以下、本発明の実施の形態に係る画像形成装置について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタにより構成されている。画像形成装置1は、本体内部の上方にボトル収容部101を有しており、このボトル収容部101には、4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在に設置されており、これらのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kには、対応する各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーがそれぞれ収容されている。
ボトル収容部101の下方には、中間転写ユニット85が配設されている。中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84および中間転写クリーニング部80を有している。また、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78に対向し各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kを有している。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77および図示しない除電部が配設されている。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、円筒状に形成され、図示しない駆動源により回転駆動される。感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面部には感光層が設けられており、露光装置から出射された破線で示す光ビームが感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面にスポット照射されることにより、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面には原稿読取部が読み取った画像情報あるいは端末からネットワークを介して取得した画像情報に応じた静電潜像が書き込まれる。
帯電部75は、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面を一様に帯電するようになっており、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kに対して接触により帯電する接触方式のものが採用されている。
現像部76は、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kにトナーの供給を行い、供給されたトナーが感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面に書き込まれた静電潜像に付着することにより、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の静電潜像がトナー像として顕像化させるものであり、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kに対し接触せずにトナーを付着させる非接触方式のものが採用されている。
クリーニング部77は、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面に付着している残留トナーを除去するようになっており、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの外周面にブラシを接触させるブラシ接触方式のものが採用されている。
中間転写ベルト78は、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83およびテンションローラ84によって張架・支持されるとともに、2次転写バックアップローラ82の回転駆動によって図1に示す矢印方向に無端移動される。
中間転写ベルト78は、樹脂フィルム、または、ゴムを基体として形成された無端状ベルトにより構成されており、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に形成されたトナー像が転写されるようになっている。また、この中間転写ベルト78に転写されたトナー像が、記録媒体Pに未定着画像として転写される。
各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、帯電工程、露光工程、現像工程、1次転写工程、クリーニング工程を含む作像プロセスが実行されるようになっており、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されるようになっている。
1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。また、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kには、トナーの極性とは逆の極性となる転写バイアスが印加されるようになっている。
次に作像プロセスについて説明する。
まず、帯電工程において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1における時計回りに回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される。
