JP2014516553A - 単クローン性植物細胞系を生成させるための方法 - Google Patents

単クローン性植物細胞系を生成させるための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、単クローン性植物細胞系を植物細胞の異種集団から生成させるための方法であって、次のステップ:(a)植物細胞の異種集団を提供するステップ;(b)前記植物細胞異種集団からプロトプラストを調製するステップ;(c)プロトプラストの調製物をフローサイトメトリーによる選別に供することによって単一プロトプラストを分離するステップ;(d)フィーダー細胞材料の存在下での共培養によって微小コロニーが形成されるまで分離された単一の形質転換されたプロトプラストを再生するステップ;(e)フィーダー細胞材料から微小コロニーを除去し、単クローン性植物細胞系が形成されるまで微小コロニーを培養するステップを含む方法を提供する。

Description

本発明は植物バイオテクノロジーの分野に関する。特に、本発明はフローサイトメトリーによる選別によって植物細胞の不均一集団から天然(野生型)またはトランスジェニック単クローン性植物細胞系を生成することに関する。当業者には明らかなように、本発明はさらに、稔性の全植物の再生のための単クローン性植物細胞系の使用も含む。
過去数十年間で、天然または異種タンパク質および二次代謝産物の蓄積および収集のために植物に基づく系を確立し、培養するために膨大な努力がなされてきた。培養培地中に分泌される、あるいは産生細胞、組織、オルガネラまたはさらには植物全体もしくはその一部から単離されるさまざまな所望の物質を産生するための植物に基づく系の有用性を証明する膨大な量の証拠が文献によって提供される。同様に、安定または一時的に形質転換された植物材料の確立を保証する幅広い形質転換プロトコルが存在する。しかしながら、植物から高収率で所望の産物を得るための、信頼性が高く、比較的費用対効果が優れ、迅速な技術が依然として必要とされる。
植物懸濁培養物などの植物細胞集団の形質転換は、しばしば不均一な一次細胞集団内の後成的に異なる細胞の混合物に関連した標的タンパク質の非常に不均一(混合型)で一貫しない発現レベルを有する細胞を示すトランスジェニック培養物をもたらすことが繰り返し報告されている。組換え細胞系内で、導入遺伝子発現における不均一性は、産生速度に関して重大な問題を示す。
高産生性クローンは形質転換アッセイで稀有な事象であることが多く、均一な高産生性細胞系を確立するのに非常に時間がかかることが大きな問題である。したがって、エリートトランスジェニック事象産生および新たに形質転換された植物培養物または既に形質転換されたトランスジェニックな植物培養物からの回収がいまだ継続している技術的課題である。
たとえばFACS適用などのフローサイトメトリーによる選別のために、通常通り凝集した植物細胞集団または培養物から、細胞を酵素消化してプロトプラストを遊離させることによって、球状単細胞が得られなければならない。しかしながら、ほとんどの植物種に関して、単一プロトプラストの再生は、ある集団密度で維持されなければならないという必要性によって阻止される。
単一トランスジェニック細胞/プロトプラストを再生するため、または(特にフローサイトメトリーによる選別後に)稔性の全植物をそれから再生するための、信頼性が高く、再現性のある手順は今までのところ記載されていない。
したがって本発明は主に、植物に基づく系を提供して、高レベルの所望の天然または組換え産物を産生することに関し、この系は、懸濁培養物などの不均一な(混合型)植物細胞集団から生成させた非形質転換またはトランスジェニック単クローン性植物細胞系を利用し、特に迅速な分離および好ましくは多量の所望の産物の産生および蓄積が可能な単クローン性植物細胞系を確立するために使用することができる微小コロニーの形成までの単一(トランスジェニック)プロトプラストのその後の再生に関して、従来技術の問題を克服する。本発明が同様に、確立された単クローン性植物細胞系から再生される稔性の全植物を提供することを可能にすることは、当業者には明らかである。
インタクトな植物または少なくともインタクトで分化した植物組織の使用に基づく、多くの現在使用され開発されるシステムとは逆に、懸濁細胞の使用は、均一な材料を制御された無菌かつ自制された条件下で再現可能な方法により産生することができるという利点を有する。
植物において組換えタンパク質を産生するために現在2つの主な方策、すなわち(i)安定なトランスジェニック植物もしくは懸濁細胞系の生成または(ii)植物発現宿主(植物、組織または細胞)を細菌(たとえば、アグロバクテリウム)、ウイルス(たとえば、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX/Y、ササゲモザイクウイルス、その他多くのウイルス)で感染させた後の異種遺伝子(複数可)の一時的発現、または宿主を異種遺伝情報(DNAもしくはRNA)発現可能にするための両者の組み合わせ(たとえば、マグニフェクション)がある。別の方法で、当該技術分野で公知の様に、遺伝情報はまた、例えばエレクトロポレーションまたはレーザー穿孔法などの確立された機械的手段によって植物発現宿主に導入することができる。
本発明は、好ましくは安定に形質転換された植物細胞材料の使用に関するが、速度の利点(遺伝子対産物、商品化までに要する時間、緊急応答)ならびに安定に形質転換されたトランスジェニック植物または細胞などのその一部で典型的に得られるものよりもはるかに高い蓄積レベルを達成する可能性を有する一時的発現のためのシステムも本発明による方法に含まれる可能性がある。
本発明によると、天然(野生型、非形質転換)またはトランスジェニック単クローン性植物細胞系の、植物細胞の不均一集団からの生成のための方法が提供される。方法は、例えば、本発明による方法によって含まれるさらなるステップに供されるソース植物細胞材料を形成する植物懸濁細胞などの前記植物細胞集団を提供することを含む。通常、この植物細胞材料は、例えば、好ましくは制御および/または無菌条件下で培養された不均一な植物懸濁培養物から容易に誘導することができる。ソース細胞は、所望の産物を産生および蓄積することができる、(安定して/一時的に)形質転換されたトランスジェニック細胞または野生型(天然、非形質転換)細胞であり得る。
