本明細書に引用される全ての特許および非特許文献の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、または好ましい上方値および好ましい下方値の列挙として挙げられる場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の範囲上限または好ましい上方値と、任意の範囲下限または好ましい下方値との任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲が引用されている場合、特に記載のない限り、この範囲は、その終点、および範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。本発明の範囲が、範囲を定義する場合において規定の値に限定されることは意図されない。
本明細書において使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」もしくは「含有する(containing)」、またはその任意の他の変形は、非排他的包含をカバーするものと意図される。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるものではなく、表現的に列挙されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、表現的に逆の記載がない限り、「または」は、包含的なまたはを指すかまたは排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つにより充足される:Aは真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)、Bは真である(または存在する)、ならびにAおよびBは真である(または存在する)。
また、本発明の要素または構成成分に先行する不定冠詞「a」および「an」は、要素または構成成分の例の数(すなわち、出現率)に関して非限定的であると意図される。したがって、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、要素または構成成分の単数形の単語形態は、数字が明らかに単数を意味しない限り複数形も含む。
本明細書において使用される用語「発明」または「本発明」は、特許請求の範囲および本明細書に記載の本発明の全ての態様および実施形態を指すことが意図され、いかなる特定の実施形態または態様にも限定されるものと読まれるべきではない。
以下の定義を本開示において使用する:
「二酸化炭素」は「CO2」と略す。
「American Type Culture Collection」は、「ATCC」と略す。
「多価不飽和脂肪酸」は、「PUFA」と略す。
「リン脂質」は、「PL」と略す。
「トリアシルグリセロール」は、「TAG」と略す。
「遊離脂肪酸」は、「FFA」と略す。
「総脂肪酸」は、「TFA」と略す。
「脂肪酸メチルエステル」は、「FAME」と略す。
「エチルエステル」は、「EE」と略す。
「乾燥細胞重量」は、「DCW」と略す。
「ミリtorr」は、「mTorr」と略す。
「短行程蒸留」は、「SPD」と略す。
本明細書において使用される用語「微生物バイオマス」は、微生物油を生成するために実施される含油微生物の微生物発酵からの微生物細胞材料を指す。微生物バイオマスは、全細胞、全細胞溶解物、ホモジナイズされた細胞、部分加水分解された細胞材料、および/または破砕細胞の形態であり得る。好ましくは、微生物油は、少なくとも1つのPUFAを含む。
用語「未処理微生物バイオマス」は、溶媒による抽出前の微生物バイオマスを指す。場合により、未処理微生物バイオマスは、溶媒による抽出前に少なくとも1つの機械的プロセス(例えば、バイオマスの乾燥、バイオマスの破砕、バイオマスのペレット化、またはそれらの組合せによる)に供することができる。「未処理微生物バイオマスおよび未リファインド微生物バイオマス」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
「ペレット化する」または「ペレット化」という用語は、固体ペレットを生成するプロセスを指す。
「固体ペレット」という用語は、構造的剛性および形状または容積の変化に対する耐性を有するペレットを指す。固体ペレットは、望ましくは、室温において非粘着性である。固体ペレットの大部分は、ペレット構造の分解なしで、一緒に結合することもなく何日間も一緒に充填することができ;したがって、大部分は、望ましくは、自由流動するペレット化組成物である。固体ペレットは、本明細書において、「ペレット化」のプロセスを介して微生物バイオマスから形成し、したがって、「ペレット化微生物バイオマス」と称することもできる。
「破砕バイオマス混合物」という用語は、微生物バイオマスおよび少なくとも1つの粉砕剤を混合することにより得られる生成物を指す。破砕バイオマス混合物は、破砕微生物バイオマスを含む。
用語「破砕微生物バイオマス」は、破砕のプロセスに供された微生物バイオマスを指し、前記破砕は、微生物バイオマスの少なくとも50%の破砕効率をもたらす。
用語「破砕効率」は、光学的可視化により定性的に測定されるかまたは以下の式:%破砕効率=(%遊離油*100)を(%総油)で割る(%遊離油および%総油は、固体ペレットについて計測される)に従って定量的に測定される、加工の間に破断または破裂された細胞壁のパーセントを指す。微生物バイオマスの破砕効率の増加は、典型的には、微生物バイオマス内に含有される微生物油の抽出収率の増加をもたらす。
用語「パーセント総油」は、固体ペレット試料内に存在する全ての油(例えば、細胞膜、脂肪体などに存在する中性脂肪画分[DAG、MAG、TAG]、遊離脂肪酸、リン脂質などからの脂肪酸を含む)の総量を指す。パーセント総油は、機械的破砕に供されたペレット化試料内の全ての脂肪酸を変換し、次いでアシル脂質のメタノリシスおよびメチル化を行うことにより効率的に計測する。したがって、脂肪酸(トリグリセリド形態で表現)の総和は、試料の総油含有量と解釈される。本発明において、パーセント総油は、乳鉢および乳棒を使用して固体ペレットを微粉末に穏やかに粉砕し、次いで分析のためのアリコート(トリプリケートで)を秤量することにより選択的に測定される。試料中の脂肪酸(主としてトリグリセリドとして存在する)は、80℃における塩化アセチル/メタノールとの反応により対応するメチルエステルに変換する。次いで、C15:0内部標準を、較正目的のために既知量でそれぞれの試料に添加する。個々の脂肪酸の測定は、火炎イオン化検出(GC/FID)を用いるキャピラリーガスクロマトグラフィーにより行う。さらに、脂肪酸(トリグリセリド形態で表現)の総和は、試料の総油含有量と解釈される。
用語「パーセント遊離油」は、特定の固体ペレット試料からの抽出に容易に利用可能な遊離および未結合油(例えば、トリグリセリド形態で表現される脂肪酸だが、一部はリン脂質)の量を指す。したがって、例えば、パーセント遊離油の分析は、破砕されていない膜結合脂肪体中に存在する油を含まない。本発明において、パーセント遊離油は、試料をn−ヘプタンと撹拌し、遠心分離し、次いで上清を乾燥するまで蒸発させることにより選択的に測定される。次いで、得られた残留油を重量測定し、元の試料の重量割合として表現する。
用語「粉砕剤」は、破砕バイオマス混合物を得るために微生物バイオマスと混合される吸油し得る薬剤を指す。好ましくは、少なくとも1つの粉砕剤は、微生物バイオマス100部に対して約1から50部存在する。一部の好ましい実施形態において、粉砕剤はシリカまたはケイ酸塩である。粉砕剤の他の好ましい特性は、以下に考察する。
用語「固定可能な混合物」は、少なくとも1つの結合剤を破砕バイオマス混合物とブレンドすることにより得られる生成物を指す。固定可能な混合物は、溶媒の除去(例えば、乾燥工程における水の除去)時に固体ペレットを形成し得る混合物である。
用語「結合剤」は、固定可能な混合物を得るために破砕バイオマス混合物とブレンドされる薬剤を指す。好ましくは、少なくとも1つの結合剤は、微生物バイオマス100部に対して約0.5から20部存在する。一部の好ましい実施形態において、結合剤は炭水化物である。結合剤の他の好ましい特性は、以下に考察する。
本明細書において使用される用語「残留バイオマス」は、溶媒(例えば、無機または有機溶媒)により少なくとも1回抽出された、微生物油を生成するために実施される微生物発酵からの微生物細胞材料を指す。抽出に供する最初の微生物バイオマスが固体ペレットの形態である場合、残留バイオマスは「残留ペレット」と称することができる。
「低減した」または「枯渇した」という用語は、より小さい量、例えば、元の量よりもほんのわずかに少ない量、または例えば規定材料中で完全に欠落する量を有すること、および中間の全ての量を含むことを意味する。
用語「脂質」は、任意の脂溶性(すなわち親油性)天然分子を指す。脂質は、多くの重要な生物学的機能を有する多様な群の化合物、例えば細胞膜の構造的構成成分、エネルギー保存源、およびシグナル伝達経路中間体である。脂質はケトアシルまたはイソプレン基のいずれかに、完全にまたは部分的に由来する、疎水性または両親媒性の小分子として広く定義することができる。Lipid Metabolites and Pathways Strategy(LIPID MAPS)分類体系(National Institute of General Medical Sciences,Bethesda,MD)に基づく脂質の一般的概要を以下の表2に示す。
用語「油」は、25℃において液体であり、通常は多価不飽和である脂質物質を指す。油性生物において、油は総脂質の大部分を構成する。「油」は主としてトリアシルグリセロール(TAG)から構成されるが、他の中性脂肪、リン脂質(PL)および遊離脂肪酸(FFA)も含有し得る。油中の脂肪酸組成および総脂質の脂肪酸組成は、一般に類似しており;したがって総脂質中のPUFA濃度の増加または減少は、油中のPUFA濃度の増加または減少に対応し、逆もまた然りである。
「微生物油」は、微生物により生成される油である。この一般的用語は、以下にさらに定義される未濃縮微生物油、抽出油、脂質含有画分、精製油または濃縮微生物油を指し得る。微生物油中の規定の脂肪酸の精製または富化後、油は種々の化学的形態で(例えば、トリアシルグリセロール、アルキルエステル、塩または遊離脂肪酸の形態で)存在し得る。
用語「抽出油」は、油が合成される細胞材料、例えば微生物から分離された油を指す。微生物から抽出することができる油の量は、破砕効率に比例することが多い。抽出油は、広範な方法を介して得られ、最も単純なものは物理的手段のみを伴う。例えば、種々のプレス構造(例えばスクリュー、エキスペラー、ピストン、ビードビーターなど)を使用する機械的圧潰が、細胞材料から油を分離し得る。あるいは、油抽出は種々の有機溶媒(例えばヘキサン、イソヘキサン)による処理、酵素的抽出、浸透圧衝撃、超音波抽出、超臨界流体抽出(例えばCO2抽出)、鹸化およびそれらの方法の組合せを介して行うことができる。微生物から抽出することができる油の量は、破砕効率に比例することが多い。さらに、抽出油の精製または濃縮は、任意選択である。
「未濃縮微生物油」という用語は、抽出油が1つ以上の脂肪酸について実質的に富化されていないことを意味する。したがって、「未濃縮微生物油」の脂肪酸組成は、微生物により生成された微生物油の脂肪酸組成に実質的に類似する。未濃縮微生物油は、未濃縮抽出油または未濃縮精製油であり得る。
「リファインド脂質組成物を有する抽出油」または「リファインド脂質組成物」という用語は、米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書に開示される超臨界二酸化炭素(CO2)抽出の生成物である微生物油組成物を指す。したがって、リファインド脂質組成物は、抽出油である。リファインド脂質組成物は、中性脂肪および/またはFFAを含み得る一方、実質的にPLを含まない。リファインド脂質組成物は、American Oil Chemists’Society(AOCS)Official Method Ca 20−99、標題「Analysis for Phosphorus in Oil by Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy」(Official Methods and Recommended Practices of the AOCS,6th ed.,Urbana,IL,AOCS,2009、参照により本明細書に組み込まれる)により測定して好ましくは、30ppm未満のリン、より好ましくは、20ppm未満のリンを有する。リファインド脂質組成物は、微生物バイオマスの油組成物に対してTAGが富化されていてよく、場合によりステロール画分を含み得る。リファインド脂質組成物は、例えば本明細書に記載の短行程蒸留を介するさらなる精製に付して「精製油」または「脂質含有画分」を生成することができる。
「脱ガム処理する」という用語は、抽出油からのリン脂質および他の不純物の濃度を低減させるプロセスを指す。
「漂白する」という用語は、抽出油からの色素/有色化合物および残留金属の濃度を低減させるプロセスを指す。
「ステロール」または「ステロール画分」という用語は、細胞内で膜浸透性に影響する生物構成成分を指す。ステロールは、全ての主要な群の生物から単離されているが、単離される優勢なステロールの多様性が存在する。高等動物における優勢なステロールは、コレステロールである一方、β−シトステロールは一般に高等植物において優勢なステロールである(しかし、カンペステロールおよびスチグマステロールを伴うことも多い)。微生物に見出される優勢なステロールに関する一般化は、より困難である。それというのも、組成が特定の微生物種に依存するためである。例えば、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、主に、エルゴステロールを含み、モルティエレラ(Morteriella)属の菌類は、主に、コレステロールおよびデスモステロールを含み、シゾキトリウム(Schizochytrium)属のストラメノパイルは、主に、ブラシカステロールおよびスチグマステロールを含む。ステロール含有微生物油中に見出されることが多いステロールのまとめを以下の表3に示し;対照的に、それらのステロールは、典型的には、魚油中に見出されない。表3のステロールは、ステロール含有微生物油中に存在する場合、高融点およびより低い貯蔵温度において低減した溶解度に起因して抽出油から沈殿する傾向があり、混濁油をもたらす。これらのステロールの濃度を低減させることにより抽出油またはそれから生成される油の不所望な混濁性を最小化することが極めて望ましい。
「蒸留する」という用語は、混合物を沸騰液体混合物中でのそれらの揮発性の差に基づき分離する方法を指す。蒸留は、単位操作、または物理的分離プロセスであり、化学反応ではない。
「短行程蒸留」(「SPD」)という用語は、極端に高い真空下で稼働し、蒸発後に蒸留すべき材料からの揮発性化合物が凝縮表面に短距離のみ移動するようにSPD装置が蒸発器に近接した内部凝縮器を備える分離法を指す。結果として、この分離法からの熱分解は最小である。
「精製油」という用語は、抽出油中の不純物の濃度と比較して低減した濃度の不純物、例えばリン脂質、微量金属、遊離脂肪酸、有色化合物、少量の酸化生成物、揮発物質および/または臭気化合物、ならびにステロール(例えば、エルゴステロール、ブラシカステロール、スチグマステロール、コレステロール)を有する抽出油を指す。精製プロセスは、典型的には、特定の脂肪酸が実質的に富化されるように微生物油を濃縮も富化もせず、したがって精製油は未濃縮であることが最も多い。
「脂質含有画分」および「SPD精製油」という用語は、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、1つ以上のPUFAを含むTAG画分を含有する抽出微生物油であって、SPD条件下での少なくとも1回の蒸留のプロセスに付した油を指す。ステロール画分が抽出油中に存在する場合、蒸留プロセスは、短行程蒸留前の油のステロール含有量と比較して脂質含有画分中のステロールの量を低減させる。
SPDは、エチルエステル、メチルエステルおよび遊離脂肪酸を濃縮し得るが、そのプロセスは、典型的には、TAGを濃縮しない(例えば、極端に高い温度において稼働させ、次いでTAGの分解をもたらさない限り)。脂質含有画分中の大部分のPUFAはTAGの形態であるため、SPDプロセスは、典型的には、特定の脂肪酸が実質的に富化されるようにTAGを濃縮せず、脂質含有画分は、本明細書に記載の目的のために未濃縮であるとみなされることが最も多い。
「エステル交換」という用語は、脂肪酸のエステルを異なる脂肪酸のエステルに変換させる、酸または塩基触媒により触媒される化学反応を指す。
「脂肪酸エチルエステル」[「FAEE」]は、一般に、エステル化またはエステル交換のプロセスにおいて遊離脂肪酸またはそれらの誘導体をエタノールと反応させることにより合成により誘導される脂質の化学形態を指す。
「富化」という用語は、未濃縮微生物油中の1つ以上の脂肪酸の濃度に対して微生物油中の1つ以上の脂肪酸の濃度を増加させるプロセスを指す。例えば、本明細書において考察されるとおり、TFAの重量%として計測して30から70重量%の所望のPUFAを含む微生物油を富化または濃縮して「油濃縮物」を生成する。
「油濃縮物」という用語は、油の重量%として計測して少なくとも70重量%の所望のPUFAを含む油を指す。好ましくは、油濃縮物は、総脂肪酸の重量%として計測して30から70重量%の所望のPUFAを含む微生物油から得、前記微生物油は、以下に詳述するとおり油として乾燥細胞重量の25%を超過して蓄積する含油微生物から得る。具体的には、微生物油のエチルまたは他のエステルは、所望のPUFAを富化することができ、当技術分野において一般に使用される方法により分離することができる。
「エイコサペンタエン酸濃縮物」または「EPA濃縮物」という用語は、油濃縮物であり、油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないω−3油を指す。EPA濃縮物は、総脂肪酸の重量%として計測して30から70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まない微生物油から得、前記微生物油は、油として乾燥細胞重量の25%を超過して蓄積する含油微生物から得る。EPAの少なくとも70重量%は、遊離脂肪酸、トリグリセリド(例えば、TAG)、エステル、およびそれらの組合せの形態である。エステルは、最も好ましくは、エチルエステルの形態である。
「中性脂肪」は、脂肪体の細胞中に貯蔵脂肪として一般に見出される脂質を指し、細胞のpHにおいて脂質は荷電基を担持しないため、そのように称される。一般にこれらは完全に非極性であり、水についての親和性を有さない。中性脂肪は、一般に脂肪酸とのグリセロールのモノ−、ジ−、および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)もしくはトリアシルグリセロール(TAG)とも称され、または集合的にアシルグリセロールとも称される。アシルグリセロールからFFAを放出するためには、加水分解反応が起きなくてはならない。
「トリアシルグリセロール」という用語は、「トリアシルグリセリド」という用語と同義であり、グリセロール分子にエステル化された3つの脂肪酸アシル残基から構成される中性脂肪を指す。TAGは、長鎖PUFAおよび飽和脂肪酸、ならびに短鎖飽和および不飽和脂肪酸を含有し得る。生物において、TAGは、脂肪酸についての一次貯蔵単位である。それというのも、グリセロール骨格はPUFA分子を貯蔵についてまたは輸送の間に安定化するのを助けるためである。対照的に、遊離脂肪酸は急速に酸化される。
本明細書において用語「総脂肪酸(TFA)」は、例えば微生物バイオマスまたは油であり得る所与の試料中において、(当技術分野において公知の)塩基エステル交換法により脂肪酸メチルエステル(FAME)に誘導体化することができる全ての細胞脂肪酸の総和を指す。したがって、総脂肪酸は、(DAG、MAG、およびTAGを含む)中性脂肪画分からの、および(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン画分を含む)極性脂質画分からの脂肪酸を含むが、FFAは含まない。
細胞の「総脂質含有率」という用語は、乾燥細胞重量(DCW)のパーセントとしてのTFAの尺度であるが、総脂質含有率は、DCWのパーセントとしてのFAME(FAME%DCW)の尺度として近似させることができる。したがって総脂質含有率(TFA%DCW)は、例えばDCW100ミリグラム当たりの総脂肪酸のミリグラムに等しい。
総脂質中の脂肪酸の濃度は、本明細書においてTFAの重量パーセント(%TFA)、例えば、TFA100ミリグラム当たりの所与の脂肪酸のミリグラムとして表現する。本開示において特に具体的に記載のない限り、微生物細胞中および微生物油中の総脂質に対する所与の脂肪酸のパーセントへの参照は、%TFAとしての脂肪酸の濃度と等価である(例えば、総脂質の%EPAは、EPA%TFAと等価である)。
油濃縮物中の脂肪酸エステルの濃度(および/または脂肪酸および/またはトリグリセリド、それぞれ)は、油の重量パーセント[「%油」]、例えば、油濃縮物100ミリグラム当たりの所与の脂肪酸エステル(および/または脂肪酸および/またはトリグリセリド、それぞれ)のミリグラムとして表現する。この計測単位を使用して例えばEPA濃縮物中のEPAの濃度を記載する。
場合によっては、細胞中の所与の脂肪酸含有率をその乾燥細胞重量の重量パーセント(%DCW)として表現することが有用である。したがって例えばエイコサペンタエン酸%DCWは、以下の式に従って求められる:(エイコサペンタエン酸%TFA)*(TFA%DCW)]/100。しかしながら、乾燥細胞重量の重量パーセント(%DCW)としての細胞中の所与の脂肪酸含有率は、以下のとおり近似させることができる:
(エイコサペンタエン酸%TFA)*(FAME%DCW)]/100。
「脂質プロファイル」および「脂質組成」という用語は同義であり、特定の脂質画分、例えば総脂質中または油中などに含有される個々の脂肪酸の量を指し、その量はTFAの重量パーセントとして表現される。混合物中に存在する個々の脂肪酸の総和は、100になるべきである。
用語「脂肪酸」は、変動する約C12からC22の鎖長の長鎖脂肪酸(アルカン酸)を指すが、鎖長のより長い酸およびより短い酸の両方も公知である。優勢な鎖長は、C16からC22の間である。脂肪酸の構造は「X:Y」(式中、Xは特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子の総数であり、Yは二重結合の数である)の簡易表記体系により表される。「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」(PUFA)、および「ω−6脂肪酸」(「ω−6」または「n−6」)と「ω−3脂肪酸」(「ω−3」または「n−3」)の区別に関する追加的詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,482号明細書に提供されている。
本明細書でPUFAを記載するために使用される命名法を表4に示す。「略記法」と題された欄ではω−基準系を使用して、炭素数、二重結合数、この目的で1番目であるω炭素から数えたω炭素に最も近い二重結合の位置を示す。表の残りは、ω−3およびω−6脂肪酸ならびにそれらの前駆体の一般名、明細書全体を通じて使用される略語、ならびにそれぞれの化合物の化学名をまとめる。
本開示において使用されるEPA、DHA、NDPAおよびHPAという用語は、それぞれ、特に具体的に言及のない限り、それぞれの酸または酸の誘導体(例えば、グリセリド、エステル、リン脂質、アミド、ラクトン、塩など)を指す。例えば、「EPA−EE」は、具体的には、EPAエチルエステルを指す。
NDPAおよびHPAは、一般に魚油中に見出される。魚油から生成される濃縮EPAは、最終EPA組成物中の不純物としてそれらの脂肪酸を含有することが多い(例えば、米国特許出願公開第2010−0278879号明細書および国際公開第2010/147994A1号パンフレット参照)。
「実質的にDHAを含まない」という用語は、約0.05重量パーセント以下のDHAを含むことを意味する。したがって、EPA濃縮物は、DHA(遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、エステルおよびそれらの組合せの形態)の濃度が、油の重量%として計測して約0.05重量%以下のDHAである場合、実質的にDHAを含まない。同様に、微生物油は、DHAの濃度が、TFAの重量%として計測して約0.05重量%以下のDHAである場合、実質的にDHA(遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、エステル、およびそれらの組合せの形態)を含まない。
「実質的にNDPAを含まない」および「実質的にHPAを含まない」という用語は、「実質的にDHAを含まない」という用語について上記に提供される定義と同等であるが、脂肪酸NDPAまたはHPAが、それぞれ、DHAに代えて用いられる。
「高レベルPUFA生成」という用語は、微生物宿主の総脂質の少なくとも約25%のPUFA、好ましくは、総脂質の少なくとも約30%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約35%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約40%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約40〜45%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約45〜50%のPUFA、より好ましくは、少なくとも約50〜60%のPUFA、最も好ましくは、総脂質の少なくとも約60〜70%のPUFAの生成を指す。PUFAの構造形態は限定的でなく;したがって例えばPUFAは、FFAとして、またはエステル化形態、例えばアシルグリセロール、リン脂質、硫脂質または糖脂質で総脂質中に存在し得る。
「含油微生物」という用語は、微生物油を生成し得る微生物を指す。したがって、含油微生物は、酵母、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル、菌類、またはそれらの組合せであり得る。好ましい実施形態において、含油微生物は油性である。
「油性」という用語は、それらのエネルギー源を油の形態で貯蔵する傾向がある生物を指す(Weete,In:Fungal Lipid Biochemistry,2ndEd.,Plenum,1980)。一般に、油性微生物の細胞油はS字形曲線に従い、脂質の濃度は対数後期または初期静止期においてそれが最大に達するまで増加し、次に後期静止期および死滅期中に徐々に減少する(Yongmanitchai and Ward,Appl.Environ.Microbiol.,57:419−25(1991))。油性微生物がそれらの乾燥細胞重量の約25%を超えて、油として蓄積することは珍しくない。
油性生物の例には、限定されるものではないが、モルティエラ(Mortierella)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される属の生物が含まれる。
「油性酵母」という用語は、油を生成し得る酵母に分類される油性微生物を指す。油性酵母の例には、決して限定されるものではないが、以下の属:ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)およびリポマイセス(Lipomyces)が含まれる。
本明細書において使用される「医薬」という用語は、合衆国で販売されている場合、連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food,Drug and Cosmetic Act)のセクション503または505により管理される化合物または物質を意味する。
「実質的に環境汚染物質を含まない」という用語は、油濃縮物またはEPA濃縮物がそれぞれ、環境汚染物質を含まず、または多くとも微量のみの環境汚染物質を含むことを意味し、それらには、化合物、例えばポリ塩化ビフェニル[「PCB」](CAS番号1336−36−3)、ジオキシン、臭素化難燃剤および殺虫剤(例えば、トクサフェンおよびジクロロジフェニルトリクロロエタン[「DDT」]およびその代謝物質)が含まれる。
一般に、油性微生物中の脂質蓄積は、成長培地内に存在する全炭素対窒素比に応答して誘発される。油性微生物中で遊離パルミテート(16:0)のデノボ合成をもたらすこのプロセスについては、米国特許第7,238,482号明細書において詳述されている。パルミテートは、エロンガーゼおよびデサチュラーゼの作用を介して形成される、鎖長のより長い飽和および不飽和脂肪酸誘導体の前駆体である。
広範な脂肪酸(飽和および不飽和脂肪酸ならびに短鎖および長鎖脂肪酸を含む)を、脂肪酸についての一次貯蔵単位であるTAG中に取り込むことができる。本明細書に記載の含油微生物において、TAG中への長鎖PUFAの取り込みが最も望ましいが、PUFAの構造的形態は限定されない(したがって、例えば、EPAが総脂質中でFFAとして、またはエステル化形態、例えばアシルグリセロール、リン脂質、スルホ脂質または糖脂質で存在し得る)。より具体的には、一実施形態において、含油微生物は、LA、GLA、EDA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHAおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのPUFAを生成する。より好ましくは、少なくとも1つのPUFAは、少なくともC20鎖長、例えば、EDA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHA、およびそれらの混合物からなる群から選択されるPUFAを有する。
一実施形態において、少なくとも1つのPUFAは、ARA、EPA、DPAn−6、DPAn−3、DHAおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、少なくとも1つのPUFAは、EPAおよびDHAからなる群から選択される。
ほとんどのPUFAは中性脂肪としてTAG中に取り込まれて脂肪体中に貯蔵される。しかしながら、油性生物中の総PUFAの計測は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびTAG画分中に局在するPUFAを最低限含むべきであることに留意することが重要である。
本発明は、
(a)ある水分レベルを有し、含油微生物を含む微生物バイオマスをペレット化すること;
(b)工程(a)のペレット化された微生物バイオマスを抽出して抽出油を生成すること;および
(c)工程(b)の抽出油を、短行程蒸留条件下で少なくとも1回蒸留すること
を含み、前記蒸留が、蒸留物画分および脂質含有画分を生成する方法に関する。
別の実施形態において、上記方法は、以下の工程:
(d)工程(c)の脂質含有画分をエステル交換すること;および
(e)工程(d)のエステル交換された脂質含有画分を富化して油濃縮物を得ること
をさらに含み得る。
