本開示にかかる加熱調理器は、被調理物を電力によって加熱する加熱調理器であって、前記加熱調理器の動作制御を行う制御部と、携帯情報端末からの情報を受信可能な受信部とを少なくとも備え、前記制御部は、前記携帯情報端末の現在位置についての現在位置情報と前記加熱調理器の配置場所についての配置位置情報とに基づいて算出された、前記携帯情報端末の現在位置と前記加熱調理器の配置場所との間の距離に応じて、前記加熱調理器の動作内容を切り替える。
上記構成を備えることで、本開示にかかる加熱調理器は、携帯情報端末との間の距離を把握することができ、その変化によってユーザの状態を確認することができる。そして、制御部が、携帯情報端末の現在位置と加熱調理器の配置場所との間の距離に応じて加熱調理器の動作制御を行うことで、ユーザからの直接的な指示が無くてもユーザの状況に対応した加熱調理を行うことができる。
本開示にかかる加熱調理器において、前記加熱調理器は、前記携帯情報端末から送信される、前記携帯情報端末の現在位置と前記加熱調理器の配置場所との間の距離についての距離情報を受信する受信部を備え、前記加熱調理器の前記制御部は、前記受信部が受信した前記距離情報に基づいて前記加熱調理器の動作内容を切り替えることが好ましい。このようにすることで、現在位置情報を把握でき、かつ、より高度なデータ処理が可能な携帯情報端末の機能を活かして、携帯情報端末の現在位置と加熱調理器の配置場所との距離に応じた動作制御を行うことができる。
また、調理内容を予め設定可能な予約調理機能をさらに備え、前記制御部は、前記距離情報の値が所定の設定値以下となると、前記予約調理機能に基づいて予約されていた調理動作を開始することが好ましい。このようにすることで、ユーザの帰宅タイミングに合わせて予約調理機能を実行することができる。
さらに、被調理物を保温する通常保温モードと、前記通常保温モードよりも低消費電力での保温を行う省エネ保温モードとを有する保温機能をさらに備え、前記制御部は、前記通常保温モードでの保温動作時に前記距離情報の値が所定の設定値以上となると、前記省エネ保温モードでの保温動作に切り替えることが好ましい。このようにすることで、ユーザが加熱調理器を操作しない状況を検知して、省電力化することができる。
この場合において、前記距離情報の値が所定の設定値以上となったことにより前記省エネ保温モードでの保温動作に切り替えられた後、前記距離情報の値が所定の設定値以下となると、前記制御部は、前記省エネ保温モードでの保温動作から前記通常保温モードでの保温動作へと切り替えることが好ましい。このようにすることで、ユーザが加熱調理器を使用する可能性が高まることに対応して、省電力化よりも設定温度での保温を優先する状態に移行することができる。
(実施の形態1)
以下、本開示にかかる加熱調理器について、具体的な実施形態を用いて説明する。
まず、第1の実施の形態として、加熱調理器が炊飯器であり、ユーザが保持している携帯情報端末としてのスマートフォンと連携して、炊飯器に設定されている炊飯予約プログラムの動作開始タイミングを制御する場合について説明する。
図1は、本実施形態にかかる加熱調理器としての炊飯器の動作の概略を説明するためのイメージ図である。
加熱調理器としての炊飯器100は、内部に内鍋が収容され、この内鍋を取り囲むように配置されたヒータへの通電を、図1では図示しない制御部が制御することで炊飯を行うことができる。なお、本開示の加熱調理器としての炊飯器100は、内鍋の形状や材質、内鍋を収容する蓋体の形状や内部構造、ヒータの配置や圧力弁の有無などの炊飯器自体の具体的な構成や、制御部により制御される各種の炊飯プログラムには何らの制限はなく、さまざまな構成の炊飯器として実現することができる。このため、本明細書では炊飯器の詳細な構成についての説明は省略する。
一方で、本開示にかかる加熱調理器としての炊飯器100は、図1では図示を省略した制御部とともに、ユーザが使用する携帯情報端末としての多機能型携帯電話(スマートフォン)200からの情報を受信可能な、図1では同じく図示を省略する受信部を備えている。
本実施形態の炊飯器100は、ユーザの位置を確認するためにユーザが携行するスマートフォン200からの情報を用いる。携帯情報端末としてのスマートフォン200は、少なくとも携帯情報端末の現在位置を把握して現在位置情報として取得できる位置確認機能を備えている。また、少なくとも取得した現在位置情報を、炊飯器100に対して送信することができる送信部(不図示)を備えている。
このような携帯情報端末としては、スマートフォン200以外にも、インターネット環境300への接続機能を備えた携帯電話機、タブレット型またはノート型のパ−ソナルコンピュータ、その他高機能タイプの携帯型ゲーム機、データ送信機能を備えたパーソナルナビゲーター、電子書籍端末などが相当する。また、これら携帯情報端末が備える位置検出機能としては、複数のGPS衛星500からの信号を受信して地球上の位置を特定できるGPS(Global Positioning System)機能を備えたものが最も一般的であるが、従来型の地上局を利用するロラン(LORAN)など、他の各種位置検出手段を備えるものであってもよい。
スマートフォン200は、携帯電話キャリアの基地局を介して、またその他にも、Wi−Fiなどの無線LAN(Local Area Network)への接続機能等を通じて、インターネット環境300に接続される。一方、炊飯器100は、内部にWi−Fi通信が可能な通信回路とアンテナを備えた無線LAN対応チップを備えることにより、家庭内の無線LAN環境を構築するルーター400と接続可能となっている。無線LANのルーター400は、それぞれのプロバイダを通じてインターネット環境300へと接続されている。このようにして、家庭内に配置されている本実施形態にかかる炊飯器100は、通信機能によってユーザが携行している携帯情報端末200からの情報を取得可能な状態で接続されている。
なお、本実施形態にかかる炊飯器100とスマートフォン200との情報連携の手段としては、図1に示すように、炊飯器100とスマートフォン200とが、直接無線通信機能により接続されていて、炊飯器100がスマートフォン200の少なくとも現在位置情報を取得できるような構成も可能である。このように、炊飯器100とスマートフォン200とが直接情報伝達可能に接続される構成は、例えば、炊飯器がWi−Fiダイレクトに対応する回路基板を備えていて、スマートフォン200との間にWi−FiダイレクトによるWi−Fi通信を行う場合や、炊飯器100とスマートフォン200とが互いにNFCに対応する回路構成を備えていて、相互間でNFC通信を行う場合などが考えられる。
