JP4422793B1 - 電流駆動型増幅装置およびスピーカシステム - Google Patents

電流駆動型増幅装置およびスピーカシステム Download PDF

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Abstract

【課題】 スピーカから出力される音の吐き出しを原音に近似させることが可能となり、瞬間的な高効率エネルギー放射を簡易な回路素子により実現でき、スピーカ特性を考慮した上で、高効率的なアンプを提供するとともに、アンプと放射空間負荷を含んだスピーカの系を一体とした高効率なスピーカシステムをも提供する。
【解決手段】 音源信号を入力端子から入力しスピーカを駆動する電流駆動型増幅装置であって、
前記入力端子12と、この入力端子12に接続された加算器14と、この加算器14に接続され相互インダクタンスを無限大に設定し入力信号INを出力電流iに変換するオペアンプ16と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電流駆動型増幅装置およびスピーカシステムに関する。例えば、スピーカコーンおよびボイスコイルの特性に追従させ高品位音を再現するように、増幅装置の瞬間的な高効率エネルギー放射とその制動力を向上させる電流駆動型増幅装置およびスピーカシステムに関する。
従来の再生装置の開発において、増幅装置(アンプ)、スピーカの特性をマッチングさせるように、増幅装置(アンプ)、スピーカの各々の系はそれぞれ閉じていた。また、高効率な音響エネルギーの放射をするためには、スピーカ特性の一つである磁場の強さと磁極の有効長(以下、「BL積」と略記する。)を大きくする必要がある。しかし、BL積の増大は物理的な制限があり、スピーカシステムの小型化を志向する場合には容易に大きくできない。したがって、増幅装置(アンプ)、スピーカを一体の系とするスピーカシステムを採用し、BL積を電気回路的に実装する新しい方式の増幅装置が切望されていた。よって、等価的にBL積の増大を図ることでスピーカシステムの音の立ち上がり、音の抜けの良さ、音色の心理評価により,理想に近い音圧のエネルギーを放射する増幅装置およびスピーカシステムの提案が存在していなかった。
また、アンプが低出力であっても、音量を確保しつつ、D級アンプの変換効率の低下を抑制するため、 オーディオソースに対するボリュームのレベルに応じて、パワーアンプに対するゲインの倍率を切替えるプリアンプと、すべてのインピーダンスが同一である、少なくとも2つのボイスコイルの接続形態を、ボリュームのレベルに応じて、すべて直列又はすべて並列のいずれかに切替える切替回路と、を有する増幅装置及びこれを有するスピーカーシステムの技術が知られている(特許文献1、参照)。
さらに、出力の差動信号の出力コモンモードの電位を一定値に保持することができる出力ドライバ回路を提供するために、レプリカ回路は、出力ドライバの第1、第2のトランジスタにそれぞれ相当する第7、第8のトランジスタと、出力ドライバの第3もしくは第5、第4もしくは第6のトランジスタにそれぞれ相当する第9、第10のトランジスタと、ドライバ回路から出力される差動信号間に接続される終端抵抗に相当する抵抗素子とを備え、オペアンプには、外部から供給される第1のリファレンス電圧と、第9のトランジスタと抵抗素子との間のノードの電位とが入力され、オペアンプの出力信号が、第1、第7のトランジスタに入力される。外部から供給される第2のリファレンス電圧が、第2、第8のトランジスタに入力され、カレントミラー回路が構成される出力ドライバ回路 の技術も知られている(特許文献2、参照)。
さらにまた、情報化社会,ユビキタス社会と呼ばれる現在、多様な情報が多様な端末により利用されている。音楽もまた配信方法の多様化により、より高密度な情報を持った情報媒体へと進化している。具体的には、音響再生装置の技術は1870年代トーマス・エジソンが蝋管型蓄音機を発明して以来、LPレコードやコンパクトディスクCD へと音楽情報の高密度化が進み(非特許文献1、参照)、さらにはSACDのような人間の可聴域を超える情報媒体も登場した(非特許文献2、参照)。現在、この高密度化された音楽情報を十分に活かすためには、再生装置において高品位音再現が必要である。
高品位音再現には,人間の深い感性に働きかける情報の再現が重要である(非特許文献3、参照)。この情報の再現のためには、再生装置において、無歪伝送理論など従来のオーディオ再生理論に加え、宮原氏が提唱した3つの仮説の実現が必要である(非特許文献4、参照)。
例えば、仮説1として、音の波面の忠実な再生により、人間は、ホログラフィックな音場、音像を精度高く知覚認識でき、この再現が空気感再現に不可欠である。また、仮説2として、エネルギーの放出に関し、スピーカ振動体の動きを自由空間(スピーカ前の空気)へ動的に整合して、粗密波を平面波として放出する条件(無反射伝達)が必要である。そして、仮説3として、音楽演奏、音のニュアンスの再現をするために、仮説1や仮説2を実現した上で、電気素子・ケーブルなど、音響回路に用いられる素材の材質および電気素子並びにケーブルの支持の仕方や、筐体や回路基板に起こる定在波若しくは振動までも技術的に考慮すると、原音に近いニュアンスの再現が可能になる。さらに、Extra Hi System Mは、当然音響再生理論を満足して、3つ仮説に基づき音響機器の設計および改造が成されており、良好な評価を得ている技術も知られている(非特許文献5、参照)。なお、音響技術の周知技術が非特許文献6乃至非特許文献9に開示されている。

特開2009−071740号公報 特開2009−152944号公報

