JP6235800B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
スチレン系熱可塑性エラストマーについては、種々の物性の改良を目的とした検討がなされている。例えば、柔らかい感触及び優れた耐傷つき性を有する成形品を得るための、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどを含有する粉末成形用熱可塑性エラストマー樹脂組成物(特許文献1参照)、柔軟性、成形加工性及び耐スクラッチ性に優れた組成物として、スチレン系熱可塑性エラストマー(水添ブロック共重合体)とメタクリル系樹脂からなる組成物に対し、双方に相溶性を示す単位を有する共重合体を添加した熱可塑性エラストマー組成物(特許文献2参照)が提案されている。
一方、オイルブリードを十分に抑制できる積層体を提供することを目的として、エチレンとスチレンの共重合体をポリマーの主成分とするゲル又は低硬度ゴムを主体とする第1の層に、硬度や結晶化度がより大きなポリエチレン系のフィルム、ゲルもしくはゴムと布帛とが一体になった第2の層が積層された積層体(特許文献3参照)が提案されている。
さらに、本発明者の検討により、特許文献1及び2などに開示されている組成物を布帛に直接積層させた積層体では、特許文献3の積層体と比べてオイルブリードし易く、また、組成物の層と布帛との接着力に乏しい積層体が形成されることが多いことが判明した。しかし、特許文献3の第2層のように、布帛以外に、硬度や結晶化度がより大きなポリエチレン系のフィルム、ゲルもしくはゴムを用いると、積層体の重量及び厚みが増大し、製造コストも高まるという問題がある。
[1]下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量200〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する積層体。
(熱可塑性重合体組成物)
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]が20/80〜50/50であるブロック共重合体の水素添加物(I)100質量部、及び
軟化剤(II)150〜1,000質量部
を含有する熱可塑性重合体組成物。
[2]前記ブロック共重合体の水素添加物(I)の重量平均分子量が30,000〜500,000である、上記[1]の積層体。
[3]前記ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)がイソプレン由来の1,4−結合構造単位及びブタジエン由来の1,4−結合構造単位のうちの少なくとも一方を有し、該1,4−結合構造単位の含有量が、重合体ブロック(B)を構成する構造単位の30モル%以上である上記[1]又は[2]の積層体。
[4]前記ブロック共重合体の水素添加物(I)が、下記一般式(I−1)
B1−A−B2−X (I−1)
(式中、B1及びB2は主として共役ジエン化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Aは主として芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Xはリビングアニオン重合体の活性末端を示す。)
で表されるリビングポリマーと、カップリング剤とを反応させて得られたブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロックB1と重合体ブロックB2の合計質量に対する重合体ブロックB1の質量比[B1/(B1+B2)]が0.10〜0.45のブロック共重合体の水素添加物である、上記[1]〜[3]のいずれかの積層体。
[5]前記布帛(2)の材料が天然繊維を10質量%以上含有する、上記[1]〜[4]のいずれかの積層体。
[6]天然繊維が、綿、絹(シルク)、麻及び毛から選択される少なくとも1種である、上記[5]の積層体。
[7]軟化剤(II)の40℃における動粘度が5〜1,000mm2/sである、上記[1]〜[6]の積層体。
以下、本発明の積層体について詳細に説明する。
[積層体]
本発明の積層体は、下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)[以下、「層(1)」と称することがある。]と、目付量200〜600g/m2の布帛(2)[以下、「布帛(2)」と称することがある。]との積層構造を有する積層体である。
(熱可塑性重合体組成物)
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]が20/80〜50/50であるブロック共重合体[以下、「ブロック共重合体」と称することがある。]の水素添加物(I)[以下、「水添ブロック共重合体(I)」と称することがある。]100質量部、及び
軟化剤(II)150〜1,000質量部
を含有する熱可塑性重合体組成物。
本発明では、布帛の目付量を200〜600g/m2とすることにより、層(1)と布帛(2)との接着力に優れ、且つ軟化剤のブリードアウトも抑制することができる。
以下、積層体の少なくとも1部を形成する層(1)及び布帛(2)について詳細に説明する。
{水添ブロック共重合体(I)}
層(1)に用いられる熱可塑性重合体組成物が含有する水添ブロック共重合体(I)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]が20/80〜50/50であるブロック共重合体の水素添加物である。
前記ブロック共重合体における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式は、線状、分岐状、放射状、又はこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよいが、中でも、線状、分岐状、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
