定義
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語および句が以下に定義される。
本明細書中で使用されるとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」の全ては共有「ペプチド結合」により連結されるアミノ酸の一次配列を言う。一般的に、ペプチドはいくつかのアミノ酸、典型的には2〜50アミノ酸からなり、そしてタンパク質より短い。用語「ポリペプチド」はペプチドおよびタンパク質を包含する。
用語「糖タンパク質(単数または複数)」または「糖ペプチド(単数または複数)」はポリペプチド鎖に共有結合された1つ以上の炭水化物残基を含むタンパク質またはペプチドを言う。用語「セレノタンパク質(単数または複数)」または「セレノペプチド(単数または複数)」は1つ以上のセレン原子を含むタンパク質またはペプチドを言う。典型的に、セレン原子はセレノシステインおよびセレノメチオニンを含むセレン含有アミノ酸内でタンパク質に組み込まれる。
用語「セレノ糖タンパク質(単数または複数)」、「セレノ糖ペプチド(単数または複数)」、または「SGP(単数または複数)」は1つ以上のセレン原子を組み込む糖タンパク質または糖ペプチドを言う。典型的に、「セレノ糖タンパク質」は1つ以上のセレン含有アミノ酸を含む。「セレノ糖タンパク質」は任意の数の異なる形態のいくつかの炭水化物を含み得る。
用語「サンプル」および「標本」はそれらの最も広い意味で使用され、そしてどんな源から得られたサンプルまたは標本をも包含する。本明細書中で使用されるとき、用語「サンプル」は(ヒトを含む)動物から得られた生物学的サンプルを言うために使用され、そして液体、固体、および組織を包含する。本発明のいくつかの実施形態において、生物学的サンプルは脳脊髄液(CSF)、漿液、尿および唾液、血液、ならびに血漿、血清等の如き血液産物を含む。しかしながら、これらの例は本発明で使用されるサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきでない。
本明細書中で使用されるとき、用語「酵母」および「酵母細胞」は細胞壁、細胞膜、および細胞内構成要素を有する、真菌界に分類される真核微生物を言う。酵母は特定の分類上のまたは系統上のグループを形成しない。現在は、約1,500種が知られており、全ての酵母種の1%のみが示されていると見積もられている。用語「酵母」はしばしば出芽酵母(S.cerevisiae)の同義語として取られるが、酵母の系統上の多様性は子嚢菌門および担子菌門の両方におけるそれらのクラス分けにより示される。用語「酵母」は醸造酵母、蒸留酵母、およびパン酵母を包含する。出芽酵母(「真の酵母」)はサッカロミセス目に分類される。酵母のほとんどの種は出芽により無性生殖的に再生するが、いくつかは二分裂により再生する。酵母は単細胞であるが、いくつかの種は仮性菌糸または偽菌糸として知られる連結された出芽細胞の糸の形成を通して多細胞になる。酵母の大きさは種により大きく変化し、典型的に直径3〜4μmであり得るが、いくつかの酵母は40μm超に達し得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「セレン富化酵母」および「セレン化酵母」は、無機セレン塩を含む培地中で培養されるどんな酵母(例えば、出芽酵母)をも言う。本発明は使用されるセレン塩により限定されない。実際、非限定的に、亜セレン酸ナトリウムまたはセレン酸ナトリウムを含む、さまざまなセレン塩が本発明において有用であることが企図される。(例えば、細胞または酵母と関連していない)遊離セレノメチオニンもまた、酵母がこの形態のセレンを組み込むため、セレン富化酵母のセレン源として使用され得る。培養中、セレンと硫黄の間の化学的類似性のために、酵母は、細胞内の通常は硫黄含有有機化合物であるところに硫黄の代わりにセレンを組み込む。そのような酵母調製物中のセレン含有化合物はポリペプチド/タンパク質に組み込まれるセレノメチオニンである。そのような調製物中にセレノメチオニンの形態で存在する細胞セレンの総量はさまざまであろうが、10〜100%、20〜60%、50〜75%、および60〜75%であり得る。セレン化酵母調製物中の有機セレンの残余は主にセレノメチオニン生合成経路中の中間体からなる。これらは、非限定的に、セレノシステイン、セレノシスタチオニン、セレノホモシステイン、およびセレノ‐アデノシルセレノメチオニンを含む。完成した生成物中の残留無機セレン塩の量は一般的に非常に低い(例えば、2%未満)。
本明細書中で使用されるとき、用語「SEL‐PLEX」は、酵母の成長速度に対するセレン塩の有害な効果を最小限にし、そして細胞有機材料への無機セレンの最適な組み込みを許容する様式で、甘蔗廃糖蜜およびセレン塩の増加性の量を提供するフェドバッチ発酵中で培養された、乾燥した生育不能のセレン富化酵母(例えば、受託番号CNCM I‐3060の出芽酵母、Collection Nationale De Cultures De Microorganismes(CNCM),Institut Pasteur,Paris,France)を言う。残留無機セレンは(例えば、厳しい洗浄プロセスを用いて)除去され、そして2%の総セレン含有量を超えない。
本明細書中で使用されるとき、用語「有機セレン」はセレン原子が直接炭素原子に結合した有機化合物を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「無機セレン」は一般的に、セレンが−2、+4、および+6酸化状態であるどんなセレン塩(例えば、亜セレン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム)をも言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「受容者」、「対象」、および「患者」は研究され、分析され、試験され、診断され、または処置される、非限定的に、ヒトおよび動物(例えば、霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、家禽、魚、甲殻類等)を含む、どんな動物をも言う。本明細書中で使用されるとき、用語「受容者」、「対象」、および「患者」は、別段の定めなき限り、相互変換可能に使用される。
本明細書中で使用されるとき、用語「w/w」(「重量/重量」)は重量ベースでの組成物中のある物質の量を言う。例えば、0.02% w/w食物飼料サプリメントを含む動物飼料はその食物飼料サプリメントの質量がその動物飼料の総質量の0.02%であることを意味する(例えば、999,800gの動物飼料中の200gの食物飼料サプリメント組成物)。
本明細書中で使用されるとき、用語「精製される」または「精製する」はサンプルからの成分の除去を言う。例えば、酵母細胞壁は非酵母細胞壁成分(例えば、細胞膜および/または酵母細胞内成分)の除去により精製される。それらは酵母細胞壁以外の汚染物質または他の剤の除去によってもまた精製される。非酵母細胞壁成分および/または非酵母細胞壁汚染物質の除去はサンプル中の酵母細胞壁またはその成分の割合における増加をもたらす。
本明細書中で使用されるとき、用語「有効な量」は有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な(例えば、本発明に係るセレノ糖タンパク質を含む)組成物の量を言う。有効な量は1回以上の投与、適用、または投与量で投与されることができ、そして特定の処方または投与経路に限定されるとは意図されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「バイオアベイラビリティ」は生物に利用可能であるまたは体循環に達する分子または成分の画分を言う。分子または成分が静脈内に投与されるとき、そのバイオアベイラビリティは非常に高い。しかしながら、分子または成分が(経口の如き)他の経路を介して投与されるとき、そのバイオアベイラビリティは(不完全な吸収および初回通過代謝のために)減少する。栄養関係で、バイオアベイラビリティは栄養素の吸収および利用速度を言う。例えば、異なる形態の同じ栄養素は異なるバイオアベイラビリティを有し得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「飼料」、「食糧」、「動物飼料」、および「飼料原料」は動物により消費され、そして動物の食餌のエネルギーおよび/または栄養素に寄与する材料(単数または複数)を言う。例は非限定的に、完全混合飼料(Total Mixed Ration(TMR))、かいば(単数または複数)、ペレット(単数または複数)、濃縮物(単数または複数)、プレミックス(単数または複数)、連産品(単数または複数)、穀物(単数または複数)、蒸留穀物(単数または複数)、糖蜜、繊維(単数または複数)、飼料(単数または複数)、牧草(単数または複数)、干し草、穀粒(単数または複数)、葉、あら粉、溶解物(単数または複数)、およびサプリメント(単数または複数)を含む。
本明細書中で使用されるとき、用語「食物サプリメント」、「食事サプリメント」、「食事サプリメント組成物」等は、例えば、動物飼料への添加として、ヒトまたは動物食事の一部分として使用される食事サプリメントまたは栄養サプリメントとして調合された食物製品を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「投与」および「投与する」は薬物、プロドラッグ、もしくは他の剤、または治療的処置(例えば、本発明に係る組成物)を対象(例えば、対象またはインビボ、インビトロ、もしくはエックスビボ細胞、組織、および器官)に与える行為を言う。ヒトの体への例示的な投与経路は目(眼の)、口(経口)、皮膚(局所または経皮)、鼻(鼻の)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬)、耳、直腸、膣を通したもの、注入(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内等)によるもの等であり得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「共投与」および「共投与する」は少なくとも2つの剤(単数または複数)(例えば、本発明に係るセレノ糖タンパク質および1つ以上の他の剤、例えば、抗生物質、治療的(例えば、薬物または医薬)、または他の生物学的に活性な化合物を含む組成物)または治療の、対象への投与を言う。いくつかの実施形態において、2つ以上の剤または治療の共投与は同時である。他の実施形態において、第1の剤/治療は第2の剤/治療より前に投与される。当業者は、使用されるさまざまな剤または治療の処方および/または投与経路は変化し得ることを理解する。共投与のための適切な投与量は当業者により容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、剤または治療が共投与されるとき、それぞれの剤または治療はそれらの単独投与に適切な投与量より低い投与量で投与される。したがって、共投与は剤または治療の共投与が有害である可能性がある(例えば、毒性の)剤(単数または複数)の必要な投与量を低下する実施形態において、および/または2つ以上の剤の共投与により、その他の剤の共投与を介してその剤のうちの1つの有益な効果に対して対象が敏感になるとき、特に所望される。
本明細書中で使用されるとき、用語「処置」または文法上の均等物は疾患(例えば、神経変性疾患)の症状の改善および/または逆転を包含する。本発明に係るスクリーニング方法において使用されるとき疾患に関連する任意のパラメータにおける改善を引き起こす化合物はしたがって治療用化合物として同定され得る。用語「処置」は治療的処置および予防的または防御手段の両方を言う。例えば、本発明に係る組成物および方法での処置から利益を受け得る者は既に疾患および/または障害(例えば、神経変性疾患、糖尿病、または認識機能の欠損もしくは喪失)を有する者ならびに(例えば、本発明に係る予防処置を用いて)疾患および/または障害が予防される者を含む。
本明細書中で使用されるとき、用語「疾患の危険性のある」は特定の疾患にかかりやすい対象(例えば、ヒト)を言う。このかかりやすさは遺伝的(例えば、遺伝的障害の如き、疾患にかかる特定の遺伝的傾向)または他の因子(例えば、年齢、体重、環境条件、環境中に存在する有害化合物への暴露等)のためであり得る。したがって、本発明は特定の危険性に限定されるとは意図されず、本発明は特定の疾患に限定されるとも意図されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「疾患を患う」は特定の疾患にかかっている対象(例えば、ヒト)を言う。本発明は特定の兆候または症状、あるいは疾患に限定されるとは意図されない。したがって、本発明は、対象が特定の疾患に関連する少なくともいくつかの兆候(例えば、兆候および症状)を示す(例えば、無症状の兆候から本格的な疾患まで)どんな種類の疾患にかかっている対象をも包含することが意図される。
本明細書中で使用されるとき、用語「疾患」および「病理学的状態」は、通常の機能の動作を妨害するまたは改変する、生きている動物のまたはそのいずれかの器官もしくは組織の通常の状態の欠陥に関連し、そして(照射、栄養失調、工業災害、または天候の如き)環境因子に、(ぜん虫、細菌、またはウイルスの如き)特定の感染性の剤に、(さまざまな遺伝的異常の如き)生物の遺伝的欠陥に、またはこれらのおよび他の因子の組み合わせに応答し得る状態、兆候、および/または症状を示すために相互変換可能に使用される。
用語「化合物」は体機能の疾患、病気、病、または障害を治療するまたは予防するために使用され得る化学物質、医薬、薬物等を言う。化合物は既知のおよび可能性のある治療用化合物の両方を含む。化合物は本発明に係るスクリーニング方法を用いたスクリーニングにより治療的であると決定され得る。「既知の治療用化合物」はそのような処置において有効であることが(例えば、動物試験またはヒトへの投与での事前の経験を通して)示されている治療用化合物を言う。別の言葉で言えば、既知の治療用化合物は疾患(例えば、癌、神経変性疾患等)の治療において有効な化合物に限定されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「キット」は試薬および他の材料の組み合わせについて使用される。キットは栄養剤および薬物の如き試薬ならびに投与手段を含み得ることが企図される。用語「キット」は試薬および/または他の材料の特定の組み合わせに限定されるとは意図されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「毒性」は、対象、細胞、または組織に対して、毒性物の投与前の同じ細胞または組織に比較して有害なまたは害を及ぼす効果を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「医薬組成物」は活性剤(例えば、セレノ糖タンパク質を含む組成物)と、その組成物をインビトロ、インビボ、またはエックスビボでの診断的、予防的、および/または治療的使用に特に好適にする不活性または活性な担体との組み合わせを言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「医薬として許容される」または「薬理学的に許容される」は、対象に投与されたとき、悪い反応、例えば、毒性、アレルギー性、または免疫学的反応を実質的に生成しない組成物を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「局所的に」は皮膚表面ならびに粘膜細胞および組織(例えば、肺胞、頬、舌、咀嚼、または鼻粘膜、ならびに中空器官または体腔を覆う他の組織および細胞)への本発明に係る組成物の適用を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「医薬として許容される担体」は非限定的に、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョンの如き)、およびさまざまな種類の湿潤剤、どんなおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン)等を含む、どんな標準の医薬担体をも言う。組成物は安定化剤および保存剤をも含み得る。担体、安定化剤、および補助剤の例は、例えば、Martin,Remington's Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.(1975)中に示され、これは参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、食糧(例えば、食物材料および/または処置)は(例えば、本発明に係るセレノ糖タンパク質組成物の)担体としてはたらく。
本明細書中で使用されるとき、用語「医薬として許容される塩」は標的対象(例えば、哺乳類対象、および/またはインビボもしくはエックスビボ、細胞、組織、もしくは器官)において生理学的に耐性である本発明に係る化合物の(例えば、酸または塩基との反応により得られる)どんな塩をも言う。本発明に係る化合物の「塩」は無機もしくは有機酸および塩基に由来し得る。酸の例は非限定的に、塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン‐p‐スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン‐2‐スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等を含む。シュウ酸の如き他の酸は、それ自体医薬として許容されないが、本発明に係る化合物およびそれらの医薬として許容される酸添加塩の取得における中間体として有用な塩の調製において使用され得る。塩基の例は非限定的に、水酸化アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、水酸化アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニア、およびWがC1‐4アルキルである式NW4 +の化合物等を含む。塩の例は非限定的に、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、酪酸、クエン酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、フマル酸、フルコヘプタン酸、グリセロリン酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、2‐ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、シュウ酸、パルモ酸、ペクチン酸、フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、トシル酸、ウンデカン酸等を含む。塩の他の例はNa+、NH4 +、およびNW4 +(WがC1‐4アルキル基である)等の如き好適な陽イオンと混合された本発明に係る化合物の陰イオンを含む。治療的使用のために、本発明に係る化合物の塩は医薬として許容されることが企図される。しかしながら、医薬として許容不可能である酸および塩基の塩もまた、例えば、医薬として許容可能な化合物の調製または精製において使用され得る。治療的使用のために、本発明に係る化合物の塩は医薬として許容されることが企図される。しかしながら、医薬として許容不可能である酸および塩基の塩もまた、例えば、医薬として許容可能な化合物の調製または精製において使用され得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「乾燥」はスプレイ乾燥、凍結乾燥、空気乾燥、真空乾燥、または物質中の液体を減少させるもしくは除去するどんな他の種類のプロセスをも言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「スプレイ乾燥」は物質中の液体を減少させるまたは除去するためにその液体を蒸発させるための熱い気体を用いてその液体を含む物質を乾燥させる通常使用される方法を言う。別の言葉で言えば、その物質は加熱された乾燥空気の通風中へのスプレイまたは噴霧の方法により乾燥される。