そして、露光工程において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達し、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される。
次に、現像工程において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が、現像部76との対向位置に達し、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される。
次に、1次転写工程において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が、中間転写ベルト78および1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、未転写トナーが僅かに残存する。
次に、クリーニング工程において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される。
そして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。これにより、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kにおける作像プロセスが終了する。
上記の現像工程を経て各感光体ドラム上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト78上に重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
次に、転写プロセスについて説明する。
中間転写ベルト78は、図1の矢印方向に走行することにより、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。これにより、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
そして、中間転写ベルト78は、各色のトナー像が重ねて転写された状態で2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。これにより、中間転写ベルト78における転写プロセスが終了する。
次に、画像形成プロセスについて説明する。
記録媒体Pは、画像形成装置1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して2次転写ニップの位置に搬送される。給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。これにより、画像形成プロセスが完了する。
なお、画像形成装置1は、図示しない本体制御部および操作入力部を備えている。本体制御部は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を含むマイクロコンピュータにより構成されており、予めROMに記憶されたプログラムを、CPUによって実行するようになっている。
また、本体制御部は、操作入力部および画像形成装置1に設けられた各種センサ類やモータ等と接続されている。本体制御部は、各種センサから入力される検出信号に基づいて、上述した感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kを駆動する駆動モータや、加圧ローラ31を回転駆動するための駆動機構などの各モータ類を制御するとともに、ヒータ25に対する通電制御を実行するようになっている。
操作入力部は、画像形成装置1の本体に設けられ、テンキーやプリントスタートキーなどの各種キーおよび各種表示器を有しており、各種キーを介して入力された入力信号を本体制御部に出力するようになっている。
なお、画像形成装置1がFAXトレイを有するようにし、本体制御部は、電話回線を介してFAX信号により画像を表すデータを受信した場合には、定着装置20により画像が定着された記録媒体をFAXトレイに搬送するようにしてもよい。
次に、図2〜図9を参照して、画像形成装置1に設置される定着装置20について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21、加熱部材22、保持部材23、熱源としてのヒータ25、ニップ形成部材26、第1の板金70、第2の板金71、加圧部材としての加圧ローラ31および温度センサ40を備えている。
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトにより形成されており、図2に示す矢印方向(反時計回り)に走行する。定着ベルト21は、ニップ形成部材26との摺接面となる内周面側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層され、全体の厚さが1mm以下となるよう形成されている。
定着ベルト21の基材層は、層厚が20〜35μmであり、ニッケル、ステンレスなどの金属材料やポリイミドなどの樹脂材料により形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであり、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴムあるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成されている。この弾性層が設けられることにより、定着ニップ部28における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミドあるいはPES(ポリエーテルサルファイド)などにより形成されている。この離型層が設けられることにより、トナー像Tに対する離型性、すなわち剥離性が担保される。