例えば、重合体ブロック(A)をAで、重合体ブロック(B)をBで表したとき、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、又はB−(A−B)n−X、A−(B−A)m−Y、(X、Yはリビングアニオン重合体の活性末端を表し、n、mはそれぞれ1以上の整数を表す)で表されるリビングポリマーとカップリング剤とを反応させて得られたブロック共重合体等が挙げられる。これらの結合様式のブロック共重合体は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。中でも、ブロック共重合体としては、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体の混合物、又はB−(A−B)n−Xで表されるリビングポリマーとカップリング剤とを反応させて得られたブロック共重合体が好ましい。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来厳密にはY−X−Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはY−Z−X−Z−Y(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体は、Y−Z−Yと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
つまり、B−A−B−Xで表されるリビングポリマーとカップリング剤とを反応させて得られる重合体のうち、2つの重合体ブロック(B)をそれぞれB1、B2としたとき、下記一般式(I−1)で表されるブロック共重合体であって、重合体ブロックB1と重合体ブロックB2の合計質量に対する重合体ブロックB1の質量の比率[B1/(B1+B2)]が0.10〜0.45の水添ブロック共重合体が好ましい。
B1−A−B2−X (I−1)
上記ブロック共重合体は、国際公開第2010/024382号に記載の製造方法を参照して容易に製造することができる。
前記水添ブロック共重合体(I)の一部を構成する重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて芳香族ビニル化合物単位を50質量%以上含むことをいい、70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、実質的に100質量%が芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなっているのがさらに好ましい。ここで、「芳香族ビニル化合物由来の」とは、該構造単位が、芳香族ビニル化合物が付加重合した結果形成される構造単位であることを示す。なお、水添ブロック共重合体(I)における芳香族ビニル化合物の含有量は、水素添加前のブロック共重合体の1H−NMRより求めた値である。
該芳香族ビニル化合物由来の構造単位を形成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、p−プロピルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、p−(フェニルブチル)スチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等から選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。重合体ブロック(A)は、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみから構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
重合体ブロック(A)が当該他の重合性単量体由来の構造単位を含有する場合の形態は、ランダム、テーパード状等のいずれの形態であってもよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例で用いたゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の値である。
前記水添ブロック共重合体(I)の一部を構成する重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて共役ジエン化合物由来の構造単位を50質量%以上含むことをいい、70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、実質的に100質量%が共役ジエン化合物由来の構造単位から構成されていることがより好ましい。ここで、「共役ジエン化合物由来の」とは、該構造単位が、共役ジエン化合物が付加重合した結果形成される構造単位であることを示し、本発明においては、水素添加されている場合も含まれる。
共役ジエン化合物由来の構造単位を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン等から選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、ブタジエン、イソプレン、又はブタジエンとイソプレンとの混合物が好ましい。重合体ブロック(B)がブタジエン、イソプレン、又はブタジエンとイソプレンの混合物に由来する構造単位から構成されていると、軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力が高まる。また、当該ブロック共重合体が、前記(I−1)で表されるリビングポリマーとカップリング剤とを反応させて得られた重合体である場合、重合体ブロックB1及びB2を構成する共役ジエン化合物は、同一種であってもよいし、異なるものでもよい。