日本オーディオ協会編、"オーディオ50年史"、日本オーディオ協会、1986年 日本オーディオ協会AA懇話会,"次世代オーディオへの課題と提言 〜次世代オーディオに関する調査研究報告書〜",日本オーディオ協会,1999年 1月 宮原 誠, " 高品位Audio-Visual System ? 先端的技術インフラの研究", オーディオビジュアル複合処理, pp13-6, 宮原 誠,"新・電気音響再生論 -新世代オーディオ 高忠実に演奏音(演奏者のこころ)を再現する-",ラジオ技術,2007年1月 篠田 亮, 田村 宜之, 石川 智治, 宮原 誠, " 基音への高調波の混合比による音変化", オーディオビジュアル複合処理, pp37-3 伊藤毅 著 "音響工学原論"、pp335-347 石川智治,宮原誠,"「深い感動を再現」の評価を得た芸大でのデモシステムExtra HI System M ",映情学技報,深い感性のテクノロジ−時限研究会資料, pp. 1-8,2004年 1月 Subjective assessment of sound quality、ITU-R BS.562-3、1978年 Tomoharu Ishikawa、 Makoto Miyahara、 "Hierarchical Structure of Assessment Words for the Evaluation of Information of High Order Sensations"、 KANSEI2001, 2001年10月
しかしながら、従来の増幅装置およびスピーカシステムでは、実際に弦を弾く音や打楽器の演奏など、人間は音の立ち上がり部分を聞いているので、これらは特に感性に関わりを持ち、音を再現するためには仮説1の波面の再生および仮説2のエネルギー放出が必要となるため、音響装置開発において、増幅装置(アンプ)や,スピーカといったユニット毎の高特性を実現するために、F(ω)=1の特性を満たすように設計されてきた。
すなわち、仮説2に注目してみると、増幅装置(アンプ)の設計では、スピーカの動的インピーダンス・マッチングを図っても、放射空間負荷の伝達特性が殆ど考慮されていなかったので、スピーカが瞬間的な高効率エネルギー放射に必要なエネルギーを提供することが困難であった。よって、スピーカから高効率的に音エネルギーの吐き出しを実現するため、スピーカのコーンが空気をうまく捕まえるように、増幅装置(アンプ)がスピーカを適切に駆動するモデルが要求されている。つまり、スピーカが瞬間的な高効率エネルギー放射を達成するように、増幅装置(アンプ)がスピーカと放射空間負荷の動的インピーダンス・マッチングを実行させるという技術的課題も存在する。
そこで、本発明者は、スピーカ特性を考慮した上で、高効率的な増幅装置(以下、「アンプ」と略記する。)を提供すること、アンプと放射空間負荷を含んだスピーカの系を一体とした高効率なスピーカシステムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の電流駆動型増幅装置は、例えば、図1に示すように、入力端子から音源信号を入力しスピーカを駆動する電流駆動型増幅装置であって、入力端子12と、スピーカのスピーカコーン20の動作速度により発生した起電力を負帰還するフィードバック系と、入力端子およびフィードバック系に接続されスピーカのスピーカコーン20の動作速度により発生した起電力の負帰還値および音源信号を加算する加算器14と、加算器14の出力に接続され電流源として音源信号を出力電流に変換しスピーカに供給するオペアンプ16と、を備える。
以上のように、本発明のアンプおよびスピーカシステムによれば、スピーカから出力される音の吐き出しを原音に近似させることが可能となり、瞬間的な高効率エネルギー放射を簡易な回路素子により実現することができるので、スピーカ特性を考慮した上で、高効率的なアンプを提供するとともに、アンプと放射空間負荷を含んだスピーカの系を一体とした高効率なスピーカシステムをも提供することができる。
本発明の電流駆動型増幅装置の概略を示すブロック図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの概略を示すブロック図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの概略を示すブロック図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの概略を示すブロック図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムのスピーカ両端電圧を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの原理を示す回路図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの回路を例示する図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの電圧波形を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの電圧波形を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの外観図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムのボイスコイル速度波形を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムのボイスコイル速度波形を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの周波数特性を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの音圧波形を示す図。 本発明の電流駆動型スピーカシステムの音圧波形を示す図。
本発明のアンプおよびスピーカシステムは、スピーカコーンが空気をうまく捕えるようにスピーカと放射空間負荷の間に動的インピーダンス・マッチング手段を設け、多くの音エネルギーを放出することができる。例えば、放射空間負荷を考慮したスピーカの電気的等価回路を採用し電気エネルギーによって効率的に空気負荷を駆動する。
例えば、スピーカシステムでは、スピーカのトータルインピーダンスZ、ボイスコイルインピーダンスZe、ボイスコイルに流入する電流i、スピーカの開放端に生じる起電力Eo、電気および機械変換ジャイレータBL、スピーカコーンにかかる力f、スピーカコーンの速度v、スピーカコーンの機械インピーダンスZcorn、放射空間負荷インピーダンスZair、機械系総合インピーダンスZm、とした場合、先ずスピーカの振動系のインピーダンスZcornを小さくすることで本発明の目的が達成される。つまり、スピーカに入力されたエネルギーが、効率良く放射空間負荷インピーダンスZairに供給されることにより、放射空間負荷への放射エネルギーの効率を上げることができる.