本明細書中で使用されるとき、用語「凍結乾燥(freeze‐drying)」および用語「凍結乾燥(lyophilization)」ならびに用語「低温乾燥」は昇華による凍結状態の物質からの溶媒の除去を言う。これは乾燥させたい物質をその共晶点未満まで凍結させ、そしてその後昇華の潜熱を提供することにより達成される。真空および熱入力の正確な制御により、生成物のメルトバックを伴わない凍結状態からの乾燥をすることができる。実質的な適用において、そのプロセスは減圧条件下で加速され、および正確に制御される。
本明細書中で使用されるとき、用語「乾燥遊離流動粉末」は遊離流動乾燥粉末、例えば、大きな塊の妨害を伴わずに、容器、袋、器等から注がれ得る粉末を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「研削」は衝撃、せん断、または摩擦により粒子サイズを減少させることを言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「洗浄」は不純物の(例えば、あらゆる種類の溶質(例えば、蒸留水、緩衝液、または溶媒)または混合物を用いた)除去または清浄を言う、あるいは調製物(例えば、酵母細胞壁)の可溶性の所望されない成分はサンプルから非酵母細胞壁成分を除去するために洗浄され得る。
本明細書で使用されるとき、用語「ポリマーソーム」は(例えば、材料を封入するために利用され得る)水溶液中の合成重合体から組み立てられる小胞を言う。ポリマーソームは両親媒性合成ブロック共重合体を用いて作成され、小胞膜を形成し得る。そしてポリマーソームは50nm〜5μm、またはそれ以上の範囲の半径を有する。ほとんどのポリマーソームはそれらの核内に水溶液を含み、そして薬物、酵素、他のタンパク質およびペプチド、ならびにDNAおよびRNA断片の如き、感受性分子を封入するおよび保護するために有用である。ポリマーソーム膜は封入された物質を、生物系において見られるものの如き、外部の物質から隔離する物理的障壁を提供する。本発明の実施形態において使用されるポリマーソームの例、およびそれらの合成は例えば、米国特許第7,867,512号、第7,682,603号、および第6,835,394号中に見られることができ、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される。
本明細書中で使用されるとき、用語「廃棄物」は所望されないまたは無用の物質を言う。
本明細書中で使用されるとき、用語「廃棄水」は人為的起源の影響により質が悪くなった水である。
発明の詳細な説明
I.導入
セレンは体のグルタチオン(GSH)ならびにその主要なSe含有抗酸化酵素、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、およびチオレドキシン還元酵素と相互作用することにより全ての生存組織において抗酸化防御機構の局面の調節に関連する微量元素である(例えば、Goehring et al.,J.Anim. Sci.59,725‐732(1984)、Gerloff et al.,J.Anim.Sci.70,3934‐3940(1992)を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。グルタチオンおよびGPXは脂質酸化を開始するおよび伝播させることができる遊離ラジカル攻撃を消去することにより膜リン脂質の不飽和結合の完全性を保護する能力を有する(例えば、Meister and Anderson,Annu.Rev.Biochem.52,711‐760(1983)、Deleve and Kaplowitz,Pharm.Ther.52,287‐305(1991)、Palmer and Paulson,Nutr.Rev.55,353‐361(1997)を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。
セレンはいくつかの疫学研究において癌の危険性を減少させることにもまた関連していた(例えば、Salonen et al.,Am.J.Epidemiol.120: 342‐349(1984)、Willett et al.,Lancet 2:130‐134(1983)、Virtamo et al.,Cancer60:145‐148(1987)を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。天然および合成起源のさまざまなセレン化合物は広い範囲の投与量で動物研究において腫瘍発展を阻害することが示されている(例えば、Ip,.J.Nutr.128:1845‐1854(1998)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)。ほとんどの動物研究は癌の化学的予防において薬理学的用量のセレン(2mg/kg超)を使用しているが(例えば、Ip,.J.Nutr.128:1845‐1854(1998)を参照のこと)、セレン欠乏は乳癌発癌(例えば、Ip and Daniel,Cancer Res.45:61‐65(1985)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)およびUVB‐誘発皮膚発癌(例えば、Pence et al.,102:759‐761(1994)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)を高めることもまた示されている。
酵母細胞壁タンパク質は化学結合により細胞壁多糖に連結され、そして酵母細胞壁タンパク質を溶液中に放出するために、これらの結合は壊される必要がある。酵母細胞壁からのタンパク質抽出のための標準的技法はアルカリ加水分解(pH11.5、80℃)を用いてその結合を壊し、その後水中で不溶性であるグルカン多糖からタンパク質を分離するために遠心分離することである。
本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、アルカリ加水分解の標準的技法を用いてセレノ糖タンパク質を抽出することを試みて行われた。アルカリ加水分解を用いて酵母細胞壁からセレノ糖タンパク質を抽出するためのこれらの試みは失敗した。アルカリ加水分解を用いた酵母細胞壁からのセレノ糖タンパク質抽出の失敗はセレノ糖タンパク質の破壊のためであったことが後に分かった。セレノ糖タンパク質を抽出するための後の試みは改変されたアルカリ加水分解手順(pH11.5、60℃)を用いて行われた。これらの試みもまた酵母細胞壁からセレノ糖タンパク質を抽出することができなかった。典型的なアルカリ性酵母タンパク質抽出法は酵母からセレノ糖タンパク質を抽出する試みにおいては、うまくいかなかった。したがって、酸抽出(pH5、80℃)を用いてセレノ糖タンパク質を抽出することを試みた、追加の実験が本発明の実施形態の開発中に行われた。本明細書中に示されるように、酸抽出法は成功であった。セレノ糖タンパク質は破壊されず、そして抽出は可能であった。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、酸抽出法(例えば、pH依存的セレノ糖タンパク質画分)を用いて得られた)セレノ糖タンパク質(SGP)、セレノ糖タンパク質(SGP)組成物を得る新規方法、封入されたセレノ糖タンパク質(SGP)を含む組成物、および(対象(例えば、ヒト、動物等)へ例えば、インビボ有益性(例えば、遺伝子発現プロファイルにおける変化)を提供するための)それらの使用方法を提供する。具体的には、本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、本発明に係る(例えば、(例えば、本発明に係る方法により単離された)SGPを含む)組成物および方法が対象に生物学的に利用可能なセレンを提供するために(例えば、それにより対象内の組織および/または筋肉のセレン含有量を増加させて(例えば、それにより対象の健康の安定化および/または増大を引き起こして))使用され得ることを示す。いくつかの実施形態において、本発明はSGP、封入された(例えば、ポリマーソームに封入された)SGPを含む組成物を得る方法および細胞機能を変える(例えば、それにより対象の(例えば非限定的に、筋骨格系、神経学系、神経系、内分泌系、代謝系、および/または免疫系を含む)体系に有益な効果を提供する)ためにそれらを使用する方法を提供する。本発明は疾患(例えば、癌成長および/または転移)の治療または予防のためのSGP単独または1つ以上の他の活性剤との組み合わせのSGPの使用方法をもまた提供する。本発明は動物(例えば、家畜)の健康を高めるためにSGPを用いる方法をもまた提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る組成物は健康および/または食品(例えば、食肉、乳製品、卵等)の栄養価を補給する、改善する、および/または高めるために利用される。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、一般的な健康のための、免疫系をブーストするための、神経変性疾患のための、認識機能を高めるための、癌、腫瘍成長、および/または転移の治療または予防のため等の)SGPを含む組成物および治療的、栄養補給的、および/または予防的処置としてのその使用方法、ならびにその作出、生成、精製、単離、抽出、および/または特徴付け方法を提供する。本発明は動物に飼料を与えるおよび/または動物飼料を補給するための、SGPおよびSGPの使用方法をもまた提供する。
本発明は可溶性セレン組成物(例えば、SGP)ならびにその使用、生成、および精製方法をもまた提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は可溶性SGP(例えば、pH依存的SGP画分の作成(例えば、分離および特徴付け)を示す実施例1〜2を参照のこと)および組成物ならびにそれらの投与方法(例えば、実施例3〜4を参照のこと)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明はさまざまな経路(例えば、経口、局所、静脈内等)を通して対象に投与される、溶解形態のセレン(例えば、有機セレン(例えば、SEL‐PLEXまたは他のセレン富化酵母のpH依存的SGP画分))を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は低繊維可溶性セレン(例えば、有機セレン)組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は可溶性有機セレン送達系(例えば、セレノ糖タンパク質を封入したポリマーソーム、ナノカプセル、重合体等)のための組成物および方法を提供する。
セレン(例えば、無機セレン(例えば、亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3)))を含む培地中で生育された酵母(例えば、出芽酵母)はセレン(例えば、無機セレン)を代謝し、そして硫黄の代わりにシステインおよびメチオニンにセレンを組み込み、セレノアミノ酸(SeCysおよびSeMet)を含むタンパク質を生成する(Demirci et al.J.Agric.Food Chem.47,2496‐2500(1999).、Demirci & Pometto.J.Agric.Food Chem.47,2491‐2495(1999)、Ouerdane & Mester.J.Agric.Food Chem.56,11792‐11799,(2008)、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される)。ALLTECH,Inc.(Nicholsville,KY,USA)は「有機セレン」を含む、飼料および食物栄養サプリメントとしてSEL‐PLEXの名称で市販されるスプレイ乾燥セレン富化酵母を生産する(例えば、Korhola et al.Res.18,65‐68,(1986)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)。SEL‐PLEX中の最小セレン濃度は1500ppmであり、そしてタンパク質はその排他的な担体である(例えば、Surai.Nottingham University Press 2002,234‐236(2002)、Kelly & Power.J.Dairy Sci.78,237‐242(1995)、McSheehy et al.Analyst 130,35‐37(2005)を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。酵母中には2つのタンパク質プール、つまり、酵母細胞内に存在するタンパク質および酵母細胞壁マンナンに関連するタンパク質がある(例えば、Sedmak.米国特許出願公開第2006/0263415号を参照のこと。当該出願は参照によりその全体が本明細書に援用される)。市販のSEL‐PLEXの約17.0重量%は水溶性であり、そしてこの物質はSEL‐PLEX中に存在するセレン全量の6.5%未満しか含まない。SEL‐PLEXおよび亜セレン酸ナトリウムがセレン源として使用されたニワトリ飼育研究は、SEL‐PLEXによるニワトリ胸筋へのより優れたセレン移行を示した。さまざまな生物活性がSEL‐PLEXの経口投与について発見された(例えば、Rayman.The Lancet 356,233‐241(2000)、McKenzie Trends in Immunology 19,342‐345(1998)、Tapiero.Biomedicine & Pharmacotherapy 57,134‐144(2003)、Combs & Grey Pharmacol.Ther.79,179‐192(1998)、Clark et.al.J. Am.Med.Assoc.276,1957‐1963(1996)を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。
いくつかの実施形態において、本発明はセレン(例えば、無機セレン(例えば、亜セレン酸ナトリウム))を含む培地中で生育された酵母(例えば、出芽酵母)からの可溶性セレノ糖タンパク質(SGP)の分離、ならびに物理的および化学的特徴付け、ならびに本発明に係るSGPで補給されたまたはそうでなければそれを含む食物(例えば、飼料)を対象に与えることによる、組織(例えば、ヒト、動物、ニワトリ等)への「有機セレン」送達におけるそれらの活発な関与を提供する(例えば、実施例1〜4を参照のこと)。本発明は活性、可溶性セレン成分(例えば、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)のpH依存的SGP画分)の組織標的化、静脈内、経口、および/または経皮送達を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は「有機セレン」送達系(例えば、ナノカプセル、重合体球、およびSGPを封入したポリマーソーム)の遅延放出形を提供する(例えば、実施例5〜9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、本発明はSGPを封入したポリマーソームを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明はポリ(エチレンオキシド)‐ブロック‐ポリ(ε‐カプロラクトン)(PEO‐b‐PCL)系のポリマーソーム内にSGPを封入することによりSGPの増強された送達および改善された生体分布を提供する。
酵母細胞の細胞内成分から細胞壁を抽出することによるさまざまな酵母細胞成分の分離が示されている(例えば、Otero et al.J.Chem.Tech.Biotechnol.66,67‐71(1996)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)。これらの分離技術はスプレイ乾燥セレン酵母の抽出には適用されていない。酵母からの糖タンパク質の抽出における本分野において使用される通常のアルカリ条件(pH9.0〜14.0)(例えば、Roberge et.al.J.Agric.Food Chem.51,4191‐4197(2003)を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)は、SeHまたはSeMe置換基がセレノシスチンまたはセレノメチオニンアミノ酸から消去されたため、失敗であった。別の言葉で言えば、セレノタンパク質を含む酵母の抽出に適用されたとき、所望の置換基は分解され、そしてその結果、元のSGP中に存在したセレンはアルカリ条件下での抽出の試行中に失われた(例えば、実施例8の表12を参照のこと)。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、本明細書中に示されるセレノ糖タンパク質のpH依存的画分を含む)セレノ糖タンパク質組成物およびその利用方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、セレン富化酵母からの)セレノ糖タンパク質の生成、精製、単離、抽出、分離、沈殿、および/または特徴付け方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、SGP(例えば、医薬、栄養補給食品、サプリメント、食品等)を含む)食物サプリメント組成物を含む、可溶性セレン組成物(例えば、SGP(例えば、pH依存的SGP画分))の対象への送達のための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明はセレン(例えば、SGP(例えば、ポリマーソーム、ナノカプセル、ナノ粒子、重合体等))の高度な送達(例えば、方向付けられた送達、時間放出送達等)のための組成物および方法を提供する。本発明に係る組成物および方法は非限定的に、食物(例えば、飼料とブレンドするまたはそうでなければ動物に与える)、予防、治療、および研究適用を含む、さまざまな適用において使用される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、SGP(例えば、可溶性SGP(例えば、可溶性有機セレン))を含む)動物飼料組成物、その組成物の製造方法、および動物にその組成物を提供することを含む動物への(例えば、SGP(例えば、可溶性SGP(例えば、可溶性有機セレン))を含む)栄養素の提供方法を提供する。