重合体ブロック(B)が2種以上の共役ジエン化合物由来の構造単位を有している場合は、それらの結合形態は、ランダム、ブロック、テーパード状、又はそれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
また、重合体ブロック(B)は、耐候性及び耐熱性等の観点から、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されている必要がある。その際の重合体ブロック(B)の水素添加率(以下、「水添率」と略すことがある。)は、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。
なお、水添率は、実施例に記載の通り、水素添加の前後において、炭素−炭素二重結合の含有量を1H−NMRによって測定し、得られた測定値から求めた値である。
前記水添重合体ブロック(B)における共役ジエン化合物の結合形態(ミクロ構造)及びその存在割合は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合は、1,2−結合(ビニル結合)又は1,4−結合、イソプレンの場合は、1,2−結合(ビニル結合)、3,4−結合(ビニル結合)又は1,4−結合の結合形態をとることができ、それらの結合形態の1種のみが存在していても、2種以上が存在していてもよい。また、それらのいずれの結合形態がどのような割合で存在してもよいが、1,4−結合構造単位の含有量が、重合体ブロック(B)を構成する構造単位の30モル%以上であるのが好ましく、40モル%以上であるのがより好ましく、50モル%以上であるのがさらに好ましい。
イソプレンとブタジエンの混合物からなる共重合体ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれの形態になっていてもよい。そして、イソプレンとブタジエンの混合物からなる共重合体ブロックでは、ゴム弾性の改善効果の点から、イソプレン単位:ブタジエン単位(質量比)が、10/90〜90/10であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。
具体的には、「重合体ブロックB1を構築するために用いる共役ジエン化合物の質量」を、「重合体ブロックB1を構築するために使用する共役ジエン化合物の質量と重合体ブロックB2を構築するために使用する共役ジエン化合物の質量の合計質量」で除することによって算出できる。リビングポリマーは理論上、重合に用いたモノマーが全て反応し、分子量分布の狭いポリマーが得られる(分子量の揃ったポリマーが得られる)ため、重合体ブロックB1のB1とB2の合計質量に対する比率は、上記のような算出が可能である。
前記リビングポリマーにおいて、重合体ブロックB1と重合体ブロックB2の合計質量に対する重合体ブロックB1の質量の質量比[B1/(B1+B2)]は、布帛(2)との接着性及び軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力の観点、並びに機械的特性の観点から、好ましくは0.10〜0.45であり、0.15〜0.40がより好ましく、0.20〜0.35がさらに好ましい。
本発明で用いる水添ブロック共重合体(I)は、本発明の効果を損なわない限り、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種又は2種以上有してもよい。
水添ブロック共重合体(I)の製造に用いる前記リビングポリマー(I−1)は、特に制限されるわけではないが、1種であることが好ましい。例えば、ブロック形態や分子量などが異なる数種のリビングポリマー中にカップリング剤を添加して反応させて得られる不均等分岐ブロック共重合体の場合、引張特性や圧縮永久ひずみ性が劣る傾向にある。
水添ブロック共重合体(I)における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の質量比[(A)/(B)]は、20/80〜50/50である。重合体ブロック(A)の比率が少なすぎるか、又は多すぎると、布帛(2)との接着力が低下し、軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力も低減する。なお、重合体ブロック(A)の比率が多すぎる場合は、水添ブロック共重合体の溶融粘度が高くなりすぎ、他の成分との溶融混合が困難となり、さらに、熱可塑性重合体組成物とした場合に、柔軟性に乏しくなる傾向にもある。
同様の観点から、(A)/(B)は、好ましくは25/75〜50/50である。
水添ブロック共重合体(I)は、溶液重合法、乳化重合法又は固相重合法などにより製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法では、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次添加して、ブロック共重合体を得、次いでブロック共重合体を水素添加することにより、水添ブロック共重合体(I)を得ることができる。
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、重合反応は、通常、0〜100℃の温度範囲で、0.5〜50時間行う。
ルイス塩基は共役ジエン化合物由来の構造単位におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、N−メチルモルフォリンなどが挙げられる。ルイス塩基は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤としては公知のものを用いることができ、特に限定されない。中でも、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルなどのエステル化合物;ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)エタンなどのアルコキシシラン化合物が好ましい。