本発明は、ペレット化微生物バイオマスから脂質含有画分または油濃縮物を得る方法に関するが、含油微生物自体を得るために有用であり得る関連方法も図5の概略図に記載する。図5の態様のそれぞれは、以下により詳細に考察し、図中の太字は図5の規定部分を指す。
含油微生物は、微生物が典型的には微生物発酵を介して成長および繁殖するにつれて微生物バイオマスを生成する。微生物バイオマスは、天然または組換え(「遺伝子操作」)に関わらず、微生物油を生成し得る任意の微生物からのものであり得る。したがって、例えば、含油微生物は、酵母、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル、菌類、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、微生物は、微生物油内の高レベルPUFA生成が可能である。
例としてARA油の商業的供給源は、典型的には、モルティエラ(Mortierella)属(糸状菌)、ハエカビ(Entomophthora)属、ピシウム(Pythium)属およびチノリモ(Porphyridium)属(紅藻)の微生物から生成される。最も注目すべきことに、Martek Biosciences Corporation(Columbia,MD)はARA含有真菌油(ARASCO(登録商標);米国特許第5,658,767号明細書)を生成し、これは実質的にEPAを含まず、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)またはピシウム・インシジオスム(Pythium insidiuosum)のいずれかに由来する。
同様に、EPAは、利用される規定の微生物の天然能力に基づく多数の異なる方法を介して、微生物を利用して生成することができる[例えば、従属栄養珪藻キクロテラ(Cyclotella)種およびニッチア(Nitzschia)種(米国特許第5,244,921号明細書);シュードモナス(Pseudomonas)種、アルテロモナス(Alteromonas)種またはシュワネラ(Shewanella)種(米国特許第5,246,841号明細書);ピシウム(Pythium)属の糸状菌(米国特許第5,246,842号明細書);またはモルティエラ・エロンガータ(Mortierella elongata)、M.エクシグア(M.exigua)、またはM.ハイグロフィラ(M.hygrophila)(米国特許第5,401,646号明細書);およびナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の真正眼点藻(Krienitz,L.and M.Wirth,Limnologica,36:204−210(2006))]。
DHAも、天然微生物の天然能力に基づく方法を使用して生成することができる。例えばシゾキトリウム(Schizochytrium)種(米国特許第5,340,742号明細書;米国特許第6,582,941号明細書);ウルケニア(Ulkenia)(米国特許第6,509,178号明細書);シュードモナス(Pseudomonas)種YS−180(米国特許第6,207,441号明細書);スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属LFF1株(米国特許出願公開第2004/0161831A1号明細書);クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)(米国特許出願公開第2004/0072330A1号明細書;deSwaaf,M.E.et al.BiotechnolBioeng.,81(6):666−672(2003)およびAppl Microbiol Biotechnol.,61(1):40−43(2003));エミリアニア(Emiliania)種(特開平5−308978号公報(1993));およびジャポノキトリウム(Japonochytrium)種(ATCC#28207;特開199588/1989号公報]について開発された方法参照。さらに以下の微生物がDHA生成能を有することが公知である:ビブリオ・マリヌス(Vibrio marinus)(深海から単離された細菌;ATCC#15381);微小藻類キクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)およびイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana);ならびに鞭毛菌類、例えばスラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(ATCC#34304;Kendrick,Lipids,27:15(1992))およびATCC#28211、ATCC#20890、およびATCC#20891と称されるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種。現在、DHAを商業生成する少なくとも3つの異なる発酵法が存在する:DHASCO(商標)を生成するためのC.コーニイ(C.cohnii)の発酵(Martek Biosciences Corporation,Columbia,MD);以前にDHAGoldとして公知の油を生成するためのシゾキトリウム(Schizochytrium)種の発酵(Martek Biosciences Corporation);およびDHActive(商標)を生成するためのウルケニア(Ulkenia)種の発酵(Nutrinova,Frankfurt,Germany)。
組換え手段を使用する微生物油中のPUFAの微生物生成は、天然微生物源からの生成と比べて、いくつかの利点を有することが予期される。例えば、宿主中への新しい生合成経路の導入により、および/また不所望な経路の抑制により宿主の天然の微生物脂肪酸プロファイルを変えることができ、それにより所望のPUFA(またはそのコンジュゲート形態)の生成レベルの増加および不所望なPUFAの生成の減少がもたらされるため、油生成に好ましい特徴を有する組換え微生物を使用し得る。第2に組換え微生物は、規定の用途を有し得る特定形態でPUFAを提供し得る。さらに培養条件を制御することにより、とりわけ微生物により発現される酵素のための特定基質源を提供することにより、または化合物/遺伝子操作を付加して不所望な生化学的経路を抑制することにより、微生物油生成を操作することができる。したがって、例えば、こうして生成されるω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との比を改変し、または他のPUFAの下流もしくは上流生成物の顕著な蓄積なしに、規定のPUFA(例えばEPA)の生成を遺伝子操作することが可能である。
したがって、例えば、適切なPUFA生合成経路遺伝子、例えばδ−4デサチュラーゼ、δ−5デサチュラーゼ、δ−6デサチュラーゼ、δ−12デサチュラーゼ、δ−15デサチュラーゼ、δ−17デサチュラーゼ、δ−9デサチュラーゼ、δ−8デサチュラーゼ、δ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼおよびC20/22エロンガーゼの規定の組合せを導入することにより、EPAを生成する天然能力を欠く微生物を遺伝子操作してPUFA生合成経路を発現させることができるが、導入される規定の酵素(およびそれらの酵素をコードする遺伝子)は、本発明を決して限定するものではないと認識されるべきである。
例として、いくつかの酵母が、少なくとも1つのPUFAを生成するように組換え遺伝子操作されている。例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Dyer,J.M.et al.,Appl.Envi.Microbiol.,59:224−230(2002);Domergue,F.et al.,Eur.J.Biochem.,269:4105−4113(2002);米国特許第6,136,574号明細書;米国特許出願公開第2006−0051847−A1号明細書)および油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(米国特許第7,238,482号明細書;米国特許第7,465,564号明細書;米国特許第7,588,931号明細書;米国特許第7,932,077号明細書;米国特許第7,550,286号明細書;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書;米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書)における研究参照。
一部の実施形態において、微生物宿主細胞が油性である場合に利点が認識される。油性酵母は天然で油合成および蓄積が可能であり、総油含有率は、細胞乾燥重量の約25%を超えて、より好ましくは、細胞乾燥重量の約30%を超えて、最も好ましくは、細胞乾燥重量の約40%を超えて構成し得る。代替実施形態において、例えば酵母、例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの非油性酵母を、細胞乾燥重量の25%を超える油を生成し得るように、それを遺伝子操作して油性にすることができる(国際公開第2006/102342号パンフレット)。
典型的に油性酵母として同定される属には、限定されるものではないが、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)およびリポマイセス(Lipomyces)が含まれる。より具体的には、例証的な油合成酵母には、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プリケリーマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)に分類された)が含まれる。
最も好ましいのは、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であり;さらなる実施形態において、最も好ましいのはATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、ATCC#76982および/またはLGAMS(7)1と称されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株である(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.82(1):43−49(2002))。
一部の実施形態において、油性酵母は「高レベルPUFA生成」が可能であることが望ましいことがあり、生物は総脂質の少なくとも約5〜10%の所望のPUFA(すなわち、LA、ALA、EDA、GLA、STA、ETrA、DGLA、ETA、ARA、DPAn−6、EPA、DPAn−3および/またはDHA)を生成し得る。より好ましくは、油性酵母は、総脂質の少なくとも約10〜70%の所望のPUFAを生成する。PUFAの構造形態は限定的でないが、好ましくは、TAGはPUFAを含む。
したがって、本明細書に記載のPUFA生合成経路遺伝子、および遺伝子産物は、野生型微生物宿主細胞中または異種微生物宿主細胞中、特に油性酵母細胞(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))中で生成することができる。組換え微生物宿主中における発現は、種々のPUFA経路中間体を生成するのに、または従来は宿主を使用して可能でなかった新しい生成物を合成するために宿主中に既存のPUFA経路をモジュレートするのに、有用であり得る。
上記に提供される引用教示に基づき、好ましいω−3/ω−6PUFA生成のために多数の油性酵母を遺伝子操作することができるが、油性酵母の代表的PUFA生成株であるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)について表5に記載する。これらの株は、以下のPUFA生合成経路遺伝子:δ−4デサチュラーゼ、δ−5デサチュラーゼ、δ−6デサチュラーゼ、δ−12デサチュラーゼ、δ−15デサチュラーゼ、δ−17デサチュラーゼ、δ−9デサチュラーゼ、δ−8デサチュラーゼ、δ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/2
0エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼの種々の組合せを有するが、導入される規定の酵素(およびそれらの酵素をコードする遺伝子)および生成される規定のPUFAは、決して本発明を限定するものではないことが認識されるべきである。
PUFA生合成経路を油性酵母中に導入する手段は周知であるため、当業者は、本発明の方法論が、上記のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株にも、本発明が実証される種(すなわちヤロウィア・リポリティカ(Yarrow
ia lipolytica))または属(すなわちヤロウィア(Yarrowia))にも限定されないことを認識する。それよりむしろ、微生物油(好ましくは、PUFA、例えば、LA、GLA、EDA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHAを含む)を生成し得る任意の油性酵母または任意の他の好適な微生物が、実施例26に実証されるとおり本方法論において使用するのに同等に好適である(しかし、取り扱われるそれぞれの新たな微生物について、例えば、それぞれの含油微生物の細胞壁組成の差異に基づき一部のプロセス最適化が要求され得る)。
脂質が微生物により生成される条件下で、好ましくはPUFAを含む脂質を生成する微生物種を発酵培地中で培養し、成長させることができる。典型的には、微生物に微生物の成長および/または微生物油(好ましくはPUFAを含む)の生成を可能にする多数の追加的化学薬品または物質とともに炭素および窒素源をフィードする。発酵条件は、上記引用に記載のとおり、使用される微生物に依存し、得られるバイオマス中のPUFAを高含有率にするために、最適化することができる。
一般に、炭素源のタイプおよび量、窒素源のタイプおよび量、炭素対窒素比、異なる無機イオンの量、酸素レベル、成長温度、pH、バイオマス生成期の長さ、油蓄積相の長さ、ならびに細胞回収時期および方法を改変することにより、培地条件を最適化することができる。例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、一般に、複合培地、例えば酵母抽出物−ペプトン−デキストロースブロス(YPD)中で、または限定最小培地(例えば成長に必要な構成成分を欠き、それによりPUFAの生成を可能にする所望の組換え発現カセットの選択を強制する、酵母窒素原礎培地(DIFCO Laboratories,Detroit,IM))中で成長させる。
好ましくはPUFAを含む微生物油の所望量が微生物により生成された場合、発酵培地を機械的に加工して微生物油を含む未処理微生物バイオマスを得ることができる。例えば、発酵培地を濾過し、または別の方法により処理して水性構成成分の少なくとも一部を除去することができる(例えば、乾燥により)。当業者により認識されるとおり、未処理微生物バイオマスは、典型的に水を含む。好ましくは、微生物発酵後に、水の一部を未処理微生物バイオマスから除去して、10重量%未満の水分レベル、より好ましくは、5重量%未満の水分レベル、最も好ましくは、3重量%以下の水分レベルを有する微生物バイオマスを提供する。微生物バイオマスの水分レベルは、乾燥において制御することができる。好ましくは、微生物バイオマスは、約1から10重量パーセントの範囲の水分レベルを有する。
場合により、発酵培地および/または微生物バイオマスを低温殺菌し、または他の手段により処理して、微生物油および/またはPUFA生成物を損ない得る、内在微生物酵素の活性を低減させることができる。
したがって、微生物バイオマスは、全細胞、全細胞溶解物、ホモジナイズされた細胞、部分加水分解された細胞材料、および/または破砕細胞(すなわち、破砕微生物バイオマス)の形態であり得る。
微生物バイオマスは、例えば、細胞溶解を介して、または物理的手段、例えばビードビーター、スクリュー押出などを介してバイオマスを破砕するように機械的に加工して細胞内容物へのより大きい接近性を提供することができる。
破砕微生物バイオマスは、含油微生物の少なくとも50%の破砕効率を有する。より好ましくは、破砕効率は、含油微生物の少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、85〜90%以上である。好ましい範囲を上記したが、破砕効率の有用な例には、50%から100%の任意の整数割合、例えば51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の破砕効率が含まれる。
破砕効率は、光学的可視化により定性的に測定されるかまたは以下の式:%破砕効率=(%遊離油*100)を(%総油)で割る(%遊離油および%総油は、固体ペレットについて計測される)に従って定量的に測定される、加工の間に破断または破裂された細胞壁のパーセントを指す。
破砕(例えば、スクリュー押出、エキスペラー、ピストン、ビードビーター、乳鉢および乳棒、ハンマーミル処理、エアジェットミル処理などを使用する、例えば、機械的圧潰)のプロセスに供されなかった固体ペレットは、典型的には、低い破砕効率を有する。それというのも、破砕のプロセスが細胞壁および脂肪体を包囲する膜を含む種々のオルガネラの内膜の両方を破壊するまで、DAG、MAGおよびTAG、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン画分内の脂肪酸ならびに遊離脂肪酸は一般に微生物バイオマスから抽出不可能であるためである。種々の破砕のプロセスは、そのプロセスにおいて固有に生成される特定の剪断、圧縮、静的および動的な力に基づき種々の破砕効率をもたらす。
微生物バイオマスの破砕効率の増加は、典型的には、抽出収率(例えば、粗製抽出油の重量パーセントにより計測)の増加をもたらし、それというのも、細胞壁および膜の破砕とともに微生物油の多くが抽出溶媒の存在に影響を受ける可能性が高いためである。
種々の装置を利用して破砕微生物バイオマスを生成することができるが、好ましくは、破砕は、2軸スクリュー押出機中で実施する。より具体的には、2軸スクリュー押出機は、好ましくは、(i)約0.04から0.4KW/(kg/hr)、より好ましくは、0.05から0.2KW/(kg/hr)、最も好ましくは、約0.07から0.15KW/(kg/hr)の押出機中の総比エネルギーインプット(SEI);(ii)次第に短くなるピッチ長を有するブッシュエレメントを使用する圧密帯域;および(iii)流動制限を使用する圧縮帯域を含む。細胞破砕に要求される機械的エネルギーのほとんどは、圧縮帯域中で付与され、例えばリバーススクリューエレメント、制限/ブリスターリングエレメントまたはニーディングエレメントの形態の流動制限を使用して作出される。圧密帯域は、押出機中で圧縮帯域よりも先行する。押出機の第1の帯域は、バイオマスを圧密帯域中にフィードおよび輸送するために存在し得る。
ペレット化のプロセスは、一般に以下の工程:(1)微生物バイオマスおよび少なくとも1つの吸油し得る粉砕剤を混合して、破砕微生物バイオマスを含む破砕バイオマス混合物を提供する工程;(2)破砕バイオマス混合物を少なくとも1つの結合剤とブレンドして、固体ペレットを形成し得る固定可能な混合物を提供する工程;および(3)前記固定可能な混合物を固体ペレットに形成して、ペレット化微生物バイオマスを提供する工程を含む。
第1に、ある水分レベルを有し、含油微生物を含む微生物バイオマスを、少なくとも1つの吸油し得る粉砕剤と混合して破砕バイオマス混合物を提供する。
吸油し得る粉砕剤は、2.0から6.0、好ましくは、2.0から約5.0;より好ましくは、約2.0から4.0のMoh硬度;およびAmerican Society for Testing And Materials(ASTM)Method D1483−60に従って測定される0.8以上、好ましくは、1.0以上、より好ましくは、1.3以上の吸油係数を有する粒子であり得る。好ましい粉砕剤は、約2から20ミクロン、好ましくは、約7から10ミクロンの中央粒径;およびBET法(Brunauer,S.et al.J.Am.Chem.Soc.,60:309(1938))により測定される少なくとも1m2/g、好ましくは、2から100m2/gの比表面積を有する。
好ましい粉砕剤は、シリカおよびケイ酸塩からなる群から選択される。本明細書において使用される用語「シリカ」は、主に(少なくとも90重量%、好ましくは、少なくとも95重量%の)ケイ素および酸素原子からなり、約2つの酸素原子と1つのケイ素原子との比であり、したがってSiO2の実験式を有する固体化学物質を指す。シリカには、例えば、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、珪藻土としても公知の珪藻シリカおよびそれらのシリカのシラン処理形態が含まれる。用語「ケイ酸塩」は、主に(少なくとも90重量%、好ましくは、少なくとも95重量%の)ケイ素、酸素の原子および少なくとも1つの金属イオンからなる固体化学物質を指す。金属イオンは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、またはそれらの混合物であり得る。天然および合成のゼオライトの形態のケイ酸アルミニウムを使用することができる。有用であり得る他のケイ酸塩は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、およびケイ酸カリウムである。
好ましい粉砕剤は、約10〜20m2/gの比表面積および1.3以上の吸油係数を有する珪藻土である。好適な吸油し得る粉砕剤の市販源は、Celite Corporation,Lompoc,CAから入手可能なCelite 209珪藻土である。
他の粉砕剤は、ポリ(メタ)アクリル酸、ならびにナトリウムまたはカリウム塩基によるポリ(メタ)アクリル酸の部分および完全中和から誘導されるイオノマーであり得る。本明細書において、(メタ)アクリレートという用語は、化合物がアクリレート、メタクリレート、またはその2つの混合物のいずれかであり得ることを意味する。
少なくとも1つの粉砕剤は、固体ペレット中の構成成分(a)微生物バイオマス、(b)粉砕剤および(c)結合剤の総和に対して約1から20重量パーセント、およびより好ましくは、1から15重量パーセント、最も好ましくは、約2から12重量パーセント存在する。
微生物バイオマスおよび吸油し得る粉砕剤を混合して破砕バイオマス混合物を提供すること[工程(1)]は、当技術分野において公知の任意の方法により実施してエネルギーを混合媒体に適用することができる。好ましくは、混合は、90℃以下、より好ましくは、70℃以下の温度を有する破砕バイオマス混合物を提供する。
例えば、微生物バイオマスおよび粉砕剤は、混合機、例えば単軸スクリュー押出機もしくは2軸スクリュー押出機、撹拌機、単軸スクリューもしくは2軸スクリューニーダー、またはBanbury混合機中にフィードすることができ、添加工程は、1回における全ての成分の添加またはバッチでの漸次添加であり得る。
好ましくは、混合は、約0.04から0.4KW/(kg/hr)のSEI、次第に短くなるピッチ長を有するブッシュエレメントを使用する圧密帯域、および流動制限を使用する圧縮帯域を有する上記の2軸スクリュー押出機中で実施する。これらの条件下、最初の微生物バイオマスは全乾燥細胞であり得、含油微生物の少なくとも50%の破砕効率を有する破砕微生物バイオマスをもたらす細胞破砕のプロセスは、混合工程の開始時または混合工程の間に行うことができ、すなわち、細胞破砕および工程(1)を組み合わせ、同時として破砕バイオマス混合物を生成することができる。粉砕剤の存在は、細胞破砕を向上させるが、ほとんどの細胞破砕は、2軸スクリュー押出機自体の結果として生じる。
したがって、明確性のために、微生物バイオマスの細胞破砕は、例えば、上記の圧縮帯域を有する2軸スクリュー押出機中で粉砕剤の不存在下で実施することができ、次いで粉砕剤および破砕微生物バイオマスの混合を2軸スクリュー押出機または種々の他の混合機中で実施して破砕バイオマス混合物を提供する。または、微生物バイオマスの細胞破砕は、例えば、圧縮帯域を有する2軸スクリュー押出機中で粉砕剤の存在下で実施することができる。しかしながら、いずれの場合においても、細胞破砕(すなわち、破砕効率)は、後続のプロセス工程において含油微生物からの抽出油の収率の最大化を所望する場合、最大化すべきである。
次いで、少なくとも1つの結合剤を破砕バイオマス混合物とブレンドして固体ペレット(すなわち、ペレット化微生物バイオマス)を形成し得る固定可能な混合物を提供する。
本発明において有用な結合剤には、水溶性または水分散性の親水性有機材料および親水性無機材料が含まれる。好ましい水溶性結合剤は、23℃において少なくとも1重量パーセント、好ましくは、少なくとも2重量パーセント、より好ましくは、少なくとも5重量パーセントの水中溶解度を有する。
結合剤は、好ましくは、1x10−3モル分率未満;好ましくは、1x10−4未満、より好ましくは、1x10−5未満、最も好ましくは、1x10−6モル分率未満の500barおよび40℃における超臨界流体二酸化炭素中溶解度を有する。溶解度は、「Solubility in Supercritical Carbon Dioxide」,Ram Gupta and Jae−Jin Shim,Eds.,CRC(2007)開示されている方法に従って測定することができる。
結合剤は、ペレット化プロセスから形成されたペレットの整合性およびサイズを保持するように作用し、さらにペレットのさらなる加工および輸送において微粉を低減させるように作用する。
好適な有機結合剤には、0.5から1の置換度を有するアルカリ金属カルボキシメチルセルロース;好ましくは、1,000未満の平均分子量を有するポリエチレングリコールおよび/またはアルキルポリエトキシレート;リン酸化デンプン;セルロースおよびデンプンエーテル、例えばカルボキシメチルデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび対応するセルロース混合エーテル;ゼラチンおよびカゼインを含むタンパク質;トラガカント、アルギン酸ナトリウムおよびカリウム、グアムアラビア(guam Arabic)、タピオカ、マルトデキストロースおよびデキストリンを含む部分加水分解デンプン、水溶性デンプンを含む多糖;スクロース、転化糖、グルコースシロップおよび糖蜜を含む糖;ポリ(メタ)アクリレート、マレイン酸またはビニル基を含有する化合物とのアクリル酸のコポリマー、ポリビニルアルコール、部分加水分解ポリビニルアセテートならびにポリビニルピロリドンを含む合成水溶性ポリマーが含まれる。上記の化合物が遊離カルボキシル基を含有するものである場合、それらは通常、それらのアルカリ金属塩、より特定すると、それらのナトリウム塩の形態で存在する。
リン酸化デンプンは、デンプン無水グルコース単位のヒドロキシル基が−−O−−P(O)(OH)2基により置き換えられているデンプン誘導体またはその水溶性塩、より特定するとアルカリ金属塩、例えばナトリウムおよび/またはカリウム塩と理解される。デンプンの平均リン酸化度は、全てのサッカリド単位にわたり平均化されたデンプンのサッカリドモノマー当たりのリン酸基を担持するエステル化酸素原子の数と理解される。好ましいリン酸デンプンの平均リン酸化度は、1.5から2.5の範囲である。
本発明に関する部分加水分解デンプンは、慣用の例えば酸または酵素触媒プロセスを使用するデンプンの部分加水分解により得ることができる炭水化物のオリゴマーまたはポリマーと理解される。部分加水分解デンプンは、好ましくは、440から500,000の平均分子量を有する加水分解生成物である。0.5から40、より特定すると、2から30のデキストロース当量(DE)を有する多糖が好ましく、DEは、デキストロース(100のDEを有する、すなわちDE100)との比較による多糖の還元効果の標準的尺度である。マルトデキストリン(DE3〜20)および乾燥グルコースシロップ(DE20〜37)ならびにさらに約2,000から30,000の比較的高い平均分子量を有するいわゆる黄色デキストリンおよび白色デキストリンの両方をリン酸化後に使用することができる。
結合剤の好ましいクラスは、水ならびにスクロース、ラクトース、フルクトース、グルコース、および可溶性デンプンからなる群から選択される炭水化物である。好ましい結合剤は、少なくとも50℃、好ましくは、少なくとも80℃、より好ましくは、少なくとも100℃の融点を有する。
好適な無機結合剤には、ケイ酸ナトリウム、ベントナイト、および酸化マグネシウムが含まれる。
好ましい結合剤は、「食品グレード」または「一般に安全と認められる」(GRAS)とみなされる材料である。
結合剤は、固体ペレット中の(a)微生物バイオマス、(b)粉砕剤および(c)結合剤の構成成分の総和に対して約0.5から10重量パーセント、好ましくは、1から10重量パーセント、より好ましくは、約3から8重量パーセント存在する。
当業者が認識するとおり、固定可能な混合物は、容易な取扱(例えば、固定可能な混合物をダイ中に押出すること)を可能とするために最終固体ペレットの水分レベルよりも顕著に高い水分レベルを有する。したがって、例えば、スクロースおよび水の溶液を含む結合剤は、0.5から20重量パーセントの水を有する固定可能な混合物をもたらす様式で、破砕バイオマス混合物に添加することができる。しかしながら、固定可能な混合物を乾燥させて固体ペレットを形成するとき、固体ペレットの最終水分レベルは5重量パーセント未満の水であり、スクロースは10重量パーセント未満である。
少なくとも1つの結合剤を破砕バイオマス混合物とブレンドして固定可能な混合物を提供すること[工程(2)]は、結合剤の溶解および破砕バイオマス混合物とのブレンドを可能とする任意の方法により実施して固定可能な混合物を提供することができる。「固定可能な混合物」という用語は、混合物が乾燥工程における溶媒、例えば水の除去時に固体ペレットを形成し得ることを意味する。
結合剤は、種々の手段によりブレンドすることができる。1つの方法は、結合剤を溶媒中で溶解させて結合剤溶液を提供し、次いで結合剤溶液を、破砕バイオマス混合物中に制御速度において計量供給することを含む。好ましい溶媒は水であるが、他の溶媒、例えばエタノール、イソプロパノールなどを有利に使用することができる。別の方法は、結合剤を固体または溶液としてバイオマス/粉砕剤に混合工程の開始時またはその間に添加することを含み、すなわち工程(1)および(2)を組み合わせ、同時とする。結合剤を固体として添加する場合、好ましくは、ブレンド工程の間に結合剤を溶解させるために十分な水分が破砕バイオマス混合物中に存在する。好ましいブレンド方法は、結合剤溶液を、押出機中で、好ましくは、上記の圧縮帯域後に破砕バイオマス混合物中に制御速度において計量供給することを含む。圧縮帯域後の結合剤溶液の添加は、破砕バイオマス混合物の急速冷却を可能とする。
固定可能な混合物からペレット化微生物バイオマスを含む固体ペレットを形成すること[工程(3)]は、当技術分野において公知の種々の手段により実施することができる。1つの方法は、固定可能な混合物をダイ、例えばドーム粗砕機中に押出して均一直径のストランドを形成し、それを振動または流動床乾燥機上で乾燥させてストランドを破壊してペレットを提供することを含む。ペレット化微生物バイオマスは、下流の油抽出、輸送、または他の目的に好適である。
