JP2014236490A - 音響機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】信号の伝送速度そのものを高速化して音響特性、特に高音過渡特性の改善を実現した音響機器を提供できるようにする。
【解決手段】整流平滑回路1、増幅回路2、出力回路3の抵抗、コンデンサ等の各電子部品に、特性改善素子A,Bを並列に設ける。これにより、高次高調波成分(高周波成分)の重畳した商用交流を変圧した交流やこれに由来の脈流が、電源ラインにおける電子部品である抵抗R1とこれに並列な特性改善素子Aとを伝送される際に、特性改善素子Aの高速電界伝送作用により、高周波成分の重畳した商用交流を変圧した交流や脈流から、高周波成分のみが特性改善素子Aに並列な通常電子部品である抵抗R1よりも高速で特性改善素子Aを伝送され、その後段の電源ラインとアースとの間の通常電子部品であるコンデンサC1に並列に設けられた同じ放電電圧の特性改善素子Aにより、高速伝送された商用交流を変圧した交流の高周波成分のみや脈流の高周波成分のみがアースに流れて除去され、高音過渡特性が改善される。
【選択図】図1
【解決手段】整流平滑回路1、増幅回路2、出力回路3の抵抗、コンデンサ等の各電子部品に、特性改善素子A,Bを並列に設ける。これにより、高次高調波成分(高周波成分)の重畳した商用交流を変圧した交流やこれに由来の脈流が、電源ラインにおける電子部品である抵抗R1とこれに並列な特性改善素子Aとを伝送される際に、特性改善素子Aの高速電界伝送作用により、高周波成分の重畳した商用交流を変圧した交流や脈流から、高周波成分のみが特性改善素子Aに並列な通常電子部品である抵抗R1よりも高速で特性改善素子Aを伝送され、その後段の電源ラインとアースとの間の通常電子部品であるコンデンサC1に並列に設けられた同じ放電電圧の特性改善素子Aにより、高速伝送された商用交流を変圧した交流の高周波成分のみや脈流の高周波成分のみがアースに流れて除去され、高音過渡特性が改善される。
【選択図】図1
Description
本発明は、音響特性、特に高音過渡特性の改善を実現した音響機器に関するものである。
近年、音響・映像の分野においては、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、DVDレコーダ等の音声、映像のデジタルの再生機器や記録再生機器の出現により、これらのデジタル機器を用いて本格的なオーディオシステムやビジュアルシステムを構築し、ディスク等の記録媒体にデジタル記録されたハイスピードでダイナミックレンジが広い音楽や高品位の映像を再生して鑑賞できるようになってきている。
また、デジタル機器のユニットを内蔵したいわゆる「ミニコンポ」等の一体型または分離型のいわゆる普及タイプのオーディオ機器、ビジュアル機器等においても、ディスク等の記録媒体にデジタル記録されたハイスピードでダイナミックレンジが広い音楽や高品位の映像を再生して鑑賞できるようになってきている。
そして、オーディオ、ビジュアルのこれらのシステムや機器によって、音楽等を、細やか、かつ、豊かな音楽表現で再現し、映像を高品位に再生するため、デジタルの再生機器や記録再生機器等のシステムを構築する音響・映像の電子機器や、普及タイプのオーディオ機器、ビジュアル機器等の音響・映像の電子機器は、音声信号や映像信号へのノイズの混入(重畳)等による信号特性の劣化を極力防止する必要がある。
そのため、この種の音響・映像の電子機器においては、機器内の基板(回路基板)に取り付ける各種の電子部品・回路素子に、信号特性を始めとする諸特性の優れたものが使用される。また、基板の信号パターンや、アースパターンの配置が工夫される(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、基板の各種の電子部品に特性の優れたものを使用し、基板のパターン配置を工夫したとしても、試聴の結果から、音声信号については特に高音域の過渡特性が劣化することが判明した。
このような過渡特性の劣化の原因のひとつに、以下の事項が挙げられる。すなわち、電力会社から供給される商用交流には非常に低い電圧の高次高調波が高周波成分として正弦波の波形に重畳しており、このように高周波成分が重畳した正弦波形の交流が各種電気機器に電源供給されても、高周波成分の電圧が低いゆえ使用上の支障はないが、音響機器の低周波増幅回路(装置)により増幅した音声信号の特に高音域において歪みを生じさせる原因になっているものと考えられる。
