本発明は、溶菌特性を再獲得する能力が限定されている遺伝子組換えファージに関する。
本発明者らは、ファージの遺伝子組換えを重点的に扱った。驚くべきことに、本発明者らは、組み込まれたファージのウィルス性配列すべてを欠失させる場合、感染された細菌の生存力が極めて損なわれることになるため、すべてを欠失させることは不可能であることを示した。詳細には、本発明者らは、ral遺伝子及びN遺伝子のコード配列を含むDNA断片を欠失させれば、宿主細胞の死滅につながることを示した(実施例参照)。ral遺伝子及びN遺伝子が溶原状態に関係していることは知られておらず、N遺伝子は溶菌成長に不可欠なものとして記述されているのみであるため、この結果は驚くべきものであった。逆に溶原状態では、CI又はC2と名付けられたファージのリプレッサーが、N及びralの発現を抑制する。
このように本発明は、
発現系が挿入され、
Int遺伝子、Xis遺伝子、R遺伝子、S遺伝子、Q遺伝子及びRz遺伝子のうち少なくとも1つの遺伝子が不活性化されている、
遺伝子組換えファージに関する。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Int遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Xis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子及びR遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子及びQ遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子及びQ遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子及びR遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Xis遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Xis遺伝子及びR遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子及びQ遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Q遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Q遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Q遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Int遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Xis遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Q遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Xis遺伝子及びQ遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Int遺伝子及びQ遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Int遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Xis遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子、Xis遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子、Xis遺伝子及びR遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Int遺伝子、R遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Xis遺伝子及びRz遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Rz遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、Rz遺伝子及びS遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、Rz遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、S遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Rz遺伝子、S遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、Rz遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、S遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Rz遺伝子、S遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、R遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、Rz遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、Q遺伝子、S遺伝子、Int遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Rz遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Q遺伝子、Rz遺伝子及びXis遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Q遺伝子、Rz遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Q遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、Q遺伝子、Rz遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、R遺伝子、Q遺伝子、Rz遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
一実施形態では、遺伝子組換えファージは発現系を含み、S遺伝子、R遺伝子、Q遺伝子、Rz遺伝子、Xis遺伝子及びInt遺伝子は不活性化されている。
本発明に使用されうるファージの例は、ラムダ(λ)ファージ、ラムダ様ファージ及びラムダ状ファージを含むが、これらに限定されるものではない。大腸菌ファージラムダとしても知られるラムダファージは、大腸菌(Escherichia coli)に感染するウィルスである。ラムダは、テンペレートバクテリオファージである。ラムダ様ファージは、非収縮性の長い尾を特徴とするバクテリオファージと古細菌ウィルスの系統群を成す。ラムダ状ファージは、ラムダファージの近縁生物である。これらのファージのほとんどは大腸菌で成長するが、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のような他の宿主細胞を由来とするものもわずかにある。これらのファージは、ラムダと同じ遺伝子配列を有しうる。
本発明において用いられうるラムダ様ファージ及びラムダ状ファージの例は、大腸菌ファージ434、phi80、phi81、HK97、P21及びP22を含むが、これらに限定されるものではない。
一実施形態では、ファージはラムダ(腸内細菌ファージラムダ(Enterobacteria phage lambda)、受託番号NC_001416)である。このラムダファージのゲノム構成は以下の表1で示される。
本発明では、ラムダファージの配列内における残基の位置は、NC_001416に関する。
他の実施形態では、ファージはラムダDE3(受託番号EU078592)である。ラムダDE3ファージは修飾されたラムダファージD69であり、lacUV5プロモーターの制御下でT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を有する。ラムダDE3の配列によって保有される遺伝子とその位置のリストは、以下の表2で示される。
本発明では、ラムダDE3ファージの配列内における残基の位置は、EU078592に関する。
「発現系」とは、本明細書で使用するとき、系を転写するための追加的な断片に作動可能に結合された核酸配列をコードする断片からなる直鎖DNA分子又は環状DNA分子を指す。
この追加的な断片には、プロモーター及び終止コドン配列が含まれる。発現系は、1つ又は複数の複製開始点、1つ又は複数の選択マーカー及びリボソーム結合位置をコードする配列をさらに含みうる。
「作動可能に結合された」とは、例えば一旦プロモーターで転写が始まると、コードされた断片を通って終止コドンまで転写が続くといったように、断片が本来期待される形で機能するように配置されていることを意味する。
本発明で意味する「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼを結合させ、転写を開始させる発現制御要素である。
本発明の一実施形態では、核酸配列は「強力な」プロモーターの制御下にある。強力なプロモーターとは、そのプロモーターの配列が一方ではRNAポリメラーゼ、通常は天然型の対応するRNAポリメラーゼと結合する親和性が高いこと、他方ではそのRNAポリメラーゼによるmRNA形成の割合によって特徴づけられる。
好ましい実施形態では、核酸配列は「誘導性プロモーター」の制御下にある。「誘導性プロモーター」とは、外因によって調節されうるプロモーターであり、外因とは、例えば誘導質(「誘導因子)」ともいう)分子の存在やリプレッサー分子の不存在、又は温度、モル浸透圧濃度あるいはpH値の上下のような物理的要素である。Makridesらによって、様々なプロモーターとそれぞれのプロモーターに対応する誘導原理が検討された(Microbiological Reviews,1996,(60)3:512−538)。本発明において使用されうる誘導性プロモーターの例には、tacプロモーター又はtrcプロモーター、lacプロモーター又はlacUV5プロモーター(すべてラクトース又はそのアナログIPTG(イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド)によって誘導可能)、厳密に調節可能なaraBADプロモーター(PBAD,Guzman et al.,1995,アラビノースにより誘導可能)、trpプロモーター(β−インドールアクリル酸の追加又はトリプトファンの欠乏により誘導可能、トリプトファンの追加によって抑制可能)、ラムダプロモーターpL(λ)(温度上昇により誘導)、phoAプロモーター(リン酸塩の欠乏により誘導可能)、PprpB(プロピオン酸を用いて誘導)や組換えタンパク質の発現に好適なその他のプロモーターが含まれ、これらはすべて大腸菌RNAポリメラーゼを使用するが、これらに限定されるものではない。
誘導性プロモーターの中には、「漏出性の」発現行動を示すものがある。こうしたプロモーター(いわゆる「漏出性プロモーター」)は、原則として誘導性であるが、そうであるにもかかわらず外部から誘導されることなく基礎発現をも示す。非誘導条件下で漏出性発現を示す誘導性プロモーターは、構成的プロモーターと類似に行動しうる(すなわち、これらは安定的かつ継続的に活性である、あるいは特定の培養条件の結果として活性化又は促進されうる)。漏出性プロモーターは、継続して行われる培養プロセスに特に有用でありうる。漏出性プロモーターの例は、T7プロモーター及びtrpプロモーターである。
本発明の一実施形態では、プロモーターは構成的、すなわち、一方では誘導を必要とすることなく、また他方では抑制される可能性もなく、発現を制御するプロモーターでありうる。したがって、ある程度のレベルで継続的かつ安定的な発現が起こる。一例として、強力な構成的HCDプロモーター(Poo et al.,Biotechnology Letters,2002,24:1185−1189,Jeong et al.,Protein expression and purification,2004,36:150−156)が構成的な発現に適用されうる。
