JP2014519841A - バレンセンシンターゼ - Google Patents

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Abstract

本発明は、新規のバレンセンシンターゼ、このようなバレンセンシンターゼをコードする核酸、前記コード核酸配列を含む宿主細胞、および本発明によるバレンセンシンターゼの存在下でファルネシル二リン酸をバレンセンに変換することを含む、バレンセンを調製するための方法に関する。

Description

本発明は、バレンセンシンターゼ、前記バレンセンシンターゼをコードする核酸、前記核酸を含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む宿主細胞、バレンセンの調製方法およびノートカトンの調製方法に関する。
多くの生物は、多様なテルペンおよびテルペノイドを生産する能力を有する。テルペンは、分子式Cを有するイソプレンの単位と通常は呼ばれる、2−メチルブタン残基から実際にまたは概念的に構築される。イソプレン単位は、天然の共通する構成単位の1つとみなすことができる。テルペンの基本的な分子式は、この式の倍数、すなわち(Cであり、nは連結されたイソプレン単位の数である。これは、イソプレン則と呼ばれ、この結果、テルペンはイソプレノイドとも称される。イソプレン単位は、直鎖を形成するように「頭尾」結合されてもよく、または環を形成するように配列されてもよい。テルペンの生合成では、テルペンは、一般的な5炭素前駆体、イソペンテニル二リン酸(IPP)およびこの異性体、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)から形成される。したがって、テルペン炭素骨格は、5炭素原子の倍数を一般に含む。最も多いのは5、10、15、20、30および40炭素テルペンであり、それぞれヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペンおよびテトラテルペンと呼ばれている。「頭尾」結合の他に、トリテルペンおよびテトラテルペンは、中心に1個の「尾尾」結合も含有する。テルペンは、アルコールおよびこの配糖体、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸およびカルボン酸エステルのようなさらなる官能基を含むことができる。これらの官能化されたテルペンは、本明細書ではテルペノイドと呼ばれる。テルペンと同様に、テルペノイドは、5炭素原子の倍数を有する炭素骨格を一般に有する。テルペノイドにおける炭素の総数は、5の倍数である必要はなく、例えば官能基は、任意の数の炭素原子を有するアルキル基を含むエステル基であってもよいことに留意されるべきである。
上述の定義は別として、用語「テルペン」、「テルペノイド」および「イソプレノイド」は、公開文献および特許文献においてしばしば互換的に使用されることに留意することが重要である。
バレンセンは、さまざまな柑橘類などの特定の植物で生産される天然に存在するテルペンである。これらの植物においてファルネシル二リン酸(FPP)は、バレンセンシンターゼの存在下でバレンセンに酵素的に変換される。
バレンセンは、例えば、香気または風味として産業上利用可能である。バレンセンは、柑橘類から得られた柑橘類精油からの蒸留により得ることができるが、これらの果実における低いバレンセン濃度(0.2から0.6重量%)のため、これらの油からの単離は厄介である。
バレンセンシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の取り込みにより遺伝的に修飾された微生物を利用し、バレンセンを微生物学的に調製することが提案されている。このように生産されたバレンセンシンターゼは、FPPからのバレンセンの調製に使用することができ、この変換は、単独の反応として(インビトロ)、または糖からのバレンセンの生産を最終的にもたらすより長い代謝経路の一部として(インビボ)実行され得る。
柑橘類由来のいくつかのバレンセンシンターゼが知られている。例えば、US7,273,735およびUS7,442,785には、エシェリキア・コリ(E.coli)におけるシトラス・エックス・パラディシ(Citrus x paradisi)由来のバレンセンシンターゼの発現が記載されている。さらに、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)由来のバレンセンシンターゼが、Luckerら(Phytochemistry(2004)65:2649−2659頁)により記載されている。宿主生物におけるこれらのバレンセンシンターゼの発現が記載されているが、実際の酵素活性はインビトロ条件下で示されているのみである。
多くの論文が、インビボでのバレンセンシンターゼの活性も記載している。例えば、Takahashiら(Biotechnol.Bioeng.(2007)97:17−181頁)は、特にノックアウト変異を通じたERG9遺伝子の不活化により主要な中間体FPPのレベルの増強のために最適化されたサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株における、シトラス・エックス・パラディシバレンセンシンターゼ遺伝子(アクセッション番号AF411120)の発現を報告している。ERG9変異を216時間補完するエルゴステロールを含有する合成最少培地における最良株の培養は、20mg/Lバレンセンの生産をもたらした。Asadollahiら(Biotechnol.Bioeng.(2008)99:666−677頁)は、サッカロミセス・セレビシエ株におけるシトラス・エックス・パラディシバレンセンシンターゼ遺伝子(アクセッション番号CQ813508;AF411120と比較して548個のアミノ酸のうち3個が異なる)の発現に基づく、どちらかと言えば類似したバレンセン生産系を記載している。該生産系においてERG9遺伝子の発現は、制御可能なMET3プロモーターとの天然ERG9プロモーターの置換により下方制御された。有機溶媒としてのドデカンを用いる2つの液相発酵を適用する最少培地でのこの株の培養は、60時間で3mg/Lバレンセンの形成をもたらした。
現在知られているバレンセンシンターゼは、バレンセンがFPPから調製される産業的バレンセン生産プロセスに該シンターゼが適用される場合(例えば単離されたバレンセンシンターゼもしくは(透過処理された)全細胞を用いる隔絶された反応(インビトロ)において、またはさもなければ、例えば、糖からのバレンセンの生産を最終的にもたらすより長い代謝経路の一部である発酵プロセス(インビボ)のどちらかにおいて)、特に望ましくないいくつかの明白な欠点を有する。例えば、本発明者らによる内部調査は、活性型での異なる微生物(エシェリキア・コリ、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、サッカロミセス・セレビシエ)におけるシトラス・エックス・パラディシ(CQ813508)またはシトラス・シネンシス(Citrus sinensis)(AF441124)由来のバレンセンシンターゼの過剰発現は面倒であり、バレンセンの生産率の重度の低下をもたらすことを明らかにした。同様に、Asadollahiら(Biotechnol.Bioeng.(2008)99:666−677頁)は、組換えサッカロミセス・セレビシエ株における低いバレンセン合成は、シトラス・エックス・パラディシバレンセンシンターゼ遺伝子の不十分な異種発現に起因することを見出した。
さらに、シトラス・シネンシス由来の酵素とほぼ同一であるシトラス・エックス・パラディシバレンセンシンターゼは、中性または弱アルカリ性pHでFPPのバレンセンへの変換を触媒するだけでなく、かなりの量のゲルマクレンAへの変換も触媒することが見出されている(米国特許第7,442,785 B2号明細書)。
例えば、pH7.5でのFPPとのこの酵素のインキュベーションは、形成された合計反応生成物の95%以上を占める2つの化合物の形成をもたらし、このうち30%がベータエレメン(ゲルマクレンAの熱再配列生成物)であり、このうち65%がバレンセンであった。本発明者らはさらに、インビボ条件下でも、かなりの量のゲルマクレンA副生成物がこの酵素により形成されることを見出した;イソプレノイド生産およびシトラス・エックス・パラディシバレンセンシンターゼ遺伝子(アクセッション番号CQ813508)の保有のために最適化されたロドバクター・スフェロイデス株の培養は、形成されたセスキテルペンの総量のそれぞれ48%および25%においてバレンセンおよびゲルマクレンA(ベータエレメンとしてGCにより分析)の形成をもたらした。
ブドウ、ヴィティス・ヴィニフェラ(アクセッション番号AAS66358)由来のバレンセンシンターゼは、特異性の類似の欠如を示す。エシェリキア・コリにおける発現とこれに続くインビトロ酵素アッセイは、このシンターゼがFPPを5つの微量生成物と共に(+)−バレンセン(合計生成物の49.5%)および(−)−7−エピ−α−セリネン(合計生成物の35.5%)に変換することを示した(Luckerら Phytochemistry(2004)65:2649−2659頁)。
生化学的に証明されたバレンセンシンターゼ活性を有する上記の酵素の他に、GenBank核酸配列データベースは、バレンセンシンターゼとして注釈を付けられたさらに別のエントリー、すなわちペリラ・フルテスケンス変種フルテスケンス(Perilla frutescens var.frutescens)バレンセンシンターゼ遺伝子(アクセッション番号AY917195)を含有する。しかし、文献において、この特定の推定バレンセンシンターゼについて報告されたものはないため、この活性および特異性に関する生化学的証拠は欠如している。
米国特許第7,273,735号明細書 米国特許第7,442,785号明細書
Luckerら(Phytochemistry(2004)65:2649−2659頁) Takahashiら(Biotechnol.Bioeng.(2007)97:17−181頁) Asadollahiら(Biotechnol.Bioeng.(2008)99:666−677頁)
故に、バレンセンの調製において使用することができる代替のバレンセンシンターゼが必要である。特に、少なくとも選択された宿主細胞において改善された発現を示す代替のバレンセンシンターゼ;少なくとも特定の条件下(中性またはアルカリ性pHおよび/または代替のバレンセンシンターゼが生産されている細胞の細胞内などの)で高い酵素活性を有する代替のバレンセンシンターゼ;および/または高度に特異的である代替のバレンセンシンターゼ、特に、少なくとも特定の条件下(ほぼ中性またはアルカリ性pHおよび/または代替のバレンセンシンターゼが生産されている細胞の細胞内などの)でバレンセンへのFPPの変換を触媒することに関して、シトラス・エックス・パラディシ由来のバレンセンシンターゼと比較して改善された特異性を有する代替のバレンセンシンターゼが必要である。
これまで知られていなかった特定のポリペプチドがバレンセンシンターゼ活性を有すること、およびこのポリペプチドは、既知のバレンセンシンターゼの代替として機能を果たし得る触媒として使用することができることが見出された。特に、このような酵素は、バレンセンへのFPPの変換を触媒することに関して、シトラス・エックス・パラディシ由来のバレンセンシンターゼと比較して改善された特異性および/または生産性を有する。
したがって、一態様において本発明は、配列番号2に示されたアミノ酸配列を含むバレンセンシンターゼ、またはこの機能的相同体に関し、前記機能的相同体は、配列番号2と少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むバレンセンシンターゼである。前記相同体は、特に、配列番号2と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むバレンセンシンターゼであり得る。
本発明者らは、配列番号2のアミノ酸配列を有するバレンセンシンターゼと比較して、バレンセンへのファルネシル二リン酸の変換に対する生産性が改善されたバレンセンシンターゼを提供することができることをさらに見出した。
したがって、本発明は特に、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して、(試験条件下で1時間当たりに形成されるバレンセンのモル量として表される)バレンセンへのファルネシル二リン酸の変換に対する向上した生産性を有するバレンセンシンターゼに関する。
さらに、本発明は特に、配列番号3において「X」印が付いた少なくとも1つの位置が、配列番号2における対応する位置とは異なるという条件で、配列番号3により表されるアミノ酸配列を含むバレンセンシンターゼに関する。好ましい実施形態において、前記バレンセンシンターゼは、この配列が、配列番号2と比較して、アミノ酸配列における少なくとも1つの違いを含むという条件で、配列番号4に示されたアミノ酸配列を含む。
さらに、本発明は、本発明によるバレンセンシンターゼに対する特異的結合親和性を有する抗体に関する。本発明による抗体は、故に、本発明によるバレンセンシンターゼに特異的に結合する。
さらに、本発明は、本発明のバレンセンシンターゼの断片に対して惹起される抗体と免疫学的交差反応性を示すタンパク質、特にバレンセンシンターゼ活性を有するようなタンパク質に関する。
免疫学的交差反応性は、バレンセンシンターゼ活性を有する本発明による単離されたポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに対して惹起される抗体、または該エピトープと反応する抗体を用いてアッセイすることができる。モノクローナルまたはポリクローナルのどちらであってもよい抗体は、例えばHudsonら、Practical Immunology、第3版(1989)、Blackwell Scientific Publicationsに記載されているような、当技術分野で知られた方法により生産することができる。免疫化学的交差反応性は、当技術分野で知られたアッセイを用いて判定することができ、この例は、例えばHudsonら、Practical Immunology、第3版(1989)、Blackwell Scientific Publicationsに記載されているようなウェスタンブロッティングである。
本発明は、さらに、本発明によるバレンセンシンターゼをコードする核酸配列を含む核酸、特に、配列番号2、3もしくは4に示されたアミノ酸配列を含むバレンセンシンターゼをコードする核酸配列またはこの機能的相同体を含む核酸、または前記コード配列に対して相補的な核酸配列を含む核酸に関する。特に、核酸は、配列番号1に示された核酸配列、および配列番号1に示された核酸配列と少なくとも50%、特に少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む、本発明によるバレンセンシンターゼをコードする他の核酸配列、または配列番号3もしくは4に示された配列を含むバレンセンシンターゼをコードする核酸配列を含む核酸、それぞれこれらに相補的な核酸から選択され得る。本発明によるバレンセンシンターゼをコードする前記他の核酸配列は、以下、機能的類似体と呼ばれ得る。
本発明はまた、低ストリンジェンシー条件下、好ましくは中ストリンジェンシー条件下、より好ましくは高ストリンジェンシー条件下および最も好ましくは極めて高いストリンジェンシー条件下で、配列番号1に示された核酸配列とハイブリダイズする、本発明によるバレンセンシンターゼをコードする核酸配列、または配列番号3もしくは4に示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸、それぞれこれらに相補的な核酸にも関する。
ハイブリダイゼーション実験は、当業者に十分に利用可能であるさまざまな方法により行うことができる。これらのさまざまな方法の中から選択するための一般的なガイドラインは、例えばSambrook,J.、およびRussell,D.W.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第3版、Cold Spring Harbour Laboratory Press、Cold Spring Harbour、NY、(2001)に見出すことができる。
ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーで意味されるのは、実際のハイブリダイゼーションステップおよび洗浄ステップから成るハイブリダイゼーションが行われる条件である。洗浄ステップは、例えばニトロセルロースフィルターに固定化された標的核酸とハイブリダイズしない核酸を洗い流すのに使用される。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、例えば洗浄溶液の塩分濃度を変えること、および/または洗浄ステップが行われる温度(洗浄温度)を変えることにより変えることができる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄溶液中の塩分濃度を低下させること、または洗浄温度を上昇させることにより高まる。本出願の目的のため、低、中、高および極めて高いストリンジェンシー条件は、特に次の条件およびこの同等物である:ハイブリダイゼーションは、6×SSC(20×SSCストック溶液は、水中3.0M NaClおよび0.3Mクエン酸三ナトリウムである)、5×デンハルト試薬(100×デンハルト試薬は、水中2%(w/v)BSA画分V、20%(w/v)フィコール400および2%(w/v)ポリビニルピロリドンである)、0.5%(w/v)SDSおよび100μg/mL変性断片化サケ精子DNAを含む水溶液中で、約45℃で約12時間行われる。室温で2×SSC、0.1%(w/v)SDS中、2回の連続5分の洗浄ステップによる非結合核酸プローブの除去後、室温で0.2×SSC、0.1%(w/v)SDS中、2回の連続5分の洗浄ステップの施行が低ストリンジェンシーの例であり、42℃で0.2×SSC、0.1%(w/v)SDS中、2回の連続15分の洗浄ステップの施行が中ストリンジェンシーの例であり、55℃で0.1×SSC、0.1%(w/v)SDS中、2回の連続15分の洗浄ステップの施行が高ストリンジェンシーの例であり、68℃で0.1×SSC、0.1%(w/v)SDS中、2回の連続30分の洗浄ステップが極めて高いストリンジェンシーの例である。
本発明によるバレンセンシンターゼまたは核酸は、天然の化合物または天然の供給源から単離された化合物の断片であってもよく、化学的もしくは酵素的に合成された化合物または化合物の断片、または組換え細胞(化合物もしくは化合物の断片が存在し得、または化合物もしくは化合物の断片が単離され得る)において生産された化合物もしくは化合物の断片であってもよい。
本発明は、さらに、本発明による核酸を含む発現ベクターに関する。
本発明は、さらに、本発明による発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明は、さらに、本発明によるバレンセンシンターゼの存在下でFPPをバレンセンに変換することを含む、バレンセンを調製するための方法に関する。FPPの4つの異なる幾何異性体、すなわち2E,6E−FPP、2Z,6E−FPP、2E,6Z−FPPおよび2Z,6Z−FPPが存在し得る。良好な結果は2E,6E−FPPで得られているが、原則としてFPPの任意の他の異性体が、本発明による酵素に適切な基質となり得る。
本発明は、さらに、本発明による方法において調製されたバレンセンがノートカトンに変換される、ノートカトンを調製するための方法に関する。
本発明は、さらに、バレンセンシンターゼの生産をもたらす条件下で、本発明による宿主細胞を培養すること、および宿主細胞からバレンセンシンターゼを回収することを含む、本発明によるバレンセンシンターゼを生産するための方法に関する。
本発明に従って、異なる生物において良好な収量でバレンセンシンターゼを発現させることができることが見出された。バレンセンシンターゼ(配列番号2により表される)は、エシェリキア・コリおよびサッカロミセス・セレビシエ(パン酵母)において十分に発現されることが見出された。また、本発明によるバレンセンシンターゼがイソプレノイド生産宿主生物(ロドバクター・スフェロイデス)において発現される本発明による方法では、バレンセン生産は、柑橘類バレンセンシンターゼが発現される比較方法より高いことも見出された。
