JP2015001374A - シアン濃度測定方法 - Google Patents

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【課題】従来広く採用されているピクリン酸試薬を用いた簡易的なシアン測定方法について、公定方法に対するコスト低減のメリットを維持したまま、より精度の高い測定値を得ることができる、シアン濃度測定方法を提供すること。【解決手段】シアン濃度測定方法であって、試料水にマスキング剤を添加する工程ST1と、マスキング剤の添加後の試料水を蒸留して遊離シアンを分離回収する工程ST2と、遊離シアンを、検定試薬であるピクリン酸カリウムと接触させて有色化合物を形成する工程ST3と、有色化合物の吸光度から、試料水のシアン濃度を算出する工程ST4と、を備え、マスキング剤は、硫酸銅と、塩化スズとの混合物であるシアン濃度測定方法とする。【選択図】図1

Description

本発明は、試料水中のシアン濃度を測定するためのシアン濃度測定方法に関する。
建設現場周辺域の地下水の汚染調査等では、公定方法によるシアン濃度の公定分析の実施が法的に定められている。公定方法であるJIS−K0102による分析方法は、数時間を要する前処理で工場排水中のシアンを蒸留分離し、得た分離液を用いてピリジン−ピラゾロン吸光光度法、4−ピリジンカルボン酸−ピラロゾン吸光光度法、イオン電極法等により全シアン濃度を測定する方法である。
しかし、公定方法による分析によれば、精度の高い分析値を得ることはできるが、作業現場とは別途の専用設備の設置や、分析に要する測定時間や測定コスト等の経済的負担が極めて大きい。そこで、例えば、建設工事現場における浄化の進捗評価や絞込調査等においては、例えば、特許文献1に記載の簡易定量器具等を用いた簡易分析方法が一般的な方法として採用されている。とりわけ、近年の建設現場等においては、ピクリン酸を発色試薬に用いた吸光光度法によるシアン濃度の簡易分析方法が最も一般的な簡易分析方法として広く採用されており、これにより、シアン濃度測定にかかるコストの低減が図られている。
ピクリン酸を発色試薬に用いた上記の簡易分析方法は、作業現場内で実施可能であり、簡易且つ迅速にシアン濃度の測定ができるため、分析に要する時間と費用を大幅に低減することができる。又、その他の多くのシアンの簡易分析方法が、遊離シアンを対象としていて、シアンを含む錯体等の分析ができないのに対して、ピクリン酸を発色試薬に用いた上記の簡易分析方法によれば、蒸留操作で錯体を遊離シアンにして分析できるため、測定精度も良好である。
簡易分析方法の測定精度を高めるための手段として、例えば、特許文献2に記載の方法と同様に、シアン濃度の測定値のばらつきの一因となる試料水中の硫化物等、測定妨害物質の影響を選択的に除去できるマスキング剤の使用が考えられる。
又、一方で、特許文献3には、測定妨害物質となる硫化物のみを気化させて除去する前処理を行うことによって、測定精度を高めるシアン濃度の測定方法も提案されている。
特開昭48−10104号公報 特開昭51−62088号公報 特開2008−76235号公報
分析化学 Vol.58,No.2 pp.55−71「全シアン及びシアン化物におけるシアン化水素の生成と全シアン分析前処理法の改良」
例えば、建設工事現場における浄化の進捗評価や絞込調査等において、シアン化物を含有する地下水等の試料水を建設現場等でモニタリングする場合等は、簡易分析方法の採用によるコスト低減のメリットを維持したまま、より精度の高い測定値を得ることができるシアン濃度測定方法が求められている。
特許文献2に記載のマスキング剤の使用については、公定方法を前提とした場合における、好ましいマスキング剤の選択については、既に研究が進んでいる(非特許文献1参照)。しかし、現状、一般に広く採用されているピクリン酸試薬を用いた簡易分析方法においては、いかなる種類のマスキング剤を選択するのが最も有効であるのかという点についての知見は未だ見出されていない。
