JP2014237257A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性重合体組成物からなる層と布帛との積層構造を有する積層体において、層間の接着力が高く、軟化剤を含有する場合であっても軟化剤のブリードアウトが少ない、柔軟性を有する積層体を提供する。【解決手段】下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量60〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する積層体。(熱可塑性重合体組成物)芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含み、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上である水添共重合体(I)と、軟化剤(II)とを含有し、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)の総量と前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]が1/99〜55/45であり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、前記水添共重合体(I)100質量部に対する軟化剤(II)の含有量が0〜300質量部である熱可塑性重合体組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ファルネセン由来の構造単位を含有する水添共重合体を含む層と布帛との積層構造を有する積層体に関する。
熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、及びこれらの水素添加物等のスチレン系熱可塑性エラストマーは、安価で柔軟性、ゴム弾性、リサイクル性等に優れる点から広く使用されている。
スチレン系熱可塑性エラストマーについては、種々の物性の改良を目的とした検討がなされている。例えば、柔らかい感触及び優れた耐傷つき性を有する成形品を得るための、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等を含有する粉末成形用熱可塑性エラストマー樹脂組成物(特許文献1参照)、柔軟性、成形加工性及び耐スクラッチ性に優れた組成物として、スチレン系熱可塑性エラストマー(水添ブロック共重合体)とメタクリル系樹脂からなる組成物に対し、双方に相溶性を示す単位を有する共重合体を添加した熱可塑性エラストマー組成物(特許文献2参照)が提案されている。
一方、エチレンとスチレンの共重合体をポリマーの主成分とするゲル又は低硬度ゴムを主体とする第1の層に、硬度や結晶化度がより大きなポリエチレン系のフィルム、ゲルもしくはゴムと布帛とが一体になった第2の層が積層された積層体(特許文献3参照)が提案されている。
特開2001−158812号公報 特開平5−230322号公報 特開平11−105200号公報
本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1及び2に開示されているエラストマー組成物を布帛に直接積層させた積層体は、エラストマー組成物の層と布帛との接着力が十分でない場合があること、また、前記組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤のブリードアウトが生じやすいことが判明した。
なお、特許文献3に開示されている積層体の第2の層は、硬度や結晶化度がより大きなポリエチレン系のフィルム、ゲルもしくはゴムと布帛とが一体となったものであり(該文献の請求項2参照)、図面を見ても、第1層と布帛とが直接接してはいない構造であり、つまり第1層と布帛との接着力は考慮されておらず、且つ問題とされていない。
本発明は、熱可塑性重合体組成物からなる層と布帛との積層構造を有する積層体において、層間の接着力が高く、軟化剤を含有する場合であっても軟化剤のブリードアウトが少ない、柔軟性を有する積層体を提供することを課題とする。
本発明は、下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量60〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する積層体である。
(熱可塑性重合体組成物)
芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含み、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上である水添共重合体(I)と、軟化剤(II)とを含有し、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)の総量と前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]が1/99〜55/45であり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、前記水添共重合体(I)100質量部に対する軟化剤(II)の含有量が0〜300質量部である熱可塑性重合体組成物。
本発明によれば、熱可塑性重合体組成物からなる層と布帛との積層構造を有する積層体において、層間の接着力が高く、軟化剤を含有する場合であっても軟化剤のブリードアウトが少ない、柔軟性を有する積層体を提供できる。
本発明の積層体は、下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量60〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する。
[熱可塑性重合体組成物からなる層(1)]
前記層(1)は前記熱可塑性重合体組成物からなる層であり、前記熱可塑性重合体組成物は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含み、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上である水添共重合体(I)と、軟化剤(II)とを含有し、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)の総量と前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]が1/99〜55/45であり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、前記水添共重合体(I)100質量部に対して軟化剤(II)を0〜300質量部含有する。
<水添共重合体(I)>
前記水添共重合体(I)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を特定の割合で含み、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上の水添共重合体である。
以下、各成分及び各成分の割合等について詳細に説明する。
〔芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)〕