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmに設定されると好適である。本実施の形態においては、定着ベルト21の直径は30mm程度に設定されている。
加熱部材22、保持部材23、ヒータ25およびニップ形成部材26は、定着ベルト21の内周面側に固設されている。
ニップ形成部材26は、定着ベルト21の内周面に摺接するように固定されている。このニップ形成部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することにより、記録媒体Pを記録媒体搬送方向Yに搬送する定着ニップ部28が形成される。
図3に示すように、ニップ形成部材26は、幅方向の両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、ニップ形成部材26の構成については、後でさらに詳しく説明する。
加熱部材22は、肉厚が0.1mmの金属パイプにより形成されている。加熱部材22は、定着ニップ部28を除く位置で定着ベルト21の内周面に直接的に対向するように形成されている。また、加熱部材22は、定着ニップ部28の位置において内部に凹状に形成されており、後述するように、この凹状に形成された位置に、ニップ形成部材26がクリアランスをあけて挿設されるようになっている。
加熱部材22は、定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、加熱部材22の幅方向両端部に図示しない樹脂製のフランジを取り付けて(例えば加熱部材22に嵌合させて)、このフランジを介して定着装置20の側板43に固定支持するようにしてもよい。また、加熱部材22は、内周側に設置されているヒータ25の輻射光により加熱され、この加熱された加熱部材22により定着ベルト21が加熱されるようになっている。すなわち、加熱部材22がヒータ25より直接的に加熱され、定着ベルト21がヒータ25によって加熱部材22を介して間接的に加熱される。
加熱部材22は、アルミニウム、鉄、ステンレスなど熱伝導性を有する金属により構成されている。ここで、加熱部材22の肉厚を0.2mm以下に設定した場合には、加熱部材22の加熱効率が向上するため、定着ベルト21の加熱効率も向上することとなり好適である。本実施の形態においては、加熱部材22は、ステンレスにより構成されている。
熱源としてのヒータ25は、ハロゲンヒータやカーボンヒータなど公知のヒータにより構成されており、両端部が定着装置20の側板43に固定されている。本体制御部は、輻射熱によって加熱部材22が加熱されるようヒータ25に対し通電制御を実行するようになっている。また、加熱部材22の内面は黒色塗装されている。これにより、ヒータ25からの輻射熱の輻射率が向上する。
また、定着ベルト21は、加熱部材22によって定着ニップ部28を除く位置、特に定着ニップ部28よりも上流側の位置で加熱された状態で定着ニップ部28を通過する。これにより、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、本体制御部は、定着ベルト21の外周面に対向する温度センサ40からベルト表面温度の検出結果を表す信号を取得し、この信号に応じてヒータ25の通電制御を行うようになっている。このようなヒータ25に対する通電制御によって、定着ベルト21の定着ニップ部28における温度、すなわち定着温度を所望の温度に設定することができる。温度センサ40は、例えば、サーミスタにより構成されている。
このように、本実施の形態に係る定着装置20は、加熱部材22によって定着ベルト21が周方向にわたって広い範囲で加熱されるので、記録媒体Pの搬送を高速化した場合においても定着ベルト21が充分に加熱されてトナー像Tの定着不良の発生を抑止することができる。したがって、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、定着装置20の小型化が達成される。
定着ベルト21と加熱部材22とは、加熱領域(本実施の形態の場合には定着ニップ部28の上流側の領域であって、ヒータ25から加熱部材22への輻射熱が保持部材23により遮蔽されない領域)において接触して摺動する構成、もしくは0.3mm以下のギャップδを有する構成としている。これにより、定着ベルト21を加熱部材22により効率的に加熱することが可能となるが、加熱領域において両者が接触して摺動する構成とした方が加熱効率が高く望ましい。但し、加熱領域において定着ベルト21と加熱部材22とを密着させる場合には、加熱領域における定着ベルト21と加熱部材22との圧接力が大きくなりすぎても定着ベルト21のトルクが増大し、磨耗を加速する恐れがある。そこで、かかる場合には定着ベルト21と加熱部材22との圧接力は0.3kgf/cm2以下になるようにすることが好ましい。
また、加熱部材22の外周部には、定着ベルト21の磨耗が軽減されるよう潤滑剤としてのフッ素グリスが塗布されている。なお、加熱部材22と定着ベルト21との摺動抵抗を低下させるために、加熱部材22の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、定着ベルト21の内周面にフッ素を含む材料からなる表面層を形成してもよい。また、本実施の形態では、加熱部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、加熱部材22の断面形状が多角形になるように形成してもよい。