配列番号2によるバレンセンシンターゼについて、該バレンセンシンターゼは、特に、インビトロアッセイにおいて、または本発明によるバレンセンシンターゼおよび柑橘類バレンセンシンターゼをそれぞれ生産するように遺伝的に修飾された宿主細胞の細胞内でバレンセンが合成される方法において、中性pHまたはおよそ中性のpHで、バレンセン合成に対して柑橘類由来のバレンセンシンターゼより特異的であることが見出された。初期結果は、同一条件下で、本発明の新規の酵素で形成された主な副生成物(ゲルマクレンA)の量は、著しくより低いこと(すなわち柑橘類バレンセンシンターゼでの2:1と比較して4:1のモル比バレンセン:ゲルマクレンA)を示している。さまざまな宿主細胞は、7.0−8.5のpHなどの中性またはわずかにアルカリ性の細胞内pHを有すると考えられるため、理論に縛られることなく、中性または弱アルカリ性pHでのバレンセン合成の触媒に対する高い特異性は、バレンセンが細胞内で調製される方法に特に望ましいとみなされることが考えられる(細菌の細胞内pH値については、例えば、Booth、Microbiological Reviews(1985)49:359−378頁を参照のこと)。例えば、エシェリキア・コリ細胞が5.5から8.0の範囲のpH値に曝露された場合、細胞内pHは7.1から7.9の間であった(Olsenら、Appl.Environ.Microbiol.(2002)68:4145−4147頁)。これは、細胞内でも、本発明によるバレンセンシンターゼのバレンセンの合成に対する改善された特異性を説明し得る。
本発明によるバレンセンシンターゼの生産性は、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼの生産性の少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍または少なくとも2.5倍であり得る。生産性は、最大100倍、またはさらにより高くなり得る。特定の実施形態において、生産性は最大10倍高く、特に最大5倍高く、より特に最大4倍高くなり得る。
配列番号2によるバレンセンシンターゼと比較して生産性が改善された本発明によるバレンセンシンターゼは、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して、宿主細胞における向上した特異的生産性、向上した安定性(酵素の失活速度の低下)、向上した生成物特異性(ゲルマクレンAへのファルネシル二リン酸の変換と比べて)または増加した発現を特に有することができる。
配列番号2によるバレンセンシンターゼと比較して向上した生産性を有するバレンセンシンターゼの特異的生産性は、酵素の量当たり1時間当たりに形成されたバレンセンのモル量として表される配列番号2によるバレンセンシンターゼの特異的生産性と通常はほぼ同じであり、またはより高い。好ましくは特異的生産性は、配列番号2によるバレンセンシンターゼの特異的生産性の少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.5倍、特に少なくとも2.0倍、より特に少なくとも2.5倍である。上限は重要ではない。向上した生産性を有するバレンセンシンターゼの特異的生産性は、配列番号2のバレンセンシンターゼの特異的生産性の最大100倍であり得、より高くなり得る。特定の実施形態において、特異的生産性は、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼの最大10倍であり、特に5倍以下であり、より特に4倍以下である。
(本明細書に規定された試験条件下で)ファルネシル二リン酸から形成されるゲルマクレンAに対するファルネシル二リン酸から形成されるバレンセンのモル比として表される生成物特異性は、通常は6以上であり、より好ましくは10以上であり、より好ましくは少なくとも13であり、特に少なくとも15である。生成物特異性は、最大1000であり得、1000より高くなり得る。特定の実施形態において、生成物特異性は100以下であり、特に30以下であり、より特に25以下でありまたは22以下である。
本明細書で使用されるとき「生産性」は、単位時間当たり、より詳細には1時間当たりに基質(より詳細にはファルネシル二リン酸)から形成される反応生成物(より詳細にはバレンセン)のモル量として定義される。本発明によるバレンセンシンターゼの「生産性」は、標準的な制御可能な条件下で、好ましくは実施例2に記載されたインビトロアッセイにおいて判定される。この目的のため、本発明によるバレンセンシンターゼは、30℃で余剰のファルネシル二リン酸とインキュベートされ、pH7.0−7.5で2時間緩衝され、この後、反応は酢酸エチルによる抽出により停止された。バレンセンシンターゼは、清澄化溶解物の形態でアッセイされるため、リン酸塩化を阻害し故にファルネシル二リン酸の望まれない加水分解を防ぐためにオルトバナジン酸Naが添加された。実施例2に示された反応条件(清澄化溶解物の量、ファルネシル二リン酸の量および反応時間を含む)は、形成された生成物の量が溶解物の量に依然として線形に依存するように選択された。
本明細書で使用されるときバレンセン生産に関する「特異的生産性」は、バレンセンシンターゼの量当たりの単位時間(1時間)当たりに基質ファルネシル二リン酸から形成されるバレンセンのモル量として定義される。特異的生産性は故に、バレンセンシンターゼの量当たりの上記に定義された「生産性」であり、故に、「生産性」を判定するのに使用される酵素調製物中のバレンセンシンターゼの種々の量の存在を補うことが意味される。純粋バレンセンシンターゼ調製物がアッセイされる場合、標準的な総タンパク質定量化法(例えばBradford法[Bradford M.M、Anal.Biochem.1976、72:248−254頁])が、バレンセンシンターゼの量を定量化するのに使用され得る。非純粋バレンセンシンターゼ調製物がバレンセン生産性判定に使用される場合、バレンセンシンターゼと調製物中に存在する他のタンパク質を区別する方法が適用されなければならない。実施例2は、蛍光色素によるタンパク質バンドの染色を介した定量化とこれに続くイメージングと組み合わされた、SDS−PAGEゲルにおけるタンパク質の分離に基づくこのような方法を記載する。
本明細書で使用されるとき「安定性」は、基質ファルネシル二リン酸を反応生成物バレンセンに変換するのに適用される条件下でのバレンセンシンターゼの安定性を意味する、「動作安定性」として定義される。2時間の反応時間が、実施例2に記載された「生産性」判定法において使用されるため、この方法はまた、適用されたインビトロ条件下での本発明によるバレンセンシンターゼの動作安定性も本質的に判定する。この理由は、不安定な酵素は、より安定な酵素より急速に作用するのをやめ、故により少ない生成物形成をもたらし、故に生産性の低下をもたらすためである。
本明細書で使用されるとき「生成物特異性」は、実施例2に記載された標準的生産性アッセイにおいて、ファルネシル二リン酸から形成されるバレンセン対ゲルマクレンAのモル比として定義される。本発明によるバレンセンシンターゼがかなりの量の他のセスキテルペン様副生成物を生産する場合、生成物特異性は、実施例2に記載された標準的生産性アッセイにおいて、ファルネシル二リン酸から形成されるバレンセン対他のセスキテルペンの合計のモル比として定義される。
本明細書で使用されるとき「宿主細胞における発現」は、特定の宿主細胞において形成されたタンパク質の総量と比べた、この宿主細胞において形成された本発明によるバレンセンシンターゼの量として定義される。特定のタンパク質の発現レベルの判定に典型的に使用される方法は、SDS−PAGEゲルにおける(例えば清澄化溶解物中に)存在する全てのタンパク質の分離と、これに続くタンパク質の染色、およびこの後の定量化に基づく。発現レベル(%での)は、次いで、100%を乗じた、ゲル上の全てのバンドの強度の合計と比較した目的とするタンパク質に属するバンドの相対強度として定義される。
本発明によるバレンセンシンターゼは、清澄化溶解物として分析されたという事実のため、「特異的生産性」および「宿主細胞における発現」は両方とも、標準タンパク質、すなわち配列番号2のバレンセンシンターゼと比べて判定された。
用語「または」は本明細書で使用されるとき、他に特に規定のない限り「および/または」として定義される。
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は本明細書で使用されるとき、他に特に規定のない限り「少なくとも1つ」として定義される。
単数形での名詞(例えば化合物、添加物等)に言及する場合、複数が含まれることが意味される。
本明細書で互換的に使用されている用語ファルネシル二リン酸およびファルネシルピロリン酸(両方ともFPPとして略される)は、化合物3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−イルピロホスフェートを指し、この化合物の全ての既知の異性体を含む。
本明細書で使用されるとき組換え細胞、ベクター、核酸等との関連において用語「組換え」は、細胞、ベクター、核酸等に自然発生しない核酸、および/またはこの同じ位置に自然発生しない核酸を含有する、この細胞、ベクター、核酸等を指す。一般に、前記核酸は、組換えDNA法を用いてこの株(細胞)に導入されている。
核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質に関して使用される場合、用語「異種(heterologous)」は、核酸またはタンパク質が存在する生物、細胞、ゲノムもしくはDNAもしくはRNA配列の一部として自然発生しない核酸またはタンパク質、または、核酸またはタンパク質が天然には見出される細胞またはゲノム配列もしくはDNA配列もしくはRNA配列中の位置(複数可)とは異なる、細胞またはゲノム配列もしくはDNA配列もしくはRNA配列中の位置(複数可)に見出される核酸またはタンパク質を指す。異種核酸またはタンパク質は、これらが導入される細胞に内因性ではないが、別の細胞から得られている、または合成的もしくは組換え的に生産されている。必ずしもではないが、一般にこのような核酸は、DNAが発現される細胞により通常は生産されないタンパク質をコードする。
特定の宿主細胞に内因性ではないが、この天然の形態から例えばDNAシャッフリングの使用を通じて修飾された遺伝子もまた、異種と呼ばれる。用語「異種」は、天然に存在するDNA配列の天然に存在しない複数のコピーも含む。故に、用語「異種」は、細胞に対して外来もしくは異種であるDNAセグメントを指してもよく、または細胞に同種であるが、該セグメントが通常は見出されない宿主細胞核酸内の位置および/もしくは数にあるDNAセグメントを指してもよい。外因性DNAセグメントは、外因性ポリペプチドを生じるように発現される。「相同」DNA配列は、これが導入される宿主細胞と天然に関連したDNA配列である。
発現される細胞に対し異種または外来として当業者が認識する任意の核酸またはタンパク質は、用語異種核酸または異種タンパク質により本明細書に包含される。
別のタンパク質またはペプチドと比較した(特に配列番号2に示される配列におけるアミノ酸から成るポリペプチドと比較した)タンパク質またはポリペプチドに関する用語「修飾された(modified)」、「修飾(modification)」、「変異した(mutated)」、「変異(mutation)」または「バリアント(variant)」は、本明細書で使用されるとき、修飾タンパク質またはポリペプチドが、比較されるタンパク質またはポリペプチド、例えば野生型タンパク質/ポリペプチドと比較して、アミノ酸配列に少なくとも1つの違いを有することを示すために使用される。該用語は、修飾/変異タンパク質が、これらのアミノ酸をコードする核酸の変異誘発により、または別の方法での(例えば人工遺伝子合成方法論を用いた)ポリペプチド/タンパク質の修飾により実際に得られたかどうかに関わりなく使用される。変異誘発は、当技術分野でよく知られた方法であり、Sambrook、J.、およびRussell、D.W.Moleular Cloning:A Laboratory Manual.第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、(2001)に記載された、PCRによるまたはオリゴヌクレオチド媒介変異誘発を介した、例えば部位特異的変異誘発を含む。遺伝子に関する用語「修飾された」、「修飾」、「変異した」、「変異」または「バリアント」は、本明細書で使用されるとき、この遺伝子のヌクレオチド配列またはこの制御配列における少なくとも1つのヌクレオチドが、比較されるヌクレオチド配列、例えば野生型ヌクレオチド配列(配列番号1などの)とは異なることを示すのに使用される。該用語は、修飾/変異ヌクレオチド配列が、変異誘発により実際に得られたかどうかに関わりなく使用される。
修飾/変異は、特定の場合に、異なるヌクレオチドによるアミノ酸それぞれのヌクレオチドの置換、アミノ酸それぞれのヌクレオチドの欠失またはアミノ酸それぞれのヌクレオチドの挿入であってもよい。
用語「オープンリーディングフレーム」および「ORF」は、コード配列翻訳開始コドンと翻訳終結コドンの間にコードされたアミノ酸配列を指す。用語「開始コドン」および「終結コドン」は、タンパク質合成(mRNA翻訳)のそれぞれ開始および鎖終結を規定する、コード配列における3つの隣接するヌクレオチドの単位(「コドン」)を指す。
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連した核酸の任意のセグメントを指すのに広く使用される。故に、遺伝子は、コード配列および/またはこの発現に必要とされる制御配列を含む。例えば、遺伝子は、mRNAもしくは機能的RNAを発現し、または特定のタンパク質をコードし、および制御配列を含む核酸断片を指す。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する非発現DNAセグメントも含む。遺伝子は、目的とする供給源からのクローニングまたは既知のもしくは予測される配列情報からの合成を含むさまざまな供給源から得ることができ、および所望のパラメーターを有するように設計された配列を含んでもよい。
用語「キメラ遺伝子」は、1)天然には一緒に見出されない制御配列およびコード配列を含むDNA配列、または2)天然には隣接しないタンパク質の部分をコードする配列、または3)天然には隣接しないプロモーターの部分を含有する任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する制御配列およびコード配列を含んでもよく、または同じ供給源に由来するが、天然に見出されるものとは異なる形に配列された制御配列およびコード配列を含んでもよい。
本明細書で使用されるときトランスジェニック細胞またはトランスジェニック生物に対する用語「トランスジェニック」は、生物または細胞に自然発生しない核酸を含有し、および組換えDNA法を用いて核酸がこの生物または細胞に導入された(すなわち生物または細胞自体、または生物の先祖もしくは細胞が単離された生物の先祖生物に導入された)、この生物または細胞(細胞が生物それ自体であり得、または細胞が単離された多細胞生物の細胞であり得る)を指す。
「トランス遺伝子」は、形質転換によりゲノムに導入された、好ましくは安定に維持される遺伝子を指す。トランス遺伝子には、例えば、形質転換される特定の植物の遺伝子に対し異種または相同のどちらかである遺伝子が含まれ得る。さらに、トランス遺伝子は、非天然生物に挿入される天然遺伝子、すなわちキメラ遺伝子を含み得る。用語「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中の天然の位置における天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物において通常は見出されないが遺伝子導入により導入される遺伝子を指す。
「形質転換」および「形質転換すること」は、本明細書で使用されるとき、挿入に使用される方法、例えば、直接取り込み、形質導入、コンジュゲーション、f接合(f−mating)またはエレクトロポレーションに関わりなく、宿主細胞への異種ヌクレオチド配列の導入を指す。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター、例えばプラスミドとして維持され得、あるいは、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードし、および非コード配列を除外するDNAまたはRNA配列を指す。コード配列は、「連続したコード配列」(すなわちcDNAにおけるようなイントロンを欠く)を構成し得、またはコード配列は、適切なスプライス部位により結合された1つ以上のイントロンを含み得る。「イントロン」は、一次転写産物に含有されるRNAであるが、細胞内でのRNAの切断および再ライゲーションを通じて除去されて、タンパク質に翻訳され得る成熟mRNAを作るRNAの配列である。
「制御配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置し、および関連コード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。制御配列には、エンハンサー、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロンおよびポリアデニル化シグナル配列が含まれる。制御配列には、天然配列および合成配列、ならびに合成配列および天然配列の組み合わせであり得る配列が含まれる。上述の通り、用語「適切な制御配列」は、プロモーターに限定されない。
制御配列の例には、プロモーター(転写プロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーターなどの)、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写ならびに翻訳開始および翻訳終結を制御する適切な配列が含まれる。制御配列が本発明のDNA配列またはcDNA配列に機能的に関連する場合、核酸配列は「作動可能に連結」される。
各制御配列は、異種および相同制御配列から独立に選択されてもよい。
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび適正な転写に必要とされる他の因子に対する認識を提供してコード配列の発現を制御する、このコード配列の通常は上流(5’)のヌクレオチド配列を指す。「プロモーター」には、TATAボックスおよび転写開始の部位を規定するのに役立つ他の配列を含む短いDNA配列であり、調節エレメントが発現の制御のために付加される最小プロモーターが含まれる。「プロモーター」はまた、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができる、最小プロモータープラス調節エレメントを含むヌクレオチド配列も指す。このタイプのプロモーター配列は、近位およびより遠位の上流エレメントから成り、後者のエレメントは多くの場合、エンハンサーと呼ばれる。したがって、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができる、およびプロモーターの生来のエレメントであってもよく、またはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入される異種エレメントであってもよいDNA配列である。エンハンサーは、両方の配向(正常または反転)で作動することができ、プロモーターから上流または下流のどちらかに動かされた場合でさえ機能することができる。エンハンサーおよび他の上流プロモーターエレメントは両方とも、この効果を媒介する配列特異的DNA結合タンパク質を結合する。プロモーターは、この全体が天然遺伝子に由来してもよく、または天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されてもよく、またはさらには合成DNAセグメントを含んでもよい。プロモーターはまた、生理的または発生条件に応じて転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列も含有してもよい。