前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン及びジビニルベンゼンが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
中でも、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンがより好ましく、スチレンが更に好ましい。
なお、本発明において、1分子中に芳香族基及び共役ジエン結合の両方を有する化合物は、構造単位(b)の由来成分である共役ジエンには含めず、構造単位(a)の由来成分である芳香族ビニル化合物に含めるものとする。
但し、1分子中に芳香族基及び共役ジエン結合の両方を有する化合物に由来の構造単位の含有量は、構造単位(a)中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0質量%である。
〔共役ジエン由来の構造単位(b)〕
共役ジエン由来の構造単位(b)は、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含むものであって、ファルネセン由来の構造単位(b1)のみを含むものでも、ファルネセン由来の構造単位(b1)の他にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を含むものでもよい。
共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、1〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
また、共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)の含有量は0〜99質量%、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜25質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
ファルネセンは、サトウキビ等の植物から抽出される糖を原料として、微生物を利用して工業的に製造することができる。そして、本発明の積層体は、かかるファルネセンを原料として得られるため、少ない環境負荷にて製造することができる。
(ファルネセン由来の構造単位(b1))
前記構造単位(b1)の由来成分であるファルネセンは、α−ファルネセン及び下記式(X)で表されるβ−ファルネセンのいずれでもよく、両者を併用してもよいが、本発明におけるファルネセンとしては、β−ファルネセンが好ましい。
構造単位(b1)中におけるβ−ファルネセン由来の構造単位の含有量は、水添共重合体(I)の製造容易性、並びに層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
Figure 2014237257
(ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2))
前記構造単位(b2)の由来成分であるファルネセン以外の共役ジエンとしては、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−フェニル−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン及びクロロプレンが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
中でも、イソプレン、ブタジエン及びミルセンの少なくとも1種がより好ましく、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも1種が更に好ましい。
〔その他の構造単位(c)〕
前記水添共重合体(I)は、前記構造単位(a)、(b)の他に、その他の構造単位(c)を含んでもよい。
前記構造単位(c)の由来成分としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
〔各構造単位の含有割合〕
前記水添共重合体(I)中における、構造単位(a)及び構造単位(b)の合計含有量は、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
また、同様の観点から、前記水添共重合体(I)を構成する構造単位の総量中における、構造単位(c)の含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下であり、構造単位(c)を含まないことが最も好ましい。
前記水添共重合体(I)中における、構造単位(a)の総量と構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]は、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、1/99〜55/45であり、好ましくは2/98〜50/50、より好ましくは3/97〜45/55、より好ましくは5/95〜40/60であり、更に好ましくは10/90〜40/60、より更に好ましくは15/85〜40/60である。
本発明における水添共重合体(I)は、水添ブロック共重合体、及び水添ランダム共重合体のいずれであってもよい。次に、これら2種類の水添共重合体について説明する。
〔水添共重合体(I)の重合形式〕
(ブロック共重合体)
水添共重合体(I)は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含む水添ブロック共重合体であってもよい。
本明細書において「主体とする」とは、重合体ブロック(A)については重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を95質量%以上含むことをいい、同様に重合体ブロック(B)については重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて前記共役ジエン由来の構造単位(b)を95質量%以上含むことをいう。
重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。中でも、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBで表したときに、(A−B)l、A−(B−A)m、B−(A−B)n(l、m、nはそれぞれ独立して1以上の整数である)で表される、各ブロックが直線状に結合した形態、及び(A−B)pX、(B−A)qX(p、qはそれぞれ独立して3以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基である)で表される、各ブロックが放射線状に結合した形態が好ましい。
前記結合形態としては、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、A−Bで表されるジブロック共重合体、又はA−B−Aで表されるトリブロック体が好ましい。
また、ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)を2個以上又は重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(A)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
(ランダム共重合体)
