JP2014533272A - 増殖性疾患の治療方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を用いて患者を治療する方法であって、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤による治療に対する耐性を、間欠的投薬計画に従ってセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を投与することによって抑制する、方法に関する。

Description

概要
本発明は、BRAF阻害剤による治療に対する耐性を抑制する方法に関する。
背景
増殖性疾患にキナーゼが関与することは、よく知られている。例えば、腫瘍発生に関与するキナーゼには、受容体チロシンキナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼ、Rafキナーゼなどがある。これらのキナーゼは、多くの細胞機能、例えば増殖、分化および生存に影響を及ぼし調節するシグナル伝達経路において重要な役割を果たす。
増殖性疾患の治療のための治療法の開発は、依然として大きな課題となっている。増殖および生存の基本的メカニズム、治療薬に対する応答、および突然変異しそのような治療薬に対して抵抗性または耐性となる能力に関する癌細胞間における多くのバリエーションを特に考慮した、改善された治療法が継続的に必要とされている。
Rafキナーゼは、Ras−Raf−MEK1−ERKシグナル伝達分子を含む分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の一部である。Rafには3種の異なるアイソフォーム、A−Raf、B−RafおよびC−Rafがあり、それらは、その上流調節因子Rasと相互作用する能力によって区別される。Ras遺伝子の1つの活性化突然変異は、すべての腫瘍の約20%に見られ、Ras/Raf/MEK/ERK経路は全腫瘍の約30%で活性化される(Bosら、Cancer Res.49:4682-4689、1989; Hoshinoら、Oncogene 18:813-822、1999)。B−Rafのキナーゼドメインにおける活性化突然変異は、黒色腫の約66%、結腸癌の12%および肝臓癌の14%で起こる(Daviesら、Nature 417:949-954、2002、Yuenら; Cancer Research 62:6451-6455、2002; Broseら、Cancer Research 62:6997-7000、2002)。
小分子RAF阻害剤、例えばベムラフェニブは、後期臨床試験での患者の腫瘍退縮および生存の延長によって証明されるように、BRAFV600Eが黒色腫における増殖および生存の重要な推進要因であるという概念実証を行ってきた。残念なことに、RAF阻害剤に対する耐性が急速に生じると、腫瘍応答は長続きしない可能性がある。
式IIのBRAF阻害剤の連続投薬と間欠的投薬との比較。図1は、間欠的投薬によって耐性細胞の増殖優位性を奪うことが、BRAF阻害剤に対する耐性の発現を遅らせるまたは防止することを示している。
詳細な説明
本発明は、Rafキナーゼ耐性腫瘍細胞がRafキナーゼ阻害剤に対して感受性である腫瘍細胞よりも「よりフィットしていない」状態であり、Rafキナーゼ阻害剤の非存在下で感受性細胞よりも選択的な欠点を有するという発見に基づいている。したがって、本発明によれば、Rafキナーゼ阻害剤による治療に対する耐性は、Rafキナーゼ阻害剤を間欠的投薬計画に従って投与することによって抑制される。
治療に対する耐性を抑制することは、Rafキナーゼ阻害剤による治療に対する耐性の発現を遅らせるまたは防止することを意味する。
本出願においては、間欠的投薬計画とは、B−Rafキナーゼ阻害剤が一定の期間投与された後に、B−Rafキナーゼ阻害剤による治療が行われない期間が続くことを意味する。例えば、Rafキナーゼ阻害剤が4週間にわたって毎日投与された後、治療を行わない2週間が続き、患者がRafキナーゼ阻害剤による治療を受けている間このサイクルが繰り返される。
BRAF阻害剤および増殖性疾患を治療するためのそれらの使用は、当技術分野で知られている。
ベムラフェニブ(PLX4032)は、腫瘍がBRAF V600E突然変異を発現する黒色腫を持った患者の治療のためにFDAによって承認されたBRAF阻害剤である。ベムラフェニブは以下の化学構造を有する。
Figure 2014533272
MAPK経路において特定のキナーゼを阻害する別の種類の化合物は、ベンゾイミダゾリルピリジルエーテルである。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,482,367号は、式IのB−RAFキナーゼ阻害剤を開示している。
Figure 2014533272
MAPK経路において特定のキナーゼを阻害する別の種類の化合物は、ピラゾールピリミジンである。参照によってその全体が本明細書に組み込まれるWO2011/025927は、式IIの化合物を、特にBRAFV600E突然変異を有するBRAFキナーゼ阻害剤として開示している。
Figure 2014533272
本方法において、BRAF阻害剤は、好ましくは、式IIの化合物である。
BRAF阻害剤に対する耐性の出現を測定するために設計された初期継代原発性ヒト黒色腫異種移植片モデルにおいて、臨床的に適切な用量での長期連続投薬レジメンに従ったBRAF阻害剤による異種移植片の治療は、4〜6週間の間に耐性腫瘍の出現をもたらすことを我々は立証している。個々の腫瘍内の薬力学的(PD)分析では、感受性腫瘍におけるよりも抑制の程度と持続時間が少ないが、RAF−MEK−ERK経路は依然として、耐性腫瘍において抑制されることが示された。さらに、経路阻害および回復の動態は、各耐性腫瘍間で異なっている。生化学的分析は、セリン/スレオニンキナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼへのネガティブフィードバックループの調節が、耐性およびBRAF V600E発現の上方制御に関与できることを示す。腫瘍応答の薬理学的評価は、腫瘍細胞集団および耐性の進化への洞察を提供した。耐性腫瘍を持つマウスに投与する薬物の用量を増加させると、有意だが一過性の腫瘍応答をもたらし、その後に腫瘍の進行が続く。PDデータと併せると、腫瘍細胞の不均一性は非常に大きく、腫瘍は薬物を投与することによって適用される選択圧に急速に適応することができると結論するのが妥当である。この結論のさらなる裏付けが、耐性腫瘍を移植したマウスからの薬物治療を中止することによって得られた。投薬を中止すると、腫瘍は最初に数日から数週間退縮した後、再増殖した。これらのデータは、選択圧下において腫瘍細胞集団内で生じる適応は、薬物の非存在下では細胞がよりフィットしない状態を作り出すことを示している。