本明細書に開示される固体ペレットは、望ましくは、室温において非粘着性である。固体ペレットの大部分は、ペレット構造の分解なしで、一緒に結合することもなく何日間も一緒に充填することができる。ペレットの大部分は、望ましくは、自由流動するペレット化組成物である。好ましくは、ペレットは、約0.5から約1.5mmの平均直径および約2.0から約8.0mmの平均長さを有する。好ましくは、固体ペレットは、約0.1%から5.0%の最終水分レベルを有し、約0.5%から3.0%の範囲がより好ましい。最終固体ペレットの水分レベルの増加は、例えばカビの成長に起因する貯蔵の間の困難性をもたらし得る。
したがって、固体ペレットは、好ましくは、(a)約70から約98.5重量パーセントの、含油微生物を含む破砕バイオマス;(b)約1から約20重量パーセントの、吸油し得る粉砕剤;および(c)約0.5から10重量パーセントの結合剤を含み、重量パーセントは、固体ペレット中の(a)、(b)および(c)の総和に対する。固体ペレットは、75から98重量パーセントの(a);1から15重量パーセントの(b)および1から10重量パーセントの(c);を含み得、好ましくは、ペレットは、80から95重量パーセントの(a);2から12重量パーセントの(b)および3から8重量パーセントの(c)を含む。
上記ペレット化方法論は、有効で、高度にスケーラブルで堅牢でユーザフレンドリーある一方、比較的高い収率およびハイスループット速度における生成を可能とすることが証明された。慣用の技術、例えば噴霧乾燥、高剪断混合機などの使用を使用する細胞破砕は、例えば、キチンを含む酵母細胞壁には不適切であることが見出された。現行の湿潤媒体ミル破砕プロセスは、微粉およびコロイド状汚染物を生成し、さらなる分離工程を必要とし、顕著な油損失をもたらした。さらに、湿潤媒体ミル処理工程は、液体担体(例えば、イソヘキサンまたは水)を導入し、固液分離工程を要求することにより下流加工を複雑化し、油損失を伴った。本明細書に記載のペレット化プロセスは、破砕バイオマス混合物の生成に依拠し;しかしながら、有利には、破砕は、液体担体を要求せずに行う。さらに、固体ペレット内の粉砕剤の存在は、高レベルの油抽出を促進すると思われる。ペレットは抽出プロセス全体にわたり耐久性を保持するため、このことは操作性およびサイクル時間を支援する。
ペレット化微生物バイオマスは、溶媒により抽出して抽出油および抽出ペレット(すなわち、「残留バイオマス」または「残留ペレット」)を提供する。
油抽出は種々の有機溶媒(例えばヘキサン、イソヘキサン)による処理、酵素的抽出、浸透圧衝撃、超音波抽出、超臨界流体抽出(例えばCO2抽出)、鹸化およびそれらの方法の組合せを介して行うことができる。
一実施形態において、抽出は、有機溶媒により実施して抽出油を生成し、前記抽出油は、抽出油を蒸留する前記工程(c)前に脱ガム処理および場合により漂白する。より具体的には、粗製油をリン脂質ならびに他の極性および中性脂肪複合体の水または酸水和に続く油からの沈殿ガムの分離により脱ガム処理することができる。あるいは、リン脂質および他の水和可能な不純物は、油を極性溶媒、例えばアセトンと接触させることにより、または酵素的脱ガム処理を介して除去することができる。脱ガム処理油は、漂白クレー、シリカまたはカーボンを使用してさらに漂白して有色化合物および残留金属などを除去することができる。
代替的実施形態において、抽出は、超臨界条件を使用して行う。超臨界流体(SCF)は、気体と液体との中間の特性を示す。SCFの重要な特性は、温度もしくは圧力、またはそれらの組合せを変動させることにより流体密度が液体様から気体様密度に連続的に変動し得ることである。同様に、種々の密度依存性物理的特性は、この領域中で同様の連続的変動を示す。これらの特性の一部には、限定されるものではないが、溶媒強度(SCF媒体中の種々の物質の溶解度により証明される)、極性、粘度、拡散性、熱容量、熱伝導性、等温圧縮性、膨張性、収縮性、流動性、および分子充填が含まれる。SCFの密度変動は、溶質の化学ポテンシャル、ひいては反応速度および平衡定数にも影響する。したがって、SCF媒体中の溶媒環境は、種々の密度依存性流体特性を調整することにより規定の用途について最適化することができる。
系の温度および圧力が、臨界温度(Tc)および臨界圧力(Pc)により定義される対応する臨界点値を超過する場合、流体はSCF状態である。純粋な物質について、TcおよびPcは、蒸気および液相が共存し得る最高値である。Tcを超えると、印加される圧力にかかわらず純粋な物質について液体は形成しない。同様に、Pcおよび臨界モル容積は、蒸気および液相が融合する状態に対応するこのTcにおいて定義される。多成分混合物についてはより複雑になるが、混合物の臨界状態は、共存する蒸気および液相の特性が区別不能になる条件として同様に同定される。超臨界流体の考察については、Kirk−Othmer Encycl.of Chem.Technology,4thed.,Vol.23,pg.452−477,John Wiley & Sons,NY(1997)参照。
任意の好適なSCFまたは液体溶媒を、油抽出工程、例えば、固体ペレットを溶媒と接触させて微生物バイオマスから油を分離することにおいて使用することができ、それには、限定されるものではないが、CO2、テトラフルオロメタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、イソブテン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびそれらの混合物が含まれるが、全ての試薬および生成物に不活性であることを条件とする。好ましい溶媒には、CO2またはC3−C6アルカンが含まれる。より好ましい溶媒は、CO2、ペンタン、ブタン、およびプロパンである。最も好ましい溶媒は、CO2を含む超臨界流体溶媒である。
好ましい実施形態において、超臨界CO2抽出は、米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書に開示されるとおり実施する。この特定の方法論を適用することにより、ペレット化微生物バイオマスを超臨界油抽出条件に供する。リン脂質(PL)は、残留バイオマス(すなわち、抽出残留ペレット)内に残留する一方、得られる抽出物(すなわち、実質的にリン脂質を含まない脂質画分を含む抽出物)を少なくとも1回分別して中性脂肪および/または遊離脂肪酸(FFA)を含み得る一方、実質的にPLを含まないリファインド脂質組成物を含む抽出油を生成する。リファインド脂質組成物は、溶媒により処理されなかったペレット化微生物バイオマスの油組成物に対してTAG(好ましくは、PUFAを含む)を富化することができる。リファインド脂質組成物は、さらなる精製に付して精製油を生成することができる。
この方法において、CO2を含む超臨界流体は、追加の溶媒の存在または量がプロセスに有害でない限り、例えば、微生物バイオマス中に含有されるPLを一次抽出工程の間に可溶化させない限り、少なくとも1つの追加の溶媒(すなわち、共溶媒)、例えば、上記列挙の溶媒の1つ以上をさらに含み得る。しかしながら、極性共溶媒、例えばエタノール、メタノール、アセトンなどを添加して溶媒相に極性を故意に付与して、任意選択の二次油抽出の間に微生物バイオマスからのPLの抽出を可能としてPLを単離することができる。
含油破砕微生物バイオマスを含む固体ペレットは、少なくとも2つの方法に従って好適な抽出条件下で液体または超臨界CO2と接触させて抽出物および残留バイオマスを提供することができる。米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書の第1の方法によれば、ペレット化微生物バイオマスのCO2との接触を、溶媒密度の増加に対応する抽出条件下で、例えば増加圧力および/または温度減少下で複数回実施して脂質画分がPLを実質的に含まないリファインド脂質組成物を含む抽出物を得る。抽出物のリファインド脂質組成物は、FFA、モノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、およびTAGの分布がそれらの相対溶解度に従って変動し、それは複数の抽出のそれぞれの選択抽出条件に対応する溶媒密度に依存する。
あるいは、および本方法によれば、米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書の第2の方法において、ペレット化微生物バイオマスは、溶媒、例えばCO2と、PLを実質的に含まない脂質画分を含む抽出物を提供するために選択された抽出条件下で接触させ、続いて一連の複数の段階的圧力降下工程に付してリファインド脂質組成物を提供する。これらの段階的圧力降下工程のそれぞれは、分別機容器中で、溶媒密度の減少に対応する圧力および温度条件下において実施して液相リファインド脂質組成物を単離し、それを例えば簡単なデカンテーションにより抽出相から分離することができる。提供されるリファインド脂質組成物は、FFA、MAG、DAG、およびTAGの分布が、それらの相対溶解度に従って変動し、それは段階的分別機容器の選択条件に対応する溶媒密度に依存する。
上記第2の方法を使用して得られるリファインド脂質組成物を有する抽出油は、抽出条件が適切に適合する場合、第1の方法において得られる抽出物に対応し得る。したがって、第1の方法の実施を介して本明細書に記載のとおり得ることができるリファインド脂質組成物を例示することが可能と考えられる。
本方法によれば、含油破砕微生物バイオマスを含む固体ペレットは、溶媒、例えば液体またはSCF CO2と、PLを実質的に含まない脂質画分を含む抽出物を得るために十分な温度および圧力ならびに接触時間において接触させることができる。脂質画分は、中性脂肪(例えば、TAG、DAG、およびMAGを含む)およびFFAを含み得る。接触および分別温度は、液体またはSCF CO2を提供するように、PUFAの熱安定性の範囲内であるように、ならびにTAG、DAG、MAG、およびFFAを可溶化させるために十分なCO2の密度を提供するように選択することができる。一般に、接触および分別温度は、約20℃から約100℃、例えば約35℃から約100℃であり得;圧力は、約60barから約800bar、例えば約80barから約600barであり得る。十分な接触時間、および適切なCO2と微生物バイオマスとの比は、固体ペレットの特定の試料についての抽出曲線を作成することにより決定することができる。これらの抽出曲線は、温度、圧力、CO2流速、ならびに可変要素、例えば細胞破砕の程度および微生物バイオマスの形態の抽出条件に依存する。本方法の一実施形態において、溶媒は、液体または超臨界流体CO2を含み、CO2と微生物バイオマスとの質量比は、約20:1から約70:1、例えば約20:1から約50:1である。
次いで、実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物を分別して少なくとも1つのPUFAを含むリファインド脂質組成物を有する抽出油を得ることができ、リファインド脂質組成物は、溶媒により処理されていないペレット化微生物バイオマスの油組成物に対してTAGが富化されている。リファインド脂質組成物は、DAG、MAG、またはそれらの組合せをさらに含み得る。リファインド脂質組成物は、FFAをさらに含み得る。分別工程において別個にまたは組合せで得ることができる他のリファインド脂質組成物には、FFAが枯渇したTAG富化生成物、TAGが枯渇したFFA富化生成物、MAGおよび/またはDAGが富化されたFFA富化生成物、MAGおよび/またはDAGが枯渇したFFA富化生成物、MAGおよび/またはDAGが富化されたTAG富化生成物、ならびにMAGおよび/またはDAGが枯渇したTAG富化生成物が含まれる。用いられる分別条件によれば、本方法の一実施形態において、リファインド脂質組成物は、ペレット化微生物バイオマスの油組成物に対してFFAを枯渇させることができる。一実施形態において、リファインド脂質組成物は、ペレット化微生物バイオマスの油組成物に対して少なくとも1つのPUFAを富化させすることができる。一実施形態において、リファインド脂質組成物は、ペレット化微生物バイオマスの油組成物に対して20個以上の炭素原子を有する少なくとも1つのPUFAを富化させることができる。
分別は、分別条件の温度、圧力、または温度および圧力を変えることにより実施することができる。分別は、例えば、超臨界流体リッチ抽出物の連続減圧、一連のミキサーセトラー段階または抽出カラムにおける液体もしくはSCF溶媒抽出、短行程蒸留、真空蒸気ストリッピング、または溶融結晶化を含むいくつかの分離プロセスの1つにおいて実施することができる。抽出物を分別する工程は、1回以上繰り返して追加のリファインド脂質組成物を提供することができる。
例えば、抽出物の圧力の低減により、溶解溶質の溶解度を低下させ、それぞれの分離容器中で別個の液相が形成される。それぞれの分離容器にフィードされる抽出物の温度は、例えば、熱交換器の使用を介して調整してそれぞれの分離容器中で所望の溶媒密度および対応する溶質溶解度を提供することができる。初期抽出物は、類似の溶解度パラメーターを示す種々のタイプの脂質構成成分(例えば、FFA、MAG、DAG、およびTAG)の複合混合物からなるため、種々の構成成分の正確な分離が達成されるのではなく、分別工程において得られるそれぞれのリファインド脂質組成物は生成物の分布を含有する。しかしながら、一般に、より小さい溶解性の化合物は、最大圧力において稼働する第1の分離容器中で凝縮し、最大の溶解性の化合物は、最低圧力において稼働する最終分離容器中で凝縮する。最終分離容器は、抽出物相中の残留溶質のバルクを本質的に除去するために十分に抽出物相の圧力を低減させ、この容器の頂部からの比較的純粋なCO2流は、初期抽出容器に戻して再循環させることができる。
図2は、本明細書の抽出法の一実施形態を概略的に説明する。図2において、ペレット化微生物バイオマスを含む流10およびCO2を含む流38が容器14に流入することが示される。ペレット化微生物バイオマスを含む流12および流16は、容器18に流入することが示される。少なくとも1つのPUFAを含むペレット化微生物バイオマスのCO2との接触は、容器14中で初期温度T14および圧力P14において生じ、容器18中で温度T18および圧力P18において生じる。T14は、T18と同一でも異なってもよく;P14は、P18と同一でも異なってもよい。平衡化CO2および抽出物の得られる混合物は、容器14を流16として出て容器18に流入し、バイオマスおよびCO2のさらなる接触が生じて流20として示される実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物を提供する。残留バイオマス(図示せず)は、容器14および16中に残留する。所望により、追加の抽出容器をこのプロセスに含めることができる(図示せず)。あるいは、このプロセスは、所望により1つのみの抽出容器を使用し得る(図示せず)。2つ以上の抽出容器の使用は、有利であり得る。それというのも、これは、抽出容器(図示せず)への溶媒添加の相対順序を変化させることによりプロセスを介する連続CO2流を可能とし得るためであり、1つ以上の抽出容器をラインから離脱させ(図示せず)、例えばペレット化微生物バイオマスを装填し、または残留バイオマスを除去する。
抽出容器の下流において、並列に配置された2つの分離容器の容器22および28が示され、抽出物の分別を、段階的減圧を介して、場合により、例えば熱交換器(図示せず)の使用を介して温度を調整して実施する。所望により、追加の分離容器をこのプロセスに含めることができる(図示せず)。CO2および実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物が、容器22に流20として流入することが示される。容器22において、圧力P22はP18よりも低く、温度T22はT18と同一でも異なってもよく;プロセスの稼働条件下で、より小さい溶解性の脂質構成成分を含む別個の液相が形成される。抽出物の分別から得られる別個の液相は、容器22を流24として出ることが示され、それは第1のリファインド脂質組成物を表す。流26として示される残留抽出物は、次の分離容器28に導入し、圧力P28はP22と比較して低減させ、温度T28はT22と同一でも同一でなくてもよい。プロセスの稼働条件は、容器28中で別個の液相の形成を可能とし、それは流30として分離容器28を出ることが示される。流30は、第2のリファインド脂質組成物を表す。
容器28から、流32として示される比較的純粋なCO2を含む残留抽出物を、抽出容器14および/または別の抽出容器(図示せず)に再循環させることができる。CO2の再循環は、典型的には、ワンススルーCO2使用と比べて経済的利益を提供する。流34として示されるパージ流は、CO2のプロセスへの連続的再循環により構築され得る揮発構成成分を除去するために使用することができる。補給CO2は、パージを介して生じたCO2損失を相殺するために添加することができる。補給CO2は、流36に加わる補給プCO2流8により、図2に示される再循環CO2流に添加して組合せCO2流38を提供することができる。あるいは、追加のCO2を、別個のフィード流として容器14および/または容器18に添加することができる(図示せず)。
図3は、本発明の方法の抽出工程の一実施形態を概略的に説明する。図3において、CO2を含む流70を、ペレット化微生物バイオマス(図示せず)を含有する抽出容器76中に導入する。場合により、共溶媒(流72として示される)をCO2流にポンプ(図示せず)を使用して添加してCO2および共溶媒を含む組合せ流74を提供する。共溶媒を使用しない場合、流70および流74は同一であり、CO2のみを含有する。CO2の、少なくとも1つのPUFAを含むペレット化微生物バイオマスとの接触は容器76中で生じ、実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物を容器から流78としてCO2溶媒および場合により共溶媒とともに取り出す。残留バイオマス(図示せず)は、抽出容器中に残留する。次いで、実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物を、図2を参照して上記のとおり少なくとも1つの分離容器中で分別することができ、または場合により、実質的にPLを含まない脂質画分を抽出物からCO2および場合により共溶媒を排出することにより単離することができる(図示せず)。
上記一次抽出からの残留バイオマスは、PLを含む。この残留バイオマスを極性抽出溶媒、例えば極性有機溶媒、例えば塩化メチレンまたはCO2を含む混合溶媒および極性共溶媒、例えばアルコールにより2度目に抽出して中性脂肪を含まないPL画分を得ることができる。極性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、および/または2−プロパノールを含み得る。PLを含む残留バイオマスおよび抽出PL画分は、水産養殖飼料としての使用に好適であり得る。
本明細書に記載のCO2ベースの抽出プロセスは、慣用の有機溶媒ベースのプロセスに対していくつかの利点を提供する。例えば、CO2は、非毒性、非可燃性、環境に優しく、容易に入手可能であり、安価である。CO2(Tc=31.1℃)は、熱的に不安定な脂質を微生物バイオマスから比較的低い温度において抽出して油中の脂質分解を最小化し得る。抽出脂質は、有機溶媒をストリッピングさせるための熱処理を介してではなく、CO2を加圧抽出物から簡単に排出することによりCO2溶媒から単離することができる。リファインド脂質画分は、実質的にPLを含まない脂質画分を含む抽出物から単離することができる。PLを含有する残留微生物バイオマスは、例えば、水産養殖飼料のための販売可能な副産物である。PLは、残留微生物バイオマスから中性脂肪が枯渇した比較的純粋な副産物として抽出することができる。実質的にPLを含まない抽出中性脂肪画分は、分別して実質的にPLを含まない脂質画分に対してFFAおよびDAGが富化された(TAGが枯渇した)脂質画分ならびに実質的にPLを含まない脂質画分に対してTAGが富化された(FFAおよびDAGが枯渇した)リファインド脂質組成物を生成することができる。
蒸留工程は、短行程蒸留(SPD)蒸留器を介する抽出微生物油(例えば、リファインド脂質組成物)の少なくとも1回の通過を含む。市販のSPD蒸留器は、化学エンジニアリングの技術分野において周知である。好適な蒸留器は、例えば、Pope Scientific(Saukville,WI)から入手可能である。SPD蒸留器は、蒸発器および凝縮器を含む。典型的な蒸留は、蒸発器の温度、凝縮器の温度、蒸留器中への油のフィード速度および蒸発器の真空レベルにより制御する。
当業者が認識するとおり、SPD蒸留器を介する通過の数は、抽出油の水分のレベルに依存する。含水率が低ければ、SPD蒸留器を介する単一の通過で十分であり得る。
しかしながら、好ましくは、蒸留は、SPD蒸発器を介する抽出油(例えば、リファインド脂質組成物)の2回以上の連続通過を含む複数回通過プロセスである。第1の通過は、典型的には、約1から50torr圧、好ましくは、約5から30torr圧下で、蒸発器の比較的低い表面温度、例えば、約100から150℃で実施する。このことは、残留水および低分子量有機材料が蒸留されるため、脱水油をもたらす。次いで、脱水油を蒸発器のより高温およびより低圧において蒸留器を介して通過させてステロールが濃縮された蒸留物画分およびTAG含有画分(すなわち、脂質含有画分)を提供する。
一部の実施形態において、抽出油はSPD条件下での蒸留後に除去することができるステロール画分を含む。より具体的には、抽出油がステロール画分を含む場合、短行程蒸留条件下での少なくとも1回の蒸留は、ステロールを含む蒸留物画分および短行程蒸留に供されなかった抽出油中のステロールの量と比較して低減した量のステロールを含む脂質含有画分をもたらす。上記考察のとおり、ステロール画分は、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、β−シトステロールおよびデスモステロールからなる群から選択される1つ以上のステロールを含み得る。
TAG含有脂質画分の追加の通過は、蒸留器を介して行ってさらなるステロールを除去することができる。それぞれの追加の通過について、蒸留温度は、直前の蒸留の温度に対して増加させることができる。好ましくは、ステロール画分の量の低減が、ステロール含有微生物油のステロール画分と比較して少なくとも約40%〜70%、好ましくは、少なくとも約70%〜80%、より好ましくは、約80%超になるように十分な通過を実施する。
好ましくは、SPD条件は、30mTorr以下、好ましくは、5mTorr以下の真空レベルにおけるステロール含有微生物油(すなわち、リファインド脂質組成物)の少なくとも1回の通過を含む。好ましくは、SPD条件は、約220から300℃、好ましくは、約240から280℃における少なくとも1回の通過を含む。
したがって、例えば、一実施形態において、抽出油は、(i)少なくとも1つのPUFAを含み、(溶媒により処理されていないペレット化微生物バイオマスの油組成物に対して)TAGが富化され;(ii)少なくとも300mg/100gのステロール画分を含むリファインド脂質組成物である。SPD条件下で少なくとも1回蒸留に供した場合、蒸留は、ステロールを含む蒸留物画分およびSPDに供されなかったリファインド脂質組成物と比較して改善された澄明性を有する低減したステロール画分を有するTAGを含む脂質含有画分を生成する。改善された澄明性は、油の混濁性または不透明性の欠落を指す。ステロール含有微生物油は、約10℃未満の温度における貯蔵時に、低温における油中のステロールの低減した溶解度に起因して混濁する。蒸発プロセスは、得られる脂質含有画分が低減した量の存在するステロールを有し、したがって約10℃における貯蔵時に澄明なままであるか、または実質的に澄明であるようにステロール画分の実質的部分を除去するように作用する。油の澄明性を評価するために使用することができる試験法は、American Oil Chemists’Society(AOCS)Official Method Cc 11−53(“Cold Test”,Official Methods and Recommended Practices of the AOCS,6th ed.,Urbana,IL,AOCS,2009、参照により本明細書に組み込まれる)である。
驚くべきことに、蒸留プロセスにおけるステロールの除去は、PUFA、例えばEPAリッチの油の顕著な分解なしで達成することができる。油の分解は、PUFA含有率およびクロマトグラフィープロファイリング(以下実施例23に実証)に基づき評価することができる。
脂質含有画分の回収は、蒸発器を介する通過の完了後に画分を好適な容器に迂回させることにより達成することができる。
抽出微生物油またはその生成物(例えば、脂質含有画分)中の脂肪酸は、典型的には、生物学的形態、例えばトリグリセリドまたはリン脂質である。これらの形態の脂肪酸プロファイルを富化することは困難であるため、微生物油の個々の脂肪酸は、通常、当業者に周知の技術を使用するエステル交換により遊離させる。脂肪酸エステル混合物はエステル交換前の微生物油と実質的に同一の脂肪酸プロファイルを有するため、エステル交換プロセスの生成物は、依然として、典型的には、未濃縮微生物油(すなわち、エステル形態)とみなされる。
TFAの重量%として計測して30から70重量%の所望のPUFAを含む微生物油(微生物油は、油として乾燥細胞重量の25%を超過して蓄積する含油微生物から得られる)の富化は、油の重量%として計測して少なくとも70重量%の所望のPUFAを含む油濃縮物(すなわち、「油濃縮物」)をもたらす。具体的には、微生物油のエチルまたは他のエステルは、所望のPUFA(例えば、LA、EDA、GLA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHA)を富化することができ、当技術分野において一般に使用される方法、例えば:分留、尿素アダクト形成、短行程蒸留、向流カラムを用いる超臨界流体分別、超臨界流体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、酵素的分離および銀塩による処理、擬似移動床クロマトグラフィー、実移動床クロマトグラフィーならびにそれらの組合せにより分離することができる。
したがって、例えば、油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を作製する方法であって:
a)TFAの重量%として計測して30から70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まない本発明の脂質含有画分をエステル交換すること;および
b)工程(a)のエステル交換油を富化して油重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を得ること
含む方法が本明細書に開示される。
例えば、TFAの重量%として計測して58.2%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの未濃縮精製微生物油(すなわち、脂質含有画分)を、本明細書の実施例27に提供する。この脂質含有画分は、実施例28で尿素アダクト形成法を介して、得られるEPAエチルエステル(EPA−EE)濃縮物が油の重量%として計測して76.5%のEPA−EEを含み、実質的にDHAを含まないように富化する。同様に、実施例29は、液体クロマトグラフィーを介する同一脂質含有画分の富化を実証し、得られるEPA−EE濃縮物は、油の重量%として計測して82.8%または95.4%のEPA−EEを含み、実質的にDHAを含まない。実施例30は、超臨界流体クロマトグラフィーを介する同一脂質含有画分の富化を実証し、油の重量%として計測して85%または89.8%のEPA−EEを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物をもたらす。
TFAの重量%として計測して56.1%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの代替的な未濃縮SPD精製微生物油(すなわち、脂質含有画分)を、実施例31に提供する。実施例32におけるこの脂質含有画分の富化は、分留を介して行い、それにより油の重量%として計測して73%のEPA−EEを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を生成する。分留は、有利には、油中に存在する低分子量エチルエステル(すなわち、主に実施例32の脂質含有画分中のC18であるが、それに限定されるものではない)の多くを除去する。
TFAの重量%として計測して54.7%のEPAを含み、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まないヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの代替的な未濃縮SPD精製微生物油(すなわち、脂質含有画分)を、実施例34に提供する。この脂質含有画分の富化は、分留および液体クロマトグラフィーを介して行い、それにより油の重量%として計測して97.4%のEPA−EEを含み、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まないEPA濃縮物を生成する。当業者は、富化プロセス(例えば、分留、尿素アダクト形成、短行程蒸留、逆流カラムを用いる超臨界流体分別、超臨界流体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、酵素的分離および銀塩による処理、擬似移動床クロマトグラフィー、実移動床クロマトグラフィー)の他の組合せが本発明のEPA濃縮物を生成するために利用することができることを認識すべきである。
例えば、油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を作製することが特に有利であり得:前記方法は、(a)TFAの重量%として計測して30から70重量%のEPAを含む脂質含有画分のエステル交換反応;(b)低分子量エチルエステル、すなわち、C14、C16およびC18脂肪酸を含むものの多くの除去のための分留を含む第1の富化プロセス;ならびに(c)尿素アダクト形成、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、擬似移動床クロマトグラフィー、実移動床クロマトグラフィーならびにそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加の富化プロセスを含む。分留の結果としての油試料中の低濃度のC14、C16およびC18脂肪酸は、後続の富化プロセスを促進し得る。
当業者により認識されるとおり、エチルエステル形態の上記のEPA濃縮物のいずれも、所望により他の形態、例えば、メチルエステル、酸もしくはトリアシルグリセリドなど、もしくは任意の他の好適な形態またはその組合せに容易に変換することができる。PUFAのある誘導体から別の誘導体への化学的変換の手段は、周知である。例えば、トリグリセリドは、鹸化により開裂酸のナトリウム塩に、さらに酸性化により遊離脂肪酸に変換することができ、エチルエステルは、グリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化することができる。したがって、EPA濃縮物は最初にエチルエステルの形態であることが予期される一方、これは決して限定されるものではない。したがって、EPA濃縮物内の油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAは、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、エステル、およびそれらの組合せの形態のEPAを指し、エステルは、最も好ましくは、エチルエステルの形態である。