前記水添共重合体(I)は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)、及び前記ファルネセン由来の構造単位(b1)がランダムに重合してなる水添ランダム共重合体であってもよく、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)、前記ファルネセン由来の構造単位(b1)及び前記ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)がランダムに重合してなる水添ランダム共重合体であってもよい。
〔水素添加率〕
前記水添共重合体(I)は、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合が50モル%以上水素添加されている、すなわち水素添加率が50モル%以上である。
ここで、水素添加率は、水素添加前の共重合体1モルあたりに含まれる共役ジエン由来の二重結合のモル数をM1とし、水添共重合体1モルあたりに含まれる共役ジエン由来の二重結合のモル数をM2とすると、下記式により表される値である。
水素添加率=(1−M2/M1)×100(モル%)
水素添加率は、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。なお、水素添加率は、後述する実施例に記載した方法により求めることができる。
〔水添共重合体(I)の分子量及び分子量分布〕
水添共重合体(I)のピークトップ分子量(Mp)は、層間の接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、4,000〜1,500,000が好ましく、9,000〜1,200,000がより好ましく、20,000〜1,100,000がより好ましく、50,000〜800,000が更に好ましく、50,000〜500,000がより更に好ましい。
なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)は、後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
水添共重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、水添共重合体の粘度のばらつきが小さい。
〔水添共重合体(I)の製造方法〕
水添共重合体(I)は、例えば芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含む共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を経ることにより製造できる。
次に、水添ブロック共重合体の製造方法についてより詳細に説明する。
(水添ブロック共重合体の製造方法)
水添ブロック共重合体は、例えば前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を経ることにより製造できる。
水素添加前のブロック共重合体は、溶液重合法又は特表2012−502135号公報、特表2012−502136号公報に記載の方法等により製造できる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び必要に応じてファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体を得ることが好ましい。
アニオン重合開始剤としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ金属を含有する化合物、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
このような有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして用いてもよい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物とファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01〜3質量%の範囲である。
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えばn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量には特に制限はない。
ルイス塩基は、ファルネセン由来の構造単位(b1)及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えばジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。ルイス塩基を使用する場合、その量は、通常、アニオン重合開始剤1モルに対して0.01〜1000モル当量の範囲であることが好ましい。
重合反応の温度は、通常、−80〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃の範囲である。重合反応の形式は回分式でも連続式でもよい。重合反応系中の芳香族ビニル化合物、ファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの存在量が特定範囲になるように、重合反応液中に各単量体を連続的あるいは断続的に供給するか、また、重合反応液中で各単量体が特定比となるように順次重合することで、ブロック共重合体を製造できる。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体を単離できる。
前記の方法により未変性のブロック共重合体を得てもよいが、以下のように変性したブロック共重合体を得てもよい。
具体的には、後述の水素添加工程の前に、前記未変性のブロック共重合体に対して官能基を導入することにより変性する方法が挙げられる。導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基等が挙げられる。
ブロック共重合体の変性方法としては、例えば重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011−132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化して用いることもできる。
官能基が導入される位置はブロック共重合体の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤に対して、通常、0.01〜10モル当量の範囲であることが好ましい。
前記方法により得られたブロック共重合体を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体を得ることができる。水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。水素添加工程においては、前記したブロック共重合体の製造方法によって得られたブロック共重合体を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明においては、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1〜20MPaが好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、反応時間は1〜20時間が好ましい。
<軟化剤(II)>