ただし、本発明はスピーカの振動系のインピーダンスZcornを小さくする構成に限定されず他の態様でも実現できることは言うまでもない。
例えば、Zcornはスピーカ固有の物理特性なので、振動系のインピーダンスのみを電気的に解決することは適切でない場合もある。その理由は、機械系のZcornとZairは直列に接続されているので、スピーカの振動系も放射空間負荷も電気的には同様な構成要件であるからである。また、振動系のインピーダンスのみを下げようとすると、同時に放射空間負荷インピーダンスも下がってしまうため、次のスピーカシステムを採用することもできる。
本実施形態に適用されるスピーカシステムでは、スピーカ特性の1つであるBL積の増大が考えられる。本実施形態のBL積とは、ボイスコイルに掛かっている磁束密度Bとボイスコイル長Lとの積を意味する。これは電気系と機械系のカップリング係数と見做すことができるので、BL積は電気的等価回路で表すことができる。
つまり、BL積は任意に可変できるので、BL積が大きくなると、駆動力f=iBLの方程式によりスピーカコーンが電流iに敏感に反応することができる。したがって、スピーカの瞬間的なエネルギー放射が可能となる。また、電流iにより駆動されたスピーカコーンは速度vで振動若しくは動くことができ、このときe=vBLの方程式によりスピーカの起電力eは逆向きにかかることにより、スピーカコーンの速度vに対し行き過ぎ量の無い若しくは減衰する適切な制動が作用することが可能となる。
また、スピーカコーンと放射空間負荷である空気は密接な関係を持っているので、スピーカが入力信号に対する正確な放射エネルギーを得るためには、駆動と制動を正確に制御し、スピーカコーンの挙動を適切に制御することが本実施形態では中核的構成要件となる。さらに、BL積は電気系と機械系のカップリング係数であるため、BL積を増大することにより、高効率な増幅回路が実現できるのである。
このように、BL積は電気的等価回路により任意に増減できることが本発明の実施形態である図1乃至図15に示す通り十分理解することができるであろう。
本実施形態のアンプおよびスピーカシステムは、電圧制御型アンプによるスピーカの制動の容易さ、電流駆動型アンプの正確な駆動力の利点をそれぞれ活かした電流駆動型増幅装置を用いてスピーカの起電力帰還手段を設けるアンプを備える。
図1は、本実施形態の電流駆動型増幅装置の概略を示すブロック図である。電流駆動型増幅装置は、図左から入力端子12と、この入力端子12に接続された加算器14と、この加算器14に接続され電流源として入力電圧INを出力電流iに変換するオペアンプ16と、を備える。

このオペアンプ16は、電流駆動型増幅装置の利点であり、正確な駆動力による瞬間的なエネルギー放射の向上のために、例えば、BL積のインピーダンスを有するボイスコイル18に対する駆動力は電流源iである。また、ボイスコイル18は1/Zmのインピーダンスを有するスピーカコーンを駆動する力fを生成する。
オペアンプ16は、スピーカコーン20の摺動速度vによる起電力が、例えば、BL積のインピーダンスを有する起電力帰還手段26および加算器14を経由してオペアンプ16自身にフィードバックされるので、オペアンプ16はスピーカコーン20の速度vを正確に制動することができる。したがって、電気的なスピーカコーン20の速度vをフィードバック制御することにより、オペアンプ16およびボイスコイル18並びにスピーカコーン20がひとつの能動系を形成する。よって、スピーカの物理特性を電気的に等価可変することができ、従来の電圧制御型アンプでは困難であった等価的なBL積の増大による瞬間的高効率エネルギー放射を本実施形態では放射空間OUTへ出力できる。
従来のアンプにおいて最も一般的なスピーカの駆動方式は電圧制御型アンプである。この方式でスピーカを駆動すると、スピーカユニット自身の起電力eによりスピーカコーンを制動することから、受動系ではあるが、スピーカコーンの速度vを制御している。
このことから、電圧制御型アンプは放射空間負荷にかかる力と速度の積である音響エネルギー放射特性が制御されているが、従来のBL積は物理的制限により利得が小さく、またボイスコイルのインピーダンスが直列に入るので操作量が少ないため、適切な制御量が得られない点で本実施形態と相違する。