一実施形態では、発現系は、目的の生体分子の発現を誘導するタンパク質をコードする核酸配列を含む。有利には、目的の生体分子の発現は、例えば選択下にあるような特別な条件下で誘導される。
こうした核酸配列の例には、T7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子であるT7遺伝子1が含まれるが、これに限定されるものではない。この場合においては、T7RNAポリメラーゼの発現が、T7プロモーターの制御下に置かれた目的の生体分子の発現を誘導する。
発現系は、T7発現系であることが好ましい。T7発現系は、本明細書に援用する米国特許第4,952,496号に記載された。T7発現系はT7ファージに由来するDNA断片を含み、T7RNAポリメラーゼの全コード配列(すなわちT7遺伝子1)を含有している。T7遺伝子1の本来の活性プロモーターはいずれも除去され、コード配列の前に誘導性のlacUV5プロモーターが挿入された。lacUV5プロモーターは、IPTGを培地に追加することにより誘導される。
他の実施形態によると、発現系は目的の生体分子の核酸配列を含む。
目的の生体分子に関しては、制限はない。これは原則として、いかなるアミノ酸配列であっても、例えばDNAやRNAのような核酸配列であってもよい。
アミノ酸配列の例には、例えば工業で使用される生体分子又は治療で使用される生体分子など、工業規模で産生されるポリペプチド、タンパク質又はペプチドが含まれる。
本発明の方法により産生することができる生体分子の例は、酵素、調節タンパク質、受容体、ペプチド、例えばペプチドホルモン、サイトカイン、膜タンパク質又は輸送タンパク質があるが、これらに限定されるものではない。
目的の生体分子は、ワクチン接種に用いられる抗原、ワクチン、抗原結合タンパク質、免疫刺激タンパク質、アレルゲン、全長の抗体又は抗体断片あるいは抗体の誘導体であってもよい。抗体の誘導体は、単一鎖の抗体、(scFv)、Fab断片、Fv断片、シングルドメイン抗体(VH断片又はVL断片)、ラクダシングルドメイン抗体のようなドメイン抗体(VHH、ナノボディ)といった群から、又は、例えばAndersen及びReilly(Current Opinion in Biotechnology,2004,15:456−462)あるいはHolliger及びHudson(Nature Biotechnology, 2005(23)9:1126−1136)に記載のあるようなその他の抗体型から選択されうる。
本発明における目的の生体分子は、例えば被膜タンパク質、コアタンパク質、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼなどのタンパク質(ウィルス性の抗原)によって例示することもでき、例えばB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、I−HV、インフルエンザなどの病原ウィルスのゲノム、血小板由来増殖因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子(IGF)などの増殖因子のゲノム、腫瘍壊死因子、インターフェロン、インターロイキンなどのサイトカインのゲノム、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、トロンボポエチンなどの造血因子のゲノム、黄体化ホルモン放出ホルモン(LB−RH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体化ホルモン(LU)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、セルレイン、モチリンなどのペプチドホルモンのゲノム、エンケファリン、エンドルフィン、ダイノルフィン、キョートルフィンなどの鎮痛ペプチド、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、アスパラギナーゼ、カリクレインなどの酵素のゲノム、ボンベシン、ニューロテンシン、ブラジキニン、サブスタンスP、アルツハイマーのアミロイドペプチド(AD)、SOD1、プレセニリン1及び2、レニン、シヌクレイン、アミロイドA、アミロイドP、アクチビン、抗HER−2、ボンベシン、エンケファリナーゼ、プロテアーゼインヒビター、治療用酵素、D1−アンチトリプシン、哺乳動物トリプシンインヒビター、哺乳動物膵臓トリプシンインヒビター、カルシトニン、心臓肥大因子、カルジオトロフィン(カルジオトロフィン−1など)、CDタンパク質(CD−3、CD−4、CD−8及びCD−19など)、CFTR、CTNF、デオキシリボヌクレアーゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、サイトカイン、トランスサイレチン、アミリン、リポタンパク、リンホカイン、リゾチーム、成長ホルモン(ヒト成長ホルモンを含む)、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、増殖因子、脳由来神経栄養因子、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(D FGF及びD FGFなど)、インスリン様成長因子I及びII、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、神経成長因子(NGF−Dなど)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、成長ホルモン又は成長因子受容体、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(TGF−D、TGF−D1、TGF−D2、TGF−D3、TGF−D4、TGF−D5など)、神経栄養因子(ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、ニューロトロフィン5又はニューロトロフィン6)、ゲルゾリン、グルカゴン、カリクレイン、ミュラー管抑制因子、神経栄養因子、p53、プロテインA又はD、プロレラキシン、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、リウマトイド因子、ロドプシン、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、インヒビン、インスリン、インスリン鎖、インスリンA鎖、インスリンD鎖、インスリン受容体、プロインスリン、黄体化ホルモン、インテグリン、インターロイキン(ILs)(IL−1〜IL10、IL−12、IL−13など)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、フィブリリン、卵胞刺激ホルモン、凝固因子(第VIII因子、第IX因子、組織因子及びフォンヴィレブランド因子など)、抗凝固因子(プロテインC、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性物質など)、プラスミノーゲン活性化因子(ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子又はウロキナーゼ)、トロンビン、腫瘍壊死因子D又はD、D−ケト酸デヒドロゲナーゼ、アドレシン、骨形成タンパク質(BMPs)、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSFs)(M−CSF、GM−CSF及びG−CSF)、崩壊促進因子、ホーミング受容体、インターフェロン(インターフェロンα、インターフェロンγ及びインターフェロンβなど)、ケラチン、骨誘導因子、PRNP、調節タンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、T細胞受容体などのペプチド性神経伝達物質のゲノム、gpl20(HIb)イムノトキシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、精嚢外分泌腺タンパク質、D2−ミクログロブリン、PrP、プロカルシトニン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン6、アタキシン7、ハンチグチン、アンドロゲン受容体、CREB結合タンパク質、gpl20、p300、CREB、API、ras、NFAT、jun、fos、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症関連タンパク質、微生物タンパク質(例えばマルトース結合タンパク質、ABCトランスポーター、グルタチオンSトランスフェラーゼ、チオレドキシン、D−ラクタマーゼ)、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、リボヌクレアーゼ、カタラーゼ、ウリカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、トリプシン、パパイン、アルカリホスファターゼ、β−グルクロニダーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ又はバトロキソビンなどの酵素、オピオイド、例えば、エンドルフィン、エンケファリン又は非天然オピオイド、ホルモン又はニューロペプチド、例えば、カルシトニン、グルカゴン、ガストリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コレシストキニン、黄体化ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、コルチコトロピン放出因子、バソプレッシン、オキシトシン、抗利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、リラキシン、プロラクチン、ペプチドYY、ニューロペプチドY、膵臓ポリペプチド(pancreastic polypeptide)、レプチン、CART(コカイン・アンフェタミン調節転写産物)、CART関連ペプチド、ペリリピン、MC−4などのメラノコルチン(メラニン細胞刺激ホルモン)、メラニン凝集ホルモン、ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリン、エンドセリン、セクレチン、アミリン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、ボンベシン、ボンベシン様ペプチド、チモシン、ヘパリン結合タンパク質、可溶性CD4、視床下部放出因子及びメラノトニン又はこれらの機能を持つ類縁体のゲノムにコードされうる。本発明の他の実施形態では、標的タンパク質は、プロセシング酵素、例えば、プロテアーゼ(例えばエンテロキナーゼ、 カスパーゼトリプシン様セリンプロテアーゼ)、リパーゼ、ホスファターゼ、 グリコシルヒドロラーゼ(例えばマンノシダーゼ、キシロシダーゼ、フコシダーゼ)、キナーゼ、モノ又はジオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、トランスグルタミナーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミダーゼ、エステラーゼ、及びホスファターゼであってもよい。
このような哺乳動物ポリペプチドに好ましい由来には、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、オオカミ及び齧歯動物が含まれ、ヒトタンパク質を有するものが特に好ましい。
本発明の目的の生体分子は、上述のタンパク質のバリアントをも包含する。これらのバリアントは、例えば上述のタンパク質と同様の活性を有し、上述のタンパク質のアミノ酸配列において、1つ又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。このようなタンパク質は、上述のタンパク質と同様の活性を有し、上述のタンパク質のアミノ酸配列において、1つ又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質によって例示することができる。欠失、置換、挿入及び付加から選択される2つ又はそれ以上の異なる修飾が同時に行われうる。