熱可塑性重合体組成物に含まれる軟化剤(II)としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の炭化水素系油;落花生油、ロジン等の植物油;リン酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;流動パラフィン;低分子量ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合オリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン又はその水素添加物、液状ポリブタジエン又はその水素添加物、等の炭化水素系合成油等の公知の軟化剤を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、軟化剤(II)としては、パラフィン系の炭化水素系油やエチレン−α−オレフィン共重合オリゴマー等の炭化水素系合成油が好ましい。
軟化剤(II)の40℃における動粘度は、成形加工性及び塗工容易性の観点から、好ましくは5〜1,000mm2/s、より好ましくは5〜800mm2/s、更に好ましくは5〜600mm2/sである。
<水添共重合体(I)及び軟化剤(II)の含有割合>
熱可塑性重合体組成物において、軟化剤(II)の含有量は、水添共重合体(I)100質量部に対して0〜300質量部であり、ブリードアウトをより一層抑制する観点から、好ましくは0〜250質量部、より好ましくは0〜200質量部、更に好ましくは0〜150質量部である。
<その他の成分>
熱可塑性重合体組成物には、必要に応じて前記水添共重合体(I)とは異なる、その他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。その他の熱可塑性重合体としては、例えば中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体;アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン;エチレン−プロピレンランダム共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;水添共重合体(I)とは異なる、スチレンからなるブロックをハードセグメントとするスチレン系ブロック共重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、架橋型の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー等が挙げられる。これらは1種を単独で、また2種以上を併用してもよい。
その他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、水添共重合体(I)100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
さらに、熱可塑性重合体組成物は、上記以外の他の成分を含有していてもよい。かかる成分としては、例えばタルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラス中空球、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛、ドーソナイト、ポリリン酸アンモニウム、カルシウムアルミネート、ハイドロタルサイト、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、活性炭、炭素中空球、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、雲母等の無機フィラー;木粉、でんぷん等の有機フィラー;有機顔料等が挙げられる。
また、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、撥水剤、防水剤、粘着付与樹脂、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、蛍光剤、アンチブロッキング剤、防菌剤を必要に応じて更に含有していてもよい。
前記熱可塑性重合体組成物が当該その他の成分(前記「その他の熱可塑性重合体」を除く。)を含有する場合、本発明の効果を損なわない限りその含有量に特に制限はないが、通常、水添共重合体(I)100質量部に対して、好ましくはそれぞれ30質量部以下、より好ましくはそれぞれ20質量部以下、更に好ましくはそれぞれ10質量部以下である。
<熱可塑性重合体組成物の調製方法>
本発明の積層体の層(1)に用いる熱可塑性重合体組成物は、下記調製方法により製造できる。
具体的には、まず、混合する全成分を従来公知の方法で溶融混練してペレットを製造する。例えば一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダー等の混練機を使用して、各構成成分を溶融混練して熱可塑性重合体組成物のペレットを得る。その際の混練温度としては、一般に160〜280℃が好ましく、190〜260℃がより好ましい。
上記溶融混練に際しては、例えば
(a)熱可塑性重合体組成物を構成する全ての成分を、混練する前にハイスピードミキサーやタンブラーミキサーのような混合機を用いて予めドライブレンドしておき、その後一括に溶融混練する方法、
(b)軟化剤(II)を除く他の成分を先に押出機にフィードし溶融混練を開始し、軟化剤(II)を、サイドフィーダー等を用いて途中から押出機に所定量を添加し、その後、全成分を溶融混練する方法、
等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。
こうして得られた熱可塑性重合体組成物は、各種成形法、例えば、射出成形法(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の成形法により、成形及び加工することができる。
本発明では、該熱可塑性重合体組成物からなる層(1)に、後述する布帛(2)を積層する。その際、層(1)の形状に特に制限はないが、通常、積層状態を良好なものとする観点から、シート状であることが好ましい。
シートの厚みに特に制限はないが、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは7mm以下であり、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、特に好ましくは2mm以上である。
[布帛(2)]
布帛(2)としては、目付量60〜600g/m2の布帛を用いる。目付量が60g/m2未満であると軟化剤(II)のブリードアウトが多くなり、かつ接着力も低下することが多くなる。一方、目付量が600g/m2を超えると積層体の柔軟性が損なわれる。
布帛(2)の目付量は、層(1)との接着力を向上させる観点、及び軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、好ましくは70〜500g/m2、より好ましくは80〜400g/m2、更に好ましくは90〜330g/m2である。
また、布帛(2)の厚みは、軟化剤(II)のブリードアウトを抑制する観点から、好ましくは0.20mm以上である。布帛(2)の厚みの上限値に特に制限はなく、所望の積層体とするために任意に設定すればよい。通常は、布帛(2)の厚みは、より好ましくは0.20〜2.0mm、更に好ましくは0.20〜1.5mm、特に好ましくは0.20〜1.3mmである。