保持部材23は、定着ニップ部28を形成するニップ形成部材26を保持するためのもので、定着ベルト21の内周面側に固設されている。保持部材23は、幅方向の長さがニップ形成部材26と同等になるように形成されており、定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、保持部材23の幅方向両端部が加熱部材22に取り付けられている上述したフランジを介して定着装置20の側板43に固定支持されていてもよい。また、保持部材23は、ステンレスや鉄など機械的強度が高い金属材料で形成されている。この構成により、保持部材23がニップ形成部材26および定着ベルト21を介して加圧ローラ31に当接するため、ニップ形成部材26が定着ニップ部28において加圧ローラ31から加圧力を受けて大きく変形することを抑止できる。
また、保持部材23におけるヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、BA処理や鏡面研磨処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から保持部材23に向かう熱を加熱部材22の加熱に用いることができ、定着ベルト21および加熱部材22の加熱効率をより向上することが可能となる。
図4に示すように、保持部材23は、ニップ形成部材26に当接する当接部23bが本体部23aに形成されており、この当接部23bは、幅方向に複数に分割されている。これにより、ニップ形成部材26の幅方向の圧分布が均一となり、定着ニップ部28における幅方向の加圧を均一に行うことが可能となる。
図5に示すように、第1の板金70は、厚さが1.5mmのステンレス板をコの字状に形成したものであって、加熱部材22の内周面側から凹部を覆うように係合される。第1の板金70を設置することで、加熱部材22の凹部を高精度に形成することができる。なお、加熱部材22の加熱効率を向上させるために、第1の板金70のヒータ25に対向する面にBA処理や鏡面研磨処理を施すことが好ましい。
これにより、定着ニップ部28の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。
なお、ニップ形成部材26は、第2の板金71の内部にクリアランスをあけて設置される。なお、第2の板金71を箱状に形成してもよい。この場合、ニップ形成部材26が定着ニップ部28の記録媒体搬送方向に対し垂直方向に対する移動や、幅方向に対する移動が規制される。
本実施の形態においては、保持部材23は、幅方向に5つの当接部23bを有しており、第1の板金70には、これらの当接部23bの位置に対応する5つの貫通穴が形成されている。また、第2の板金71にも、同様に5つの貫通穴が形成されている。当接部23bは、第1の板金70および第2の板金71に形成された貫通穴よりも小さく形成されており、第1の板金70の貫通穴および第2の板金71の貫通穴を貫通してニップ形成部材26に当接するようになっている。
加熱部材22は、以下のようにして第1の板金70および第2の板金71により固定される。
まず、0.1mm厚のステンレス板に曲げ加工を施して、パイプ状の加熱部材22を形成する。次に、この加熱部材22の開口部にL字状の曲げ部を形成する。そして、加熱部材22の内周面側からこの曲げ部に第1の板金70をセットし、加熱部材22の外周面側から第2の板金71をセットして固定することによって、所望の形状を有する加熱部材22が形成される。
図2に戻り、加圧ローラ31は、定着ベルト21の外周面に加圧回転体として圧接し、加圧ローラ31と定着ベルト21とによって所望の幅(図2における上下方向)を有する定着ニップ部28を形成するようになっている。本実施の形態においては、加圧ローラ31は、直径が30mmに設定されており、中空構造の芯金32上に弾性層33が形成されている。加圧ローラ31の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの材料により形成されている。なお、加圧ローラ31は、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けていてもよい。
図3に示すように、加圧ローラ31は、図示しない駆動機構の駆動ギアに噛合するギア45が設置されていて、加圧ローラ31は本体制御部によって図2の矢印方向(時計回り)に回転駆動するよう制御される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けてもよい。
加圧ローラ31の弾性層33が発泡性シリコーンゴムなどスポンジ状の材料で形成される場合には、定着ニップ部28に作用する加圧力を減ずることができるために、ニップ形成部材26に生じる撓みを軽減することができる。また、加圧ローラ31の断熱性が高まり、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31に移動しにくくなるため、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
ニップ形成部材26は、LCP(液晶ポリマー)や、ポリイミド樹脂、PAI(ポリアミドイミド樹脂)などの耐熱性を有する樹脂部材であり、保持部材23の長手方向に沿うよう略角棒状に形成されている。
