JP2015009533A - 二軸配向積層ポリエステルフィルム - Google Patents

二軸配向積層ポリエステルフィルム Download PDF

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有奈 宮脇
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【課題】 難燃性が良好で、帯電防止性を有し、高部分放電圧を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】 帯電防止剤を含有するポリエステル樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の最外層に有する積層ポリエステルフィルムであり、下記式で定義する部分放電圧変化値ΔPDと、最外層フィルム厚みTA(μm)の商(ΔPD/TA)が0.5以上であることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルム。ΔPD=PDexp−(3.06?T+345)(上記式中、PDexpはポリエステルフィルムの部分放電圧測定値(V)、Tはポリエステルフィルムの厚み(μm)を示す)【選択図】 図1

Description

本発明は、難燃性が良好で、帯電防止性を有し、高部分放電圧を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムに関するものである。
光電変換効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電は、クリーンエネルギを得る手段として広く行われている。そして、太陽電池セルの光電変換効率の向上に伴って、多くの個人住宅にも太陽光発電システムが設けられるようになってきている。このような太陽光発電システムを実際のエネルギー源として用いるために、複数の太陽電池セルを電気的に直列に接続させた構成をなす太陽電池モジュールが使用されている。
太陽電池モジュールは一般に家屋の屋根の上で長期間使用される。そして太陽電池モジュールには、太陽電池用裏面保護材が用いられる。特許文献1に、ポリエステルフィルムを用いた太陽電池用裏面保護材に関する発明がなされている。人の住まいである家屋には当然難燃性、絶縁性が求められるので、家屋の屋根の上にある太陽電池モジュールにも難燃性、絶縁性が求められる。すなわち、太陽電池用裏面保護材用のポリエステルフィルムにも難燃性、絶縁性が求められる。
ポリエステルのような有機物は、着火源があると燃焼しやすい。着火の原因はさまざまだが、フィルムが帯電していると、火花が発生しやすい。そのため、特許文献2や特許文献3のように、帯電防止層を塗布法によりポリエステル上に設けたフィルムが好適に用いることが可能と考えられる。
しかしながら、ポリエステルフィルム自体に帯電由来の火花発生がなくても、火の発生源が他にある場合、ポリエステルフィルム自体に炎の自消性がないと炎の拡散防止が困難となる。帯電防止層を塗布によりポリエステルフィルム上に設けたポリエステルフィルムは、塗布層が低分子量体で構成されるため、炎がポリエステルフィルムに接炎したときに可燃性の低分子成分が揮発しやすく、炎が自消しにくいため用途上好ましくない。
また、部分放電圧はポリエステルフィルム厚みに相関して上昇するため、高部分放電圧を有するポリエステルフィルムを得るには、厚みを増加させることが、有効な方法として挙げられる。しかし、ポリエステルフィルムの厚み増加による高部分放電圧の達成は、太陽電池モジュールの省スペース化、軽量化の観点から好ましくない。
帯電防止層をポリエステルフィルム表面に塗工することで、部分放電圧を上げることができる。ポリエステルフィルムの厚さ方向に、高電圧が印加された時に、フィルムが受ける電界の一部をフィルム面方向に適度に導通させ、拡散させることが可能になる。それによって、フィルムの厚さ方向に単位体積あたりに受ける電気量を低減させることが可能となる。その結果、高電圧を印加した場合においても、絶縁性能の劣る部分への、電界の集中を抑えることが可能となり、部分放電現象の発生を抑制することができる。そのため、帯電防止層を塗布法によりポリエステル上に設けたフィルムが好適に用いることが可能と考えられる。しかしながら、塗工により帯電防止能を設けたため、塗工由来の低分子成分の可燃性が高いため、難燃性の観点から好ましくない。
特開2002−100788号公報 特開2006−076212号公報 特開2003−048284号公報
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、難燃性が良好で、帯電防止性を有し、高部分放電圧を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、帯電防止剤を含有するポリエステル樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の最外層に有する積層ポリエステルフィルムであり、下記式で定義する部分放電圧変化値ΔPDと、最外層フィルム厚みT(μm)の商(ΔPD/T)が0.5以上であることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムに存する。
ΔPD=PDexp−(3.06×T+345)
(上記式中、PDexpはポリエステルフィルムの部分放電圧測定値(V)、Tはポリエステルフィルムの厚み(μm)を示す)
本発明によれば、基材となるポリエステルフィルムが、帯電由来の火花も発生せず、炎の自消性を有し、高部分放電圧を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供できる。例えば、当該二軸配向積層ポリエステルフィルムは、太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムにも適用でき、その工業的価値は高い。
燃焼試験装置
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルはホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