ところが、このように商用交流や、これを音響機器内で変圧器により変圧後の交流に重畳した高周波成分を除去する対策は、これまで採られていないのが実情であり、音響マニアにとって音声信号の高音過渡特性の改善が望まれるところである。
本発明は、信号の伝送速度そのものを高速化して音響特性、特に高音過渡特性の改善を実現した音響機器を提供できるようにすることを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明の音響機器は、商用交流やこれを音響機器内で変圧器により変圧後の交流を直流に変換して各部に電源供給する整流平滑回路と、入力端子から入力される音声信号を増幅する増幅回路と、該増幅回路により増幅された前記音声信号をスピーカ等の出力手段に出力する出力回路とを少なくとも備える音響機器であって、前記各回路を構成する電子部品のうち、各部に電源供給するための電源ラインに直列に設けられた前記電子部品、および該電子部品の少なくとも後段において当該電源ラインとアースとの間に設けられた前記電子部品それぞれに、不活性ガスを充填した絶縁性容器内に一対の接続電極がマイクロギャップを介し対向して配置されて成る同じ種類の特性改善素子を並列に設けるとともに、前記音声信号が流れる音声信号ラインに直列に設けられた前記電子部品、および、該電子部品の少なくとも後段において当該音声信号ラインとアースとの間に設けられた前記電子部品それぞれに、同じ種類の前記特性改善素子を並列に設けたことを特徴としている(請求項1)。
また、前記各回路を構成する電子部品のうち、電源系の前記電子部品には放電電圧の高い前記特性改善素子を、小信号系の前記電子部品には放電電圧の低い前記特性改善素子をそれぞれ並列に設けてもよい(請求項2)。
特性改善素子には、例えば三菱マテリアル株式会社製の電源対策用サージアブソーバである型番DA53シリーズや、同社製の静電対策用サージアブソーバである型番DSP−201M等を使用することができ、この種特性改善素子は、特開平8−83671号公報等に記載されているとおり、不活性ガスを充填した絶縁性容器内に一対の接続電極がマイクロギャップを介し対向して配置されて成る。
そして、このような特性改善素子(サージアブソーバ)では、マイクロギャップを介した両接続電極間には通常のコンデンサのような誘電体ではなく不活性ガスが存在し、等価的に微小容量のコンデンサを有することから、特開平8−83671号公報にも記載(段落0014,0019)されているように、この特性改善素子(サージアブソーバ)に高周波成分の除去性能があることは公知である。
しかしながら、本願発明者は、上記の特性改善素子(サージアブソーバ)の使い方によって、音響機器における高音過渡特性の改善できることを見出し、後に詳述するように実験的にも検証できた。以下において、特性改善素子(サージアブソーバ)の高音過渡特性の改善作用について説明する。
電気信号の伝送形態には、導線を電子が一方向に流れることにより電子の流れる方向と逆方向に電流が流れることによる電流伝送と、一対の導線の一端側に生じる電荷が他端側に生じることによる電界伝送とがあり、一般に直流は前者の電流伝送、交流は後者の電界伝送によって伝送される。
そうすると、上記した特性改善素子(サージアブソーバ)を経て、高次高調波成分(高周波成分)が重畳した商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流を伝送する場合に、特性改善素子の容器内における電極間物質が不活性ガス(気体)であるため、略光速の速い伝送速度で伝送され、しかも一方の電極側の電荷が他方の電極側にも生じる電界伝送によって、高周波成分の重畳した商用交流や同様の成分を重畳した音響機器内で変圧器を介して変圧された交流が、高周波成分のみ特性改善素子により高速で伝送されると考えられる。
また、上記した「ミニコンポ」等の音響機器は、上記した電流伝送を担う回路と電界伝送を担う回路が幾種類も織り交ぜられて配置され構成されており、音声信号が流れる信号ラインに直列に設けられた抵抗やコンデンサなどの電子部品や、信号ラインとアースとの間に設けられた電子部品など、種々の電子部品により構成されるのが通常である。