また、本発明の目的の生体分子は、上述のタンパク質の「部分ペプチド」を包含する。タンパク質の部分ペプチドは、上述のタンパク質のアミノ酸配列の一部が途切れなく続いているアミノ酸配列を有する部分ペプチドによって例示することができ、この部分ペプチドは、好ましくは該タンパク質と同じ活性を有する。このような部分ペプチドは、上述のタンパク質のアミノ酸配列の中の少なくとも20、好ましくは少なくとも50のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドによって例示することができる。このポリペプチドは、上述のタンパク質の活性と関連する領域に対応するアミノ酸配列を含んでいることが好ましい。さらに、本発明で用いられる部分ペプチドは、このポリペプチドを修飾することによって得られる部分ペプチドであってもよく、このポリペプチドでは、1つ又は複数のアミノ酸残基(例えば約1〜20、より好ましくは約1〜10、さらに好ましくは約1〜5)がアミノ酸配列から欠失している、アミノ酸配列に置換されている、挿入されている及び/又は付加されている。また、本発明で用いられる部分ペプチドは、抗体産生のための抗原として用いることもできる。
本発明の一実施形態では、目的の生体分子は、ヒト成長ホルモン、ヒトインスリン、卵胞刺激ホルモン、第VIII因子、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、αガラクトシダーゼA、α−L−イズロニダーゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ドルナーゼアルファ、組織プラスミノーゲン活性化因子、グルコセレブロシダーゼ、インターフェロン、インスリン様増殖因子1、ウシソマトトロピン、ブタソマトトロピン、ウシキモシン及びB型肝炎ウィルスの外被タンパク質を有する群から選択される。
また、目的の生体分子は、周辺質において環化、糖鎖付加、リン酸化、メチル化、酸化、脱水、タンパク質切断などの翻訳後修飾及び輸送後修飾が行われたポリペプチド又はタンパク質を包含する。
一実施形態において、目的の生体分子は、細胞外媒質中の生体分子(本明細書では「細胞外生体分子」とよぶ)を代謝するための酵素である。一実施形態では、細胞外生体分子は多糖又は脂質を含む。本発明の一実施形態では、多糖は、アルギン酸、ペクチン、セルロース、セロビオース、ラミナリン又はこれらの混合物を含む。本発明の一実施形態では、脂質は、脂肪酸、糖脂質、ベタイン脂質、グリセロ脂質、リン脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、ポリケチド又はこれらの混合物を含む。本発明の一実施形態では、目的の生体分子は、多糖を単糖、オリゴ糖又はその両方に転換する酵素である。
本発明の一実施形態では、目的の生体分子は、脂質を脂肪酸、単糖又はその両方に転換する酵素である。本発明の一実施形態では、単糖又はオリゴ糖は、オリゴアルギン酸、マンヌロネート、グルロネート、マンニトール、a−ケト酸、4−デオキシ−L−エリスロ−ヘキソースウロースウロナート(DEHU)、2−ケト−3−デオキシD−グルコン酸(KDG)、グルコース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクトース、キシロース、アラビノース又はマンノースである。本発明の一実施形態では、脂肪酸は、14:0、trans−14、16:0、16:1n−7、trans−16、16:2n−6、18:0、18:1n−9、18:2n−6、18:3n−6、18:3n−3、18:4n−3、20:0、20:2n−6、20:3n−6、20:4n−3、20:4n−6又は20:5n−3である。
本発明の一実施形態では、目的の生体分子は、細胞外生体分子を化学製品に転換する酵素である。本発明の一実施形態では、この化学製品は、エタノール、ブタノール又はバイオディーゼルである。本発明の一実施形態では、このバイオディーゼルは、脂肪酸、脂肪酸エステル又はテルペノイドである。
「不活性化」という用語は、本明細書で使用するとき、転写段階又は翻訳段階での遺伝子発現の阻害又は抑制を指す。好ましくは、「不活性化」という用語は、転写が抑制されている遺伝子を指す。
本発明によれば、遺伝子の変異又は遺伝子のコード配列内での発現系の挿入を原因として、遺伝子の不活性化が起こりうる。
本発明においては、「変異」という用語は、遺伝子配列における安定的な変化を指す。本発明において遺伝子の不活性化につながりうる変異の例には、点変異、挿入、欠失及び増幅又は遺伝子重複が含まれるが、これらに限定されるものではない。
変異は、欠失であることが好ましい。本明細書で使用するときの「欠失」という用語は、遺伝子の喪失又は欠如、好ましくは遺伝子の完全な喪失又は欠如を意味する。より好ましくは、欠失は、欠失した遺伝子の開始コドンの位置で、又はそれより前の位置で始まり、欠失した遺伝子の終止コドンの位置で、又はそれより後の位置で終わる。
本発明の一実施形態では、S遺伝子は不活性化されている。S遺伝子は、ホリンタンパク質(S105)及びアンチホリンタンパク質(S107)の両方をコードする。ホリンタンパク質が引き金となり、膜に孔が形成される。ホリンは、R遺伝子によってコードされるエンドリシンの放出に必要である。それとは反対に、アンチホリンタンパク質はS105の孔形成を抑制する。一実施形態によれば、S遺伝子は配列番号1の配列を有する。他の実施形態では、S遺伝子の配列は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
S遺伝子は、Sタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する保存的な配列修飾を含みうる。このような保存的修飾には、アミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。修飾は、部位特異的変異誘発やPCRを介した変異誘発などの当技術分野では既知の標準的な技術によって、S遺伝子配列に導入可能である。
アミノ酸の保存的置換は、典型的には、アミノ酸残基を類似の理化学的性質を持つ側鎖を有するアミノ酸残基と置換するものである。Sタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。置換が行われる場合、好ましい置換は保存的修飾である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分岐側鎖を持つアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。このように、Sタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたSタンパク質は、配列番号1の配列でコードされたSタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
「同一性」又は「同一の」という用語は、2つ又はそれ以上のポリペプチドの配列間での関係において用いる場合、ポリペプチド間の配列関連度を指し、2個又はそれ以上のアミノ酸残基の鎖のマッチする数により決定される。「同一性」は、ギャップアラインメント(もしあれば)を伴う2つ又はそれ以上の配列のうちより小さいものの間の完全なマッチの百分率を、特別な数理モデル又はコンピュータープログラム(すなわち「アルゴリズム」)で処理して測るものである。互いに関連するポリペプチドの同一性は、既知の方法により容易に計算可能である。このような方法には、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics 5 and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;and Carillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載の方法が含まれるが、これらに限定されるものではない。同一性を決定するための好ましい方法は、検査される配列の間で最大のマッチを突き止めるように設計されている。同一性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータープログラムに記されている。2つの配列の間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラムの方法には、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.\2,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul et al.,J.MoI.Biol.215,403−410(1990))を含むGCGプログラムパッケージが含まれる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)及びその他の情報源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.,supra)から一般に入手可能である。また、周知のSmith Watermanアルゴリズムも、同一性の決定に用いられうる。
他の実施形態では、R遺伝子は不活性化されている。Rタンパク質はエンドリシンであり、このトランスグリコシラーゼは、宿主細胞の細胞壁のムレインを分解する。一実施形態によれば、R遺伝子は、配列番号2の配列を有している。他の実施形態では、R遺伝子の配列は、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
R遺伝子は、Rタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する上述の保存的な配列修飾を含みうる。Rタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。このように、Rタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたRタンパク質は、配列番号2の配列でコードされたRタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
他の実施形態では、Rz遺伝子は不活性化されている。Rzタンパク質はスパニン(spanin)ファミリーに属する。このタンパク質は、溶菌段階中に宿主細胞の外膜を破壊する作用に関連しうる。一実施形態によれば、Rz遺伝子は、配列番号3の配列を有している。他の実施形態では、Rz遺伝子の配列は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
Rz遺伝子は、Rzタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する上述の保存的な配列修飾を含みうる。Rzタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。このように、Rzタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたRzタンパク質は、配列番号3の配列でコードされたRzタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
他の実施形態では、Q遺伝子は不活性化されている。Qタンパク質は、後期遺伝子制御因子(late gene regulator)であり、Qタンパク質は、ラムダDNAの全ての「後期」領域の転写に用いられるプロモーターからのRNA合成のアンチターミネーターである。一実施形態によれば、Q遺伝子は、配列番号35の配列を有している。他の実施形態では、Q遺伝子の配列は、配列番号35と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
Q遺伝子は、Qタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する上述の保存的な配列修飾を含みうる。Qタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。このように、Qタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたQタンパク質は、配列番号35の配列でコードされたQタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