用語「核酸」は本明細書で使用されるとき、一本鎖型または二本鎖型のどちらかでのデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマー、すなわちポリヌクレオチドへの言及を含み、他に特に限定されない限り、天然に存在するヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)に類似した形で一本鎖核酸にハイブリダイズするという点で、天然ヌクレオチドの本質的性質を有する既知の類似体を包含する。ポリヌクレオチドは、天然または異種の構造遺伝子または調節遺伝子の完全長またはサブ配列であってもよい。他に特に示されない限り、該用語は、規定された配列およびこの相補的配列への言及を含む。故に、安定性のためまたは他の理由のために修飾された骨格を有するDNAまたはRNAは、この用語が本明細書で意図されるとき、「ポリヌクレオチド」である。さらに、ほんの2例を挙げると、イノシンなどの稀な塩基またはトリチル化塩基などの修飾塩基を含むDNAまたはRNAは、該用語が本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」である。当業者に知られた多くの有用な目的に適う非常にさまざまな修飾が、DNAおよびRNAに対して行われていることが理解される。用語「ポリヌクレオチド」は、これが本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチドのこのような化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態、ならびに、とりわけ単純および複雑細胞を含む、ウイルスおよび細胞のDNAおよびRNA特性の化学形態を包含する。
ポリペプチドをコードする本発明のあらゆる核酸配列は、遺伝コードへの言及により、核酸のあらゆる可能性のあるサイレントバリエーションを記述する。用語「保存的に修飾されたバリアント」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、用語「保存的に修飾されたバリアント」は、遺伝コードの縮重のため、同一のアミノ酸配列またはアミノ酸配列の保存的に修飾されたバリアントをコードするような核酸を指す。用語「遺伝コードの縮重」は、多数の機能的に同一の核酸が所与のタンパク質をコードするという事実を指す。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。故に、アラニンがコドンにより規定される全ての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを変えることなく、記載された対応するコドンのいずれにも変えられ得る。このような核酸バリエーションは「サイレントバリエーション」であり、保存的に修飾されたバリエーションの一種を表す。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用されてアミノ酸残基のポリマーを指す。該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的類似体であるアミノ酸ポリマー、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。天然に存在するアミノ酸のこのような類似体の本質的性質は、タンパク質に組み込まれた場合、同じタンパク質であるが天然に存在するアミノ酸から完全に成る抗体に対し、このタンパク質が特異的に反応することである。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」はまた、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADPリボシル化を含む修飾も含むが、これらに限定されない。
本出願の文脈内では、オリゴマー(オリゴヌクレオチド、オリゴペプチドなどの)は、ポリマーの群の一種とみなされる。オリゴマーは、比較的低い数の単量体単位、一般に2−100、特に6−100を有する。
「発現カセット」は本明細書で使用されるとき、終結シグナルに作動可能に連結された目的とするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができるDNA配列を意味する。発現カセットはまた、ヌクレオチド配列の適正な翻訳に必要とされる配列も典型的に含む。コード領域は通常、目的とするタンパク質をコードするが、センスまたはアンチセンス方向で目的とする機能的RNA、例えばアンチセンスRNAまたは非翻訳RNAもコードすることができる。目的とするヌクレオチド配列を含む発現カセットは、この成分の少なくとも1つが他の成分の少なくとも1つに対して異種であることを意味する、キメラであってもよい。発現カセットはまた、自然発生ではあるが異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または宿主細胞が多少の特定の外部刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。多細胞生物の場合、プロモーターは、特定の組織または器官または発生段階に特異的であることもできる。
用語「ベクター」は本明細書で使用されるとき、標的化細胞の形質転換を指示するように設計された遺伝物質を含む構築物を指す。ベクターは、核酸カセット中の核酸が転写され得、および必要な場合、形質転換細胞に翻訳され得るように位置的および連続的に配向された、すなわち、他の必要なエレメントと作動的に連結された複数の遺伝的エレメントを含有する。
特に、ベクターは、ウイルスベクター、(バクテリオ)ファージ、コスミドまたはプラスミドの群から選択することができる。ベクターは、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはアグロバクテリウムバイナリーベクターであってもよい。ベクターは、二本鎖または一本鎖の線形または環状形態であってもよく、自己伝播性(self transmissible)または可動性であってもなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込みまたは染色体外に存在すること(例えば複製起点を有する自己複製プラスミド)により、原核または真核宿主生物を形質転換することができる。詳細には、含まれるのはシャトルベクターであり、これは、放線菌および関連種、細菌ならびに真核生物(例えば高等植物、哺乳動物、酵母または真菌)細胞から選択することができる2つの異なる宿主生物において、天然にはまたは設計により複製することができるDNAビヒクルを意味する。好ましくはベクター中の核酸は、微生物(例えば細菌)細胞もしくは植物細胞などの宿主細胞における転写のための適切なプロモーター、または他の調節エレメントの制御下にあり、およびこれらに作動可能に連結されている。ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであってもよい。ゲノムDNAの場合には、これは、自身のプロモーターまたは他の調節エレメントを含有してもよく、およびcDNAの場合には、これは、宿主細胞での発現のための適切なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあってもよい。
本発明による核酸を含有するベクターは、当技術分野でそれ自体知られた方法論に基づいて調製することができる。例えば、転写または翻訳制御核酸配列などの適切な調節エレメントに作動可能に連結された本発明によるポリペプチドをコードするcDNA配列が使用されてもよい。
用語「ベクター」は本明細書で使用されるとき、標準的クローニング作業のためのベクター(「クローニングベクター」)、ならびに(常染色体)発現ベクターおよび宿主細胞の染色体への組み込みに使用されるクローニングベクター(「組み込みベクター」)のような、より特化されたタイプのベクターへの言及を含む。
「クローニングベクター」は、外来DNA配列が、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失することなく、判別可能な方法で挿入され得る1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、ならびにクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択における使用に適したマーカー遺伝子を典型的には含有する。
用語「発現ベクター」は、目的とするポリペプチドの転写を提供する追加の核酸セグメントの制御下で(すなわち該セグメントに作動可能に連結された)目的とするポリペプチドをコードするセグメントを含む、DNA分子(線形または環状)を指す。このような追加のセグメントは、プロモーターおよびターミネーター配列を含んでもよく、場合によって、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能なマーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等を含んでもよい。発現ベクターは、一般にプラスミドまたはウイルスDNAに由来し、または両方のエレメントを含有してもよい。特に発現ベクターは、5’から3’方向におよび作動可能に連結された、(a)宿主生物により認識される転写および翻訳開始領域、(b)目的とするポリペプチドのコード配列、ならびに(c)宿主生物により認識される転写および翻訳終結領域を含むヌクレオチド配列を含む。「プラスミド」は、微生物のゲノムに組み込まれない、天然には通常、環状である自己複製染色体外DNAを指す。
「組み込みベクター」は、微生物のゲノムに組み込むことができる、および目的とするポリペプチドをコードする遺伝子の安定な継承を提供するDNA分子(線形または環状)を指す。組み込みベクターは、目的とするポリペプチドの転写を提供する追加の核酸セグメントの制御下で(すなわち、該セグメントに作動可能に連結された)目的とするポリペプチドをコードする遺伝子配列を含む、1つ以上のセグメントを一般に含む。このような追加のセグメントは、プロモーターおよびターミネーター配列を含んでもよく、ならびに通常は相同的組換えのプロセスにより、標的細胞のゲノムへの目的とする遺伝子の取り込みを駆動する1つ以上のセグメントを含んでもよい。典型的には、組み込みベクターは、標的細胞に移入され得るものであるが、この生物において非機能性であるレプリコンを有するものである。目的とする遺伝子を含むセグメントの組み込みは、適切なマーカーがこのセグメント内に含まれる場合に選択することができる。
本明細書で使用されるとき、用語「作動可能に連結された(operably linked)」または「作動的に連結された(operatively linked)」は、このように記載された成分が意図された形で機能することを可能にする関係にある並置を指す。別の制御配列および/またはコード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の転写および/または発現が、制御配列と適合する条件下で達成されるような方法でライゲートされる。一般に、作動可能に連結されたは、連結されている核酸配列が隣接しており、ならびに、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合、隣接しおよび同じリーディングフレームにあることを意味する。
用語「バレンセンシンターゼ」は、ファルネシル二リン酸からのバレンセンの形成において触媒活性を有するポリペプチド、およびこのようなポリペプチドを含む他の部分に関して本明細書で使用される。このような他の部分の例には、1つ以上の他のポリペプチドを有する前記ポリペプチドの複合体、前記ポリペプチドの他の複合体(例えばメタロタンパク質複合体)、前記ポリペプチドおよび別の有機部分を含む巨大分子化合物、担体物質等に結合された前記ポリペプチドが含まれる。バレンセンシンターゼは、この天然の環境において、すなわちこれが生産された細胞内で、またはこれを生産する細胞によりこれが排出された培地において提供することができる。バレンセンシンターゼはまた、該ポリペプチドを生産した供給源から分離して提供されてもよく、標識部分で標識された担体等への付着により操作されてもよい。
用語、配列の「機能的相同体」、または手短に「相同体」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のアミノ酸が、置換、欠失、付加および/または挿入されているという条件で、前記特定の配列を含むポリペプチド、ならびに基質変換に対する同じ酵素機能性を(質的に)有するポリペプチド、すなわち、ファルネシル二リン酸からのバレンセンの形成において触媒活性を有する配列番号2を有する配列の相同体を指す。実施例2において、ポリペプチドまたはポリペプチドを含む部分が、ファルネシル二リン酸からのバレンセンの形成において触媒活性を有するかどうかを検証するのに適切である試験が記載される(「バレンセンシンターゼ変異体の(特異的)生産性および生成物特異性の判定」)。さらに、当業者は、本発明により包含される同等のヌクレオチド配列はまた、低条件、中程度の条件および/またはストリンジェントな条件下で、この特許請求の範囲の文字通りの範囲内にあるヌクレオチド配列とハイブリダイズする能力により定義することもできることを認識する。
好ましい本発明によるバレンセンシンターゼは、「バレンセンシンターゼ変異体の(特異的)生産性および生成物特異性の判定」−下記の実施例2で本明細書に記載された試験(本発明によるバレンセンシンターゼを含有する清澄化溶解物を用いる;しかし、同じ試験設定は、精製ポリペプチドを用いて適用することもできる)を用いて、pH7で判定された場合に、少なくとも3:1、特に少なくとも4:1のモル比バレンセン対ゲルマクレンA(既知のバレンセンシンターゼ触媒反応において形成された既知の副生成物)として表される、バレンセン形成の触媒に対する特異性を有する。前記比は、無限(1:0、すなわち検出可能な量の形成されたゲルマクレンAがない)、または最大100:1、または最大10:1または最大5:1であり得る。
配列同一性、相同性または類似性は、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上の核酸配列間の関係(これらの配列を比較して判定された)として本明細書では定義される。通常、配列同一性または類似性は、配列の全長にわたって比較されるが、しかし、互いに整列された配列の一部についてのみ比較することもできる。当技術分野において、「同一性」または「類似性」は、ポリペプチド配列間または核酸配列間の配列関連性の程度も意味する(このような配列間の一致により判定される場合であり得るとき)。配列同一性は本明細書で使用されるとき、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズム「Needle」により判定された値である。特に、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムが、「最長同一性」を計算するNOBRIEFオプション(NOに対する「Brief同一性および類似性」)を用いて使用され得る(バージョン2.8.0以上、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite−Rice,P.ら Trends in Genetics(2000)16:276−277頁;http://emboss.bioinformatics.nl/)。
2つの整列された配列間の同一性、相同性または類似性は、以下のように計算される:アライメント中のギャップの合計数を減算後、両方の配列における同一アミノ酸を示すアライメント中の対応する位置の数をアライメントの全長で除す。アミノ酸配列のアライメントについて、初期設定パラメーターは:マトリックス=Blosum62;オープンギャップペナルティー=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。核酸配列のアライメントについて、初期設定パラメーターは:マトリックス=DNAfull;オープンギャップペナルティー=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。手元の配列番号2によるバレンセンシンターゼまたは配列番号1による核酸と、前記バレンセンシンターゼの機能的相同体の間の相違は、例えば分子進化または合理的設計などの当業者に知られた生物学的技法により、または当技術分野で知られた変異誘発法(ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、定向進化、遺伝子組換え等)を用いて、例えばバレンセンシンターゼまたは核酸の特性を改善するために(例えば発現の改善)、行われた修飾の特に結果である可能性がある。バレンセンシンターゼのまたは核酸の配列は、1つ以上の天然に存在するバリエーションの結果として、それぞれ配列番号2および配列番号1の配列と比較して変更され得る。このような天然の修飾/バリエーションの例は、グリコシル化(「翻訳後修飾」としてより広く定義された)における違い、選択的スプライシングによる違い、および単一核酸多型(single nucleic acid polymorphism)(SNP)である。核酸は、配列番号2のポリペプチドと少なくとも1つのアミノ酸が異なるポリペプチドをコードするように修飾することができ、その結果、核酸は、配列番号2と比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含むポリペプチド(バレンセンシンターゼ活性を依然として有する)をコードする。さらに、人工遺伝子合成(合成DNA)が使用されてもよい。さらに、例えばWO 2008/000632に記載された方法、またはDNA2.0、GeneartおよびGenScriptのような商業的DNA合成企業により提供された方法に基づき、コドン最適化またはコドン対最適化が使用されてもよい。
本発明のポリペプチドと天然には関連しない適切なシグナルペプチドをコードする1つ以上の核酸配列が、(発現)ベクターに取り込まれてもよい。例えば、シグナルペプチドリーダーのDNA配列は、本発明のポリペプチドがシグナルペプチドを含む融合タンパク質として最初に翻訳されるように、本発明の核酸配列にインフレームで融合することができる。シグナルペプチドの性質に応じて、発現されたポリペプチドは種々に標的化される。意図された宿主細胞において機能性である分泌シグナルペプチドは、例えば、発現されたポリペプチドの細胞外分泌を増強する。他のシグナルペプチドは、発現されたポリペプチドを、葉緑体、ミトコンドリアおよびペルオキシソームのような特定のオルガネラに導く。シグナルペプチドは、意図されたオルガネラへのまたは細胞からの輸送時に、ポリペプチドから切断することができる。配列番号2によるポリペプチドまたはこの相同体のアミノまたはカルボキシル末端で、追加のペプチド配列の融合を提供することができる。
本発明者らは、配列番号2によるバレンセンシンターゼとは異なる、および向上した生産性を有する、本発明によるさまざまなバレンセンシンターゼを見出した。本発明によるバレンセンシンターゼは、1つのアミノ酸位置での修飾のみを含有するという点で、または2つ以上の修飾を含有するという点で、異なり得る。1つ以上の修飾は、特に1つ以上の置換であってもよい。1つ以上のアミノ酸がないこともあり得る。例えば、配列番号2の1−15位または1−16位の1つ以上のアミノ酸がない場合がある(ポリペプチドのNH末端から開始する残基番号付け)。
配列番号2のバレンセンシンターゼと比較して、生産性が改善されたバレンセンシンターゼ、特に配列番号2のバレンセンシンターゼの機能的相同体は、バレンセンシンターゼのさまざまな位置に修飾を含むことができる。修飾は、バレンセンシンターゼの第1のシェル位置、もしくはバレンセンシンターゼの第2のシェル位置、またはバレンセンシンターゼのより遠くの部分(基質結合部位から相対的に)に存在してもよい。用語「第1のシェルおよび第2のシェル」位置は、当技術分野で一般に知られている。
特に、アミノ酸が、バレンセンシンターゼの第1のシェル、第2のシェルまたはより遠くの部分の一部を形成するかどうかは、配列番号2のモデル構造を用いて判定することができる。このようなモデル構造は、分子モデリングパッケージYASARA Structureバージョン11.2.18(http://www.yasara.org(「YASARAモデル」)における日常的に利用可能な相同性モデリングにおいて調製された。モデリングに使用されたテンプレートは、Noel J.P.ら、ACS Chem.Biol.(2010)5:377−392頁により公表されているような、(2−シス、6−トランス)−2−フルオロファルネシル二リン酸(2F−FPP)と複合体化されたニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の5−エピ−アリストロチェンシンターゼの構造であった(座標:PDB ID:3M02)。YASARAプログラムへのこのテンプレートのロード後、プログラムのモデリングスピードを「スロー」に設定し、ならびに最大テンプレートおよび1テンプレート当たりの最大アライメントを1に設定して、相同性モデリングランが実行された。他の設定は、プログラムの初期設定で維持された。