そのため、請求項1に係る発明のように、音響機器に供給する電源用交流や脈流が流れる電源ラインおよび音声信号が流れる信号ラインに直列に設けられた抵抗やコイルおよびコンデンサなどの電子部品、電源ラインとアースとの間や信号ラインとアースとの間に設けられた電子部品に、それぞれ特性改善素子を並列に設けることにより、例えば商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流を直流に変換して各部に電源供給する整流平滑回路において、電源供給するための電源ラインに直列に設けられた抵抗やコイルおよびコンデンサなどの電子部品に、上記した特性改善素子(サージアブソーバ)を並列に設けると、高次高調波成分(高周波成分)の重畳した商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流やこれに由来の脈流が、この電源ラインにおける電子部品とこれに並列な特性改善素子とを伝送される際に、上記したような特性改善素子の高速電界伝送作用により、高周波成分の重畳した商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流や脈流の高周波交流成分のうち、高周波成分のみが特性改善素子に並列な通常電子部品よりも高速で特性改善素子を伝送され、さらにその後段の電源ラインとアースとの間の通常電子部品に並列に設けられた同じ種類の特性改善素子により、高速伝送された商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流の高周波成分のみや脈流の高周波成分のみがアースに流れて除去される。また、増幅回路や出力回路でもこれと同様のことが当てはまる。
したがって、通常伝送ラインにおける特性改善素子に並列な電子部品を伝送される低周波交流信号や、低周波脈流よりも速く高速電界伝送された高周波成分の重畳した脈流や、交流伝送波のうち高周波成分を除いた脈流や、残存低周波交流電界伝送波が、従来の電流伝送よりも高速化された状態で抽出され、結果として高速伝送されることになると考えられる。
請求項1に係る発明によれば、電源ラインや音声信号ラインにおいて、該ラインに直列挿入された電子部品に並列に接続した特性改善素子を高次高調波成分(高周波成分)の重畳した脈流成分のうち、高周波のみが迂回的に高速電界伝送され、高速電界伝送された高周波が、前段の音声信号増幅素子由来の音声信号と合成された後、ノイズとなる高周波成分と音声信号の合成された信号から、高周波成分のみがその後段の電源ラインまたは音声信号ラインとアースとの間の電子部品に並列な特性改善素子により除去される。このような高速電界伝送と高周波除去作用の結果、音声信号の伝送速度そのものも高速化される上、その高周波ノイズが除去される。なお、前段の電源ラインとアースとの間の通常電子部品に同じ種類の特性改善素子を並列に設けた場合も、同様のことが当てはまる。
そして、商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流由来の電源系高速化脈流の電界伝送部分の供給と、音響信号増幅回路の高速化との両作用により、高速低周波増幅器が作動され、スピーカから高速出力され、その結果としてスピーカから出力される音声信号の音響特性、特に周波数高域の過渡特性を改善することができ、高音過渡特性の優れた音響機器を提供することが可能になる。
また、請求項2に係る発明によれば、電源系の電子部品には放電電圧の高い特性改善素子を、小信号系の電子部品には放電電圧の低い特性改善素子をそれぞれ並列に設けたため、耐圧特性を考慮した動作信頼性の高い音響機器を提供することができる。
つぎに、本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。なお、図1は音響機器の低周波増幅器(パワーアンプ)において電力増幅用五極管6BQ5を用いた例の回路結線図である。
図1において、1は後述する変圧器を介して変圧された商用交流を直流に変換して各部に電源供給する整流平滑回路、2は入力端子から入力される音声信号を増幅する増幅回路、3は増幅回路2により増幅された音声信号を音響機器の出力手段であるスピーカ(図示せず)に出力する出力回路であり、これらの回路1〜3の構成自体は公知のものである。
整流平滑回路1は、電源変圧器TR、複数の整流用のダイオードD、複数の接地用のコンデンサCや平滑用のコンデンサC1、複数の限流抵抗R1などを備えており、変圧器TRの3次、4次巻線は増幅回路の各真空管のヒータに接続される。また、増幅回路2は、音声信号入力端子INに入力される音声信号を増幅する電圧増幅用の1個の双三極管12BH7AのQ1,Q2、1個の6BQ5五極管Q3のほか、可変抵抗VR、複数の限流抵抗R、複数の結合用のコンデンサC、複数の発行ダイオードLD、ツェナーダイオードZDなどを備えている。さらに、出力回路3は、一次側が増幅回路2の最終段の五極管Q3に接続され2次側がスピーカに接続される出力トランスToutを備えている。