布帛(2)の生地の種類に特に制限はないが、例えば織物、編物、フェルト、不織布等が挙げられる。
また、布帛(2)の素材としては、天然繊維であってもよいし、合成繊維であってもよいし、天然繊維と合成繊維とからなるものであってもよい。天然繊維としては、綿、絹(シルク)、麻及び毛から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
また、合成繊維としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維及びビニロン繊維から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン6・6等が挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられる。
ただし、接着力の一層の向上効果を見込めるという観点から、天然繊維を10質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することが更に好ましく、80質量%以上含有することが特に好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
このように、布帛(2)に天然繊維が含まれることによって接着力が向上し、軟化剤(II)のブリードアウトが抑制される効果が発現する正確な理由は不明であるが、天然繊維に含まれる親水基が、軟化剤(II)のブリードアウト抑制効果の一翼を担っているものと推測する。
布帛(2)は、2種以上の天然繊維を含有していてもよいし、2種以上の合成繊維を含有していてもよい。
[その他の層(3)]
本発明の積層体は、上記層(1)及び布帛(2)のみからなる2層であってもよいし、これらからなる3層以上であってもよい。これらからなる3層以上である場合、「層(1)/布帛(2)/層(1)」、「層(1)/層(1)/布帛(2)」(但し、2つの層(1)は異なる成分からなる。)等の層構造が挙げられる。
さらに、本発明の積層体は、上記層(1)及び布帛(2)以外にも、その他の層(3)を有していてもよい。その他の層(3)を有する場合、該層(3)は、層(1)上に有していてもよいし、布帛(2)上に有していてもよいが、布帛(2)を表層とする観点からは、その他の層(3)は層(1)上に有している、つまり、「布帛(2)/層(1)/層(3)」の層構造となっていることが好ましい。
なお、その他の層(3)は、1層からなっていてもよいし、2層以上からなっていてもよい。
その他の層(3)の成分に特に制限はないが、例えば熱可塑性樹脂、各種金属、各種皮革、各種ガラス、各種木材等が挙げられる。中でも熱可塑性樹脂、各種皮革を用いるのが好ましい。
該熱可塑性樹脂としては、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)等のオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はそれらの水素添加物等のスチレン系熱可塑性エラストマー(水添ブロック共重合体を除く。);ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂組成物{例えばスチレン系熱可塑性エラストマー及び軟化剤等を含有する樹脂組成物(但し、本発明で用いる熱可塑性重合体組成物を除く。)}等が挙げられる。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法に特に制限はない。例えば、インサート射出成形法、二色射出成形法、サンドイッチ射出成形法等の射出成形方法;Tダイラミネート成形法、共押出成形法、押出被覆法等の押出成形法;カレンダー成形法;プレス成形法;圧縮成形法等の溶融を伴う成形法を採用し、熱可塑性重合体組成物のシートを製造し、布帛(2)と重ね合わせて圧縮成形法によって積層させることにより、積層体を製造することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、β−ファルネセン(純度97.6質量%アミリスインコーポレイティド社製)は、3Åのモレキュラーシーブにより精製し、窒素雰囲気下で蒸留することで、ジンギベレン、ビサボレン、ファルネセンエポキシド、ファルネソール異性体、E,E−ファルネソール、スクアレン、エルゴステロール及びファルネセンの数種の二量体等の炭化水素系不純物を除き、以下の重合に用いた。
(1)分子量分布(Mw/Mn)、及びピークトップ分子量(Mp)の測定
各製造例で得られた水添ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。また、この分子量分布(Mw/Mn)のピークの頂点の位置を、ピークトップ分子量(Mp)とした。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・GPC装置 :東ソー株式会社製「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
(2)水素添加率の測定方法
各製造例において、ブロック共重合体及び水素添加後の水添ブロック共重合体をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子社製「Lambda−500」を用いて50℃で1H−NMRを測定した。水添ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5〜6.0ppmに現れる炭素−炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率={1−(水添ブロック共重合体1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)/(ブロック共重合体1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)}×100(モル%)
製造例1
窒素置換し、乾燥させた攪拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン50.0kg、スチレン1.12kg及びsec−ブチルリチウム(10.5質量%、シクロヘキサン溶液)41.3gを加え、60℃で60分間重合した。次いでβ−ファルネセン10.25kgを加えて120分間重合し、更にスチレンを1.12kg加えて60分間重合した後、最後にメタノールを加えて反応を停止してブロック共重合体(I)−1を合成した。得られた反応混合液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ブロック共重合体(I)−1の水素添加物(以下、「水添共重合体(I)−1」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添共重合体(I)−1の各種物性の測定結果を表1に示す。
製造例2〜6、8〜10
各種原料の配合を表1に記載のものに変更した以外は、製造例1と同様にして水添共重合体(I)−2〜(I)−6、(I')−8〜(I')−10を得た。得られた水添共重合体(I)−2〜(I)−6、(I')−8〜(I')−10の各種物性の測定結果を表1に示す。
製造例7