II.抽出、分離、精製、および使用
本発明のいくつかの実施形態において、可溶性セレンはセレノ糖タンパク質(SGP)の形態で得られる。いくつかの実施形態において、SGPは一般的なセレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX))から抽出される。いくつかの実施形態において、SGPの抽出および/または精製は1つ以上のpH依存的抽出/沈殿ステップを含む(例えば、実施例1および2中に示されるように)。いくつかの実施形態において、SGPの抽出および/または精製は1つ以上のpH依存的画分化ステップを含む。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、SGPの変性および/または破壊なしに)SGPを可溶化するためのセレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)の酸抽出を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、実施例1〜2中に示されるような)酸抽出からのSGPのpH依存的沈殿が高含有量のセレノ糖タンパク質、低含有量の消化不能繊維、および高濃度のセレン(例えば、SEL‐PLEX中に存在する濃度より高いセレン濃度)を作成することを提供する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、wt/wt%、ppm等で)SGPのセレン含有量が、SGPが抽出された材料のセレン含有量より高い、セレン富化酵母から抽出されたSGPを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)親源からのセレンのバイオアベイラビリティに比較して、対象に投与されたときと同じまたは非常に類似のレベルのバイオアベイラビリティを示す、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)のpH依存的SGP画分(例えば、pH4.0またはpH6.0画分)の形態のセレンを提供する(例えば、実施例3、表5を参照のこと)。
いくつかの実施形態において、SGPは一般的なセレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母細胞(例えば、SEL‐PLEX))から抽出される。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源中のセレノタンパク質の一部はSGP(例えば、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%、2.0%、5.0%、10%、20%、50%、またはそれ以上のSGP)を含む。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源はSe含有培地(Se富化培地)の存在下で生育された細胞(例えば、酵母細胞)を含む。いくつかの実施形態において、Se含有細胞(例えば、酵母細胞)はセレノタンパク質を抽出、単離、および/または精製するためにプロセスされ、セレノタンパク質源またはセレノタンパク質富化組成物(例えば、SGP富化組成物)をもたらす。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質およびSGPを含むサンプルはSGPについて富化されている。
いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源またはセレノタンパク質富化組成物(例えば、セレン富化酵母源(例えば、SEL‐PLEX))は1つ以上のステップにかけられ、単離された、精製された、分離された、および/または抽出されたSGPを生成する。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源は(例えば、液体担体(例えば、水、緩衝液、生理食塩水等)中で)混合され、タンパク質スラリー、混合物、溶解物、および/または溶液を生成する。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母源(例えば、SEL‐PLEX))は(例えば、凍結温度超、室温超、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、またはそれ以上の)高温で混合される。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母源(例えば、SEL‐PLEX))は低pH(例えば、酸性条件(例えば、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約3.0、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、または約6.5のpH))で混合される。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母源(例えばSEL‐PLEX))は穏やかに混合され、速く混合され、徹底的に混合され、激しく混合され等する。いくつかの実施形態において、セレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母源(例えば、SEL‐PLEX))は低pH(例えば、酸性条件(例えば、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約3.0、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、または約6.5のpH))および高温(例えば、凍結温度超、室温超、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、またはそれ以上)で混合される。いくつかの実施形態において、その混合物のpHは酸または塩基の添加を通して維持される。
いくつかの実施形態において、セレノタンパク質含有混合物は液体/可溶相および固体/不溶相を分離するために遠心分離される。いくつかの実施形態において、その相を分離するために十分な遠心分離スピードが選択される。いくつかの実施形態において、その液相は可溶性SGPを含む。いくつかの実施形態において、その液相のpHはSGPの一部を沈殿するために調節される(例えば、上昇させられる)。いくつかの実施形態において、液体画分のpHは、元のpHで可溶性であったが高pHでは可溶性でないSGPを沈殿するために、わずかに〜中程度まで上昇させられる(例えば、約0.1、0.2、0.5、1.0、2.0上昇させられたpH)。いくつかの実施形態において、その液体画分のpHは、元のpHで可溶性であったSGPの大部分を沈殿させるために、顕著に上昇させられる(例えば、約1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0上昇させられたpH)。いくつかの実施形態において、セレノ糖タンパク質は沈殿され、そしてさまざまなpH条件で液相から分離され、可溶性セレノ糖タンパク質の複数のpH依存的画分を生成する。例えば、いくつかの実施形態において、酸性条件下で可溶性のセレン富化酵母の抽出物を含む単一の液相は、第1のpH(例えば、pH1.85)で沈殿される可溶性セレノ糖タンパク質の第1の画分、第2のpH(例えば、pH3.0)で沈殿される可溶性セレノ糖タンパク質の第2の画分、第3のpH(例えば、pH4.0)で沈殿される可溶性セレノ糖タンパク質の第3の画分、および第4のpH(例えば、pH6.0)で沈殿される可溶性セレノ糖タンパク質の第4の画分を作成するために使用される。いくつかの実施形態において、液相のpHを上昇させることによる液相からのセレノ糖タンパク質の沈殿はその液相の複数の、連続したpH依存的沈殿反応を含む。
いくつかの実施形態において、沈殿されたSGPは(例えば、分離した液体および固体相を生成するのに十分なスピードでの)遠心分離によりpH調節液体画分から分離される。いくつかの実施形態において、その液相から分離されたSGPは固体SGP画分を作成するために凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、SGP画分を単離するためにその液相のpHを上昇させるおよび遠心分離するプロセスは異なる溶解性(例えば、pH1.5未満で可溶性、pH2未満で可溶性、pH3未満で可溶性、pH4未満で可溶性、pH5未満で可溶性、pH6未満で可溶性等)のSGP画分を生成するために繰り返される。いくつかの実施形態において、単一のpH調節および遠心分離ステップは所望の溶解性(例えば、pH1.5未満で可溶性、pH2未満で可溶性、pH3未満で可溶性、pH4未満で可溶性、pH5未満で可溶性、pH6未満で可溶性等)のSGPを含む1つの画分を生成するために行われる。いくつかの実施形態において、最後のSGP画分の除去後に残る液相はセレノタンパク質またはSGPのさらなる生成において使用される細胞の成長培地の成分として利用性がある。いくつかの実施形態において、可溶性セレノ糖タンパク質を含む組成物はセレノ糖タンパク質の単一の、pH依存的画分のみ(例えば、pH4.0で沈殿される酸性条件下で可溶性のセレン富化酵母の抽出物を含む液相からの可溶性セレノ糖タンパク質)を含む。いくつかの実施形態において、可溶性セレノ糖タンパク質を含む組成物はセレノ糖タンパク質の2つ以上のpH依存的画分(例えば、2つ以上の異なるpH値で沈殿される酸性条件下で可溶性のセレン富化酵母の抽出物を含む液相からの可溶性セレノ糖タンパク質)を含む。
好ましい実施形態において、セレノタンパク質源(例えば、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX))からのSGP抽出およびSGPの混合物のpH依存的画分化のプロセス(例えば、図2および3を参照のこと)は2つの段階を含む(例えば、実施例1〜2、図1および2を参照のこと)。第1の段階において、0.3N HCl(pH1.5)中のセレン富化酵母の懸濁物は攪拌され、そして80℃で8時間加熱される。その混合物のpHは抽出の最初の1時間の間に濃縮HClを添加することによりpH1.5で維持される。8時間後、その混合物は遠心分離され、そしてその液相が分離される。その溶液のpHは2.0N NaOHの添加により1.85に調節され、そしてこのpHで限られた溶解性を有するSGPはその溶液から沈殿し、そして第2の遠心分離によりその液体(pH1.85)から分離され、そしてその後、凍結乾燥され、pH1.85の固体SGP画分を生じる。いくつかの実施形態において、その液体(pH1.85)は第1の遠心分離からの固体(pH1.5)と混合され、これはその混合物のpHの、pH1.6への変化をもたらす。pH1.6で可溶性のSGPの大部分はそのプロセスのこの段階で生じた廃棄流の体積を増加させることなく、液相に移される。そのプロセスのこの段階からの主要な副産物は第2の遠心分離からの固体である。廃棄固体流は抽出にかかるセレン富化酵母の約56.5重量%を構成し、そして38.91%のタンパク質および2477ppmのセレンを含む、価値のあるセレン酵母細胞壁材料を含む。いくつかの実施形態において、これらの固体は動物飼料における環境親和性の栄養サプリメントとして(例えば、単独でまたは他の材料(例えば、セレン富化酵母)との組み合わせで)利用される。第2の段階において(例えば、図3を参照のこと)、第2の遠心分離(図2を参照のこと)からの液相(pH1.6)はミキサーに移され、そしてそのpHは2.0N NaOHの添加によりpH3.0に調節され、そしてこのpHで限られた溶解性を有するSGPはその溶液から沈殿し、そして第3の遠心分離によりその液体(pH3.0)から分離され、そして最後に凍結乾燥され、pH3.0の固体SGP画分を生じる(例えば、実施例1〜2ならびに図2および3を参照のこと)。第3の遠心分離からの液相(pH3.0)はミキサーに移され、そしてそのpHは2.0N NaOHの添加によりpH4.0に調節され、そしてこのpHで限られた溶解性を有するSGPはその溶液から沈殿し、そして第4の遠心分離によりその液体(pH4.0)から分離され、そして最後に凍結乾燥され、pH4.0の固体SGP画分を生じる。第4の遠心分離からの液相(pH4.0)はミキサーに移され、そしてそのpHは2.0N NaOHの添加によりpH6.0に調節され、そしてこのpHで限られた溶解性を有するSGPはその溶液から沈殿し、そして第5の遠心分離によりその液体(pH6.0)から分離され、そしてその後凍結乾燥され、pH6.0の固体SGP画分を生じる。そのプロセスの第2の段階で生じた廃棄流のみが(抽出において使用されるセレン富化酵母の重量と比較して)13.4重量%の固体を含む廃棄水流であり、そのうち、タンパク質画分は約13.3重量%、塩化ナトリウムは3.6重量%を構成し、そしてグルコースおよびマンノースモノ‐およびオリゴ糖は80重量%超を構成する。このpH6.0および242ppmのセレン濃度の「廃棄水」流はリサイクルされる、またはそうでなければ、新規バッチのセレン酵母の調製に再使用される(例えば、成長培地中で利用される)。
いくつかの実施形態において、pH4.0で沈殿されるSGPはセレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)に比較して(例えば、筋肉組織への)優れたセレン送達、およびセレンの無機形態(例えば、亜セレン酸ナトリウム)と比較してはるかに優れた送達を示す(例えば、実施例3を参照のこと)。さらに、pH依存的セレノ糖タンパク質画分(例えば、pH6.0)はセレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)とは組成が異なり、そして同様の量のセレン送達を許容するが、一方でもっと少ない出発物質(例えば、セレン富化酵母)しか必要としない。
いくつかの実施形態において、SGP抽出手順は上記の手順の4以下のpH調節および遠心分離ステップを含む(例えば、1回のpH調節および遠心分離ステップ、2回のpH調節および遠心分離ステップ、3回のpH調節および遠心分離ステップ、4回のpH調節および遠心分離ステップ)。
III.動物飼料
動物飼料は飼い慣らされた家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、家禽、バッファロー、アルパカ、ラマ、ロバ、ラバ、ウサギ、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、またはブタ)を飼うために使用されるどんな飼料をも言う。動物飼料はしばしば干し草、わら、サイレージ、加圧およびペレット化飼料、油および混合食糧、ならびにまた発芽穀類および豆類を含む。世界の動物飼料産業は2006年に6億3500万トンの飼料を消費し、約2%の年間増加率であった。ヒトの食物ではなく飼料を栽培するための農地の使用は議論の的となり得、トウモロコシ(メーズ)の如きいくつかの種類の飼料はヒトの食物ともなり得るが、一方で牧草の如き他のものはそうではない。動物にエネルギー源を提供することに加えて、動物飼料は体に利用される栄養素(例えば、セレン)をもまた提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は従来の動物飼料に比較して、全体のコストを減少させる、飼料変換を増加させる、およびそれを受容する家畜由来の動物製品(例えば、肉、卵、乳製品等)の質を維持するおよび/または改善する栄養組成物(例えば、セレン(例えば、標準の飼料組成物より高い濃度のセレン(例えば、可溶性セレン))を含む動物飼料組成物の生成を許容する可溶性セレン組成物(例えば、SGP))を提供する。
例えば、いくつかの実施形態において、本発明は動物飼料と混合されおよび/またはそれに組み込まれ、そして動物に投与され(例えば、与えられ)、(例えば、他の形態の栄養補給的セレン(例えば、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX))を伴う動物飼料食物に比較して)動物において成長能力に対する同等以上の効果を提供する、SGPを含む食物サプリメント組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る食物サプリメント組成物はその組成物を受容する対象(例えば、ヒトまたは動物)中の(例えば、血液および/または血清中に存在する)循環セレンの量を増加させる。いくつかの実施形態において、他のセレン調合物(例えば、亜セレン酸ナトリウムまたはセレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX))におけるより高い割合の投与されたセレンが、本発明に係る可溶性セレン組成物(例えば、SGP)において生物利用可能である。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、対象が利用可能(例えば、生物利用可能)となるセレンが、他の形態のセレン(例えば、セレン富化酵母)に比較してより高い割合および/または率で含まれるセレノ糖タンパク質を含む組成物を提供し、このことは本発明に係るセレノ糖タンパク質を含む組成物は(例えば、同様のバイオアベイラビリティ量を得るために)より少ない量しか必要とされないことを意味する。いくつかの実施形態において、(例えば、本発明に係るSGPを含む)本発明に係る食物サプリメント組成物はその組成物を受容する対象(例えば、ヒトまたは動物)における(例えば、筋肉または他の組織に存在する)セレンの量を増加させる。いくつかの実施形態において、SGPおよび/または可溶性セレン投与は血清、脂肪組織、筋肉組織等にとって増加したセレンバイオアベイラビリティをもたらす。