そして、本発明の最大の特徴として、上記した整流平滑回路1、増幅回路2、出力回路3の抵抗、コンデンサ等の各電子部品に、特性改善素子A,Bを並列に設けている。ここで、特性改善素子Aには、放電電圧が3600Vの三菱マテリアル株式会社製の電源対策用サージアブソーバである型番DA53シリーズを使用し、特性改善素子Bには放電電圧が200Vの三菱マテリアル株式会社製の静電対策用サージアブソーバである型番DSP−201Mを使用している。
例えば、整流平滑回路1の限流抵抗R1とその後段における平滑コンデンサC1に着目すると、これら抵抗R1、コンデンサC1にそれぞれ同じ種類(同じ放電電圧)の特性改善素子Aを並列に設けることにより、上記したように、高次高調波成分(高周波成分)の重畳した商用交流を変圧した交流やこれに由来の脈流が、電源ラインにおける電子部品である抵抗R1とこれに並列な特性改善素子Aとを伝送される際に、特性改善素子Aの高速電界伝送作用により、高周波成分の重畳した商用交流を変圧した交流や脈流の高周波交流成分のうち、高周波成分のみが特性改善素子Aに並列な通常電子部品である抵抗R1よりも高速で特性改善素子Aを伝送され、さらにその後段の電源ラインとアースとの間の通常電子部品であるコンデンサC1に並列に設けられた同じ放電電圧(同じ種類)の特性改善素子Aにより、高速伝送された商用交流を変圧した交流の高周波成分のみや脈流の高周波成分のみがアースに流れて除去されることになる。
そのため、電源ラインにおける特性改善素子Aに並列な電子部品である抵抗R1を伝送される低周波交流信号や、低周波脈流よりも速く高速電界伝送された高周波成分の重畳した脈流や、交流伝送波のうち高周波成分を除いた脈流や、残存低周波交流電界伝送波が、従来の電流伝送よりも高速化された状態で抽出されて、その結果として高速伝送されることになる。このことは、増幅回路2や出力回路3でもこれと同様のことが言える。ただし、増幅回路2では、電源系には放電電圧の高い(3600V)特性改善素子A、小信号系には放電電圧の低い(200V)特性改善素子Bを設けている。
なお、電源変圧器TRの1次巻線および2次〜4次巻線のそれぞれの両端間、整流平滑回路1と増幅回路2との間の電源ライン上の抵抗Rに並列に、出力回路3の出力トランスToutの1次巻線とアース間に、それぞれ特性改善素子Aを設けているが、この特性改善素子Aにより高周波ノイズが除去されるほか、上記したとおり特性改善素子Aの有する微小容量により、特性改善素子Aが音響機器内の電界伝送波に対して時定数を低下させる効果を有すると考えられ、これにより機器全体が小さい時定数で動作するようになるものと考えられる。
したがって、電源ラインや音声信号ラインにおいて、これらのラインに直列挿入された電子部品(抵抗、コンデンサ、コイル)に並列に接続した特性改善素子A,Bを高次高調波成分(高周波成分)の重畳した脈流成分の内、高周波のみが迂回的に高速電界伝送され、高速電界伝送された高周波が、前段の音声信号増幅素子由来の音声信号と合成された後、ノイズとなる高周波成分と音声信号の合成された信号から、高周波成分のみが、その後段の電源ラインまたは音声信号ラインとアースとの間の電子部品に並列な特性改善素子により除去される。
このような特性改善素子A,Bによる高速電界伝送と高周波除去作用の結果、音声信号の伝送速度そのものも高速化される上、その高周波ノイズが除去され、商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流由来の電源系高速化脈流の電界伝送部分の供給と、音響信号増幅回路の高速化との両作用により、高速低周波増幅器が作動され、スピーカから高速出力され、その結果としてスピーカから出力される音声信号の音響特性、特に周波数高域の過渡特性を改善することができ、高音過渡特性の優れた音響機器を提供することが可能になる。
(変形例)
変形例として、トランジスタを用いた低周波増幅器(パワーアンプ)の回路結線図を示す図2について説明する。
変形例として、トランジスタを用いた低周波増幅器(パワーアンプ)の回路結線図を示す図2について説明する。
図2は、クリスコーポレーション社製のソリッドステートプリアンプである公知のクリスキットP−35II(桝谷英哉著、株式会社大盛堂書房、1998年4月15日発行の「ステレオ装置の合理的なまとめ方と作り方(新版)」、160頁参照)を構成する整流平滑回路11、増幅回路12、出力回路13、電源投入時におけるパワーアンプとスピーカとの接続を一定時間遅らせるためのリレースイッチ回路14のうち、整流平滑回路11、増幅回路12および出力回路13の各電子部品(抵抗、コンデンサ、コイル等)に並列に特性改善素子A,Bを設けたものを示している。