一方、共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
いずれにしても、本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
本発明シートの表面層となるポリエステル樹脂層は、ポリエステル樹脂に帯電防止剤を添加したものである。表面層のポリエステル樹脂としては、前述のような各種ポリエステル樹脂を用いることができる。
高分子タイプの帯電防止剤には、ポリエーテルアミド系導電性ポリマーや、ポリチオフェン系導電性ポリマーがある。高分子タイプの帯電防止剤を含有することで高部分放電圧を得ることができるが、効果を得るためには、通常15重量%以上の帯電防止剤を添加する必要があり、その結果、フィルムのヘーズが上昇する。
帯電防止剤には、ドデシルベンゼンスルホン酸やその塩のようなアニオン系のイオン性の帯電防止剤がある。このスルホン酸塩型の帯電防止剤は、帯電防止効果は高いものの、ポリエステル樹脂との相溶性が悪く、透明性や成形性、機械物性を低下させる。
当該用途の帯電防止剤には、非イオン性帯電防止剤を用いることが好ましい。非イオン性帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンあるきるエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、N−2ヒドロキシエチル−N―2−ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアマイドなどが挙げられる。その中でも、相溶性、透明性、成形性、機械物性の観点から、グリセリン脂肪酸エステルを用いることが望ましい。
本発明におけるグリセリン脂肪酸エステルのエステルとしては、モノエステルあるいはジエステルを主成分とすることが好ましいが、両者を用いても構わない。各々について説明する。
グリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルシン酸、12−ヒドロキシオレイン酸などの炭素数が12〜22の脂肪族脂肪酸から選ばれた1種または2種以上の混合物を主成分とするものである。
これらグリセリン脂肪酸モノエステルは上記脂肪酸類とグリセリンとのエステル化反応または牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、大豆油、コーン油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヒマシ油或いはそれらの水素添加油の1種または2種以上の混合物とグリセリンとのエステル交換反応によって得られた反応物を分子蒸留、溶剤分別、再結晶、カラムクロマトグラフ、超臨界ガス抽出などの方法により分別して得られるが、一般的には分子蒸留による所謂蒸留モノグリセライドが製造の簡便さ、品質および価格等の面から適当である。
グリセリン脂肪酸ジエステルを構成する脂肪酸としては、上述のモノタイプ同様、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルシン酸、12−ヒドロキシオレイン酸などの炭素数が12〜22の脂肪族脂肪酸から選ばれた1種または2種以上の混合物を主成分とするものである。
その原料も上記同様の脂肪酸類および油脂類が使用できる。ジグリセリン脂肪酸エステルはこれらの脂肪酸類とジグリセリンとのエステル化反応または油脂類とジグリセリンとのエステル交換反応によって得られ、必要に応じて減圧蒸留、分子蒸留、溶剤分別、カラムクロマトグラフなどの方法により未反応のジグリセリン或いは副製するグリセリンやグリセリン脂肪酸エステルなどを除去精製して使用される。
最外層の帯電防止剤の含有量は、0.4重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。最外層の帯電防止剤の含有量が0.4重量%未満だと、高部分放電圧性を得られないことがある。上限については、通常1.3重量%であり、好ましくは1.1重量%、さらに好ましくは0.9重量%である。最外層の帯電防止剤が1.3重量%より多いと、難燃性が悪化することがある。
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
使用する粒子の平均粒径は0.1〜5μmを満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となることがあり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において不具合を生じることがある。
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、押出し機を用いて、ダイより押し出された溶融シートを用いて冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法がよい。
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。同時二軸延伸法としては前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で縦方向(あるいは機械方向)および横方向(あるいは幅方向)に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。「スクリュー方式」はスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」はパンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」はリニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
本発明のポリエステルフィルムは、自消性の観点から、塗布層を設けないほうが好ましい。すなわち、上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施さないほうが好ましい。