リビングポリマーとカップリング剤とを反応させる際のカップリング率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。カップリング率が50%以上であれば、得られる熱可塑性重合体組成物の機械的強度が良好である。該カップリング率は、実施例に記載の方法により求めた値である。
水添ブロック共重合体(I)の分岐係数は、2.3以上が好ましく、2.4以上がより好ましく、2.6以上がさらに好ましい。分岐係数を高めることにより軟化剤(II)の保持力(保油力)及び破断強度を向上させることができる。
なお、該分岐係数は、後述する実施例に記載の方法により求めた値であり、カップリング率及び分岐係数については、国際公開第2010/024382号の段落[0031]及び[0032]等を参照できる。
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(B)からなるブロック重合体は、前記の通り、耐熱性及び耐候性を良好なものとする観点などから、そのブロック共重合体における共役ジエン化合物由来の構造単位に基づく炭素−炭素二重結合の少なくとも一部を水素添加する。
また、該共重合体のリビングポリマーに多官能性カップリング剤を反応させることにより得られるトリブロック又はラジアルテレブロック型のブロック共重合体を水添する場合には、必要に応じて、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加してカップリング反応を停止させた後、公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添することにより、水素添加物とすることができる。
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル;白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルト等の第8族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物又は有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛又はマグネシウム等の有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒等が挙げられる。
水添ブロック共重合体(I)としては、上記方法で得られたものが好ましく用いられる。
水添ブロック共重合体(I)の重量平均分子量は、好ましくは30,000〜500,000である。重量平均分子量がこの範囲であれば、得られる熱可塑性重合体組成物は、機械的特性に優れ、且つ布帛(2)との接着力及び軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力に優れたものとなる。この観点から、水添ブロック共重合体(I)の重量平均分子量は、好ましくは30,000〜450,000、より好ましくは40,000〜450,000、さらに好ましくは80,000〜450,000である。
上記の構造は、直鎖状、分岐状等に限定はされない。
熱可塑性重合体組成物に含有させる軟化剤(II)としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素系油;落花生油、ロジンなどの植物油;リン酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;流動パラフィン;低分子量ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合オリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン又はその水素添加物、液状ポリブタジエン又はその水素添加物、などの炭化水素系合成油などの公知の軟化剤を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、軟化剤(II)としては、パラフィン系の炭化水素系油やエチレン−α−オレフィン共重合オリゴマーなどの炭化水素系合成油が好ましく使用される。
軟化剤(II)の40℃における動粘度は、成形加工性及び塗工容易性の観点から、好ましくは5〜1,000mm2/s、より好ましくは5〜800mm2/s、さらに好ましくは30〜600mm2/sである。
熱可塑性重合体組成物において、水添ブロック共重合体(I)と軟化剤(II)との含有割合[(I)/(II)]は、水添ブロック共重合体(I)100質量部に対して、軟化剤(II)150〜1,000質量部である必要があり、好ましくは150〜900質量部である。軟化剤(II)の含有量が150未満であると、成形加工性に乏しくなる。一方、1,000質量部を超えると、機械的特性が不良となると共に、軟化剤(II)のブリードアウトの抑制が困難となる。
なお、軟化剤(II)を、水添ブロック共重合体(I)100質量部に対して200質量部以上、さらには250質量部以上とすると、より一層、本発明の軟化剤(II)のブリードアウト抑制効果が顕著となるため好ましい。
熱可塑性重合体組成物には、必要に応じて前記水添ブロック共重合体(I)とは異なる、その他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。その他の熱可塑性重合体としては、例えば、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体;アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン;エチレン−プロピレンランダム共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂;水添ブロック共重合体(I)とは異なる、スチレンからなるブロックをハードセグメントとするスチレン系ブロック共重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、架橋型の熱可塑性ポリオレフィンエラストマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で、また2種以上を併用してもよい。