第1のシェル位置は、モデル構造において結合された2F−FPPの原子の7.5オングストローム以内に少なくとも1つの非水素側鎖または骨格原子を有するアミノ酸残基として定義される。配列番号2と比較して、第1のシェルにおける修飾は、好ましくは可変の第1のシェル位置に存在する。これらは、配列番号2の301、303、307、310、331−337、341、409、413、416、420、435、437−441、444、476、479、481−484、486、487、491、552、553、556、557、560、569および574位(と整列する)位置である。
第2のシェル位置は、モデル構造において結合された2F−FPPの原子の7.5から15オングストロームの間に少なくとも1つの非水素側鎖または骨格原子を有するが、モデル構造において結合された2F−FPPの原子の7.5オングストローム以内に側鎖または骨格原子がないアミノ酸残基として定義される。配列番号2と比較して、第2のシェルにおける修飾は、好ましくは可変位置に存在する。可変の第2のシェル位置は、配列番号2の25、27−32、34、225−228、230、297−300、302、304−306、308、309、311−315、325−328、330、340、343−346、350、353、354、357、375、378、379、382、383、402−408、410−412、414、415、417、418、421、422、424、427−434、436、442、443、445−448、464、472−475、477、478、485、488−490、492−503、516、517、519−521、523、524、527、548−551、554、555、558、559、561−564、566−568、570、571、573、575、576、578および579位(と整列する)位置である。
第2のシェルまたは第1のシェルにおける修飾は、生産性が改善されたバレンセンシンターゼを得るために、より特に特異的生産性が改善されたバレンセンシンターゼを得るために有利であることが見出された。
有利な実施形態において、バレンセンシンターゼは、配列番号2におけるシステイン位置と対応する位置に少なくとも1つの修飾を有する。これらのシステイン位置は、配列番号2の16、225、244、323、327、405、503および527位(と整列する)位置である。
理論に拘束されることなく、このようなバレンセンシンターゼにおける改善された生産性は、部分的にまたは完全に、向上した酵素安定性、より正確には向上した動作安定性(経時的に触媒活性を喪失する傾向がより低い)の結果となり得ることが企図される。配列番号2におけるシステイン位置は、配列番号2におけるバレンセンシンターゼのYASARAモデルにおいて、遊離システインとしてまたはジスルフィド架橋中に生じる位置であってもよい。これらのシステイン位置は、配列番号2の16、225、244、323、327、405、503および527位(と整列する)位置である。
好ましい実施形態におて、本発明によるバレンセンシンターゼは、配列番号3に示されたアミノ酸配列またはこの機能的相同体を含む。本明細書では、「X」印が付いた位置は、好ましくは少なくとも1つのアミノ酸残基が、配列番号2における対応するアミノ酸残基とは異なるという条件で、任意のアミノ酸残基を原則として含有することができる。特に好ましい実施形態において、本発明によるバレンセンシンターゼは、配列番号4に示されたアミノ酸配列またはこの機能的相同体を含む。本明細書では、特に好ましいアミノ酸残基は、配列番号3において「X」印が付いた位置に対する丸括弧の間に与えられる。好ましくはこれらの位置の少なくとも1つは、配列番号2における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する。
特定の実施形態において、生産性が改善されたバレンセンシンターゼ、特に配列番号2のバレンセンシンターゼの機能的相同体は、配列番号2の87、93、128、171、178、187、226、302、312、319、323、398、436、448、449、450、463、488、492、502、507、530または559位と整列する位置の1つ以上において修飾を含む。
好ましい実施形態において、生産性が改善されたバレンセンシンターゼ、特に配列番号2のバレンセンシンターゼの機能的相同体は、配列番号2の16、128、171、187、225、244、300、302、307、319、323、327、331、334、398、405、409、410、412、436、438、439、444、448、449、450、463、488、490、492、502、503、507、527、556、559、560、566、568、569および570の群から選択される位置と対応するアミノ酸位置に、配列番号2により表されたバレンス(valence)シンターゼと比較して1つ以上の修飾、特に1つ以上の置換を有する。より好ましくは、生産性が改善されたバレンセンシンターゼは、配列番号2の16、225,244、300、302、307、323、327、331、334、405、409、410、412、436、438、439、444、448、449、450、463、488、490、492、502、503、507、527、556、559、560、566、568、569および570の群から選択される1つ以上の位置と対応する(整列する)位置に1つ以上の修飾を含む。
特に好ましい実施形態において、バレンセンシンターゼは、16A、16T、16S、128L、171R、187K、225S、244S、244T、300Y、302D、307T、307A、319Q、323A、327L、331G、334L、398I、398M、398T、405T、405V、409F、410F、410V、410L、412G、436L、436K、436T、436W、438T、439G、439A、444I、444V、448S、449F、449I、449Y、450L、450M、450V、463E、463S、463G、463W、488Y、488H、488S、490N、490A、490T、490F、492A、492K、502Q、503S、507E、507Q、527T、527S、527A、556T、559H、559L、559V、560L、566S、566A、566G、568S、569I、569V、570T、570G、570Aおよび570Pの群から選択される1つ以上の修飾を有する。
特に、良好な結果は、16A、16T、16S、244S、244T、300Y、307T、307A、323A、327L、331G、334L、405T、405V、409F、410F、410V、410L、412G、436L、436K、436T、438T、439G、439A、444I、448S、449F、450M、450L、450V、463E、463S、463G、463W、488Y、488S、488H、490N、490A、490T、490F、492A、492K、502Q、503S、507E、507Q、527T、527S、527A、556T、559H、559L、559V、560L、566S、566A、566G、568S、569I、569V、570T、570Gおよび570Pの群から選択される1つ以上の修飾を有するバレンセンシンターゼにより達成された。
特に高い生産性は、16A、244S、300Y、307T、307A、323A、327L、331G、334L、405T、409F、410F、410V、410L、412G、436L、436K、436T、438T、439G、439A、449F、450L、450V、488Y、488H、488S、490N、490A、490T、492A、492K、502Q、503S、507E、507Q、527T、556T、559H、559L、560L、566S、566A、568S、569I、569V、570Tおよび570Gの群から選択される少なくとも1つの修飾を有するバレンセンシンターゼについて観察された。
配列番号2と比較して少なくとも2つの修飾を含むバレンセンシンターゼの好ましい例は、少なくとも2つの修飾が、128L、187K、302D、398I、398M、398T、436L、436K、436W、449F、449I、449Y、450L、450F、450V、463E、463S、463G、463W、488S、488Yおよび488Hから選択されるものである。特に良好な結果は、少なくとも2つの修飾が、463、488、436、450と対応する少なくとも2つの位置での修飾から選択される、好ましくは463および488、または436および450と対応する位置での変異である、配列番号2と比較して少なくとも2つの修飾を含むバレンセンシンターゼにより達成された。修飾は、好ましいとき、上記の本明細書に示された置換から特に選択されてもよい。
良好な結果は、配列番号2と比較して、1つまたは2つの変異(置換)のみを有するバレンセンシンターゼにより得られたが、本発明によるバレンス(valence)シンターゼは、より多くの修飾、特に3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上または7つ以上の修飾を含むことができる。酵素がバレンセンシンターゼとしての十分な触媒特性を保持するという条件で、原則として修飾の数に制限はない。しかし、少なくともバレンセンシンターゼの機能的相同体について、配列番号2の第1および第2のシェルにおける厳密に保存された残基と整列する位置は、配列番号2と同じアミノ酸残基を含むことが一般に好ましい。バレンセンシンターゼの有利な生産性特性を達成するためには、これらは特に、配列番号2の324、329、338、339、342、359、360、369、419、426、480、532、555および565位である。
配列番号2のバレンセンシンターゼと比較して向上した生産性を有するバレンセンシンターゼは、好ましくは、配列番号2のバレンセンシンターゼの機能的相同体である。配列番号2のバレンセンシンターゼと比較して向上した生産性を有するバレンセンシンターゼは、バレンセンシンターゼが配列番号2と比較して少なくとも1つの修飾を含有するという条件で、配列番号2と少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%配列同一性を有するアミノ酸配列を好ましくは含む。バレンセンシンターゼは、配列番号2とこのような配列同一性を有するポリペプチドから成ってもよい。しかし、バレンセンシンターゼが、このような配列同一性を有する少なくとも1つのセグメント、およびタグペプチドなどの少なくとも1つのさらなるペプチドセグメントを含むこともあり得る。
故に、特定の実施形態において、本発明は、第1のポリペプチドセグメントおよび第2のポリペプチドセグメントを含み、第1のセグメントがタグペプチドを含み、第2のセグメントがバレンセンシンターゼ活性を有する本発明によるポリペプチドを含む、バレンセンシンターゼに関する。
タグペプチドは、好ましくは、窒素利用タンパク質(NusA)、チオレドキシン(Trx)およびマルトース結合タンパク質(MBP)の群から選択される。Zhang、Y−Bら、Protein Expression and Purification(2004)36:207−216頁により記載されている、さらに大きい実効負電荷を有する小ペプチドがタグペプチドとして使用されてもよい。特に適切なのは、エシェリキア・コリ由来のマルトース結合タンパク質である。タグは、活性型でのバレンセンシンターゼの発現を増加して、酵素の生産性を特に改善することができる。好ましくは、タグペプチドセグメントを有する本発明によるバレンセンシンターゼは、特にタグペプチドが、窒素利用タンパク質(NusA)、チオレドキシン(Trx)およびマルトース結合タンパク質(MBP)の群から選択される場合、配列番号2により表されたバレンセンシンターゼと比較して、向上した特異的生産性、向上した安定性または向上した生成物特異性(ゲルマクレンAへのファルネシル二リン酸の変換と比べて)を有する。
タグ付けされたバレンセンシンターゼの改善された可溶性(タグがないバレンセンシンターゼと比較して)について、該酵素の第1のセグメントは、第2のセグメントのC末端からN末端で好ましくは結合される。あるいは、タグ付けされた酵素の第1のセグメントは、第2のセグメントのN末端からC末端で結合される。
本発明は、さらに、本発明によるベクターを含む宿主細胞に関する。「宿主細胞」により、ベクターを含有し、ベクターの複製および/または発現を支持する細胞が意味される。
宿主細胞においてバレンセンシンターゼをコードする核酸は、一般に、宿主細胞に対し異種である。宿主細胞は、原核細胞、真核細胞または古細菌(Archaea)のメンバー由来の細胞であってもよい。宿主細胞は、任意の生物、特に任意のヒト以外の生物由来であってもよい。特に宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、古細菌、原生生物、植物細胞(藻類を含む)、動物に由来する細胞(特に前記動物から単離された)から選択することができる。宿主細胞は、ヒト以外または酵素が天然に由来する生物以外の多細胞生物の部分を形成してもよい。特定の実施形態において、本発明の宿主細胞は、多細胞生物に由来し、さらにそこから単離された細胞の培養物である。
一般に、宿主細胞は、普遍的なイソプレノイド構成単位であるC5プレニル二リン酸イソペンテニル二リン酸(IPP)およびジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の生産を可能にする、メバロン酸経路または別の代謝経路(デオキシキシルロース−5−リン酸(DXP)経路などの)の反応ステップを触媒する酵素を発現する遺伝子を含む生物である。知られている限り、特異的遺伝子がノックアウトされている場合を除き、全ての既知の生物はこのような経路を含む。真核生物は、一般に、天然にメバロン酸経路を介してIPPを調製することができる。このIPPは、次いで酵素イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(Idi)の作用によりDMAPPに異性化される。IPPおよびDMAPPを5:1比で提供しているDXP経路は原核生物に共通しているが、いくつかの原核生物は、天然にメバロン酸経路を介してIPPを調製することができる。これらの経路は、当技術分野で知られており、例えば、Appl.Microbiol.Biotechnol.(2007)73:980−990頁においてWithersおよびKeaslingにより記載されている(これらの経路の記載、ならびに特に図1および前記経路の1つまたは両方で役割を果たす前記刊行物で言及された酵素に関する内容は、参照により包含される)。これらの経路の遺伝子は、該細胞に対し各々独立に相同または異種であってもよい。
宿主細胞は、さらに、より長いプレニル二リン酸を生産するC5プレニル二リン酸の頭尾縮合を触媒するプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を発現する1つ以上の遺伝子を、内因性にまたは異種の供給源から含む。例えば、普遍的なセスキテルペン前駆体ファルネシル二リン酸(FPP)は、DMAPPの1分子へのIPPの2分子の連続頭尾付加によるこれらの酵素の作用により形成される。
一実施形態において、宿主細胞は細菌である。細菌は、グラム陽性またはグラム陰性であってもよい。グラム陽性細菌は、バチルス属およびラクトバチルス属、特にバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)種およびラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)種から選択することができる。
好ましい実施形態において、細菌は、グラム陰性細菌の群、特にロドバクター属、パラコッカス属およびエシェリキア属の群、より特にロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドバクター・スフェロイデス、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)およびエシェリキア・コリの群から選択される。ロドバクター・スフェロイデスは、IPPおよびDMAPPの細胞内生産を可能にする、DXP経路でのさまざまな反応ステップを触媒する酵素を発現するのに必要とされる全ての遺伝子を天然に含有する生物の例である。
一実施形態において、宿主細胞は、真菌細胞、特にアスペルギルス属、ブラケスレア属(Blakeslea)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファフィア属(Phaffia)(キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyce))、ピキア属(Xanthophyllomyce)、サッカロミセスおよびヤロウイア属(Yarrowia)の群、より特にアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、ブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ファフィア・ロドジマ(Phaffia rhodozyma)(キサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous))、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエおよびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の群から選択される真菌細胞である。
植物細胞および動物細胞(昆虫細胞、またはマウス、ラットもしくはヒト由来の細胞などの)などの高等真核生物に由来する細胞において、本発明の核酸を発現することも可能である。前記細胞は、細胞または組織培養において維持することができ、バレンセンシンターゼのインビトロ生産に使用することができる。
本発明による宿主細胞を含む多細胞生物は、多細胞植物およびキノコ(担子菌類(Basidiomycetes))の群から特に選択することができる。
故に、特定の実施形態において、本発明は、トランスジェニック植物または植物細胞またはトランスジェニック植物細胞を含む組織培養物であって、本発明による植物宿主細胞を含む前記植物または培養物に関する。トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物細胞の培養物は、タバコ属種(Nicotiana spp.)、ナス属種(Solarium spp.)、チコルム・インティバス(Cichorum intybus)、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)、ハッカ属種(Mentha spp.)、アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua)、ヘリアンサス・ツベロスス(Helianthus tuberosus)、キャッサバおよびベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)などの塊茎形成植物(tuber forming plant)、アブラナ属種(Brassica spp.)、アブラヤシ属種(Elaeis spp.)(アブラヤシの木)、ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus)、グリシン・マックス(Glycine max)およびアラキス・ヒポゲア(Arachis hypogaea)などの油料作物、ウキクサ(duckweed)アオウキクサ属種(Lemna spp.)、タバコBY2細胞およびフィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)などの液体培養植物、マツおよびポプラなどの樹木、それぞれ前記植物のいずれかの細胞培養物または組織培養物から特に選択することができる。特定の実施形態において、組織培養物は毛状根培養物である。