いくつかの実施形態において、本発明は動物に本発明に係る食物サプリメント組成物を含む食物を提供することを含む、動物がその動物に与えられた食物中の栄養素を利用する効率の増加方法を提供し、ここで、そのサプリメント組成物は食物中に存在する栄養素をプロセスするおよび利用する動物の能力を高める。いくつかの実施形態において、本発明に係る食物サプリメント組成物はその組成物を受容する対象中の循環抗酸化物(例えば、血液および/または血清中に存在するセレン)の量を増加させる。いくつかの実施形態において、本発明に係る食物サプリメント組成物はその組成物を受容する対象中の抗酸化物(例えば、脂肪組織、筋肉等中に存在するセレン)の量を増加させる。
IV.医薬、栄養補給食品、およびサプリメント
栄養的セレンレベルはFDAにより確立されている(21 C.F.R.101.9(c)(8)(iv),January 1994を参照のこと)。ヒトおよび動物は限定された量の無機および有機形態のセレンであれば安全に代謝することができ、そして非メチル化セレンをモノ‐またはジ‐あるいはトリメチル化誘導体に変換することができ、そのうちモノメチル化誘導体は最も毒性である(例えば、Bedwal,R.S.,et al.,Medical Hypotheses,41(2):150‐159(August 1993)を参照のこと)。FDAは授乳中の女性について70μgの1日のセレン推奨摂取量(RDI)および非授乳成人について55μgのRDIを採用している。1日当たり600μgのセレン投与量は安全であることが報告されている(例えば、Ferris G.M.Lloyd,et al.,App.Clin.Biochem.,26:83‐88(1989)を参照のこと)。およそこの投与量で、酵素グルタチオン還元酵素の通常の活性は肝臓および赤血球中でセレノグルタチオンをセレン化水素に安全に変換し、そして最終的に排泄する。したがって、そのような低投与量では、体は遊離金属形で存在するセレンを安全に代謝し、そして排泄することができる。しかしながら、多くの微量元素(例えば、セレン)と同様に、より高い投与量レベルまたは濃度では、有益な効果は逆転され、そして危険な毒性が現れる(例えば、Furnsinn,C.et al.,Internat′l J.of Obesity and Related Metab.Dis.,19(7):458−463(1995)を参照のこと)。
比較的低濃度で投与されたときセレンは有益な健康効果を提供するが、高い濃度ではセレンは劇的な毒性を示すので、健康上の有益性の可能性は失われ、そして毒性が主な関心事となるため、天然形のセレン投与は科学的および医学的トレードオフに関連する。
上記に示されるように、本発明は対象に有益な効果を提供する、ある特定の形態のセレン(例えば、SGP、水溶性セレン)を提供する。有機形態のセレン(例えば、セレノメチオニンおよびセレン富化酵母)はあまり毒性ではなく、そして無機形態より良く吸収され得るという証拠が示されている(例えば、Mahan,Proceedings of the 15th Annual Symposium Nottingham University Press,Nottingham,UK,pp.523‐535(1999)を参照のこと)。それでもなお、いくつかの実施形態において、複数の形態のセレンは(例えば、対象に有益な健康効果を提供するために)互いとの組み合わせで使用される。セレンの天然源は非限定的に、セレン富化(例えば、セレン化)酵母を含む。使用される酵母株は限定されない。
本発明のある特定の好ましい実施形態において、(例えば、実施例1〜2中に示されるような、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)由来の)SGPは本発明に係る調合物および組成物について選択されるセレン形態である。いくつかの実施形態において、水溶性セレンおよび/またはSGPを含む組成物は他の形態のセレンに比較してより生物学的に利用可能な形態のセレンを提供する。しかしながら、水溶性セレンの誘導体および修飾物および/またはSGP、SEL‐PLEX、または他の形態のセレン富化酵母、セレノメチオニン、セレノシステイン、亜セレン酸化合物、セレン酸化合物、またはそれらの誘導体、塩、もしくは修飾物を含む、他の形態のセレンもまた本発明において使用され得る。したがって、いくつかの好ましい実施形態において、これらの形態のセレンのそれぞれは調合物の成分として使用され得る。あるいは、上記に示される形態のセレンのそれぞれはセレン‐薬物誘導体を形成するよう薬物または医薬に(例えば、化学的にまたは物理的に)結合され得る。さらに、組成物および調合物は1つの形態のセレンに限定されない。実際、組成物または調合物は複数の形態のセレン(例えば、SGPおよびSEL‐PLEX、またはSod‐selおよび水溶性セレン)を含み得る。
本発明のさまざまな実施形態において使用される他の形態のセレンは米国特許第6,911,550号、第6,197,295号、第5,221,545、6号および第6,576,233号、ならびに米国特許出願第20010043925号、第20050069594号、第20050089530号、および第20080107755号中に示され、これらはそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
したがって、本発明は単独のまたは安定化化合物、他の治療用剤(単数または複数)、栄養素(単数または複数)、および/または鉱物の如き、少なくとも1つの他の剤との組み合わせの、1つ以上の形態のセレン(例えば、SGP、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)等)を含む医薬、栄養補給、および/またはサプリメント組成物(例えば、食品および/または食物組成物または処置)を提供し、そして非限定的に、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水等を含む滅菌、生物適合性担体中で投与され得る。
本発明に係る方法は疾患(例えば、神経変性疾患、癌等)の(例えば、予防的なまたは治療的な)処置または生理学的状態の改変において使用される。セレン(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP)は生理食塩水の如き、医薬として許容される担体中で対象(例えば、患者)に静脈内投与され得る。化合物の細胞内送達のための標準の方法(例えば、リポソームによる送達)が使用され得る。そのような方法は当業者に周知である。本発明に係る調合物は静脈内、皮下、筋内、および腹腔内の如き非経口投与に有用である。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、SGPおよび/またはそれを含む医薬調合物)は経口で投与される。
医薬分野において周知であるように、どんな対象にとっての投与量も、患者の大きさ、体の表面領域、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および経路、一般的な健康、および同時投与される他の薬物との相互作用を含む、多くの因子に依存し得る。
したがって、いくつかの実施形態において、セレン(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)を含む組成物および/または調合物は単独でまたは他の形態のセレン、薬物、小分子との組み合わせで、あるいはそれが賦形剤(単数または複数)もしくは他の医薬として許容される担体と混合される医薬組成物で、対象に投与される。いくつかの実施形態において、その医薬として許容される担体は医薬として不活性である。他の実施形態において、セレン(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)を含む組成物は疾患または状態を患う個々の対象に単独で投与される。本発明の他の実施形態において、セレン(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)を含む組成物は全体的な健康または体系の健康の促進のために個々の対象に単独で投与される。単独のまたは1つ以上の他の形態のセレンとの組み合わせのセレン(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)を含む組成物は日々の消費のために、栄養飲料または食物(例えば、ENSURE、POWERBAR等)、マルチビタミン、栄養製品、食物製品等に添加され得る。
処置により変えられると考えられる標的(例えば、加齢に関連する遺伝子発現、および/または癌および/または腫瘍成長もしくは転移に関連する遺伝子発現の調節)により、これらの医薬、サプリメント、および/または栄養補給組成物は体系的にまたは局所的に処方され、および投与される。処方および投与技術は「Remington′s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co,Easton Pa.)の最新版中に見られ得る。好適な経路は例えば、経口または経粘膜投与、および筋内、皮下、脊髄内、クモ膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻内投与を含む、非経口送達を含み得る。
注入のために、セレン含有組成物(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)は水溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、または生理学的緩衝生理食塩水の如き生理学的に適合性の緩衝液中に調合される。組織または細胞投与のために、浸透させたい特定の障壁に適切な浸透剤がその調合物中で使用される。そのような浸透剤は一般的に本分野において既知である。
他の実施形態において、セレン含有組成物(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)は経口投与のために好適な投与形態で本分野において周知の医薬として許容される担体を用いて調合される。そのような担体はセレン含有組成物(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)が処置される対象による経口または経鼻摂取のための、錠剤、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物等として調合されることを可能にする。
本発明における使用のために好適な医薬組成物は、活性成分(例えば、セレン含有組成物(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等))が意図される目的を達成するために有効な量で含まれる、組成物を含む。例えば、医薬剤の有効な量は特定の遺伝子(例えば、KTLG、GRB2、DNAJ3、TGFB1、MAPK8、C1R、UBE4A、SMPX、USP22、および/またはPTP4A1)の発現を変える量であり得る。有効な量の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
本発明は(癌/腫瘍進行および/または転移を妨げるまたは遅延させる)癌の予防および/または治療処置における使用のためのpH依存的SGPおよびそれを含む組成物をもまた提供する。例えば、好ましい実施形態において、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)のpH依存的SGP画分は癌の成長および/または転移に関連する遺伝子の発現を(例えば、所望の様式で)調節するために対象に投与される。本明細書中に示されるように、ある特定の可溶性のSGP画分は可溶性のSGP画分が由来する親材料(例えば、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX))が有しない生物特性(例えば、遺伝子発現を調節する能力)を有することが特定されている(例えば、実施例4および図7〜11を参照のこと)。好ましい実施形態において、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)のpH依存的SGP画分はpH4.0依存的画分であるが、他の画分(例えば、pH3.0、pH6.0等)もまた本発明に係る組成物および方法において使用される。
活性成分に加えて、これらのセレン含有(例えば、可溶性セレン(例えば、水溶性セレン)、SGP等)医薬組成物は医薬として使用され得る調製物へのその活性化合物の加工を促進する賦形剤および補助剤を含む、好適な医薬として許容される担体を含み得る。経口投与のために調合される調製物は錠剤、糖衣錠、カプセル、または溶液の形態であり得る。
本発明に係る医薬組成物は(例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスの手段により)既知の様式で製造され得る。
非経口投与のための医薬調合物は水溶形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁物は適切な油性注入懸濁物として調製され得る。好適な親油性溶媒または媒体はゴマ油の如き脂肪性油またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドの如き合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームを含む。水性注入懸濁物はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランの如き、その懸濁物の粘性を増加させる物質を含み得る。場合により、その懸濁物は高濃度溶液の調製を許容するためにその化合物の可溶性を増加させる好適な安定化剤または剤をもまた含み得る。
経口使用のための医薬調製物は活性化合物を固体賦形剤と混合すること、場合により生ずる混合物を挽くこと、および所望の場合、錠剤または糖衣錠の核を得るために好適な補助剤の添加後に顆粒の混合物をプロセスすることにより得られ得る。好適な賦形剤はラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖、トウモロコシ、小麦、コメ、ジャガイモ等からのデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムの如きセルロース、およびアラビアおよびトラガカントを含むゴム、ならびにゼラチンおよびコラーゲンの如きタンパク質の如き、炭水化物またはタンパク質充填剤である。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムの如きそれらの塩の如き、崩壊または可溶化剤が添加され得る。
糖衣錠核はアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物をもまた含み得る、濃縮糖溶液の如き好適なコーティングで提供される。染料または色素は製品識別のためにまたは活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
経口で使用され得る医薬調製物はゼラチンからなる押込みばめカプセルならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールの如きコーティングからなるやわらかい密閉されたカプセルを含む。押込みばめカプセルはラクトースまたはデンプンの如き充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムの如き潤滑剤、および場合により、安定化剤と混合された活性成分を含み得る。やわらかいカプセル中では、活性化合物は安定化剤を伴ってまたは伴わずに、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールの如き好適な液体中に溶解されまたは懸濁され得る。
医薬として許容される担体中に調合された本発明に係る化合物を含む組成物は調製され、適切な容器中に入れられ、そして示される状態の処置のために標識化され得る。セレンを含む組成物または調合物について、その標識上に示される状態は疾患または状態(例えば、癌、神経変性疾患、および/または認識機能)の予防的または治療的処置に関連する状態の処置を含み得る。
医薬組成物は塩として提供されることができ、そして非限定的に、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む、多くの酸を伴って形成され得る。塩は対応する遊離塩基形である水性または他のプロトン溶媒中でより可溶性である傾向がある。他の場合、好ましい調製物は使用前に緩衝液と混合される、4.5〜5.5のpH範囲の1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であり得る。
本発明に係る方法において使用されるどの化合物についても、治療的に有効な用量は細胞培養分析からはじめに見積もられ得る。その後、好ましくは、投与量が所望の循環濃度範囲を達成するよう動物モデル(特にマウスモデル)において処方され得る。
治療的に有効な用量は(例えば、遺伝子発現を変えることを通して)疾患状況または状態の症状を改善するまたは予防するその量を言う。そのような化合物の毒性および治療的有効性は例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物において標準の医薬手順により決定され得る。毒性および治療的効果間の用量割合は治療指標であり、そしてそれはLD50/ED50率と表現され得る。大きな治療指標を示す化合物は好ましい。これらの細胞培養分析および追加の動物研究から得られたデータはヒトの使用のための投与量範囲の処方において使用され得る。そのような化合物の投与量は好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度範囲内にある。投与量は使用される投与形態、対象の感受性、および投与経路により、この範囲内で変化する。
正確な投与量は処置される対象の観点から対象によりまたは医師により選択され得る。投与量および投与は活性部分の十分なレベルを提供するようまたは所望の効果(例えば、対象における遺伝子発現の変化)を維持するよう調節される。考慮に入れられ得る追加の因子は疾患状況の重症度、年齢、体重、および患者の性別、食事、投与時間および頻度、薬物の組み合わせ(単数または複数)、反応感受性、および治療に対する耐性/応答を含む。長期活性医薬組成物は特定の調合物の半減期およびクリアランス速度により、3〜4日毎、毎週もしくは2週間毎に1回、または1カ月毎に1回投与され得る。
