の表面に研磨砥粒が付着した場合、付着した研磨砥粒を洗浄することで除去することが難しい。
上述したように、フッ酸等の酸性のエッチング液や、アルカリ性のエッチング液によりガラス基板の表面ごとエッチングすることで砥粒を洗浄して除去することもできるが、この場合、ガラス基板の表面がエッチングにより荒れるおそれがあり、最終的な研磨の後にエッチングを行うことは好ましくない。
そこで、本発明は、コロイダルシリカの研磨砥粒を用いた研磨後の洗浄処理においてガラス基板の表面を荒らすことなく、コロイダルシリカの研磨砥粒を容易に除去することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び、磁気ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
本願発明者の検討によれば、ガラス基板の洗浄を行う場合、洗浄液の温度が高いほど、ガラス基板の表面に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒が溶解しやすいことがわかった。そこで、本願発明者は、コロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された水を前記ガラス基板に接触させることで、コロイダルシリカの洗浄液への溶解を促進することができることに気づいた。このとき、洗浄液の温度を上昇させるとともに圧力を高めることで、洗浄液の温度と圧力をコロイダルシリカの研磨砥粒に作用させ、コロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を洗浄液に溶解させることができる。具体的には、大気圧(0.1MPa)よりも高い圧力下において100℃以上の温度の洗浄液を用いてガラス基板を洗浄することで、コロイダルシリカの洗浄液への溶解を促進することができる。
以上から、本発明の第1の観点は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に、コロイダルシリカを研磨砥粒として含む研磨液を供給し、前記ガラス基板の主表面を研磨する研磨処理と、
前記研磨処理によって前記ガラス基板の表面に付着した前記コロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された水を前記ガラス基板に接触させて前記コロイダルシリカの研磨砥粒を除去する洗浄処理と、
を有することを特徴とする。
前記水は、100℃以上の温度であることが好ましい。
前記水は、大気圧より高い圧力で加圧されていることが好ましい。
前記ガラス基板を、前記水に浸漬させた状態で前記洗浄処理を行うことが好ましい。
また、前記ガラス基板の少なくとも一部を、水蒸気に接触させた状態で前記洗浄処理を行ってもよい。
前記水には電解質が添加されていることが好ましい。また、前記水に前記電解質が添加された水溶液のpHは6〜8であることが好ましい。
本発明の第2の観点は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に、コロイダルシリカを研磨砥粒として含む研磨液を供給し、前記ガラス基板の主表面を研磨する研磨処理と、
前記研磨処理後の前記ガラス基板を、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、100℃以上の温度の水と接触させて洗浄する洗浄処理と、
を有することを特徴とする。
本発明の第3の観点は磁気ディスクの製造方法であって、前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、研磨処理によってガラス基板の表面に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された水をガラス基板に接触させて洗浄することで、コロイダルシリカの研磨砥粒を用いた研磨後の洗浄処理においてガラス基板の表面を荒らすことなく、コロイダルシリカの研磨砥粒を容易に除去することができる。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のフローの一例を示す図である。
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板について詳細に説明する。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では、コロイダルシリカを研磨砥粒として含む研磨液によりガラス基板の主表面を研磨する(第2研磨処理)。その後、第2研磨処理によってガラス基板の表面に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された洗浄液をガラス基板に接触させてコロイダルシリカの研磨砥粒を除去する。このとき、洗浄液の温度を上昇させるとともに圧力を高めることで、洗浄液の温度と圧力をコロイダルシリカの研磨砥粒に作用させ、コロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を洗浄液に溶解させることによりガラス基板を洗浄する。具体的には、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、100℃以上の温度の洗浄液を用いて洗浄する(第2洗浄処理)。ここで、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気は、洗浄液の溶媒(例えば、水)の蒸気圧(例えば、水蒸気圧)のみによって実現してもよいし、洗浄液の溶媒の蒸気圧と、空気又は不活性ガスの分圧とを加えた全圧により実現してもよい。なお、以下の説明では、大気圧を0.1MPaとする。