さらなる特定の実施形態において本発明は、トランスジェニックキノコまたはトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物に関する。トランスジェニックキノコまたはトランスジェニック宿主細胞を含む培養物は、特に、シゾフィラム属(Schizophyllum)、アガリクス属(Agaricus)およびヒラタケ属(Pleurotus)、より特にシゾフィラム・コムーネ(Schizophyllum commune)、ツクリタケ(アガリクス・ビスポラス(Agaricus bisporus))、ヒラタケ(プレウロタス・オストレオタス(Pleurotus ostreotus)およびプレウロタス・サピダス(Pleurotus sapidus))の群(それぞれ、いずれかの前記キノコの細胞を含む培養物)から選択することができる。バレンセンシンターゼを発現するのにキノコを使用する1つの追加の利点は、少なくともいくつかのキノコは、バレンセンをノートカトンに変換することができることである(Fraatz、M.A.ら、J.Mol.Catal.B:Enzym.(2009)61:202−207頁)。
バレンセンそれ自体の生産に次いで、本発明によるバレンセンシンターゼの発現および植物またはキノコにおけるバレンセンの生産は、これらの生物における耐性も提供する。まず第一に、バレンセンは防虫剤として作用することが知られており、蚊、ゴキブリ、ダニ、ノミ、シロアリおよびドロソフィラ属(Drosophila)などの昆虫に対して活性である。さらに、バレンセンは、真菌フィトフトラ属(Phytophthora)、特にフィトフトラ・ラモルム(P.ramorum)(サドンオークデス病原体)(Manter,D.K.ら、Forest Pathology(2006)36:297−308頁)などの病原体に対して植物を耐性にすることが知られている。
本発明による宿主細胞は、例えばSambrook,J.、およびRussell,D.W.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);ならびにF.M.Ausubelら編、「Current protocols in molecular biology」、John Wiley and Sons,Inc.、New York(1987)、および後のこの補遺に記載された、当技術分野で一般に知られている標準的な遺伝学的および分子生物学的技法に基づいて生産することができる。
担子菌類を形質転換する方法は、例えば、Alvesら(Appl.Environ.Microbiol.(2004)70:6379−6384頁)、Godioら(Curr.Genet.(2004)46:287−294頁)、Schuursら(Genetics(1997)147:589−596頁)、およびWO 06/096050から知られている。担子菌類における適切なバレンセンシンターゼ遺伝子の発現を達成するために、この完全なオープンリーディングフレームが、担子菌類の形質転換に適切な発現ベクターに典型的にはクローン化される。発現ベクターは、転写開始および終結を制御する核酸配列も好ましくは含む。形質転換体の選択を可能にする少なくとも1つの選択可能なマーカー遺伝子を取り込むこともまた好ましい。バレンセンシンターゼの発現は、担子菌類プロモーター、例えば構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを用いて達成することができる。強力な構成的プロモーターの例は、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpdA)プロモーターである。このプロモーターは、組換えDNA材料が担子菌類宿主において発現される場合の構成的発現に好ましい。他の例は、担子菌類のホスホグリセリン酸キナーゼ(pgk)プロモーター、ピルビン酸キナーゼ(pki)プロモーター、TPI、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpi)プロモーター、APC合成酵素サブユニットg(oliC)プロモーター、sc3プロモーターおよびアセトアミダーゼ(amdS)プロモーターである(WO 96/41882)。
必要であれば、バレンセンシンターゼ遺伝子の一次ヌクレオチド配列を、担子菌類宿主のコドン使用頻度に適合させることができる。
さらに、発現は、特に(一核性)菌糸または(二核性)子実体を対象とすることができる。後者の場合では、プレウロティス(Pleurotis)のFbh1プロモーターが特に有用である(Penas,M.M.ら、Mycologia(2004)96:75−82頁)。
植物形質転換コンストラクトの構築のための方法論は、当技術分野で記載されている。過剰発現は、選択された遺伝子の1つまたは2つ以上の過剰コピーの挿入により達成することができる。ヌクレオチド配列の1つまたは2つ以上の過剰コピーで最初は形質転換された植物またはこの子孫が、過剰発現を示すことは知られていないわけではない。
適切な植物組織において十分なレベルのトランスジェニック発現を得ることは、遺伝子改変作物の生産における重要な側面である。異種DNA配列の発現は、植物宿主内で機能性である作動可能に連結されたプロモーターの存在に左右される。プロモーター配列の選択は、いつ、および生物内のどこで異種DNA配列が発現されるかを決定する。双子葉植物由来の多くのプロモーターは、単子葉植物において作動性であり、この逆も同様であることが示されているが、理想的には、双子葉植物プロモーターは、双子葉植物での発現に対して選択され、単子葉植物プロモーターは単子葉植物での発現に対して選択される。しかし、選択されるプロモーターの起源に制限はなく、所望の細胞または組織でのヌクレオチド配列の発現の駆動において作動性であることが十分である。いくつかの場合では、複数の組織での発現が望ましく、35Sプロモーターシリーズなどの構成的プロモーターがこの点で使用され得る。しかし、本発明の実施形態のいくつかにおいて、トランスジェニック植物での発現は葉特異的であることが好ましく、より好ましくは、遺伝子の発現は葉プラスチドで生じる。ポプルス・アルバ(Populus alba)由来のイソプレンシンターゼ遺伝子(PaIspS)(Sasakiら、FEBS Letters(2005)579:2514−2518頁)のプロモーターは、プラスチド特異的発現を駆動するようである。したがって、このプロモーターは、本発明の発現ベクターにおける使用に極めて適切なプロモーターである。
他の適切な葉特異的プロモーターは、rbcS(ルビスコ)プロモーター(例えばコーヒー由来、WO 02/092822参照);アブラナ属種由来、US 7,115,733;大豆由来、Dhanker,O.ら、Nature Biotechnol.(2002)20:1140−1145頁参照)、cy−FBPaseプロモーター(US 6,229,067参照)、アブラヤシ由来の集光性クロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーター配列(US 2006/0288409参照)、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のSTP3プロモーター(Buttner,M.ら、Plant cell & Environ.(2001)23:175−184頁参照)、マメPAL2遺伝子のプロモーター(Sablowski,R.W.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:6901−6905頁参照)、ジャガイモST−LS1プロモーターのエンハンサー配列(Stockhaus,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)84:7943−7947頁参照)、小麦CAB1プロモーター(Gotor,C.ら、Plant J.(1993)3:509−518頁参照)、ジャガイモADP−グルコース−ホスホリラーゼ遺伝子由来の気孔特異的プロモーター(US 5,538,879参照)、コメのP(D540)遺伝子由来のLPSE1エレメント(CN 2007/10051443参照)、およびアラビドプシス・タリアナ由来の気孔特異的プロモーター、pGC1(At1g22690)(Yang,Y.ら、Plant方法s(2008)4:6頁参照)である。
植物種は、当技術分野でよく知られた手順に従って、例えば、植物細胞プロトプラストのDNA媒介形質転換、およびこの後の形質転換プロトプラストからの植物の再生により形質転換されてもよい。
植物細胞を形質転換する方法のさらなる例には、マイクロインジェクション(Crosswayら、Mol.Gen.Genet.(1986)202:179−185頁)、エレクトロポレーション(Riggs,CD.およびBates,G.W.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)、83:5602−5606頁)、アグロバクテリウム媒介形質転換(Hincheeら、Bio/Technol.(1988)6:915−922頁)、直接遺伝子導入(Paszkowski,J.ら、EMBO J.(1984)3:2717−2722頁)およびAgracetus、Inc.(マジソン、ウィスコンシン)およびBioRad(ハーキュリーズ、カリフォルニア)から入手可能な装置を用いた弾道粒子加速(ballistic particle acceleration)(例えば、Sanfordら、米国特許第4,945,050号明細書および欧州特許出願第EP 0 332 581号明細書参照)が含まれる。
トウモロコシにはプロトプラスト形質転換方法を使用することもできる(欧州特許出願第EP 0 292 435号明細書、米国特許第5,350,689号明細書)。
アグロバクテリウム属種のTiおよびRiプラスミドのバイナリー型ベクターを使用することが特に好ましい。Ti由来ベクターは、大豆、綿、セイヨウアブラナ、タバコおよびコメ(Pacciottiら、Bio/technol.(1985)3:241頁;Byrne M.C.ら、 Plant Cell Tissue and Organ Culture(1987)8:3−15頁;Sukhapinda,K.ら、Plant Mol.Biol.(1987)8:209−217頁;Hiei,Y.ら、The Plant J.(1994)6:271−282頁)などの単子葉および双子葉植物を含む、多種多様な高等植物を形質転換する。植物細胞を形質転換するためのT−DNAの使用は広範囲に研究されており、十分に記載されている(例えばEP−A 120 516)。植物への導入のため、本発明のキメラ遺伝子は、例に記載されたバイナリーベクターに挿入されてもよい。
外来DNAコンストラクトの直接取り込み(EP−A 295 959参照)、エレクトロポレーション法(Fromm,M.E.ら、Nature(1986)、319:791−793頁)または核酸コンストラクトで被覆された金属粒子による高速弾道衝撃(high velocity ballistic bombardment)(例えばUS 4,945,050)などの他の形質転換方法が、当業者に利用可能である。ひとたび形質転換されれば、細胞は当業者により再生され得る。特に関連するのは、菜種(De Block,M.ら、Plant Physiol.(1989)91:694−701頁)、ヒマワリ(Everett,N.P.ら、Bio/Technology(1987)5:1201−1204頁)、大豆(EP−A 301 749)、コメ(Hiei,Y.ら、The Plant J.(1994)6:271−282頁)およびトウモロコシ(Frommら、1990、Bio/Technology 8:833−839頁)などの商業的に重要な作物に外来遺伝子を形質転換する方法である。
当業者は、方法の選択が植物のタイプ、すなわち、単子葉植物または双子葉植物に依存し得ることを理解する。
別の実施形態において、本明細書に記載されたベクターは、プラスチドゲノムに直接形質転換されてもよい。プラスチド形質転換技術は、例えば、US 5,451,513、US 5,545,817、US 5,545,818およびWO 95/16783に広く記載されている。葉緑体形質転換のための基本技法は、目的とする遺伝子と一緒に選択可能なマーカーを隣接するクローン化プラスチドDNAの領域を、例えば微粒子銃またはプロトプラスト形質転換(例えば塩化カルシウムまたはPEG媒介形質転換)を用いて、適切な標的組織に導入することを含む。
本発明によるベクター(ベクターがTiプラスミドを含む)を含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞は、形質転換植物を作製する方法において有用である。植物細胞は、上記のアグロバクテリウム・ツメファシエンスに感染されて形質転換植物細胞を生産し、次いで植物が形質転換植物細胞から再生される。本発明を実施する上で有用な多数のアグロバクテリウムベクター系が知られている。これらは、典型的には少なくとも1つのT−DNA境界配列を保有し、およびpBIN19(Bevan、Nucl.Acids Res.(1984)12:8711−8720頁)などのベクターを含む。
直接遺伝子導入またはアグロバクテリウム媒介移入の形態のどちらかを用いる方法は、必ずしもではないが通常は、抗生物質(例えばカナマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)または除草剤(例えばホスフィノトリシン)に対する耐性を提供する可能性がある選択可能なマーカーを用いて行われる。しかし、植物形質転換のための選択可能なマーカーの選択は、本発明にとって重要ではない。
植物組織を培養する一般的な方法は、Maki,K.Y.ら、Plant Physiol.(1993)15:473−497頁;およびPhillips,R.I.ら In:Sprague GF、Dudley JW編 Corn and corn improvement.第3版、Madison(1988)345−387頁による例が提供されている。
形質転換後、トランスジェニック植物細胞は、トランスジェニック細胞の選択に適切な選択培地に置かれ、次いでカルスに増殖される。芽をカルスから成長させ、発根培地での成長により小植物が芽から発生される。使用される特定のマーカーは、導入されたDNAを欠く細胞と比較して形質転換細胞の選択を可能にする。
トランスジェニック細胞および植物におけるトランス遺伝子の存在を確かめるために、さまざまなアッセイが行われ得る。このようなアッセイには、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、PCRまたはRT−PCRなどの核酸ベースの増幅方法などの当業者によく知られた「分子生物学的」アッセイ、ならびに例えば免疫学的手段(ELISAおよびウェスタンブロット)または酵素機能による、タンパク質生成物の存在の検出などの「生化学」アッセイが含まれる。酵素的に活性なバレンセンシンターゼの存在は、植物の揮発性生成物(バレンセン)の化学的分析により確立することができる。
本発明によるバレンセンシンターゼは、バレンセンの工業生産に使用することができ、バレンセンは、例えば食品における風味もしくは香気として、または例えば家庭用品における芳香としてそれ自体使用されてもよく、または別のイソプレノイド、例えばノートカトンを生産するための中間体として使用され得る。
本発明によるバレンセンを生産するための方法は、バレンセンシンターゼの存在下でバレンセンを調製することを含む。原則としてこのような方法は、目的とする化合物の調製において酵素を使用する任意の技法に基づくことができる。
方法は、FPPまたは任意のこの前駆体(ファルネソール、IPP、イソペンテニルリン酸(isopentenyl phosphate)、3−メチルブタ−3−エン−1−オールおよびさらにメバロン酸などの)が、バレンセンシンターゼを含む細胞に基質として与えられる方法であってもよい。あるいは、方法は、適切な炭素供給源からFPPを形成し、故にバレンセンへの十分な発酵経路を確立することができる酵素系を含む生体が使用されてもよい。用語「発酵(fermentative)」は、適切な原料(例えば炭水化物、アミノ酸供給源、脂肪酸供給源)から化合物を合成するために生物の培養物が使用されるプロセスに対して、広い意味で本明細書では使用されることが留意されるべきである。故に、本明細書で意味される発酵プロセスは、嫌気条件に限定されず、好気条件下のプロセスまで拡大される。適切な原料は、一般に(微)生物の個々の種に対して知られている。
また、例えば基質(FPP)およびバレンセンシンターゼが適切な条件(pH、溶媒、温度)下で接触される反応系において、バレンセンが生産された細胞から単離されたバレンセンシンターゼが使用されてもよく、該条件は、本明細書で参照された先行技術および本開示に基づくことができる(場合によっていくつかの日常的試験との併用で)。バレンセンシンターゼは、例えば同様にFPPが存在する水性培地で可溶化されてもよく、またはバレンセンシンターゼは、当技術分野で知られた方法で担体物質に固定化され、次いでFPPを含む液体と接触されてもよい。該酵素は、FPPからバレンセンへの触媒に対して高い活性および/または選択性を有することから、本発明はまた、酸性条件下だけでなく、pHがほぼ中性またはアルカリ性の場合にも、このようなインビトロ方法に有利である。適切な条件は、例えば、本明細書で参照された文献、本明細書に開示された情報、共通の一般知識および場合によっていくつかの日常的実験において参照される、既知のバレンセンシンターゼに関する既知の方法論に基づくことができる。
本発明の特に有利な方法において、バレンセンは発酵調製される(すなわちバレンセンシンターゼを発現する細胞を培養培地で培養して)。バレンセンシンターゼにより触媒される実際の反応は、細胞内で起こり得、または−バレンセンシンターゼが培養培地に排出される場合−培養培地において細胞外に起こり得る。
本発明によるバレンセンを調製するための方法で使用される細胞は、特に、本発明による宿主細胞であってもよい。所望であれば、これらの宿主細胞は、バレンセンシンターゼにFPPを増加量で供給するように改変することができる。これは、例えば、FPPに対する炭素フラックスの増強(これ自体、種々の方法で実現され得る)により行うことができる。内因性DXP経路を有する宿主細胞(エシェリキア・コリおよびロドバクター・スフェロイデスのような)において、これらの経路の酵素の発現の調節解除は、イソプレノイド形成に対する明らかなプラス効果を有し得る。DXP経路の第1の酵素および故に代謝工学の主要な標的の1つ、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼ(DXPシンターゼ)をコードするdxsの過剰発現は、いくつかのイソプレノイドの生合成の増加をもたらした(例えば、MatthewsおよびWurtzel、Appl.Microbiol.Biotechnol.(2000)53:396−400頁;Huangら、Bioorg.Med.Chem.(2001)9:2237−2242頁;HarkerおよびBramley、FEBS Lett(1999)448:115−119頁;Jonesら Metab.Eng.(2000)2:328−338頁;およびYuanら Metab.Eng.(2006)8:79−90頁)。また、DXP経路における第2の関与段階を触媒する酵素、DXPイソメロレダクターゼ(1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼとしても知られる)をコードするdxrの過剰発現は、イソプレノイド生産の増加をもたらすことができ(Albrechtら、Biotechnol.Lett.(1999)21:791−795頁)、この効果は、同時にdxsを共過剰発現することによりさらに増加され得る(KimおよびKeasling、Biotechnol Bioeng(2001)72:408−415頁)。イソプレノイド生合成に対するプラス効果は、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)へのIPPの相互変換を触媒する酵素、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IPPイソメラーゼ、Idi)(例えば、Kajiwaraら Biochem.J.(1997)324:421−426頁);MisawaおよびShimada、J.Biotech.(1998)59:169−181頁;ならびにYuanら Metab.Eng.(2006)8:79−90頁)、ならびにエシェリキア・コリにおいて1つのオペロンispDFとして転写される、酵素MEPシチジリルトランスフェラーゼ(4−ジホスホシチジル−2−C−メチル−D−エリトリトールシンターゼ、IspDとしても知られる)および2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸シンターゼ(IspF)(Yuanら Metab.Eng.(2006)8:79−90頁)の過剰発現によりさらに得られた。