当業者は、所望のPUFA濃縮物が油の重量%として計測して少なくとも70重量%の所望のPUFAを有するように、任意の好ましいレベルの脂質含有画分のPUFA富化をもたらすように処理条件を最適化することができることを認識する(しかし、増加したPUFA純度は、PUFA収率に反比例することが多い)。したがって、当業者は、所望のPUFAの重量%が70%から100%まで(100%を含む)の任意の整数割合(またはその分数)、すなわち、具体的には、油の重量%として計測して70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%の所望のPUFAであり得ることを認識する。
より具体的には、本発明の一実施形態において、油の重量%として計測して少なくとも80重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物が提供される。別の実施形態において、油の重量%として計測して少なくとも90重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物が提供される。さらに別の実施形態において、油の重量%として計測して少なくとも95重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物が提供される。
好ましい実施形態において、油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まない上記EPA濃縮物は、実質的にNDPAを含まず、実質的にHPAを含まないとさらに特性決定することができる。
任意の特定の用途に限定されるものではないが、本発明のPUFA濃縮物は、医薬としての使用に特に十分に好適である。当業者に周知のとおり、PUFAは、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、飲料中で分散させることができる散剤、または別の固体経口剤形、液体(例えば、シロップ剤)、軟ゲルカプセル剤、コート軟ゲルカプセル剤または他の慣用の剤形、例えばカプセル剤中の経口液体中で投与することができる。カプセル剤は、硬シェル化または軟シェル化のものであり得、ゼラチンまたは獣医源のものであり得る。PUFAは、注射または注入に好適な液体中に含有させることもできる。
さらに、PUFAは、1つ以上の非活性医薬成分(本明細書において一般に「賦形剤」としても公知)の組合せにより投与することもできる。非活性成分は、例えば、活性成分を安全で簡便、他の点では使用に許容可能な適用可能および有効な製剤に可溶化、懸濁、増粘、希釈、乳化、安定化、保存、保護、着色、フレーバリング、および適合させるように機能する。
賦形剤には、限定されるものではないが、界面活性剤、例えばプロピレングリコールモノカプリレート、グリセロールおよび長鎖脂肪酸のポリエチレングリコールエステルの混合物、ポリエトキシ化ヒマシ油、グリセロールエステル、オレオイルマクロゴールグリセリド、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、共溶媒、例えばエタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール、ならびに油、例えばヤシ油、オリーブ油またはベニバナ油が含まれ得る。界面活性剤、共溶媒、油またはそれらの組合せの使用は、一般に、医薬分野において公知であり、当業者に理解されるとおりであるため、任意の好適な界面活性剤を本発明およびその実施形態と同時に使用することができる。
組成物の用量濃度、用量スケジュールおよび投与期間は、意図される作用の発現に十分であるべきであり、例えば、剤形、投与経路、症状の重症度、体重、年齢などに応じて適切に調整することができる。組成物は、経口投与する場合、1日当たり3つの分割用量で投与することができるが、組成物は、代替的に、単回用量またはいくつかの分割用量で投与することができる。
少なくとも1つのPUFA、例えばEPA(またはその誘導体)を含む抽出油組成物は、周知の臨床および薬学的価値を有する。例えば、米国特許出願公開第2009−0093543A1号明細書参照。例えば、PUFAを含む脂質組成物を、静脈内栄養補給を受ける患者のために、または栄養失調を防止もしくは治療するために食事代用品または補助品、特に特殊調製粉乳として使用することができる。あるいは、精製PUFA(またはその誘導体)を、通常使用において受容者が食事補給について所望量を受容するように配合された食用油、脂肪またはマーガリン中に取り込むことができる。PUFAは、特殊調製粉乳、栄養補助品または他の食品中にも取り込むことができ、抗炎症またはコレステロール低下剤として使用することができる。場合により、組成物は、ヒトまたは動物のいずれかの薬学的使用に使用することができる。
ヒトまたは動物のPUFAの補給は、添加PUFA、およびそれらの代謝結果のレベルの増加をもたらし得る。例えば、EPAによる治療は、EPAのレベルの増加だけでなく、EPAの下流生成物、例えばエイコサノイド(すなわち、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン)、DPAn−3およびDHAのレベルの増加ももたらし得る。複雑な調節機序は、種々のPUFAを組み合わせ、またはPUFAの異なるコンジュゲートを添加してそのような機序を防止、制御または克服して個体における所望レベルの規定のPUFAを達成することを望ましくし得る。
あるいは、PUFA、またはその誘導体は、動物および水産飼料、例えば乾燥飼料、半湿潤および湿潤飼料の合成において利用することができる。それというのも、これらの配合物は、一般に、栄養組成物の少なくとも1〜2%がω−3および/またはω−6PUFAであることを要求するためである。
本発明を以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証としてのみ挙げられるものと理解すべきである。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確認してその趣旨および範囲を逸脱することなく本発明の種々の変更および改変を行い、それを種々の使用および条件に適応させることができる。
以下の略語が使用される:
「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーであり、「ASTM」は、American Society for Testing And Materialsであり、「C」は摂氏であり、「kPa」はキロパスカルであり、「mm」はミリメートルであり、「μm」はマイクロメートルであり、「μL」はマイクロリットルであり、「mL」はミリリットルであり、「L」はリットルであり、「min」は分であり、「mM」はミリモル濃度であり、「mTorr」はミリTorrであり、「cm」はセンチメートルであり、「g」はグラムであり、「wt」は重量であり、「h」または「hr」は時間であり、「temp」または「T」は温度であり、「SS」はステンレス鋼であり、「in」はインチであり、「i.d.」は内径であり、「o.d.」は外径である。
材料
バイオマス調製
PUFAを含む種々の量の微生物油を生成するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)酵母の株について、下述する。バイオマスは2段階流加発酵プロセスで得、次いで下記のとおり下流加工に供した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株:ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株の作製は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載されている。Y・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来するY8672株は、δ−9エロンガーゼ/δ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、総脂質に対して約61.8%のEPAを生成し得た。
野性型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対するY8672株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::ACO、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9ES/EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Aco、およびYAT1::MCS::Lip1であった。
上記発現カセットの構造は、簡易表記体系「X::Y::Z」により表され、Xはプロモーター断片を記載し、Yは遺伝子断片を記載し、Zはターミネーター断片を記載し、それらは全て互いに作動的に連結する。略称は、以下のとおりである:FmD12は、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)δ−12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;FmD12Sは、F.モニリフォルメ(F.moniliforme)[米国特許第7,504,259号明細書]に由来するコドン最適化δ−12デサチュラーゼ遺伝子であり;ME3Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,470,532号明細書]に由来するコドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子であり;EgD9eは、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)δ−9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSは、E.グラシリス(E.gracilis)[米国特許第7,645,604号明細書]に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子であり;EgD8Mは、E.グラシリス(E.gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成突然変異体δ−8デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,709,239号明細書]であり;EaD8Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena Anabaena)[米国特許第7,790,156号明細書]に由来するコドン最適化δ−8デサチュラーゼ遺伝子であり;E389D9eS/EgD8Mは、ユートレプチエラ(Eutreptiella)種CCMP389 δ−9エロンガーゼ(米国特許第7,645,604号明細書)に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子(「E389D9eS」)と、δ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;EgD9ES/EgD8Mは、δ−9エロンガーゼ「EgD9eS」(前出)とδ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;EgD5MおよびEgD5SMは、E.グラシリス(E.gracilis)[米国特許第7,678,560号明細書]に由来する合成突然変異体δ−5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;EaD5SMは、E.アナベナ(E.Anabaena)[米国特許第7,943,365号明細書]に由来する合成突然変異体δ−5デサチュラーゼ遺伝子であり[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書];PaD17は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)δ−17デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,556,949号明細書]であり;PaD17Sは、P.アファニデルマタム(P.aphanidermatum)[米国特許第7,556,949号明細書]に由来するコドン最適化δ−17デサチュラーゼ遺伝子であり;YlCPT1は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,932,077号明細書]であり;MCSは、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)bv.viciae 3841[米国特許出願公開第2010−0159558−A1号明細書]に由来するコドン最適化マロニル−CoAシンセターゼ遺伝子である。
Y8672株の総脂質含有率および組成の詳述な分析のために、細胞を2段階で合計7日間成長させるフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y8672株は3.3g/Lの乾燥細胞重量[「DCW」]を生成し、細胞の総脂質含有率は26.5[「TFA%DCW」]であり、乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]は16.4であり、それぞれの脂肪酸濃度をTFAの重量パーセント[「%TFA」]とする脂質プロファイルは以下のとおりであった:16:0(パルミテート)は2.3、16:1(パルミトレイン酸)は0.4、18:0(ステアリン酸)は2.0、18:1(オレイン酸)は4.0、18:2(LA)は16.1、ALAは1.4、EDAは1.8、DGLAは1.6、ARAは0.7、ETrAは0.4、ETAは1.1、EPAは61.8、その他は6.4。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株の作製は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載されている。Y・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来するY9502株は、δ−9エロンガーゼ/δ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、総脂質に対して約57.0%のEPAを生成し得た。
野生型Y・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に対するY9502株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、unknown9−、unknown10−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YICPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16であった。
上記定義されていない略語は、以下のとおり:EaD9eS/EgD8Mは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)δ−9エロンガーゼ[米国特許第7,794,701号明細書]に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子(「EaD9eS」)とδ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;MaLPAAT1Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)米国特許第7,879,591号明細書]に由来するコドン最適化リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子である。
Y9502株の総脂質含有率および組成の詳述な分析のために、細胞を2段階で合計7日間成長させるフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y9502株は3.8g/Lの乾燥細胞重量[「DCW」]を生成し、細胞の総脂質含有率は37.1[「TFA%DCW」]であり、乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]は21.3であり、それぞれの脂肪酸濃度をTFAの重量パーセント[「%TFA」]とする脂質プロファイルは以下のとおりであった:16:0(パルミテート)は2.5、16:1(パルミトレイン酸)は0.5、18:0(ステアリン酸)は2.9、18:1(オレイン酸)は5.0、18:2(LA)は12.7、ALAは0.9、EDAは3.5、DGLAは3.3、ARAは0.8、ETrAは0.7、ETAは2.4、EPAは57.0、その他は7.5。
Y・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来し、δ−9エロンガーゼ/δ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、28〜32%の総脂質含有率[「TFA%DCW」]を有する総脂質に対して約50〜52%のEPAを生成し得るヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305F1B1株の作製は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011−0059204−A1号明細書に記載されている。具体的には、Y4305F1B1株は、開示が全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008−0254191号明細書の一般的方法(General Methods)において既に記載されているY・リポリティカ(Y.lipolytica)Y4305株に由来する。
野生型Y・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に対するY4305株の最終遺伝子型は、SCP2−(YALI0E01298g)、YALI0C18711g−、Pex10−、YALI0F24167g−、unknown1−、unknown3−、unknown8−、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCT、GPM/FBAIN::FmD12S::OCT、EXP1::FmD12S::Aco、YAT1::FmD12S::Lip2、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::ME3S::Pex20(3コピー)、GPAT::EgD9e::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、FBA::EgD9eS::Pex20、GPD::EgD9eS::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、YAT1::E389D9eS::OCT、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1(2コピー)、EXP1::EgD8M::Pex16、GPDIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5::Aco、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::EgD5S::Aco、EXP1::EgD5S::ACO、YAT1::RD5S::OCT、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、YAT1::YlCPT1::ACO、GPD::YlCPT1::ACOであった。
上記定義されていない略語は、以下のとおり:EgD5は、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)δ−5デサチュラーゼであり[米国特許第7,678,560号明細書];EgD5Sは、E.グラシリス(E.gracilis)[米国特許第7,678,560号明細書]に由来するコドン最適化δ−5デサチュラーゼ遺伝子であり;RD5Sは、ペリジニウム種(Peridinium sp.)CCMP626[米国特許第7,695,950号明細書]に由来するコドン最適化δ−5デサチュラーゼである。
Y4305細胞の総脂質含有率は27.5[「TFA%DCW」]であり、脂質プロファイルは以下のとおりであり、それぞれの脂肪酸の濃度はTFAの重量パーセント[「%TFA」]としてである:16:0(パルミテート)は2.8、16:1(パルミトレイン酸)は0.7であり、18:0(ステアリン酸)は1.3、18:1(オレイン酸)は4.9、18:2(LA)は17.6、ALAは2.3、EDAは3.4、DGLAは2.0、ARAは0.6、ETAは1.7、EPAは53.2である。
Y4305株を、スルホニル尿素[「SUR」]耐性に基づくY・リポリティカ(Y.lipolytica)についての優勢非抗生物質マーカーを用いる形質転換に供した。より具体的には、マーカー遺伝子は、スルホニル尿素除草剤耐性を付与する単一アミノ酸変化、すなわち、W497Lを有する天然アセトヒドロキシ酸シンターゼ(「AHAS」またはアセトラクテートシンターゼ;E.C.4.1.3.18)である(国際公開第2006/052870号パンフレットの配列番号292)。米国特許出願公開第2011−0059204−A1号明細書に記載のとおり、SUR遺伝子マーカーのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia)Y4305株中へのランダム統合を使用して、親Y4305株に対して油性条件下で成長させた場合に増加した脂質含有率を有する細胞を同定した。
2リットル発酵条件下で評価した場合、Y4305株についての平均EPA生成率[「EPA%DCW」]は、突然変異体SUR Y4305−F1B1株についての50〜52と比較して50〜56であった。Y4305株についての平均脂質含有率[「TFA%DCW」]は、Y4305−F1B1株についての28〜32と比較して20から25であった。したがって、脂質含有率は、EPA生成率に対する最小の影響でY4503−F1B1株について29〜38%増加した。
発酵:振とうフラスコ中で、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の凍結培養物から接種材料を調製した。インキュベーション期間後、培養物を使用して種発酵槽に接種した。種培養物が適切な標的細胞密度に達したとき、次いでそれを使用してより大きな発酵槽に接種した。発酵は、2段階流加法である。第1の段階において、高細胞密度への急速成長を促進する条件下で酵母を培養し;培養培地は、グルコース、種々の窒素源、微量金属、およびビタミンを含むものであった。第2の段階において、酵母を窒素飢餓状態にし、グルコースを連続的にフィードして脂質およびPUFAの蓄積を促進した。標準操作条件につき温度(30〜32℃に制御)、pH(5〜7に制御)、溶解酸素濃度およびグルコース濃度を含むプロセス可変要素をモニタリングおよび制御して一貫したプロセス性能および最終PUFA油の品質を確保した。
発酵当業者は、発酵ラン自体、培地条件、プロセスパラメーター、スケールアップなど、ならびに培養物をサンプリングする特定の時点に応じて規定のヤロウィア(Yarrowia)株の油プロファイルに変動が起きることを把握する(例えば米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書参照)。
下流加工:加工前に抗酸化剤を発酵ブロスに場合により添加して、EPA油の酸化安定性を確保した。酵母バイオマスを脱水し、洗浄して塩と残留培地を除去し、リパーゼ活性を最小化した。次いで、ドラム乾燥(典型的に80psigの蒸気による)または噴霧乾燥のいずれかを実施して水分レベルを5%未満に低減させ、短期貯蔵および輸送の間の油安定性を確保した。約10から100ミクロンの範囲の粒子サイズ分布を有するドラム乾燥フレーク、または噴霧乾燥粉末を、以下の比較例および実施例において最初の「含油微生物を含む微生物バイオマス」として使用した。
粉砕剤:Celite 209珪藻土は、Celite Corporation,Lompoc,CAから入手可能である。Celatom MN−4珪藻土は、EP Minerals,An Eagle Pitcher Company,Reno,NVから入手可能である。
他の材料:全ての市販の試薬はそのまま使用した。使用された全ての溶媒は、HPLCグレードであった。塩化アセチルは、99+%であった。TLCプレートおよび溶媒は、VWR(West Chester,PA)から入手した。HPLCまたはSCFグレード二酸化炭素は、MG Industries(Malvern,PA)から入手した。
2軸スクリュー押出法
粉砕剤を用いる乾燥酵母バイオマスの破砕および破砕バイオマス混合物の調製において、2軸スクリュー押出を使用した。
乾燥酵母を押出機、好ましくは、下記稼働を達成するために好適な長さ、通常21〜39L/Dを有する2軸スクリュー押出機中にフィードする。押出機の第1の区画を使用して材料をフィードおよび輸送する。第2の区画は、次第に短くなるピッチ長を有するブッシュエレメントを使用してフィードを圧密および圧縮するように設計された圧密帯域である。圧密帯域後、細胞破砕に要求される機械的エネルギーのほとんどを付与するために機能する圧縮帯域が続く。この帯域は、リバーススクリューエレメント、制限/ブリスターリングエレメントまたはニーディングエレメントの形態のいずれかの流動制限を使用して作出される。破砕バイオマスを調製するとき、粉砕剤(例えば、珪藻土)を典型的には微生物バイオマスフィードと、両方が圧縮/圧密帯域を通るように同時にフィードし、こうして破砕レベルを向上させる。圧縮帯域後、結合剤(例えば、水/スクロース溶液)を液体注入ポートを介して添加し、混合エレメントの種々の組合せからなる後続の混合区画中で混合する。最終混合物(すなわち、「固定可能な混合物」)は、端部において開口する最終バレルを介して排出し、こうして押出機中の背圧をほとんど生じさせないかまたは生じさせない。次いで、固定可能な混合物をドーム粗砕機および振動または流動床乾燥機のいずれかにフィードする。これは、下流の油抽出に好適なペレット化材料(すなわち、固体ペレット)をもたらす。
CO2によるSCF抽出
乾燥および機械的に破砕された酵母細胞を、一般に、グラスウールのプラグで充填された抽出容器に装填し、CO2によりフラッシュし、次いでCO2流下で所望の稼働条件に加熱および加圧した。CO2を、排出管を備えた市販のシリンダから直接フィードし、高圧ポンプにより計量供給した。圧力は、容器の流出側上の制流子の使用を介して抽出容器上で維持し、油試料は、試料容器中で回収する一方、同時にCO2溶媒を大気に排出する。共溶媒(例えば、エタノール)は、共溶媒ポンプ(Iscoモデル100Dシリンジポンプ)の使用を介して抽出容器にフィードされた抽出溶媒に場合により添加することができる。
特に記載のない限り、下記の実施例における酵母試料の超臨界CO2抽出は、特注高圧抽出装置(図1)中で実施した。一般に、乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(自由流動する、またはペレット化されたもの)を、グラスウールのプラグで充填された抽出容器(1)に装填し、CO2によりフラッシュし、次いでCO2流下で所望の稼働条件に加熱および加圧した。89ml抽出容器は、316SS管(2.54cmのo.d.x1.93cmのi.d.x30.5cmの長さ)から製作し、容器の流出端部上に2ミクロン焼結金属フィルターを備えた。抽出容器を、自動化温度制御装置により制御される4つのcalrod加熱カートリッジを備える特注機械加工アルミニウムブロックの内側に設置した。排出管を備える市販のシリンダー(2)からCO2を液体として直接フィードし、冷蔵ヘッドアセンブリ(JascoモデルPU−1580−CO2)を備える高圧容積式ポンプ(3)により計量供給した。抽出圧力は、容器の流出側上で流動制限を提供する自動背圧調節装置(4)(JascoモデルBP−1580−81)により維持し、抽出油試料を試料容器中で回収する一方、同時にCO2溶媒を大気に発散させた。
報告される酵母試料からの油抽出収率は、抽出の間の試料からの質量損失を計測することにより重量測定した。したがって、報告される抽出油は、微生物油および固体ペレットに伴う水分を含む。
実施例
比較例C1、C2A、C2B、実施例1、実施例2ならびに比較例C3およびC4:ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のドラム乾燥フレークからの破砕バイオマス混合物を作出するための手段の比較
比較例C1、C2A、C2B、C3およびC4ならびに実施例1および2は、酵母(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)のドラム乾燥フレークの破砕を最適化するために実施された一連の比較試験を記載する。具体的には、粉砕剤を添加するかまたは添加しないハンマーミル処理を試験し、単軸スクリューまたは2軸スクリュー押出機のいずれかを使用した。結果を総遊離微生物油および微生物細胞の破砕効率、ならびに総抽出収率(超臨界CO2抽出に基づく)に基づき比較する。
比較例C1:
粉砕剤を用いないハンマーミル処理酵母粉末
24.2%の総油(乾燥重量)を含有する酵母(Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株)バイオマスのドラム乾燥フレークを、周囲温度においてジャンプギャップ(jump gap)分別機を16000rpmにおいて使用して3つのハンマーによりハンマーミル処理(12Kg/hのフィード速度におけるMikropul Bantamミル)してミル処理粉末を提供した。ミル処理粉末の粒子サイズは、フラウンホーファーレーザー回折を使用して水中で懸濁させて分析してd10=3μm;d50=16μmおよびd90=108μmであった。
比較例C2A:
粉砕剤および空気ミル混合を用いるハンマーミル処理酵母粉末
比較例C1により提供されたハンマーミル処理酵母粉末(833g)を、空気(ジェット)ミル(Fluid Energy Jet−o−mizer 0101、6Kg/hのフィード速度)中でCelite 209珪藻土(167g)と周囲温度において約20分間混合した。
比較例C2B:
粉砕剤および手動混合を用いるハンマーミル処理酵母粉末
比較例C1により提供されたハンマーミル処理酵母粉末(833g)を、プラスチックバッグ中でCelite 209珪藻土(167g)と手動で混合した。
実施例1:
粉砕剤、手動混合、および単軸スクリュー押出機を用いるハンマーミル処理酵母粉末