特許文献3に記載の方法は、前処理にかかる時間と設備、或いは器具の負担が大きくなり、本来の趣旨であるコスト低減への寄与が小さくなるため必ずしも個々の建設現場等で好適に採用できる方法ではない。
本発明は、以上の状況に鑑み、特に建設現場等で、広く採用されているピクリン酸試薬を用いた簡易的なシアン測定方法について、公定方法に対するコスト低減のメリットを維持したまま、より精度の高い測定値を得ることができる、シアン濃度測定方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ピクリン酸試薬を用いたシアン濃度の簡易分析方法において、マスキング剤を、特定の組成からなる混合物、具体的には、硫酸銅と、塩化スズの混合物に限定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) シアン濃度測定方法であって、試料水にマスキング剤を添加する工程と、前記マスキング剤の添加後の試料水を蒸留して遊離シアンを分離回収する工程と、前記遊離シアンを、検定試薬であるピクリン酸カリウムと接触させて有色化合物を形成する工程と、前記有色化合物の吸光度から、前記試料水のシアン濃度を算出する工程と、を備え、前記マスキング剤は、硫酸銅と、塩化スズとの混合物であるシアン濃度測定方法。
(1)の発明によれば、公定分析方法よりも格段に低コストで実施可能な簡易分析方法でありながら、実用上必要十分な程度に高精度でばらつきの小さいシアン濃度の測定結果を得ることができる。
(2) 前記マスキング剤中の、硫酸銅の含有量が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、塩化スズの含有量が0.01質量%以上2.0質量%以下である(1)に記載のシアン濃度測定方法。
(2)の発明によれば、(1)に記載のシアン濃度測定方法の測定精度を更に高めることができる。
(3) 前記マスキング剤の添加量が、前記試料水に対する質量比で5%以上15%以下である(1)又は(2)に記載のシアン濃度測定方法。
(3)の発明によれば、(1)及び(2)の発明の効果の発現を更に促進することができる。
(4) 前記試料水は、硫化物を含有し、該硫化物の前記試料水中の濃度が60mg/L以上200mg/L以下である(1)から(3)のいずれかに記載のシアン濃度測定方法。
(4)の発明によれば、測定妨害物質である硫化物の濃度が、通常想定される範囲内にある一般的なシアン含有地下水の測定に、広く対応可能なシアン濃度測定方法を提供することができる。
(5) 前記硫化物が硫化鉄である(1)から(4)のいずれかに記載のシアン濃度測定方法。
(5)の発明によれば、一般的な建設現場等において、通常、シアン含有地下水に広範に混在することが想定される測定妨害物質である硫化鉄のシアン濃度の測定への負の影響を確実に排除して、(1)から(4)の測定方法の測定精度を、十分に向上させることができる。又、この発明は、とりわけ、処分場や海浜土壌等、通常の地盤よりの硫化鉄等の含有量が相対的に多い環境において有効に実施することができる。
本発明によれば、一般的に広く採用されているピクリン酸カリウム試薬による簡易的なシアン濃度測定方法について、公定方法に対するコスト削減のメリットを維持したまま、より精度の高い測定値を得ることができるシアン濃度測定方法を提供することができる。
本発明のシアン濃度測定方法の一例を示すフローチャートである。 ピクリン酸カリウム試薬を用いた一般的なシアン濃度測定方法に対する硫化鉄の妨害特性を調べるための試験の結果を示すグラフ図である。
以下、本発明の実施態様について説明する。尚、本発明は以下の実施態様に限定されない。
<シアン濃度測定方法>
本発明のシアン濃度測定方法は、公定方法(JIS−K0102)よりも、簡易に実施可能である簡易分析方法であり、例えば、市販の「全シアン検定器(WA−CN (株)共立理化学研究所製)」を用いることによっても実施可能なシアン濃度の測定方法である。図1に示す通り、本発明のシアン濃度測定方法は、マスキング剤を添加する工程ST1、遊離シアンを分離回収する工程ST2、有色化合物を形成する工程ST3、試料水のシアン濃度を算出する工程ST4と、を含んでなるプロセスである。