本発明による方法は、例えばFACS技術などのフローサイトメトリーによる選別で、単一の、すなわち個別化されたプロトプラストを分離または単離するので、これらは当該技術分野で公知の材料および方法を使用して前述の植物細胞集団から製造されなければならない。好ましい実施形態によると、これらのプロトプラストは形質転換され、(i)蛍光マーカータンパク質もしくはポリペプチドを産生することができる、(ii)所望の産物を産生することができる、および/または(iii)選択剤の存在下で生存することができる。フローサイトメトリーによる選別のための好ましい選別基準は、例えば、アポトーシスなどの定性的特徴のためのマーカーとしての細胞粒度、および細胞サイズである。FACSの好ましい選別基準は、遺伝的背景(たとえば、倍数性、異数性)、突然変異トランスジェニックス、遺伝子交換産物、および蛍光(たとえば、自己蛍光(葉緑体、代謝産物)、蛍光タンパク質または酵素媒介性蛍光)を含む群から選択することができる。当然のことながら、選択剤の使用は必要ない。したがって、プロトプラストは必ずしも適切な耐性を付与する核酸配列で形質転換される必要はない。
例えばFACSなどのフローサイトメトリーによる選別による単一(形質転換)プロトプラストの分離または単離後に、フィーダー細胞材料の存在下での共培養により微小コロニー(ミクロカルス)が形成されるまで、各単一形質転換プロトプラストを再生させる。植物発生源は、微小コロニーまたはミクロカルスが形成されるまでプロトプラストを再生する可能性を有する系、亜種および種に、制限でなく限定される。本発明はしたがって、再生プロトコルが確立されているか、または将来提供されるであろう全ての植物亜種および種に適用可能である。単クローン性微小コロニーまたは植物細胞系の稔性の全植物へのさらなる再生に関する本発明による態様を考慮して、当然のことながら、この態様は、再生プロトコルが確立されている、または将来提供されるであろう全ての植物亜種および種で実施可能である。
続いて、微小コロニーをフィーダー細胞材料から分離または除去し、単クローン性植物細胞系が形成されるまで培養する。
好ましい実施形態によると、本発明による方法に含まれる次のステップは、したがって、(i)微小コロニーまたはミクロカルスを固体培養培地に移し、そして(ii)少なくとも1つの選択剤の存在下で、カルス組織を液体培養培地に移すことによってトランスジェニック単クローン性植物細胞系を確立可能なトランスジェニックカルス組織が形成されるまで微小コロニーまたはミクロカルスを培養することによる、単クローン性カルス組織の生成に関する。当業者には理解されるように、微小コロニーは、例えばクローンピッキングなどの機械的手段によってフィーダー細胞材料から除去または分離することもできる。この場合、選択剤は必要なく、微小コロニーに含まれる細胞は選択剤に対して耐性を示す必要がない。
好ましい実施形態によると、植物細胞の不均一集団に含まれる細胞は天然(例えば野生型)または非トランスジェニック細胞であり、これはフローサイトメトリーによる選別に供される前に、機能的プロモーターと機能的に連結された少なくとも1つの異種核酸配列を含む少なくとも1つの発現ベクターで安定してまたは一時的に形質転換され、前記少なくとも1つの異種核酸配列は所望の産物をコードする。さらなる実施形態によると、少なくとも1つの発現ベクターは、機能的プロモーター(複数可)と機能的に連結された少なくとも2つの異種核酸配列を含み、前記少なくとも2つの異種核酸配列は、蛍光マーカータンパク質またはポリペプチド、および選択剤に対する耐性、または所望の産物をコードする。必要に応じて、細胞は、本発明にしたがって提供されるトランスジェニック単クローン性植物細胞系中に蓄積される所望の産物をコードする異種核酸配列をさらに含んでもよい。
本明細書中で用いられる「異種」という用語は、問題のヌクレオチドの遺伝子/配列が、遺伝子操作によって、すなわち人間の介入によって、植物細胞に導入されたことを示す。ヌクレオチドの異種配列は、たとえば、本発明に関してハイブリッド植物:非植物融合タンパク質と呼ぶことができる非植物タンパク質と融合し得る植物タンパク質によって部分的に形成可能な融合パートナーから構成される融合タンパク質のコーディング配列を含んでもよい。あるいは、融合タンパク質は、非植物起源の融合パートナーから形成されるものであってよい。異種遺伝子は、内因性の等価な遺伝子、すなわち通常同じもしくは類似した機能を果たすものからの関心対象のタンパク質の発現を増強することができる、または挿入配列が内因性遺伝子もしくは他の配列に追加される可能性がある。細胞に対して異種である核酸は、培養された細胞型、亜種または種で天然に存在しない可能性がある。したがって、異種核酸は、タバコ由来のBY2細胞などの培養細胞と関連付けられる、植物もしくは哺乳類種(たとえばヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、もしくはブタ種)などの特定の種類の生物の、またはそれら由来のコーティング配列を含んでもよい。核酸配列が、自身またはホモログが天然に見いだされるが、その核酸配列が細胞内で天然に存在しない核酸と連結および/または隣接している培養された標的細胞、あるいはその種類または種または亜種の植物の細胞内に置かれること、例えば発現の制御のためのプロモーター配列などの1以上の調節配列と機能的に連結されるさらなる可能性がある。さらに、合成(人工)核酸配列も同様に使用することができる。
「ベクター」は、特に、自己伝播性または可動性であってもなくてもよく、原核または真核宿主を形質転換することができ、染色体外で存在する、2本鎖もしくは1本鎖直線状または円形の任意のプラスミド、コスミッド、ファージ、またはウイルスベクター(たとえば、複製起点を有する自己複製プラスミド)を含むと定義される。特にシャトルベクターが含まれ、これは、自然にまたは意図的に、放線菌と関連する種、細菌と真核(たとえば、高等植物、コケ、哺乳類、酵母または真菌)細胞から選択することができる、2つの異なる宿主生物で複製することができるDNAビヒクルを意味する。