すべての耐性腫瘍は、感受性腫瘍と比較して、BRAF阻害剤化合物の存在下におけるp−ERKのレベルがより高く、投与後の回復速度がより速い。回復に関する動態は、耐性腫瘍間で異なる。BRAF耐性腫瘍は、増殖が薬物の存在に左右され、薬物を除去すると、腫瘍が退縮する。耐性細胞は、化合物の非存在下では感受性細胞に比べてフィットしていない。本発明は、この発見を利用して、間欠的投薬計画に従ってBRAF阻害剤を投与することによって、BRAF阻害剤による治療に対する耐性を抑制する。
したがって、本発明は、増殖性疾患を治療する方法であって、間欠的投薬計画に従ってBRAFキナーゼ阻害剤を投与することによって、BRAFキナーゼ阻害剤による治療に対する耐性を抑制するステップを含む、方法を含む。
具体的には、本発明は、BRAFキナーゼの突然変異を特徴とする増殖性疾患を治療する方法であって、間欠的投薬計画に従って式II
Figure 2014533272
のBRAF阻害剤を投与することによって、式IIのBRAF阻害剤による治療に対する耐性を抑制するステップを含む、方法を含む。
好ましい実施形態において、本発明はさらに、BRAFキナーゼの突然変異を特徴とする増殖性疾患を治療する方法であって、間欠的投薬計画に従ってBRAF阻害剤を投与することによって、BRAF阻害剤による治療に対する耐性を抑制するステップを含む、方法に関する。
本発明のこの態様は、さらに、BRAF突然変異が、BRAFV600EなどのV600突然変異である方法に関する。
本発明の方法によって治療される増殖性疾患としては、これらに限定されないが、癌、例えば、膀胱癌、乳癌、脳癌、頭頸部癌、肝臓癌、胆管癌、細胞腫、急性および慢性リンパ性白血病、急性および慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、結腸直腸癌、胃癌、消化管間質癌、神経膠腫、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患、神経内分泌癌、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫および甲状腺癌、例えば甲状腺乳頭癌が挙げられる。他の増殖性疾患としては、肥満細胞白血病、胚細胞腫瘍、小細胞肺癌、消化管間質腫瘍、神経芽細胞腫および骨肉腫が挙げられる。
より詳細には、本発明の方法によって治療される増殖性疾患は、BRAFV600EなどのV600突然変異を特徴とする黒色腫、またはBRAFV600EなどのV600突然変異を特徴とする結腸直腸癌である。
重要な態様では、間欠的投薬計画は、BRAF阻害剤を4週間投与した後に治療を行わない2週間が続き、患者がBRAF阻害剤による治療を受けている間または耐性が現れるまでこのサイクルを繰り返すことを含む。しかしながら、追加の間欠的投薬計画には、例えば、1週間投薬1週間休薬、2週間投薬1または2週間休薬、3週間投薬1、2または3週間休薬、4週間投薬1、2、3または4週間休薬、特に、4週間投薬1週間休薬または4週間投薬2週間休薬、5週間投薬1、2、3、4または5週間休薬、6週間投薬1、2、3、4、5または6週間休薬などのサイクルが含まれる。
本発明は、BRAF阻害剤の使用であって、前記BRAF阻害剤を間欠的投薬計画に従って投与することによる増殖性疾患の治療のための薬剤を調製するための、使用をさらに含む。具体的には、式IIのBRAF阻害剤の使用であって、式IIのBRAF阻害剤を間欠的投薬計画に従って投与することによる増殖性疾患の治療のための薬剤を調製するための、使用。
以下の実施例は、本発明を例示する。
Hmex1906原発性ヒト黒色腫腫瘍をヌードマウスに継代3代目で移植する。移植された腫瘍が200〜400mmに達するまでマウスをモニターした。一旦このサイズに達したら、マウスに5mg/kgのRaf阻害剤(式IIの化合物)を一日2回4週間投与する。いくつかのマウスには治療を継続し、その他は間欠的治療計画(4週間の治療と2週間の休薬期間)を施した。
結果を図1に示す。耐性は、式IIの化合物を連続投与されたすべてのマウスにおいて出現したが、間欠的投薬計画の対象になったマウスにおいて耐性の証拠はない。

Claims (5)

  1. BRAFキナーゼの突然変異を特徴とする増殖性疾患を治療する方法であって、間欠的投薬計画に従って式II
    Figure 2014533272
    のBRAF阻害剤を投与することによって、式IIのBRAF阻害剤による治療に対する耐性を抑制するステップを含む、方法。
  2. BRAF突然変異がV600突然変異である、請求項1に記載の方法。
  3. 増殖性疾患が、V600突然変異を特徴とする黒色腫、またはV600突然変異を特徴とする結腸直腸癌である、請求項1に記載の方法。
  4. 増殖性疾患が、BRAFV600Eを特徴とする黒色腫、またはBRAFV600Eを特徴とする結腸直腸癌である、請求項1に記載の方法。
  5. 式II
    Figure 2014533272
    のBRAF阻害剤の使用であって、前記BRAF阻害剤を間欠的投薬計画に従って投与することによる増殖性疾患の治療のための薬剤を調製するための、使用。
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