図6に示すように、ニップ形成部材26は、加圧ローラ31に対向する本体26eと、本体26eの背面で保持部材23に当接して支持される複数の支持突起26fと、本体26eの周囲に設けられニップ形成部材を覆う膜部材29とを備えている。本体26eが加圧ローラ31により押圧された際は、支持突起26fが保持部材23に当接して支持されることで、加圧ローラ31により押し込まれることが防止される。
本実施の形態においては、複数の支持突起26fの高さは、長手方向の中央に位置するものが最も高くなるようにし、長手方向の両端に位置するものが最も低くなるように形成されている。これは加圧ローラ31と圧接した状態においてニップ形成部材26が多少撓むことがあったとしても、長手方向においてニップ圧を略均一にすることができるようにするためであるが、すべての支持突起26fの高さを等しく形成してもよい。
膜部材29は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を編み込んだ網目状のシートにより形成されており、定着ベルト21との摩擦抵抗を低減するようになっている。膜部材29は、本体26eに巻かれ、支持突起26fの近傍にねじ止めされた止着部材26gと本体26eとに挟まれて固定されている。なお、上記以外にも例えばフッ素コーティングされた布状のガラス繊維により膜部材29を形成することも可能である。
図7に示すように、記録媒体Pの搬送方向の上流側から平面部26c、円弧形状部26bおよび突起部26aを有している。
平面部26cは、定着ニップ部28の上流側に形成されており、2次転写バックアップローラ82および2次転写ローラ89により形成される2次転写ニップ(図1参照)を通過した記録媒体Pが、屈曲されることなく定着ニップ部28に搬送されるようになっている。
なお、平面部26cは、上流端にC面取りなどにより形成された面取り部26dを有している。本実施の形態においては、0.5mmのC面取りが行われている。これにより、定着ベルト21が回転し加熱部材22と摺接していた内周面がニップ形成部材26の上流端との摺接を開始する際に、平面部26cの上流端において屈曲が大きくなることに起因して定着ベルト21の耐久性が低下することを抑制できる。
さらに、平面部26cの上流端に面取り部26dが形成されていない場合には、加熱部材22の下流端における外周面とニップ形成部材26の上流端の表面とに微小な段差があることに起因して、加熱部材22の下流端近傍では定着ベルト21と加熱部材22との間に隙間が生じた状態で回転する可能性が生じる。そのため、定着ベルト21が十分加熱されずに定着ニップ部28の位置に回転することになり、加熱効率が低下する原因となる。
これに対し、平面部26cの上流端に面取り部26dが形成されている場合には、定着ベルト21が、ニップ形成部材26の上流側に位置する加熱部材22の下流端近傍と摺接するようになるので、定着ニップ部28を効率よく加熱することが可能となる。
次に、図7および図8を参照して、突起部26a、円弧形状部26bおよび平面部26cの形状についてより詳しく説明する。
突起部26aは、定着ニップ部28の記録媒体搬送方向下流側において、幅Nを有する定着ニップ部28の下流端より所定長L2離れた位置に突起の頂点を有している。また、突起の頂点は、円弧形状部26bを形成する円弧と同心円で、かつ半径がL1だけ短い円弧上に位置している。
ここで、オフセット量L1および所定長L2は以下のように設定される。
まず、仮に所定長L2が1mmより小さく設定された場合には、突起部26aが加圧ローラ31と接触する。突起部26aが加圧ローラ31に接触すると、突起部26aよりも用紙搬送方向上流側にニップ形成部材26(具体的には円弧形状部26b)と加圧ローラ31とが圧接しない部分が発生することになる。この部分ではニップ形成部材26と加圧ローラ31とが接触する部分に比べてニップ圧が低く、定着ベルト21と記録媒体P上のトナー像Tとの接触圧が低くなり、記録媒体P上に定着されたトナー像Tに異常画像が発生する恐れがある(例えばユズ肌の画像)。
また、仮に所定長L2が2mmより大きく設定された場合およびオフセット量L1が0.2mmより大きく設定された場合には、定着ニップ部28を通過した記録媒体Pが突起部26aにより加圧ローラ31側に曲げられてしまい、加圧ローラ31に巻きつく可能性が高まる。特に、両面印刷において記録媒体Pの一方の面に既にトナー像Tが定着している場合には、他方の面にトナー像Tを定着するために記録媒体Pが定着ニップ部28に再び搬送されると、一方の面に定着しているトナー像Tが定着ニップ部28の熱により加熱され粘性が高まる。このとき、粘性の高まったトナー像Tは、記録媒体Pの加圧ローラ31側に定着しているため、記録媒体Pと加圧ローラ31との分離性が低下し、加圧ローラ31に巻きつく可能性が高まる。
また、仮にオフセット量L1が0.1mmより小さく設定された場合には、突起部26aが記録媒体Pと定着ベルト21とを十分に分離できず、記録媒体Pが定着ベルト21に巻きつく可能性が高まる。
したがって、突起部26aは、図9において設定領域として示すように、オフセット量L1が0.1mm≦L1≦0.2mm、所定長L2が1mm≦L2≦2mmの範囲で設定されるようになっている。
円弧形状部26bは、定着ニップ部28内のいずれかの位置より所定長L2まで延在しており、加圧ローラ31の外周面に沿うよう、曲率半径Rが25mm≦R≦60mmの円弧形状を有している。本実施の形態においては、曲率半径Rは60mmに設定されている。
なお、本実施の形態においては、円弧形状部26bの上流端が定着ニップ部28の記録媒体搬送方向における中心(以下、定着ニップ部28の中心という。)よりも下流側に位置している。すなわち、定着ニップ部28のうち平面部26cと加圧ローラ31により形成されるニップ幅の方が、円弧形状部26bと加圧ローラ31により形成されるニップ幅よりも大きくしているが、円弧形状部26bの上流端が定着ニップ部28の中心あるいは該中心よりも上流側に位置していてもよい。