イソプレノイドの高レベル生産のために、内因性DXP経路で株を改変するための代替のより効率的なアプローチが、異種メバロン酸経路の導入である。合成アモルファ−4,11−ジエンシンターゼ遺伝子とのサッカロミセス・セレビシエメバロン酸経路のエシェリキア・コリにおける共発現は、組換えエシェリキア・コリ株がLB+グリセロール培地で培養された場合、110mg/Lを超える力価でセスキテルペンアモルファジエンの形成をもたらした(Martinら Nat.Biotechnol.(2003)21:796−802頁)。このエシェリキア・コリ株は、この後、酵母酵素3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−コエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼのC末端触媒ドメインをコードする遺伝子tHMG1の過剰コピーの導入により改善された。この酵素の形成および故に活性を増加させることにより、毒性メバロン酸経路中間体HMG−CoAの細胞内レベルが低減され、これにより成長阻害を克服し、メバロン酸の生産の増加をもたらした(Piteraら Metab.Eng.(2007)9:193−207頁)。異種メバロン酸経路を通じたフラックスのさらなる改善は、2倍強力なlacUV5プロモーターによる野生型lacプロモーターの置換との組み合わせで、この経路の最初の3つの遺伝子のコドン最適化により得られた(Anthonyら Met.Eng.(2009)11:13−19頁)。アモルファジエンの生産は、HMG−CoAシンターゼおよびHMG−CoAレダクターゼの酵母遺伝子をグラム陽性細菌スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来の同等の遺伝子と置換してさらに増加させることができた。最適化発酵プロトコルとの組み合わせで、この新規の改変エシェリキア・コリ株の培養は、27.4g/Lのアモルファジエン力価をもたらした(Tsurutaら PloS ONE(2009)4(2):e4489.doi:10.1371/journal.pone.0004489)。同様に、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)由来のメバロン酸経路で改変されたエシェリキア・コリ株は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスデカプレニル二リン酸シンターゼ(ddsA)遺伝子との組み合わせで、2400μg/gを超える細胞乾燥重量でコエンザイムQ10(CoQ10)を生産した(Zahiriら Met.Eng.(2006)8:406−416頁。CoQ10の増加した生産は、天然でのパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(WO 2005/005650)および変異型でのパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(WO 2006/018211)由来のメバロン酸経路によるロドバクター・スフェロイデス株の改変によっても得られた。
また、内因性MEV経路を有する宿主細胞(サッカロミセス・セレビシエのような)も、イソプレノイド高生産性株を得るための複数の改変研究の主題となっている。柑橘類バレンセンシンターゼをコードする遺伝子と組み合わせた、異種エシェリキア・コリ由来DXP経路のサッカロミセス・セレビシエへの導入は、バレンセンシンターゼのみを発現する株と比較して、約10倍多いバレンセンを蓄積する株をもたらした(WO 2007/093962)。しかし、工業的に重要な酵母カンジダ・ユーティリス(Candida utilis)およびサッカロミセス・セレビシエにおけるほとんどの改善は、相同MEV経路の改変に重点を置いている。特に、DXP経路における主要な調節酵素と考えられる酵素HMG−CoAレダクターゼの過剰発現(この完全長または切断バージョンでの)は、イソプレノイドの生産を増加させる効率的な方法であるように思われている。N末端切断HMG−CoAレダクターゼの過剰発現のこの刺激効果は、例えば、カンジダ・ユーティリスにおけるリコペン生産(Shimadaら Appl.Env.Microbiol.(1998)64:2676−2680頁)およびサッカロミセス・セレビシエにおけるエピ−セドロール(epi−cedrol)生産(Jacksonら Org.Lett.(2003)5:1629− 1632頁)の場合に観察されている。後者の場合では、このセスキテルペンの生産は、ステロール生合成への代謝フラックスの増加を誘発するアレル、upc2−1の導入によりさらに増強することができた。MEV経路を通じてフラックスを増加させるための別の方法は、FPPおよび他のイソプレノイド前駆体によるフィードバック阻害に対して感受性が低いメバロン酸キナーゼバリアントの使用である。例えば、WO 2006/063752は、サッカロミセス・セレビシエメバロン酸キナーゼ変異体N66K/I152Mおよびパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスATCC 21588由来のddsA遺伝子の導入後、内因性MEV経路を有する細菌、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスR114が、野生型サッカロミセス・セレビシエメバロン酸キナーゼを発現する対応するパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス株より、著しく多いコエンザイムQ10を生産することを示している。パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスR114によるCoQ10生産に関する類似の陽性結果は、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスメバロン酸キナーゼのフィードバック耐性バリアントK93Eでも得られている(WO 2004/111214)。
FPP量の増加に対する第2のアプローチは、FPPに対する酵素副活性の低減または排除に基づく。酵母において遺伝子ERG9は、2つのファルネシル二リン酸部分の縮合を触媒してスクアレンを形成する酵素ファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ(スクアレンシンターゼ)をコードする。これは、ステロール生合成におけるFPP後の最初のステップであり、故にステロール経路へのイソプレン単位のフラックスを調節することから、ERG9は、セスキテルペンおよびカルテノイド生産の増加のための酵母代謝工学における高頻度の標的である。酵母カンジダ・ユーティリスにおけるtHMG−CoAレダクターゼの過剰発現と組み合わせたERG9の破壊は、リコペンの生産の増加をもたらした(Shimadaら Appl.Env.Microbiol.(1998)64:2676−2680頁)。tHMG−CoAレダクターゼの過剰発現およびメチオニン抑制性プロモーターを用いたERG9の下方制御の類似の組み合わせは、アモルファジエンシンターゼ遺伝子のみを発現する酵母株と比較して、酵母におけるセスキテルペンアモルファジエンの生産を約10倍増加させた(Roら Nature(2006)440:940−943頁;Lenihanら Biotechnol.Prog.(2008)24:1026−1032頁)。エルゴステロールは酵母の成長に不可欠であり、酵母細胞は、外部から与えられたエルゴステロールを好気性成長中に取り込むことたができないため、ERG9の下方制御/ノックアウトは、酵母株が培養培地からのエルゴステロールの効率的な好気的取り込みをできるようにする変異としばしば組み合わされる。例は、sueアレル(Takahishiら Biotechnol.Bioeng.(2007)97:170−181頁)およびupc2−1アレル(Jacksonら Org.Lett.(2003)5:1629−1632頁)である。Takahashiら(Biotechnol.Bioeng.(2007)97:170−181頁)は、酵母においてホスファターゼ遺伝子dpp1をノックアウトして内因性ホスファターゼ活性を制限する効果も調査した。このノックアウトは、はるかに少ないファルネソール蓄積により反映されたFPPの脱リン酸化を明らかに制限したが、適用された成長条件下での複合erg9/sue変異を超えてセスキテルペン生産を改善しなかった。
バレンセンを発酵調製するための反応条件は、使用される宿主細胞の種類(例えばロドバクター・カプスラータ、ロドバクター・スフェロイデス、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス、エシェリキア・コリ、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼ、サッカロミセス・セレビシエ、ヤロウイア・リポリティカ、ペニシリウム・クリソゲナム、ファフィア・ロドジマおよびピキア・パストリス)、本明細書に開示された情報、共通の一般知識および場合によっていくつかの日常的実験に関する既知の条件に応じて選択することができる。
原則として、本発明による方法において使用される反応培地(培養培地)のpHは、バレンセンシンターゼ(宿主細胞中の)がpH条件下で活性であり、および望まれる特異性を示す限り、幅広い限度内で選択することができる。バレンセンシンターゼを発現するために、方法が細胞の使用を含む場合では、pHは、細胞が意図された機能(複数可)を果たすことができるように選択される。pHは、25℃の本質的に水溶液系の場合では、中性pHより下の4つのpH単位および中性pHより上の2つのpH単位、すなわちpH3からpH9の間の範囲内で特に選択することができる。良好な結果は、例えば、6.8から7.5の範囲内にpHを有する水性反応培地において達成された。
水が唯一の溶媒または主たる溶媒(合計液体に対して>50重量%、特に>90重量%)である場合、系は水性とみなされ、例えば微量のアルコールまたは別の溶媒(合計液体に対して<50重量%、特に<10重量%)が、存在する微生物が活性のままであるような濃度で溶解され得る(例えば完全発酵アプローチの場合の炭素供給源として)。
特に酵母および/または真菌が使用される場合は、酸性条件が好ましい場合があり、特にpHは、25℃の本質的に水性系に対しpH3からpH8の範囲であり得る。所望であれば、pHは、酸および/もしくは塩基を用いて調製されてもよく、または酸および塩基の適切な組み合わせにより緩衝されてもよい。
嫌気条件は、本明細書では、いかなる酸素もない、または実質的に酸素が培養細胞(特に微生物)により消費されない条件として定義され、通常は、5mmol/l.h未満の酸素消費量、好ましくは2.5mmol/l.h未満の酸素消費量、もしくはより好ましくは1mmol/l.h未満に相当する。好気条件は、非制限的成長に十分なレベルの酸素が培地に溶解されており、少なくとも10mmol/l.h、より好ましくは20mmol/l.hを超える、さらにより好ましくは50mmol/l.hを超える、および最も好ましくは100mmol/l.hを超える酸素消費速度を支持することができる条件である。
酸素制限条件は、酸素消費が気体から液体への酸素移動により制限される条件として定義される。酸素制限条件の下限は、嫌気条件の上限、すなわち通常は少なくとも1mmol/l.h、特に少なくとも2.5mmol/l.hまたは少なくとも5mmol/l.hの上限により決定される。酸素制限条件の上限は、好気条件の下限、すなわち100mmol/l.h未満、50mmol/l.h未満、20mmol/l.h未満または10mmol/l.h未満により決定される。
条件が好気性、嫌気性または酸素制限的であるかどうかは、方法が実施される条件、特に流入する気体流の量および組成、使用される機器の実際の混合/物質移動特性、使用される微生物の種類および微生物密度に依存する。
バレンセンシンターゼ(細胞中の)が実質的な活性を示す限り、原則として、使用される温度は重要ではない。一般に、温度は、少なくとも0℃、特に少なくとも15℃、より特に少なくとも20℃であってもよい。所望の最高温度は、バレンセンシンターゼを発現するために細胞が使用される方法の場合、バレンセンシンターゼおよび細胞に依存する。温度は、70℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に35℃以下である。
発酵プロセスの場合、インキュベーション条件は、細胞が十分な活性および/または成長を示す限り、幅広い限度内で選択することができる。これには、好気条件、酸素制限条件および嫌気条件が含まれる。
特に、バレンセンが形成される触媒反応が宿主細胞外で実施される場合、有機溶媒を含む反応培地は、使用されるバレンセンシンターゼがこのような培地において十分な活性および特異性を保持する場合に、高濃度で使用することができる(例えば、合計液体に対して50%を超える、または90重量%を超える)。
所望であれば、本発明による方法において生産されるバレンセン、または調製後にバレンセンが変換されたさらなる化合物(ノートカトンなどの)は、これが作製された反応培地から回収される。適切な方法は、反応培地と混合できない抽出液体による液液抽出である。
(水性反応培地からの抽出に)特に適切なのは、液体炭化水素などの液体有機溶媒による抽出である。初期結果から、この方法は、バレンセン(またはさらなる生成物)の回収のために細胞を溶解させる必要なしに、バレンセンの生産のために使用された本発明による細胞を含む反応培地から、バレンセン(またはさらなる生成物)を抽出するのにも適切であることは明白である。特に、有機溶媒は、液体アルカン、液体長鎖アルコール(少なくとも12個の炭素原子を有するアルコール)および長鎖脂肪酸(少なくとも12個の炭素原子を有する酸)の液体エステルから選択することができる。特に適切な液体アルカンには、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカンおよびヘキサデカンなどのC6−C16アルカンが含まれる。特に適切な長鎖脂肪族アルコールには、オレイルアルコールおよびパルミトレイルアルコールのようなC12−C18脂肪族アルコールが含まれる。特に長鎖脂肪酸の適切なエステルには、ミリスチン酸イソプロピルおよびオレイン酸エチルのような、C12−C18脂肪酸のC1−C4アルコールのエステルが含まれる。
有利な実施形態において、バレンセン(またはさらなる生成物)は、第1液相(反応相)であって、バレンセン(またはさらなる生成物)を生産する本発明による細胞を含有する前記第1液相、および第2液相(接触した時に第1相と本質的に分相したままである有機相)であって、形成された生成物がより高い親和性を有する抽出相である前記第2液相を含む反応器において生産される。この方法は、これがインサイチュ生成物回収を可能にする点で有利である。また、第2相の存在により、反応相中のバレンセン(またはさらなる生成物)濃度が、プロセス全体を通して比較的低く保たれ得るため、この方法は、細胞に対するバレンセン(またはさらなる生成物)の潜在的な毒性作用の阻止、または少なくとも低減にも寄与する。最後に、抽出相は、反応相からのバレンセン(またはさらなる生成物)の抽出に寄与するという好材料がある。
本発明の好ましい方法において、抽出相は、反応相の上に層を形成し、または反応相と混合されて抽出相における反応相の分散、もしくは反応相における抽出相の分散を形成する。故に、抽出相は、反応相から生成物を抽出するだけでなく、バレンセンが(水性)反応相において生産される場合、または(水性)反応相に排出される場合に生じ得るオフガスを通じた、反応器からの形成された生成物の喪失を低減すること、または完全に回避することにも役立つ。バレンセンは水に難溶性であり、したがって水から容易に揮発する。有機相に溶媒和されたバレンセン(層または分散として)は、少なくとも実質的に揮発を妨げられることが企図される。
抽出相としての使用に適切な液体は、良好な生体適合性を有する(生細胞の生存能力を障害しない)反応相よりも低い密度、低揮発性、および水性反応相との絶対に近い非混和性を兼ね備える。この適用に適切な液体の例は、デカン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカンおよびヘキサデカンのような液体アルカン、またはオレイルアルコールおよびパルミトレイルアルコールのような長鎖脂肪族アルコール、またはミリスチン酸イソプロピルおよびオレイン酸エチルのような長鎖脂肪酸のエステル(例えばAsadollahiら(Biotechnol.Bioeng.(2008)99:666−677頁)、Newmanら(Biotechnol.Bioeng.(2006)95:684−691頁)およびWO 2009/042070参照)である。
本発明に従って生産されるバレンセンは、例えば風味もしくは芳香として、もしくは防虫剤としての使用などに使用することができ、または別の化合物、特に別の風味もしくは芳香の出発物質として使用することができる。特に、バレンセンは、ノートカトンに変換することができる。ノートカトンへのバレンセンの変換は、細胞内または細胞外で実施することができる。この調製が細胞内部で実施される場合、ノートカトンは、通常、この生産後に宿主細胞から単離される。
バレンセンをノートカトンに変換する適切な方法は、例えば、内容が参照により組み込まれているFraatzら Appl.Microbiol.Biotechnol(2009)83:35−41頁、またはここに引用された参照文献に記載されているように、当技術分野で知られている。
一般に、バレンセンからノートカトンを調製するための適切な方法は、i.純化学的方法、ii.生体触媒方法(例えばメディエーターとの併用でラッカーゼを用いるもの)、iii.生物変換(すなわち生細胞全体を適用する方法)およびiv.完全発酵に分類することができる。方法i−iiiにおいて、外部から与えられたバレンセンが変換されるのに対し、方法ivにおいてバレンセンはインサイチュで生産される。
特定の実施形態において、変換は、アルファ−および/またはベータ−ノートカトルへの2位でのバレンセンの位置特異的水酸化と、これに続くノートカトンを形成するこの酸化を含む。
さらなる実施形態において、バレンセンは、バレンセンのヒドロペルオキシドに変換され、この後ノートカトンに変換される。米国特許第5,847,226号明細書は、不飽和脂肪酸のヒドロペルオキシドの存在下、酸素含有雰囲気でのノートカトンへの(+)−バレンセンの化学変換を記載している。この脂肪酸ヒドロペルオキシドは、例えば自動酸化、光酸化またはリポオキシゲナーゼを用いた酵素的酸化によりインサイチュで生成され、この後このヒドロペルオキシドは、バレンセンの自動酸化を触媒する。
(+)−バレンセンは、緑藻クロレラ属(Chlorella)または真菌ボトリオスファエリア属(Botryosphaeria)(Furusawaら Chem.Pharm.Bull.(2005)53:1513−1514頁、およびJP 2003−070492)のさまざまな種により、ノートカトンに高収量で変換することができる。
EP−A 1 083 233は、バレンセンヒドロペルオキシドへのバレンセンのラッカーゼ触媒変換(バレンセンヒドロペルオキシドは、この後、分解されてノートカトンを形成する)に基づく無細胞(生体触媒)系を適用するノートカトンの調製を記載している。場合によって、ラッカーゼ活性を維持する濃度でのメディエーターおよび/または溶媒が含まれ得る。
WO 2006/079020は、特に新規の植物由来シトクロムP450酵素、ヒヨスチアムス・ムティカス(Hyoscyamus muticus)由来のプレムナスピロジエン・オキシゲナーゼ(Premnaspirodiene oxygenase)(HPO)(主にベータ−ノートカトルへの(+)−バレンセンのモノ水酸化を触媒する)を記載している。ノートカトン形成は、極めて高濃度のノートカトル(>30μΜ)でのみ、ただし、極めて低い反応速度でのみ観察された(Takahashiら J.Biol.Chem.(2007)282:31744−31754頁)。同じ論文において、Takahashiらは、全体の反応生成物プロフィールを著しく変えることなく、ノートカトル生合成の触媒効率が5倍改善したHPO変異体について報告している。このノートカトルは、同じ宿主細胞でのアルコールデヒドロゲナーゼ酵素の共発現により、ノートカトンにさらに酸化され得る。