ただし、Wi−FiダイレクトやNFCは短距離間での通信に限られるため、加熱調理器の制御部が、ユーザとの距離に応じて制御する動作の内容によっては情報伝達ができない場合が生じうる。このため、より確実に、かつ、広範囲において情報の伝達が可能なインターネット環境300を介する接続形態がより好ましいと言うことができる。
また、炊飯器100とインターネット環境300との接続について、図1では家庭内の無線LANに対して無線ルーター400との間のWi−Fi接続で接続される例を示した。これは、炊飯器100が通常配置されるキッチンには、有線のLAN環境が構築されていないことが多く、また、LANケーブルコネクタ部分での水濡れの可能性を考えると無線LANによる接続が最も好ましいからであるが、炊飯器100がLANケーブルコネクタを備えて、有線で家庭内のLANに接続される構成も採用可能である。さらに、炊飯器100がNFCに対応する場合には、NFCのもう一方のターミナルが家庭内LANに接続されていることにより、無線LANでの接続と同様に配線の引き回しや水濡れなどの課題を生じずに、炊飯器100を家庭内LANに接続することができる。
図2は、本実施形態の加熱調理器としての炊飯器100と、携帯情報端末としてのスマートフォン200との、具体的な構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の炊飯器100は、制御部101、炊飯機能部102、受信部103、送信部104を備えている。
制御部101は、炊飯器100の全体的な動作制御を行う。制御部101は、マイクロコンピュータとして、CPUと各種メモリとを備えた回路ユニットによって実現することができる。
炊飯機能部102は、炊飯器100における炊飯機能を発揮するための各種回路により構成されている。より具体的には、内鍋を温めるためのヒータ回路、内鍋の状態を把握するための温度センサや重量センサなどの各種センサ類、炊飯器に対してユーザが操作を行うためのスイッチ類、炊飯器の動作状態などを表示するためのモニタ部などである。また、ご飯の炊き加減や、炊き込みご飯等の各種のご飯を炊くための炊飯メニュー記憶部、ユーザが指定した所定の時間経過後に炊飯を完了させるための予約機能部、炊飯完了後のご飯を暖かく保持するための保温機能部なども、本実施形態の炊飯器100の炊飯機能部102に含まれる。なお、炊飯機能部102において各種機能を発揮させて炊飯を行うためにはマイクロコンピュータでの制御が欠かせない部分もあり、この観点では、制御部101と炊飯機能部102との部材としてのマイクロコンピュータの区別は困難である。本実施形態の炊飯器の制御部101では、本実施形態の炊飯器100が特有に備える、スマートフォン200との間の通信機能に基づく動作制御を行う部分のみを切り出して、制御部101という概念を付与していると言うことができる。
受信部103は、図1で示したように、インターネット環境300を介して、または、短距離通信手段等を介して、スマートフォン200と接続されて、スマートフォン200から送信される各種の情報を受領することができる部分である。例えば、Wi−Fiによりインターネット環境300に接続される場合には、家庭内無線LANの無線ルーター400を介して接続されることとなる。なお、上述のように、本実施形態の炊飯器100がインターネット環境300に接続される方法としては、無線に限らず有線の場合も含むことから、受信部103は有線LANに接続されるLANポート回路を含む概念である。
送信部104は、炊飯器100からの各種の情報を、直接的、または無線LANのルーター400を介して間接的にスマートフォン200へと送出するための機能部分である。無線または有線のLANポートをはじめ、各種の通信機能に対応する送信部が相当する。なお、この送信部104は、本実施形態の炊飯器100において必須の構成要素ではない。
本実施形態にかかる携帯情報端末としてのスマートフォン200は、図2に示すように、スマートフォンの動作を制御する制御部201、位置検出部202、位置情報記憶部203、距離情報算出部204、送信部205、携帯電話機能部206、受信部207を備えている。
制御部201は、スマートフォン200における各種の動作を制御する。制御部201は、マイクロコンピュータとして、CPUと各種メモリを備えた回路ユニットによって実現することができる。
位置検出部202は、スマートフォン200が備えるGPS機能部である。位置検出部202は、GPS衛星500からのGPS信号を受信する受信機と、受信した信号を解析してスマートフォン200の地球上の現在位置を計算する信号解析部とからなっている。位置検出部202により、スマートフォン200はその現在位置をリアルタイムに把握することができる。
位置情報記憶部203は、スマートフォン200が備える各種メモリの一部であり、特に、炊飯器100の配置位置情報を記憶する部分である。配置位置情報の登録方法については、後に詳述する。
距離情報算出部204は、位置情報検出部202で検出されたスマートフォン200の現在位置情報と、位置情報記憶部203に記憶されていた炊飯器100の配置位置情報とに基づいて、炊飯器100の配置場所とスマートフォン200の現在位置との間の距離を算出し、距離情報として制御部201に出力する。ユーザがスマートフォン200を携帯して外出している場合には、距離情報算出部204で算出されて制御部201へ出力される距離情報の数値は、ユーザの自宅からユーザの現在位置までの距離に相当する。
制御部201は、距離情報算出部204で算出された距離情報を、送信部205から送信する。なお、距離情報の送信のタイミングは、制御部201が適宜定める。また、本実施形態にかかるスマートフォン200の制御部201は、距離情報の数値変化からユーザの移動速度を算出することができ、このユーザの移動速度を距離情報とともに送信部205から炊飯器100へと送信することができる。
送信部205は、制御部201からの指示に従って距離情報を、また、上記のように制御部201がユーザの移動速度を把握している場合には移動速度に関する情報を、炊飯器100に向かって送信する。図1に示したように、スマートフォン200がインターネット環境300を介して炊飯器100に位置情報を送信する場合には、送信部205は、携帯電話のキャリアの基地局を通じて、もしくは、近くに存在するWi−Fiスポットを介してインターネット環境300に情報を送出する。