上記の第2洗浄処理は、密閉された加圧容器内で、雰囲気の圧力及び洗浄液の温度を管理しながら行うことができる。このような加圧容器として、例えばオートクレーブを用いることができる。また、オートクレーブに設けられたコンプレッサーによりオートクレーブ内を大気圧よりも高い圧力まで加圧することができる。
本実施形態では、コロイダルシリカの研磨砥粒を含む研磨液による研磨後のガラス基板を、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、100℃以上の温度の洗浄液を用いて洗浄することで、ガラス基板に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒への洗浄液の浸透を促進し、コロイダルシリカの研磨砥粒を洗浄液に溶解させることで、コロイダルシリカの研磨砥粒を用いた研磨後のガラス基板に付着したコロイダルシリカの研磨砥粒を含む付着物を容易に除去することができる。
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法をより具体的に説明する。
[磁気ディスク用ガラス基板]
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルカリ金属イオン等のカチオンを含むアルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成を限定するものではないが、本実施形態のガラス基板は好ましくは、酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiOを50〜75%、Alを1〜15%、LiO、NaO及びKOから選択される少なくとも1種の成分を合計で5〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、ならびにZrO、TiO、La、Y、Ta、Nb及びHfOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスである。
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板は、円環状の薄板のガラス基板である。磁気ディスク用ガラス基板のサイズは問わないが、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板として好適である。
[磁気ディスク用ガラス基板の製造方法]
図1は、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のフローの一例を示す図である。
先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクの成形処理が行われる(ステップS10)。次に、このガラスブランクの粗研削処理を行う(ステップS12)。この後、ガラスブランクに形状加工処理(ステップS14)及び端面研磨処理(ステップS16)が施される。この後、ガラスブランクから得られたガラス基板に精研削処理が行われる(ステップS18)。次に、研削されたガラス基板に第1研磨処理(ステップS20)が施される。この後、第1洗浄処理(ステップS22)、化学強化処理(ステップS24)、第2研磨処理(ステップS26)、及び、第2洗浄処理(ステップS28)がガラス基板に施される。
以下、各処理について説明する。ただし、各処理の順番は適宜入れ替えてもよい。
(a)ガラスブランクの成形処理
ガラスブランクの成形処理(ステップS10)では、例えばプレス成形法により、円板状のガラスブランクを得ることができる。さらに、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法などの公知の製造方法を用いて板状ガラスを製造し、適宜形状加工を行うことによって円形状のガラスブランクを得てもよい。
(b)粗研削処理
粗研削処理(ステップS12)では、円板状のガラスブランクを、保持部材(キャリア)に設けられた保持孔内に保持し、保持部材を周知の両面研削装置に装着してガラスブランクの両側の主表面の研磨を行う。なお、粗研削処理は、成形されたガラスブランクの寸法精度あるいは表面粗さに応じて行われるものであり、場合によっては行われなくてもよい。
(c)形状加工処理
次に、形状加工処理が行われる(ステップS14)。形状加工処理では、公知の加工方法を用いて、円板状のガラスブランクに円孔を形成することにより、円環状のガラス基板を得る。その後、ガラス基板の端面の面取りを実施する。これにより、ガラス基板の端面には、主表面と直交している側壁面と、側壁面と主表面を繋ぐ面取り面(介在面)が形成される。
(d)端面研磨処理
次に、円環状のガラス基板の端面研磨処理(ステップS16)が行われる。端面研磨では、ガラス基板の内周側端面及び外周側端面を研磨対象とし、内周側端面及び外周側端面を鏡面状態にする。
(e)精研削処理