他の実施形態では、S遺伝子のコード配列を含む核酸断片は欠失している。本発明によれば、この核酸断片はral遺伝子のコード配列(配列番号4)及び/又はN遺伝子のコード配列(配列番号5)を含まない。したがって、一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、残基33930と35582との間の領域は欠失していない。
他の実施形態によれば、ファージがラムダ(DE3)であるとき、残基10813と残基11391との間の領域は欠失していない。
好ましくは、この核酸断片はN遺伝子及びC2遺伝子のコード配列(配列番号6)、並びにC2遺伝子のプロモーターの調節配列を含まない。C2遺伝子の調節配列が欠失されないことを確実にするためには、欠失すべき断片は、後に続く遺伝子、すなわちCro遺伝子の開始コドンATGの位置で始まり得る。
より好ましくは、この核酸断片はral遺伝子、N遺伝子及びC2遺伝子のコード配列(配列番号6)、並びにC2遺伝子のプロモーターの調節配列を含まない。
C2遺伝子はリプレッサータンパク質をコードするが、このことは、溶原状態を維持するのに重要である。この遺伝子は、他の幾つかのラムダ状のファージの配列内ではcIともよばれる。ラムダファージでは、ral遺伝子、N遺伝子及びcI遺伝子のコード配列は、残基33930〜38040又は残基33930〜38022である。ラムダDE3ファージでは、ral遺伝子、N遺伝子、C2遺伝子のコード配列は、残基10813〜12436である。
一実施形態では、この欠失した核酸断片の長さは30kb〜300b、好ましくは5kb〜500bである。他の実施形態では、この欠失した核酸断片の長さは30kb、25kb、20kb、15kb、10kb、9kb、8kb、7kb、6kb、5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、750b、500bである。
ファージがラムダである一実施形態によれば、欠失した核酸断片は、35582位〜45186位の範囲、好ましくは38041位〜45186位又は38023位〜45186位の範囲の位置で始まり、45510位〜48502位の範囲の位置で終わる。
ファージがラムダDE3である他の実施形態によれば、欠失した核酸断片は、11392位〜16764位の範囲、好ましくは12437〜16764位の範囲の位置で始まり、17088位〜42925位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態では、欠失すべき核酸断片は、少なくともS遺伝子及びR遺伝子のコード配列を含む。一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、核酸断片は、35582位〜45186位の範囲、好ましくは38041位〜45186位又は38023位〜45186位の範囲の位置で始まり、45970位〜48502位の範囲の位置で終わる。他の実施形態では、ファージがラムダDE3であるとき、核酸断片は11392位〜16764位の範囲、好ましくは12437位〜16764位の範囲の位置で始まり、17548位〜42925位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態では、欠失すべき核酸断片は、少なくともS遺伝子、R遺伝子及びRz遺伝子のコード配列を含む。一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、核酸断片は、35582位〜45186位の範囲、好ましくは38041位〜45186位又は38023位から45186位の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、断片は、46428位〜46458位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、核酸断片は、46428位〜48502位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、核酸断片は、11392位〜16764位の範囲、好ましくは12437位〜16764位の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、断片は、18006位〜18036位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、核酸断片は、18006位〜24496位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、核酸断片は、18006位〜42925位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともR遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、核酸断片は、35582位〜45493位の範囲、好ましくは38041位又は38022位〜45493位の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、45970位〜48502位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、核酸断片は、11392位〜17071位の範囲、好ましくは12437位〜17071の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、17548位〜24496位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、17548位〜42925位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともR遺伝子及びRz遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、核酸断片は、35582位〜45493位の範囲、好ましくは38041位又は38022位〜45493位の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、46428位〜46458位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、46428位〜48502位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、核酸断片は、11392位〜17071位の範囲、好ましくは12437位〜17071位の範囲の位置で始まる。この実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、18006位〜18330位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、18006位〜24496位の範囲の位置で終わってもよい。やはりこの実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、18006位〜42925位の範囲の位置で終わってもよい。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともQ遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、欠失した核酸断片は、35582位〜43886位の範囲、好ましくは38041位〜43886位又は38023位〜43886位の範囲の位置で始まり、44510位〜48502位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、欠失した核酸断片は、11392位〜15464位の範囲、好ましくは12437位〜15464位の範囲の位置で始まり、16088位〜42925位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともQ遺伝子及びS遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、欠失した核酸断片は、35582位〜43886位の範囲、好ましくは38041位〜43886位又は38023位〜43886位の範囲の位置で始まり、45510位〜48502位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、欠失した核酸断片は、11392位〜15464位の範囲、好ましくは12437位〜15464位の範囲の位置で始まり、17088位〜42925位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともQ遺伝子、S遺伝子及びR遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、欠失した核酸断片は、35582位〜43886位の範囲、好ましくは38041位〜43886位又は38023位〜43886位の範囲の位置で始まり、45970位〜48502位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、欠失した核酸断片は、11392位〜15464位の範囲、好ましくは12437〜15464位の範囲で開始し、17548〜42925位の範囲の位置で終了する。
他の実施形態によれば、欠失すべき核酸断片は、少なくともQ遺伝子、S遺伝子、R遺伝子及びRz遺伝子のコード配列を含む。
一実施形態によれば、ファージがラムダであるとき、欠失した核酸断片は、35582位〜43886位の範囲、好ましくは38041位〜43886位又は38023位〜43886位の範囲の位置で始まり、46428位〜48502位の範囲の位置で終わる。
他の実施形態によれば、ファージがラムダDE3であるとき、欠失した核酸断片は、11392位〜15464位の範囲、好ましくは12437位〜15464位の範囲で始まり、18006位〜42925位の範囲の位置で終わる。
一実施形態では、Int遺伝子は不活性化されている。Intタンパク質は、ファージゲノムの宿主ゲノムへの挿入及び切除を司る。一実施形態によれば、Int遺伝子は、配列番号7の配列を有している。他の実施形態では、Int遺伝子の配列は、配列番号7と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
Int遺伝子は、Intタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する上述の保存的な配列修飾を含みうる。Intタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。このように、Intタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたIntタンパク質は、配列番号7の配列でコードされたIntタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
一実施形態では、Xis遺伝子は不活性化されている。Xisタンパク質はエキシシオナーゼであり、宿主細菌の染色体からラムダファージDNAを切除するプロセスに関与している。一実施形態によれば、Xis遺伝子は、配列番号8の配列を有している。他の実施形態では、Xis遺伝子の配列は、配列番号8と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。
Xis遺伝子は、Xisタンパク質の機能に重大な影響を及ぼさない又はその機能を変更させないアミノ酸の修飾に関連する上述の保存的な配列修飾を含みうる。Xisタンパク質の修飾された配列には、1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれうる。このように、Xisタンパク質配列内の1個又は複数個のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換することができ、修飾されたXisタンパク質は、配列番号8の配列でコードされたXisタンパク質と比較することで、保存された機能(すなわち本明細書で述べる性質)について検査することができる。
一実施形態では、Int遺伝子のコード配列を含む核酸断片は欠失している。一実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失すべき核酸断片は、27812位〜28882位の残基を含む。他の実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失すべき核酸断片は、1位〜27812位の範囲の位置で始まり、28882位〜33929位の範囲の位置で終わる。