その他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、水添ブロック共重合体(I)100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
また、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、撥水剤、防水剤、粘着付与樹脂、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、蛍光剤、アンチブロッキング剤、防菌剤を必要に応じてさらに含有していてもよい。
本発明の熱可塑性重合体組成物が当該その他の成分(前記「その他の熱可塑性重合体」を除く。)を含有する場合、本発明の効果を著しく損なわない限りその含有量に特に制限はないが、通常、水添ブロック共重合体(I)100質量部に対して、好ましくはそれぞれ30質量部以下、より好ましくはそれぞれ20質量部以下、さらに好ましくはそれぞれ10質量部以下である。
本発明の積層体の層(1)に用いる熱可塑性重合体組成物は、下記調製方法により製造できる。
具体的には、まず、混合する全成分を従来公知の方法で溶融混練してペレットを製造する。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して、各構成成分を溶融混練して熱可塑性重合体組成物のペレットを得る。その際の混練温度としては、一般に160〜280℃が好ましく、190〜260℃がより好ましい。
上記溶融混練に際しては、例えば
(a)熱可塑性重合体組成物を構成する全ての成分を、混練する前にハイスピードミキサーやタンブラーミキサーのような混合機を用いて予めドライブレンドしておき、その後一括に溶融混練する方法、
(b)軟化剤(II)を除く他の成分を先に押出機にフィードし溶融混練を開始し、軟化剤(II)を、サイドフィーダーなどを用いて途中から押出機に所定量を添加し、その後、全成分を溶融混練する方法、
などが挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。
本発明では、該熱可塑性重合体組成物からなる層(1)に、後述する布帛(2)を積層する。その際、層(1)の形状に特に制限はないが、通常、積層状態を良好なものとする観点から、シート状であることが好ましい。
シートの厚みに特に制限はないが、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは7mm以下であり、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、特に好ましくは2mm以上である。
布帛(2)としては、目付量200〜600g/m2の布帛を用いる必要がある。目付量が200g/m2未満であると、軟化剤(II)のブリードアウトが多くなり、かつ接着力も低下することが多くなる。一方、目付量が600g/m2を超えると、積層体の柔軟性が損なわれる。
布帛の目付量は、布帛(2)との接着力及びブリードアウト抑制の観点から、好ましくは200〜500g/m2、より好ましくは200〜400g/m2、さらに好ましくは200〜330g/m2である。
また、布帛(2)の厚みは、ブリードアウト抑制の観点から、好ましくは0.40mm以上である。布帛(2)の厚みの上限値に特に制限はなく、所望の積層体とするために任意に設定すればよい。通常は、布帛(2)の厚みは、より好ましくは0.40〜2.0mm、さらに好ましくは0.40〜1.5mm、特に好ましくは0.40〜1.3mmである。
布帛(2)の生地の種類に特に制限はないが、例えば、織物、編物、フェルト、不織布などが挙げられる。
また、布帛(2)の素材としては、天然繊維であってもよいし、合成繊維であってもよいし、天然繊維と合成繊維とからなるものであってもよい。特に制限されるものではないが、天然繊維としては、綿、絹(シルク)、麻及び毛から選択される少なくとも1種が好ましい。また、合成繊維としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維及びビニロン繊維から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン6,6などが挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などが挙げられる。
ただし、接着力の一層の向上効果を見込めるという観点から、天然繊維を、10質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することがさらに好ましく、80質量%以上含有することが特に好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。このように、布帛(2)に天然繊維が含まれることによって接着力が向上する効果が発現する正確な理由は不明であるが、天然繊維に含まれる親水基が、軟化剤(II)のブリードアウト抑制効果の一翼を担っているものと推測する。
布帛(2)は、2種以上の天然繊維を含有していてもよいし、2種以上の合成繊維を含有していてもよい。
本発明の積層体は、上記層(1)及び布帛(2)のみからなる2層であってもよいし、これらからなる3層以上であってもよい。これらからなる3層以上である場合、「層(1)/布帛(2)/層(1)」、「層(1)/層(1)/布帛(2)」(但し、2つの層(1)は異なる成分からなる。)などの層構造が挙げられる。