スマートフォン200は、携帯電話としての機能を果たすための携帯電話機能部206を備えている。携帯電話機能部206には、例えば、携帯電話としての通話を行うためのマイクロフォンとスピーカー、情報を表示するとともにタッチパネルとしてユーザインターフェイスの機能をも備えるディスプレイとこれを動作させる制御回路からなるモニタ部、動画/静止画を撮影可能なカメラ部の機能、携帯電話キャリアとの通信を行う電話通信部などを備えている。
なお、スマートフォン200は、CPUと各種メモリにより構成されるマイクロコンピュータが組み込まれていて、上述した炊飯器100の場合以上にこのマイクロコンピュータによって、ダウンロード等によって取得されたアプリ(アプリケーション)と称されるソフトウェアにしたがって、マイクロフォン、スピーカー、ディスプレイなどの各種デバイスを制御することでその機能を果たすものである。このため、現実の構成部材の観点からは、本実施形態のように制御部201、位置情報記憶部203、距離情報算出部204等を異なるデバイスとして個別に切り分けて把握することは困難であるが、図2では、本開示の加熱調理器と連携してその機能を果たす携帯情報端末の部分について、機能面から分離して表示したものである。
スマートフォン200は、炊飯器100の送信部104に対応して、送信部104から送信された情報を受信するための受信部207を備えている。炊飯器100の送信部104が、Wi−Fiによりインターネット環境300へとデータを送信するものである場合は、スマートフォン200の受信部207は、他のインターネット環境300上のデータを受領するWi−Fi受信部がそのまま兼ねることとなる。また、炊飯器100の送信部104がNFCによりデータを送信する場合には、スマートフォン200の受信部207はこれに対応したNFCの受信部となる。スマートフォン200において、受信部207は、炊飯器100が送信部104を有している場合にのみ必要となる構成要素であることは言うまでもない。
次に、図2で構成を説明した本実施形態の炊飯器100における、スマートフォン200との連携動作について説明する。図3は、本実施形態の炊飯器100において、スマートフォン200での現在位置把握機能を利用した炊飯機能の動作を説明するフローチャートである。
まず、ステップS101でユーザが使用するスマートフォン200に、炊飯器100との連係動作を行うためのプログラムをインストールするスマートフォン設定を行う。スマートフォン200への制御プログラムのインストールは、炊飯器メーカーのホームページから制御アプリをダウンロードさせる方法や、炊飯器100に保存されていた制御プログラムを、家庭内無線LANや炊飯器100とスマートフォン200との間のNFCなどによる短距離相互通信を介して転送する方法などによって実行することができる。
次に、炊飯器100の配置位置を確認する(ステップS102)。炊飯器100の配置位置に関する配置位置情報は、家庭内でユーザがスマートフォン200のGPS機能を用いて現在位置を確認することにより取得することができる。その他にも、加熱調理器がGPS機能を備えている場合には、加熱調理器のGPS機能を用いて配置位置情報を取得することができ、また、一定以上の精度で特定できるのであれば、郵便番号等のユーザの家庭の位置を示す他の指標を入力することにより配置位置情報を得ることができる。
次に、炊飯器100の配置位置情報をスマートフォン200に登録し、配置位置情報を位置情報記憶部203に記憶する(ステップS103)。ステップS103の配置位置記憶を行うことで、以降はスマートフォン200側において、炊飯器100とスマートフォン200との間の距離を算出できるようになる。ステップS101のスマートフォン設定からステップS103の配置位置記憶までの各ステップは、本実施形態の炊飯器100においてスマートフォン200との連携による炊飯制御を行う上での初期設定に相当するものであり、一度設定すればユーザが転居して配置位置情報が変わる場合や、ユーザがスマートフォンを変更、追加した場合などを除き、改めて行う必要はない。
次に、炊飯器100において、炊飯メニューを選択する(ステップS104)。
炊飯メニューの選択において、ユーザは、お米の炊き加減や、炊き込みご飯等の各種炊飯の選択などを、炊飯器100の操作ボタンを用いて設定する。また、予約炊飯を行う場合には、炊きあがりの時間を設定するタイマー予約を行うか、スマートフォン200との連携によってGPS機能を用いて、ユーザが帰宅したときにちょうどご飯が炊きあがるように設定する炊飯予約を行うかを選択する。なお、以下本明細書では、このようなユーザの現在位置を把握して炊飯プログラムを動作させる炊飯予約を、GPSモードでの炊飯予約と称する。
本実施形態の炊飯器100は、GPSモードでの炊飯予約を実行するために、ステップS101で携帯電話に炊飯器と連係するためのプログラムがインストールされている。また、家庭内LANや、NFCを用いた短距離通信によって、炊飯器100とスマートフォン200との間の情報交換が可能な状態となっている。このため、GPSモードにおける炊飯予約での動作を行うプログラムと同時に、炊飯器の炊飯予約操作をスマートフォン200から行えるようにするプログラムをスマートフォン200にインストールすることができる。
図4は、炊飯器100の炊飯予約設定を、スマートフォン200を用いて行うプログラムを動作させたときの、スマートフォン200の画面イメージを説明するための図である。
ユーザがスマートフォン200を操作して、炊飯器100との連携操作が行えるアプリを立ち上げ、炊飯予約を行う画面を表示する。
このとき、例えば図4における画面211のように、各種メニューを設定する第1の画面が表示される。ユーザが、なるべく低消費電力での炊飯を行う「エコ炊き」モードを選んだ場合には、引き続いて「エコ炊き」モードにおける火加減の設定を選択するメニュー選択の画面212を表示するなど、ユーザが炊飯予約の設定を所定の順序で行えるような画面を、ユーザの奏さないように対応させてスマートフォン200のディスプレイに表示することができる。
また、図4における画面211、画面212のように、表示画面に「取説表示」のボタンを表示して、操作内容がわからない場合にはこのボタンをタッチすると取扱説明書を都度表示できるようにしたり、「音声案内」のボタンを表示してユーザにタッチさせることにより、音声によって操作内容を説明したりするなど、スマートフォン200が有する機能を有効に利用してユーザによる炊飯プログラム設定の操作を助けることができる。