又、本発明のシアン濃度測定方法は、例えば、建設現場周辺域の地盤中の地下水のシアン濃度を簡易迅速に調べるために用いることができる。又、本発明のシアン濃度測定方法の測定対象水は、シアンを含有する可能性がある水全般であるが、建設現場周辺域の地盤中のシアン汚染地下水等を対象とした場合に、本発明のシアン濃度測定方法はとりわけ好ましく用いることができる。
上記の測定対象水のうち、建設現場周辺域の地盤中の地下水等には、シアン濃度の測定精度を低下させ、測定値のバラツキを拡大させる要因となる物質として硫化物が含有されていることが一般的である。ここで、本明細書においては、このようにシアンを含有する測定対象水中に含まれるシアン以外の混合物質であって、シアン濃度測定に際して測定値の精度の低下やばらつきの拡大等の影響(以下、このような影響をまとめて「負の影響」とも言う)を与える物質全般のことを「測定妨害物質」と言うものとする。
又、本明細書においては、測定妨害物質の測定結果への負の影響を選択的に排除することを目的として測定対象水からなる試料水中に添加される添加剤のことを「マスキング剤」言う。本発明のシアン濃度測定方法は、マスキング剤を本願特有の組成の剤に限定することによって、特に、測定妨害物質たる硫化物、とりわけ一般的に地盤中に広範に含まれる硫化鉄の、シアン濃度の測定精度に対する負の影響を、確実に排除することができる方法である。
又、本明細書における「試料水」とは、シアンを含有する可能性がある水又は水溶液である測定対象水について、本発明の方法によってシアン濃度を測定する際に、それらの測定対象水の一部を採取して測定対象試料としたもののことを言うものとする。
本発明のシアン濃度測定方法は、測定妨害物質の試料水中の濃度が、60mg/L以上200mg/L以下である場合に、十分に高い精度でシアン濃度の測定ができる。試料水の測定妨害物質濃度が60mg/L未満である場合には、そもそもの妨害効果が小さく、測定に際してマスキング剤が必須とはならない。一方、200mg/Lを超える場合には、マスキング剤添加による測定精度の向上効果は、必ずしも十分なものとはならないが、測定妨害物質濃度が200mg/L以下の範囲をカバーできていれば、一般的な土壌中の硫化物濃度の想定範囲内を十分にカバーしており、実用上何ら支障はない。つまり、本発明の、シアン濃度測定方法は、害物質濃度が60mg/L以上200mg/L以下である一般的な場合について、広範且つ好適に用いることができる測定方法である。
又、本発明のシアン濃度測定方法は、上記の妨害物質が、建設現場等における地盤中に含有される硫化物として最も一般的な物質の一つである硫化鉄である場合に、特に、その測定への悪影響を確実に排除しうるものである。よって、建設現場等における周辺土壌の汚染調査等に極めて好ましく用いることができる測定方法である。
[マスキング剤を添加する工程]
本発明の方法においては、試料水からシアン化物を分離捕捉する蒸留工程に先行して、試料水にマスキング剤を添加する工程を行う。本発明のシアン濃度測定方法は、このマスキング剤の組成を、本発明特有の組成に限定した点に特徴がある。
本発明の測定方法に用いるマスキング剤は、硫酸銅と、塩化スズとの混合物である。本発明のマスキング剤中の、硫酸銅の含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%であることが更に好ましい。又、同マスキング剤中の、塩化スズの含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%であることが更に好ましい。又、同マスキング剤中における硫酸銅と塩化スズの含有量比(質量比)は、1:1であることが好ましい。
上記組成を有するマスキング剤は、例えば、硫酸銅(II)と、塩化スズと(II)を、上記配合比の範囲となるような添加量とし、これらを純水中に添加し、振とうし、混淆することによって製造することができる。