次に、ガラス基板の主表面に精研削処理が施される(ステップS18)。具体的には、例えば、固定砥粒を用い、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削を行う。両面研削装置は、上定盤および下定盤を有しており、下定盤の上面および上定盤の底面には、固定砥粒が貼り付けられており、上定盤および下定盤の間に、キャリアに収容した1又は複数のガラス基板が狭持される。遊星歯車機構により、上定盤とガラス基板、下定盤とガラス基板を相対的に移動させることで、このガラス基板の両主表面を研削することができる。
(f)第1研磨処理
必要に応じて適宜主表面の研削工程を実施した後、研削されたガラス基板の主表面に第1研磨処理が施される(ステップS20)。第1研磨処理では、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置を用いてガラス基板の主表面に対する研磨を行う。両面研磨装置は、上定盤および下定盤を有しており、下定盤の上面および上定盤の底面には、平板の研磨パッドが取り付けられている。研磨パッドには、任意の材料を用いることができるが、ガラス基板を傷つけにくいスウェード製の樹脂ポリシャからなる研磨パッドを用いることが好ましい。上定盤および下定盤の間に、キャリアに収容した1又は複数のガラス基板が狭持される。遊星歯車機構により、上定盤とガラス基板、下定盤とガラス基板を相対的に移動させることで、このガラス基板の両主表面を研磨することができる。
上記相対運動の動作中には、例えば酸化セリウムやジルコニア等の研磨剤を含む研磨液が研磨パッドとガラス基板との間に供給されるとともに、上定盤がガラス基板に対して(つまり、鉛直方向に)所定の荷重で押圧され、ガラス基板に対して研磨パッドが押圧される。研磨液に含まれる研磨剤によってガラス基板の主表面が研磨される。
(g)第1洗浄処理
第1研磨されたガラス基板は、第1洗浄処理される(ステップS22)。洗浄液には、第1研磨で使用された研磨剤を除去可能な洗浄液が用いられてガラス基板の洗浄が行われる。これにより、ガラス基板の主表面に付着した研磨砥粒が除去される。
(h)化学強化工程
ガラス基板は適宜化学強化(ステップS24)することができる。化学強化液として、例えば硝酸カリウム,硝酸ナトリウム、またはそれらの混合物を加熱して得られる溶融液を用いることができる。そして、ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層にあるガラス組成中のリチウムイオンやナトリウムイオンが、それぞれ化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオンやカリウムイオンにそれぞれ置換されることで表層部分に圧縮応力層が形成され、ガラス基板が強化される。
化学強化処理は、必須の処理ではない。また、化学強化処理を行うタイミングは、適宜決定することができるが、化学強化処理の後に第2研磨処理を行うようにすると、表面の平滑化とともに化学強化処理によってガラス基板の表面に固着した異物を取り除くことができるので特に好ましい。
(i)第2研磨処理
次に、化学強化処理後のガラス基板に第2研磨処理が施される(ステップS26)。第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。第2研磨処理では、第1研磨処理の時よりも粒子サイズを小さくすることが好ましい。また、研磨パッドの樹脂ポリッシャの硬度を軟らかくすることが好ましい。
第2研磨処理に用いる遊離砥粒として、コロイダルシリカの微粒子が用いられる。コロイダルシリカ研磨砥粒の粒径は、ガラス基板主表面の表面粗さのいっそうの低減を図る観点から、平均粒径(D50)で10nm〜50nmとすることが好ましく、10〜20nmとするとより好ましい。前記範囲内とすることで、研磨後の表面粗さRaを0.15nm以下とすることができる。なお、本願において、平均粒径(D50)とは、光散乱法により測定された粒度分布における粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径を言い、例えば、粒子径・粒度分布測定装置で測定して得られる値である。なお、コロイダルシリカ研磨砥粒は、研磨液に対して1〜20wt%含有させることが生産効率上好ましい。
また、樹脂ポリシャの硬度は、アスカーC硬度で70〜85とすることが好ましい。前記範囲内とすることで、第1研磨処理後の表面粗さRaを効率よく0.15nm以下にすることができる。硬度が75より小さいと、研磨レートが低下して生産性が悪化する場合がある。他方、硬度が90より大きいと、基板表面にスクラッチが発生する場合がある。
(j)第2洗浄処理
次に、第2研磨処理のガラス基板に第2洗浄処理が施される(ステップS28)。第2洗浄処理では、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、100℃以上の温度の洗浄液を用いてガラス基板を洗浄する。0.1MPaよりも高い圧力雰囲気にすることで、洗浄液の温度を大気圧における洗浄液の沸点よりも高い温度まで上昇させることができ、ガラス基板の主表面に異物として強固に付着したシリカの除去を容易にすることができる。また、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気にすることで、ガラス基板に強固に付着したシリカへの洗浄液の浸透を促進し、シリカの溶解を促進することができる。