また、図4の画面213のように、タイマー予約において炊きあがり時間の設定を行う際には、設定時間とその時間を前後させるための操作ボタンとを表示することで、スマートフォン200のタッチパネル機能を有効に利用して、ユーザが感覚的に炊飯予約操作を行うことができるようにすることができる。さらに、図4における画面214として示すように、炊飯予約内容を一括して示すとともに操作を終了するボタンを設けることで、ユーザが設定しようとしている内容を瞬時に確認できるようにすることができる。
このように、本実施形態の炊飯器100では、炊飯器自体が備える表示パネルや操作ボタンを用いて行うよりも、より容易、かつ、確実にユーザが炊飯器100に所望する炊飯プログラムや予約機能を設定できるように補助することができる。
図3のフローチャートに戻って、ステップS105で、GPSモードでの炊飯予約がされているか否かを確認する。
GPSモードでの炊飯予約が設定されていない場合、すなわち、ステップS105で「No」の場合には、ステップS106に進み、タイマー予約炊飯が行われる。本実施形態で示すタイマー予約炊飯は、設定と同時に炊飯タイマーがONされて、炊き上げ時間から逆算した炊飯開始時間に炊飯プログラムが始動し、炊飯が完了した後には設定に応じて適宜保温モードに移行する。なお、本実施形態におけるステップS106のタイマー予約炊飯モードは、上記説明した炊き上げ時間から逆算して炊飯を開始する場合以外に、炊飯モード設定後すぐに炊飯を開始する場合を含むものである。また、本実施形態の炊飯器100は、携帯電話と連携して情報交換が可能となっているため、適宜必要なタイミングで携帯電話から正しい現在時刻情報を取得することができ、長期間にわたってユーザからの設定に頼らずに正しい時刻情報に基づいたタイマー予約炊飯を行うことができる。
ステップS106において、設定したタイマー予約炊飯が行われるため、GPSモードでの予約炊飯を行わない場合の一つのフローが終了する。
一方、ステップS105でGPSモードに設定されている「Yes」の場合には、GPSモードでの予約炊飯に移行する。GPSモードでは、本実施形態のスマートフォン200は、GPS機能部である位置検出部202により、その現在位置をリアルタイムに把握する。そして、把握した現在位置についての現在位置情報と、メモリの一部である位置情報記憶部203に記憶されていた炊飯器100の配置位置情報とに基づいて、距離情報算出部204が炊飯器100の配置場所とスマートフォン200の現在位置との間の距離を算出する。
距離情報算出部204が算出した距離情報は、スマートフォンの制御部201に出力され、制御部201は距離情報を送信部205から炊飯器100に向かって送信する。本実施形態の炊飯器100の場合は、図1に示したようにスマートフォン200はインターネット環境300を介して炊飯器100に位置情報を送信するため、送信部205からの距離情報は、Wi−Fiスポットなどを介してインターネット環境300に送出される。
インターネット環境300に送出された距離情報は、ユーザの家庭内に配置された無線LANのルーター400を介して、家庭内LANを経て炊飯器の受信部103にて受信される(ステップS107)。
炊飯器100の制御部101は、受信部103で受信した距離情報に基づいて、GPSモードでの炊飯を開始するか否かを判断する。具体的には、距離情報の数値が、所定の値D0以下となったか否かを判断する(ステップS108)。
距離情報の数値が、所定の値D0以下でない場合(S108で「No」の場合)には、そのまま待機を続けて受信部103が次の距離情報を受信するのを待つ。
距離情報の数値がD0以下となった場合(S108で「Yes」の場合)には、スマートフォン200を所有しているユーザが、炊飯器100が配置されている自宅へと向かっているものと判断する。
なお、ユーザが炊飯器100の予約操作を行った直後は、ユーザがまだ自宅から離れていないため、距離情報の数値は小さい値となる。このような場合と、ユーザの帰宅時に自宅に近づいて距離情報の値が小さくなった場合とを区別するために、炊飯器100の制御部101は、距離情報の数値が所定の値以上となった後に、改めて設定値D0以下となった場合にのみ、ユーザが、炊飯器100が配置されている自宅へと向かっているものと判断するように設定することができる。また、ユーザがまだ自宅から離れていない場合と、ユーザが帰宅のため自宅に近づいて距離情報の値が小さくなった場合とを区別する他の方法としては、例えば炊飯予約時に、GPSモードでの炊飯開始時刻を、所定時刻以降(夕飯の場合には一例として午後3時以降とする等)と設定できるようにしてもよい。
本実施形態の炊飯器100では、制御部101は、GPSモードで炊飯メニューを実行する条件が整ったことをユーザに確認する(ステップS109)。具体的には、制御部101は、送信部104から、家庭内LANの無線ルーター400、インターネット環境300を介して、スマートフォン200にGPSモードでの炊飯開始条件が満たされたことを通知する。
受信部207で炊飯器100からの情報を受け取ると、スマートフォン200の制御部201は、音声、ディスプレイへの表示等のスマートフォン200本来の機能を使って、ユーザにGPSモードでの炊飯プログラムを開始してよいか否かを確認する(ステップS109)。
そのまま炊飯メニューを開始してかまわない場合(ステップS109で「Yes」の場合)は、ユーザは、その旨の操作をスマートフォン200で行う。スマートフォン200の制御部201は、ユーザの許可を送信部206から再びインターネット環境300と家庭内LANを介して炊飯器100の受信部103に送る。
ユーザからの許可を示す信号を受信部103が受け取ると、炊飯器100の制御部101は、設定していた予約プログラムによる炊飯を開始する(ステップS110)。ステップS110での炊飯が開始され、炊飯が終了すると、必要に応じて適宜保温モードへと移行する。このようにして、GPSモードでの予約炊飯が行われる。
一方、ステップS109において、GPSモードで炊飯メニューを実行する条件が整ったことを伝えられた際に、ユーザが、例えば自宅近くでまだ所用がありそのまま自宅へは戻らない場合など、すぐに炊飯プログラムが開始することが好ましくない場合には、ユーザはその旨の操作をスマートフォンに対して行う(ステップS109で「No」の場合)。このときユーザは、自己の状況に応じて、GPSモードでの予約炊飯を解消するか否かを選択することができる(ステップS111)。
例えば、外出中に一旦自宅もしくは自宅近くの、GPSモードが働く位置にまで戻ったが再び外出する場合など、その時点で炊飯が開始されることは好ましくないものの、後に本当に帰宅する際にはGPSモードでの炊飯がおこなわれることが好ましい場合には、直ちに炊飯を開始しないもののGPS炊飯モードを解除しないこと(ステップS111での「No」)を選択することができる。この場合には、ステップS107に戻って、スマートフォン200は、GPS機能による現在位置の把握からプログラムを再開する。