「発現ベクター」は、核酸が、微生物または植物細胞などの宿主細胞における転写のための適切なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあり、そしてそれに機能的に連結されているベクターを指す。ベクターは、複数の宿主で機能する二機能性発現ベクターであってよい。ゲノムまたはサブゲノムDNAの場合、これは自身のプロモーターまたは他の調節エレメントを含んでもよく、cDNAの場合、宿主細胞における発現のための適切なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にある可能性がある。
「プロモーター」は、下流(すなわち、2本鎖DNAのセンス鎖の3’方向)に機能的に連結されたDNAの転写を開始することができるヌクレオチドの配列である。
「機能的に連結された」とは、転写がプロモーターから開始されるために好適な位置および配向で、同じ核酸分子の一部として連結されることを意味する。
「誘導性」という用語は、プロモーターに適用される場合、当業者には十分理解される。本質的に、誘導性プロモーターの制御下の発現は、加えられた刺激に反応して「スイッチが入る」、すなわち増加する。刺激の特質はプロモーター間で異なる。ある誘導性プロモーターは、適切な刺激がない場合、ごく低レベルまたは検出不能なレベルの発現を引き起こす(または発現を引き起こさない)。他の誘導性プロモーターは刺激がない場合、検出可能な構成的発現を引き起こす。刺激がない場合の発現レベルがどのようなものであれ、任意の誘導性プロモーターからの発現は、的確な刺激の存在下で増加する。
本発明はさらに、これらの配列のいずれかの変異体の使用も包含する。変異タンパク質は、前述の配列の全部または一部と相同性を共有するか、または同一である。
組換えタンパク質の発現に関して、関心対象のタンパク質の遺伝情報を含む組換えアグロバクテリアまたはウイルス(ベクター)の懸濁液を前述の植物懸濁細胞に当該技術分野で公知の方法で適用する。ベクターは植物細胞を感染させ、遺伝情報を伝達する。好ましくは、形質転換される植物細胞材料は、単に滴加または噴霧するだけでベクター懸濁液を適用可能なように高密度でごく少量の媒体が存在する状態で提供される。形質転換のこの好ましい実施形態は、取扱い、自動化、封じ込め、スケールアップならびに廃棄物産生および除去に関していくつかの実施上の利点を有する。別の方法では、たとえば粒子衝突、エレクトロポレーションなどの公知技術を当該技術分野で公知のように使用することができる。
好適なプロモーターにはカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV35S)が含まれる。プロモーターは、発現の発生的および/または組織特異的調節管理をもたらす1以上の配列モチーフまたはエレメントを含むように選択することができる。
すでに述べたように、抗生物質または除草剤(限定されないが、たとえばカナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノトリシン、クロルスルフロン、メトトレキサート、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、イミダゾリノンおよびグリホサートを含む)に対する耐性などの選択可能な表現型を付与するものなど、産生されるのが望ましい可能性がある少なくとも1つの選択可能な遺伝子マーカーが、構築物中に含まれてもよい、または第2の構築物中に提供されていてもよい。
あるいは、プロトプラストの調製に使用される植物懸濁細胞はさらに、トランスジェニック細胞を含む、すでにトランスジェニックな不均一植物懸濁培養物から提供される可能性もある。
本発明にしたがって確立された(トランスジェニック)単クローン性植物細胞系を、組換えタンパク質または代謝産物の産生のために、ベクター懸濁液に対して付加的にまたは代替的に、前駆体、誘導物質、ホルモン、安定剤(たとえば、適合溶質)、阻害剤、RNAi/siRNA分子、シグナリング化合物、酵素(たとえば、ペクチナーゼ)、および/またはエリシターの存在下で処理または培養することができる。
好ましい実施形態によると、所望の産物は、異種タンパク質またはポリペプチド(例えば、血液製剤、サイトカイン、成長ホルモン、治療/診断/産業用酵素、ワクチン、フルサイズ抗体もしくは様々な抗体誘導体)、二次代謝産物(例えば、フェニルプロパノイド、アルカロイド、テルペノイド、キノンもしくはステロイド)、および気体状、固体状もしくは流体状(化学的)化合物および物質の診断または分析のためのマーカーからなる群から選択される。
関心対象の遺伝子は、それ自体天然の薬剤、例えば医薬品または動物用医薬品であるタンパク質をコード化するものを含む。さらに、関心対象の遺伝子は、例えば工業用酵素、毒素、または新規農学的入力および出力形質を付与する組換えタンパク質などの任意の他の組換えタンパク質も含む。
異種核酸は、とりわけ、先に示唆したような融合タンパク質などの細菌、真菌、植物もしくは非植物起源、または動物起源の遺伝子をコード化することができる。産生されたポリペプチドを利用して、他の場所で使用するために精製可能なポリペプチドを産生することができる。本発明の方法で産生可能なタンパク質には、ヘテロ二量体、例えばFSH、免疫グロブリン、融合抗体および単鎖抗体が含まれる。さらに、前記遺伝子を改変して、修飾グリカン構造などの改変された特性を有するタンパク質を産生することができる。しかしながら、本発明は、それ自体は自然界で存在しない人工配列などの合成遺伝子の使用も可能にする。
そのようなタンパク質としては、網膜芽細胞種タンパク質、p53、アンギオスタチン、およびレプチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に、本発明の方法は、哺乳類調節タンパク質を産生するために使用することができる。他の関心対象の配列としては、タンパク質、ホルモン、たとえば卵胞刺激ホルモン、成長因子、サイトカイン、血清アルブミン、ヘモグロビン、コラーゲン、タウマチン、タウマチン様タンパク質、上皮成長因子、たとえばVEGFなどが挙げられる。
当業者には理解されるように、本発明は、医薬的に関連する(組換え)タンパク質(たとえば、ワクチン、抗体、治療用酵素、アレルゲンおよび低アレルゲン、抗微生物ペプチド、構造タンパク質、例えば生体適合性コーティング材料として使用するためのエラスチンおよびコラーゲン、ウイルス様粒子、タンパク粒など)、栄養価のある(組換え)タンパク質(食品および飼料添加物)、診断適用のための(組換え)タンパク質(例えば、酵素、抗体および改変抗体、他の酵素または蛍光融合タンパク質、陽性対照として使用される抗原、プロテインアレイのための結合リガンド)、技術的に関連する(組換え)タンパク質(例えば、親和性吸着剤に対する結合リガンド、高価値酵素、生体触媒など)、および農学的入力または出力形質を改善する組換えタンパク質をはじめとするさまざまなタンパク質およびポリペプチドの産生を可能にする。