一実施形態では、Xis遺伝子のコード配列を含む核酸断片は欠失している。
一実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失すべき欠失した核酸断片は、28860位〜29078位の残基を含む。他の実施形態によれば、ファージはラムダであり、断片は、1位〜28860位の範囲の位置で開始し、29078〜33929位の範囲の位置で終了する。
他の実施形態によれば、ファージはラムダDE3であり、欠失した核酸断片は、5586〜5804位の残基を含む。他の実施形態によれば、欠失すべき断片は、1位〜5586位の範囲の位置で始まり、5804位〜10812位の範囲の位置で終わる。
一実施形態では、Xis遺伝子及びInt遺伝子のコード配列を含む核酸断片は欠失している。一実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失すべき核酸断片は、27812位〜29078位の残基を含む。他の実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失すべき核酸断片は、1位〜27812位の範囲の位置で始まり、29078位〜33929位の範囲の位置で終わる。
本発明の一実施形態では、本発明の遺伝子組換えファージはさらにkil遺伝子に対して不活性化されている。一実施形態によれば、kil遺伝子は、配列番号36の配列を有している。他の実施形態では、kil遺伝子は、配列番号36と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示している。好ましくは、kil遺伝子のコード配列は欠失している。
一実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失した核酸断片は、33187位〜33331位の残基を含む。
他の実施形態によれば、ファージはラムダであり、欠失した核酸断片は、9913位〜10057位の残基を含む。
一実施形態によれば、attP配列は、本発明のファージの配列から欠失していない。attP配列は配列番号9である。attP配列は、ラムダファージの配列では27586位〜27817位にあり、ラムダDE3ファージのゲノム(ファージのゲノムは環状であり、したがってattP配列は継続する)では、42788位〜42925位及び1位〜94位にある。
本発明の一実施形態では、遺伝子組換えファージはattP配列及びC2遺伝子の配列を含む。他の実施形態では、遺伝子組換えファージは、attP配列及びC2遺伝子の配列からなる。
好ましい一実施形態では、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP11は、配列番号10の配列を有し、(DE3)ΔS−C、Δxis−ea10である(DE3は、T7RNAポリメラーゼ遺伝子がint遺伝子の配列内に組み込まれたラムダファージDE3を指す)。この組換えファージP11は、遺伝子S、R、Rz、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP12は、遺伝子Int及びSのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P12の一例は、配列DE3 ΔS、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP13は、遺伝子S、R、Rz、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P13の一例は、配列DE3 ΔS−C、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP14は、遺伝子R及びIntが欠失している配列NC_001416に対応する(P14の一例は、DE3 ΔRである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP15は、遺伝子Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P15の一例は、配列DE3 ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP16は、遺伝子S及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P16の一例は、配列NC_001416ΔS、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP17は、遺伝子R及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P17の一例は、配列NC_001416ΔR、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP18は、遺伝子Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P18の一例は、配列NC_001416Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP19は、遺伝子R、Rz及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P19の一例は、配列DE3 ΔR、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP20は、遺伝子S、Rz及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P20の一例は、配列DE3 ΔS、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP21は、遺伝子Rz、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P21の一例は、配列DE3 ΔRz、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP22は、遺伝子S、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P22の一例は、配列DE3 ΔS、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP23は、遺伝子R、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P23の一例は、配列DE3 ΔR、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP24は、遺伝子S、R及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P24の一例は、配列DE3 ΔS、ΔRである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP25は、遺伝子R、Rz及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P25の一例は、配列NC_001416 ΔR、Δxis−ea10、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP26は、遺伝子S、Rz及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P26の一例は、配列NC_001416 ΔS、Δxis−ea10、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP27は、遺伝子Q、Rz及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P27の一例は、配列NC_001416 ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP28は、遺伝子S、Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P28の一例は、配列NC_001416 ΔS、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP29は、遺伝子R、Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P29の一例は、配列NC_001416 ΔR、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP30は、遺伝子R、S及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P30の一例は、配列NC_001416 ΔS、Δxis−ea10、ΔRである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP31は、遺伝子R、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P31の一例は、配列DE3 ΔR、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP32は、遺伝子S、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P32の一例は、配列DE3 ΔS、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP33は、遺伝子Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P33の一例は、配列DE3 Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP34は、遺伝子S、R、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P34の一例は、配列DE3 ΔS、Δxis−ea10、ΔRである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP35は、遺伝子R、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P35の一例は、配列DE3 ΔR、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP36は、遺伝子S、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P36の一例は、配列DE3 ΔS、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP37は、遺伝子R、Rz、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P37の一例は、配列DE3 ΔR、Δxis−ea10、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP38は、遺伝子S、Rz、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P38の一例は、配列DE3 ΔS、Δxis−ea10、ΔRzである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP39は、遺伝子Rz、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P39の一例は、配列DE3 ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP40は、遺伝子S、R、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P40の一例は、配列DE3 ΔS、ΔR、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP41は、遺伝子S、R、Rz及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P41の一例は、配列DE3 