各種原料の配合を表1に記載のもの及び水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)をブロック共重合体に対して3質量%添加し、水素圧力1MPa、150℃の条件で4時間反応に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてブロック共重合体(I')−7の水素添加物を得た。各種原料の配合と、得られた水添共重合体(I')−7の各種物性の測定結果を表1に示す。
実施例1〜30,比較例1〜10
各成分を表2〜4に記載の質量比でスーパーミキサー「SMV−100」(株式会社カワタ製)により予備混合してから、二軸押出機「TEM−35B」(東芝機械株式会社製)を用いて230℃、スクリュー回転200rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してペレット状の熱可塑性重合体組成物を得た。
なお、軟化剤(II)としては、出光興産株式会社製、「ダイアナプロセスPW−32(40℃の動粘度31mm2/s)」を使用した。
得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを、圧縮成形機を用いて、190℃、1.0MPa、3分間圧縮成形することによって、熱可塑性重合体組成物からなるシート(寸法:縦×横×厚み=110mm×110mm×4mm)を得た。該シートと表2〜4に記載の布帛とを、140℃、1.0MPaで圧縮成形機によって3分間圧縮成形することで積層体を製造した。得られた積層体について、硬度、層間の接着力、軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力について下記方法に従って評価した。結果を表2〜4に示す。なお、布帛(2)の特性については表5に示す。
(1)硬度の測定
JIS K 6253に準拠し、該圧縮成形シートを2枚重ねて厚み8mmの硬度を測定した。硬度計はタイプAデュロメータを用い、測定値は瞬間の数値を記録した。タイプA硬度が好ましくは45以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下であると、得られる積層体は柔軟性に優れる。
(2)接着力の測定
実施例及び比較例で製造した積層体を、23±1℃、湿度(50±5)%の雰囲気下で30分放置した。その後、該積層体から、長さ80mm、幅25mmの短冊状試験片を打ち抜いた。該試験片を用いて、JIS K 6854に記載の「180°剥離試験」に準じて、300mm/分の剥離速度で測定した。
接着力は、好ましくは10N/25mm以上、より好ましくは13N/25mm以上である。なお、試験の際に熱可塑性重合体組成物からなる層(1)が破壊された場合は、接着力が十分であることを示している。
(3)軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力の評価
実施例及び比較例で製造した積層体を、23±1℃、湿度(50±5)%の雰囲気下で放置し、軟化剤(II)のブリードアウトの有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。なお、評価としては、好ましくはB以上であり、より好ましくはAである。
A:3ヶ月経過しても、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトしていない。
B:1〜3ヶ月の間で、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトした。
C:1ヶ月経過後、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトしていた。
D:積層体の製造後、すぐに布帛の表面に軟化剤がブリードアウトした。
Figure 2014237257
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表2〜4の結果より明らかなように、本発明の積層体は層間の接着性に優れ、軟化剤(II)を用いなくても柔軟性に優れており、また軟化剤(II)を含む場合であっても、軟化剤(II)のブリードアウトの抑制効果に優れていることがわかる。

Claims (11)

  1. 下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量60〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する積層体。
    (熱可塑性重合体組成物)
    芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含み、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上である水添共重合体(I)と、軟化剤(II)とを含有し、
    前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)の総量と前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]が1/99〜55/45であり、
    前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、
    前記水添共重合体(I)100質量部に対する軟化剤(II)の含有量が0〜300質量部である熱可塑性重合体組成物。
  2. 前記ファルネセンがβ−ファルネセンである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記水添共重合体(I)のピークトップ分子量(Mp)が4,000〜1,500,000である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記水添共重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記芳香族ビニル化合物がスチレンである、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記共役ジエン由来の構造単位(b)がファルネセン由来の構造単位(b1)及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を含み、前記ファルネセン以外の共役ジエン(b2)が、イソプレン、ブタジエン及びミルセンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
  7. 前記水添共重合体(I)が、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
  8. 前記水添共重合体(I)が、ランダム共重合体の水素添加物である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
  9. 前記布帛(2)が天然繊維を10質量%以上含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
  10. 前記天然繊維が、綿、絹(シルク)、麻及び毛から選ばれる1種又は2種以上である、請求項9に記載の積層体。
  11. 前記軟化剤(II)の40℃における動粘度が5〜1,000mm2/sである、請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
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