一方、上記のようにユーザが自宅近くで所用があり、距離情報が所定の数値になってから実際に自宅にたどり着くまでの間の所要時間が、通常よりも数十分から数時間遅くなる場合には、ユーザはGPS炊飯モードを解除する(ステップS111で「Yes」の場合)。このとき、ユーザは、スマートフォンから、所要時間を見越した所定の時間だけ炊飯開始時間を遅らせる設定や、炊飯予約自体を解除する設定など、自己の都合に合わせて解除を含めた炊飯プログラムの修正を行うことができる。
なお、ステップS109として示した、GPSモードでの炊飯確認の動作は、本実施形態にかかる炊飯器における必須の動作ではない。このため、炊飯器100からスマートフォン200へと炊飯器100の制御部101の判定状況を通知する送信部104は、本実施形態の炊飯器100において必須の構成要素ではない。またユーザが、ステップS109でのGPSモードでの炊飯確認に気がつかない場合、もしくは、自動車の運転中など、確認信号に直ちに応答できない場合も想定し得るため、ステップS109の確認動作に対して一定時間が経過してもユーザが応答しない場合には、ステップS110のGPSモードでの予約炊飯を開始するように設定することができる。
以上説明したように、本実施形態の炊飯器100では、GPSモードの予約炊飯プログラムを有していて、ユーザが配置場所である自宅に近づいたことを検出して炊飯プログラムの動作を開始する。このため、ユーザの帰宅時間が前後した場合でも、ユーザの帰宅のタイミングに合わせて炊飯を完了させることができる。このような、本実施形態炊飯器100では、設定時間に炊飯を完了する従来のタイマー予約機能での予約炊飯を行う場合と比較して、ユーザの帰宅時間が前後した場合に、まだ炊飯が完了していなかったり、炊飯が早く完了してしまって保温のための電力を消費してしまったりするという不都合を回避することができる。
なお、図3に示したフローチャートにおいては、ステップS108に示したGPSモードでの炊飯プログラムの開始判定を、距離情報の数値が所定の値D0以下であるか否かとして端的に示した。しかし、本実施形態の炊飯器100において、GPSモードの開始判定については、距離情報の数値が所定の閾値以下であるかの判定に限られるものではない。例えば、ユーザが移動手段を複数選択可能である場合などでは、距離情報とユーザの帰宅までの所要時間とがそのまま対応しない場合がある。このような場合、本実施形態の炊飯器100では、ユーザが所持するスマートフォン200における位置確認機能により、その確認の頻度を増加する方向に調整することでユーザの移動速度を把握することができる。したがって、炊飯器100の制御部101が、距離情報に加えてユーザの移動速度を判断基準としてGPSモードでの炊飯開始タイミングの調整を行うことを可能とすることにより、上記のようなユーザが異なる移動手段を選択した場合における炊飯完了時間の調整を行うことができる。
なお、炊飯器100の制御部101が設定する、GPSモードでの炊飯を開始する条件である距離情報の数値D0は、設定されている炊飯プログラムの所要時間に対応させてユーザの帰宅時間が炊飯完了時間となるように、制御部101自身が適宜変更するように設定されることが好ましい。また、炊飯器100の制御部101が、一定以上の能力を備えたマイクロコンピュータである場合には、炊飯完了の時間や季節、温度などの環境条件、また、位置情報から判断できる帰宅ルートによって、ユーザの移動速度がどのように変化するかを学習してユーザが帰宅する時間の予測に適宜修正を加えることも可能となる。このようにして、スマートフォン200の位置確認機能を最大限活用して、ユーザの帰宅時に合わせて炊飯が完了するように調整することが好ましい。
以上、本実施形態においては、加熱調理器が炊飯器である例について説明したが、本開示にかかる加熱調理器としては、炊飯器以外にも、ホームベーカリーやオーブントースター、電子レンジなど、所定の調理プログラムが予約設定可能であり、被調理物を予約されたプログラムにしたがって調理する各種の加熱調理器を用いることができる。
(実施の形態2)
次に、本開示の加熱調理器の第2の実施形態として、加熱調理器が電気ポットであり、ユーザが保持している携帯情報端末としてのスマートフォンと連携して、異なる保温モードを切り替えて制御する場合について説明する。
第2の実施形態として説明する電気ポットは、湯沸かし完了後の保温プログラムとして、ユーザから設定された設定温度を保つことを優先する通常保温モードと、設定温度から数度下がることを許容する代わりに低消費電力での保温を行う省エネ保温モードとの、2つの保温モードを備えている。
図5は、本実施形態にかかる加熱調理器としての電気ポットの動作の概略を説明するためのイメージ図である。
加熱調理器としての電気ポット600は、内部に保温性を備えた魔法瓶タイプの貯水容器を備え、この貯水容器の底部に配置された加熱ヒータへの通電を、図5では図示しない制御部が制御することで、水からお湯を沸かすとともに、沸かしたお湯を所定の温度で保温することができる。なお、本実施形態にかかる加熱調理器としての電気ポット600は、貯水容器の形状や材質、貯水容器からの給湯機構や蒸気排出経路の構成、転倒時の止水機構の有無などには何ら制限はなく、さまざまな構成の電気ポットとして実現することができる。このため、本明細書では電気ポットとしての詳細な構成についての説明は省略する。
本実施形態にかかる電気ポット600は、第1の実施形態で説明した炊飯器100と同様に、制御部と、ユーザが使用する携帯情報端末としてのスマートフォン200からの情報を受信可能な受信部とを備えている。
また、図5に示す、電気ポット600においてユーザの位置を確認するためにユーザが携帯するスマートフォン200、および、スマートフォン200から電気ポット600への情報伝達ルートであるインターネット環境300、さらに、電気ポット600が、Wi−Fi通信が可能な通信回路とアンテナを備えた無線LAN対応チップを備えることにより、家庭内の無線LAN環境を構築する無線ルーター400と接続可能となっている点については、図1で示した第1の実施形態の場合と同様であり、本実施形態での説明は適宜省略する。