ΔS−Cである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP42は、遺伝子R、Rz、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P42の一例は、配列DE3 ΔR、ΔRz、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP43は、遺伝子S、Rz、Q及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P43の一例は、配列DE3 ΔS、ΔRz、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP44は、遺伝子S、R、Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P44の一例は、配列NC_001416 ΔS、ΔR、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP45は、遺伝子S、R、Rz及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P45の一例は、配列NC_001416 ΔS−C、Δxis−ea10である)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP46は、遺伝子R、Rz、Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P46の一例は、配列NC_001416 ΔR、ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP47は、遺伝子S、Rz、Q及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P47の一例は、配列NC_001416 ΔS、ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP48は、遺伝子S、R、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P48の一例は、配列DE3 ΔS、ΔR、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP49は、遺伝子S、Rz、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P49の一例は、配列DE3 ΔS、ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP50は、遺伝子R、Rz、Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P50の一例は、配列DE3 ΔR、ΔRz、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP51は、遺伝子S、R、Q、Rz及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P51の一例は、配列DE3 ΔS−C、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP52は、遺伝子S、R、Rz、Q、及びXisのコード配列が欠失している配列NC_001416に対応する(P52の一例は、配列NC_001416 ΔS−C、Δxis−ea10、ΔQである)。
他の実施形態によれば、本発明の遺伝子組換えファージの一つであるP53は、遺伝子Q、Xis及びIntのコード配列が欠失している配列NC_001415に対応する(P53の一例は、配列DE3 Δxis−ea10、ΔQである)。
また、本発明は、本発明の組換えファージを産生するためのプロセスに関し、このプロセスには少なくとも2工程での遺伝子の欠失が含まれる。
一実施形態では、本発明のプロセスは、宿主細胞のゲノムに組み込まれたファージで行われる。
一実施形態では、宿主細胞は微生物であり、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌、より好ましくはグラム陰性菌である。有利には、宿主細胞は、現在適用可能な生物分類学による腸内細菌(Enterobacteriacea)科の細菌である。仮に生物分類学が変わるようなことがあれば、当業者は、本発明に用いられうる菌株を推定するためその変化をいかに分類学に適用すべきかがわかるだろう。腸内細菌科の細菌の例は、大腸菌(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、パンテア(Pantoea)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、セラチア(Serratia)属、赤痢菌(Shigella)属、モルガネラ(Morganella)属及びエルシニア(Yersinia)属の細菌を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい一実施形態によれば、宿主細胞は大腸菌属に属し、より好ましくは、宿主細胞は大腸菌(E.coli)である。
組み込まれたファージから遺伝子を欠失させる方法は、当業者に周知である。そのような方法例には、ラムダRedコード化遺伝子(lambda Red−encoded genes)、すなわちexo遺伝子、bet遺伝子及びgam遺伝子を用いる相同組換え(組換え操作(recombineering)ともよばれる)があるが、これに限定されるものではない。プロファージRac由来でこれらに対応するrecE遺伝子及びrecT遺伝子を用いることも可能である。exo遺伝子及びrecE遺伝子は、3’突出を作る5’−3’エキソヌクレアーゼをコードする。bet遺伝子及びrecT遺伝子は、3’の突出と結合して2つの相補的DNA配列間のアニーリングと相同組換えを仲介する、アニーリングタンパク質ともよばれる対合タンパク質をコードする。gam遺伝子は、大腸菌RecBCDエキソヌクレアーゼのインヒビターをコードし、このようにして目的の直鎖状DNA断片を保護する。組換え操作の方法は、複数の研究者によって十分に記述されており、この中にはDatsenko及びWanner(PNAS 97−12,6640−6645,2000)やStewartら(国際公開第01/04288号)が含まれる。この方法の原則は、(例えばPCR増幅によって)組み込むべき断片及び2つの組換えアームを含むDNA断片を作製することである。これらのアームは、不活性化する遺伝子に隣接した領域に相同である。これらは、目的の断片を挿入するために用いられるであろう。この種のDNA断片は、相同なアームを含んだプライマーを用いたPCRによって、20〜60のヌクレオチドから作り出すことも可能である。
また、本発明は、本発明の遺伝子組換えファージを含んだ宿主細胞にも関する。好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、そのゲノムに遺伝子組換えファージが組み込まれている。
一実施形態では、宿主細胞は微生物であり、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌、より好ましくはグラム陰性菌である。有利には、宿主細胞は、現在適用可能な生物分類学による腸内細菌科の細菌である。仮に生物分類学が変わるようなことがあれば、当業者は、本発明に用いられうる菌株を推定するためその変化をいかに分類学に適用すべきかがわかるだろう。腸内細菌科の細菌の例は、大腸菌属、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、パンテア属、フォトラブダス属、プロビデンシア属、サルモネラ属、セラチア属、赤痢菌属、モルガネラ属及びエルシニア属の細菌を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい一実施形態によれば、宿主細胞は大腸菌属に属し、より好ましくは、宿主細胞は大腸菌である。本発明で用いられうる大腸菌株の例は、大腸菌K−12、大腸菌B又は大腸菌W由来の株であり、これらは例えばMG1655、W3110、DG1、DG2、Top10、DH10B、DH5alpha、HMS174、BL21、BL21(DE3)、HMS174(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysEを含むが、これらに限定されるものではない。
一実施形態では、宿主細胞の遺伝子は不活性化されていてもよい。
一実施形態では、tonA遺伝子(fhuAとしても知られる、配列番号11)は不活性化されている。TonA/FhuAタンパク質は、ファージT1、T5及びPhi80の受容体である。
一実施形態では、galK遺伝子(配列番号12)は不活性化されている。この遺伝子の欠失は、相同組換えに基づく方法によって遺伝子を欠失させるためのgalKのポジティブ/ネガティブ選択を可能にする。
一実施形態では、araB遺伝子(配列番号13)は不活性化されている。他の実施形態では、araA遺伝子(配列番号14)は不活性化されている。宿主細胞内でプロモーターPBAD(アラビノースによって誘導可能)を使用するには、araB及び/又はaraAの不活性化が推奨される。
一実施形態では、lon遺伝子(配列番号15)及び/又はompT遺伝子(配列番号16)は不活性化されている。Lonタンパク質は、ATP依存性プロテアーゼである。OmpTタンパク質は、外膜プロテアーゼである。lon遺伝子及びompT遺伝子は、不活性化されていることが好ましい。
一実施形態では、rcsA遺伝子(配列番号17)は不活性化されている。RcsAタンパク質は被膜合成の正調節因子であり、Lonプロテアーゼで分解される。
一実施形態では、hsdR遺伝子(配列番号18)及び/又はmrr遺伝子(配列番号19)は不活性化されている。HsdRタンパク質及びMrrタンパク質は、異なる特異性を有する制限酵素である。hsdR遺伝子及びmrr遺伝子は、いずれも不活性化されていることが好ましい。
一実施形態では、endA遺伝子(配列番号20)及び/又はrecA遺伝子(配列番号21)は不活性化されている。EndAは、DNA特異的エンドヌクレアーゼである。RecAは、プロテアーゼ及びヌクレアーゼ活性を有する組換えタンパク質である。endA遺伝子及びrecA遺伝子は、いずれも不活性化されていることが好ましい。
本発明の一実施形態では、遺伝子tonA、galK、araB、araA、lon、ompT、rcsA、hsdR、mrr、endA及びrecAのうち少なくとも1つは不活性化されている。不活性化された遺伝子は欠失していることが好ましい。
好ましい一実施形態では、遺伝子tonA、galK、araB、lon、ompT、rcsA、hsdR、mrr、endA及びrecAは不活性化されている。遺伝子tonA、galK、araB、lon、ompT、rcsA、hsdR、mrr、endA及びrecAは、欠失していることが好ましい。
本発明の一実施形態では、本発明の宿主細胞は、米国特許第2004/0115811号に記載されているように、毒性分子をコードする核酸配列で形質転換される。毒性分子をコードする核酸配列が存在することによって、目的遺伝子と毒性分子に対する解毒機能を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を組み込んだ組換えクローンの選択が可能になり、この組換えクローンは、自身のゲノムの中にその毒性分子をコードするヌクレオチド配列を有する宿主細胞の中に組み込まれた後、生存するクローンである。
本発明の好ましい一実施形態によれば、解毒性タンパク質及び毒性分子はそれぞれ、抗毒タンパク質(anti−poison protein)及び毒タンパク質である。この抗毒タンパク質又は毒タンパク質は、天然又は人工的に毒性を有し、細胞(好ましくは原核生物の細胞)の1つ又は複数の生体機能に影響を与え、この細胞の死につながることもある野生型タンパク質又は修飾されたタンパク質であり得る。