別の適切な植物由来シトクロムP450酵素が、チコリ(チコリウム・インティバスL(Cichorium intybus L.))において最近同定された。酵母におけるバレンセンシンターゼとのこの新規のP450酵素の共発現は、トランス−ノートカトル、シス−ノートカトルおよび(+)−ノートカトンの形成をもたらした(Cankar,K.ら、FEBS Letters(2011)585:178−182頁)。
植物由来シトクロムP450酵素の他に、細菌シトクロム450モノオキシゲナーゼP450camおよびP450BM−3ならびにこれらの変異体もまた、(+)−バレンセンを酸化させることが報告されている(Sowdenら Org.Biomol.Chem.(2005)3:57−64頁)。野生型P450camがこの酸化反応を触媒しなかったのに対し、変異体は、形成された生成物の>85%を構成する(+)−バレンセン、(+)−トランス−ノートカトルおよび(+)−ノートカトンにおける所望のC2位に対する比較的高い位置選択性を示した。これらの変異体の活性は、依然としてやや低かった。一方、P450BM−3変異体はより高い活性を示したが、活性部位での(+)−バレンセンの複数の結合配向のため、非選択的であった。最近、はるかにより選択的なBM−3変異体が報告されており、この最良のものは95%のC2位置選択性を有する(Seifertら ChemBioChem(2009)10:853−861頁)。
ノートカトンへのバレンセンの変換を触媒するための一酵素または複数の酵素をコードする1つ以上の遺伝子が、本発明による宿主細胞に組み込まれてもよいことが企図される。このような酵素は、上記の本明細書に言及されたクロレラもしくはボトリオスファエリアの酵素、またはヒヨスチアムス・ムティカス由来のプレムナスピロジエン・オキシゲナーゼ、またはP450camもしくはP450BM−3変異体から例えば選択することができる。
上記に示されたように、本発明は、本発明によるバレンセンシンターゼに対する特異的結合親和性を有する抗体に関する。用語「抗体」は、抗体の抗原結合形態(例えば、Fab、F(ab)2)への言及を含む。用語「抗体」は、分析物(抗原)を特異的に結合および認識する免疫グロブリン遺伝子(複数可)またはこの断片により実質的にコードされたポリペプチドを指すことが多い。しかし、さまざまな抗体断片は、インタクトな抗体の消化に関して定義することができるが、当業者は、このような断片が化学的にまたは組換えDNA方法論を利用してデノボ合成され得ることを理解する。故に、用語抗体には、本明細書で使用されるとき、一本鎖Fv、キメラ抗体(すなわち、異なる種由来の定常および可変領域を含む)、ヒト化抗体(すなわち、ヒト以外の供給源由来の相補性決定領域(CDR)を含む)およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)などの抗体断片も含まれる。
抗体またはこの断片は、抗体の合成のための当技術分野で知られた任意の方法により、特に、化学的合成または好ましくは組換え発現法により生産することができる。
バレンセンシンターゼに対するポリクローナル抗体は、当技術分野でよく知られたさまざまな手順により生産することができる。例えば、異種バレンセンシンターゼは、バレンセンシンターゼに特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の生産を誘導するように、ウサギ、マウス、ラット等を含むがこれらに限定されないさまざまな宿主動物に投与することができる。さまざまなアジュバントは、宿主種に応じて免疫学的応答を高めるのに使用することができ、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質ならびにBCG(カルメットゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない。このようなアジュバントも、当技術分野でよく知られている。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレイ技術、またはこれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野で知られた多種多様な技法を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で知られおよび、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版 1988);Hammerlingら、:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681頁(Elsevier、N.Y.、1981)に教示されているものを含むハイブリドーマ法を用いて生産することができる。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用されるとき、ハイブリドーマ技術を通じて生産される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、これが生産される方法を指さない。
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生産しスクリーニングする方法は、日常的であり、当技術分野でよく知られている。簡単には、マウスがバレンセンシンターゼで免疫され、およびひとたび免疫応答が検出され(例えば、バレンセンシンターゼに特異的な抗体がマウス血清において検出され)れば、マウス脾臓が回収され、脾細胞が単離される。脾細胞は、次いで、任意の適切な骨髄腫細胞、例えばATCCから入手可能な細胞系SP20由来の細胞に、よく知られた技法により融合される。ハイブリドーマは、限定希釈により選択され、クローン化される。ハイブリドーマクローンは、次いで、本発明のポリペプチドを結合できる抗体を分泌する細胞について、当技術分野で知られた方法によりアッセイされる。一般に高レベルの抗体を含有する腹水は、陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫して生成することができる。
特定の実施形態において、モノクローナル抗体を生成する方法は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含み、好ましくは、ハイブリドーマは、バレンセンシンターゼで免疫されたマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合すること、次いで、バレンセンシンターゼを結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることにより生成される。本発明による抗体は、例えばクロマトグラフィー担体物質に固定化された抗体を用いて、本発明に従って生産されたバレンセンシンターゼを単離するための方法において例えば使用することができる。
さらに、本開示は、バレンセンまたはノートカトンを調製するための方法であって、本発明によるバレンセンシンターゼの存在下で、ポリプレニル二リン酸基質をバレンセンまたはノートカトンに変換することを含む方法に関する。このような方法は、本発明によるバレンセンシンターゼが使用されるという条件で、当技術分野で知られた方法論(例えば引用された先行技術に記載されているような)に基づくことができる。バレンセンまたはノートカトンは、細胞内で、または単離された酵素を用いて作製することができる。バレンセンまたはノートカトンは、これが形成される培地から単離することができる。これは、それ自体既知の方法において達成することができる。
ノートカトンへのバレンセンの変換の反応ステップを触媒する1つ以上の酵素を発現する宿主細胞においてノートカトンを調製することも可能であり、宿主細胞は好ましくはバレンセンシンターゼも含む。
本発明は、これより、次の例により例示される。
[実施例1] 活性試験のためのバレンセンシンターゼ変異体の調製
本発明によるバレンセンシンターゼ変異体(ValC_変異体)をコードする遺伝子、およびバレンセンシンターゼ野生型(ValC_wt、配列番号2)をコードする遺伝子を有する合成DNA断片は、発現ベクターpACYCDuet−1(Novagen,Merck,KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)においてDNA2.0(メンロパーク、CA、USA)から得た。バレンセンシンターゼ遺伝子は、ロドバクター属における改善された発現のためにDNA2.0によりコドン最適化されていた。プラスミドは、指定されたpACYCDuet:ValC_変異体またはpACYCDuet:ValC_wtであった。pACYCDuet:ValC_wtのヌクレオチド配列を、配列番号5に示す。pACYCDuet:ValC_変異体プラスミドのヌクレオチド配列は、バレンセンシンターゼ変異体の形成に必要とされるヌクレオチド置換を除いて、pACYCDuet:ValC_wtのものと同一である。
エシェリキア・コリにおけるこれらのpACYCDuet−1ベースの組換えベクターの発現は、次のpACYC−Duet−1由来N末端伸長:NH−MGSSHHHHHHSQDPH−COOHを有するバレンセンシンターゼ(このN末端メチオニン残基を含む)の形成をもたらした。
DNA2.0から得た凍結乾燥pACYC−Duet−1ベースのベクターを、各50μL滅菌水に再溶解させ、37℃で1.5時間インキュベートした。この後、96ウェルフォーマットでの市販の化学的コンピテントなエシェリキア・コリBL21(DE3)細胞を、供給者のプロトコル(Novagen;プロトコルTB 313 Rev.B0304)を適用して、1ウェル当たり1μL再溶解プラスミド溶液で形質転換した。各形質転換混合物(50μLプラスプレートにわたる液体の均一な分布を促進するための50μLSOC培地)を選択プレート(1%(w/v)グルコースおよび30μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地)に播種し、37℃で16時間インキュベートした。全ての選択プレートはコロニーを含有したが、得られた形質転換体の数は、1プレート当たり1コロニーから50を超えるまで大きく異なった。プレートをさらなる使用まで4℃で貯蔵した。
個々の形質転換体の単一コロニーを、1%(w/v)グルコースおよび50μg/mLクロラムフェニコールを含む5mLのLB培地に植菌し、37℃で一晩成長させた。これらの一晩培養物を用いてグリセロールストックを調製し、−70℃で貯蔵した。さらに、200μLの各一晩培養物を、50μg/mLクロラムフェニコールを含む20mL 2×YT培地を含む100mL三角フラスコに移した。フラスコをRotilabo(登録商標)培養栓(Carl Roth GmbH+Co.KG、カールスルーエ、ドイツ)で塞ぎ、OD600nmが0.6−0.8となるまで250rpmおよび37℃でインキュベートした。次いで、20μLの1M IPTG溶液を添加し、インキュベーションを250rpmおよび18℃で一晩継続した。翌日、培養物を3,400rpmで15分間、50mL管での遠心分離により回収し、この後、培養培地を除去した。この後、細胞ペレットを−20℃で凍結貯蔵した。参照として、野生型バレンセンシンターゼ(配列番号2)をコードする遺伝子を含有するpACYC−Duet−1で形質転換したエシェリキア・コリBL21(DE3)を、これに応じて処理した。
清澄化溶解物の調製のために、細胞ペレットを氷上で解凍し、1mLの50mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液に再懸濁した。次いで、約0.2gのジルコニア/シリカビーズ0.1mm(BioSpec Products Inc.;http://www.biospec.com/)を添加し、速度6.5のBio101/Savant FastPrep FP 120マシン(MP Biomedicals LLC、イルキルヒ、フランス)における10秒間の振盪と、これに続く2分間の氷への管の移行、およびさらに1回の速度6.5での10秒間の振盪により、溶解を達成した。この後、溶解物を13,000×gおよび4℃で10分間遠心分離し、上清(=清澄化溶解物)を酵素アッセイに直ちに使用した。
試験するバレンセンシンターゼバリアントの数が、1日当たりに生産できる清澄化溶解物の数より大きかったため、毎日、清澄化溶解物も、参照としての野生型バレンセンシンターゼを発現する細胞から調製した。
[実施例2] バレンセンシンターゼ変異体の(特異的)生産性および生成物特異性の判定
変異体バレンセンシンターゼのバレンセン生産性の判定のために、次のアッセイを使用した。
ガラス管において以下を混合した:
−65μLの50mM Tris−HCl、pH7.5;
−800μLのアッセイ緩衝液(15mM MOPSO(3−[N−モルホリノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)pH=7.0;12.5%(v/v)グリセロール;1mMアスコルビン酸;0.1% Tween20;1mM MgCl;2mMジチオスレイトール[使用直前に添加];NaOHによる7.0までのpH);
−20μLの250mM オルトバナジン酸Na;
−および5μLの10mMファルネシル二リン酸(蒸発乾固させ、0.2Mカルバミン酸アンモニウムおよび50%エタノールに溶解したFPP、Sigma)。
反応は、35μLの清澄化溶解物の添加により開始した。混合後、ガラス管を30℃で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートした。反応混合物を次いで2mL酢酸エチルで抽出し、10秒間ボルテックスした。1,200×gで10分間遠心分離後、酢酸エチル層を回収し、硫酸ナトリウムカラムで脱水し、GC−MS分析に使用した。この目的のため、1μLの酢酸エチル層からの分析物を、1mL/分の流速でキャリアガスとしてヘリウムを用いて、30m×0.25mm、0.25mm膜厚カラム(ZB−5、Phenomenex)を備えた7890A GCシステム(Agilent Technologies)でのガスクロマトグラフィーを用いて分離した。注入器(7683Bシリーズ、Agilent Technologies)は、注入口温度を250°Cに設定したスプリットモードで使用した。55℃の初期オーブン温度は15℃/分の速度で1分間後に300℃まで上昇させ、300℃で5分間保持した。GCを質量選択検出器(モデル5975C、Agilent Technologies)に接続した。化合物を同定し、バレンセンの真正標準のものと比較して、この質量スペクトル、保持時間およびMSクロマトグラムの表面積により定量化した。ゲルマクレンAは、このコープ反応生成物β−エレメンの発生により同定し、バレンセンのものとの総イオンカウント表面積の比較により定量化した。
このアッセイにおける清澄化溶解物の量(35μL)および反応時間(2時間)は、形成されたバレンセンの量が、溶解物の量に直線的に依存する範囲で選択した。このアプローチは、生産性が改善されたバレンセンシンターゼ変異体が、このアッセイにより同定可能であることを確保する。
発現レベルの違いに対して種々のバレンセンシンターゼ変異体のバレンセン生産性を補償するために、各清澄化溶解物中のバレンセンシンターゼタンパク質の相対量を定量化した。各清澄化溶解物から、60μLを20μLの4×試料緩衝液(以下の組成)に添加し、100℃で2分間インキュベートし、凍結貯蔵した。分析のため、このストック溶液を、この後、1×試料緩衝液に1:50希釈し、100℃で2分間インキュベートし、短時間遠心分離した。10μLを、次いで、12ウェルRunBlue SDS−PAGEゲル(4−20%)(Expedeon、ハーストン、ケンブリッジシャー、UK)に添加した。各ゲルに、陰性対照(空pACYCDuet−1ベクターを含有するエシェリキア・コリBL21(DE3)の清澄化溶解物)および陽性対照(野生型バレンセンシンターゼをコードする遺伝子を有するpACYCDuet−1を含有するエシェリキア・コリBL21(DE3)の清澄化溶解物)も添加した。ゲルを25mA/ゲルで30分間、これに続いて50mA/ゲルで60分間、冷却条件下でランニング緩衝液(以下の組成)に流した。ゲルはSYPRO Rubyタンパク質ゲル染色剤(Invitrogen、ブレダ、オランダ)を用いて染色した。染色手順には、40%(v/v)エタノール+10%(v/v)酢酸溶液での30分間の固定、脱塩水での単回洗浄ステップ、これに続く暗所で非希釈SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色剤中での4時間のインキュベーションが含まれた。この後、ゲルを10%(v/v)エタノール+7%(v/v)酢酸溶液で1時間洗浄し、次いで脱塩水で短時間洗浄した。この染色手順は、線形応答曲線をもたらした。
タンパク質バンドは、Poststainモード、100μmピクセル、マトリックスタイプ:ゲル、およびSypro Ruby 1チャネル(励起フィルター480/30nm、発光フィルター595/25nm、exp0.2)を用いたEttan DIGE Imager(GE Healthcare、ディーゲム、ベルギー)でゲルをスキャンして定量化した。バンドは、マニュアルレーン作成、ローリングボール(rolling−ball)バックグラウンド削除およびマニュアルピーク検出を用いたImageQuant TLソフトウェアパッケージ(GE Healthcare、ディーゲム、ベルギー)により検出した。
陽性対照を含むレーンは、分子量マーカーを含むレーン中のウシ血清アルブミン(BSA、66kDa)バンドよりもわずかに速く流れるエキストラバンドを常に示した。このエキストラバンドは、陰性対照には一貫して非存在であり、本発明による変異体バレンセンシンターゼを発現するエシェリキア・コリクローン由来の清澄化溶解物を添加したレーンに存在したため、バレンセンシンターゼ(N末端His−タグを含む)の計算された分子量は70,967Daであるが、このバンドはバレンセンシンターゼを表すと結論された。バレンセンシンターゼバンドの定量化は、次いで、陰性対照を含むレーン中のバックグラウンド強度を差し引き、陽性対照を含むレーン中の対応するバンドの強度に対して相対的に行った。
試料緩衝液(1×)の組成は、以下であった:
−10%(v/v)グリセロール
−1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
−0.2Mトリエタノールアミン−HCl、pH7.6
−1%(w/v)フィコール400
−0.006%(w/v)フェノールレッド
−0.006%(w/v)クマシーブリリアントブルーG250
−0.5mM EDTA
ランニング緩衝液の組成は、以下であった:
−0.04Mトリシン
−0.06Mトリス
−0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
−2.5mM亜硫酸水素ナトリウム
−pH=8.2
単一アミノ酸修飾を有するバレンセンシンターゼ変異体に関するこれらのインビトロ試験の結果を、表1に示す。
Figure 2014519841
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表1の結果は、本発明による単一点変異を有するバレンセンシンターゼ変異体が、明らかに改善されたインビトロバレンセン生産性を示すことを示している。この試験系において野生型バレンセンシンターゼで得られたものと比べたこれらの変異体のバレンセン生産性は、103.6%(ValC:E319Q)から397.8%(ValC:I410F)にわたる。試験したバレンセンシンターゼ変異体の多くに関して、この改善されたバレンセン生産性は、改善された特異的バレンセン生産性に伴うものであり、改善されたバレンセン生産性は、主として、エシェリキア・コリにおけるこれらの変異体の増加した発現の結果ではないという事実を指している。陽性対照と比較したSDS−PAGEゲルでのバレンセンシンターゼバンドの強度が、野生型バレンセンシンターゼに属するバンドのものよりはるかに高いことから、本発明による他のバレンセンシンターゼ変異体は、明らかな発現変異体である。最後に、野生型バレンセンシンターゼとしてのバレンセンと比較して、はるかに少ないゲルマクレンAを生産するバレンセンシンターゼ変異体が得られた。
表2のデータは、本発明による少なくとも2つの点変異を含有するバレンセンシンターゼ変異体も、野生型バレンセンシンターゼと比較して、100.6%(ValC:V436W、L449Y)から266.7%(ValC:Q463S、F488S)にわたる明らかに改善されたインビトロバレンセン生産性を示すことを証明している。
Figure 2014519841
[実施例3] 改善されたバレンセンシンターゼ変異体を発現するロドバクター・スフェロイデス株の構築