特に、多機能なスマートフォン200や、形態情報端末であるインターネット環境300への接続機能を備えた携帯電話機、タブレット型またはノート型のパ−ソナルコンピュータ、その他高機能タイプの携帯型ゲーム機、データ送信機能を備えたパーソナルナビゲーター、電子書籍端末などは、所定のプログラムをインストールして動作させることで、第1の実施形態として示した炊飯器100と同様に、本実施形態の電気ポット600との間でも、ユーザの位置情報について連携した動作が可能となる。なお、スマートフォン200をはじめとする携帯情報端末は、GPS衛星500からの信号を受信して現在位置を把握するGPS機能、または、GPS機能に相当する各種位置検出手段を備えている。
また、本実施形態においても、電気ポット600とスマートフォン200とが、直接無線通信機能により接続されていて、電気ポット600がスマートフォン200の少なくとも現在位置情報を取得できる構成とすることも可能である。後述するように、本実施形態の電気ポット600では、電気ポット600とスマートフォン200を携帯するユーザとの距離の大小に応じて電気ポット600の制御動作が異なるものであるため、電気ポット600がWi−Fiダイレクトに対応する回路基板を備えている場合や、電気ポット600とスマートフォン200とが、互いにNFCに対応する回路構成を備えている場合などでの実現が十分に可能となる。
また、第1の実施形態として説明した炊飯器100と同様、本実施形態の電気ポット600も通常キッチンに配置されるものであるため、有線のLAN環境よりも、水濡れの可能性を考慮して無線LANによる家庭内LANへの接続が好ましく、また、電気ポット600がNFCに対応する場合には、NFCのもう一方のターミナルが家庭内LANに接続して電気ポット600を家庭内LANに接続することがより好ましい。
図6は、本実施形態の加熱調理器としての電気ポット600と、携帯情報端末としてのスマートフォン200との、具体的な構成例を示すブロック図である。
なお、上述のように、多機能な携帯情報端末であるスマートフォン200については、その制御部201を動作させる制御プログラムが本実施形態の電気ポット600との連係動作に対応するものであれば、その構成は実施形態1におけるスマートフォン200として図2で説明したものと全く同様である。このため、図6では、スマートフォン200と、スマートフォン200と電気ポット600とを接続するインターネット環境300、家庭内無線LANの無線ルーター400の構成については、詳細な説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態の電気ポット600は、制御部601、ポット機能部602、受信部603、送信部604を備えている。
制御部601は、電気ポット600の全体的な動作制御を行う。制御部601は、マイクロコンピュータとして、CPUと各種メモリとを備えた回路ユニットによって実現することができる。
ポット機能部602は、電気ポット600における湯沸かし機能と保温機能とを発揮するための各種部材と電気回路により構成されている。具体的には、貯水容器内部の水を温めるためのヒータとその動作回路、貯水容器内部の湯の温度を把握するための温度センサ、湯沸かしや保温機能についてユーザが所望の設定を行うためのスイッチ類、貯水容器内部の湯の温度や湯沸かしや保温の各種モードを表示するためのモニタ部などである。また、本実施形態の電気ポット600は、保温機能として通常保温モードと省エネ保温モードとの2つの機能を備えている。
なお、本実施形態の電気ポット600においても、ポット機能部602における各種機能を発揮させるためにマイクロコンピュータでの制御が欠かせない部分があり、制御部601とポット機能部602とを部材として区別することは困難である。本実施形態の電気ポット600においても、本実施形態の電気ポット600が特有に備える、スマートフォン200との間の通信機能に基づく動作制御を行う部分のみを切り出して、制御部601という概念を付与していると言うことができる。
受信部603は、図5で示したように、インターネット環境300を介して、または、短距離通信機能を介して、スマートフォン200と接続されて、スマートフォン200から送信される各種の情報を受領することができる部分である。例えば、Wi−Fiによりインターネット環境300に接続される場合には、家庭内無線LANの無線ルーター400を介して接続されることとなる。なお、上述のように、本実施形態の電気ポット600がインターネット環境300に接続される方法としては、無線に限らず有線の場合も含むことから、受信部603は有線LANに接続されるLANポート回路を含む概念である。
送信部604は、電気ポット600からの各種の情報を、直接または間接にスマートフォン200へと送出するための機能部分である。本実施形態の電気ポット600の送信部604として、無線または有線のLANポートをはじめ各種の送信部が相当する。なお、電気ポット600の湯量や湯温、保温モードの確認などをスマートフォン200側で行う必要がない場合には、送信部604は設けられない。
本実施形態にかかる携帯情報端末としてのスマートフォン200は、図2に示すように、スマートフォンの動作を制御する制御部201、位置検出部202、位置情報記憶部203、距離情報算出部204、送信部205、携帯電話機能部206、受信部207を備えている。上記したように、スマートフォン200は本来的にダウンロード等によりインストールされたアプリケーションプログラムなどを実行することで、さまざまな機能を備えるものであるため、第1の実施形態と第2の実施形態において、スマートフォン200の構成は同一である。このため、実施形態1として示した、炊飯器100の制御を行うアプリケーションと、本実施形態で説明する電気ポット600の制御を行うアプリケーションとを両方備えることで、ユーザの所有する一つのスマートフォン200から、第1の実施形態で説明した炊飯器100と、本実施形態で説明する電気ポット600とを、それぞれ制御することが可能である。
次に、図6を用いて説明した構成の本実施形態の電気ポット600における、スマートフォン200との連携動作について説明する。図7は、本実施形態の電気ポット600において、スマートフォン200での現在位置把握機能を利用した保温モード切替の動作を説明するフローチャートである。
図7のフローチャートにおいて、まず、ステップS201でユーザが使用するスマートフォン200に、電気ポット600との連係動作を行うためのプログラムをインストールするスマートフォン設定を行う。スマートフォン200への制御プログラムのインストールは、電気ポットメーカーのホームページから制御アプリをダウンロードする方法や、電気ポット600に保存されていた制御プログラムを、家庭内の無線LANを介した通信や、電気ポット600とスマートフォン200との間のNFC等の短距離相互通信により送信する方法などによって行うことができる。