解毒性タンパク質及び毒性分子は、好ましくは、米国特許出願公開第2004/0115811号に記載があるように、CcdA/CcdBタンパク質、Kis/Kidタンパク質、Phd/Docタンパク質、RelB/relEタンパク質、PasB(又はPasC)/PasAタンパク質、mazF/mazEタンパク質からなる群から選択されるか、あるいはプラスミド由来である、又はプラスミド由来でないその他の抗毒/毒性分子の組み合わせから選択される。毒性分子は、天然又は人工的に毒性を有し、(原核生物の)細胞の1つ又は複数の生体機能に影響を与える毒素タンパク質でもあり得る。sacB遺伝子(バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amylolique−faciens)由来)によってコードされるタンパク質、GpEタンパク質、GATA−1タンパク質及びCrpタンパク質は、このような毒性分子のその他の例である。sacB遺伝子は、ショ糖を大腸菌に有毒な生成物へと加水分解する触媒であるレバンスクラーゼをコードする(Pierce et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,Vol.89,N[deg.]6(1992)p.2056−2060)。GpEタンパク質は、6つのユニークな制限酵素切断部位を含むバクテリオファージ[phi]X174由来のE遺伝子をコードし、大腸菌細胞の溶菌の原因となるgpEをコードする(Heinrich et al.,Gene,Vol.42(3)(1986)p.345−349)。GATA−1タンパク質は、Trudelらによって記述されている(Biotechniques 1996,Vol.20(4),p.684−693)。Crpタンパク質は、Schlieperらによって記述されている(Anal.Biochem.1998,Vol.257(2),p.203−209)。
その毒性分子に対する解毒性タンパク質は、細胞(好ましくは原核生物の細胞)によって毒性分子が作られるとき、対応する毒性分子によるこの細胞への影響を減少又は抑制することができるタンパク質である。
好ましい一実施形態によれば、本発明の宿主細胞は、CcdBタンパク質をコードする核酸配列を含む。ccdB遺伝子の配列は、配列番号22である。
また、本発明は、毒タンパク質をコードする遺伝子が挿入されている上述の宿主細胞と、抗毒タンパク質をコードする遺伝子の核酸配列を保有するプラスミドとを含むキットにも関する。が挿入されている。宿主細胞内での抗毒タンパク質の発現は、宿主細胞の生存能力維持にとって必要である。好ましい一実施形態では、毒タンパク質は、ccdB遺伝子によってコードされ、抗毒タンパク質は、ccdA遺伝子(配列番号23)によってコードされる。
本発明の一実施形態によれば、このキットのプラスミドは、目的の生体分子の核酸配列をさらに含んでいてもよく、あるいは、さらに含むために修飾されていてもよい。
また、本発明は、上述の宿主細胞を準備するプロセスにも関する。
一実施形態では、本発明のプロセスは、本発明による遺伝子組換えファージによって宿主細胞を感染させる工程を含む。本発明の一実施形態では、この感染工程には、ヘルパーファージの使用が含まれる。本発明で意味する「ヘルパーファージ」という用語は、他のファージの欠失又は不活性化を補うために用いられるファージを指す。ヘルパーファージは、他のファージに欠けている機能を与えて細菌に感染することができるようにする、又はファージストックの用意をさせる。ヘルパーファージは、clマイナスであるため、通常、それ自身では溶原菌をつくることはできない(ヘルパーファージはリプレッサーを持たないため、毒性である)。
ヘルパーファージを用いて、宿主細胞にファージを感染させるプロセスは、当業者に周知である。第1工程は溶菌液の準備であり、第2工程は溶原化である。簡潔に述べると、ヘルパーファージの溶菌液の準備は、Sambrookらによる「Molecular cloning:a laboratory manual」(2001,ISBN 978−087969577−4)又はSuらによる「Large− and Small−Scale Preparation of Bacteriophage lambda lysate and DNA」Bio Techniques 25:44−46(1998年7月)に記載されている標準的な方法を用いて行う。目的のファージの準備は、溶菌サイクルを開始するためのファージ導入(最も使用頻度が高いのは紫外線照射、又は溶原菌がDNA損傷を受ける何らかの状況、あるいは宿主のSOS応答又はCro産生)の後、欠けている機能を補うためにヘルパーファージを用いつつ、同じ原則を用いて行われる。ヘルパーファージの代わりとなるのは、欠けている機能をコードするプラスミドである。
次に、ファージ溶菌液を標的細菌と混合し、LBプレート上に置いて、溶原菌を得る(Novagen社製lambda DE3 lysogenization kit(ラムダDE3溶原化キット)に記載、ユーザプロトコルTB031又はStudier及びMoffat,Journal of Molecular Biology,1986,189:113−130に記載の代替法)。選択ファージは、特に目的のファージを含むファージを選択するために用いることができる。この選択ファージは、目的のファージと同じ免疫を有する毒性ファージである。その結果として、選択ファージは、clリプレッサー(DE3ラムダファージではC2ともよばれる)を産生することから、溶菌斑をつくることができず、また、目的のファージを得るために溶原菌を死滅させることができない。
このように本発明は、上述のとおり、本発明の組換えファージとヘルパーファージとを含むキットにも関する。ヘルパーファージの例は、ヘルパーファージB10、又は目的のファージとは異なる免疫を有する他のいずれかのラムダ状ファージ(例:免疫434、80などを有するファージ)を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかのヘルパーファージ及びそれらの操作は、Haldimann及びWanner(Journal of Bacteriology,183,6384−6393,2001)を含め、文献で十分に記述されている。
一実施形態では、本発明の宿主細胞を準備するプロセスは、さらに欠失工程を含み、ここでの宿主細胞の核酸配列は欠失している。遺伝子の配列を欠失させる方法は、当業者に周知である。より効率的な方法は、ラムダRedコード化遺伝子又はプロファージRac由来のrecE遺伝子とrecT遺伝子によって仲介された相同組換え法である。上述のように、この方法は複数の研究者により十分に記述されており、この中にはDatsenkoとWanner(PNAS 97−12,6640−6645,2000)及びStewartら(国際公開第0104288号)が含まれる。PCR産物は、不活性化すべき遺伝子に隣接する領域と相同である20−から60−ntの伸長を伴うプライマーを用いて作製される。少量の細菌のみが目的の断片を効率的に組換えることになるため、これを選択するための強力な選択マーカーが必要である。組換体を選択するために抗生物質マーカーを用いることができ、抗生物質耐性遺伝子を増幅するため、修飾されたプライマーが用いられる。組換え遺伝子の形質転換及び活性化の後、適切な抗生物質を含んだ培地で組換細菌が選択される。この場合、標的遺伝子は抗生物質耐性遺伝子と置換される。次の欠失で同じ方策を用いるためには、第2工程の間にこの抗生物質耐性遺伝子を除去する必要がある。Datsenko及びWannerに記されているように、FRT(FLP認識標識)部位と隣接している抗生物質耐性遺伝子を用いることができる。耐性遺伝子はこの後、FLPリコンビナーゼをコードするヘルパープラスミドを用いて取り除かれる。抗生物質耐性遺伝子は、この部位特異的リコンビナーゼによって除去されるが、この方法では痕跡が残る。すなわち、抗生物質耐性遺伝子を除去した後も1つの部位特異的組換え部位がなお存在する。
この部位の存在を回避するため、より好ましくは、本発明の方法ではマーカー遺伝子としてgalKを用いる。galKの選択原理は、Warmingらに記載がある(Nucleic acid research,2005,33(4))。この方法では、最初の組換え(挿入)の間にgalKをポジティブ選択マーカー(ガラクトースを含む最少培地で成長する)として用いる。このマーカーは、第2の相同組換え工程の間に除去される。この工程の間、galKは、2−デオキシ−ガラクトース(DOG)を含む最少培地で、ネガティブ選択マーカーとして用いられる。galK遺伝子産物であるガラクトキナーゼは、ガラクトース分解経路の最初の工程を触媒する。ガラクトキナーゼもまた、DOGガラクトース類似体のリン酸化を効率的に触媒する。この反応の産物はさらに代謝されることができず、毒性分子(2−デオキシ−ガラクトース−1−リン酸)の蓄積を引き起こす。この方法の利点は、標的遺伝子を欠失させ、選択マーカーを除去した後に、特異的組換え部位が残ることを回避することである。
また、本発明は、目的の生体分子を産生するプロセスにも関し、このプロセスは、
本発明による遺伝子組換えファージ及び目的の生体分子の核酸配列を含む宿主細胞の培養と、
目的の生体分子の回収と、
を含む。
本発明の一実施形態では、目的の生体分子の核酸配列は、遺伝子組換えファージの発現系の中に含まれている。この実施形態によれば、目的の生体分子の産生は直接的である、すなわち、発現系の遺伝子の発現、例えば発現系に含まれるプロモーターが誘導される培地での培養によって得られる。
本発明の他の実施形態では、遺伝子組換えファージの発現系は、lacプロモーター、好ましくはlacUV5プロモーターの制御下にあるT7RNAポリメラーゼの核酸配列を含む。この実施形態によれば、目的の生体分子を産生するプロセスは、T7プロモーターの制御下にある目的の生体分子の核酸配列を含んだプラスミドを有する宿主細胞の形質転換を含む。T7プロモーターからの発現は、T7RNAポリメラーゼの制御下にあり、T7RNAポリメラーゼはT7プロモーターに極めて特異的である、すなわちT7プロモーターは、バクテリオファージT7のRNAポリメラーゼによってのみ利用することができる。IPTGが培地に付加されると、T7RNAポリメラーゼはlacプロモーターから転写によって発現し、目的の生体分子を発現させる。
本発明で意味する「T7プロモーター」という用語は、バクテリオファージT7のゲノムに存在するプロモーター、並びにT7RNAポリメラーゼによる転写を仲介する能力を有するプロモーターのコンセンサス配列及びバリアントを含む。バクテリオファージT7は、17種のプロモーター配列を含有し、これらすべてが高度に保存されたヌクレオチド配列を含む。
好ましい一実施形態によれば、目的の生体分子の核酸配列を含んだプラスミドは、ccdAの核酸配列をも含み、宿主細胞は、そのゲノムに組み込まれたccdBの配列を含む。このため、プラスミドを含んだ組換クローンのみが増殖する。
一実施形態によれば、目的の生体分子は、発酵ブロスで宿主細胞によって分泌される。この実施形態によれば、目的の生体分子は、発酵ブロスから容易に回収されうる。
他の実施形態によれば、目的の生体分子は、発酵ブロスの中で宿主細胞によって分泌されない。細胞内の目的の生体分子を回収するための方法は、当技術分野において周知である。このような方法の例は、トリクロロ酢酸(TCA)又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含んだ破砕バッファーを用いて変性条件下で総細胞質タンパク質を回収する方法、又は超音波処理、フレンチプレス、あるいはこれに相当するものを用いて圧力下で細菌を破壊し、本来の(変性していない)条件下で総細胞質タンパク質を回収する方法を含むが、これらに限定されるものではない。次に、目的のタンパク質は、アフィニティー又はイオン変換カラムの使用を含む特異的な方法を用いて精製することができるが、これに限定されるものではない。
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。
実施例1:xis遺伝子、exo遺伝子、bet遺伝子、gam遺伝子、kil遺伝子、cIII遺伝子、N遺伝子及びral遺伝子の欠失
a)xisDNA領域の欠失及びgalKによる置換