一般的に言えば、異種核酸は、当該技術分野で用いられる適切な方法によって発現可能、または次のようにして転写もしくは発現可能である:
(i)例えば関心対象の異種配列に機能的に連結されたプロモーターを含む「裸の」DNAの一時的発現
(ii)複製ベクターなどの発現ベクターからの発現。一般的に言えば、当業者は、一時的組換え遺伝子発現のために、ベクターを構築することができ、プロトコルを設計することができる。必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーターフラグメント、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列をはじめとする適切な調節配列を含む好適なベクターを選択することができる、または構築することができる。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press or Current Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992を参照のこと。
(iii)非組み込みベクターからの発現
これらの範疇は、例えば非組み込みベクターは発現ベクターでもあり得るので、相容れないものではないと理解される。
当業者には理解されるように、蛍光マーカータンパク質もしくはポリペプチド、または蛍光分子を産生する酵素、および関心対象の異種タンパク質(所望の産物)をコードする少なくとも2つの異種核酸配列は、(i)同じベクター上の1つの発現カセットに含まれる多シストロン性立体配置で、(ii)同じベクター上の少なくとも2つの異なる発現カセットとタンデム立体配置で、または(iii)異なるベクター上の少なくとも2つの異なる発現カセットで、提供することができ、この場合、タンデム立体配置が好ましい。
さらなる態様によると、本発明はしたがって、好ましくは異種タンパク質またはポリペプチド、二次代謝産物、およびマーカーからなる群から選択される、少なくとも1つの所望の産物の産生のための方法も提供する。方法は、少なくとも1つの所望の産物を産生し、蓄積するために本発明にしたがって確立される(トランスジェニック)単クローン性植物細胞系を使用することを含み、所望の産物は、その後、産生細胞または培養培地から得られるか、または単離される。
したがって、本発明の一態様では、プロモーターと機能的に連結した標的ヌクレオチド配列を含む導入された核酸構築物から転写によって生成させた異種標的タンパク質などの所望の産物をコード化するmRNAをさらに生成させることができる、好ましくは安定に形質転換された単クローン性植物細胞系の使用が開示される。
「導入された核酸」は、したがって、所望の産物の産生および蓄積を引き起こし得る構築物の形態で提供されるDNA配列として異種核酸配列を含む。
したがって、本発明の好ましい実施形態において、単クローン性植物細胞系において異種ヌクレオチド配列の安定な発現を達成する方法であって、所望の産物をコードする異種ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの第1核酸配列を安定して導入するステップを含む方法が開示される。
一実施形態において、少なくとも細胞外異種タンパク質を生成させる方法であって:
(i)植物細胞の出発集団に含まれる標的細胞に、異種タンパク質または所望の産物をコードするヌクレオチド配列を含む第1核酸を安定して導入するステップ;
(ii)前記植物懸濁培養物から提供される植物懸濁細胞からプロトプラストを調製するステップであって、プロトプラストがさらに形質転換され、(i)蛍光マーカータンパク質またはポリペプチドを産生することができ、そして(ii)選択剤の存在下で生存することができる、ステップ;
(iii)プロトプラストの調製物をFACSに供することによって、単一形質転換プロトプラストを分離するステップ;
(iv)分離された単一形質転換プロトプラストを、フィーダー細胞材料の存在下での共培養によって微小コロニーまたはミクロカルスが形成されるまで再生するステップ;
(v)(i)微小コロニーまたはミクロカルスを固体培養培地に移し、(ii)その微小コロニーまたはミクロカルスを少なくとも1つの選択剤の存在下で、トランスジェニックカルス組織が形成されるまで培養することによって、単クローン性カルス組織を生成させるステップ;
(vi)カルス組織を液体培養培地に移すことによってトランスジェニック単クローン性植物細胞系を確立するステップ;および
(vii)適切な培養条件を提供することによって、異種タンパク質または所望の産物の核酸から発現を引き起こすまたは許容するステップ、および
(viii)蓄積された異種タンパク質または所望の産物を産生細胞から収集するステップ
を含む方法が提供される。
単離は完全に従来どおりの手段によるものであってもよく、部分的もしくは完全精製を必要とするかもしれないし、必要としないかもしれない。
当然のことながら、当業者は1より多い遺伝子を構築物で、または各構築物で使用することができることを認めるであろう。複数のベクター(それぞれ最適な異種タンパク質をコード化する1以上のヌクレオチド配列を含む)を本明細書中またはほかの場所で記載されるように標的細胞に導入することができる。これは、たとえば酵素の複数のサブユニットを産生するために有用であり得る。
蛍光マーカータンパク質またはポリペプチドは、GUSなどの蛍光によって検出可能な任意のタンパク質、GFPまたはDsRedなどの蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどであり得る。好ましくは、レポーターは、DsRedまたはGFPなどの非侵襲的マーカーである。
さらなる態様によると、本発明は、細胞選別による高発現挿入位置の特定方法であって、細胞を、たとえば蛍光タンパク質1を含有する構築物で形質転換し(たとえば、以下の実施例1Bで記載するとおり)、そして単一高蛍光タンパク質1産生細胞を、微小コロニーおよび懸濁培養物の再生ならびに例えば蛍光タンパク質2との遺伝子交換を含むFACSによって同定し、分離し、そして稀少遺伝子交換産物を同定し、分離するステップを含む方法を提供する。