本発明においては、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、グリセリン脂肪酸エステルを含む原料Aとポリエステル原料Bとを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以上に層の数を増やした構成のフィルムとすることができる。グリセリン脂肪酸エステルを含む原料Aについては、少なくともポリエステルフィルムの片方の面にあることが望ましい。
A/B/A構成やA/B/C構成としたときに、ポリエステル原料Bにもグリセリン脂肪酸エステルを含んでも構わないが、高部分放電圧性も飽和し、またヘーズも増大するい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常、20〜350μm、好ましくは30〜300μmの範囲がよい。
ポリエステル原料Aを含む層の厚さは、高部分放電圧性などの機能性と透明性の観点から、一般に片側で1〜50μmとすることが好ましい。通常は、シート全厚さのうち表面層厚さは2〜20%、好ましくは5〜15%程度で目的を達成できる。
本発明のフィルムにおいて、下記式(1)で定義する部分放電圧変化値ΔPDと、最外層フィルム厚みT(μm)の商(ΔPD/T:以下、Qと略記する)が0.5以上である必要がある。
ΔPD=PDexp−(3.06×T+345)
(上記式中、PDexpはポリエステルフィルムの部分放電圧測定値(V)、Tはポリエステルフィルムの厚み(μm)を示す)
Qの上限は特にないが、通常60であり、50〜0.8の範囲が好ましい。Qが0.5未満では、高部分放電圧性が得られず、帯電防止性も得にくい。Qが60を超えると、フィルムヘーズの増加によるフィルム外観の悪化と、難燃性が悪化することがある。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
(1)難燃性
I 試験片作成
フィルム試験片として、200mm×50mmに裁断し、試料の一端(下部)から125mmの所で、試料の幅を横切って標線を入れる。試料の縦軸を直径12.7mmのマンドレルの縦軸に硬く巻きつけて、125mmの線が外側に露出する、長さ200mmの巻かれた円筒になるようにする。試料の外にはみ出た縁は、125mmの標線(筒の上部)の上方75mmの間で、粘着テープにより固定する。そしてマンドレルを引き抜く。
II 状態調節
上記で得られた試験片を、23℃および50%の相対湿度で、48時間前処理をする。
III 燃焼試験手順
(i)試験片固定
図1に示すように、試料の縦軸を垂直にして、上端の長さ6mmの位置で、強いスプリング付きのクランプで固定し、筒の上端が閉じて試験中に煙突効果を生じないようにする。試料の下端は、最大厚が6mmの厚さにした、1枚の水平な0.05gの脱脂100%の綿(50mm×50mm)より、300mm上にあるようにする。図1参照。
(ii)バーナーの調整
バーナーから高さ20mmの青炎が出るように調整する。その炎を出すためにはガスの供給とバーナーの空気入口を調整して、20mmの先端が黄色い青い炎が出るようにする。そして黄色の先端が丁度消えるまで空気の供給を増やす。再度炎の高さを測定して、必要に応じて再調節をする。なお、バーナーへのメタンガス供給は、ASTMD5207に準じた方法で流量を調整する。
(iii)一回目の接炎
炎は、試料の巻かれていない方の下端の中心点を中心にあて、バーナーの先端は試料の下端のその点から10mm下にあるようにして、その距離で3秒続ける。ただし、試料の長さまたは位置のあらゆる変化に応じてバーナーを移動させる。接炎中に溶融または発煙物質が滴下する場合は、バーナーの角度を45度までの範囲で傾けて、バーナーの管の中にその物質が落下するのを防ぐのにちょうど十分なだけ試料の下から移動させる。しかし、その間もバーナーの先端の中心と試料の残存部分間は10mm±1mmの間隔を保たなければならない。試料に3秒間接炎すると、直ちにバーナーを試料から毎秒約300mmの速度で少なくとも150mm遠ざけて、同時に計時装置により残炎時間tを秒で計り始める。そしてそのtを記録する。
(iv)二回目の接炎
試料の残炎が消滅した時点で(バーナーを試料から150mm離れたところまで完全に取り去っていない状態であっても)、直ちにバーナーを試料の下に持ってきて、試料の残りの部分から10mm±1mm離れた箇所にバーナーを保持しておく。ただし、必要に応じてバーナーを動かして、妨害物のない状態で落下物の自然挙動が確認できるようにする。この試料に3秒の接炎を行った後、直ちに毎秒約300mmの速度で少なくとも150mm遠ざけて、同時に計時装置により残炎時間tを秒で計り始める。
(V)難燃性評価基準
試験片5本に対し、I〜IIIの手順で試験を行う。5本中最も基準の低くなった評価を、サンプルの評価値とした。
Figure 2015009533
(2)帯電防止性
帯電防止性はサンプルフィルムの表面固有抵抗を、ヒューレットパッカード社製固有抵抗測定器(HP4339B)を使用し、測定温度23℃、測定湿度50%の条件で、印加電圧100Vで1分後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定する。
◎:1×1012Ω/□未満
○:1×1012Ω/□以上1×1013Ω/□未満
△:1×1013Ω/□以上1×1014Ω/□未満
×:1×1014Ω/□以上
(3)ヘーズ
ヘーズメータ(日本電色製NDH−300A)により、フィルムのヘーズを測定した。
(4)部分放電圧および部分放電圧変化値ΔPD
部分放電試験器:DAC−PD−7(総研電機社製)を用いて、IEC61730−2,11.1項準じて部分放電圧を測定した。次いで、下記式から部分放電圧変化値ΔPDを求めた。
ΔPD=PDexp−(3.06×T+345)
(上記式中、PDexpはポリエステルフィルムの部分放電圧測定値(V)、Tはポリエステルフィルムの厚み(μm)を示す)
(5)フィルム厚みT
マイクロメーターにより求めた。
(6)最外層フィルム厚みT
ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に、潰すことなくフィルム面方向に対して、垂直に切断した。次いで、切断した断面を、電子顕微鏡にて観察し、500倍に拡大観察した画像を得た。なお、観察場所は無作為に定めるものとするが、画像の上下方向がフィルムの厚み方向と、画像の左右方向がフィルムの面方向とそれぞれ平行になるようにするものとした。また、厚み方向全体が一枚の画像中に入りきらない場合は、厚み方向に観察位置をずらして観察し、複数の画像を合わせることによって、厚み全体が確認できる画像を準備した。測定は場所を変えて10か所測定し、その平均値をもって、最外層フィルム厚みT(μm)とした。