また、シリカの溶解を促進する観点から、洗浄処理を行う雰囲気の圧力は0.2MPa以上であることがより好ましい。一方、洗浄処理を行う雰囲気の圧力は0.25MPa以下であることが好ましい。洗浄処理を行う雰囲気の圧力を0.25MPaよりも高くする場合、より強固な加圧容器が要求される一方、洗浄液の蒸気圧が上昇するほどには洗浄液の温度を上昇させることができず、洗浄効率を充分に高めることが期待できないからである。
シリカの溶解を促進する観点から、洗浄液の温度は100℃以上の温度であることが好ましく、121℃〜132℃であることがさらに好ましい。なお、132℃よりも高い温度とするためには、より強固で高い圧力に耐えられる加圧容器が要求される。
第2洗浄処理に用いる洗浄液には、沸点が高く、かつシリカを溶解する溶媒であることが好ましい。このような溶媒として、例えば、水を用いることができる。
洗浄液は中性であることが好ましく、pHが6〜8であることが好ましい。本発明ではガラス基板に対しても溶解性を有する洗浄液を用いるため、洗浄液を中性(pHを6〜8)とすることで、ガラス基板の表面が荒れることを防ぐことができる。
ガラス基板に強固に付着したシリカの除去を容易にするために、洗浄液は電解質を含む電解質溶液であってもよい。例えば、電解質として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸三ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、硫酸ナトリウム等を含んでもよい。なおこのとき、pHが6〜8となるように電解質を添加することが好ましい。
第2洗浄処理は、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、大気圧における沸点以上の温度まで洗浄液の温度を上昇させるために、密閉された加圧容器内で、温度調整、圧力調整をしながら行うことが好ましい。加圧容器として、例えば、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)を用いることができる。
また、第2洗浄処理は、ガラス基板を洗浄液に浸漬させた状態で行うことが好ましい。ガラス基板を洗浄液に浸漬させることで、高圧かつ高温の洗浄液により、ガラス基板に強固に付着したシリカへの溶媒の浸透、シリカの溶媒への溶解を促進することができる。
また、第2洗浄処理は、ガラス基板の一部を洗浄液の蒸気に接触させ、他の部分を洗浄液に浸漬させた状態で行ってもよい。ガラス基板を洗浄液の蒸気に接触させ、ガラス基板に強固に付着したシリカへ洗浄液の蒸気を浸透させることで、シリカの溶解を促進することができる。
なお、オートクレーブ内での洗浄後のガラス基板に対し、酸性又はアルカリ性の溶媒による最終的な洗浄を行い、ガラス基板に残存する付着物を除去してもよい。例えば、希硫酸による洗浄や水酸化カリウム水溶液による洗浄を行ってもよい。
このようにして、第2洗浄処理の施されたガラス基板は、磁気ディスク用ガラス基板となる。
[磁気ディスク]
磁気ディスクは、磁気ディスク用ガラス基板を用いて以下のようにして得られる。
磁気ディスクは、例えば磁気ディスク用ガラス基板(以下、単に「基板」という。)の主表面上に、主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成になっている。
例えば基板を、真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、基板の主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。磁性層としては、例えばCoPt系合金を用いることができる。また、L10規則構造のCoPt系合金やFePt系合金を形成して熱アシスト磁気記録用の磁性層とすることもできる。上記成膜後、例えばCVD法によりCを用いて保護層を成膜し、続いて表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(パーフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
作製された磁気ディスクは、好ましくは、DFH(Dynamic Flying Height)コントロール機構を搭載した磁気ヘッドと、磁気ディスクを固定するためのスピンドルとを備えた、磁気記録再生装置としての磁気ディスクドライブ装置(HDD(Hard Disk Drive))に組み込まれる。
[実施例、比較例]
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の効果を確認するために、2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板(外径65mm、内径20mm、板厚0.635mm)をコロイダルシリカの研磨砥粒により第2研磨処理を行った後、第2洗浄処理を行った。磁気ディスク用ガラス基板のガラスの組成は、上記したものを用いた。
[実施例、比較例の磁気ディスク用ガラス基板の作製]
研磨処理を行う磁気ディスク用ガラス基板については、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の(a)〜(h)の各処理を順序通りに行うことで作成した。