突起部26aは、オフセット量L1の円弧、円弧形状部26bの下流端を通り記録媒体搬送方向と垂直となる線、の両方に接するような所定の曲率半径を有する円弧により形成されている。これにより、定着装置20は、定着ニップ部28を通過した記録媒体Pを、突起部26aにより過度に屈曲することなく定着ベルト21から確実に分離することができる。
以上のように、本実施の形態に係る定着装置20は、ニップ形成部材26における定着ニップ部28の下流側が円弧形状に形成され、定着ニップ部28より下流側に突起部26aを有しているので、記録媒体Pの先端部が突起部26aに到達した場合においても、定着ニップ部28の下流側が平面状に形成されている場合と比較して定着ベルト21と記録媒体Pとの間の空隙を低減することができる。したがって、記録媒体P上の未定着画像が定着時に十分に加圧、加熱されないことに起因する画質の低下を抑制できるとともに、突起部26aにより定着ベルト21に対する記録媒体Pの分離性を高めることができる。また、突起部26aが加圧ローラ31と非接触であるため、突起部26aと加圧ローラ31とが接触し定着ニップ部28の幅が拡大することを防止できるとともに、記録媒体Pが加圧ローラ31に巻きつくことを防止できる。
また、ニップ形成部材26が円弧形状部26bと突起部26aのいずれをも有しているので、加圧ローラ31の熱膨張や部品公差により定着ニップ部28の幅、すなわち記録媒体搬送方向に対する長さが長くなった場合においても、定着ニップ部28の下流端と突起部26aの頂点を結ぶ直線と、定着ニップ部28における記録媒体搬送方向との角度が急激に拡大することを抑制し、定着ベルト21が突起部26aによって過度に屈曲してしまうことを抑制することができる。
また、定着ニップ部28の上流側においてはニップ形成部材26が平面状に形成されているので、記録媒体Pを安定して定着ニップ部28に搬送できる。
また、円弧形状部26bが、定着ニップ部28の上流端と下流端の中心より下流側に形成されているので、記録媒体Pが定着ニップ部28の上流端に搬送されやすくなるため、定着装置20を小型化できるとともに、定着ニップ部28に記録媒体Pを安定して搬送することができる。
また、突起部26aが、円弧状に形成されているので、定着装置20は、定着ニップ部28を通過した記録媒体Pを、突起部26aにより過度に屈曲することなく定着ベルト21から確実に分離することができる。
また、ニップ形成部材26の円弧形状部26bの曲率半径が25mm≦R≦60mmの範囲で設定されるので、定着ニップ部28より記録媒体搬送方向における下流側に形成された突起部26aにおいて定着ベルト21の屈曲を緩和させることができる。したがって、定着ベルト21の高寿命化を図ることができる。
また、突起部26aの頂点が、円弧形状部26bの曲率半径に対して0.1mm以上0.2mm以下の範囲で加圧ローラ31側にオフセットされているので、記録媒体Pが定着ベルト21および加圧ローラ31のいずれに対しても巻きつくことを抑制できる。
また、突起部26aの頂点が、定着ニップ部28の記録媒体搬送方向における下流端から1.0mm以上2.0mm以下の範囲に位置するので、記録媒体Pが定着ベルト21および加圧ローラ31のいずれに対しても巻きつくことを抑制できる。
また、定着ベルト21の基材は、ステンレスまたはニッケルにより形成されており、基材の厚みが20μm以上35μm以下であるので、定着ベルト21の高寿命化を図ることができるとともに、ニップ形成部材26の突起部26aに摺接した際の屈曲疲労を緩和することができる。
また、加熱部材22が金属パイプにより構成されているので、定着ベルト21が回転する際に定着ベルト21の断面形状を保持することができるとともに、定着ベルト21を効率よく加熱することができる。
また、金属パイプの内周側にヒータ25を有し、ヒータ25により金属パイプが加熱されるので、定着ベルト21の断面形状を保持した状態で定着ニップ部28を速やかに昇温できる。
また、定着ベルト21の内周面側に固設され、ニップ形成部材26に対して当接することにより少なくともニップ形成部材26の記録媒体搬送方向と垂直方向への移動や撓みを規制する保持部材23を有するので、定着ニップ部28において記録媒体Pに所望の圧力を安定的に加えることができる。
なお、以上の説明においては、ニップ形成部材26が円弧形状部26bの上流側に平面部26cを有している場合について説明した。しかしながら、ニップ形成部材26は、円弧形状部26bの上流側にもう一つの円弧形状部を有していてもよい。この場合、もう一つの円弧形状部は円弧形状部26bよりも曲率半径Rが大きくなるよう形成されると、ニップ形成部材26が平面部26cを有する場合と同様、記録媒体Pが定着ニップ部28に搬送される際の搬送安定性が高まるので好適である。また、ニップ形成部材26は、円弧形状部26bの上流側にもう一つの円弧形状部を有し、当該もう一つの円弧形状部の上流側に平面部26cを有するようにしてもよい。
なお、以上の説明においては、定着装置20が金属パイプにより構成された加熱部材22を有し、この加熱部材22がヒータ25により加熱されることにより定着ベルト21に熱が伝達される場合について説明した。しかしながら、加熱部材22が、以下に説明する面状発熱体により加熱されるようにしてもよい。この場合、定着装置20は、図10に示すように、加熱部材22の内周側にヒータ25を有する代わりに、加熱部材22に面状発熱体52が固定されている。