本発明を以下の非限定的図面および実施例を参照してさらに説明する。本発明の他の実施形態はこれらを考慮すると当業者には思い当たるであろう。
図1は、本明細書中で記載されるトランスジェニックMTED BY−2系の製造に用いられる発現カセットの構造を示す概略図である。特に、BY−2懸濁細胞の形質転換に用いられるpTRAkc::MTED植物発現ベクターのT−DNAを示す。
LBおよびRB:T−DNA左右の辺縁;PnosおよびpAnos:ノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーター;nptII:ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子のコーディング配列;SAR:スカフォールド付着領域;P35SSおよびpA35S:カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S遺伝子の複製されたエンハンサーを有するプロモーターおよびターミネーター;CHS:パセリ(Petroselinum crispum)由来のカルコンシンターゼの5’−UTR;SP:シグナルペプチド;HCおよびLC:M12抗体の重鎖および軽鎖のコーディング配列;TL:タバコエッチウイルス(TEV)の5’−UTR;TP:輸送ペプチド;DsRed:イソギンチャクモドキ(Discosoma spec)由来の赤色蛍光タンパク質のコーディング配列。
実施例
実施例1
形質転換事象後のエリート産生単クローン性細胞系の急速な生成
A.タバコ細胞培養物
タバコ(Nicotiana tabacum)栽培品種Bright Yellow 2(BY−2)の野生型懸濁培養物を暗所にて無菌条件下、100mlのガラス製三角フラスコ中50mlアリコートとして26℃で一定して180rpmでオービタル撹拌しながら維持した。培養培地は、スクロース(3%、w/v)および1mg/lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を追加した基本MSMO培地(pH5.8)を含んでいた。5%(v/v)の細胞を50mlの新鮮培地に移すことによって7日間隔で継代培養を実施した。
プロトプラスト調製のために、2%(v/v)を50mlの新鮮培地に移すことによって懸濁細胞培養物を継代培養した。
B.その後の選別のためのトランスジェニック事象の加速された生成
BY−2野生型懸濁細胞をセクションAで記載したように培養した。並行して、同じベクター上にいくつかの発現カセットを含む構築物を有するトランスジェニックアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(図1を参照のこと)を、適切な抗生物質を含むYEB培地(0.5%普通ブイヨン、0.1%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.5%スクロース、2mMのMgSO4、pH7.4)中、オービタルシェーカー上で、160rpmおよび27℃にてOD600nmが1になるまで培養した。継代培養の3日後、3mlのBY−2野生型細胞、200nMのアセトシリンゴンおよび150μlのアグロバクテリア(OD600nm=1)をペトリ皿中暗所にて共培養した。室温での共培養の3日後、200mg/lのセフォタキシムを追加した10mlのBY−2培地中にBY−2細胞を再懸濁させた。細胞を50mlの無菌管に移し、遠心分離(850g、5分)によって2回洗浄して、アグロバクテリアを除去した。細胞ペレットを再懸濁させた後、形質転換されたBY−2細胞の培養に、100mlの振とうフラスコ中、セフォタキシムおよび好適な選択剤を追加した20〜50mlのBY−2培地を用いる(180rpm、26℃)。適切な懸濁液の再生後(圧縮細胞量約50〜60%)、細胞をプロトプラスト調製のために継代培養することができる(セクションCを参照のこと)。この方法は、その後のプロトプラスト生成(C)およびフローサイトメトリーによる選別(D)に使用可能なトランスジェニック懸濁培養物を確立するために14〜21日を要する。
C.プロトプラスト調製および細胞壁再生
活発に成長する細胞培養物を、850gで5分間、無菌円錐形プラスチック遠心管中で遠心分離することによって細胞を沈降させるために継代培養の3日後に使用した。上清を除去し、1%(w/v)セルラーゼおよび0.3%(w/v)マセロザイムを含む10mlのPNT消化液(3.6g/lのKao Michayluk塩基性塩(Duchefa)、0.4Mスクロース、0.5mg/lのNAA、1mg/lのBAP)中に細胞を再懸濁させた。細胞−酵素懸濁液を、6cmペトリ皿中に入れ、粘着テープで密封した。消化を一晩(16〜18時間)、26℃にて暗所で穏やかに撹拌しながら実施した。プロトプラストは、100μmナイロンメッシュでの濾過後、遠心分離(104gで8分間)にかけると表面へ浮上した。ペレットおよび培地界面を除去し、プロトプラストをPNT溶液で2回洗浄した。プロトプラストをW5溶液(154mMのNaCl、125mMのCaCl2、5mMのKC1、5mMのグルコース、pH5.6)中に再懸濁させ、76gで2分間遠心分離することによって沈降させた。プロトプラストを穏やかに再懸濁させた後、修飾再生培地8p2c(以下の第1表を参照のこと;8p培地から最適化)中で培養した。通常、記載された手順によって、1mlあたり7×105プロトプラストが得られ、平均74%の生存プロトプラストであった。
プロトプラストを3日間26℃にて暗所で再生させて、細胞壁再生を開始した。結果として得られたプロトプラストを再度、100μmナイロンメッシュで篩別し、FAC選別のために無菌試料導入管に移した。単一プロトプラストを、非トランスジェニック野生型フィーダープロトプラストまたは細胞を含む96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル中に選別した(セクションDを参照のこと)。