図2の例でも、電源ラインや音声信号ラインにおいて、これらのラインに直列挿入された電子部品(抵抗、コンデンサ、コイル)に並列に接続した特性改善素子A,Bを高次高調波成分(高周波成分)の重畳した脈流成分の内、高周波のみが迂回的に高速電界伝送され、高速電界伝送された高周波が、前段の音声信号増幅素子由来の音声信号と合成された後、ノイズとなる高周波成分と音声信号の合成された信号から、高周波成分のみが、その後段の電源ラインまたは音声信号ラインと後段の入力バイアス電圧を確保する電子部品やアースとの間の電子部品に並列な特性改善素子により除去される。
(実測結果)
つぎに、図3の測定システムにより、MDプレーヤ21の再生音を測定対象である音響機器の図1、図2に示すパワーアンプ(低周波増幅器)AMPそれぞれで増幅してスピーカ装置22から再生出力した再生音の測定結果について説明する。
つぎに、図3の測定システムにより、MDプレーヤ21の再生音を測定対象である音響機器の図1、図2に示すパワーアンプ(低周波増幅器)AMPそれぞれで増幅してスピーカ装置22から再生出力した再生音の測定結果について説明する。
スピーカ装置22は、フォスター電機株式会社製のFOSTEX FE87E8cmコーン型フルレンジスピーカを使用し、MDプレーヤ21により、録音された1000Hz(中音)、5000Hz(高音)の図4(a)に示すトーンバースト信号(250msecのオン期間と750msecのオフ期間との4周期くり返しの信号)を再生し、その再生音声信号をパワーアンプ(低周波増幅器)AMPを介して測定対象のスピーカ装置22から出力し、その再生音を、コンデンサマイクロホン23を通してマイクロコンピュータ構成の波形解析装置24に取り込み、FFT処理によってスピーカ装置22の出力波形を解析して図5〜図14の測定結果を得た。
図5〜図8は図1に示すような真空管アンプAMPを使用した場合の測定波形図、図9〜図14は図2に示すようなトランジスタアンプAMPを使用した場合の測定波形図である。そして、図5、図6は1000Hz、図7、図8は5000Hzのトーンバースト信号を再生した波形図であり、図5、図7は図1に示す特性改善素子A,Bのいずれも設けない構成の場合、図6、図8は図1に示す特性改善素子A,Bを設けた構成の場合の波形図である。また、図9〜図11は1000Hz、図12〜図14は5000Hzのトーンバースト信号を再生した波形図であり、図9、図12は図2に示す特性改善素子A,Bのいずれも設けない構成の場合、図10、図13は図2に示す特性改善素子A,Bのうち電源系の電子部品(図2の整流平滑回路11の電子部品)に特性改善素子AおよびBを設け、信号系の電子部品(図2の増幅回路12および出力回路13の電子部品)に特性改善素子Bを設けない構成の場合、図11、図14は図2に示す特性改善素子A,Bのすべてを設けた構成の場合の波形図である。なお、図5〜図14の横軸は時間(s)、縦軸はパーセントフルスケールで表したレベル(振幅)である。
そして、これらの測定波形図につき、図4(b)に示すように、各1周期の信号期間を、最初の大振幅(レベル)の音のあばれのa波、それに続く真の振幅のb波、さらにそれに続く慣性による振動部分(ノイズ部分)のc波に区分すると、特性改善素子A,Bを設けたことにより、特性改善素子A,Bのいずれも設けない場合に比してc波の部分が縮小して短くなっていることが判明し、上記したような特性改善素子A,Bの高速電界伝送と高周波除去作用により、周波数の高い高音の解像度や分解能が向上することが確かめられた。
すなわち、1000Hzのトーンバースト信号を再生した図5と図6の波形図を比較すると、特性改善素子A,Bを設けた第2の波形図(図6)の方が特性改善素子を設けない第1の波形図(図5)に比べてc波の部分が縮小しており、同様に、5000Hzのトーンバースト信号を再生した図7と図8の波形図を比較すると、特性改善素子A,Bを設けた第4の波形図(図8)の方が特性改善素子を設けない第3の波形図(図7)の波形に比べてc波の部分が縮小していることが明らかに分かる。
また、1000Hzのトーンバースト信号を再生した図9、図10および図11の波形図を比較すると、特性改善素子A,Bのすべてを設けた第7の波形図(図11)の方が特性改善素子A,Bのいずれも設けない第5の波形図(図9)に比べてc波の部分が縮小しており、一部特性改善素子Aのみを設けた第6の波形図(図10)についても、特性改善素子A,Bのいずれも設けない第5の波形図(図9)よりもc波の部分が縮小していることが明らかに分かる。