さらに、本発明の積層体は、上記層(1)及び布帛(2)以外にも、その他の層(3)を有していてもよい。その他の層(3)を有する場合、該層(3)は、層(1)上に有していてもよいし、布帛(2)上に有していてもよいが、布帛(2)を表層とする観点からは、その他の層(3)は層(1)上に有している、つまり、「布帛(2)/層(1)/層(3)」の層構造となっていることが好ましい。
なお、その他の層(3)は、1層からなっていてもよいし、2層以上からなっていてもよい。
その他の層(3)の成分に特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂、各種金属、各種皮革、各種ガラス、各種木材などが挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)などのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はそれらの水素添加物などのスチレン系熱可塑性エラストマー(水添ブロック共重合体(I)を除く。);ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂組成物{例えばスチレン系熱可塑性エラストマー及び軟化剤などを含有する樹脂組成物(但し、本発明で用いる熱可塑性重合体組成物を除く。)}などが挙げられる。
本発明の積層体の製造方法に特に制限はない。例えば、インサート射出成形法、二色射出成形法、サンドイッチ射出成形法などの射出成形方法;Tダイラミネート成形法、共押出成形法、押出被覆法などの押出成形法;カレンダー成形法;プレス成形法;圧縮成形法などの溶融を伴う成形法を採用し、熱可塑性重合体組成物のシートを製造し、布帛と重ね合わせて圧縮成形法によって積層させることにより、積層体を製造することができる。
(GPC測定条件)
装置:「GPC−8020」、東ソー株式会社製
移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)
検出器:示差屈折計
測定温度:40℃
標準物質:TSK標準ポリスチレン、東ソー株式会社製
注入量:150μl
試料濃度:5mg/10cc
<水添率の測定方法>
水素添加の前後において、炭素−炭素二重結合の含有量を1H−NMRによって測定し、下記式によって水添率を求めた。
水添率(モル%)=100×(水素添加前のブロック共重合体における値−ブロック共重合体の水素添加物における値)/水素添加前のブロック共重合体における値
<1,4−結合構造単位の含有量の測定方法>
1H−NMRによって測定した。
<カップリング率>
上記GPC測定により得られた、カップリング反応によって生成したポリマーのピーク面積を、カップリング反応によって生成したポリマーの面積とカップリング未反応のポリマーの面積との和で除することにより求めた。
<分岐係数>
上記GPC測定により得られた、カップリングしたポリマーの重量平均分子量(Mw)をカップリング未反応のポリマーの重量平均分子量(Mw)で除することにより求めた。
[製造例1]
窒素置換し、乾燥させた攪拌装置付き耐圧容器に、シクロヘキサン50.0kg、イソプレンとブタジエンの混合物(50/50(質量比))1.54kg及びsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)68.3gを加え、60℃で60分間重合した。次いでスチレン3.53kgを加えて60分間重合し、さらにイソプレンとブタジエンの混合物(50/50(質量比))3.76kgを加えて60分間重合した後、フタル酸ジメチル(5質量%、テトラヒドロフラン溶液)13.1gを加えて120分間カップリング反応した後、最後にメタノールを加えて反応を停止してブロック共重合体(I)−1を合成した。得られた反応混合液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ブロック共重合体(I)−1の水素添加物(以下、これを「水添ブロック共重合体(I)−1」と称する。)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(I)−1の各種物性の測定結果を表1に示す。
窒素置換し、乾燥させた攪拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン50.0kg、スチレン1.87kg及びsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)44.0gを加え、60℃で60分間重合した。次いでイソプレンとブタジエンの混合物(50/50(質量比))4.76kgを加えて60分間重合し、さらにスチレンを1.87kg加えて60分間重合した後、最後にメタノールを加えて反応を停止してブロック共重合体(I)−2を合成した。得られた反応混合液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ブロック共重合体(I)−2の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(I)−2」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(I)−2の各種物性の測定結果を表2に示す。
各種原料の配合を表2に記載のものに変更した以外は、製造例2と同様にして水添ブロック共重合体(I)−3を得た。得られた水添ブロック共重合体(I)−3の各種物性の測定結果を表2に示す。
各種原料の配合を表2に記載のものに変更した以外は、製造例2と同様にして水添ブロック共重合体(I)−1’及び水添ブロック共重合体(I)−2’を得た。得られた水添ブロック共重合体(I)−1’及び水添ブロック共重合体(I)−2’の各種物性の測定結果を表2に示す。