フィーダープロトプラストとして使用したBY−2野生型プロトプラストを、Fuchs−Rosenthal計算板を使用して8p2c培地1mlあたり約2×103細胞に調節した。約100の野生型フィーダープロトプラストが各ウェルに移されるように、50マイクロリットルのこれらのプロトプラストを96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移した。
第1表:8p2c培地(pH5.6)の組成
・ Kao und Michayluk塩基性塩混合物(Duchefa)
・ Kao und Michaylukビタミン溶液(Sigma)
0.02mg/lのp−アミノ安息香酸
2mg/lのL−アスコルビン酸
0.01mg/lのビオチン
1mg/lのD−パントテン酸カルシウム
1mg/lの塩化コリン
0.4mg/lの葉酸
100mg/lのミオイノシトール
1mg/lのニコチンアミド
1mg/lのピリドキシンHCl
0.2mg/lのリボフラビン
1mg/lのチアミンHCl
0.01mg/lのビタミンA
0.02mg/lのビタミンB12
0.01mg/lのビタミンD
・ 有機酸(NH4OHでpH5.5)
20mg/lのピルビン酸ナトリウム
40mg/lのリンゴ酸
40mg/lのクエン酸
40mg/lのフマル酸
・ 糖および糖アルコール
0.25g/lのスクロース
250mg/lのマンノース
68.4g/lのグルコース
250mg/lのラムノース
250mg/lのフルクトース
250mg/lのセロビオース
250mg/lのリボース
250mg/lのソルビトール
250mg/lのキシロース
250mg/lのマンニトール
・ ホルモン
0.2mg/lの2.4−D
0.5mg/lのゼアチン
1.0mg/lのNAA
・ 2%(v/v)のココナツ水
・ 500mg/lのカザミノ酸
D.フローサイトメトリーによる分析および選別
488nm/635nmアルゴンイオンレーザーを有するFACS Vantage(DIVA option、BD Bioscience)装置をトランスジェニック植物プロトプラストの選別のために使用した。加圧滅菌および0.22μmフィルターを通過させることによって、シース液であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS pH7.4)を殺菌した。選別前に、無菌シース液を通過させることによって、サンプル管から残留エタノールを除去した。商業規格自動蛍光校正粒子を使用して、サイトメーターシステム/選別設定を調整した。フローソーターを488nmにて175mWのレーザー出力で操作した。選別前に、プロトプラスト培養物試料の前方光散乱、側方光散乱および蛍光について集められたシグナルに基づいて電子選別ウィンドウを配置して、強蛍光集団を規定した。DIVAソフトウェア(BD Bioscience)を用いてシグナルをドットプロットとして表示した。ゲートを、第1に生存プロトプラストの集団の周りに、そして第2に、第1ゲートに基づいて強蛍光プロトプラストの集団の周りに作成することによって、選別領域を規定した。4〜6psiのシステムシース圧、約7kHzの低下周波数および約1.000事象/秒の試料流速で200μmフローチップにより選別を実施した。
記載された選別パラメータを使用して、20%の平板効率(すなわち、ウェルの20%がインタクトな生存単一選別プロトプラストを含んでいた)が達成された。
E.ナース/フィーダープロトプラストとの共培養による単一選別プロトプラストの再生
高蛍光単一プロトプラストの選別前に、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルを、約100タバコ(N. tabacum)栽培品種BY−2野生型プロトプラストをフィーダー細胞として含む50μlの無菌8p2c再生培地で満たした。単一選別トランスジェニックプロトプラストを様々な時点での逆蛍光顕微鏡法によって分析して、選別過程後の単細胞堆積を検証し、さらにトランスジェニックプロトプラストの増殖および微小コロニー形成(選別後14〜20日)もモニターした。96ウェルプレート中の選別されたプロトプラストの培養を26℃〜27℃の暗所で実施し、プレートを無菌蓋で閉じ、粘着テープで密閉した。
トランスジェニック微小コロニーを次いで、抗生物質選択マーカー(たとえば、カナマイシン)を含む固体再生培地(0.8%(w/v)寒天)に移した。ウェル中に存在するフィーダー細胞を含むミクロカルス組織はピペッティングによって穏やかに再懸濁され、先端の広いピペットを用いて移された。続いて、ウェルとさらには固体再生培地上に移されたミクロカルスを逆蛍光顕微鏡法によって分析して、トランスジェニックミクロコロニーおよび蛍光ミクロコロニーの移動の成功を確認した。移動後、トランスジェニックミクロカルスを14〜20日間成長させ、選択マーカーを含む固体再生培地を含む新鮮なプレートに移した。直径約2cmのカルス組織を使用して、50mlのプラスチック組織培養フラスコ中5mlの培養培地(セクションAで記載)に細胞材料を移すことによって懸濁培養物を確立した。これらのフラスコを、100mlのガラス製三角フラスコに移すために細胞懸濁液が約50〜60%の圧縮細胞量に成長するまでセクションAで記載されているように培養した。トランスジェニック単クローン性懸濁培養物の培養をセクションAで記載されているように実施した。
記載されたフィーダー細胞法によって、最初に選別されたインタクトな生存単一プロトプラストの約50%が再生可能になる(すなわち、ミクロカルスのために開発された96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に選別された単一プロトプラストの約10%)。
F.選別された単一プロトプラストの再生中のフィーダー細胞生存の有効な除去の検証
単一FACS選択プロトプラストの単クローン性懸濁培養物への信頼性の高い再生を可能にする手順が開発された。単一プロトプラストは選別後に再生しなければならないので、選別された単一プロトプラストの再生および増殖を支援するためにフィーダー細胞が必要とされる。フィーダープロトプラストは選別された蛍光標的プロトプラストと一時的に共培養されるので、単クローン性培養物の再生中にフィーダープロトプラストの残存を排除することが必須である。