次に、コロイダルシリカを研磨砥粒として、ガラス基板の主表面の算術平均粗さRaが0.15nmとなるように第2研磨処理を行った。研磨液として、コロイダルシリカを水中に分散させたスラリーを用いた。
その後、研磨したガラス基板を洗浄液に浸漬し、ガラス基板及び洗浄液を入れた容器をオートクレーブ内に入れ、表1に示す温度(℃)及び圧力(MPa)において30分間の第2洗浄処理を行った。洗浄液として、水を用いた。なお、実施例1〜4、比較例1において、飽和水蒸気圧を超える圧力はコンプレッサーによりオートクレーブ内を加圧することで実現した。
第2洗浄処理後のガラス基板の主表面における、粒径0.05μm〜0.3μmの異物の数をレーザー式の表面欠陥検査装置を用いてガラス基板の主表面を走査し、異物による散乱光を検出することにより計測した。結果を表1に示す。
異物をSEM及びEDXにより詳細に調べたところ、大半はコロイダルシリカの研磨砥粒やその凝集体であった。
Figure 2015011736
実施例1〜3と比較例1、比較例2〜4を比較すると、同一の圧力においては、温度が高いほど異物数が減少することがわかる。また、実施例3、4と比較例2、比較例1と比較例3を比較すると、同一の温度においては、圧力が高いほうが異物数が少なくなることがわかる。特に、温度を100℃以上、かつ、圧力を0.15MPaとした場合(実施例1〜4)には、温度を100℃未満、かつ、圧力を0.2MPaとした場合(比較例1)、温度を100℃、かつ、圧力を0.1MPa(大気圧)とした場合(比較例2)、温度を100℃未満、かつ、圧力を0.1MPa(大気圧)とした場合(比較例3、4)よりも、異物数が減少することが顕著にわかる。
次に、洗浄液中に電解質を加えた場合と加えない場合の洗浄効果を比較した。
上記と同様の条件で、コロイダルシリカを研磨砥粒として、ガラス基板の第2研磨処理を行った後、130℃、0.25MPaのオートクレーブ内において30分間の洗浄処理を行った。
実施例5では、水に、電解質として、硫酸ナトリウム及びリン酸三ナトリウムを加えた洗浄液を用いた。洗浄液として、0.01重量%の硫酸ナトリウム及び0.01重量%のリン酸三ナトリウムの水溶液(電解質溶液)を用いた。
実施例6では、電解質を用いず、洗浄液として、水を用いた。
第2洗浄処理後のガラス基板の主表面における、粒径0.05μm〜0.3μmの異物の数を上記と同様に表面欠陥検査装置により計測した。結果を表2に示す。
Figure 2015011736
表2の評価結果により、同一の温度、同一の圧力において洗浄処理を行った場合、洗浄液が電解質を含まない場合(実施例6)よりも、洗浄液が電解質を含む場合(実施例5)のほうが、洗浄処理後、基板の主表面に残存する異物の数が少なかった。洗浄液に含まれる電解質が、洗浄処理においてガラス基板に付着したシリカの脱離を促進することがわかる。
以上、本発明の磁気ディスク用ガラス基板について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。

Claims (9)

  1. ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に、コロイダルシリカを研磨砥粒として含む研磨液を供給し、前記ガラス基板の主表面を研磨する研磨処理と、
    前記研磨処理によって前記ガラス基板の表面に付着した前記コロイダルシリカの研磨砥粒の少なくとも一部を溶解する温度に加熱された水を前記ガラス基板に接触させて前記コロイダルシリカの研磨砥粒を除去する洗浄処理と、
    を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記水は、100℃以上の温度である
    ことを特徴とする、請求項1に磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記水は、大気圧より高い圧力で加圧されている
    ことを特徴とする、請求項1又は2に磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記ガラス基板を、前記水に浸漬させた状態で前記洗浄処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記ガラス基板の少なくとも一部を、水蒸気に接触させた状態で前記洗浄処理を行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記水には電解質が添加されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記水に前記電解質が添加された水溶液のpHは6〜8であることを特徴とする、請求項6に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  8. ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に、コロイダルシリカを研磨砥粒として含む研磨液を供給し、前記ガラス基板の主表面を研磨する研磨処理と、
    前記研磨処理後の前記ガラス基板を、0.1MPaよりも高い圧力雰囲気において、100℃以上の温度の水と接触させて洗浄する洗浄処理と、
    を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。

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