上記方法等により製造したマスキング剤を試料水に添加する。マスキング剤の添加量は試料水中におけるマスキング剤の濃度が、試料水に対する質量比で5%以上15%以下の範囲となるように、適宜調整すればよい。マスキング剤の濃度が5%以上であれば、本発明の効果を十分に奏しうることができる。又、マスキング剤の濃度が15%を超えてもそれ以上の効果の向上は望めず経済性が悪くなる点において好ましくない。
上記組成を有するマスキング剤を、上記添加量範囲で、試料水に添加後、必要に応じて試料水を振とうする等の処理を施し、試料水中にマスキング剤を十分に混淆させる。しかる後に、次工程である遊離シアンを分離回収する工程を行う。
尚、試料水中には、上記マスキング剤の他、シアン化合物を蒸留して、遊離シアンとするためには、更に、アミド硫酸、沸騰石等を添加すればよい。例えば試料水50mlに対するアミド硫酸の好ましい添加量は約1g程度である。
[遊離シアンを分離回収する工程]
遊離シアンを分離回収する工程は、例えば蒸留用フラスコ内に採取した試料水を、電熱器等で加熱して沸騰させ、発生した蒸気を遊離シアン捕捉用の試験管内に導き、同試験管内でアルカリ剤を用いて遊離シアンを捕捉することによって行うことができる。
[有色化合物を形成する工程]
有色化合物を形成する工程は、上記の遊離シアンを分離回収する工程において捕捉した遊離シアンを、検定試薬であるピクリン酸カリウムと接触させることによって発色させ、有色(一般には赤褐色)の検定用化合物とする工程である。遊離シアンと検定試薬との接触は、例えば、上記の捕捉用の試験管内に予め検定試薬を入れておき、遊離シアン捕捉後に、所定量の純水を加えて両者を混淆することによって行うことができる。又、この処理によって上記の有色の検定用化合物を得ることができる。
[試料水のシアン濃度を算出する工程]
試料水のシアン濃度を算出する工程は、上記工程で得た検定用化合物の吸光度を測定して、その吸光度から所定の算出式等により、試料水のシアン濃度を算出する工程である。吸光度の測定は、目視或いは既存の測定機器により行うことができる。そのような測定機器の具体例としては、市販されている「デジタルパックテストマルチ」((株)共立理化学研究所製)等をあげることができる。
又、上記の吸光度の測定は、予め用意した吸光度毎の色見本と、発色後の検定化合物の色を目視により比較することによっても行うことができる。これにより、必要十分な精度で試料水中のシアン濃度を求めることができる。尚、色見本との比較の精度を確保するためには、遊離シアンと検定試薬を接触させるための容器中の液の量を一定とすればよい。
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<試験例1>
[硫化鉄によるシアン濃度測定への負の影響の検証]
本発明の測定方法における検定用化合物の吸光度の測定では、油脂類、残留塩素等の酸化性物質や硫化物イオン等の還元性物質により検定用化合物の発色が妨害される場合があることが知られている。実施時に測定対象水となるシアン汚染地下水には、多くの場合、これらの測定妨害物質が含まれている。中でも硫化鉄(II)は、様々な地盤に含まれていることが多い。よって、測定妨害物質として、硫化鉄に着目し、一般的な迅速測定方法であるピクリン酸カリウム試薬を用いた簡易的なシアン濃度測定方法に対する硫化鉄の負の影響を検証するための試験を行った。
この試験では、共立理化学製の全シアン検定器(WA−CN)を用いて、シアン濃度の測定を行った。又、測定は「マスキング剤を添加する工程」を行わない点以外は、上記において説明した本発明のシアン濃度測定方法にしたがって行った。
試料水:測定対象とする試料水については、フェロシアンカリウムK[Fe(CN)]溶液500mlに、測定妨害物質として、粉砕した硫化鉄を各所定量添加し、振とう機で24時間200rpm振とうし、更に、0.45μmメンブランフィルターでろ過した溶液を試験例の試料水とした。この試験例の試料水は、硫化鉄(II)濃度を段階的(0、30、60、120、150、200、400、600mg/L)に設定し、いずれもフェロシアン化カリウム濃度が1.5mg/Lとなるように、調整した。