単一選別トランスジェニックおよび蛍光BY−2細胞のフィーダープロトプラストでの潜在的な汚染を調査した。トランスジェニック細胞を、GFP−KDEL発現カセットおよびAHAS選択マーカーを含む構築物(イマゼタピル耐性を付与する)で形質転換した。この構築物で形質転換され、GFPを産生する単一BY−2プロトプラストを、DsRed発現カセットおよびnptII選択マーカーを含むトランスジェニック細胞系のプロトプラスト(カナマイシン耐性を付与する)を含む96ウェルプレート中に選別した。第2の実験で、DsRed発現カセットおよびnptII選択マーカーで形質転換された単一BY−2プロトプラストを、GFPを産生するトランスジェニック細胞系のプロトプラストを含む96ウェルプレート中に選別した。再生後、得られたGFPおよびDsRed蛍光培養物を、イマゼタピルまたはカナマイシンに対する耐性および蛍光(緑色対赤色)に関して分析した。両アプローチからのカルス組織を、1.5μΜのイマゼタピルまたは100mg/Lのカナマイシンのいずれかを含む選択培地上に蒔いた。細胞成長を14日のインキュベーション後に視覚的に評価した。試験したカルスの全て(合計20)は、それらの特異的選択剤を含む培地プレート上だけで成長した。手短に言うと、GFP/AHAS形質転換カルスは、イマゼタピル含有プレート上で成長したが、カナマイシン含有プレート上では成長せず、一方、DsRed/カナマイシン形質転換カルスはカナマイシンプレート上でのみ成長した。この観察結果は、再生されたトランスジェニック細胞系が各フィーダー細胞系で汚染されないことを明らかに示した。フィーダー細胞での潜在的な汚染をフローサイトメトリーによる分析によってさらに評価した。再生されたGFPおよびDsRed懸濁培養物をそれぞれ蛍光タンパク質GFPまたはDsRedによって誘発される光学特性に関して分析した。この観察結果は、再生されたトランスジェニック細胞系が各フィーダー細胞系で汚染されないことを明らかに示した。すべての試験されたBY−2培養物は予想される蛍光パターンだけを示した。GFP形質転換細胞の選別後に確立された培養物は、緑色蛍光のみを示し、一方、DsRedを産生する培養物は、赤色蛍光チャンネル中でのみ検出された。フィーダー細胞での汚染の場合、両チャンネルでの蛍光シグナルが予想された。サイトメトリー分析の結果は、耐性試験によって以前に証明されたように選択プレート上のフィーダー細胞の効率的な除去を裏付けた。
G.単クローン性トランスジェニック懸濁培養物の分析
単クローン性懸濁培養物をまず高蛍光細胞のそれらのパーセンテージに関して分析した。したがって、プロトプラストをセクションCで記載されたようにして調製した。蛍光プロトプラストの一部をフローサイトメトリーで測定するため、FACS Calibur Instrument(BD Bioscience)を使用した。BY−2野生型プロトプラストに基づいて、設定パラメータ(たとえば、光の増幅および蛍光散乱増倍管)を調節し、試料を測定した。生存集団のゲーティング後、蛍光チャンネル中のこの集団の分布を使用して閾値を設定し、これによって、野生型自己蛍光に起因する全てのバックグラウンドシグナルを排除した。この閾値にしたがって、単一プロトプラストから誘導される改善されたプロトプラスト培養物内の蛍光プロトプラストのパーセンテージを算出した。組換えDsRedタンパク質を産生する単クローン性懸濁培養物のフローサイトメトリーによる分析は、類似した強力な蛍光強度の均一に分布した細胞を示した(狭い蛍光ピーク)。DsRed蛍光細胞部分の計算によって、78〜88%強蛍光細胞のパーセンテージが得られた。
組換えタンパク質の蓄積レベルは、様々な手段(たとえば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))によって決定することができる。したがって、細胞を遠心分離(850g、5分)し、3容積の抽出緩衝液(PBS pH6、5mMの2−メルカプトエタノール、5mMのEDTA、10mMのアスコルビン酸)中に再懸濁させ、超音波処理によって破壊した。抽出物を細胞片から別の遠心分離ステップ(20分、16000g)によって分離し、分析に使用した。pTRAkc:MTEDで形質転換された懸濁培養物の5dpi細胞抽出物中のM12抗体蓄積の免疫学的分析によって、118±20μg/gまでの新鮮量(通常の生成方法、すなわちカルス生成及びスクリーニングを使用するよりも1.5倍高い)が明らかになった。
実施例2
不均一なトランスジェニック懸濁培養物からの単クローン性細胞系の生成
A.タバコ細胞培養物
ER遅延ヒトフルサイズIgG1抗体M12およびプラスチド標的蛍光タンパク質DsRedを産生するトランスジェニックタバコ栽培品種Bright Yellow 2(BY−2)懸濁培養物MTED#18を、暗所で無菌条件下、100mlのガラス製三角フラスコ中50mlアリコートとして26℃にて180rpmの一定したオービタル撹拌をしながら維持した。BY−2野生型細胞を対照と同じ条件下で培養した。培養培地は、スクロース(3%、w/v)および1mg/lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を追加したpH5.8の塩基性MSMO培地を含んでいた。5%(v/v)の細胞を50mlの新鮮培地中に移すことによって7日間隔で継代培養を実施した。
タバコ栽培品種BY−2細胞のアグロバクテリウム媒介性形質転換とそれに続く抗生物質に基づく選択とその後の形質転換されたカルス組織の分離によって、トランスジェニック懸濁培養物を生成させた。カルス組織を、免疫学的アッセイ(ドットブロットおよびELISA)によるそれらの抗体産生にしたがってスクリーンし、最良の候補を懸濁培養物確立に使用した(=細胞系MTED#18)。親MTED#18培養物の特異的Ml2抗体産生は13μg/g新鮮細胞質量(10mg/L)であった。フローサイトメトリーによる分析によって、トランスジェニック培養物が2つの亜集団からなり、生存集団の24%だけが蛍光マーカータンパク質DsRedを産生することが明らかになった。
プロトプラスト調製のために、2%(v/v)を50mlの新鮮培地に移すことによって懸濁細胞培養物を継代培養した。
B.プロトプラスト調製および細胞壁再生
実施例1、セクションCを参照のこと。
通常、記載した手順で1mlあたり5×105プロトプラストが得られ、平均62.2%の生存トランスジェニックプロトプラストであった。
C.フローサイトメトリーによる分析および選別
装置設定および下準備を実施例1、セクションDで記載されているようにして実施した。