比較例C2Bからの珪藻土を有するハンマーミル処理酵母粉末(1000g)を、17.6重量%のスクロース水溶液(291.6gの水中62.5gのスクロース)とHobart混合機中で約2.5分間混合し、次いで1mmの開口部を有する単軸スクリュードーム粗砕機に通して押出した(50〜200psi、550in−lbsを超過しないトルク;40℃以下の押出物温度)。押出物を流動床乾燥機中で、65℃に制御された流動空気を使用して50℃の床温度に乾燥させて、約14分後に3.9%の残留水を有する非粘着ペレット(815g、2から8mmの長さおよび約1mm直径の寸法を有する)を提供した。
実施例2:
粉砕剤、空気ミル混合、および単軸スクリュー押出機を用いるハンマーミル酵母処理粉末
比較例C2Aからの珪藻土を有するハンマーミル酵母粉末(1000g)を実施例1に従って加工して、約10分後に6.9%の残留水を有するペレット(855g、2から8mmの長さおよび約1mm直径の寸法を有する)を提供した。
比較例C3:
粉砕剤を用いず、2軸スクリュー押出機を用いるハンマーミル処理酵母粉末
比較例C1から提供されたハンマーミル処理酵母粉末を、10kWのモーターおよび高トルクシャフトにより150rpmおよび66〜68の%トルク範囲において稼働する18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC,Stuttgart,Germany)に2.3kg/hrにおいてフィードして最終水冷バレル中で26℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
比較例C4:
粉砕剤を用いず、2軸スクリュー押出機を用いる酵母粉末
24.2%の総油を含有する酵母(Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株)バイオマスのドラム乾燥フレークを、10kWのモーターおよび高トルクシャフトにより150rpmおよび71〜73の%トルク範囲において稼働する18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に2.3kg/hrにおいてフィードして最終水冷バレル中で23℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
破砕酵母粉末における遊離微生物油および破砕効率の比較
遊離微生物油および破砕効率は、実施例1および2、ならびに比較例C1〜C4の破砕酵母粉末において以下の方法に従って測定した。具体的には、押出バイオマス試料の遊離油および総油含有率は、Troeng(J.Amer.Oil Chemists Soc.,32:124−126(1955))により報告された方法の改変バージョンを使用して測定した。この方法において、押出バイオマスの試料を、計測容積のヘキサンを有するステンレス鋼遠心分離管中に秤量した。総油を測定すべき場合、いくつかのクロム鋼ボールベアリングを添加した。遊離油を測定すべき場合、ボールベアリングは使用しなかった。次いで、管にキャップし、シェーカー上に2時間装入した。振とうさせた試料を遠心分離し、上清を回収し、容積を計測した。一定の重量が得られるまで、ヘキサンを上清から、最初に回転フィルム蒸発により、次いで乾燥窒素流下での蒸発により蒸発させた。次いで、この重量を使用して元の試料中の遊離または総油の割合を計算した。油含有率は、試料の含水率の計測によりパーセント乾燥重量基準で表現し、適宜補正する。
パーセント破砕効率(すなわち、加工の間に破断した細胞壁のパーセント)は、光学的可視化により定量した。
表7は、実施例1および2、ならびに比較例C1〜C4についての酵母細胞破砕効率データをまとめ、以下のことを表す:
比較例C1は、粉砕剤の不存在下でのハンマーミル処理が酵母細胞の33%の破砕をもたらすことを示す。
比較例C2Aは、粉砕剤の存在下でのハンマーミル処理酵母の空気ジェットミル処理が、酵母細胞の破砕を62%に増加させることを示す。
実施例1は、粉砕剤の存在下でのHobart単軸スクリュー混合機中でのハンマーミル処理酵母(比較例C1からのもの)のさらなる混合が、酵母細胞の破砕を38%に増加させることを示す。
実施例2は、Hobart単軸スクリュー混合機中での空気ミル処理およびハンマーミル処理酵母と粉砕剤(比較例C2Aからのもの)とのさらなる混合が、酵母細胞の破砕を57%に増加させることを示す。
比較例C3およびC4は、粉砕剤の不存在下、ハンマーミル処理を用いるかまたは用いない場合(それぞれ)、圧縮帯域を有する2軸スクリュー押出を使用すると、酵母細胞破砕は80%超であったことを示す。
SCF抽出
抽出容器に、約25g(酵母基準)の比較例C1、C2AおよびC4の破砕酵母バイオマスをそれぞれ装填した。酵母をCO2によりフラッシュし、次いで約40℃に加熱し、約311barに加圧した。酵母をこれらの条件において4.3g/minのCO2の流速において約6.7hr抽出し、約75gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード(S/F)比を得た。抽出収率を以下の表に報告する。
データは、より高い細胞破砕は、粗製抽出油の重量パーセントとして計測された顕著に高い抽出収率をもたらすことを示す。
比較例C5A、C5B、C5C、C6A、C6BおよびC6C:
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から破砕バイオマス混合物を作出するための手段の比較
比較例C5A、C5B、C5C、C6A、C6BおよびC6Cは、破砕酵母粉末を調製するために実施された一連の比較試験を記載し、最初の微生物バイオマスは、2軸スクリュー押出機中で粉砕剤と混合したかまたは混合しない酵母のドラム乾燥フレークまたは噴霧乾燥粉末であった。
比較例C5A、C5B、C5C、C6A、C6BおよびC6Cのそれぞれにおいて、最初の酵母バイオマスは、2.8%の水分レベルを有し、約36%の総油を含有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株からのものであった。乾燥酵母フレークまたは粉末(粉砕剤を有するかまたは有さない)を、10kWのモーターおよび高トルクシャフトにより150rpmにおいて稼働する18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)にフィードした。得られた破砕酵母粉末を最終水冷バレル中で冷却した。
次いで、比較例C5A、C5B、C5C、C6A、C6BおよびC6Cにおいて調製された破砕酵母粉末を超臨界CO2抽出に供し、総抽出収率を比較した。
比較例C5A:
粉砕剤を用いないドラム乾燥酵母フレーク
酵母バイオマスのドラム乾燥フレークを、34〜35の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に2.3kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を27℃に冷却した。
比較例C5B:
粉砕剤を用いるドラム乾燥酵母フレーク
92.5部の酵母バイオマスのドラム乾燥フレークを、7.5部のCelite 209珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、44〜47の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に2.3kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を29℃に冷却した。
比較例C5C:
粉砕剤を用いるドラム乾燥酵母フレーク
85部の酵母バイオマスのドラム乾燥フレークを、15部のCelite 209珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、48〜51の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に2.3kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を29℃に冷却した。
比較例C6A:
粉砕剤を用いない噴霧乾燥酵母粉末
酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末を、33〜34の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に1.8kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を26℃に冷却した。
比較例C6B:
粉砕剤を用いる噴霧乾燥酵母粉末
92.5部の酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末を、7.5部のCelite 209珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、37〜38の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に1.8kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を26℃に冷却した。
比較例C6C:
粉砕剤を用いる噴霧乾燥酵母粉末
85部の酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末を、15部の珪藻土(Celite 209)とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、38〜39の%トルク範囲により稼働する2軸スクリュー押出機に1.8kg/hrにおいてフィードした。破砕酵母粉末を27℃に冷却した。
SCF抽出
抽出容器に、11.7g(酵母基準)の比較例C5A、C5B、C5C、C6A、C6BおよびC6Cの破砕酵母バイオマスをそれぞれ装填した。酵母をCO2によりフラッシュし、次いで約40℃に加熱し、約311barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において4.3g/minのCO2の流速において約3.2hr抽出し、約75gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード(S/F)比を得た。種々の配合物についての抽出収率を表9に報告する。
データは、粉砕剤としての珪藻土を有する試料(すなわち、比較例C5B、C5C、C6BおよびC6C)が、珪藻土が存在しない場合(すなわち、比較例C5AおよびC6A)よりも高い抽出収率をもたらすことを示す。
実施例3、4、5、6、7、8、9および10
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から固体ペレットを作出するための手段の比較
実施例3〜10は、酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末またはドラム乾燥フレークを、粉砕剤および結合剤と混合して破砕微生物バイオマスを含む固体ペレットを提供するために実施された一連の比較試験を記載する。
実施例3〜10のそれぞれにおいて、最初の酵母バイオマスは、2.8%の水分レベルを有し、約36%の総油を含有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株からのものであった。約1mm直径×2〜8mm長さの固体ペレットの調製後、ペレットを超臨界CO2抽出に供し、総抽出収率を比較した。固体ペレットの機械的圧縮特性および耐摩耗性も分析した。
実施例3:
85部の酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末を、15部のCelatom MN−4珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に2.3kg/hrにおいてフィードした。乾燥フィードとともに、14部の水および5.1部の糖から作製された水/糖溶液を、押出機の破砕帯域後に8.2ml/minの流速において注入した。押出機は、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび58〜60の%トルク範囲において稼働して最終水冷バレル中で24℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
次いで、固定可能な混合物を、1mm穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、70RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機中にフィードした。押出物を67.5kg/hrおよび定常2.7アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で10分間乾燥させて、7.1%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例4:
実施例3に従って調製された固定可能な混合物を、粗砕機に45RPMにおいて導通させた。押出物を31.7kg/hrにおいて形成し、Sherwood乾燥機中で10分間乾燥させて8.15%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例5:
実施例3に従って調製された固定可能な混合物を、粗砕機に90RPMにおいて導通させた。押出ペレットをMDB−400流動床乾燥機中で15分間乾燥させて4.53%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例6:
85部の酵母バイオマスの噴霧乾燥粉末を、15部のCelatom MN−4珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび70〜74の%トルク範囲において稼働する18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に2.3kg/hrにおいてフィードして最終水冷バレル中で31℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
次いで、破砕酵母粉末を、スクロースおよび水の22.6%溶液(すなわち、17.5部の水および5.1部の糖)とKitchen Aid混合機中で混合した。総混合時間は4.5分間であり、最初の2分間にわたり溶液を添加した。
固定可能な混合物を、1mmの穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、70RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機にフィードした。押出物を71.4kg/hrおよび定常2.7アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で合計20分間乾燥させて6.5%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例7:
実施例6に従って調製された破砕酵母粉末を、スクロースおよび水の22.6%溶液(すなわち、17.5部の水および5.1部の糖)を有するKDHJ−20回分式シグマブレードニーダー中に装入した。総混合時間は3.5分間であり、最初の2分間にわたり溶液を添加した。
固定可能な混合物を、1mmの穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、90RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機にフィードした。押出物を47.5kg/hrおよび定常2.3アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で合計15分間乾燥させて7.4%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例8:
酵母バイオマスのドラム乾燥フレークを、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび38〜40の%トルク範囲において稼働する18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に1.8kg/hrにおいてフィードして最終水冷バレル中で30℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
破砕酵母粉末(69.5部)を、12.2%のCelite 209珪藻土(12.2部)および水と糖との比3.3から作製されたスクロース水溶液(18.3部)とKitchen Aid混合機中で混合した。総混合時間は4.5分間であり、最初の2分間にわたり溶液を添加した。
固定可能な混合物を、1mmの穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、90RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機にフィードした。押出物を68.2kg/hrおよび定常2.5アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で合計15分間乾燥させて6.83%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例9:
酵母バイオマスのドラム乾燥フレーク(85部)を、15部のCelite 209珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に2.3kg/hrにおいてフィードした。乾燥フィードとともに、14部の水および5.1部の糖から作製された水/糖溶液を、押出機の破砕帯域後に8.2ml/minの流速において注入した。押出機は、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび61〜65の%トルク範囲において稼働して最終水冷バレル中で25℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
次いで、固定可能な混合物を、1mm穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、90RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機中にフィードした。押出物を81.4kg/hrおよび定常2.5アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で15分間乾燥させて、8.3%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。
実施例10:
酵母バイオマスのドラム乾燥フレーク(85部)を、15部のCelatom NM−4珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に4.6kg/hrにおいてフィードした。乾燥フィードとともに、14部の水および5.1部の糖から作製された水/糖溶液を、押出機の破砕帯域後に8.2ml/minの流速において注入した。押出機は、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、300rpmおよび約34の%トルク範囲において稼働して破砕酵母粉末を提供した。
次いで、固定可能な混合物を、1mm穴径×1mm厚スクリーンにより組み立てられ、90RPMに設定されたMG−55LCIドーム粗砕機中にフィードした。押出物を81.4kg/hrおよび定常2.5アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で15分間乾燥させて固体ペレットを提供した。
固体ペレットの圧縮試験および耐摩耗性
圧縮試験を以下のとおり実施した。ASTM規格D−6683に記載の試験装置およびプロトコルを使用して外部負荷、例えばガス圧勾配により負荷されるものに対する固体ペレットの応答を評価した。本試験において、既知質量の容積を機械的に適用される圧密ストレスの関数として計測する。結果の片対数グラフは、典型的には、試料の圧縮を反映する傾きβを有する直線である。βの値が高ければ圧縮が大きいことを反映する。この圧縮は、加工の間に不所望な隔離およびガス流制限をもたらす粒子破損を示し得る。
ASTM試験の最後、負荷をペレット上でさらに2時間維持し、加工時間の延長を模擬した。2時間後に計測されたクリープは、固体ペレットが変形する見込みのさらなる指標である。クリープが低ければ変形が少ないことを示す。
次いで、試料を含有する試験セルを反転させ、ペレット試料を注ぎ出した。必要により、セルを穏やかにタップして内容物を放出させた。セルを空にすることの容易性およびペレットの得られるテキスチャー(すなわち、ルーズまたは凝集)を記録した。
試験後のテキスチャーは、事前の計測において使用された試験セルを空にするのがいかに困難であるかの定性的観察である。最も望ましい試料は直ちに注ぎ出た一方、一部の試料はタップの量の増加を要し、大きい塊になり得た(すなわち、あまり望ましくない)。
耐摩耗性を測定するため、次いで圧縮試験ASTM試験において事前に圧縮した固体ペレット(10g)を3インチ直径の500ミクロンの篩に移した。篩を手作業でタップして500ミクロンよりも小さいペレットのいかなる最初の断片も除去した。残留ペレットの正味重量を記録した。次いで、それぞれ0.50インチ直径×0.50インチ厚でそれぞれ重量5.3グラムの3つの円筒粉砕媒体ビーズを、篩に添加した。篩を自動篩いシェーカー(Gilson Model SS−3、「8」の設定、自動化タップ「オン」)に装入し、2、5または10分の時間振とうさせた。粉砕媒体ビーズは、ペレットにランダムな角度から何度も衝突する。振とう後、篩下のパンを秤量して摩耗し、篩を介して落下した材料の量を測定した。本試験は、油抽出プロセス後のペレットの極めて粗い取扱を模擬するものとする。
実施例3〜10からの固体ペレットをそれぞれ分析してそれらの圧縮特性および耐摩耗性を決定した。結果を以下に表10にまとめる。
SCF抽出
抽出容器に、実施例3〜9からの固体ペレット(乾燥重量基準、表11に列挙)をそれぞれ装填した。ペレットをCO2によりフラッシュし、次いで約40℃に加熱し、約311barに加圧した。ペレットをこれらの条件において4.3g/minのCO2の流速において約6.8hr抽出し、約150gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード(S/F)比を得た。一部の実施例において、総抽出時間が11.6時間になるように第2のランをさらに4.8時間実施した。油抽出収率および抽出に使用された規定のパラメーターを表11に列挙する。
残留ペレット(抽出後)の圧縮試験および耐摩耗性
SCF抽出後、実施例3〜9からの残留ペレットをそれぞれ分析してそれらの圧縮特性および耐摩耗性を決定した。結果を以下の表12にまとめる。
上記に基づき、本明細書に記載の方法[すなわち、(a)ある水分レベルを有し、含油微生物を含む微生物バイオマス、および少なくとも1つの吸油し得る粉砕剤を混合して破砕バイオマス混合物を提供する工程;(b)少なくとも1つの結合剤を前記破砕バイオマス混合物とブレンドして固体ペレットを形成し得る固定可能な混合物を提供する工程;ならびに(c)固定可能な混合物から前記固体ペレットを形成する工程を含む方法]は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの破砕微生物バイオマスを含む固体ペレットを生成するために首尾良く利用することができることが結論づけられる。さらに、本実施例は、固体ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ペレットを溶媒(すなわち、SCF抽出)により抽出して微生物油を含む抽出物を提供することができることを実証する。
実施例11
A.酵母細胞バイオマス、油、および残留バイオマス試料についての脂質分布を測定する方法
酵母細胞試料および残留バイオマス試料(すなわち、CO2による抽出後の酵母細胞)を、Bligh & Dyer(Lipid Analysis,W.W.Christie 2003に概説された手順に基づく)の方法の改変を使用して抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分離し、メタノール性塩化水素を使用して直接エステル化/エステル交換した。油試料をクロロホルム/メタノール中で溶解させ、次いでTLCにより分離し、直接エステル化/エステル交換した。エステル化/エステル交換した試料は、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
酵母細胞および残留バイオマス試料は、乾燥粉末として受容した。試料の所定の部分(PUFA濃度に応じて100〜200mg以下)を、Teflon(商標)キャップを有する13×100mmガラス試験管中に秤量し、それに3mL容量の2:1(容量:容量)メタノール/クロロホルム溶液を添加した。試料を十分にボルテックスにかけ、穏やかに撹拌させ、反転させながら室温において1時間インキュベートした。1時間後、1mLのクロロホルムおよび1.8mLの脱イオン水を添加し、混合物を撹拌し、次いで遠心分離して形成された2つの層を分離した。パスツールピペットを使用して、下層を第2のタール塗布13mmガラスバイアル中に取り出し、水性上層を第2の1mLのクロロホルムの部分により30分間再抽出した。2つの抽出物を合わせ、「第1の抽出物」とみなした。溶媒は、TurboVap(商標)を使用して50℃において乾燥窒素を用いて除去し、残留油は適切量の6:1(容量:容量)クロロホルム/メタノール中で再懸濁させて100mg/mL溶液を得た。
上記のとおり得た油(酵母細胞および残留バイオマス試料について)および酵母細胞のCO2抽出からの油試料を、TLCにより分析した。TLCは、典型的には、1つの槽を使用して行ったが、個々のPLを同定すべき場合には2つの槽の手順も用いた。1つの槽のTLC手順において、5×20cmシリカゲル60プレート(VWRから得たEMD#5724−3)を、プレート下部から2cmにわたり薄い鉛筆の線を描くことにより調製した。適切量の試料(約60μL)を、鉛筆の線の頂部上のプレートにわたり完全にスポットし、スポット間にいかなる空間も残さなかった。第2のプレートに既知のスタンダードおよび試料を1〜2μ量を使用してスポットした。プレートを5〜10分間空気乾燥させ、プレートのラン前に一片のブロッティングペーパーにより槽中で少なくとも30分間平衡化したヘキサン−ジエチルエーテル酢酸混合物(70:30:1容量基準)を使用して展開した。
プレートを上部の1/4インチ以内に展開させた後、それらをN2環境中で15分間乾燥させた。次いで、スタンダードおよび小さい試料スポットを有する第2のプレートを、ヨウ素結晶により飽和させて調製プレートについての参照として機能する槽中で展開させた。調製プレート上のバンドは、バンドの端部をヨウ素により極めて薄く染色し、鉛筆を使用してバンドをそれぞれの画分(すなわち、PL画分、FFA画分、TAG画分およびDAG画分)に従ってグルーピングすることにより同定した。DAGバンドは、1,2−DAG、1,3−DAG、およびMAGバンドの一部の分離を示し得、典型的には、この全領域をDAGバンドとして切り取った。バンドをゲルから切り取り、13mmガラスバイアルに移した。プレートの残部をヨウ素槽中で展開させて対象のバンドの完全な取り出しを確認した。
それぞれのバンドを含有するガラスバイアルに、適切量のトルエン中のトリグリセリド内部スタンダードを添加した。それぞれのバンドの可視濃度に応じて、100μLの0.1から5mg/mL内部スタンダードを通常使用した。共溶媒(この場合、トルエン)を内部スタンダードとともに添加した。内部スタンダードを使用しなかった場合、追加の共溶媒を添加して長鎖脂質のエステル化/エステル交換を完了させた。1mLの1%メタノール性塩化水素溶液(5mLの塩化アセチルを50mLの冷却乾燥メタノールにゆっくり添加することにより調製)を添加し、試料をキャップし、穏やかに混合し、加熱ブロック中に80℃において1時間装入した。1時間後、試料を取り出し、冷却させた。1mLの1N塩化ナトリウム溶液および400μLのヘキサンを添加し、次いで試料を少なくとも12秒間ボルテックスにかけ、遠心分離して2つの層を分離した。次いで、上層を、水性(下)層のいずれによっても汚染しないように慎重に扱い取り出した。上層を、インサートを装着したGCバイアル中に装入し、キャップした。
試料は、火炎イオン化検出器(FID)およびOmegawax 320カラム(30m×0.32mm ID ×25μmフィルム厚、Supelco(Bellfonte,PA)により製造)を備えたAgilentモデル6890ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を使用して分析した。ヘリウムキャリアガスを、20:1または30:1のスプリット比で1〜3mL/minの範囲内で一定に保持した。オーブン条件は以下のとおりであった:0分間の初期時間および0.5分間の平衡化時間で160℃の初期温度。温度傾斜は0分間の最終保持時間について200℃まで5度/min、次いで合計16分間について保持時間の4分間について240℃まで10度/minであった。インレットは260℃に設定した。FID検出器も260℃に設定した。Nu−Chek Prep GLC参照スタンダード(#461)を、滞留時間確認のためにランした。
GC結果はAgilent’s Custom Reportsを使用して収集し、それぞれの脂肪酸の面積をそれらの割合の計算のためにExcelスプレッドシートに移した。次いで、脂質クラス中の脂肪酸の総量を変換するための補正係数を適用することができた。それぞれの構成成分の総割合を、TLC前に誘導体化された元の抽出物と比較した。
B.抽出法
抽出は、一般的方法に従って実施した。以下の実施例12〜20に報告される酵母および抽出油中の種々の脂質構成成分の分析は、本明細書に上記の薄層およびガスクロマトグラフィー法を使用して測定した。酵母試料について、このまとめは、分析手順を使用して試料から抽出された脂質の分析を反映する。抽出酵母試料についてこの手順により分析された脂質の量は、同等のフィード酵母および油抽出物試料の量と比較して比較的小さい(典型的には、出発フィード酵母中の抽出可能な油の<3%)。結果のまとめの表は、試料のそれぞれについての脂質構成成分の相対分布を示す。表上部にわたり横の列に示されるそれぞれの同定された脂質構成成分について、リン脂質(PL)、ジアシルグリセリド(DAG)、遊離脂肪酸(FFA)、およびトリアシルグリセリド(TAG)としてのその構成成分の相対分布を、表の欄の下方に示す。それぞれの試料についての第1のラインは、TLC前に誘導体化された元の抽出物の分析を示す。続くラインは、TLCおよびGCによるそれぞれの構成成分の分析を挙げ、それぞれの構成成分の総割合をその試料についての最後のラインで表す。
以下の実施例12〜20において、報告された油の抽出収率は、抽出前の酵母試料と抽出後の残留バイオマスとの間の重量差により測定し、割合として表現した。重量差は、CO2と接触させることにより抽出された油の量に起因すると想定した。得られた油の実重量は、一般に、質量差に基づき予期された重量の約85%以内と見出された。