「ダイアナプロセスオイルPW−32」(動粘度(40℃)=31mm2/s、パラフィン系プロセスオイル、出光興産株式会社製)
各成分を表3又は表4に記載の質量比でスーパーミキサー「SMV−100」(株式会社カワタ製)により予備混合してから、二軸押出機「TEM−35B」(東芝機械株式会社製)を用いて230℃、スクリュー回転200rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してペレット状の熱可塑性重合体組成物を得た。
得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを、圧縮成形機を用いて、190℃、1.0MPa、3分間圧縮成形することによって、熱可塑性重合体組成物からなるシート(寸法:縦×横×厚み=150mm×150mm×4mm)を得た。該シートと表3又は表4に記載の布帛とを、140℃、1.0MPaで圧縮成形機によって3分間圧縮成形することで積層体を製造した。得られた積層体について、層間の接着力と、軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力について下記方法に従って評価し、結果を表3及び表4に示す。
実施例及び比較例で製造した積層体を、23±1℃、湿度(50±5)%の雰囲気下で30分放置した。その後、該積層体から、長さ80mm、幅25mmの短冊状試験片を打ち抜いた。該試験片を用いて、JIS K 6854に記載の「180°剥離試験」に準じて、300mm/分の剥離速度で測定した。
接着力は、好ましくは10N/25mm以上、より好ましくは13N/25mm以上である。
(2)軟化剤(II)のブリードアウト抑制能力の評価
実施例及び比較例で製造した積層体を、23±1℃、湿度(50±5)%の雰囲気下で放置し、軟化剤(II)のブリードアウトの有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。なお、評価としては、好ましくはA又はBであり、より好ましくはAである。
A:3ヶ月経過しても、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトしていない。
B:1〜3ヶ月の間で、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトした。
C:1ヶ月経過後、軟化剤が布帛の表面にブリードアウトしていた。
D:積層体の製造後、すぐに布帛の表面に軟化剤がブリードアウトした。
一方、表4より、布帛の目付量が小さい場合(比較例1〜6及び8)、軟化剤のブリードアウトが非常に多くなった。特に、同一素材を用いた実施例1と比較例2、実施例12と比較例6とを比較すると、軟化剤のブリードアウト量の違いが明らかである。
さらに、比較例7及び9からは、布帛の目付量が所定の範囲内であっても、熱可塑性重合体組成物に含まれる水添ブロック共重合体が本発明で規定する条件を満たしたものを用いないと、層間の接着力が低下してしまい、且つ軟化剤のブリードアウト量も増加してしまうことが分かる。
Claims (6)
- 下記熱可塑性重合体組成物からなる層(1)と、目付量200〜600g/m2の布帛(2)との積層構造を有する積層体であって、前記布帛(2)の材料が天然繊維を10質量%以上含有する積層体。
(熱可塑性重合体組成物)
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]が20/80〜50/50であるブロック共重合体の水素添加物(I)100質量部、及び
軟化剤(II)150〜1,000質量部
を含有し、前記ブロック共重合体の水素添加物(I)以外の熱可塑性重合体の含有量が前記ブロック共重合体の水素添加物(I)100質量部に対して10質量部以下である熱可塑性重合体組成物。 - 前記ブロック共重合体の水素添加物(I)の重量平均分子量が30,000〜500,000である、請求項1に記載の積層体。
- 前記ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)がイソプレン由来の1,4−結合構造単位及びブタジエン由来の1,4−結合構造単位のうちの少なくとも一方を有し、該1,4−結合構造単位の含有量が、重合体ブロック(B)を構成する構造単位の30モル%以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
- 前記ブロック共重合体の水素添加物(I)が、下記一般式(I−1)
B1−A−B2−X (I−1)
(式中、B1及びB2は主として共役ジエン化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Aは主として芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Xはリビングアニオン重合体の活性末端を示す。)
で表されるリビングポリマーと、カップリング剤とを反応させて得られたブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロックB1と重合体ブロックB2の合計質量に対する重合体ブロックB1の質量比[B1/(B1+B2)]が0.10〜0.45のブロック共重合体の水素添加物である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。 - 天然繊維が、綿、絹(シルク)、麻及び毛から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
- 軟化剤(II)の40℃における動粘度が5〜1,000mm2/sである、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
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