いくつかの実施形態において、セレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)は1日当たり25〜600μgの毎日の用量で投与される(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、および/またはSGPは各日に対象に25〜600μgのセレンを提供するような方法で対象に投与される)。好ましい実施形態において、セレンは1日当たり50〜200μgの毎日の用量で投与される。他の好ましい実施形態において、セレンは1日当たり100〜200μgの毎日の用量で投与される。25〜600μg外の用量が使用され得る。いくつかの実施形態において、単一の用量のセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)は毎日1回投与される。他の実施形態において、2、3、4、またはそれ以上の用量は各日に投与され得る(例えば、朝1回および夜1回、または4〜6時間毎に1回)。例えば、いくつかの実施形態において、セレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)は3つの別々の、3つ超の別々の、2つの別々の、または2つ未満の別々の用量で対象に投与される。いくつかの好ましい実施形態において、毎日の用量は時間放出カプセル中で投与される。いくつかの好ましい実施形態において、毎日の用量は25〜75μgのセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)である。他の好ましい実施形態において、毎日の用量は200μgのセレン(例えば、有機セレン、セレン化酵母、SEL‐PLEX、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)である。
本発明に係る医薬組成物は局所的または体系的処置が所望されるかどうかにより、および処置される領域によりいくつかの方法で投与され得る。投与は(目、ならびに膣および直腸送達を含む粘膜を含む)局所、肺(例えば、噴霧器によるものを含む粉末またはエーロゾルの吸入またはガス注入による、気管内、鼻内、表皮、および経皮)、経口、または非経口であり得る。非経口投与は静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、もしくは筋内注入もしくは点滴、または頭蓋内、例えば、クモ膜下腔内もしくは脳室内投与を含む。セレンを含む組成物および調合物は経口投与に特に有用であると考えられる。
局所投与のためのセレン含有(例えば、SGP含有)医薬、栄養補給、および/またはサプリメント組成物および調合物は経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレイ、液体、および粉末を含み得る。水性、粉末、または油性ベースの従来の医薬担体、増粘剤等は必要でありまたは所望され得る。
経口投与のための組成物および調合物は粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体中の懸濁物もしくは溶液、カプセル、サシェ、または錠剤を含む。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、または結合剤が所望され得る。
非経口、クモ膜下腔内、または脳室内投与のための組成物および調合物は非限定的に、浸透エンハンサー、担体化合物、および他の医薬として許容される担体もしくは賦形剤の如き、緩衝液、希釈剤、および他の好適な添加物をもまた含み得る滅菌水溶液を含み得る。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明に係る医薬、栄養補給、および/またはサプリメント組成物は非限定的に、溶液、エマルジョン、およびリポソーム含有調合物を含む。これらの組成物は非限定的に、事前に形成された液体、自己乳化固体、および自己乳化半固体を含むさまざまな成分から作出され得る。
単位投与形態中に便利に提示され得る本発明に係る医薬、栄養補給、および/またはサプリメント調合物は製薬業界において周知の従来の技術に従って調製され得る。そのような技術は活性成分を医薬担体(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)と関係させるステップを含む。一般的に、調合物は活性成分を液体担体もしくは細かく分けられた固体担体またはそれら両方と均一におよび親密に関係させ、そしてその後、必要な場合、製品を形作ることにより調製される。
いくつかの実施形態において、本発明に係るセレン含有(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP)組成物は非限定的に、錠剤、カプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸剤の如き多くの可能な投与形態のいずれかに調合され得る。本発明に係る組成物は時間放出ナノ粒子(例えば、ナノカプセル)、小胞、リポソーム、重合体(例えば、分子刷り込み重合体(MIP)、生分解性遅延放出重合体、ポリカチオン性重合体等としてもまた調合され得る。本発明に係る組成物は水性、非水性、または混合媒体中の懸濁物としてもまた調合され得る。水性懸濁物は例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む、その懸濁物の粘性を増加させる物質をさらに含み得る。懸濁物は安定化剤をもまた含み得る。本発明の1つの実施形態において、医薬、および/またはサプリメント組成物は泡として調合されおよび使用され得る。泡は非限定的に、エマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリー、およびリポソームの如き調合物を含む。性質は基本的に同じであるが、これらの調合物は最終製品の成分および一貫性において変化する。
本発明に係るセレン含有(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)組成物は医薬組成物中に従来見られる他の補助成分をさらに含み得る。したがって、例えば、その組成物は例えば、かゆみ止め、収れん薬、局所麻酔薬、もしくは抗炎症剤の如き、追加の適合性の医薬として活性な物質を含み得る、あるいは、色素、香味剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定化剤の如き、本発明に係る組成物のさまざまな投与形態を物理的に調合することにおいて有用な追加の物質を含み得る。しかしながら、そのような物質は、添加されたとき、本発明に係る組成物の成分の生物学的活性を過度に妨害するべきでない。その調合物は滅菌され、そして所望の場合、その調合物の核酸(単数または複数)と有害な相互作用をしない補助剤、例えば、潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色剤、香味および/または芳香物質等と混合され得る。
いくつかの実施形態において、本発明は(a)1つ以上の形態のセレン(例えば、SGP(例えば、pH依存的SGP画分)、可溶性セレン、水溶性セレン、SEL‐PLEX)および(b)1つ以上の他の剤(例えば、栄養素、鉱物、治療薬等)を含む、医薬、栄養補給、および/またはサプリメント組成物を提供する。
本発明は本明細書中に示されるセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)を含む化合物と1つ以上の追加の活性剤(例えば、治療薬(例えば、癌治療薬、アルツハイマー治療薬)、抗酸化剤等)との共投与に関連する方法をもまた含む。実際、本発明に係るセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP(例えば、pH依存的SGP画分)等)を含む組成物と、予防または治療医薬組成物、栄養補給剤、および/またはサプリメントとを共投与することにより治療および/または医薬、栄養補給、および/またはサプリメント組成物をより良くするための方法を提供することは本発明のさらなる態様である。共投与手順において、その剤は同時にまたは連続して投与され得る。1つの実施形態において、本明細書中に示される化合物は他の活性剤(単数または複数)の前に投与される。その調合物および投与様式は上記に示されるいずれのものでもあり得る。さらに、2つ以上の共投与剤はそれぞれ異なる様式または異なる処方を用いて投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明に係る組成物は癌の処置と共に共投与される。
したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上の形態のセレン(例えば、SGP(例えば、pH依存的SGP画分)、可溶性セレン、水溶性セレン、SEL‐PLEX)を含む組成物は癌患者において腫瘍細胞増殖および血管新生を阻害するためにおよび/または腫瘍細胞死を誘発するために体系的にまたは局所的に投与される。例えば、いくつかの実施形態において、セレン富化酵母(例えば、SEL‐PLEX)のpH依存的SGP画分(pH4.0)を含む組成物は、対象において癌/腫瘍成長および/または転移に関連する1つ以上の遺伝子の発現が有益な様式で調節される(例えば、アップレギュレートされるまたはダウンレギュレートされる)ような条件下で対象に投与される(例えば、実施例4を参照のこと)。その組成物は静脈内に、クモ膜下腔内に、腹腔内に、および経口で投与され得る。さらに、それらは単独でまたは抗増殖薬との組み合わせで投与され得る。
組み合わせが企図される場合、本発明は特定の組み合わせの性質により限定されるとは意図されない。本発明は単純な混合物および化学的ハイブリッドとしての組み合わせを企図する。後者の例は1つ以上の形態のセレンを含む組成物が標的化担体にまたは活性医薬に共有結合されているものである。共有結合は多くの市販の入手可能な架橋化合物のいずれか1つにより達成され得る。
本発明は特定の治療用調製物の性質に限定されるとは意図されない。例えば、そのような組成物は生理学的に耐性な液体、ゲルまたは固体担体、希釈剤、補助剤、および賦形剤と共に提供され得る。
これらの治療用調製物は他の治療用剤と同様の様式で、家畜または牧場動物での如き獣医学的使用、およびヒトにおける臨床的使用のために哺乳類に投与され得る。一般的に、治療的有効性に必要な投与量は使用の種類および投与様式ならびに個々の受容者の特定の必要性にしたがって変化するであろう。
そのような組成物は典型的に液体溶液もしくは懸濁物として、または固体形態で調製される。癌のための経口調合物は通常、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、および賦形剤の如き、通常使用される添加物を含むであろう。これらの組成物は溶液、懸濁物、錠剤、ピル、カプセル、放出維持調合物、または粉末の形態を取り、そして典型的に1%〜95%の活性成分、好ましくは2%〜70%を含む。
その組成物はまた液体溶液または懸濁物としての注射剤としてもまた調製される。注入前の液体中の溶液または液体中の懸濁物のために好適な固体形態もまた調製され得る。
本発明に係る組成物はしばしば生理学的に耐性でおよび適合性である希釈剤または賦形剤と混合される。好適な希釈剤および賦形剤は例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望の場合、その組成物は湿潤または乳化剤、安定化またはpH緩衝剤の如き、少量の補助物質を含み得る。
広範囲の治療用剤が本発明で使用される。例えば、1つ以上の形態の本発明に係るセレンを含む組成物と共に共投与され得るどんな治療用剤も本発明における使用のために好適である。
本発明に係るいくつかの実施形態は1つ以上の形態のセレンおよび少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法薬、および/または放射線治療の如き従来の抗癌剤)を含む有効な量の組成物の対象への投与を提供する。
本発明での使用のために好適な抗癌剤の機構は非限定的に、アポトーシスを誘導する剤、核酸損傷を誘発する/引き起こす剤、核酸合成を阻害する剤、微小管形成に影響する剤、およびタンパク質合成または安定性に影響する剤を含む。
本発明に係る組成物および方法における使用のために好適な抗癌剤のクラスは非限定的に、1)微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、およびビンデシン(Vindesine)等)、微小管安定化剤(例えば、パクリタキセル(Paclitaxel)(タキソール(Taxol))、およびドセタキセル(Docetaxel)等)を含むアルカロイド、およびエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(Etoposide)(VP−16)、およびテニポシド(Teniposide)(VM−26)等))の如きトポイソメラーゼ阻害剤およびトポイソメラーゼIを標的にする剤(例えば、カンプトテシン(Camptothecin)およびイシリノテカン(Isirinotecan)(CPT−11)等)を含む、クロマチン機能阻害剤、2)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン(Mechlorethamine)、クロラムブシル(Chlorambucil)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、イフォスファミド(Ifosphamide)、およびブスルファン(Busulfan)(ミレラン(Myleran))等)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(Carmustine)、ロムスチン(Lomustine)、およびセムスチン(Semustine)等)、および他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン(Dacarbazine)、ヒドロキシメチルメラミン(Hydroxymethylmelamine)、チオテパ(Thiotepa)、およびミトシシン(Mitocycin)等)を含む、共有DNA結合剤(アルキル化剤)、3)核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(Dactinomycin)(アクチノマイシンD(Actinomycin D))等)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(Daunorubicin)(ダウノマイシン(Daunomycin)、およびセルビジン(Cerubidine))、ドキソルビシン(Doxorubicin)(アドリアマイシン(Adriamycin))、およびイダルビシン(Idarubicin)(イダマイシン(Idamycin))等)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン(Mitoxantrone)の如きアントラサイクリン類似体等)、ブレオマイシン(bleomycin)(ブレノキサン(Blenoxane))等、およびプリカマイシン(plicamycin)(ミトラマイシン(Mithramycin))等を含む、非共有DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質)、4)抗葉酸剤(例えば、メトトレキセート(Methotrexate)、フォレックス(Folex)、およびメキセート(Mexate)等)、プリン抗代謝薬(例えば、6‐メルカプトプリン(6‐MP、プリネトール(Purinethol))、6‐チオグアニン(6‐TG)、アザチオプリン(Azathioprine)、アシクロビル(Acyclovir)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、クロロデオキシアデノシン、2‐クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2′‐デオキシコフォルマイシン(Deoxycoformycin)(ペントスタチン(Pentostatin))等)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5‐フルオロウラシル(アドルシル(Adrucil))、5‐フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロクスウリジン(Floxuridine))等)、およびシトシンアラビノシド(例えば、シトサール(Cytosar)(ara‐C)およびフルダラビン(Fludarabine)等)を含む、抗代謝薬、5)L‐アスパラギナーゼ、およびヒドロキシ尿素等を含む、酵素、6)抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン(Tamoxifen)等)の如き糖質コルチコイド、非ステロイド系抗アンドロゲン(例えば、フルタミド(Flutamide)等)、およびアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(anastrozole)(アリミデックス(Arimidex))等)を含む、ホルモン、7)プラチナ化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン等)、8)抗癌薬、毒素、および/または放射性核種等と結合されたモノクローナル抗体、9)生物応答調節剤(例えば、インターフェロン(例えば、IFN‐α等)およびインターロイキン(例えば、IL‐2等)等)、10)養子免疫治療、11)造血成長因子、12)腫瘍細胞分化を誘発する剤(例えば、全トランス型レチノイン酸等)、13)遺伝子治療技術、14)アンチセンス治療技術、15)腫瘍ワクチン、16)腫瘍転移に向けられた治療(例えば、バチミスタット(Batimistat)等)、および17)血管新生の他の阻害剤を含む。
好ましい実施形態において、本発明は本発明に係る1つ以上の形態のセレンおよびアポトーシスを誘発するおよび/または癌細胞増殖を予防する少なくとも1つの従来の抗癌剤を含む有効な量の組成物の、対象への投与を提供する。いくつかの好ましい実施形態において、その対象は転移により特徴付けられる疾患を有する。また他の好ましい実施形態において、本発明は1つ以上の形態のセレンおよびタキサン(例えば、ドセタキセル)を含む有効な量の組成物の、Bcl‐2ファミリータンパク質(単数または複数)(例えば、Bcl‐2および/またはBcl‐XL)の過剰発現により特徴付けられる疾患を有する対象への投与を提供する。