実施例12
311barおよび40℃における抽出曲線
本実施例の目的は、抽出曲線の作成を実証することであった。316SS管(0.95cmのo.d.×0.62cmのi.d.×26.7cmの長さ)から製作された8mL抽出容器に、公称2.7gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を一連の抽出のために繰り返し装填して40℃および311barにおけるこの酵母試料についての抽出曲線を決定した。それぞれの抽出のため、抽出容器および酵母をCO2によりフラッシュし、次いでCO2により40℃において311barに加圧した。表13に示すとおり、酵母試料をこれらの条件および種々の時間にわたる1.5g/minのCO2流速において抽出して対応する抽出収率をもたらす一連の溶媒フィード比を得た。図4は、これらのデータを抽出曲線でプロットする。約40gのCO2/g酵母の溶媒フィード比における曲線中の中断は、選択温度および圧力においてこの特定の酵母試料中の利用可能な油を効率的に抽出するために少なくともこの溶媒比が要求されることを示す。
一連の抽出は、異なる温度および/または圧力条件において繰り返して特定の微生物バイオマス試料についての一連の抽出曲線を作成することができ、このことは例えば経済、所望の抽出収率、または使用されるCO2の総量に基づく最適な抽出条件の選択を可能とする。
比較例C7
得られた抽出物の分別を用いない酵母細胞の抽出
本比較例の目的は、抽出物の分別も残留バイオマスの連続抽出も用いずにCO2による微生物バイオマスの抽出、およびそうして得られた抽出物の脂質組成を実証することであった。316SS管(1.27cmのo.d.×0.94cmのi.d.×26.0cmの長さ)から製作された18mLの抽出容器に、4.99gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。酵母試料をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、222barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において2.3g/minのCO2の流速において5.5時間抽出し、149gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物の収率は18.2重量%であった。
以下の表は、出発フィード酵母(微生物バイオマス)、抽出酵母(残留バイオマス)、および得られた抽出物についての脂質分析をまとめる。酵母細胞について、50重量パーセント(重量%)のFFAおよび59.8重量%のTAGが、3/6の割合[フィード酵母中のEPAを含むFFAの重量%をフィード酵母中のFFAの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した]および49/82の割合[フィード酵母中のEPAを含むTAGの重量%をフィード酵母中のTAGの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した]としてそれぞれ計算されたEPAを含有することが見出された。抽出物中のPLの不存在(0重量%)は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留し、CO2により抽出物中に区分化しないことを示す。結果は、抽出物が90重量%のTAG、4重量%のFFA、および6重量%のDAGを含有することも示す。抽出物について、50%のFFAおよび58.9%のTAGが、2/4の割合[抽出物中のEPAを含むFFAの重量%を抽出物中のFFAの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した]および53/90の割合(抽出物中のEPAを含むTAGの重量%を抽出物中のTAGの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した)としてそれぞれ計算されたEPAを含有することが見出された。
実施例13
連続圧力抽出による脂質分別
本実施例の目的は、酵母試料の連続圧力抽出および得られた抽出物の脂質組成物を実証することであった。316SS管(1.27cmのo.d.×0.94cmのi.d.×26.0cmの長さ)から製作された18mL抽出容器に、3.50gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。
抽出物A:酵母をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、125barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において2.3g/minのCO2の流速において5時間抽出し、その時間において圧力を150barに増加させた。抽出をさらに1.2時間継続し、238gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Aの収率は11.7重量%であった。
抽出物B:抽出を、同一の部分抽出酵母試料を用いて圧力を222barに増加させ、CO2流を2.3g/minにおいて4.0時間継続することにより継続し、この画分について153gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Bの収率は、抽出容器に装填された元の酵母の6.2重量%であった。
以下の表は、出発フィード酵母および2つの抽出物についての脂質分析をまとめる。結果は、用いられる抽出条件下で、微生物バイオマス油のFFAおよびDAGが抽出物A(9重量%のそれぞれを含有)に選択的に区分化された一方、抽出物BはTAGが富化された(1重量%のDAGのみ含有し、FFAは計測されなかった)ことを示す。より具体的には、抽出物Bは、約99%のTAGであり、TAGの約62.6%が、62/99の割合[抽出物B中のEPAを含むTAGの重量%を抽出物B中のTAGの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した]として計算された)EPAを含有することが見出された。対照的に、酵母細胞のTAGの約59.8%が、49/82の割合(フィード酵母中のEPAを含むTAGの重量%をフィード酵母中のTAGの総重量%により割ったもの、割合として表現し、両方のパーセント値はTLC分析から採用した)として計算されたEPAを含有することが見出された。これらの結果は、続いて段階的減圧を介して分別される抽出物を提供するための酵母試料のSCFCO2抽出により得ることができる結果と類似することが予期される。
実施例14
連続圧力抽出による脂質分別
本実施例の目的は、異なる抽出条件下での酵母試料の連続圧力抽出および得られる抽出物の脂質組成を実証することであった。316SS管(2.54cmのo.d.×1.93cmのi.d.×30.5cmの長さ)から製作された89mL抽出容器に、15.0gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。
抽出物A:酵母をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、125barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において2.3g/minのCO2の流速において3.9時間抽出し、その時間において流速を4.7g/minのCO2に増加させ、抽出をさらに2.3時間継続した。次いで、圧力を141barに増加させた。抽出を4.7g/minのCO2においてさらに4.1時間継続し、154gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Aの収率は8.7重量%であった。
抽出物B:抽出を、同一の部分抽出酵母試料を用いて圧力を222barに増加させ、CO2流を4.7g/minにおいて8.0時間継続することにより継続し、この抽出物について150gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Bの収率は、抽出容器に装填された元の酵母の15.4重量%であった。
以下の表は、出発フィード酵母、両方の抽出後の残留バイオマスおよび2つの抽出物についての脂質分析をまとめる。結果は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留することを示す。用いられる抽出条件下で、微生物バイオマスのFFAおよびDAGは、抽出物Aに選択的に区分化した一方、抽出物BはTAGが富化された。より具体的には、抽出物Bは、約97%のTAGであり、FFAは計測されず、TAGの約61.9%がEPAを含有することが見出された。対照的に、酵母細胞のTAGの約59.8%がEPAを含有することが見出された。これらの結果は、続いて段階的減圧を介して分別される抽出物を提供するための酵母試料のSCFCO2抽出により得ることができる結果と類似することが予期される。
実施例15
連続圧力抽出による脂質分別
本実施例の目的は、異なる抽出条件下での酵母試料の連続圧力抽出および得られる抽出物の脂質組成を実証することであった。316SS管(2.54cmのo.d.×1.93cmのi.d.×30.5cmの長さ)から製作された89mL抽出容器に、20.0
gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。
抽出物A:酵母をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、110barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において4.7g/minのCO2の流速において7.1時間抽出し、100gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Aの収率は4.1重量%であった。
抽出物B:抽出を、同一の部分抽出酵母試料を用いて圧力を222barに増加させ、CO2流を4.7g/minにおいて15.0時間において継続することにより継続し、この抽出物について212gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出物Bの収率は、抽出容器に装填された元の酵母の14.6重量%であった。
以下の表は、出発フィード酵母、両方の抽出後の残留バイオマスおよび2つの抽出物についての脂質分析をまとめる。結果は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留することを示す。用いられる抽出条件下で、微生物バイオマスのFFAおよびDAGは、抽出物Aに選択的に区分化した一方、抽出物BはTAGが富化された(すなわち、油画分Bは約95%のTAGであった)。これらの結果は、続いて段階的減圧を介して分別される抽出物を提供するための酵母試料のSCFCO2抽出により得ることができる結果と類似することが予期される。
本明細書の実施例13から15は、抽出物の脂質構成成分の区分化が多段階抽出における抽出条件の選択により影響を受け得ることを集合的に説明する。そのような区分化は、おそらく、図3に説明されるプロセスにより得られる油抽出物の圧力の連続低減から得られる。
実施例16
500barにおけるSCF抽出
本実施例の目的は、500barにおける超臨界流体としてのCO2による酵母細胞の抽出、および得られる抽出物の組成を実証することであった。そのような抽出条件は、少なくとも1つのPUFAを含むリファインド組成物を得る方法であって、少なくとも1つのPUFAを含む微生物バイオマスを好適な抽出条件下でCO2と接触させ、続いて抽出物を例えば連続減圧により分別することを含む方法の第1の工程で使用することができた。
10mL抽出容器に、2.01gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305−F1B1株)を装填し、容器を市販の自動化超臨界流体抽出装置、すなわち、IscoモデルSFX3560抽出器中に設置した。この装置は、抽出容器のそれぞれの端部上に2ミクロン焼結金属フィルターを備えた10mLのプラスチック抽出容器を利用した。この容器に、抽出すべき基質を装填し、次いで抽出容器の内側および外側に対する圧力を均等化する高圧抽出室中にロードした。CO2溶媒を、シリンジポンプ(ISCOモデル260D)により計量供給し、規定の抽出温度に予熱し、次いで抽出容器を通過させた。抽出室を電気抵抗加熱器により所望の抽出温度に加熱した。圧力は、装置の一体部分である自動化可変制流子により容器上で維持した。
酵母試料をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、500barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において0.86g/minのCO2の流速において5.8時間抽出し、150gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出油の収率は32.8重量%であった。以下の表は、出発フィード酵母、抽出後の残留バイオマスおよび抽出により得られた油についての脂質分析をまとめる。結果は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留し、FFA、DAG、およびTAGを含むCO2抽出油に区分化しなかったことを示す。
実施例17
310barにおけるSCF抽出
本実施例の目的は、310barにおける超臨界流体としてのCO2による酵母細胞の抽出、および得られる抽出物の組成を実証することであった。そのような抽出条件は、少なくとも1つのPUFAを含むリファインド組成物を得る方法であって、少なくとも1つのPUFAを含む微生物バイオマスを好適な抽出条件下でCO2と接触させ、続いて抽出物を例えば連続減圧により分別することを含む方法の第1の工程で使用することができた。
316SS管(2.54cmのo.d.×1.93cmのi.d.×30.5cmの長さ)から製作された89mLの抽出容器に、25.1gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株)を装填した。酵母試料をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、310barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において5.0mL/minCO2の流速において4.4時間抽出し、50gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出油の収率は28.8重量%であった。以下の表は、出発フィード酵母、抽出後の残留バイオマスおよび抽出により得られた油についての脂質分析をまとめる。結果は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留し、FFA、DAG、およびTAGを含むCO2抽出油に区分化しなかったことを示す。
実施例18
222barにおけるSCF抽出
本実施例の目的は、222barにおける超臨界流体としてのCO2による酵母細胞の抽出、および得られる抽出物の組成を実証することであった。そのような抽出条件は、少なくとも1つのPUFAを含むリファインド組成物を得る方法であって、少なくとも1つのPUFAを含む微生物バイオマスを好適な抽出条件下でCO2と接触させ、続いて抽出物を例えば連続減圧により分別することを含む方法の第1の工程で使用することができた。
316SS管(2.54cmのo.d.×1.93cmのi.d.×30.5cmの長さ)から製作された89mLの抽出容器に、25.1gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。酵母試料をCO2によりフラッシュし、次いで40℃に加熱し、222barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において4.7g/minCO2の流速において13.7時間抽出し、154gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出油の収率は18.1重量%であった。この抽出は、さらに4回反復させ、それぞれの時間において新たな酵母試料を用い、5つの抽出物を確立した。残留バイオマス試料および抽出油試料もそれぞれ確立し、混合して5つの抽出からの複合試料を提供した。以下の表は、出発フィード酵母、確立残留バイオマスおよび抽出により得られた確立油についての脂質分析をまとめる。油は、7重量%のFFA、7重量%のDAG、および86重量%のTAGを含むことが見出された。
実施例19
85barにおける液体CO2抽出
本実施例の目的は、85barにおける液体としてのCO2による酵母細胞の抽出、および得られる抽出物の組成を実証することであった。そのような抽出条件は、少なくとも1つのPUFAを含むリファインド組成物を得る方法であって、少なくとも1つのPUFAを含む微生物バイオマスを好適な抽出条件下でCO2と接触させ、続いて抽出物を例えば連続減圧により分別することを含む方法の第1の工程で使用することができた。
316SS管(0.95cmのo.d.×0.62cmのi.d.×26.7cmの長さ)から製作された8mLの抽出容器に、0.966gの乾燥および機械的に破砕された酵母細胞(すなわち、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填した。酵母試料をCO2によりフラッシュし、次いで22℃において液体CO2により85barに加圧した。酵母試料をこれらの条件において0.69g/minのCO2の流速において8.5時間抽出し、361gのCO2/g酵母の最終溶媒フィード比を得た。抽出油の収率は21.4重量%であった。以下の表は、出発フィード酵母、残留バイオマスおよび抽出により得られた油についての脂質分析をまとめる。結果は、出発フィード酵母中に存在する脂質のPL画分が残留バイオマス中に残留し、CO2抽出油に区分化しなかったことを示す。油は、8重量%のFFA、5重量%のDAG、および86重量%のTAGを含んだ。
実施例20
SCFCO2/EtOHによる残留リン脂質の抽出
本実施例の目的は、PL画分および第2の残留バイオマス試料を得るための、抽出剤としての超臨界CO2およびエタノールの混合物による第1の残留バイオマス試料の抽出を実証することであった。
316SS管(1.27cmのo.d.×0.94cmのi.d.×26.0cmの長さ)から製作された18mLの抽出容器に、実施例13からの6.39gの残留バイオマス(抽出ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株)を装填し、これを本明細書において第1の残留バイオマスと称する。材料をCO2によりフラッシュし、次いで40℃においてCO2/メタノール混合物(抽出剤)により222barに加圧した。CO2流速は2.3g/minであり、エタノール流速は0.12g/minであり、抽出容器にフィードされる溶媒中の5.0重量%のエタノール濃度を得た。第1の残留バイオマスをこれらの条件において5.3時間抽出し、残留バイオマス1g当たり120gのCO2/エタノールの最終溶媒フィード比を得た。油の抽出収率は、この事前に抽出された材料から2.4重量%であった。以下の表は、第1の残留バイオマス(本実施例についての出発試料)、第2の残留バイオマス(本実施例における抽出後の第1の残留バイオマス)、および第1の残留バイオマスの抽出により得られた油についての脂質分析をまとめる。以下の表中のデータから把握することができるとおり、油は、本質的に純粋なPLを含むことが見出された。実施例13において事前に実施された抽出は、酵母細胞からの中性脂肪および遊離脂肪酸を既に除去した。
実施例21
本実施例の目的は、本明細書に記載のペレット化、抽出、分別および蒸留法において微生物バイオマスとして利用することができる少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含む代替的微生物バイオマスを提供することである。
ω−3/ω−6PUFAの生成について遺伝子操作された多数の油性酵母が本出願に記載の本発明による好適な微生物バイオマスであるが、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の代表的な株を表5に記載する。これらには、ATCCにより寄託されている以下の株が含まれる:Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y2047株(ARAを生成;ATCC受託番号PTA−7186);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y2096株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−7184);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y2201株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−7185);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y3000株(DHAを生成;ATCC受託番号PTA−7187);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y4128株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−8614);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y4127株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−8802);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8406株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−10025);Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8412株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−10026);およびY・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8259株(EPAを生成;ATCC受託番号PTA−10027)。
したがって、例えば、表5は、総脂肪酸の25.9%から34%のGLA、総脂肪酸の10.9%から14%のARA、総脂肪酸の9%から61.8%のEPAおよび総脂肪酸の5.6%のDHAを生成する微生物宿主を示す。
当業者は、本発明の方法論が高レベルのEPA生成を実証する微生物バイオマスに限定されるのではなく、代替的ω−3/ω−6PUFAまたはそれらの組合せまたはPUFAの高レベルの生成を実証する微生物バイオマスに同等に好適であることを認識する。
実施例22A
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からのEPAを含む未処理微生物バイオマスの調製
本実施例は、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株および2段階流加プロセスを使用するこの株を培養するために使用された手段を記載する。微生物バイオマスを前処理して56.1EPA%TFAを有する乾燥未処理微生物バイオマスをもたらした。
Y9502株からのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の作製
株からのZ1978株の開発は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/218,591号明細書(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.、代理人整理番号CL4783USNA、2011年8月26日出願)に記載されている。
具体的には、Y9502株(前出の材料参照)のUra3遺伝子を破壊するため、構築物pZKUM(図6A;配列番号1;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載)を使用してUra3突然変異体遺伝子をY9502株のUra3遺伝子中に統合した。形質転換は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の方法論に従って実施した。合計27個の形質転換体(8つの形質転換体を含む第1の群、8つの形質転換体を含む第2の群、および11個の形質転換体を含む第3の群から選択)を、5−フルオロオロチン酸[「FOA」]プレート(FOAプレートは、1リットル当たり以下を含む:20gのグルコース、6.7gの酵母窒素原礎培地、75mgのウラシル、75mgのウリジンおよび100mg/Lから1000mg/Lの濃度の範囲に対するFOA活性試験に基づく適切量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)(それというのも、供給業者から受容したそれぞれのバッチ内で変動が生じるためである))上で成長させた。さらなる実験は、形質転換体の第3の群のみが実際のUra−表現型を有することを決定した。
脂肪酸[「FA」]分析のため、細胞を遠心分離により回収し、脂質をBligh,E.G.& Dyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載のとおり抽出した。脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を、ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換により調製し(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、続いて30−m×0.25mm(i.d.)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを備えたHewlett−Packard 6890 GCにより分析した。オーブン温度は3.5℃/minにおいて170℃(25分間保持)から185℃であった。
直接的な塩基エステル交換のため、ヤロウィア(Yarrowia)細胞(0.5mL培養物)を回収し、蒸留水中で1回洗浄し、Speed−Vac中で真空下で5〜10分間乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μlの1%)および既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0TAG;カタログ番号T−145,Nu−Check Prep,Elysian,MN)を試料に添加し、次いで試料をボルテックスにかけ、50℃において30分間ロックした。3滴の1MのNaClおよび400μlのヘキサンの添加後、試料をボルテックスにかけ、回転させた。上層を取り出し、GCにより分析した(前出)。
あるいは、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載の塩基触媒エステル交換法の改変を、発酵またはフラスコ試料からのブロス試料の定型分析に使用した。具体的には、ブロス試料を室温水中で急速解凍し、次いで0.22μmのCorning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心チューブフィルター(カタログ番号8161)を有するタール塗布2mL微小遠心チューブ中に(0.1mgに)秤量した。予め測定されたDCWに応じて、試料(75〜800μl)を使用した。Eppendorf 5430遠心分離機を使用して、試料を14,000rpmにおいて5〜7分間または必要な限り遠心分離してブロスを取り出した。フィルターを取り出し、液体を抜き、約500μlの脱イオン水をフィルターに添加して試料を洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルターを再度取り出し、液体を抜き、フィルターを再挿入した。次いで、チューブを遠心分離機中に再挿入し、このときは頂部を開放し、約3〜5分間乾燥させた。次いで、フィルターをチューブの約1/2の箇所で切断し、新たな2mL丸底Eppendorfチューブ(カタログ番号2236335−2)中に挿入した。
切断フィルター容器の周縁に接触するにすぎず、試料またはフィルター材料に接触しない適切なツールによりフィルターをチューブの底部に押圧した。トルエン中の既知量のC15:0TAG(前出)を添加し、500μlの新たに作製された1%のナトリウムメトキシドのメタノール中溶液を添加した。試料ペレットを適切なツールにより完全に崩壊させ、チューブを密閉し、50℃加熱ブロック(VWRカタログ番号12621−088)中に30分間装入した。次いで、チューブを少なくとも5分間冷却させた。次いで、400μlのヘキサンおよび500μlの1MのNaClの水中溶液を添加し、チューブを2回6秒間ボルテックスにかけ、1分間遠心分離した。約150μlの頂部(有機)層をインサートを有するGCバイアル中に装入し、GCにより分析した。
GC分析を介して記録されたFAMEピークを、既知の脂肪酸と比較したその滞留時間により特定し、FAMEピーク面積を既知量の内部スタンダード(C15:0TAG)と比較することにより定量した。したがって、任意の脂肪酸FAMEの近似量(μg)[「μgFAME」]は式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/スタンダードFAMEピーク面積)*(スタンダードC15:0TAGのμg)に従って計算する一方、C15:0TAGの1μgは0.9503μgの脂肪酸に等しいため、任意の脂肪酸の量(μg)[「μgFA」]は式:(特定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/スタンダードFAMEピーク面積)*(スタンダードC15:0TAGのμg)*0.9503に従って計算する。0.9503の変換係数は、0.95から0.96の範囲であるほとんどの脂肪酸について決定される値の近似であることに留意されたい。
それぞれの個々の脂肪酸の量をTFAの重量パーセントとしてまとめる脂質プロファイルを、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の総和により割って100を掛けることにより決定した。
このように、GC分析は、第3群のpZKUM−形質転換体#1、#3、#6、#7、#8、#10および#11にそれぞれ28.5%、28.5%、27.4%、28.6%、29.2%、30.3%および29.6%のEPAのTFAが存在することを示した。これらの7つの株を、Y9502U12、Y9502U14、Y9502U17、Y9502U18、Y9502U19、Y9502U21およびY9502U22株(集合的にY9502U)株とそれぞれ命名した。