単一強蛍光植物プロトプラスト(全ての選別されたプロトプラストの1〜2%)を細胞堆積装置(すなわちマイクロタイタープレート)中に単細胞モードで選別した。第2のゲート基準と一致して、ウェルあたり1つのプロトプラストが、約100野生型プロトプラストをフィーダーとして含む50μlの無菌8p2c再生培地で満たされた96ウェルプレート中に選別された。96ウェルプレートを、無菌蓋で閉じ、粘着テープで密閉した。回収されたプロトプラストの実数を逆蛍光顕微鏡法によって測定した。単細胞モードでのプロトプラストのフローサイトメトリーによる選別の結果、約20%のウェルが1つのウェルあたり1つのインタクトな生存プロトプラストを含む平板効率が得られた。
D.低密度での選別されたプロトプラストの再生
単一選別プロトプラストの再生を実施例1、セクションEで記載したように実施した。
単細胞モードでの高蛍光プロトプラストのフローサイトメトリーによる選別の結果、約20%のウェルがただ1つの選別されたプロトプラストを含んでいた。これらの単一プロトプラストの50%は増殖を開始し、懸濁培養物を確立するために使用することができた。
E.単クローン性トランスジェニック懸濁培養物の分析
単一プロトプラストから誘導される改善された懸濁培養物における蛍光プロトプラストのパーセンテージを測定するために、フローサイトメトリーによる分析を先に記載したようにして実施した(実験1、セクションD)。M12抗体蓄積レベルを酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した。したがって、懸濁細胞を遠心分離し(850g、5分)、3容積の抽出緩衝液(PBS pH6、5mMの2−メルカプトエタノール、5mMのEDTA、10mMのアスコルビン酸)中に再懸濁させ、超音波処理によって破壊した。抽出物を細胞片から遠心分離ステップ(20分、16000g)によって分離し、分析に使用した。選択された設定(Fc捕獲およびLC検出)のために、完全に構築された抗体だけが検出された。
1ラウンドのFACS後、単クローン性懸濁培養物は両組換えタンパク質について有意に改善された蓄積レベルを示した:親培養物と比較すると、3.7倍濃縮されたパーセンテージのDsRed蛍光細胞(90%)およびM12抗体の11倍の増加(145μg/g新鮮量またはmg/Lレベルで9.3倍(93mg/L))。
F.懸濁培養物改善の再現
トランスジェニック単クローン性懸濁培養物の組換えタンパク質生産性をさらに増大させ、安定化させるために、ステップB〜Eを繰り返すことができる。先に記載したのと同じプロトプラスト生成選別および再生の条件を適用した。
第2の選別ラウンドの結果、抗体蓄積がさらに増大した:182μg/g新鮮量または113mg/L、これは親培養物と比較して14倍および11.3倍の増加である。
最高産生第2世代単クローン性培養物の第3ラウンドの選別の結果、類似した蓄積レベルをもたらす第3世代単クローン性培養物が得られ、このことは最大レベルが達成されたことを示す。
G.標的タンパク質生産性に関するエリート産生単クローン性培養物の安定性
FACSで誘導される単クローン性細胞系の安定性を3つの単クローン性系の例について調査した。単クローン性細胞系を7日サイクルで継代培養し(実施例1、セクションAを参照)、一方、両組換え標的タンパク質を2か月間隔で、常に継代培養後第5日に測定した。12か月にわたって、単クローン性培養物の第1世代について、これらの培養が、新鮮量1グラムあたり高くかつ安定した量のM12抗体を依然として産生することが示された。隔月のサンプリング間隔で抗体レベルのごくわずかな変動(細胞培養の変動に起因する)が観察された。
第2世代単クローン性の分析は、それらが由来する第1世代単クローン性培養物と比較して、両組換えタンパク質M12抗体およびDsRedの類似した蓄積レベルまたは若干増加した蓄積レベルを示すことによって、細胞系の安定性を立証した。全体にわたって第2世代の分析された単クローン性培養物は、第1世代単クローン性培養物と比べて、標的タンパク質産生に関してより安定であるように見える(隔月のサンプリング間隔で変動が少ない)。12か月の期間中に、3つの分析した単クローン性培養物のうちの2つは、全集団中のDsRed蛍光細胞のパーセンテージならびにM12抗体蓄積に関して非常に安定であることが判明した。

Claims (7)

  1. 植物細胞の異種集団から単クローン性植物細胞系を生成するための方法であって、次のステップ:
    (a)植物細胞の異種集団を提供するステップ;
    (b)植物細胞の前記異種集団からプロトプラストを調製するステップ;
    (c)プロトプラストの調製物をフローサイトメトリーによる選別に供することによって単一プロトプラストを分離するステップ;
    (d)フィーダー細胞材料の存在下での共培養によって微小コロニーが形成されるまで、分離された単一の形質転換されたプロトプラストを再生するステップ;
    (e)微小コロニーをフィーダー細胞材料から除去し、単クローン性植物細胞系が形成されるまで微小コロニーを培養するステップ
    を含む前記方法。
  2. ステップ(e)で得られる単クローン性植物細胞系の稔性の全植物への再生を更に含む、請求項1記載の方法。
  3. ステップ(b)で調製されるプロトプラストが、形質転換され、(i)蛍光マーカータンパク質またはポリペプチドを産生することができる、(ii)所望の産物を産生することができる、および/または(iii)選択剤の存在下で生存することができる、請求項1または2記載の方法。
  4. 所望の産物が、異種タンパク質またはポリペプチド、二次代謝産物、および診断または分析の目的のためのマーカーからなる群から選択される、請求項3記載の方法。
  5. ステップ(c)における単一プロトプラストの分離が、プロトプラストをFACSに供することによって実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項で定義される方法を実施することによって得ることができる、または得られる、単クローン性植物細胞系。
  7. 請求項2〜5のいずれか1項で定義される方法を実施することによって得ることができる、または得られる、稔性の全植物。
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