タキサン(例えば、ドセタキセル)は有効なクラスの抗癌化学療法剤である(例えば、K.D. Miller and G.W.Sledge,Jr.Cancer Investigation,17:121‐136(1999)を参照のこと)。本発明は特定の機構に限定されるとは意図されないが、タキサン仲介細胞死は細胞内微小管安定化および続くアポトーシス経路の誘発を通して進むと考えられている(例えば、S.Haldar et al.,Cancer Research,57:229‐233(1997)を参照のこと)。いくつかの他の実施形態において、シスプラチンおよびタキソールは本発明に係る1つ以上の形態のセレンを含む組成物との使用のために特に企図される。いくつかの実施形態において、癌治療関係においてルーチンで使用されるどんな医薬も本発明において使用される。1つ以上の形態のセレンを含む開示される組成物との投与に好適な従来の抗癌剤は非限定的に、アドリアマイシン、5‐フルオロウラシル、エトポシド、カンプトテシン、メトトレキセート、アクチノマイシン‐D、マイトマイシンC、またはより好ましくは、シスプラチンを含む。本発明のいくつかの実施形態において、治療処置は直接的に核酸(例えば、DNA)を架橋し、相乗作用を引き起こすDNA損傷を促進する1つ以上の剤、本発明に係る抗腫瘍剤をさらに含む。例えば、シスプラチンの如き剤、および他のDNAアルキル化剤が使用され得る。DNAを損傷する剤はDNA複製、有糸分裂、および染色体分離を妨害する化合物をもまた含む。そのような化学療法化合物は非限定的に、ドキソルビシンとしても知られるアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル(verapamil)、ポドフィロトキシン等を含む。これらの化合物は新生物の治療のために臨床施設において広く使用され、そしてアドリアマイシンについてはボーラス注入を通して静脈内に21日間隔で25〜75M/2、エトポシドについては静脈内に35〜50Mg/M2または経口で静脈内投与量の2倍の範囲の用量で投与される。
核酸前駆体およびサブユニットの合成および忠実度を妨害する剤もまたDNA損傷を引き起こし、そして本発明における化学療法剤として使用される。いくつかの核酸前駆体が開発されている。広範な試験を受け、そして容易に入手可能である剤は特に有用である。そのように、5‐フルオロウラシル(5‐FU)の如き剤は新生物性組織により優先的に使用され、そのためこの剤は新生物性細胞に対する標的化に特に有用となる。送達される用量は3〜15mg/kg/日に及び得るが、疾患段階、その細胞の治療のしやすさ、その剤に対する抵抗性の程度等を含む、さまざまな因子に従って他の用量はかなり変化し得る。
好ましい実施形態において、本発明において使用される抗癌剤(例えば、本明細書中で議論される抗血管新生因子)は1つ以上の形態のセレンを含む組成物との共投与に適している、またはそうでなければ、それらが抗癌効果の忠実度の損失なしに対象、組織、または細胞に送達され得るように1つ以上の形態のセレンを含む組成物と関連するものである。プラチナ複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン(procarbazine)、メクロレタミン、シクロフォスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナ、5‐フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキセート、および他の同様の抗癌剤の如き、癌治療用剤のより詳細な記述については、当業者は非限定的に、the Physician′s Desk reference and to Goodman and Gilman′s "Pharmaceutical Basis of Therapeutics"ninth edition,Eds.Hardman et al.,1996を含む、いくつかの教示的なマニュアルを参照する。
V.抗酸化剤
本発明のいくつかの実施形態において、抗酸化剤は本発明に係る組成物または調合物と共投与される。本発明は利用される抗酸化剤の種類に限定されない。実際、非限定的に、アルキル化ジフェニルアミン、N‐アルキル化フェニレンジアミン、フェニル‐アルファ‐ナフチルアミン、アルキル化フェニル‐アルファ‐ナフチルアミン、ジメチルキノリン、トリメチルジヒドロキノリン、およびそれらに由来のオリゴマー組成物、ヒンダードフェノール、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、チオプロピオネート、金属性ジチオカルバメート、1,3,4‐ジメルカプトチアジアゾール、および誘導体、油溶性銅化合物等、Naugalube.RTM.438、Naugalube438L、Naugalube640、Naugalube635、Naugalube680、Naugalube AMS、Naugalube APAN、Naugard PANA、Naugalube TMQ、Naugalube531、Naugalube431、Naugard BHT、Naugalube403、およびNaugalube420、アスコルビン酸、アルファ‐トコフェロールを含むトコフェロール、スルフヒドリル化合物およびそれらの誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびN‐アセチル‐システイン)の如き水溶性抗酸化剤、リポ酸およびジヒドロリポ酸、レスベラトロール(resveratrol)、ラクトフェリン、アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビルおよびアスコルビルポリペプチド)、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド(例えば、レチノールおよびパルミチン酸レチニル)、トコトリエノール、ユビキノン、フラボノイドおよびイソフラボノイドならびにそれらの誘導体を含む抽出物(例えば、ゲニステイン(genistein)およびジアドゼイン(diadzein))、レスベラトロールを含む抽出物等、ブドウ種子、緑茶、マツ樹皮、プロポリス、(Ciba Specialty Chemicals Co.,Ltd.により製造された)Irganox1010、1035、1076、 1222、アンチジーンP、3C、FR、(Sumitomo Chemical Industries Co.,Ltd.により製造された)Sumilizer GA‐80、ベータ‐カロテン、リコピン、ビタミンC、E、およびA、ならびに他の物質を含む、さまざまな抗酸化剤が本発明において有用であることが企図される。
機構の理解は本発明の実施に必ずしも必要ではなく、そして本発明は特定の活性機構に限定されないが、いくつかの実施形態において、セレノ含有組成物(例えば、可溶性セレン、SGP)を対象に投与することはその対象における遺伝子発現プロファイル(例えば、TGFB1、MAPK8、C1R、UBE4A、SMPX、USP22、およびPTP4A1)を変える。いくつかの実施形態において、セレン含有組成物(例えば、可溶性セレン、SGP)を対象に投与することは対象の(例えば、脳組織(例えば、新皮質)、筋肉組織、脂肪組織等における)DNA損傷のレベルを減少させる。
いくつかの実施形態において、本発明は細胞にセレン含有組成物(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)を投与することを含む、細胞のH2O2細胞毒性に対する感受性を減少させる方法を提供する。
本発明は対象にセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)を含む組成物(例えば、栄養サプリメント)を投与することを含む、対象において(例えば、酸化ストレスを受けている対象において)過酸化ラジカルを減少させる方法をさらに提供する。さらに、いくつかの実施形態において、本発明はセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)を含むある特定の組成物を受容する対象が酸化ストレスを処理する高い能力を有することを提供する。機構の理解は本発明を実施するために必ずしも必要ではなく、そして本発明は特定の活性機構に限定されないが、いくつかの実施形態において、セレン(例えば、セレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)を含む食物サプリメント)を含む組成物を受容する対象は、選択形態のセレン(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)による対象における過酸化ラジカルのレベルを変える(例えば、減少させる)能力のために、酸化ストレスに対処する高い能力を有する。
本発明に係る組成物および方法は非限定的に、研究および臨床診断を含む、さまざまな状況において使用されるであろうことが企図される。
VI.担体
いくつかの実施形態において、本発明は非限定的に、ナノ粒子(例えば、ナノカプセル)、小胞、リポソーム、重合体(例えば、分子刷り込み重合体(MIP)、遅延放出重合体、ポリカチオン性重合体)、および/またはポリマーソームを含む、1つ以上の担体によるセレン(例えば、セレノ糖タンパク質)の送達を提供する。いくつかの実施形態において、セレン担体は対象(例えば、ヒトまたは動物)におけるセレン含有化合物(例えば、水溶性セレン、SGP)の投与、標的化、および/または時間放出を提供する。いくつかの実施形態において、担体(例えば、遅延放出重合体、ナノカプセル、MIP、ポリマーソーム等)は対象へのセレン含有化合物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)の送達を高める。いくつかの実施形態において、担体(例えば、遅延放出重合体、ナノカプセル、MIP、ポリマーソーム等)は対象に対するセレン含有化合物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)のバイオアベイラビリティを増加させる。
本発明は利用される担体の種類に限定されない。実際、非限定的に、デンドリマー、ポリマーソーム、ナノ粒子、遅延放出重合体、ナノカプセル、分子刷り込み重合体、および/または他の種類の担体(例えば、本明細書中に示される担体のどれでも)を含む、さまざまな担体が使用され得る。1つの好ましい実施形態において、その担体は遅延放出重合体である。別の好ましい実施形態において、その担体は分子刷り込み重合体である。また別の好ましい実施形態において、その担体はセレノ糖タンパク質を封入するために使用されるポリマーソームである。本発明は使用されるポリマーソームの種類に限定されない。実際、本分野において既知のどんなポリマーソームも利用され得る。いくつかの実施形態において、そのポリマーソームはポリ(エチレンオキシド)(PEO)ブロック共重合体を含む。しかしながら、本発明はそのように限定されない。例えば、ポリ(エチルエチレン)(PEE)、ポリ(ブタジエン)(PBまたはPBD)、ポリ(スチレン)(PS)、およびポリ(イソプレン)(PI)を含む、既知のブロック共重合体が利用され得る。いくつかの実施形態において、その重合体はポリ(ε‐カプロラクトン)(PCL)ジブロック共重合体を含む。いくつかの実施形態において、そのポリマーソームはポリ(エチレンオキシド)‐ブロック‐ポリ(ε‐カプロラクトン)(PEO‐b‐PCL)系のジブロック共重合体を含む。いくつかの実施形態において、そのポリマーソームはトリブロック、テトラブロック、ペンタブロック、または少なくとも6つのブロック共重合体であるブロック共重合体を含む。いくつかの実施形態において、そのポリマーソームはポリ(乳酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(乳酸‐コグリコール酸)、および/または、またはポリ(3‐ヒドロキシブチレート)と、PEOとのカップリングに由来する。本発明はセレノ糖タンパク質封入ポリマーソームの大きさに限定されない。非限定的に、直径約50〜300nmであるセレノ糖タンパク質封入ポリマーソームを含む、さまざまな大きさが本発明に係る組成物および方法において使用されるが、より大きな(例えば、約350nm、400nm、500nm、またはそれ以上)およびより小さな(例えば、約40nm、30nm、20nm、またはそれ以下)のセレノ糖タンパク質封入ポリマーソームが使用され得る。
いくつかの実施形態において、本発明は他の形態のセレン(例えば、セレン富化酵母、SEL‐PLEX、または無機セレン単一用量カプセルもしくはピル)に比較して、有機セレン(例えば、分子刷り込み重合体(MIP)、遅延放出重合体等)の定常的なおよび安全な供給を提供するSGP放出制御ナノカプセルおよびMIP球を含む。いくつかの実施形態において、水溶性、可溶性、および/またはSGPは本明細書中の高度な送達方法(例えば、ナノ粒子(例えば、ナノカプセル)、小胞、重合体(例えば、分子刷り込み重合体(MIP)、遅延放出重合体等)、および/またはポリマーソーム)を通してセレンの有効な封入および送達のために利用される。いくつかの実施形態において、本明細書中の高度な送達方法は封入されたセレン(例えば、SGPまたは可溶性セレン)のバイオアベイラビリティを高める。いくつかの実施形態において、本明細書中の高度な送達方法は溶液、対象、血清等へのセレンの遅延放出(例えば、12時間、24時間、2日間、1週間、2週間、3週間、10週間等)を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は本発明に係るセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)のための担体としての遅延放出重合体を提供する。ポリ(乳酸‐共‐グリコール酸)(PLGA)の如き遅延放出重合体、またはポリエチレンイミン(PEI)の如きポリカチオン性重合体が担体として利用され得る。いくつかの実施形態において、遅延放出重合体はセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)の制御された送達を提供する。いくつかの実施形態において、制御された送達は、重合体(例えば、PEI)が、天然であるかまたは合成であるかに関わらず、そのセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)が事前に設計された様式でその材料から放出されるような様式で、セレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)および場合により他の活性または不活性剤と賢明に混合されるとき起こる。セレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)の放出は長期間にわたり一定であり得る、それは長期間にわたり周期的であり得る、またはそれは環境もしくは他の外部事件により誘発され得る。いくつかの実施形態において、送達の制御はより有効な治療を提供する。いくつかの実施形態において、送達の制御は過少量投与および過剰量投与の可能性を消去する。送達制御系を用いる他の利点は所望の範囲内のセレンレベルの維持、投与の必要性の減少、および対象のコンプライアンスの増加を含み得る。
いくつかの実施形態において、本発明は本発明に係るセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)のための担体としてポリマーソームを提供する。いくつかの実施形態において、ポリマーソームは小胞膜を形成するために両親媒性合成ブロック共重合体を用いて作成され、そして約50nm〜約10μm、またはそれ以上の半径を有する(例えば、Discher et al.Journal of Physical Chemistry B(2002),106(11),2848‐2854を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)。いくつかの実施形態において、ポリマーソームはそれらの核内に水溶液を含み、そしてセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)および場合により1つ以上の薬物、酵素、他のタンパク質およびペプチド、ならびにDNAおよびRNA断片の如き、分子を封入するおよび保護するために有用である。いくつかの実施形態において、そのポリマーソーム膜は封入された物質を生物系中に見られる物の如き外部物質から分離する物理的障壁を提供する。いくつかの実施形態において、ポリマーソームはそれらの核内の内容物(例えば、セレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等))の時間決め放出を許容する。いくつかの実施形態において、ポリマーソームを構築するための合成重合体の使用は、設計者が膜の特徴を操ることおよびしたがって、浸透性、放出速度、安定性、および他の特性を制御することを可能にする。
1つの実施形態において、本発明に係るセレン含有(例えば、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP)組成物はポリ(エチレンオキシド)‐ブロック‐ポリ(ε‐カプロラクトン)(PEO‐b‐PCL)系のポリマーソーム内に封入され得る。機構の理解は本発明の実施に必ずしも必要ではなく、そして本発明は特定の活性機構に限定されないが、いくつかの実施形態において、PEOは生ずる担体にインビトロ化学的および機械的安定性の改善、インビボバイオアベイラビリティの増大、および血液循環半減期の延長を提供する。周知の埋め込み可能な生物材料であるPCLはポリマーソーム膜を形成し、そして生ずる生成物のそのエステル結合の加水分解による完全なおよび安全なインビボ分解を促進する。
別の実施形態において、本発明に係るセレン含有組成物(例えば、セレノ糖タンパク質)はポリ(乳酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(乳酸‐コグリコール酸)、またはポリ(3‐ヒドロキシブチレート)と、PEOとのカップリングに由来する他の生分解性ブロック重合体の配合または純粋な誘導体から合成されたポリマーソーム中に封入され得る。