次に、電気ポット600の配置位置を確認する(ステップS202)。電気ポット600の配置位置に関する配置位置情報は、家庭内でユーザがスマートフォン200のGPS機能を用いて現在位置を確認することにより取得することができる。その他にも、加熱調理器がGPS機能を備えている場合には、加熱調理器のGPS機能を用いて配置位置情報を取得することができ、また、一定以上の精度で特定できるのであれば、郵便番号等のユーザの家庭の位置を示す他の指標を入力することにより配置位置情報を得ることができる。
次に、電気ポット600の配置位置情報をスマートフォン200に登録し、配置位置情報を位置情報記憶部203に記憶する(ステップS203)。ステップS203の配置位置記憶を行うことで、以降はスマートフォン200側において、電気ポット600とスマートフォン200との間の距離を算出できるようになる。
本実施形態においても、ステップS201のスマートフォン設定からステップS203の配置位置記憶までの各ステップは、本実施形態の電気ポット600においてスマートフォン200との連携による保温モードの切替制御を行う上での初期設定に相当するものであり、一度設定すればユーザが転居して配置位置情報が変わる場合や、ユーザがスマートフォンを変更、追加した場合などを除き、改めて行う必要はないものである。また、本実施形態の電気ポットにおける上記ステップS201からステップS203までの設定は、基本的には第1の実施形態における、炊飯器100の場合のスマートフォン200の初期設定(ステップS101からステップS103)と同様の操作である。
次に、電気ポット600に通電するとともに、内部の貯水容器に所定量以下の水を入れる。そして、湯沸かし後の保温モードとして、ユーザの現在位置に応じて保温モードを省エネ保温モードへと切り替える、自動省エネモードとするか否かの選択を行う(ステップS204)。
この自動省エネモードとするか否かの選択は、電気ポット600の操作部に設けられた操作ボタンを使って行う場合の他、スマートフォン200を用いて設定することも可能である。また、自動省エネモードとするか否かの選択時に、ユーザは保温温度を設定することができる。保温温度としては、例えば、ほぼ沸騰状態を保つ「98℃」の他に「90℃」と「80℃」など、複数の温度を選択可能とすることができる。
ステップS204で、自動省エネモードが選択されていない場合(「No」の場合)には、ステップS205として、従来からの保温制御が行われる。ステップS205の保温制御は、例えば、湯沸かし完了後に通常保温モードによって、ユーザの設定温度での保温を行う通常保温モードでの保温を行い、所定時間(一例として2時間)電気ポット600が操作されない場合には、ユーザの設定温度から例えば5℃温度が下がる省エネ保温モードへと移行するというものである。なお、保温モードとして、電気ポット600の貯水容器自体の保温性能が十分高い場合には、保温のためのヒータへの通電を一切行わない保温モードを選択することができる。
一方、ステップS204で、自動省エネモードが選択された場合(「Yes」の場合)には、まず、ステップS206での通常保温モードでの保温が開始される。
また、本実施形態のスマートフォン200は、GPS機能部である位置検出部202により、その現在位置をリアルタイムに把握する。そして、把握した現在位置についての現在位置情報と、メモリの一部である位置情報記憶部203に記憶されていた電気ポット600の配置位置情報とに基づいて、距離情報算出部204が電気ポット600の配置場所とスマートフォン200の現在位置との間の距離を算出する。
距離情報算出部204が算出した距離情報は、スマートフォンの制御部201に出力され、制御部201は距離情報を送信部205から電気ポット600に向かって送信する。本実施形態の電気ポット600の場合は、図5に示したようにスマートフォン200からインターネット環境300を介して電気ポット600に位置情報が送信されるため、送信部205からの距離情報は、Wi−Fiスポットなどを介してインターネット環境300に送出される。
インターネット環境300に送出された距離情報は、ユーザの家庭内に配置されたルーター400を介して、家庭内LANを経て電気ポット600の受信部603にて受信される(ステップS207)。
電気ポット600の制御部601は、受信部603で受信した距離情報に基づいて、省エネ保温モードへと移行するか否かを判断する。具体的には、距離情報の数値が、所定の値D1以上となったか否かを判断する(ステップS208)。
距離情報の数値が、所定の値D1以上となっていない場合(S208で「No」の場合)には、ステップS207へ戻って、そのままユーザが設定した保温温度を保つ通常モードでの保温を行う。
距離情報の数値がD1以上となった場合(S208で「Yes」の場合)には、制御部601は、スマートフォン200を所有しているユーザが、電気ポット600が配置されている自宅から離れて外出したものと判断する。
ユーザが外出したと判断した場合、電気ポット600の制御部601は、ユーザがすぐに保温しているお湯を使用することはないと判断して、消費電力を押さえることを優先する省エネ保温モードへと移行する(ステップS209)。
省エネ保温モードへと移行後は、ステップS207へと戻る。本実施形態のスマートフォン200は、GPS機能部で現在位置をリアルタイムに把握し、把握した現在位置についての現在位置情報と記憶されていた電気ポット600の配置位置情報とに基づいて距離情報を算出、送信部205からインターネット環境を介して、電気ポット600に向かって新たな距離情報を送信する。
電気ポット600の受信部603が新たな距離情報を受信したら、制御部601が再び距離情報の値が、所定の設定値D1よりも大きいか否かを判断する。
以下、制御部601は、距離情報の値が所定の設定値D1よりも大きい場合にはステップS209の省エネ保温モードでの保温を、距離情報の値が所定の設定値D1よりも大きくない場合にはステップS206の通常保温モードでの保温を、それぞれ行う制御を繰り返す。
以上説明したように、本実施形態の電気ポット600の制御部601は、ユーザが携帯するスマートフォン200と連携することで、スマートフォン200と電気ポットの配置位置との距離が広がったことを検出し、この場合には、ユーザが外出しているために電気ポット600内部のお湯をすぐに利用する状況ではないと判断して、消費電力の低減が図れる省エネ保温モードへと移行する。一方、省エネ保温モードでの保温時に、ユーザが携帯するスマートフォン200の現在位置と電気ポットの配置位置との距離が近くなった場合には、ユーザが帰宅して電気ポット内のお湯を利用する可能性が高いと判断して、ユーザが設定した保温温度が維持できる通常保温モードへと移行する。