検定試薬:遊離シアンを捕捉するためのアルカリ剤として、ピクリン酸カリウム((NO)3COK)0.4gを捕捉用の試験管内に予め投入しておいた。
上記各試料水を15分間蒸留し、捕捉された遊離シアンをピクリン酸カリウムとの接触により発色させ、共立理化学製のデジタルパックテストマルチによって吸光度を測定し、シアン濃度を算出した。結果を図2に示す。
図2に示す通り、試料水中の硫化鉄(II)の濃度が60mg/Lまでの範囲にある場合には、シアン濃度測定への負の影響は見られなかったが、120mg/L以上になると全シアン濃度の測定値の低下が見られ、硫化鉄(II)の濃度が上がるにつれ、マイナス側にシアン濃度が大きく低下するようになった。このように、硫化鉄(II)はシアンの迅速分析によるシアン濃度測定に対し、負の影響を及ぼすことが確認された。
<試験例2>
以下に詳細を示す試料水について、本発明のシアン濃度の測定方法により、以下に示す実施条件の下でシアン濃度の測定を行った。各実施例、比較例毎にマスキング剤の種類を変えてシアン濃度の測定を行い、シアン濃度測定値への影響を検証した。
試験例2においては、上記試験例1と同じ全シアン検定器を用いて、シアン濃度の測定を行った。この測定は、各試料水の蒸留前に「マスキング剤を添加する工程」を行う点以外の実施条件については上記試験例1と同一とし、上記において説明した本発明のシアン濃度測定方法に従って実施した。
試料水:各実施例、比較例毎に、下記の通り、いずれもシアン濃度が1.5mg/Lとなるように調整した試料水1、試料水2、試料水0を、それぞれ50ml使用した。
試料水1:濃度1.5mg/Lのフェロシアンカリウム(K[Fe(CN)])溶液500mlに、測定妨害物質として、粉砕した硫化鉄75mgを添加し、振とう機で24時間200rpmで振とうし、更に、0.45μmメンブランフィルターでろ過した溶液を試料水1とした。
試料水2:濃度1.5mg/Lのフェロシアンカリウム(K[Fe(CN)])溶液500mlに、測定妨害物質として、硫化鉄(II)2gと64%硫酸10mlより発生させた硫化水素をフェロシアン化カリウム溶液中に直接送り込み、振とう機で24時間200rpmで振とうし、更に、0.45μmメンブランフィルターでろ過した溶液を試料水2とした。
試料水0:測定妨害物質を添加しなかったこと以外は上記と同組成の溶液を試料水0とした。
マスキング剤:各実施例、比較例毎に、下記のマスキング剤1〜3をそれぞれ使用した。実施例1においては、上記試料水1及び2に、マスキング剤1−1及び1−2を各2.5mlずつ添加した。比較例1においては、上記試料水1及び2に、マスキング剤2を5ml添加した。比較例2においては、上記試料水1及び2に、マスキング剤3を5ml添加した。比較例3においては、の上記試料水1及び2にはマスキング剤を添加しなかった。
マスキング剤1−1:硫酸銅(CuSO(II))0.2g、濃度1mol/Lの塩酸2.5ml、純水100mlの混合水溶液。
マスキング剤1−2:塩化スズ(SnCl)0.2g、濃度1mol/Lの塩酸2.5ml、純水100mlの混合水溶液。
マスキング剤2:塩化マグネシウム(MgCl)0.2g、濃度1mol/Lの硫酸2.5ml、純水100mlの混合水溶液。
マスキング剤3:塩化銅(CuCl(I))0.2g、濃度1mol/Lの塩酸2.5ml、純水100mlの混合水溶液。
検定試薬:上記試験例1と同様、同量のピクリン酸カリウムを同様に用いた。
上記マスキング剤を添加混淆後(比較例3はマスキング剤未添加)の各試料水を15分間蒸留し、アルカリ剤によって捕捉された遊離シアンをピクリン酸カリウムとの接触により発色させ、共立理化学製のデジタルパックテストマルチによって吸光度を測定し、シアン濃度を算出した。結果を表1に示す。尚、蒸留時には、アミド硫酸を1g添加してシアン化物の遊離を促進させた。
Figure 2015001374