次いで、構築物pZKL3−9DP9N(図6B;配列番号2)を作製して1つのδ−9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのδ−9エロンガーゼ突然変異体遺伝子をY9502U株のヤロウィア(Yarrowia)YALI0F32131p遺伝子座(GenBank受託番号XM_506121)に統合した。pZKL3−9DP9Nプラスミドは、以下の構成成分を含有した:
pZKL3−9DP9NプラスミドをAscI/SphIにより消化し、次いでY9502U17株の形質転換に使用した。形質転換体細胞を最小培地[「MM」]プレート上にプレーティングし、30℃に3〜4日間維持した(最小培地は、1リットル当たり:20gのグルコース、1.7gのアミノ酸を有さない酵母窒素原礎培地、1.0gのプロリン、およびpH6.1(調整不要)を含む)。単一コロニーをMMプレート上に再度画線し、次いで液体MM中に30℃において接種し、250rpm/minにおいて2日間振とうさせた。細胞を遠心分離により回収し、高グルコース培地[「HGM」]中で再懸濁し、次いで250rpm/minにおいて5日間振とうさせた(高グルコース培地は、1リットル当たり:80gのグルコース、2.58gのKH2PO4および5.36gのK2HPO4、pH7.5(調整不要)を含む)。細胞を上記の脂肪酸分析に供した。
GC分析は、選択された96個のpZKL3−9DP9Nを有するY9502U17の株のほとんどが50〜56%のEPAのTFAを生成することを示した。59.0%、56.6%、58.9%、56.5%、および57.6%のEPAのTFAを生成した5つの株(すなわち、#31、#32、#35、#70および#80)を、それぞれZ1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981と命名した。
野性型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対するこれらのpZKL3−9DP9N形質転換体株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、unknown9−、unknown10−、unknown11−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、YAT::EgD9eS−L35G::Pex20、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPDIN::YlD9::Lip1、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16、EXP1::YlPCT::Pex16であった。
Z1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株のYALI0F32131p遺伝子座(GenBank受託番号XM_50612)のノックアウトは、pZKL3−9DP9Nによる形質転換により生成されたこれらのEPA株のいずれにおいても確認されなかった。
Z1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株のYPDプレートからの細胞を、成長させ、以下の方法論に従って総脂質含有率および組成について分析した。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の特定株の総脂質含有率および組成の詳細な分析のため、フラスコアッセイを以下のとおり実施した。具体的には、新たに画線された細胞の1つのループを3mLの発酵培地[「FM」]培地中に接種し、250rpmおよび30℃において一晩成長させた(発酵培地は、1リットル当たり:6.70g/Lの酵母窒素原礎培地、6.00gのKH2PO4、2.00gのK2HPO4、1.50gのMgSO4 *7H2O、20gのグルコースおよび5.00gの酵母抽出物(BBL)を含む)。OD600nmを計測し、細胞のアリコートを125mLフラスコ中の25mLのFM培地で0.3の最終OD600nmまで添加した。250rpmおよび30℃におけるシェーカーインキュベーターにおける2日後、6mLの培養物を遠心分離により回収し、125mLフラスコ中の25mLのHGM中で再懸濁した。250rpmおよび30℃におけるシェーカーインキュベーターにおける5日後、1mLのアリコートを脂肪酸分析(前出)に使用し、乾燥細胞重量[「DCW」]測定のために10mLを乾燥させた。
DCW測定のため、10mLの培養物を、Beckman GS−6R遠心分離機中のBeckman GH−3.8ローター中で4000rpmにおける5分間の遠心分離により回収した。ペレットを25mLの水中で再懸濁し、上記のとおり再回収した。洗浄したペレットを20mLの水中で再懸濁し、事前に秤量したアルミニウムパンに移した。細胞懸濁液を真空オーブン中で80℃において一晩乾燥させた。細胞の重量を測定した。
細胞の総脂質含有率[「TFA%DCW」]を計算し、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の濃度[「%TFA」]および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]をまとめるデータとともに考察した。
したがって、以下の表24は、フラスコアッセイにより測定されたZ1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株の総脂質含有率および組成をまとめる。具体的には、この表は、細胞の総乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の総脂質含有率[「TFA%DCW」]、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の濃度[「%TFA」]および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]をまとめる。
続いて、Z1978株を部分ゲノムシーケンシング(米国特許出願第13/218591号明細書)に供した。この作業は、4つ(6つでない)のδ−5−デサチュラーゼ遺伝子がヤロウィア(Yarrowia)ゲノム中に統合されたことを決定した(すなわち、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5SM::Lip1、およびYAT1::EaD5SM::Oct)。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の発酵
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株を、前出の材料セクションに記載のとおり2段階流加プロセスにおいて成長させた。
発酵後、酵母バイオマスを脱水および洗浄して塩および残留培地を除去し、リパーゼ活性を最小化した。次いで、ドラム乾燥させて水分を5%未満に低減させて短期貯蔵および輸送の間の油安定性を確保した。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株のバイオマスの特性決定
乾燥未処理酵母バイオマスの脂肪酸組成を、以下のガスクロマトグラフィー[「GC」]法を使用して分析した。具体的には、トリグリセリドを、メタノール中のナトリウムメトキシドを使用するエステル交換により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に変換した。得られたFAMEを、トルエン/ヘキサン(2:3)中での希釈後に30−m×0.25mm(i.d.)OMEGAWAX(Supelco)カラムを備えたAgilent 7890 GCを使用して分析した。オーブン温度を5℃/minにおいて160℃から200℃、次いで10℃/minにおいて200℃から250℃(10分間保持)増加させた。
GC分析を介して記録されたFAMEピークは、既知のメチルエステル[「ME」]と比較してそれらの保持時間により同定し、FAMEピーク面積を既知量の内部スタンダード(C15:0トリグリセリド、試料についてエステル交換手順を介して採取)と比較することにより定量した。したがって、任意の脂肪酸FAMEの近似量(mg)[「mgFAME」]は、式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/15:0FAMEピーク面積)*(内部スタンダードC15:0FAMEのmg)に従って計算する。次いで、FAME結果を、1.042〜1.052の適切な分子量変換係数により割ることにより対応する脂肪酸のmgに補正することができる。
TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの個々の脂肪酸の量をまとめる脂質プロファイルは、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の総和により割り、100を掛けることにより(±0.1重量%以内に)近似させた。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からの乾燥未処理酵母バイオマスは、以下の表に示すとおり、56.1EPA%TFAを含有した。
実施例22B
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、実施例22Aの乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスを、押出およびペレット化を介して破砕し、超臨界流体抽出[「SCFE」]を使用して油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留により油のステロール含有率を低減させて脂質含有画分(すなわち、SPD精製微生物油)をもたらすために使用された手段を記載する。
乾燥未処理酵母バイオマスの押出を介する破砕およびペレット化
実施例22Aの乾燥未処理Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株バイオマスを、2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、84重量パーセントの酵母(約39%の総微生物油を含有)および16%の珪藻土(Celatom MN−4;EP Minerals,LLC,Reno,NV)の混合物を、40mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−40mm MC,Stuttgart,Germany)に23kg/hrの速度においてフィードした。26.5%のスクロースから作製された水/スクロース溶液を、押出機の破砕帯域後に70mL/minの流速において注入した。押出機は、37kWモ−ターおよび高トルクシャフトにより、140rpmにおいて稼働させた。%トルク範囲は17〜22であった。得られた破砕酵母粉末を、最終水冷バレル中で35℃に冷却した。湿潤押出粉末を、1mm穴径×1mm厚スクリーンから組み立てられ、80RPMに設定されたLCI Multi−Granulatorモデル番号MG−55(LCI Corporation,Charlotte,NC)中にフィードした。押出物を、27kg/hr、定常2.2アンペア電流の流れにおいて形成し、慣用の乾燥装置を使用して乾燥させた。約1mmの直径×6から10mmの長さの乾燥ペレットは、Sartorius MA35水分分析装置(Sartorius AG,Goettingen,Germany)により計測して1.7%の最終含水率を有した。
押出酵母バイオマスの抽出
押出酵母ペレットを、抽出溶媒としての超臨界流体相二酸化炭素(CO2)を使用して抽出してEPAを含有するトリグリセリドリッチ抽出油を生成した。具体的には、酵母ペレットを320Lステンレス鋼抽出容器に装填し、ポリエステルフォーム濾過マット(Aero−Flo Industries,Kingsbury,IN)のプラグ間に充填した。容器を密封し、次いでCO2を市販の圧縮器(Pressure Products Industries)により熱交換器(予熱器)を介して計量供給し、垂直抽出容器中にフィードして破砕酵母のペレットからトリグリセリドリッチ油を抽出した。抽出温度は予熱器により制御し、抽出圧力は抽出容器と分別器容器との間に位置する自動制御弁(Kammer)により維持した。CO2および油抽出物は、この制御弁を介して低圧に膨張させた。抽出油を膨張溶液から沈殿物として分別器中で回収した。分別器中の膨張CO2相の温度は、分別器の上流に位置する追加の熱交換器の使用により制御した。この低圧CO2流は、分別器容器の頂部を流出し、フィルター、凝縮器、および質量流量計を介して圧縮器に再循環させて戻した。抽出油を分別器から周期的に抜き、生成物として回収した。
抽出容器に、最初に150kgの抽出酵母ペレットを装填した。次いで、トリグリセリドリッチ油をペレットから超臨界流体CO2により5000psig(345bar)、55℃、および出発酵母ペレット1kg当たり32kgのCO2の溶媒フィード比において抽出した。合計39.6kgの抽出油を分別器容器から回収し、それに約1000ppmの2つの酸化防止剤のそれぞれ:Covi−ox T70(Cognis,Ontario,Canada)およびDadex RM(Nealanders,Ontario,Canada)を添加した。抽出油は、GC分析(下記)により測定して661mgのエルゴステロール/油100gを含有した。
具体的には、エルゴステロール含有率は、紫外線(UV)検出を有する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。抽出油試料(100mg)を、14mLの9:10の2−プロパノール:1−ヘプタノールにより希釈し、十分に混合した。96%純度エルゴステロール(Alfa Aesar,Inc.,Ward Hill,MA)の較正スタンダードを、2−プロパノール中の10から300μg/mLの範囲で調製した。試料およびスタンダードを、12.5分間における水中0.02%の炭酸アンモニウム−65%から100%のアセトニトリルのアセトニトリル勾配を使用するXDB−C8 HPLCカラム(4.6mmのid.、150mmの長さ、5μmの粒子サイズ、Agilent Technologies,Inc.,Wilmington,DE)上でのクロマトグラフィーにかけた。注入容積は5μLであり、流速は1.2mL/minであり、カラム温度は50℃であった。エルゴステロールピークのUV(282nm)応答を、同一条件下で分析した較正スタンダードと比較した。
SPD条件下での蒸留
抽出油を脱ガスし、次いで6’’ステンレス鋼分子蒸留器(POPE Scientific,Saukville,WI)を介して12kg/hrのフィード速度を使用して通過させた。残留水を除去した。蒸発器および凝縮器の表面温度は、それぞれ140℃および15℃に設定した。真空は15torrに維持した。約3重量%の抽出油を蒸留物中の水として取り出した。脱水抽出油は、実質的にリン脂質を含まず、0.5ppmのリンを含有した。視覚調査時、脱水抽出油は室温において混濁していた。
脱水抽出油を6’’分子蒸留器を介して12kg/hrのフィード速度において2回目として通過させた。真空を1mtorrに低下させ、蒸発器および凝縮器の表面温度をそれぞれ240℃および50℃に維持した。約7重量%の脱水抽出油を蒸留物として取り出し;この画分は主として遊離脂肪酸およびエルゴステロールを含有した。284mgのエルゴステロール/油100g(抽出油のエルゴステロール含有率と比較してエルゴステロール含有率の約57%低減)を含有するトリアシルグリセロール含有画分(すなわち、脂質含有画分またはSPD精製油)も得た。SPD精製油は、数日間の10℃における貯蔵後に澄明であった。
実施例23
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスを、押出を介して破砕し、超臨界流体抽出[「SCFE」]を使用して油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留により油のステロール含有率を低減させて脂質含有画分(すなわち、SPD精製微生物油)をもたらすために使用された手段を記載する。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスの調製
Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502株を、2段階流加プロセスにおいて培養し、得られた微生物バイオマスを実施例22Aに記載の方法論に従って脱水し、洗浄し、乾燥させた。
乾燥未処理酵母バイオマスの押出を介する破砕
乾燥未処理Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502株バイオマスを、2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、酵母バイオマス(約37%の総微生物油を含有)を、70mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−70mm SCD,Stuttgart,Germany)に、270kg/hrの速度において珪藻土の不存在下でフィードした。
押出機は、150kWのモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび総アンペア範囲の33パーセントにおいて稼働させた。得られた破砕酵母バイオマスを最終水冷バレル中で81℃に冷却した。破砕バイオマスの含水率は、Sartorius MA35水分分析装置(Sartorius AG,Goettingen,Germany)により計測して2.8重量%であった。
押出酵母バイオマスの抽出
押出酵母バイオマスを珪藻土と混合して床の圧密を防止し、抽出溶媒としての超臨界流体相CO2を使用して抽出してEPAを含有する粗製トリグリセリド油(すなわち、「抽出油」)を生成した。具体的には、合計82.7kgの押出酵母バイオマスを、41kgの珪藻土(Celatom MN−4;EP Minerals,LLC,Reno,NV)と混合し、実施例22Bに記載のものと同一の様式で構成された320Lのステンレス鋼抽出容器に装填したが、以下を除いた:(i)抽出温度を予熱器により40℃に制御し;(ii)抽出圧力を4500psig(310bar)に維持し;(iii)抽出に出発酵母1kg当たり44kgのCO2の溶媒フィード比を使用した。このようにして、23.2kgの油を破砕酵母から抽出した。抽出油は、実施例22Bの方法論によるGC分析により測定して774mgのエルゴステロール/油100gを含有した。
SPD条件下での蒸留
抽出油を、2’’ガラス分子蒸留器を介して通過させて脱水抽出油を提供した。流速は、約480g/hrに維持した。真空、蒸発器および凝縮器温度は、それぞれ0.2mmHg、130℃および60℃であった。次いで、以下の表に示すとおり脱水抽出油を蒸留器を介して1mtorrの真空において異なる温度において3回通過させた。それぞれの通過後、トリアシルグリセロール含有画分(すなわち、脂質含有画分またはSPD精製油)のエルゴステロールレベル、EPA含有率(TFAの重量%として)および総ω−3含有率(TFAの重量%として)を上記のとおり測定した。
したがって、210℃において、SPD精製油のエルゴステロールレベルは、110mg/油100gであり、それは240℃において約53mg/油100gに低減された。エルゴステロールは、温度を270℃にさらに増加させた場合に1mg/油100gにほぼ完全に除去された。このことは、抽出油のエルゴステロール含有率と比較して1回目の通過、2回目の通過および3回目の通過それぞれにおけるエルゴステロール含有率の約57%、約86%および約99.8%の低減に対応する。
SPD精製油のPUFA含有率に関して、表26のデータは、油を270℃におけるSPD蒸留器を介して通過させた場合であっても、EPAも総ω−3含有物も顕著な分解が生じなかったことを実証する。
3回目の通過のSPD精製油を、クロマトグラフィープロファイリングを使用して予想外の構成成分および汚染物質の出現についてさらに分析した。具体的には、試験は、(i)火炎イオン化検出を有するガスクロマトグラフィー(GC/FID);(ii)薄層クロマトグラフィー(TLC);および(iii)質量分析、光散乱および紫外線検出を有する液体クロマトグラフィーにより行った(HPLC/MS/ELSD/UV)。GC/FIDプロファイルは、SPD精製油試料のメチルエステルについてランした。TLCおよびHPLC/MS/ELSD/UVプロファイルは、SPD精製油について直接ランした。全ての場合において、SPD精製油プロファイルを、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y4305株バイオマス(材料、前出)を用いて調製された参照油と比較した。
具体的には、参照油は、実施例22Aに記載の方法論に従って乾燥未処理Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y4305株バイオマスから生成した。乾燥未処理バイオマスを、油とイソヘキサン溶媒との比を1から7として媒体ミルを使用して機械的に破砕した。残留バイオマス(すなわち、細胞デブリス)を、デカンター遠心分離機を使用して除去し、溶媒を蒸発させてトリグリセリドを含有する抽出油を得た。抽出油を、低温アセトンを使用して、抽出油と溶媒との比を1から1.5として脱ガム処理し、次いで50%の水性クエン酸により酸脱ガム処理した。次いで、脱ガム処理油を酸活性化クレーにより漂白し、210℃において30分間脱臭して参照油試料を得た。
3回目の通過のSPD精製油のクロマトグラフィープロファイルは、参照試料のプロファイル中に見られないいかなるピークも含有しなかった。両方の試料を同日に同一条件下でランした。さらに、参照試料のプロファイルの対応するピークよりも顕著に高い応答を有するSPD精製油の未同定ピークは存在しなかった。また、3回目の通過のSPD精製油のピークは、低温(すなわち、それぞれ210℃および240℃)において生成された1回目の通過または2回目の通過のSPD精製油の対応するピークよりも高い応答を有さなかった。これらの分析は、SPDを使用する高温におけるエルゴステロールの除去が、油中に分解生成物の出現をもたらさないことを示し;したがって、この処理技術の適用によってはPUFAの顕著な分解が生じないことが仮定される。
実施例24
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスを、媒体ミルを使用する機械的破砕を介して破砕し、イソヘキサン溶媒を使用して粗製油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留によりアセトン脱ガム処理油のステロール含有率を低減させて脂質含有画分(すなわち、SPD精製微生物油)をもたらすために使用された手段を記載する。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスの調製
Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株を、実施例22Aに記載の方法論に従って、2段階流加プロセスにおいて培養し、得られた微生物バイオマスを脱水し、洗浄し、乾燥させた。
抽出油を生成するための乾燥未処理酵母バイオマスの媒体ミルおよびイソヘキサン溶媒を介する破砕および抽出
乾燥未処理Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株バイオマスを、イソヘキサン溶媒を用いて媒体ミルを使用して機械的に破砕した。残留バイオマス(すなわち、細胞デブリス)を、デカンター遠心分離機を使用して除去し、溶媒を蒸発させてトリグリセリドを含有する抽出油を得た。
抽出油を実施例22Bの方法論を使用して分析した。下記の表に示すとおり、微生物油は58.1EPA%TFAを含有した。
抽出油の一部を、低温アセトンを使用して抽出油と溶媒との比を1から1.5として脱ガム処理した。アセトン脱ガム処理油は、880mgのエルゴステロール/油100gおよび74.5ppmのリンを含有した。
SPD条件下での蒸留
アセトン脱ガム処理油を、実施例22Bの方法論に従って短行程蒸留に供した(但し、蒸発器温度を255℃に設定した)。第1の通過の間に蒸留物はほぼ回収されなかった。それというのも、アセトン脱ガム処理油中にほとんど水が存在しなかったためである。第2の通過の間、約12重量%の蒸留物が回収された。トリアシルグリセロール含有画分(すなわち、脂質含有画分またはSPD精製油)の最終エルゴステロールレベルは、106mg/100g(アセトン脱ガム処理油のエルゴステロール含有率と比較してエルゴステロール含有率の約88%の低減であり;SPD精製油は、66ppmのリンを含有した。
実施例25
総脂肪酸[「TFA」]の56.1%EPAを含む未濃縮微生物油の調製
本実施例は、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株細胞の微生物バイオマスから得られた未濃縮微生物油の単離を記載する。
具体的には、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株を、2段階流加プロセスを使用して培養した。次いで、微生物油を乾燥を介してバイオマスから単離し、抽出(押出、ペレット化および超臨界流体抽出の組合せを介して)し、短行程蒸留を介して精製し、56.1EPA%TFAを含む未濃縮トリグリセリドリッチのSPD精製油(すなわち、脂質含有画分)を得た。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスの発酵および押出を介する破砕およびペレット化
前出の材料に記載のとおり、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株培養物を発酵させ、微生物バイオマスを回収し、乾燥させた。次いで、乾燥未処理バイオマスを2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、バイオマスおよび15%の珪藻土(Celatom MN−4またはCelite 209,EP Minerals,LLC,Reno,NV)の混合物を予備混合し、次いでZSK−40mm MC2軸スクリュー押出機(Coperion Werner & Pfleiderer,Stuttgart,Germany)に45.5kg/hrの速度においてフィードした。26.5%のスクロースからなる水/スクロース溶液を、押出機の破砕帯域後に147mL/minの流速において注入した。押出機は、280rpmにおいて20〜23の%トルク範囲で稼働させた。得られた破砕酵母粉末を、最終水冷バレル中で35℃に冷却した。次いで、湿潤押出粉末を、多孔ドームダイ1mm直径×1mm厚スクリーンから組み立てられ、82RPMに設定されたLCIドーム粗砕機モデル番号TDG−80(LCI Corporation,Charlotte,NC)中にフィードした。押出物を、455〜600kg/hr(乾燥時速度として)において形成した。試料を、100℃において維持される1150標準立方フィート毎分[「scfm」]の空気流を有する0.50m2の乾燥帯域および18℃において500〜600scfmと推定される空気流により稼働する0.24m2の冷却帯域を有する振動流動床乾燥機(FBP−75,Carman Industries,Inc.,Jeffersonville,IN)中で乾燥させた。約1mm直径×長さ6から10mmの乾燥ペレットは、25〜30℃の範囲で乾燥機を出て、O’Haus水分分析装置(Parsippany,NJ)により計測して5〜6%の最終水分含有率を有した。
押出酵母バイオマスの油抽出
実施例22Bに記載の320Lステンレス鋼抽出容器を使用して、押出酵母ペレットを、抽出溶媒としての超臨界流体相CO2を使用して抽出して未濃縮トリグリセリドリッチ抽出油を生成した。
抽出容器に、最初に約150kgの押出酵母ペレットを装填した。次いで、未濃縮抽出油をペレットから超臨界流体CO2により5000psig(345bar)、55℃および出発酵母ペレット1kg当たり40から50kgのCO2の範囲の溶媒フィード比において抽出した。約37.5kgの未濃縮抽出油を分別器容器から回収し、それに約1000ppmの2つの酸化防止剤のそれぞれ、すなわち、Covi−ox T70(Cognis,Mississauga,Canada)およびDadex RM(Nealanders,Mississauga,Canada)を添加した。
SPD条件下での蒸留
未濃縮抽出油を脱ガスし、次いで6’’分子蒸留器(POPE Scientific,Saukville,WI)を介して12kg/hrのフィード速度を使用して通過させて残留水を除去した。蒸発器および凝縮器の表面温度は、それぞれ140℃および15℃に設定した。真空は15torrに維持した。
脱水抽出油を分子蒸留器を介して12kg/hrのフィード速度において2回目として通過させ、蒸留物中の不所望な低分子量化合物、例えばエルゴステロールおよび遊離脂肪酸を除去した。真空を1mtorrに低下させ、蒸発器の表面温度を240℃から270℃の間に維持した。未濃縮抽出油のステロール含有率に対して低減したステロールを有するトリアシルグリセロール含有画分(すなわち、SPD精製油)を得た。未濃縮SPD精製油を40℃未満に冷却してから包装した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からの未濃縮SPD精製油の特性決定
Z1978株からの未濃縮SPD精製油(すなわち、脂質含有画分)の脂肪酸組成を、実施例27の方法論に従ってエステル交換後に分析した。SPD精製油は、以下の表28に示すとおり56.1EPA%TFAを含有し、DHAは検出不能(すなわち、<0.05%)であった。
実施例26
ナンノクロロプシス・アルガエ(Nannochloropsis Algae)からの固体ペレットの作出およびその油抽出
本実施例は、ヤロウィア(Yarrowia)以外の微生物バイオマスを用いる使用についての本明細書に開示される方法論の適用性を実証するために実施された試験を記載する。具体的には、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)バイオマスを、粉砕剤および結合剤と混合して固体ペレットを提供した。これらのペレットを超臨界CO2抽出に供し、総抽出収率を比較した。
Kuehnle Agrosystems,Inc.(Honolulu,HI)は、購入用の種々の純培養の単藻ストック藻類を提供している。依頼時、少なくとも20%の脂質含有率を有する適切な微生物バイオマスとして、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)種を含む藻類KAS604株が提案された。バイオマスを標準条件(油含有率について最適化しない条件)下で成長させ、Kuehnle Agrosystems,Inc.により乾燥させ、次いで微細藻類粉末を以下の使用のために購入した。
91.7部の微細藻類粉末を、8.3部のCelatom MN−4珪藻土とバッグ中で予備混合した。得られた乾燥混合物を、18mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−18mm MC)に0.91kg/hrにおいてフィードした。乾燥フィードとともに、10.9部の水および5.0部の糖から作製された糖の31%水溶液を、押出機の破砕帯域後に2.5mL/minの流速において注入した。押出機は、10kWモーターおよび高トルクシャフトにより、200rpmおよび46〜81の%トルク範囲において稼働して最終水冷バレル中で31℃に冷却された破砕酵母粉末を提供した。