(7)ヘーズ評価基準
ヘーズの評価基準は下記のとおりとした。
フィルム厚み150μm未満のとき
○:1.4未満
△:1.4以上、5.0未満
×:5.0以上
フィルム厚み150μm以上のとき
○:6.0未満
△:6.0以上、9.0未満
×:9.0以上
次に以下の例で使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル原料(1)の製造法>
テレフタル酸86部、エチレングリコール70部を反応器にとり、約250℃で4時間エステル交換反応を行った。三酸化アンチモンを0.03部およびリン酸0.01部、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1部加え、250℃から285℃まで徐々に昇温すると共に圧力を徐々に減じて0.5mmHgとした。4時間後、重合反応を停止し、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを得た。
<ポリエステル原料(2)の製造法>
ポリエステル原料(1)の製造時、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を添加しないことを除いて、ポリエステル原料(1)と同様の方法でポリエステル原料(2)を得た。極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを得た。
<ポリエステル原料(3)の製造法>
ポリエステル原料(2)を80重量%、グリセリンパルチミン酸エステルとグリセリンステアリン酸エステル=50/50とした混合物の20重量%を、ベント付き二軸押出機にて290℃にて溶融混練りしてチップ化を行い、グリセリン脂肪酸エステルマスターバッチとしてポリエステル(3)を作成した。
実施例1:
上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を5.0:93.0:2.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(A)の原料とし、上記ポリエステル(2)をポリエステル層(B)の原料とした。
双方の原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=2.5/45.0/2.5の構成比となるように合流させてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種3層からなる積層シートを得た。
得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度[℃]を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことで、横方向に3.8倍延伸し、フィルム製膜を行った。得られたフィルムの平均厚さは50μmであった。評価結果を下記表2に示す。
実施例2〜7:
実施例1において、表2に記載の配合にすることを除いて、実施例1と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表2に示す。
実施例8:
上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を5.0:93.0:2.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(A)の原料とし、上記ポリエステル(2)をポリエステル層(B)の原料とした。双方の原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B=5.0/45.0の構成比となるように合流させてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種2層からなる積層シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度[℃]を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことで、横方向に3.8倍延伸し、フィルム製膜を行った。得られたフィルムの平均厚さは50μmであった。評価結果を下記表3に示す。なお、表面固有抵抗は、A層に対して評価した値である。
実施例9:
上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を5.0:93.0:2.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(A)の原料とし、上記ポリエステル(2)をポリエステル層(B)の原料とし、上記ポリエステル(1)、およびポリエステル(2)を5.0:95.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(C)の原料とした。各々の原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/C=2.5/45.0/2.5の構成比となるように合流させてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の3種3層からなる積層シートを得た。
得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度[℃]を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことで、横方向に3.8倍延伸し、フィルム製膜を行った。得られたフィルムの平均厚さは50μmであった。評価結果を下記表3に示す。なお、表面固有抵抗は、A層に対して評価した値である。
実施例10:
上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を5.0:93.0:2.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(A)の原料とし、上記ポリエステル(2)をポリエステル層(B)の原料とした。双方の原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=2.5/245.0/2.5の構成比となるように合流させてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種3層からなる積層シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度[℃]を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことで、横方向に3.8倍延伸し、フィルム製膜を行った。得られたフィルムの平均厚さは250μmであった。評価結果を下記表3に示す。
実施例11:
実施例10において、表2に記載の配合にすることを除いて、実施例10と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表3に示す。
実施例12:
実施例10において、表2に記載の配合にすることと、各原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=50.0/150.0/50.0の構成比となるようにすることを除いて、実施例10と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表3に示す。
実施例13:
実施例1において、表2に記載の配合にすることを除いて、実施例1と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表3に示す。
実施例14:
実施例10において、表2に記載の配合にすることを除いて、実施例10と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表3に示す。
比較例1〜2:
実施例1において、表3に記載の配合にすることを除いて、実施例1と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表4に示す。
比較例3:
実施例10において、表3に記載の配合にすることを除いて、実施例10と同様なポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表4に示す。
比較例4:
ポリトリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物/けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール/メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で40/20/35/5の割合で含有する水溶液を予め用意した。上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)を5.0:95.0の比率で混合したポリエステルをポリエステル層(A)の原料とし、上記ポリエステル(2)をポリエステル層(B)の原料とした。双方の原料を二軸押出機中290℃で溶融混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=2.5/45.0/2.5の構成比となるように合流させてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種3層からなる積層シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、この縦延伸フィルムの上面に上記水溶液を塗布し、テンターに導き、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度[℃]を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことで、横方向に3.8倍延伸し、フィルム製膜を行った。得られたフィルムの平均厚さは50μmであった。評価結果を下記表4に示す。
Figure 2015009533
Figure 2015009533
Figure 2015009533
本発明のフィルムは、本発明によれば、基材となるポリエステルフィルムが、帯電由来の火花も発生せず、自消性を有する、二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供できる。例えば、太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムにも適用でき、その工業的価値は高い。
1 クランプ
2 粘着テープ
3 125mm標線
4 バーナー
5 綿

Claims (2)

  1. 帯電防止剤を含有するポリエステル樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の最外層に有する積層ポリエステルフィルムであり、下記式で定義する部分放電圧変化値ΔPDと、最外層フィルム厚みT(μm)の商(ΔPD/T)が0.5以上であることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルム。
    ΔPD=PDexp−(3.06×T+345)
    (上記式中、PDexpはポリエステルフィルムの部分放電圧測定値(V)、Tはポリエステルフィルムの厚み(μm)を示す)
  2. 非イオン性帯電防止剤を含有する請求項1に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004067801A (ja) * 2002-08-05 2004-03-04 Riken Vitamin Co Ltd 生分解性ポリエステル樹脂組成物並びにフィルム、シート又は成形品
JP2009233919A (ja) * 2008-03-26 2009-10-15 Toray Ind Inc 帯電防止性離型用積層ポリエステルフィルム

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