比較例3の結果より、マスキング剤を添加しない場合は、妨害物質を含有しない試料水0については、実際のシアン濃度が1.5mg/Lであるのに対して、極めて誤差の小さい良好な測定値を得ることができているが、妨害物質を含有する試料水1及び2についての測定値は、実際のシアン濃度から乖離している。これは試験例1の結果からも分かる通り、妨害物質のシアン濃度測定への負の影響の結果であると考えられる。
比較例2の結果より、マスキング剤3(塩化銅)を添加した場合は、試料水0についての測定結果の値が、実際のシアン濃度である1.5mg/Lから大きく乖離している。これは、マスキング剤3自体がシアン分析に負の影響を与えるものであるためであると考えられる。
比較例1の結果より、マスキング剤2(塩化マグネシウム)を添加した場合は、実際のシアン濃度が1.5mg/Lである試料水0についての測定結果の値が、実際のシアン濃度である1.5mg/Lから乖離している。又、妨害物質が存在する状態での測定値も実際の値からの乖離が見られる。
実施例の結果より、マスキング剤1−1及びマスキング剤1−2を添加した場合には、測定妨害物質の有無にかかわらず、実際のシアン濃度との乖離が極めて小さい良好な測定値を得ることができた。特に、測定妨害物質が硫化鉄である場合には、その有無にかかわらず、実際のシアン濃度と一致するという極めて良好な測定値を得ることができた。
<試験例3>
次に、本発明のシアン濃度測定方法と、公定分析方法とで、それぞれ地盤中から採取した実シアン汚染地下水のシアン濃度を測定し、その測定結果を比較した。
本発明のシアン濃度測定方法としては、上記試験例2における実施例の測定方法を採用した。公定分析方法としては、ピリジン−ピラゾロン吸光光度法(JIS K 0102:2009 38.2)を採用した。又、従来方法との比較を検証するための比較例として、マスキング剤を添加しない上記試験例2における比較例3の測定方法を併せて採用した。それぞれの方法で、シアン濃度を分析した結果を表2に示す。
Figure 2015001374
表2の測定結果値より、従来法(比較例3)と公定分析方法(参考例)とのそれぞれの測定値の間の相関係数rを算出すると、r=0.6314(R=0.3987)であり、正の相関は認められるが、高い相関は得られなかった。一方、本発明方法(実施例)と公定分析方法とのそれぞれの測定値の間の相関係数は、r=0.9408(R=0.8851)であり、高い相関が認められた。以上より、本発明のシアン濃度測定方法は、従来方法よりも、より相関の高い分析が可能であることが確認された。
ST1 マスキング剤を添加する工程
ST2 遊離シアンを分離回収する工程
ST3 有色化合物を形成する工程
ST4 試料水のシアン濃度を算出する工程

Claims (5)

  1. シアン濃度測定方法であって、
    試料水にマスキング剤を添加する工程と、
    前記マスキング剤の添加後の試料水を蒸留して遊離シアンを分離回収する工程と、
    前記遊離シアンを、検定試薬であるピクリン酸カリウムと接触させて有色化合物を形成する工程と、
    前記有色化合物の吸光度から、前記試料水のシアン濃度を算出する工程と、を備え、
    前記マスキング剤は、硫酸銅と、塩化スズとの混合物であるシアン濃度測定方法。
  2. 前記マスキング剤中の、硫酸銅の含有量が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、塩化スズの含有量が0.01質量%以上2.0質量%以下である請求項1に記載のシアン濃度測定方法。
  3. 前記マスキング剤の添加量が、前記試料水に対する質量比で5%以上15%以下である請求項1又は2に記載のシアン濃度測定方法。
  4. 前記試料水は、硫化物を含有し、該硫化物の前記試料水中の濃度が、60mg/L以上200mg/L以下である請求項1から3のいずれかに記載のシアン濃度測定方法。
  5. 前記硫化物が硫化鉄である請求項1から4のいずれかに記載のシアン濃度測定方法。
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