プラスミドpJ241−59440−mev A2415 T4088 mod1における新規の合成メバロン酸オペロンの説明
パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス由来のメバロン酸オペロン(WO 06/018211およびHumbelin,M.ら、Gene(2002)297:129−139頁に記載された[アクセッションAJ431696])の修飾バージョンを含有する合成DNA断片をDNA2.0から購入し、pJ241(DNA2.0からの専売プラスミド)に挿入した。プラスミドをpJ241−59440−mev_A2415_T4088_mod1と命名し、このヌクレオチド配列を配列番号6に示す。野生型ヌクレオチド配列と比較して、さらなるクローニングステップを促進することを意味しおよびサイレント変異により達成された修飾は、制限酵素BamHI、BglII、EcoRIおよびNdelに対する認識部位の除去、ならびにメバロン酸オペロンインサート内(配列番号6における1240位から7875位)への、制限酵素KpnIおよびXhoIに対する固有の認識部位の導入を含んだ。
プラスミドp−mevAT−PcrtE−trxをもたらす、pBBRベースのプラスミドへの新規の合成メバロン酸オペロンのサブクローニング
プラスミドpBBR−K−mev−op−4−89−PcrtE−trx−valFpoR−rev(特許出願、国際特許出願番号第PCT/NL2010/050848号および欧州特許出願第EP09174999.0号に記載された)を、AseIで消化し、より大きい断片を単離し、自己ライゲートし、プラスミドp−m−489−PcrtE−trxを得た。新たなプラスミドをZraIで切断し、6,636bp断片を単離した。プラスミドpJ241−59440−mev_A2415_T4088_mod1もZraIで切断し、5,569bp断片を単離し、p−m−489−PcrtE−trxに由来する6,636bp断片とライゲートした。新たなコンストラクトを、正しい配向での挿入について確認し、p−mevAT−PcrtE−trxと命名した。
プラスミドp−mevAT−PcrtE−trxへの、本発明によるバレンセンシンターゼ変異体および野生型バレンセンシンターゼをコードする遺伝子の挿入による、プラスミドp−mevAT−PcrtE−trx−ValC変異体およびp−mevAT−PcrtE−trx−ValC wtの構築
本発明によるバレンセンシンターゼ変異体(ValC_変異体)をコードする遺伝子、およびバレンセンシンターゼ野生型(ValC_wt、配列番号2)をコードする遺伝子を有する合成DNA断片は、一般的なクローニングベクターpJ201(専売ベクター DNA2.0)においてDNA2.0(メンロパーク、CA、USA)から得た。バレンセンシンターゼ遺伝子は、ロドバクターにおける改善された発現のためにDNA2.0によりコドン最適化されていた。プラスミドを、pJ201:ValC_変異体またはpJ201:ValC_wtと命名した。pJ201:ValC_wtのヌクレオチド配列を、配列番号7に示す。pJ201:ValC_変異体プラスミドのヌクレオチド配列は、本発明によるバレンセンシンターゼ変異体の形成に必要とされるヌクレオチド置換を除いて、pJ201:ValC_wtのものと同一である。
プラスミドp−mevAT−PcrtE−trxをAseIおよびBamHIで切断し、12,136bp断片を単離した。プラスミドpJ201:ValC_変異体(表3、列2参照)およびプラスミドpJ201:ValC_wtは、NdeIおよびBamHIで切断し、1,777bp断片を単離し、p−mevAT−PcrtE−trx由来の12,136bp断片とライゲートし、表3、列3に列挙した18のp−mevAT−PcrtE−trx−ValC_変異体プラスミドおよびp−mevAT−PcrtE−trx−ValC_wtを得た。
プラスミドp−mevAT−PcrtE−trx−ValC変異体における合成メバロン酸オペロンmev A2415 T4088 mod1のメバロン酸オペロンmev−op−4−89との置換による、プラスミドp−m−4−89−PcrtE−trx−ValC変異体の構築
プラスミドp−m−4−89−PcrtE−trx−ValC−optは、pBBR−K−mev−op−4−89−PcrtE−trx−valFpoR−rev由来のvalFコード領域が、valC−optコード領域(PCT/NL2010/050848およびEP09174999における配列番号18、該配列は、参照により本明細書に組み込まれている)により置換されたという事実を除いて、pBBR−K−mev−op−4−89−PcrtE−trx−valFpoR−revと本質的に同じプラスミドである。
プラスミドp−m−4−89−PcrtE−trx−valC−optは、ZraI、BlpIおよびSacIで切断し、6,739bp ZraI−BlpI断片を単離した。p−mevAT−PcrtE−trx−ValC_変異体プラスミド(表3、列3)は、ZraI、BlpIおよびAsiSIで切断し、7,234bp ZraI−BlpI断片を単離した。これらの断片を、この後、p−m−4−89−PcrtE−trx−valC−opt由来の6,739bp断片とライゲートし、プラスミドp−m−4−89−PcrtE−trx−ValC_変異体を得た(表4、列3)。
メバロン酸経路および本発明による変異体バレンセンシンターゼを発現するロドバクター・スフェロイデスRs265−9c株の構築
エシェリキア・コリS17−1を表4、列3に示したプラスミドで形質転換し、得られた株は、PCT/NL2010/050848およびEP09174999に記載されたコンジュゲーションにより、プラスミドをロドバクター・スフェロイデスRs265−9cに転移するのに使用した。
Figure 2014519841
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[実施例4] 標準振盪フラスコ条件下でのロドバクター・スフェロイデス株の培養およびバレンセン生産の評価
凍結細胞ストックの調製
ロドバクター・スフェロイデス株の凍結細胞ストックは、50mg/Lカナマイシン(プラスミド維持に妥当であれば)を含有する2mL RS102培地にループフル(loop full)の凍結細胞を導入して調製した。前培養物を24時間、220rpmで撹拌しながら、30℃で増殖させた。前培養物の250μLアリコートを、50mg/Lカナマイシンを含有する25mLのRS102培地に移して増殖を開始した(t=0)。25mL主要培養物を、250mLバッフル付き三角フラスコ中で約24時間、220rpmで撹拌しながら、30℃で増殖させた。細菌細胞培養物を、25%の最終グリセロール含量および12の660ナノメートル(ΟD660)での最終光学密度に達するように、滅菌無水グリセロールおよび滅菌水と混合した。得られた細胞懸濁液は、2mLクライオバイアルに1.2mLアリコートで無菌的に分配し、次いで使用まで−80℃で凍結させた。
振盪フラスコ手順
ロドバクター・スフェロイデス株の種菌は、250μLの解凍しホモジナイズした凍結細胞ストックを50mg/Lのカナマイシン(プラスミド維持に妥当であれば)を含有する25mLのRS102培地に導入して開始した。前培養物は、250mLバッフル付き三角フラスコ中で220rpmで撹拌しながら、30℃、24−28時間増殖させた。前培養物の適切なアリコートを、50mg/Lのカナマイシン(プラスミド維持に妥当であれば)を含有する22.5mLのRS102培地に移して、0.16の660nm(ΟD660)での初期光学密度で振盪フラスコ実験を開始した(t=0)。主要培養物を、250mLバッフル付き三角フラスコ中で220rpmで撹拌しながら、30℃で増殖させた。8時間培養後、2.5mLのn−ドデカンを細菌培養物に添加した。振盪フラスコ培養は、植菌から72時間、220rpmで撹拌しながら、30℃で継続した。各々の種培養は、培養培地およびインサイチュ生成物回収のためのn−ドデカンで構成される25mL全ブロスの最終容量を、2つの複製振盪フラスコに植菌するのに役立った。二相培養ブロスの試料(0.5mL)を24時間間隔で除去し、増殖(ΟD660)、pHおよび上清中のグルコースについて分析した。実験の最後に(t=72時間)、二相培養ブロスをバレンセンの存在について分析した(以下の分析方法参照)。実験の最後に、10μLの培養ブロスを一般的な培養カウント寒天プレート(Becton Dickinson GmbH、ハイデルベルク、ドイツ)に無菌的に播種し、37℃で24時間インキュベートしてコンタミネーションを試験した。
分析方法
全ブロス中のイソプレノイド含量を分析するための試料調製
典型的な手順において、400μL全ブロス試料をディスポーザブル滅菌15mLポリプロピレンコニカルチューブに移し、4mLアセトンで処理し、IKA Vibraxオービタルシェーカーで1,500rpmで20分間強く振盪し、次いで周囲温度で30分間、卓上超音波槽中でインキュベートした。最後に試料を最大速度で遠心分離し、上清をガスクロマトグラフィーによる分析(以下参照)のためアンバークロマトグラフィーバイアルに移した。生成物収量は、次のように調製した真正バレンセンの標準溶液を用いて確立した校正曲線に基づき判定する:0.5mLの真正バレンセンを10mL容量フラスコに添加し、分析用n−ドデカンで溶解する。バレンセン標準溶液のアリコート(20、40および80μl)をディスポーザブル滅菌15mLポリプロピレンコニカルチューブに移し、脱イオン化滅菌水(それぞれ、380、360および320μL)および4mLアセトンで処理する。各混合物は、ボルテックスシェーカーで強くホモジナイズし、次いでガスクロマトグラフィーによる分析のためアンバークロマトグラフィーバイアルに移し、ここから校正曲線を得る。
ガスクロマトグラフィー
ガスクロマトグラフィーは、Restek Rtx−5Sil MSキャピラリーカラム(30.0m×0.28mm×0.5μm)を備えたヒューレットパッカードGC 6890機器で行う。注入器およびFID検出器温度を、それぞれ300℃および250℃に設定する。カラムを通過する気体流を1.5mL/分に設定する。オーブン初期温度を70℃で0.5分間維持し、20℃/分の速度で150℃まで上昇させ、次いで5℃/分の速度で205℃まで上昇させ、40℃/分の速度で300℃までさらに上昇させ、次いで60℃に冷却し、次の注入までこの温度で3分間維持する。注入試料容量は、4:1スプリット比で1μLである。生成物収量は、真正試料用に確立した校正曲線に基づき判定する。ゲルマクレンAをβ−エレメンとして検出し、バレンセン用に決定した応答係数で定量化する。有機相中のバレンセンおよびβ−エレメンの含量は、全ブロス分析から推定した。全ブロス中のバレンセンおよびβ−エレメンの測定濃度は、n−ドデカンについて見出された測定濃度との関係で決定する。
[実施例5] 酵母におけるカマエシパリス・ノートカテンシス(C.nootkatensis)バレンセンシンターゼのインビボ発現
カマエシパリス・ノートカテンシスバレンセンシンターゼ(ValC、配列番号2)をコードする完全長オープンリーディングフレームは、国際特許出願番号第PCT/NL2010/050848号の実施例9(参照によりその実施例は本明細書に組み込まれている)に記載された方法において、プライマー65−3ATGDuetFw
5’−tatatggatccATGGCTGAAATGTTTAATGGAAATTCCAGC−3’
(下線を付されたΒamHI認識部位)、およびDuetAS1 5’−GATTATGCGGCCGTGTACAA−3’でプラスミドpAC−65−3から増幅した。配列番号3または4に示された配列を含むバレンセンシンターゼなどのこのバレンセンシンターゼのバリアントは、共通の一般知識および本明細書に開示された情報を用いて、類似の方法で酵母において発現させることができる。
[実施例6] 植物におけるValCの発現
配列番号2による配列を含むバレンセンシンターゼは、国際特許出願番号第PCT/NL2010/050848号の実施例10(参照によりその実施例は本明細書に組み込まれている)に記載された方法で植物において発現させた。配列番号3または4に示された配列を含むバレンセンシンターゼなどのこのバレンセンシンターゼのバリアントは、共通の一般知識および本明細書に開示された情報を用いて、類似の方法で植物において発現させることができる。
配列
Figure 2014519841
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Claims (16)

  1. バレンセンシンターゼであって、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して、(1時間当たりに形成されるバレンセンのモル量として表される)バレンセンへのファルネシル二リン酸の変換に対する向上した生産性を有し、または配列番号3において「X」印が付いた少なくとも1つの位置が、配列番号2における対応する位置とは異なるという条件で、配列番号3により表されるアミノ酸配列を含む、バレンセンシンターゼ。
  2. 配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して、宿主細胞における向上した特異的生産性、向上した安定性、向上した生成物特異性(ゲルマクレンAへのファルネシル二リン酸の変換と比べて)または増加した発現を有する、請求項1に記載のバレンセンシンターゼ。
  3. ファルネシル二リン酸から形成されるゲルマクレンAに対するファルネシル二リン酸から形成されるバレンセンのモル比(試験条件下で)として表される生成物特異性が、10以上、好ましくは13から30、特に15から25である、請求項2に記載のバレンセンシンターゼ。
  4. バレンセンシンターゼの量当たり1時間当たりに形成されるバレンセンのモル量として表されるバレンセンシンターゼの特異的生産性が、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼの特異的生産性の少なくとも1.5倍、好ましくは2.0から10倍、特に2.5から5倍である、請求項1から3のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  5. 配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して、バレンセンシンターゼの第2のシェルにおける少なくとも1つの修飾、特に少なくとも1つの置換、またはバレンセンシンターゼの第1のシェルにおける少なくとも1つの修飾、特に少なくとも1つの置換を有する、請求項1から4のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  6. 配列番号2においてシステインを有する位置と対応する位置に異なるアミノ酸が存在する、請求項1から5のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  7. 配列番号2の16、128、171、187、225、244、300、302、307、319、323、327、331、334、398、405、409、410、412、436、438、439、444、448、449、450、463、488、490、492、502、503、507、527、556、559、560、566、568、569および570の群から選択される位置と対応するアミノ酸位置に、配列番号2により表されるバレンセンシンターゼと比較して1つ以上の修飾、特に1つ以上の置換を有する、請求項1から6のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  8. 1つ以上の修飾が、16A、16T、16S、128L、171R、187K、225S、244S、244T、300Y、302D、307T、307A、319Q、323A、327L、331G、334L、398I、398M、398T、405T、405V、409F、410F、410V、410L、412G、436L、436K、436T、436W、438T、439G、439A、444I、444V、448S、449F、449I、449Y、450L、450M、450V、463E、463S、463G、463W、488Y、488H、488S、490N、490A、490T、490F、492A、492K、502Q、503S、507E、507Q、527T、527S、527A、556T、559H、559L、559V、560L、566S、566A、566G、568S、569I、569V、570T、570G、570Aおよび570Pの群から選択される、請求項6または7に記載のバレンセンシンターゼ。
  9. 配列番号2と少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  10. 第1のポリペプチドセグメントおよび第2のポリペプチドセグメントを含み、第1のセグメントがタグペプチドを含み、ならびに第2のセグメントがバレンセンシンターゼ活性を有するポリペプチドを含む、請求項1から9のいずれかに記載のバレンセンシンターゼ。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載のバレンセンシンターゼをコードする核酸配列、この相補的配列を含む、またはストリンジェントな条件下で、請求項1から10のいずれかに記載のバレンセンシンターゼをコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸。
  12. 請求項11に記載の核酸を含む発現ベクター。
  13. 請求項1から10のいずれかに記載のバレンセンシンターゼに対する特異的結合活性を有する抗体、または前記抗体の抗原結合部分に対する特異的結合親和性を有するタンパク質。
  14. 生物それ自体または多細胞生物の部分であり得る宿主細胞であって、請求項12に記載の発現ベクターを含み、好ましくは細菌細胞、真菌細胞および植物細胞の群から選択され、より好ましくは、
    ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)またはエシェリキア属(Escherichia)などのグラム陰性細菌の群から選択される細菌細胞;
    アスペルギルス属(Aspergillus)、ブラケスレア属(Blakeslea)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファフィア属(Phaffia)(キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyce))、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)およびヤロウイア属(Yarrowia)の群から選択される真菌細胞;
    トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物細胞を含む培養物、ここで宿主細胞は、タバコ属種(Nicotiana spp)、ナス属種(Solarium spp)、チコルム・インティバス(Cichorum intybus)、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)、ハッカ属種(Mentha spp)、アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua)、塊茎形成植物、油料作物および樹木から選択されるトランスジェニック植物の細胞である;または
    トランスジェニックキノコまたはトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物、ここで、宿主細胞は、シゾフィラム属(Schizophyllum)、アガリクス属(Agaricus)およびプレウロティシ属(Pleurotisi)から選択される、
    である、宿主細胞。
  15. バレンセンを調製するための方法であって、請求項1から10のいずれかに記載のバレンセンシンターゼの存在下で、ファルネシル二リン酸をバレンセンに変換することを含み、好ましくはバレンセンが、請求項14に記載の宿主細胞を用いて調製される、方法。
  16. ノートカトンを調製するための方法であって、請求項15に記載の方法において調製されたバレンセンがノートカトンに変換され、前記変換は、バレンセンの位置特異的水酸化と、これに続く酸化を含み得、これによりノートカトンを形成する、方法。
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