いくつかの実施形態において、本発明は本発明に係るセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)のための担体としてナノカプセル(Couvreur et al.Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.2002;19(2):99‐134を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)を提供する(例えば、米国特許第7,498,045号を参照のこと。これは参照によりその全体が本明細書に援用される)。いくつかの実施形態において、ナノカプセルはそのナノカプセルの生分解に際してセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)の放出の制御を提供する。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは約2〜約100時間(例えば、約2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間等)の生分解半減期を有する。いくつかの実施形態において、本発明に係る生分解性ナノカプセルは対象への投与に際しての対象のインビボ循環へのセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)および場合により巨大分子を含むさまざまな他の封入された治療用剤の放出の制御に適応できる。本発明に係るナノカプセル組成物は治療的に有効な濃度のセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP等)を封入し、そして受容者のインビボ循環にそれらを送達することにさらに適応される。いくつかの実施形態において、セレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)を封入するナノカプセルは例えば、ポリ乳酸重合体およびポリエチレングリコールの共重合体を含む膜である。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは単量体の界面上の重合化または事前に形成された重合体の界面上のナノ沈着により形成される。
いくつかの実施形態において、本発明は本発明に係るセレン含有組成物(例えば、有機セレン、可溶性セレン、水溶性セレン、SGP、SEL‐PLEX等)の担体として分子刷り込み重合体を提供する(Mosbach.Trends in Biochemical Sciences,Vol.7,pp.92‐96,1994.、Wulff.Trends in Biotechnology,Vol.11,pp.85‐87,1993.、Andersson,et al.,Molecular Interactions in Bioseparations(Ngo.T.T.ed.),pp.383‐394、米国特許第5,959,050号を参照のこと。これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。
実験
以下の実施例は本発明のいくつかの好ましい実施形態および態様を示し、そしてさらに例示するために提供され、そしてそれらの範囲の限定として解釈されるとは意図されない。
A.酸抽出および続く沈殿によるSEL‐PLEXからの可溶性セレノ糖タンパク質の連続調製
機械的スターラー、サーモメーター、および電気毛布を装備した4Lの3つ口反応器(抽出器番号1、図1を参照のこと)を、3Lの脱イオン水および50mlの0.3N HClで満たした。その反応器を50℃超まで加熱し、そして600gの1600ppmのSEL‐PLEXを攪拌しながら一部ずつ添加した。約1時間後、その温度は80℃に達し、そしてその混合物のpHは2.23であった。そのpHを13.5mLの0.3N HClの添加により1.5まで減少させた。反応容器の加熱および攪拌を7時間維持した。その混合物のpHをおよそ1時間毎にチェックし、pHレベルが1.5のままであることを確認した。酸性反応後混合物(pH1.5)を4つの1L遠心分離ジャーに分配し、そして4000RCFで8℃で20分間遠心分離した(遠心分離番号1、図1を参照のこと)。上清(pH1.5)および固体ペレットを回収した。上清を氷浴(4℃)中の3Lの3つ口反応器(ミキサー番号1、図1を参照のこと)に添加し、そして2N NaOHを含む滴下漏斗、機械的スターラー、およびpH電極を装備した。2N NaOHをその混合物のpHが1.85に達するまで、攪拌しながら溶液に1滴ずつ添加した。NaOHの添加中、白色沈殿物が形成された。攪拌を30分間続け、そしてその混合物を再び遠心分離して(遠心分離番号2、図1を参照のこと)、上清およびセレノ糖タンパク質ペレットを形成させた。セレノ糖タンパク質ペレットを回収し、そして凍結乾燥させ(凍結乾燥器番号1、図1を参照のこと)、1.635gの白色沈殿物を得た。pH1.85の上清およびpH1.5で形成されたペレットを反応容器(ミキサー番号2、図1を参照のこと)に添加し、そして氷水浴(4℃)中に置いた。その混合物を30分間攪拌し、そしてその後遠心分離し(遠心分離番号3、図1および図2を参照のこと)、pH1.6での湿潤残留固体および上清を形成させ、それらは続くpH依存的沈殿によりSGP(例えば、以下に示されるようなpH3.0、pH4.0、およびpH6.0SGP画分)を作成するために後に使用された。
B.セレノ糖タンパク質のpH依存的沈殿
pH1.6の上清を反応器(ミキサー番号3、図2を参照のこと)中に入れ、そして2N NaOHをその混合物のpHが3.0に達するまで攪拌しながらその溶液に添加した。攪拌をさらなる30分間続け、そしてその混合物を遠心分離し(遠心分離番号4、図2を参照のこと)、上清およびセレノ糖タンパク質ペレットを形成させた。pH3.0でのセレノ糖タンパク質ペレット(SGP pH3.0)を回収し、そして凍結乾燥させ(凍結乾燥器番号2、図2を参照のこと)、薄灰色沈殿物を得た。pH3.0の上清を反応器(ミキサー番号4、図2を参照のこと)中に入れ、そして2N NaOHをその溶液のpHが4.0まで上昇するまでその溶液に添加した。攪拌をさらなる30分間続け、そしてその混合物を遠心分離し(遠心分離番号5、図2を参照のこと)、上清およびセレノ糖タンパク質ペレットを形成させた。pH4.0でのセレノ糖タンパク質ペレット(SGP pH4.0)を回収し、そして凍結乾燥させ(凍結乾燥器番号3、図2を参照のこと)、薄灰色沈殿物を得た。pH4.0の上清を反応器(ミキサー番号5、図2を参照のこと)中に入れ、そして2N NaOHをその溶液のpHが6.0まで上昇するまでその溶液に添加した。攪拌をさらなる30分間続け、そしてその混合物を遠心分離し(遠心分離番号6、図2を参照のこと)、上清およびセレノ糖タンパク質ペレットを形成させた。pH6.0のセレノ糖タンパク質ペレット(SGP pH6.0)を回収し、そして凍結乾燥させ(凍結乾燥器番号4、図2を参照のこと)、薄灰色沈殿物を得た。続いて形成されていた沈殿物を遠心分離により回収した。最後の遠心分離からのpH6.0の廃棄水流は(例えば、酵母成長培地または他の栄養物の調製において利用され得る)いくらかのセレノ‐ペプチド、マンノース、およびグルコースオリゴ糖を含有していた。そのプロセスは毒性廃棄物を生成せず、環境親和性である。
可溶性SGP分離および特徴付け
SEL‐PLEXの酸抽出により形成されたpH1.5の固体残留物を含むペレットを、そのプロセス中で使用される水の体積を減少させるために、およびそのペレット中に閉じ込められたほとんどのSGPを溶解するために、第2抽出(実施例1を参照のこと)からのpH1.85の上清で洗浄した。pH1.6での第3の遠心分離後の固体残留物は顕著な量のセレンを含み、そして新規バッチのセレン酵母と配合され、その後スプレイ乾燥され得、これにより抽出に使用した材料を完全に利用する。
SEL‐PLEXからの3回の連続抽出後に各SGP画分のセレン総量、%タンパク質濃度、および重量を平均化した(表1を参照のこと)。抽出されたSGP画分はSEL‐PLEXの2.0〜2.5重量%、および抽出前SEL‐PLEX中に存在したセレン総量の4.3〜5.75%を構成した。SGP画分のpHおよびタンパク質重量の間には正の相関があり、総セレン濃度については逆のことが言える(表1を参照のこと)。SGP画分についての平均タンパク質重量は約65〜90重量%に及び、そして同じセットの画分についてのセレン濃度は約2900ppm〜4900ppmの範囲に及んだ。SGP画分は4〜37重量%の炭水化物成分を含有していた。
(表1)600gのSEL‐PLEXの3回の連続抽出からの平均の結果
SEL‐PLEXの酸抽出により形成されたpH1.5でのSGP画分のゲル電気泳動から、高分子量タンパク質または大きな炭水化物成分を有するタンパク質に対応するバンドはなかったことが明らかになった。低分子量画分が優性である類似の大きさの分布をキャピラリー電気泳動を用いて検出し、そして5.1kDa〜12.2kDaの低分子量タンパク質がその混合物の90%超を構成した。
BIO‐RAD P10ゲル(6時間までの保持時間)上でのおよびBIO‐RAD P30ゲル(1時間未満の保持時間)上でのpH3.0、4.0、および6.0の3つのSGP画分のサイズ排除クロマトグラフィーは保持時間5〜10分での早いピーク、および保持時間35〜60分での広い、遅いピークをもたらした。早いピークは64.74〜75.24%の顕著により多いタンパク質、および2972〜4252ppmの顕著により高いセレン濃度を含有していた。遅いピーク中のタンパク質含有量は31.66〜54.95%ともっと低く、そしてセレン濃度は1193〜1858ppmと顕著により低かった。この種類のクロマトグラフィーは粗い画分から高含有量のSeを伴うSGPを生じることができ、そしてこれらの混合物中の炭水化物成分の低い均一性を示した。
SEL‐PLEXのトリプシン消化からのさまざまなペプチドの0.1M AcONH4(pH7.5)を用いたSUPERDEXペプチド10/300GL樹脂(AMERSHAM Biosciences、画分化範囲7.0〜100kDa)上でのサイズ排除クロマトグラフィーはSGPサンプルについて同様のセットのピーク(10〜100kDaおよび100kDa超)、およびSEL‐PLEXサンプルについて完全に異なる溶離パターンを生成した。20分未満の溶離時間での「早い」ピークのみがセレンを含有していた。セレン含有溶離物を回収し、凍結乾燥させ、そしてSEC ICP MS、MALDI TOF MSおよびナノESI MS/MS技術を用いて分析した。その結果は相補的であり、そしてセレン含有ペプチドの検出、同定、およびシークエンシングを許容した。検出されたタンパク質の同定はSwissProtデータベース検索により得られた(表2を参照のこと)。
(表2)SEL‐PLEX抽出物のトリプシン消化からの同定されたセレノ‐ペプチドおよびセレノタンパク質
この方法の最も驚くべき性質は、pH依存的沈殿からの異なるSGP画分のクロマトグラフィー分離(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー)により得られたさまざまな画分のタンパク質組成は適用された電気泳動法(ゲル電気泳動およびキャピラリー電気泳動)に従って、同じであったまたは非常に似ていたことであった。本明細書中に示されるように、セレン富化酵母からのセレノ糖タンパク質の抽出は低pH(例えば、1.5)で成功であった。機構の理解は本発明を実施するために必ずしも必要ではなく、そして本発明は特定の活性機構に限定されないが、いくつかの実施形態において、SGP抽出に使用される酸性条件下でタンパク質コアは顕著に加水分解されず、そして大部分は元の形態のまま残る。いくつかの実施形態において、SEL‐PLEXのpH依存的セレノ糖タンパク質画分(例えば、SGP pH3.0、SGP pH4.0、SGP pH6.0)は作成され、そして(例えば、(例えば、経口経路を介して)対象に有機セレンを送達するために)対象に(例えば、それ単独でまたは別の剤との組み合わせで)投与される。
バイオアベイラビリティ比較
SEL‐PLEX酸抽出物からのSGPのpH依存的沈殿からのセレンのバイオアベイラビリティを比較するために、ひよこを7つの異なる食餌処置(表3および4を参照のこと)で18日間飼い、ニワトリ胸筋中のセレン含有量を計測した。
表5中に示されるように、SGP画分pH4.0またはpH6.0で補給された食餌を取ったニワトリは、SEL‐PLEX(SP)補給食餌を取ったニワトリと比較して、胸筋組織中にほとんど同じ量のセレン沈着を蓄積した。対照に比較して、SP食餌を取ったニワトリおよびSGP画分pH4.0またはpH6.0補給食餌を取ったニワトリ中の組織のSeレベルは亜セレン酸ナトリウムで補給された食餌を受けたニワトリの2倍超であった。したがって、本発明は、いくつかの実施形態において、SPおよびSP由来SGP画分(例えば、pH4.0およびpH6.0)は対象に投与されたとき、生物利用可能であることを提供する(例えば、いくつかの実施形態において、SP、SGP pH4.0またはSGP pH6.0は(例えば、対象の組織へのセレンの送達により明示されるように)対象に投与されたとき無機セレン(例えば、亜セレン酸ナトリウム)より(例えば、2倍以上)生物利用可能である)。
(表5)筋肉Se濃度に対する食餌Se源の効果
*異なる文字を伴う値はその結果が統計的に有意である(P<0.05)ことを示す。
A.ブロイラーの胸筋における遺伝子発現プロファイルに対する異なる食餌セレン源の効果
実施例3中で言及されるニワトリからの胸筋組織を以下の食餌処置により誘発される遺伝子発現プロファイルにおける類似性および相違性を評価するために使用した。処置1‐基本(対照)、処置2‐対照+0.3ppm亜セレン酸ナトリウム(SS)、処置3‐対照+0.3ppm SEL‐PLEX、処置6‐pH4.0のSEL‐PLEX(SP)から抽出された0.3ppm SGP画分。SGP画分pH4.0はSPで得られた値と比較して胸組織におけるほとんど同レベルのセレン沈積をもたらしたので、SGP画分pH4.0を分析した(表5を参照のこと)。そのように、SGP画分pH4.0を受容する動物はSPを取る動物中で観察されるのと同様のインビボ効果(例えば、遺伝子発現変化)を経験するかどうか、または顕著な、計測可能な相違が存在するかどうかを決定するために、本発明の実施形態の開発中に実験を行った。
動物および組織サンプリング
18日齢で、(上記および表3および4中に示される)各処置群からの5羽のニワトリをランダムに選択し、そしてアルゴン窒息により安楽死させ、続いて頸椎脱臼させた。胸筋組織のサンプル(1グラム)を迅速に除去し、そして液体窒素中に瞬間凍結した。サンプルを分析されるまで−80℃で貯蔵した。
マイクロアレイ分析
トータルRNAをTRIZOL試薬(INVITROGEN、Carlsbad、CA)を用いて製造業者のプロトコールに従って凍結組織から単離し、そしてRNEASYキット(QIAGEN、Valencia、CA)を用いて精製した。トータルRNAを260nmでの吸収により定量し、そして無傷であることをアガロースゲル電気泳動および28Sおよび18Sバンドの臭化エチジウム染色により確認した。
マイクロアレイプロファイリングを、AFFYMETRIX(Santa Clara、CA)遺伝子チップニワトリゲノムアレイを用いて製造業者の提案するプロトコールに従って行った。
データをプロセスし、そして各プローブセットをAFFYMETRIX MAS5.0発現サマリーアルゴリズムを用いてシグナル対ノイズ強度の割合に基づいてP(存在する)、M(境界)、またはA(存在しない)として標識した。
バイオインフォマティクス分析
GeneSpring GX10.0(Silicon Genetics、Redwood、CA)を、マイクロアレイデータを特徴付け、そして正規化するために、そして統計的および遺伝子発現パターン分析を行うために使用した。
誤った発見の可能性を最小限にするために、(MAS5.0アルゴリズムにより「存在しない」として標識される)低シグナル強度のプローブセットをさらなる分析から排除した。フィルターにかけた遺伝子発現プロファイルをその後、群間で異なって発現されたプローブセットを同定するために1方向ANOVAに、続いて対照に比較してセレン処置により顕著に変えられた遺伝子を決定するために事後検定にかけた。対照と異なる(P≦0.05)および対応するシグナル強度倍変化(FC)≧1.2を有する遺伝子のみが変えられたとみなされた。
胸筋組織における遺伝子発現プロファイルに対する食餌処置の効果を視覚的に示すために、異なって発現された(ANOVA、P<0.05)と同定された693個の遺伝子をアレイおよび遺伝子の両方に基づいて無監督の階層的クラスタリングにかけた。上記に詳細に示されるように、SGP画分pH4.0はSPに直接由来し、そしてSPまたはSGP画分pH4.0を受容した食餌処置群はニワトリ胸筋組織においてほとんど同レベルのセレン沈積(バイオアベイラビリティ)を示した(上記表5を参照のこと)。したがって、両方のセレン処置群(SPおよびSGP画分pH4.0)は同一のまたは非常に類似の遺伝子発現変化を示したであろうことが予想された。しかしながら、および非常に驚くべきことに、遺伝子発現プロファイルに対する明らかな食餌効果が2つの処置群間で観察された(図3を参照のこと)。特に、劇的な相違はSGP画分pH4.0処置群に比較したSP処置群の遺伝子発現プロファイルで観察され、分析された遺伝子の大多数がこの2つの処置群について異なって応答した。SP処置対SGP画分pH4.0処置によりもたらされた、この遺伝子発現プロファイルにおける大きな変化は全く予想外であり、そして微量元素生物学についての従来なかった見識を提供する。
例えば、693個の異なって調節された遺伝子(P<0.05、ANOVA)をアレイおよび遺伝子両方に基づいた無監督の階層的クラスタリングにかけた。図3中に示される熱マップにおいて、正規化遺伝子発現プロファイルは各遺伝子の平均値に比較した発現変化を反映する色で示される。白色、黒色、または灰色はそれぞれ、発現強度のレベルにおける減少、増加、または変化なしを示す。この熱マップの上部の系統樹は処置間の発現プロファイルにおける類似性の程度を反映し、一方で左側の系統樹は全ての処置にわたる、個々の遺伝子の発現パターンにおける相違を示す。図3中に示される系統樹の長さはクラスター葉間の相違のレベルに対応する(短い系統樹はより高レベルの類似性を示す)。
胸筋における遺伝子発現プロファイルに対するSGP画分pH4.0およびSPの異なる効果を、図4中に示されるベン図において示されるように、SGP画分pH4.0(pH4)、SP、および亜セレン酸ナトリウム(SS)により顕著に変えられた(P<0.05、FC>1.2)遺伝子の数を比較することによりさらに分析した。SP、pH4、およびSSにより、それぞれ、198個、173個、および283個の遺伝子が顕著に変えられた。全ての3つのSe処置群により共通して調節された遺伝子は21個のみであり、そしてSPおよびSGP画分pH4.0の両方により共通して調節された遺伝子は46個であった。SPまたはSGP画分pH4.0により独自に変えられた遺伝子は、それぞれ、152個および127個であった。
例えば、さまざまなセレン処置の結果としてニワトリ胸筋組織において異なってまたは共通して調節されることが同定された、いくつかの遺伝子が図5〜7中に示される。