まず、XisgalK開始(5’ GGGGGTAAATCCCGGCGCTCATGACTTCGCCTTCTTCCCAGAATTCCTGTTGACAATTA 3’,配列番号24)及びXisgalK終結(5’GTTCTGATTATTGGAAATCTTCTTTGCCCTCCAGTGTGAGCAGCACTGTCCTGCTCCTTG 3’,配列番号25)のプライマーを用いて、pGalKプラスミド上でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、galK遺伝子を増幅した。これらのプライマーは、5’末端に標的DNA(イタリック表記)と一致する40塩基の配列を含む。これらの40塩基の配列は、組換えアーム(recombination arms)である。3’末端は、galK遺伝子及びその構成的プロモーターを増幅するよう設計された。PCR(1315bp)によって増幅されたDNA断片は、遺伝子xis、exo、bet、gam、kil及びcIIIを標的にした(5133bpのDNA断片)。すなわち、これらの遺伝子は、相同組換えの間にgalK遺伝子及びそのプロモーターによって置換された。Datsenko及びWanner(PNAS 97−12,6640−6645,2000)にしたがって、T7(DE3)プロファージ及びpKD46プラスミドを保有するエレクトロコンピテント細菌を準備した。次に、増幅したgalK断片は、標準的な手順(各電気穿孔に200ngのDNA断片を用いた)にしたがって、これらの細菌内で電気穿孔処理された。SOC培地を付加し、37℃で1時間、細菌をインキュベートした。続いて、M9最少培地(Sambrook et al.(2001,ISBN 978−087969577−4))で細菌を2度洗浄(遠心分離、培地除去、新しい培地の付加及び再懸濁)し、最少のM9培地及び1%のガラクトースを含んだ細菌のプレート上に置いた。プレートを1日又は2日間、37℃でインキュベートした。
次の工程は、細菌のスクリーニングであった。Xis1(5’GTCTTCAAGTGGAGCATCAG3’,配列番号26)及びXis4(5’ACCAGGACTATCCGTATGAC3’,配列番号27)プライマーを用いてコロニー上で直接PCRスクリーニングを行った。5774bpのDNA断片の増幅は非組換え染色体(非組換えコロニー)に対応し、逆に、1955bpのDNA断片の増幅は、組換え染色体に対応する。1955bpのDNA断片を増幅させる細菌を選択し、これを精製するとともに、染色体の非組換えコピーがあれば除去するため、選択プレート(1%のガラクトースを加えた最少M9培地)で2回画線した。精製工程の最後にPCRスクリーニングをもう一度行い、1955bpのDNA断片を増幅させる3つの細菌を選択した。同じプライマーを用いて、これらの細菌に対応する増幅されたDNA断片を配列し、DNA組換えとXisDNA領域の欠失を確認した(xis遺伝子、exo遺伝子、bet遺伝子、gam遺伝子、kil遺伝子及びcIII遺伝子)。
b)GalKの除去
galK遺伝子、N遺伝子、ral遺伝子を除去するため、(350bp及び343bpの)大きい組換えアームを含んだDNA断片をPCRによって作製した。T7(DE3)プロファージを含んだ細菌のコロニーで、Xis1及びXis2(5’CCAAACGGAACAGATGAAGAAGGCGAAGTCATGAG3’,配列番号28)プライマーを用いて、PCRによる第1アームの増幅が行われた。365塩基のDNA断片が増幅された。第2アームについても、同じ細菌で、Xis3(5’GACTTCGCCTTCTTCATCTGTTCCGTTTGGCTTCC3’,配列番号29)及びXis6(5’GTAATGGAAAGCTGGTAGTCG3’,配列番号30)プライマーを用いて、PCRにより行われた。358塩基のDNA断片が増幅された。アガロースゲル電気泳動の後、両方の組換えアームを精製した。Xis2プライマー及びXis3プライマーは、30bpの同一の配列を含んだDNA断片を作製するよう設計された。この配列は、Xis1プライマー及びXis6プライマーを用いて、両方の組換えアームを第3のPCRに結合するために用いられた。693bpのDNA断片が作製された。このDNA断片は、上記で選択され、(Datsenko及びWannerの記述にしたがって準備した)pKD46プラスミドを保有する細菌で電気穿孔された。SOC培地を付加し、37℃で1時間、細菌をインキュベートした。次に、細菌をM9培地で2度洗浄し、0.2%のグリセリンと1%のDOGを加えたM9培地を含む選択プレートに置いた。プレートは、37℃で2日間インキュベートした。Xis5(5’CAGCCGTAAGTCTTGATCTC3’,配列番号31)及びXis7(5’CAGCAGGCATGATCCAAGAG3’,配列番号32)プライマーを用いて、PCRによっていくつかのコロニーをスクリーニングした。組換え染色体に対応する1122bpの増幅ではなく、非組換えDNA染色体に対応する3246bpの増幅が常に得られた。実験は、3度にわたり完全かつ独立して再現され、そのいずれも成功をみなかった、すなわち、所望の欠失を含んだ細菌は得られなかった。
この結果から、GalK断片のみを除去し、N遺伝子及びral遺伝子は残すこととした。第1の組換えアーム(365bp)に対してXis1、Xis2b(5’TTTGCCCTCCAGTGTGAAGAAGGCGAAGTCATGAG3’,配列番号33)を、第2組換えアーム(384bp)に対してはXis8(5’CTCATGACTTCGCCTTCTTCACACTGGAGGGCAAAGAAG3’,配列番号34)及びXis4を用いて、組換えアームを含むDNA断片を上述のように作製した。Xis1プライマー及びXis4プライマーを用いてジョイニング(joining)PCRを行い、714bpのDNA断片を作製した。この断片は、pKD46プラスミドを保有する選択された細菌の中で、上述のように電気穿孔された。DOGを含む選択プレート上に細菌を置き、2日間37℃でインキュベートした。Xis5プライマーとXis6プライマーを用いて、PCRスクリーニングを行った。(非組換え染色体に対応する3010bpの増幅ではなく)1770bpの増幅を示す細菌を選択し、精製した。そのDNA断片を、Xis5プライマーとXis6プライマーを用いて配列すると、galK遺伝子が正しく除去された。この組換えは、細菌が直ちに得られたため、1度のみ行った。
この結果が示すのは、N遺伝子及びral遺伝子に関連するgalKを、相同組換えを用いて除去するのは不可能であったということである。しかしながら、まったく同じ手順を用いることで、galKのみを除去することができた。
結論として、N遺伝子及びral遺伝子を除去することは、細菌の死につながるということが示されたが、これは予期しない結果であった。
実施例2:MG1655を用いたタンパク質発現
本発明にしたがって作製された株のタンパク質産生効率をテストするため、M11(DE3)とよばれる細菌を用いて、少量の発現テストを行った。この株の遺伝子型は、MG1655ΔgalK,ΔresA,Δlon,ΔhsdR−mrr,ΔfhuA,ΔendA,ΔrecA,ΔaraB,ΔompT,λ−DE3(T7pol,Δxis−ea10,ΔS−C)である。MG1655は大腸菌K−12であるため、タンパク質産生分野で標準的なものとして用いられ、HSM174(DE3)(遺伝子型:recA1,hsdR,λ−DE3,(Rif R))とよばれる他のK−12株と比較した。両方の株はいずれも、pSCherry1プラスミドDNA(Delphi Genetics社、ベルギー)で形質転換された。このプラスミドは、T7プロモーターの制御下で容易に検出可能な(目視、赤色)「cherry」とよばれるタンパク質をコードする。
IPTGを用いた少量発現の手順
1)10mlのLB培地を含む2つの三角フラスコのそれぞれに、いずれもpSCherry1プラスミドを保有するHMS174(DE3)及びM11(DE3)のシングルコロニーを植えつけ、一晩30℃でインキュベートした。
2)新しい培地を入れた新たな2つのフラスコに、一晩培養した1mlの培養液を植えつけ、OD600値が0.6になるまで37℃で振盪しながらインキュベートした。
3)各フラスコからサンプル(1ml)を取り出し、遠心分離した。培地を捨て、ペレットを氷冷した。サンプルは、非誘導コントロールであった。残っている培養液でタンパク質の発現を誘導するため、最終的に1mMの濃度になるまで、IPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド、90μlの新しい100mMのストック溶液)を両方のフラスコに付加した。両方のフラスコのインキュベートを4時間継続した。
4)誘導期の最後に、600nmの光学濃度を各培養液について測定した(M11(DE3)では1.09、HMS174(DE3)では1.13)。各フラスコの1mlのサンプルを4℃で10分間最大速度(13000g)で遠心分離した。ペレットは、Cherryタンパク質の発現による赤色であることが認められた。上澄みを捨て、100μlの水を付加して、細菌を再懸濁した。100μlの「破砕」バッファー(100mMのDTT、2%のSDS、80mMのTris−HCl、pH6.8、0.006%のブロモフェノールブルー、15%のグリセリン)も付加し、細菌を溶解した。60μlの水と60μlの破砕バッファーを(サンプルの光学濃度に応じて)用いる以外は同じ手順で、非誘導のサンプルを処理した。
5)サンプルを70〜100℃で(10分間)加熱し、すべてのタンパク質を再懸濁し、タンパク質を変性させた。
6)10μlの各サンプルを12%のSDS−PAGEゲルに添加し、100ボルトで2時間遊走させた。
7)遊走の後、クマシーブルーの染色でタンパク質を色づけした。
図1に示すように、両株ともに目的のタンパク質(Cherryタンパク質、配列によって示されている)を産生することができたが、その産生は、M11(DE3)を用いたものが、HMS174(DE3)を用いたものより5〜10倍高い。実験は2度行い、まったく同じ結果であった。
実施例3:BL21(DE3)を用いたタンパク質発現
実施例1にしたがって、Δxis−ea10及び/又はΔS−Cが欠失しているBL21(DE3)株を作製した。細菌(int遺伝子が欠失し、T7RNAポリメラーゼをコードするラムダDE3)の染色体にΔS−Cの欠失のみ又はΔxis−ea10の欠失と組み合わせて挿入した。このようにしてBL21(DE3)の2つの誘導体であるBL21(DE3)ΔS−C及びBL21(DE3)Δxis−ea10,ΔS−Cを作製した。組換え領域のPCR増幅により欠失が確認され、この領域が配列された。この配列工程によって、理論上の配列にしたがった対応する欠失の存在が確認された。次に、実施例2にしたがって、cherryタンパク質(pSCherry1及びpSSC−Cherry1、Delphi Genetics社)をコードする2つの異なるプラスミドを用いて、作製した細菌のタンパク質発現をテストした。その結果、cherryタンパク質をコードするcherry遺伝子の過剰発現が明確に示された。このタンパク質は目視及びSDS−PAGE解析で容易に検出された。
したがって、結論は、ラムダDE3ファージが、ファージの切除と細菌の溶菌に必要な機能をコードするint遺伝子、S遺伝子、R遺伝子及びRz遺伝子を少なくとも欠失しているため、これらの細菌は、ラムダDEファージを原因とする望まれない細菌の溶菌リスクなく、タンパク質を過剰産生できるということである。
タンパク質中の細菌の溶菌は、成長条件、タンパク質の過剰発現などを含む複数の要因に左右されるため、作製した株が、特異的遺伝子の欠失を原因とする溶菌に耐性であることを示すためのモデル株を設計した。ラムダファージでは、溶菌が進むのを抑制し、プロファージの溶原状態を維持するため、CIリプレッサーの構成的発現を有する必要がある。このリプレッサーの変異体(CI857)は、その温度感受的な能力のため、周知である。すなわち、変異したリプレッサーは、30℃で完全に活性であり、溶原状態を維持する。しかしながら、より高い温度(37〜42℃)では、CI857は非効率的で、ラムダファージの溶菌状態を誘導する。このCI857変異体及び本発明による欠失を保有する株、すなわち、P41を含むBL21株に対応するBL21(DE3)ΔS−C、P11を含むBL21株に対応するBL21(DE3)Δxis−ea10及びΔS−C、P13を含むBL21株に対応するBL21(DE3)Δxis−ea10,ΔS−C及びΔQ、P15を含むBL21株に対応するBL21(DE3)ΔQ、及びP53を含むBL21株に対応するBL21(DE3)Δxis−ea10及びΔQを作製した。
温度を42℃に変えることによって、溶菌状態が誘導される。本発明の株に、溶菌は認められなかった。加えて、本発明の株では、コントロールと比較して、目的のタンパク質(cherryタンパク質)の産生収率が改善したことが認められた。