次いで、固定可能な混合物を、1.2mm穴径×1.2mm厚スクリーンにより組み立てられ、20RPMに設定されたMG−55 LCIドーム粗砕機中にフィードした。押出物を20kg/hrおよび6〜7アンペア電流において形成した。試料をSherwood乾燥機中で70℃において20分間乾燥させて4.9%の最終水分レベルを有する固体ペレットを提供した。約1.2mm直径×2〜8mm長の固体ペレットは、82.1%の藻類であり、組成物の残部はペレット化助剤であった。次いで、固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレット中の総油および遊離油の量を測定し、SCFにより固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレットから抽出された油の量と比較した。
固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレットの総油含有率の測定
具体的には、総油は、ペレット化試料について、乳鉢または乳棒を使用してそれを穏やかに微粉末に粉砕し、次いで分析のためのアリコート(トリプリケートで)を秤量することにより測定した。試料中の脂肪酸(主としてトリグリセリドとして存在)を、80℃における塩化アセチル/メタノールとの反応により対応するメチルエステルに変換させた。次いで、C15:0内部標準を、較正目的のために既知量でそれぞれの試料に添加した。個々の脂肪酸の測定は、火炎イオン化検出(GC/FID)を用いるキャピラリーガスクロマトグラフィーにより行った。脂肪酸(トリグリセリド形態で表現)の総和は6.1%であり;これを試料の総油含有率と解釈した。正規化後、ペレット中の藻類は総質量の82.1%のみを表したため、藻類の総油含有率は7.4%と決定した(すなわち、6.1%を0.821で割った)。
総油試料内の個々の脂肪酸の分布を以下の表に示す。
固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレットの遊離含油率の測定
遊離油は、通常、試料をn−ヘプタンと撹拌し、遠心分離し、次いで上清を乾燥するまで蒸発させることにより測定する。次いで、得られた残留油を重量測定し、元の試料の重量割合として表現する。この手順は、ペレット化藻類試料について十分でないことが見出された。それというのも、得られた残留物が顕著なレベルの色素を含有したためである。したがって、上記手順は、上記の残留物を回収し、既知量のC15:0内部標準を添加し、次いで総油測定と同一のパラメーターを使用するGC/FIDにより分析することにより改変した。このようにして、試料の遊離油含有率を3.7%と測定した。正規化後、藻類の遊離油含有率は4.5%(すなわち、3.7%を0.821で割った)と測定した。
固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレットのSCF抽出
抽出容器に、24.60gの固体ペレット(乾燥重量基準)を装填し、粉砕剤および結合剤を補正すると約21.24gの藻類をもたらした。ペレットをCO2によりフラッシュし、次いで約40℃に加熱し、約311barに加圧した。ペレットをこれらの条件において3.8g/minのCO2の流速において約6.7hr抽出し、約71gのCO2/g藻類の最終溶媒フィード(S/F)比を得た。抽出収率は装填された藻類の6.2%
であった。
上記に基づき、本明細書に記載の方法[すなわち、(a)ある水分レベルを有し、含油微生物を含む微生物バイオマス、および少なくとも1つの吸油し得る粉砕剤を混合して破砕微生物バイオマスを含む破砕バイオマス混合物を提供する工程;(b)少なくとも1つの結合剤を前記破砕バイオマス混合物とブレンドして固体ペレットを形成し得る固定可能な混合物を提供する工程;ならびに(c)固定可能な混合物から前記固体ペレットを形成する工程を含む方法]は、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)からの破砕微生物バイオマスを含む固体ペレットを生成するために首尾良く利用することができることが結論づけられる。本方法論は、多くの他の含油微生物に好適であることが証明されることが仮定されるが、それぞれの特定の微生物についてのプロセスの最適化が破砕効率の増加をもたらすことが予期される。
さらに、本実施例は、固体ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)ペレットを種々の手段において溶媒により抽出して油を含む抽出物を提供することができることを実証する。当技術分野において周知のとおり、異なる抽出法は、異なる量の抽出油をもたらし;抽出収率は、抽出プロセスの最適化時に特定の固体ペレットについて増加させることができることが予期される。さらに、抽出油を本明細書の開示に従って短行程蒸留条件下で蒸留に供することができることが予期される。
実施例27
総脂肪酸[「TFA」]の58.2%のEPAを含む微生物油の調製
本実施例は、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞の微生物バイオマスから得られた微生物油の単離を記載する。次いで、実施例28〜30に下記のとおり微生物油を種々の手段により富化する。
微生物油を、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株バイオマスからイソヘキサン溶媒を介して単離し、精製し、58.2EPA%TFAを含む未濃縮トリグリセリドリッチ精製油を得た。
Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株バイオマスの発酵およびそれからの微生物油の抽出
材料に従って、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株を、2段階流加プロセスにおいて成長させ、脱水し、洗浄した。次いで、ドラム乾燥させて水分を5%未満に低減させて未処理微生物バイオマスの短期貯蔵および輸送の間の油安定性を確保した。
次いで、微生物バイオマスを、イソヘキサン溶媒を用いる機械的破砕に供してバイオマスからEPAリッチの微生物油を抽出した。残留バイオマス(すなわち、細胞デブリス)を除去し、溶媒を蒸発させて抽出油を得た。抽出油を、リン酸を使用して脱ガム処理し、20ボーメ度の腐食剤によりリファインしてリン脂質、微量金属および遊離脂肪酸を除去した。シリカおよびクレーによる漂白を使用して有色化合物および少量の酸化生成物を吸着させた。最終脱臭工程は揮発性、悪臭および追加の有色化合物をストリップ除去してPUFAをそれらの中性トリグリセリド形態で含む未濃縮精製微生物油を得た。
Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株からの微生物油の特性決定
未濃縮精製油の脂肪酸組成を、実施例22Aに記載のGC法を使用して分析した。
未濃縮Y8672精製油についてのGC分析から得られた結果を、以下の表30に示す。精製油は、58.2EPA%TFAを含有し、DHAは検出不能であった(すなわち、<0.05%)。
当業者は、バイオマスをペレット化、抽出、次いで短行程蒸留条件下での蒸留に供した場合、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8672株から類似の組成の微生物油を得ることができることを予期する。
実施例28
尿素アダクト形成を介する微生物油の富化
本実施例は、油の重量パーセントとして計測して最大78%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、尿素アダクト形成を介する実施例27からの未濃縮精製油の富化時に得ることができることを実証する。
最初にKOH(20g)を320gの絶対エタノール中で溶解させた。次いで、溶液を1kgの実施例27からの未濃縮精製油と混合し、約60℃に4時間加熱した。完全な相分離のため、反応混合物を分液漏斗中で一晩平静にした。下層グリセロール画分を除去した後、少量のシリカを上層エチルエステル画分に添加して過剰の石鹸を除去した。エタノールを真空下で約90℃において回転蒸発器にかけて除去し、澄明であるが淡褐色のエチルエステルを得た。
エチルエステル(20g)を40gの尿素および100gのエタノール(90%水性)と約65℃において混合した。混合物を、それが澄明な液体に変化するまでこの温度において維持した。次いで、尿素結晶およびアダクトの形成のために混合物を冷却し、室温において約20時間保持した。次いで、固体を濾過を介して除去し、液体画分を回転蒸発器にかけてエタノールを除去した。回収したエチルエステル画分を200mLの温水の1回目、次いで2回目の洗液により洗浄した。溶液のpHを最初に3〜4に調整してから水性画分をデカント除去した。次いで、エチルエステル画分を乾燥させて残留水を除去した。
エチルエステル画分の脂肪酸エチルエステル[「FAEE」]濃度を決定するため、FAEEをトルエン/ヘキサン(2:3)中での希釈後に実施例22Aに上記したのと同一のGC条件および計算を使用して直接分析してFAME濃度を決定した。方法論における唯一の改変は:i)C15:0に代えてC23:0EEを内部スタンダードとして使用し;1.042〜1.052の分子量変換係数が要求されないことであった。
しかしながら、EPAエチルエステル[「EPA−EE」]を、上記のものからわずかに改変した手順に供した。具体的には、既知濃度および純度の参照EPA−EEスタンダードを、分析試料中で予期されるほぼ同一量のEPA−EEおよび同一量のC23:0EE内部スタンダードを含有するように調製した。試料中のEPA−EEの正確な量(mg)は、式:(EPA−EEピークの面積/C23:0EEピークの面積)×(較正スタンダードにおけるC23:0EEピークの面積/較正スタンダードにおけるEPA−EEピークの面積)×(較正スタンダードにおけるmgEPA−EE)に従って計算する。全ての内部および参照スタンダードは、Nu−Chek Prep,Incから入手した。
このように、FAEE濃度を富化油画分、すなわち、EPA濃縮物において決定した。具体的には、表31に示すとおり、尿素アダクト形成を介する未濃縮精製油の富化により、油の重量パーセントとして計測して77%のEPAエチルエステルを有し、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を得た。
当業者は、油の重量パーセントとして計測して77%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、当業者に周知の手段を使用して容易に変換して代替的形態のEPA濃縮物を得ることができることを認識する(すなわち、EPAエチルエステルを、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、メチルエステル、およびそれらの組合せに変換することができる)。したがって、例えば、77%のEPAエチルエステルを、グリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化して油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないトリグリセリド形態のEPA濃縮物をもたらすことができる。
実施例29
液体クロマトグラフィーを介する微生物油の富化
本実施例は、油の重量パーセントとして計測して最大95.4%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、液体クロマトグラフィー法を使用する実施例27からの未濃縮精製油の富化時に得ることができることを実証する。
実施例27からの未濃縮精製油を、実施例28に記載の方法と同様の方法を使用してエチルエステルにエステル交換したが、一部わずかに改変した(すなわち、塩基触媒として水酸化カリウムに代えてナトリウムエトキシドを使用)。
次いで、エチルエステルをEquateq(Isle of Lewis,Scotland)によりそれらの液体クロマトグラフィー精製技術を使用して富化した。種々の富化度を達成した(例えば、以下の試料#1および試料#2についての実験データを参照)。したがって、表32に示すとおり、液体クロマトグラフィーを介する未濃縮精製油の富化により、油の重量パーセントとして計測して最大95.4%のEPAエチルエステルを有し、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を得た。
当業者は、油の重量パーセントとして計測して82.8%のEPAエチルエステルまたは95.4%のEPAエチルエステルのいずれかを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、当業者に周知の手段を使用して容易に変換して代替的形態のEPA濃縮物を得ることができることを認識する(すなわち、EPAエチルエステルを、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、メチルエステル、およびそれらの組合せに変換することができる)。したがって、例えば、82.8%EPAのエチルエステルまたは95.4%のEPAエチルエステルをグリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化して油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないトリグリセリド形態のEPA濃縮物をもたらすことができる。
実施例30
超臨界流体クロマトグラフィーを介する微生物油の富化
本実施例は、油の重量パーセントとして計測して最大89.8%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、超臨界流体クロマトグラフィー[「SFC」]法を使用する実施例27からの未濃縮精製油の富化時に得ることができることを実証する。
実施例27からの未濃縮精製油を、塩基触媒としてのナトリウムエトキシドを使用してエチルエステルにエステル交換し、次いで吸着カラムを介して処理して超臨界CO2中で不溶である化合物を除去した。次いで、処理されたエチルエステル油をK.D.Pharma(Bexbach,Germany)によりそれらの超臨界クロマトグラフィー技術を使用して精製した。種々の富化度を達成した(例えば、以下の試料#1および試料#2についての実験データを参照)。したがって、表33に示すとおり、SFCを介する未濃縮精製油の富化により、油の重量パーセントとして計測して85%および89.8%のEPAエチルエステルを有し、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を得た。
当業者は、油の重量パーセントとして計測して85%のEPAエチルエステルまたは89.8%のEPAエチルエステルのいずれかを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、当業者に周知の手段を使用して容易に変換して代替的形態のEPA濃縮物を得ることができることを認識する(すなわち、EPAエチルエステルを、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、メチルエステル、およびそれらの組合せに変換することができる)。したがって、例えば、85%のEPAエチルエステルまたは89.8%のEPAエチルエステルをグリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化して油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないトリグリセリド形態のEPA濃縮物をもたらすことができる。
実施例31
総脂肪酸[「TFA」]の56.1%のEPAを含む微生物油の調製
本実施例は、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞の微生物バイオマスから得られた微生物油の単離を記載する。次いで、この微生物油を以下の実施例32に記載のとおり分留により富化した。
具体的には、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株を、約58.7EPA%TFAの生成を可能とするように組換え遺伝子操作し、2段階流加プロセスを使用して培養した。次いで、微生物油を乾燥を介してバイオマスから単離し、抽出(押出、ペレット化および超臨界流体抽出の組合せを介して)し、短行程蒸留を介して精製し、56.1EPA%TFAを含む未濃縮トリグリセリドリッチのSPD精製油(すなわち、脂質含有画分)を得た。
乾燥未処理Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株バイオマスの発酵および押出を介する破砕およびペレット化
前出の材料セクションに記載のとおり、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978株培養物を発酵させ、微生物バイオマスを回収し、乾燥させた。
次いで、乾燥未処理バイオマスを2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、バイオマスおよび15%の珪藻土(Celatom MN−4またはCelite 209,EP Minerals,LLC,Reno,NV)の混合物を予備混合し、次いでZSK−40mm MC2軸スクリュー押出機(Coperion Werner & Pfleiderer,Stuttgart,Germany)に45.5kg/hrの速度においてフィードした。26.5%のスクロースからなる水/スクロース溶液を、押出機の破砕帯域後に147mL/minの流速において注入した。押出機は、280rpmにおいて20〜23の%トルク範囲で稼働させた。得られた破砕酵母粉末を、最終水冷バレル中で35℃に冷却した。次いで、湿潤押出粉末を、多孔ドームダイ1mm直径×1mm厚スクリーンから組み立てられ、82RPMに設定されたLCIドーム粗砕機モデル番号TDG−80(LCI Corporation,Charlotte,NC)中にフィードした。押出物を、455〜600kg/hr(乾燥時速度として)において形成した。試料を、100℃において維持される1150標準立方フィート毎分[「scfm」]の空気流を有する0.50m2の乾燥帯域および18℃において500〜600scfmと推定される空気流により稼働する0.24m2の冷却帯域を有する振動流動床乾燥機(FBP−75,Carman Industries,Inc.,Jeffersonville,IN)中で乾燥させた。約1mm直径×長さ6から10mmの乾燥ペレットは、25〜30℃の範囲で乾燥機を出て、O’Haus水分分析装置(Parsippany,NJ)により計測して5〜6%の最終水分含有率を有した。
押出酵母バイオマスの油抽出
実施例22Bに記載の320Lステンレス鋼抽出容器および構成を使用して、押出酵母ペレットを、抽出溶媒としての超臨界流体相CO2を使用して抽出して未濃縮抽出油を生成した。油抽出物を分別器から定期的に抜き、生成物として回収した。
抽出容器に、最初に約150kgの押出酵母ペレットを装填した。次いで、未濃縮抽出油をペレットから超臨界流体CO2により5000psig(345bar)、55℃および出発酵母ペレット1kg当たり40から50kgのCO2の範囲の溶媒フィード比において抽出した。約37.5kgの未濃縮抽出油を分別器容器から回収し、それに約1000ppmの2つの酸化防止剤のそれぞれ、すなわち、Covi−ox T70(Cognis,Mississauga,Canada)およびDadex RM(Nealanders,Mississauga,Canada)を添加した。
SPD条件下での蒸留
未濃縮抽出油を脱ガスし、次いで6’’分子蒸留器(POPE Scientific,Saukville,WI)を介して12kg/hrのフィード速度を使用して通過させて残留水を除去した。蒸発器および凝縮器の表面温度は、それぞれ140℃および15℃に設定した。真空は15torrに維持した。
脱水抽出油を分子蒸留器を介して12kg/hrのフィード速度において2回目として通過させ、蒸留物中の不所望な低分子量化合物、例えばエルゴステロールおよび遊離脂肪酸を除去した。真空を1mtorrに低下させ、蒸発器の表面温度を240℃から270℃の間に維持した。未濃縮抽出油のステロール含有率に対して低減したステロールを有するトリアシルグリセロール含有画分(すなわち、脂質含有画分またはSPD精製油)を得た。未濃縮SPD精製油を40℃未満に冷却してから包装した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からのSPD精製油の特性決定
Z1978株からの未濃縮SPD精製油の脂肪酸組成を、実施例27の方法論に従ってエステル交換後に分析した。SPD精製油は、以下の表34に示すとおり56.1EPA%TFAを含有し、DHAは検出不能(すなわち、<0.05%)であった。
実施例32
分留を介する微生物油の富化
本実施例は、油の重量パーセントとして計測して最大74%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、分留法を使用する実施例31からの未濃縮SPD精製油の富化時に得ることができることを実証する。
25kgの実施例31からの未濃縮微生物油を、50Lのガラスフラスコに添加した。次いで、7.9kgの絶対エタノールおよび580gのナトリウムエトキシド(エタノール中21%)をフラスコに添加した。混合物を約85℃において少なくとも30分間加熱環流させた。反応は、薄層クロマトグラフィー法によりモニタリングし、油の希釈試料をシリカプレート上にスポットし、酢酸/ヘキサン/エチルエーテル溶媒混合物を使用して分離した。未反応TAGからなるスポットをヨウ素染色により検出した。不存在またはほとんど検出不能なスポットは、反応の完了を表すとみなした。反応終点に到達した後、混合物を50℃未満に冷却し、相を分離させた。グリセロール含有下層を分離し、廃棄した。有機上層を2.5Lの5%クエン酸により洗浄し、次いで回収された有機層を5Lの15%水性硫酸ナトリウムにより洗浄した。水相を再度廃棄し、エチルエーテル相をエタノールにより回転蒸発器中で約60℃において蒸留して残留水を除去した。エチルエステル形態の約25kgの油を回収した。
次いで、エチルエステルを4’’ハイブリッドワイプドフィルム(wiped−film)および分別システム(POPE Scientific,Saukville,WI)に5kg/hrのフィード速度においてフィードしてEPAエチルエステルを富化した。蒸発器温度を、0.47torrの真空下で約275℃に設定した。充填カラムの頭部温度は約146℃であった。低分子量エチルエステル、主としてC18を、オーバーヘッドから軽質画分として除去した。抽出されたEPAエチルエステルを重質画分として回収し、主として着色および重合物を除去するために第2の蒸留に付した。第2の蒸留は、6’’分子蒸留器(POPE Scientific,Saukville,WI)中で20kg/hrのフィード速度において実施した。蒸発器は、約205℃において稼働させ、内部凝縮器温度設定を約10℃および0.01torrの真空とした。約7〜10重量%のエチルエステルが除去され、澄明な淡色EPA濃縮物を得た。最終EPA濃縮物は、油の重量パーセントとして計測して74%のEPAエチルエステルを含有し、実質的にDHAを含まなかった。
当業者は、油の重量パーセントとして計測して74%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物を、当業者に周知の手段を使用して容易に変換して代替的形態のEPA濃縮物を得ることができることを認識する(すなわち、EPAエチルエステルを、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、メチルエステル、およびそれらの組合せに変換することができる)。したがって、例えば、74%のEPAエチルエステルをグリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化して油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないトリグリセリド形態のEPA濃縮物をもたらすことができる。
実施例33
EPA濃縮物は実質的に環境汚染物質を含まない
本実施例は、油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まないEPA濃縮物、およびTFAの重量%として計測して30〜70重量%のEPAを含み、実質的にDHAを含まない微生物油の両方が、実質的に環境汚染物質を含まないことを実証する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株からの未濃縮精製油の同等の試料を、実施例27に記載のとおり調製した。未濃縮抽出油中のポリ塩化ビフェニル[「PCB」]、(CAS番号1336−36−3)、ポリ塩化ジベンゾジオキシン[「PCDD」]およびポリ塩化ジベンゾフラン[「PCDF」]のmg/g世界保健機関国際毒性等価量(World Health Organization International Toxicity Equivalent)[「WHO TEQ」]として計測される濃度を、EPA法1668 Rev Aに従って測定した。極端に低いかまたは検出不能なレベルの環境汚染物質が検出された。
上記結果に基づくと、本明細書において、実施例27の未濃縮抽出油および実施例31の未濃縮SPD精製油中のPCB、PCDD、およびPCDFの濃度も、極端に低いかまたは検出不能なレベルの環境汚染物質を含有することが想定される。同様に、本明細書において、それぞれ尿素アダクト形成、液体クロマトグラフィー、SFCおよび分留を介して富化された実施例28、29、30および32におけるEPAエチルエステル濃度も、極端に低いかまたは検出不能なレベルの環境汚染物質を含有するはずであることが仮定される。それというのも、それらはそれ自体実質的に環境汚染物質を含まない未濃縮油から生成されたためである。
より具体的には、表35は、実施例28、29、30および32におけるEPA濃縮物内のPCB、PCDD、およびPCDFの予期されるTEQレベルを記載する。比較のため、米国特許第7,732,488号明細書に記載の汚染物質がストリップされた魚油中の同一化合物の濃度も含める。米国特許第7,732,488号明細書は、それらの環境汚染物質を許容可能なレベルに低減させる特別な処理法を提供することに留意される。
上記のとおり、実施例28、29、30および32におけるEPAエチルエステル濃縮物は、米国特許第7,732,488号明細書における汚染物質がストリップされた魚油よりも低レベルのPCB、PCDD、およびPCDFを有する。実際、PCDFの汚染物質レベルは、使用される分析法の検出限界未満であることが予期される。
実施例34
分留および液体クロマトグラフィーを介する微生物油の富化
本実施例は、油の重量パーセントとして計測して最大97.4%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まないEPA濃縮物を、分留および液体クロマトグラフィー法の組合せを使用する未濃縮精製油の富化時に得ることができることを実証する。
脂質含有画分を、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株(前出、実施例31;米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書も参照)から得た。具体的には、実施例31に記載のとおり株を培養し、回収し、押出およびペレット化を介して破砕し、超臨界流体相CO2を使用して抽出した。次いで、未濃縮抽出油をSPD条件下(実施例31)で精製した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株からのSPD精製油の特性決定
Y9502株からの未濃縮SPD精製油の脂肪酸組成を、実施例27の方法論に従って分析した。以下の表36に示すとおり、SPD精製油は、54.7EPA%TFAを含有し、DHA、NDPAおよびHPAは検出不能であった(すなわち、<0.05%)。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株からのSPD精製油の富化
SPD精製油を、実施例29に記載の方法と同様の方法を使用してエチルエステルにエステル交換し、実施例31に記載の分留にさらに供した。分留されたEPA濃縮物は、油の重量パーセントとして計測して71.9%のEPAエチルエステルを含有し、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まなかった(以下の表37の標題「分留」の欄を参照)。
次いで、分留されたエチルエステルをEquateq(Isle of Lewis,Scotland)によりそれらの液体クロマトグラフィー精製技術を使用して富化した。液体クロマトグラフィーを介する分留されたEPA濃縮物の富化により、油の重量パーセントとして計測して最大97.4%のEPAエチルエステルを有し、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まない最終EPA濃縮物を得た(以下の表37の標題「液体クロマトグラフィー富化」の欄を参照)。
当業者は、油の重量パーセントとして計測して97.4%のEPAエチルエステルを含み、実質的にDHA、NPDAおよびHPAを含まないEPA濃縮物を、当業者に周知の手段を使用して容易に変換して代替的形態のEPA濃縮物を得ることができることを認識する(すなわち、EPAエチルエステルを、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、メチルエステル、およびそれらの組合せに変換することができる)。したがって、例えば、97.4%のEPAエチルエステルを、グリセロール分解を介してトリグリセリドに再エステル化して油の重量%として計測して少なくとも70重量%のEPAを含み、実質的にDHA、NPDAおよびHPAを含まないトリグリセリド形態のEPA濃縮物をもたらすことができる。
さらに、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア(Yarrowia)細胞の任意の微生物バイオマスから本明細書における本発明の方法により調製されたEPA濃縮物は、実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まないと予期されることが留意される。最終EPA濃縮物が実質的にDHA、NDPAおよびHPAを含まない、Y・リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502株から得られた微生物油に基づき上記で得られた結果は、実施例27および実施例31から得られた微生物油から調製されるEPA濃縮物から予期される。DHA、NDPAおよびHPA不純物が、油として乾燥細胞重量の25%を超過して蓄積するヤロウィア(Yarrowia)から得られた、TFAの重量%として計測して30から70重量%のEPAを含む初期微生物油中に存在しないため、脂肪酸不純物は、それから生成されたEPA濃縮物中にも存在しない。