ベータ誘発形質転換成長因子(TGFBI 68kDa)は細胞マトリックス相互作用、細胞接着、遊走、および分化に関連すると考えられている。この遺伝子の突然変異はいくつかの形態の角膜変性症に関連している。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ8(MAPK8、JNK1としても知られる)はMAPキナーゼファミリーの一員である。MAPキナーゼは複数の生化学シグナルの統合点としてはたらき、そして増殖、分化、転写調節、および発達の如き、広くさまざまな細胞プロセスに関連する。MAPK8はインスリン伝達経路を通して細胞酸化ストレス応答、免疫応答、ならびに炭水化物およびタンパク質代謝においてもまた重要な役割を果たす。MAPK8の過剰な活性化はインスリン受容体基質1(IRS1)のリン酸化を通してインスリン抵抗性を誘発し得ることが知られる。
図5はSS、SP、およびSGP画分pH4.0により共通して調節された遺伝子の例(例えば、TGFBIおよびMAPK8)を提供する。図6はSPおよびSGP画分pH4.0により共通して調節されたが、SSによっては調節されなかった遺伝子の例(例えば、補体成分1R(C1R)、およびユビキチン化因子E4A(UBE4A))を提供する。補体成分1R(C1R)は先天的な免疫系の補体カスケードおよび病原体除去に関連するタンパク質である。ユビキチンでのタンパク質修飾は異常なまたは短命のタンパク質が分解されるよう標的化されるための重要な細胞機構である。UBE4AはE4ユビキチン化因子として示されるU‐ボックス型ユビキチンリガーゼをコードする。UBE4Aは成長および/または分化を含む、ユビキチン化以外の異なる生化学プロセスにおいて役割を有すると考えられている。
図7はSGP画分pH4.0により独自に調節された遺伝子の例(例えば、X結合小筋タンパク質(SMPX)およびユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP22))を提供する。X結合小筋タンパク質(SMPX)は横紋筋において特異的に発現される小タンパク質であり、そして筋肉収縮において重要な役割を果たす。ユビキチン特異的ペプチダーゼ22(USP22)はユビキチン依存的タンパク質異化プロセスに関連する遺伝子である。USP22は腫瘍成長の正の調節剤であることが示されている。USP22の発現の増加は癌進行に関連する。USP22の発現を減少させるまたはノックダウンさせる能力は腫瘍成長および/または癌進行の阻害を提供し得る。例えば、USP22の発現を減少させることはMdm2およびサイクリンEの発現をダウンレギュレートし、p53およびp21の発現のアップレギュレートをもたらし、細胞周期停止およびヒト膀胱腫瘍細胞増殖の阻害を引き起こし得る。
筋肉組織におけるpH4.0画分により誘発された独特の遺伝子発現パターンのさらなる調査は(例えば、腫瘍進行および/または転移を妨げるまたは遅延させるための)この画分中のこの化学形態のセレンの治療的使用の可能性について追加の証拠をもたらす。
例えば、KITLG(c‐KITリガンド)遺伝子は子宮内の生殖細胞および神経細胞発達、ならびに造血ではたらく多面的因子であるチロシンキナーゼ受容体のリガンドをコードする。これらのプロセスは細胞遊走における役割を反映すると考えられている。近年、睾丸癌の危険性の増加に関連すると考えられているKITLG遺伝子の変形が発見された(Kanetsky et al.,2009)。さらに、KIT発癌遺伝子の遺伝子産物である、KITLGの同種の受容体の過剰発現は色素嫌性腎臓細胞癌腫において実証されており、そしてKITLGおよびKIT両方の発現はNIH3T3線維芽細胞の変形および小細胞肺癌の腫瘍形成に関連することが知られる(Yamazaki et al.,2003)。
驚くべきことに、pH4.0画分を投与された対象からの筋肉組織はKITLG遺伝子を顕著にダウンレギュレートしたが、その発現レベルはpH4.0画分の親材料であるSPを含む、他のセレン処置により影響を受けなかったことが観察された(例えば、図8を参照のこと)。
転移はほとんどのヒト癌における主要な死亡原因であり、そして第1の腫瘍からの細胞が細胞外マトリックスを通して遊走し、新規に形成された血管を通る循環に入り(腫瘍血管新生)、そして離れた部位に播種し(溢出)、そこで増殖が再び始まる、複数のステップのプロセスである。
成長因子受容体‐結合タンパク質2(Grb2)は細胞内シグナル伝達において鍵となる分子である。それは細胞周期進行およびアクチンに関連する運動性、ならびにその結果、上皮形態形成、血管新生、および脈管形成の如き、より複雑なプロセスに重要である。これらの重要な機能から、Grb2は局所侵入および転移を通した固体腫瘍の広がりを妨げるために設計された策の治療標的となる。実際に、Grb2を妨害するまたは拮抗する方法は、有効な抗転移策であり得ると思われるので、その方法の発見に最近多くの努力がはらわれている(Giubellino,Burke and Bottaro,2008)。
図9中に示されるように、Grb2は対照ならびに亜セレン酸ナトリウムおよびpH4.0の親セレン材料であるSel‐Plexを含む、他のセレン処置に対して、pH4.0処置動物において顕著にダウンレギュレートされた。
pH4.0画分の抗発癌活性の可能性は重要な癌関連遺伝子のダウンレギュレーションに限定されない。例えば、乳癌細胞中のDNAJA3の発現の減少はインターロイキン8のレベルを増加させることによりそれらの遊走を高めることが観察されている(Kim et al.,2005)。このおよび他の結果は、癌細胞においてTid1(DNAJA3)のレベルをブーストすることはそれらの運動性および転移能力を負に調節することを強く示唆する。
DNAJA3はpH4.0セレンに応答して実験における筋肉組織において強くアップレギュレートされた(図10)が、他のセレン源を受容した動物からの筋肉組織においては対照条件に比較して、応答しないままであった。
B.ブロイラーの肝臓遺伝子発現プロファイルに対する異なるセレン処置の効果
SPおよびSGP画分pH4.0の予想されない異なる遺伝子発現効果をさらに特徴付けるために、および発現の調節は他の組織に拡大されたかどうかを決定するために、遺伝子発現研究を上記実施例4(a)に示されるように行った。胸筋組織の代わりに、実施例3中で言及されるのと同じニワトリから肝臓組織を回収し、そして分析した。SS、SP、およびSGP画分pH4.0補給処置群に加えて、追加の処置群(SGP画分pH1.85(pH1.85)、SGP画分pH3.0(pH3)、およびSGP画分pH6.0(pH6))からのニワトリの肝臓遺伝子発現プロファイルもまた特徴付け、そして対照処置群と比較した。
実施例4(A)中で言及されるのと同じ実験プロトコールに続いて、各処置群の対象からの肝臓遺伝子発現プロファイルの分析は異なる食餌処置により顕著に変えられた(P<0.01、ANOVA)1520個の遺伝子を同定した。これらの遺伝子の無監督の階層的クラスタリング分析は図11中に示され、そして異なるセレン源での処置は遺伝子発現を調節する能力における大きな変化を誘発するということの追加の証拠を提供する。図11の熱マップは各遺伝子の平均値に比較した発現変化を反映する色の、正規化遺伝子発現プロファイルを示す。白色、黒色、または灰色はそれぞれ、発現強度のレベルにおける減少、増加、または変化なしを示す。この熱マップの上部の系統樹は処置間の発現プロファイルにおける類似性の程度を反映し、一方で左側の系統樹は全ての処置にわたる、個々の遺伝子の発現パターンにおける相違を示す。図中に示される系統樹の長さはクラスター葉間の相違のレベルに対応する(短い系統樹はより高レベルの類似性を示す)。
SPおよびSGP画分pH4.0間、ならびにSGP画分pH3.0およびSGP画分pH6.0間の相違は劇的であり、数個の遺伝子のみが各セレン源での処置により共通して調節された。一般的に、遺伝子発現に対するSGP画分pH1.85での処置の効果はSPおよび他のSGP処置群の間に入る(図11を参照のこと)。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、SEL‐PLEXでの処置(例えば、それを含む食餌および/またはその投与)対SEL‐PLEXから抽出されたSGP画分での処置(例えば、それを含む食餌および/またはその投与)は、異なるセレン源がセレンバイオアベイラビリティの点で同様の効果を示すにもかかわらず、異なる生物活性をもたらすということを提供する。
セレノ糖タンパク質のポリマーソーム封入
pH4.0および6.0で沈殿されたSGP(例えば、実施例1および2を参照のこと)の1:1混合物をポリマーソーム中に封入した。この混合物のセレン濃度は3,054ppmであり、そして79.96重量%タンパク質を含んだ。
セレノ糖タンパク質封入ポリマーソームを作成するために、その混合物をpH5.1、6.2、および7.4の水性緩衝液中に溶解し、そしてその懸濁物を振騰プラットフォーム上で一晩混合した。溶解しなかったSGPを遠心分離により除去した。ポリマーソームを作成するために、PEO(2k)‐b‐PCL(12k)系のジブロック共重合体を有機溶媒(例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、またはジメチルスルフォキシド)中に溶解し、有機溶液中の1mM PEO‐b‐PCL重合体を得た。その溶液をその後ざらざらしたTEFLON小片(約1′′×1′′×1/16′′の厚み)上に載せ、そしてざらざらの面を上に向けて、ガラスバイアルの底に置いた。その溶媒を環境温度で24〜48時間真空下で蒸発させ、1〜10mgの重さの共重合体の乾燥フィルムを得た。
これらのフィルムをその後1:1の割合のpH4.0およびpH6.0のセレノ糖タンパク質を含む2〜3mlの水溶液で水和し、そしてその後浴槽超音波発生装置中で20〜100Hzで1〜2時間超音波処理した。超音波処理が完了した後、バイアルを直ちに1〜2分間ボルテックスし、PEO‐b‐PCL系の重合体小胞の水性核中にセレノ糖タンパク質を封入するポリマーソームを形成させた。そのポリマーソームをその後、LIPOSOFAST押し出し機を用いて所望の孔サイズのポリカーボネート膜を通して迅速に押し出し、所望の平均直径、この場合50〜300nmのポリマーソームを得た。押し出されたポリマーソームをその後、pH7.4の等張緩衝液に対する24時間の溶液交換のために透析カセット中に注入し、全ての封入されなかったセレノ糖タンパク質を除去した。
pH7.4のセレノ糖タンパク質を封入したポリマーソームのサンプルを10mg/mlの出発セレノ糖タンパク質濃度で調製し、そして等張PBS緩衝液に対して透析した。このサンプルを21,000×倍率および52,000×倍率の低温TEMにより画像化し、ポリマーソーム内へのセレノ糖タンパク質封入の成功を視覚的に確認した(図13を参照のこと)。低温TEMは、それらの天然水和状態で、それにより所望されないコンフォメーション変化を妨げる、低温での標本の画像化を許容する。一般的に、およそ100nmの、またはわずかにそれより小さい大きさの均一な球形のポリマーソームが画像化サンプル中で観察された。いくつかの場合、非晶性物質のおよそ球形の集合体がポリマーソームに加えて観察された。これらの集合体はポリマーソーム核から放出されたセレノ糖タンパク質からなり得る。そしてそれらはサンプルが画像化されるまでに、ポリマーソームの内側と外側のpHの相違のためにさらに沈殿する。
pH5.1、6.2、および7.4のセレノ糖タンパク質封入ポリマーソームをセレン濃度を計測することによりさらに特徴付けた(表6を参照のこと)。1mlの各セレノ糖タンパク質封入ポリマーソームサンプルを凍結乾燥させ、白色粉末沈殿物を形成させ、その重さを後に計測し、そして200×倍率拡大下で点検した。セレノ糖タンパク質封入ポリマーソームの全量を、濃縮酸(過塩素酸、硝酸、および塩酸)を用いて100℃〜175℃の温度で溶解した。その溶液を脱イオン(DI)水を用いて50mlまで希釈し、そしてMILLENIUM EXCALIBUR装置および方法を用いて分析した。
ナノカプセルからのセレノ糖タンパク質の放出
10mg/mlのSGP懸濁物で調製され、そしてそれぞれ、pH7.4および5.1の緩衝液に対して透析された、上記表6からのナノカプセル調合物番号1および3からのセレノ糖タンパク質(SGP)の放出を370Cで14日間にわたりモニターした。セレノ糖タンパク質封入ナノカプセルからのセレノ糖タンパク質の放出をモニターするために、透析された懸濁物を膜遠心分離により濃縮した(300kDの分子量カットオフを伴う遠心分離管を使用した)。濃縮懸濁物を等張緩衝液(pH5.1または7.4)中に等分し、そして37℃で維持し、各時点についてN=2のサンプルをとった。ナノカプセルからのセレノ糖タンパク質の%放出を評価するために、サンプルを各時点での無傷のナノカプセルを分離するために遠心分離した。ナノカプセルがセレノ糖タンパク質サンプルから有効に分離されたことを確認するために、動力学光散乱計測を分離された小胞(残余物)およびフリーの溶液(ろ過物)について行い、粒子サイズを計測した。フリーの溶液のUV吸収を280nmで計測し、そしてセレノ糖タンパク質の%放出を(Aサンプル−A開始)/(A最終−A開始)として算出した。「A開始」は0日目の吸収であり、そして「A最終」はサンプルが可溶化され、完全な放出を引き起こした研究の終わりの吸収である(図12を参照のこと)。14日間にわたり、pH5.1のSGPの約70%が定常状態でナノカプセルから放出され、一方で約50%がpH7.4で放出された。より低いpHでのSGPの放出開始速度はナノカプセル膜の酸触媒加水分解のためであり、続いてナノカプセル膜を介したセレノ糖タンパク質の定常的な拡散が起こると考えられる。これらの放出プロファイルはPEO‐b‐PCL系のポリマーソーム内に封入された癌治療薬であるドキソルビシンのものと顕著に類似している(例えば、Ghoroghchian et al.Macromolecules,2006,39(5),1673‐1675を参照のこと)。これらのデータから、比較的高い負荷濃度でさえもセレノ糖タンパク質の封入は否定的に放出パターンに影響することはないことが確認される。
セレノ糖タンパク質(SGP)遅延放出重合体の調製
ポリマーAの合成。pH4.0および6.0で沈殿された(実施例5を参照のこと)SGPの1:1混合物をSGP遅延放出重合体の調製において使用した。150mgのSGPを2mlのメタクリル酸および1mlのDI水中に溶解した。溶解を加速するためにいくらか加熱した。0.5mlの溶液のサンプルを10mgのAIBNを含む5mlのバイアル中に入れ、1分間ボルテックスし、そしてその管の空気を真空下で除去し、そして窒素に置き換えた。その管の内容物を、その管を70℃まで加熱した研究室オーブン内に2時間入れることにより重合化させた。その管を壊し、そして重合体を薄い切片に切り、そして高真空下で乾燥させた。
重合体Bの合成。0.064mlのメタクリル酸、0.091mlの2‐ヒドロキシエチル‐メタクリレート、1.427mlのエチレングリコールジメタクリレート、および10mgのAIBNの混合物を5mlのバイアル中に入れ、そして磁気攪拌棒で攪拌し、続いて1.5mlの酢酸および0.75mlのDI水の混合物中に溶解された75mgのSGPを添加した。そのバイアル中の空気を窒素で置き換え、そしてそのバイアルを密閉し、そして70℃の油浴中に4時間入れた。そのバイアルを壊し、そして重合体モノリスを磁器乳鉢中で押し砕き、粉末にした。揮発性物質を高真空下でその重合体から除去した。
SGP時間放出。同じSGP遅延放出プロトコールを各重合体(AおよびB)に適用した。333.7±0.1mgの重合体を5mlのクエン酸緩衝液(pH5.0)を含む15ml遠心分離管中に入れ、そしてその管を穏やかに4時間振騰した。その管をその後遠心分離し、そして上清を回収し、一方、重合体ペレットを8ml体積のDI水で2回洗浄し、そして凍結乾燥させた。約21mgをSe分析のために凍結乾燥サンプルから取った。SGP抽出をさらに2回繰り返した。サンプル重量を記録した。全てのサンプルはこれらの処置中に重量が減った(表8および9を参照のこと)。
放出されたSGPの濃度を見積もるために、上清の280nmでのUV吸収を計測し、そして同じ緩衝液中に調製されたSGP校正曲線と比較した(表10を参照のこと)。
(EXCALIBUR法および装置を用いた)原子吸収スペクトロスコピーを遅延放出重合体中の残留Se濃度を計測するために適用した(表11を参照のこと)。
残留のペレット中のSe濃度の計測に従って、36.08%のSGPが3回の4時間(全部で12時間)の洗浄後に重合体Aから放出された。同じ処置中に、30.11%のSGPが重合体Bから放出された。
細胞内酵母タンパク質のアルカリ抽出
200.0gのSEL‐PLEXを1LのpH11.5の0.1M水酸化ナトリウムと混合し、そして60℃で8時間加熱した。その混合物をその後14,000×g/10分間/10℃で遠心分離し、上清およびペレットを形成させた。そのペレットを400mlのDI水で2回洗浄し、そして凍結乾燥させ、そしてそれは54.5gの重量であった(表12を参照のこと)。pH11.5の上清および使用された洗浄液を共に混合した。そのpHを、濃塩酸を用いた中和により6.6まで減少させた。沈殿物のわずかな形跡および透明な上清が中和中に形成された。その沈殿物を遠心分離により分離し、そして上清をAMICON 10kDa超ろ過装置を用いて濃縮した。その濃縮物を100mlのDI水で2回洗浄し、そして凍結乾燥させ、64.0gの茶色固体を得た。残ったろ過物を混合し(総体積2l)、およびセレン濃度について分析した。分離された沈殿物をセレンおよび窒素/タンパク質について分析した(表12を参照のこと)。
ろ過物分析は10kDa膜を通した超ろ過により回復されなかった40.7%の質量損失および48.7%のセレン損失を示した。セレン含有ペプチドからのMeSe‐1およびHSe‐1ならびにこれらの官能基の酸化形態のβ‐求核/熱消去はSGPの元の化学構造の分解およびろ過物への質量およびセレンの損失をもたらした。本分野において通常実施される生成プロセスはろ過物中の大量および高濃度セレンを作成し、それらは有害なまたは有毒な(例えば、環境に有害な)効果を有し得る廃棄流をもたらす。対照的に、本発明に係る方法は(例えば、大スケールの商業的プロセスにおける)セレン富化酵母からのSGPの酸抽出およびpH依存的画分化を提供する。さまざまな温度条件下で、アルカリ加水分解を用いた伝統的な/従来の技術は酵母細胞からのセレノ糖タンパク質の抽出においてうまくいかなかったことが分かった。本明細書中に示されるように、酸抽出を用いた酵母細胞からのSGP抽出は成功であることが発見された。
引用文献
以下の引用文献は、それらが本明細書中に完全に示されるかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。