面状発熱体52は、図11に示すように、絶縁性を有する基層52a上に、耐熱性樹脂中に導電性粒子が分散されてなる抵抗発熱層52bと、抵抗発熱層52bに電力を供給する電極層52cとを有し、定着ベルト21の軸方向および周方向に対応して所定の幅および長さをもち可撓性を有する発熱シート52sとして形成されている。
基層52a上には、抵抗発熱層52bと隣接する別の給電系統の電極層52cとの間や発熱シート52sの縁部分と外部との間を絶縁する絶縁層52dが設けられている。なお、面状発熱体52は、発熱シート52sの端部で電極層52cに接続され、図示しない給電線から供給される電力を電極層52cに供給する電極端子を有している。
発熱シート52sの厚さは0.1〜1mmに設定されることにより、少なくとも定着ベルト21の内周面に沿うことが可能となる可撓性を有するようになっている。基層52aは、PETまたはポリイミド樹脂などの耐熱性を有する樹脂により形成され他弾性体フィルムにより構成されている。ここで、基層52aがポリイミド樹脂からなるフィルム部材により構成されていると、耐熱性、絶縁性および所望の可撓性を有することができるので好適である。
抵抗発熱層52bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子が均一に分散してなる導電性を有する薄膜により構成されており、通電されると内部抵抗によりジュール熱として発熱するようになっているこの抵抗発熱層52bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂の前駆体中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子を分散させた塗料を基層52a上に塗布して成膜するとよい。
また、抵抗発熱層52bは、基層52a上にまずカーボン粒子や金属粒子からなる薄膜の導電層が形成され、次いでその導電層上にポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂からなる絶縁性薄膜を積層して一体化したものであってもよい。
絶縁層52dは、ポリイミド樹脂などの基層52aと同じ耐熱性樹脂からなる絶縁材料を塗布することにより形成される。電極層52cは、導電性インクやAgなどの導電性ペーストを塗布することにより形成される。なお、金属箔や金属網などを接着して形成してもよい。発熱シート52sは、厚みが薄く形成されており、熱容量が小さく急速な加熱が可能となっている。
そして、面状発熱体52は、加熱部材22の内周面で定着ニップ部28の上流側に接着されており、面状発熱体52が加熱されることにより加熱部材22を介して定着ベルト21が加熱されるようになっている。
なお、定着装置20は、面状発熱体52が加熱部材22を介して定着ベルト21を加熱する代わりに、加熱部材22を有さずに面状発熱体52により定着ベルト21を直接加熱するようにしてもよい。
この場合、定着装置20は、定着ベルト21の内周側に発熱体支持部材を設置し、この発熱体支持部材の外周面に面状発熱体を接着するようにする。発熱体支持部材は、少なくとも定着ニップ部28の上流側に位置しており、定着ベルト21が回転時においても形状を保つよう外周面が円弧状に形成されており、定着ベルト21は回転時に少なくとも面状発熱体52と摺接するようになっている。また、面状発熱体52は、抵抗発熱層52bの表面にフッ素系樹脂でコーティングされており、定着ベルト21の内周面との摺動に対して優れた耐久性を有することができる。発熱体支持部材としては外周面に接着した面状発熱体52からの伝熱を抑制可能な断熱部材(例えば、樹脂部材や発泡シリコンゴムなど)を用いることができる。
また、定着装置20は、定着ベルト21の内周側にパイプ形状の回転支持部材を設置するようにしてもよい。回転支持部材は、例えば厚さ0.1〜1mmを有する鉄やステンレスなどの薄肉金属により構成されており、外径が定着ベルト21の内径よりも直径で0.5〜1mm程度小さく形成されている。また、回転支持部材は、定着ニップ部28の上流側の一定領域の外周面が除去され開口部が形成されている。これにより、面状発熱体52が開口部から露出するとともに、面状発熱体の表面が回転支持部材の外周面と同じ面となるので、面状発熱体52が定着ベルト21に接触し、定着ベルト21を効率的に加熱できるようになる。なお、上記構成以外にも、例えば図13のように加熱部材22を定着ベルト21の外側に設置した誘導加熱部90により誘導加熱するようにしても良い。誘導加熱部90は、励磁コイル91と、アーチコア92と、励磁コイル91に電力を供給するインバータ93により構成されている。励磁コイル91は、細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図12の紙面垂直方向)に延設されている。アーチコア92は、フェライトやパーマロイ等、電気抵抗率が高い強磁性体により形成されている。
かかる場合には、定着ベルト21や加熱部材22の長手方向の非通紙領域における過度な温度上昇を抑制するため、加熱部材22として所定温度にキュリー点を設定した整磁合金(例えば、Fe−Ni合金)を用いると良い。キュリー点を定着温度近傍(例えば140℃〜200℃程度)に設定しておけば、過度な温度上昇を抑制することができる。
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置は、定着画像の画質を低下させることなく記録媒体の定着部材および加圧部材に対する巻きこみを防止することができるという効果を奏するものであり、未定着画像を記録媒体に加熱定着する画像形成装置に有用である。