このようにすることで、一定時間経過する間にユーザが操作しない場合には省エネ保温モードへと移行していた従来の保温制御のように、ユーザが使用しない場合でも所定の時間が経過するまでは消費電力の大きな通常保温モードを維持することによる電力のロスが生じることを回避することができる。また、従来の保温制御の場合に、省エネ保温モードに移行してしまうと湯の温度が下がったままとなり、ユーザが使用したいときに所望する温度の湯を使用できないという不都合を回避することができる。
なお、本実施形態の電気ポット600は、ユーザの形態するスマートフォン200からの情報を受信部603で受信し、制御部601が受信した情報に応じた制御を行うことができることを利用して、ユーザが、外出先などの遠方にいる場合でも、保温時の設定温度を調整できるようにすることが可能である。このようにすることで、例えば、ユーザが外出時に急な来客があることが判明した場合などに、外出先から保温温度を少し高めに変更するなどして、帰宅時に直ちに高い温度での湯を利用できるような遠隔操作を行うことも可能となる。
以上、本開示の加熱調理器の第2の実施形態として、加熱調理器としての電気ポットの保温機能のモード変更を行う場合を例示して説明したが、本開示の加熱調理器は例示した電気ポットに限られない。電気ポット以外の、炊飯器やホームベーカリー、オープントースターや電子レンジなどのさまざまな加熱調理器において、ユーザが加熱調理器をすぐに利用するか否かによって、加熱調理器の余熱温度を変化させたい場合や、ユーザが被調理物をすぐに食べるか否かによって、その保温温度を変化させたい場合などにおいて、ユーザと加熱調理器との距離に応じて自動的に設定温度を調整することができる。また、切替ができる保温モードの種類についても、通常保温モードと省エネ保温モードとに限られず、他の各種の保温モードを切り替え可能とすることができる。この場合において、切替対象の保温モードの数は、上記実施形態のように2つに限られないことも自明である。
以上説明したように、本開示の加熱調理器は、ユーザが携帯する携帯情報端末の位置検出機能を用いて、携帯情報端末の現在位置と加熱調理器の配置場所との距離についての距離情報を算出し、この距離情報に応じて加熱調理器の動作内容を切り替える。このようにすることで、ユーザが細かな設定変更を行わなくても、ユーザにとって好ましい状態で利用することができる加熱調理器を実現することができる。
なお、本開示の加熱調理器として説明した、第1の実施形態の炊飯器、第2の実施形態の電気ポットにおいて、いずれも携帯情報端末であるスマートフォン側に位置情報記憶部と距離情報算出部が設けられ、距離情報算出部において算出された距離情報が携帯情報端末から加熱調理器へと送信されて、加熱調理器の制御部において、距離情報の数値を判定してその判定結果に応じた処理を行う構成について説明した。しかし、本開示の加熱調理器は、このような構成に限られない。
例えば、位置情報記憶部と距離情報算出部とを加熱調理器側が備えていて、携帯情報端末からは端末の現在位置についての位置情報のみが加熱調理器に送られてくる構成とすることができる。このようにすることで、例えば加熱調理器の配置位置での温度や湿度などの環境条件や、加熱調理器の実際の温度などをも加味した加熱調理器の制御を行うことが可能となるなど、より、加熱調理器の実情に応じた動作制御を可能とすることができる。
また、距離情報に基づいて、加熱調理器の具体的な動作を判定する判別部分を、加熱調理器ではなく携帯情報端末の制御部で行うようにして、加熱調理器には、具体的な制御内容を示す信号のみが送信されるような構成とすることができる。このような構成とすることで、より高性能な判断機能を備えた携帯情報端末側で、複雑な制御内容を演算して加熱調理器側に指示することができる。また、上記第1の実施形態で説明したように、GPSモードでの炊飯プログラムを開始してよいかユーザの確認を得る場合には、携帯情報端末側のみで全ての手続が完了するため、一時的に通信が途切れるなど加熱調理器と携帯情報端末との通信状態が悪い場合の悪影響を受けることを回避することができる。
さらに、加熱調理器が送信部を、携帯情報端末が受信部を、それぞれ備えていることを前提として、位置情報記憶部を加熱調理器が備えていて、加熱調理器から必要に応じて携帯情報端末に配置位置情報を送信するような構成も考えられる。
このように、本開示の加熱調理器は、携帯情報端末側が位置検出機能を備え、加熱調理器が所定の制御を行う制御部を備えている構成であれば、位置情報記憶部と距離情報算出部、そして、距離情報に基づいて実際の動作制御内容を判断する判別機能部分については、携帯情報端末側と加熱調理器側とのいずれの側にあってもかまわない。
なお、本開示にかかる加熱調理器において、以下の構成を付記する。
[付記1]
前記加熱調理器は、
前記加熱調理器の位置情報を記憶する位置情報記憶部と、
前記受信部で前記携帯情報端末から受信した前記現在位置情報と、前記配置位置情報とに基づいて、前記ユーザの現在位置と前記加熱調理器の配置位置との間の距離を算出して距離情報として出力する距離情報算出部とを備え、
前記制御部は、前記距離情報に応じて前記加熱調理器の動作内容を切り替える。
このようにすることで、加熱調理器自体の温度や環境温度、湿度などの実情を反映して加熱調理器の制御を行うことができる。
[付記2]
前記加熱調理器は、前記制御部によって制御された動作内容を制御情報として前記携帯情報端末へ送信可能な送信部を備え、
前記制御部は、前記距離情報に応じて切り替えた前記加熱調理器の動作内容を前記制御情報として前記携帯情報端末に送信する。
このようにすることで、ユーザは、距離情報のみからでは判定できない特殊な事情がある場合でも、加熱調理器を所望の状態で動作させることができる。
[付記3]
前記携帯情報端末と前記加熱調理器との間の情報交換が無線LANによって行われ、
前記制御部が制御する前記加熱調理器の動作内容を、前記携帯情報端末から設定可能である。
このようにすることで、加熱調理器と携帯情報端末との連携が可能なように設定されている本開示の加熱調理器において、携帯情報端末が備える見やすい表示画面や音声入力機能、その他、高度な情報処理能力を利用して、ユーザが容易に所望の制御内容を登録することを手助けすることができる。