同様に、5000Hzのトーンバースト信号を再生した図12、図13および図14の波形図を比較すると、特性改善素子A,Bのすべてを設けた第10の波形図(図14)の方が特性改善素子A,Bのいずれも設けない第8の波形図(図12)の波形に比べてc波の部分が縮小しており、一部特性改善素子のみAを設けた第9の波形図(図13)についても、特性改善素子A,Bのいずれも設けない第8の波形図(図12)よりもc波の部分が縮小していることが明らかに分かる。
したがって、上記した実施形態によれば、音響機器におけるパワーアンプに供給する電源用交流や脈流が流れる電源ラインおよび音声信号が流れる信号ラインに直列に設けられた抵抗やコイルおよびコンデンサなどの電子部品、電源ラインとアースとの間や信号ラインとアースとの間に設けられた電子部品に、それぞれ特性改善素子を並列に設けたため、商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流由来の電源系高速化脈流の電界伝送部分の供給と、音響信号増幅回路の高速化との両作用により、スピーカから出力される音声信号の音響特性、特に周波数高域の過渡特性を改善することができ、高音過渡特性の優れた音響機器を提供することが可能になる。
また、電源系の電子部品には放電電圧の高い特性改善素子Aを、小信号系の電子部品には放電電圧の低い特性改善素子Bをそれぞれ並列に設けたため、耐圧特性を考慮した動作信頼性の高い音響機器を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
例えば、電源ラインおよび音声信号が流れる信号ラインに直列に設けられた電子部品に並列に特性改善素子を設けるとともに、その後段における電源ラインとアースとの間や信号ラインとアースとの間に設けられた電子部品に特性改善素子を並列に設ける場合のほか、このように後段の電子部品に並列に特性改善素子を設けず、前段における電源ラインとアースとの間や信号ラインとアースとの間に設けられた電子部品に、特性改善素子を並列に設けてもよく、前段と後段の両方の電子部品に並列に特性改善素子を設けても、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、上記した実施形態(図1参照)では、電源変圧器TRの1次巻線および2次〜4次巻線のそれぞれの両端間、整流平滑回路1と増幅回路2との間の電源ライン上の抵抗Rに並列に、出力回路3の出力トランスToutの1次巻線対アース間側に、それぞれ特性改善素子Aを設けた場合について説明したが、これらの特性改善素子Aを設けなくても、これら特性改善素子Aを設けた場合と同様に周波数高域の過渡特性を改善することができる。
1,11…整流平滑回路
2,12…増幅回路
3,13…出力回路
A,B …特性改善素子
2,12…増幅回路
3,13…出力回路
A,B …特性改善素子
Claims (2)
- 商用交流やこれを音響機器内で変圧器を介して変圧された交流を直流に変換して各部に電源供給する整流平滑回路と、入力端子から入力される音声信号を増幅する増幅回路と、該増幅回路により増幅された前記音声信号をスピーカ等の出力手段に出力する出力回路とを少なくとも備える音響機器であって、
前記各回路を構成する電子部品のうち、各部に電源供給するための電源ラインに直列に設けられた前記電子部品、および、該電子部品の少なくとも後段において当該電源ラインとアースとの間に設けられた前記電子部品それぞれに、不活性ガスを充填した絶縁性容器内に一対の接続電極がマイクロギャップを介し対向して配置されて成る同じ種類の特性改善素子を並列に設けるとともに、
前記音声信号が流れる音声信号ラインに直列に設けられた前記電子部品、および、該電子部品の少なくとも後段において当該音声信号ラインとアースとの間に設けられた前記電子部品それぞれに、同じ種類の前記特性改善素子を並列に設けたことを特徴とする音響機器。 - 請求項1に記載の音響機器において、
前記各回路を構成する電子部品のうち、電源系の前記電子部品には放電電圧の高い前記特性改善素子を、小信号系の前記電子部品には放電電圧の低い前記特性改善素子をそれぞれ並列に設けたことを特徴とする音響機器。
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2013
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