また、物理的制限とは、BL積の磁束密度Bとボイスコイルの長さLで規定されるので、スピーカが磁束密度Bを得るための手段の多くは永久磁石の大きさに依存するため、BL積を増加させる場合には強力で大きな磁石が必要となる。そのような磁石は高価であり、また磁石の増大化はある程度のところで物理的に一定の限界が生じてくる。
そして、フィールド・コイル型スピーカでは、磁界を電磁石によって発生させるので、アンプ若しくはボイスコイルに流せる電流は定格で決まっており、大きなフィールド・コイルを用いたところで余計な電力を損失するだけ無駄が生じる点でも本実施形態と相違するのである。よって、磁石の物理的な増大によるBL積の増加は難点が多い点で従来技術は不利である。
次に、ボイスコイルの長さLを長くすると抵抗成分の増大による損失が増え、アンプの高い効率が得られない点でも従来技術は不利である。
さらに、電圧制御型アンプの電気的特性を鑑みると、一般的なスピーカのインピーダンス特性を考えた場合、最低インピーダンスが数Ωに対し、最低共振周波数f0にて、ピークのインピーダンスが数十Ωを示す。したがって、f0で電流が殆ど流れないため、スピーカコーンの挙動が入力信号に対し正確に追従できないので不利である。すなわち、アンプはスピーカを正確に駆動することが困難である。このことから、瞬間的な高効率エネルギー放射は難しいのである。
このことから、f0で電流を確実に流すためには、本実施形態のようにスピーカは基本的に電流で駆動することが有利であると考えられる。
上述の如く、スピーカを電流で駆動することが技術的に優位性があるという点を述べたが、電流駆動型アンプによるスピーカ駆動はf0での電流供給能力において優れるので、スピーカコーンに対する瞬間的エネルギー放出が得られるが、アンプが電流を強制的に流す反面、無帰還系であるためスピーカコーンの速度vによる起電力がフィードバックされない。
したがって、従来のアンプ若しくはスピーカシステムでは、フィードバック制御が成されず、スピーカコーンを制動することが困難である。さらに、スピーカコーンの速度vが制御されないため、放射空間負荷にかかる力と速度の積である音響エネルギー放射特性が制御されていない点で、本実施形態と相違する。
このように、従来の電圧制御型増幅装置、電流駆動型増幅装置は共に、メリットおよびデメリットを有する。具体的には、従来の電圧制御型増幅装置はスピーカコーンの制動はできるが駆動ができない。また、従来の電流駆動型増幅装置は、スピーカコーンの駆動はできるが制動ができないのである。そこで、本発明者は、従来技術のメリットを融合したアンプを考案したのである。
図2は、本実施形態の電流駆動型増幅装置を用いたスピーカシステムを示すブロック図である。図1と同一または類似する部材は同一または類似の符号を付して、重複する部材の説明を省略する。
スピーカシステム10は、加算器14とオペアンプ16と、n倍のインピーダンスBL積を有するボイスコイル18と、スピーカコーン20と、このスピーカコーン20の速度vを加算器14へフィードバックするn倍のインピーダンスBL積を有する起電力帰還手段26と、を備える。
図中のスピーカシステム10は、BL積をn倍したインピーダンス系を有する。このインピーダンス系は次の伝達関数の数式1で表すことができる。この数式1は次の数式2のように書き換えることができ、この数式2を用いるスピーカシステム10を図3に示す。すなわち、オペアンプ16のgm値を電気的にn倍し、フィードバック値をn倍とすることで、BL積をn倍と任意に等価増大する。但し、本実施形態で用いた「Extra Hi System M(非特許文献3、参照)」のスピーカシステムにおいては、物理的な磁石が強力であり、大幅なn値の増大には一定の限界があり、n値が「2」より大きく設定するとインピーダンス系が不安定となるので、好ましくはBL積を2倍に設定するとよい。
Figure 0004422793
Figure 0004422793
次に、本実施形態の電流駆動型アンプを用いるスピーカシステムに動作原理を説明する。図3は、本実施形態の電流駆動型増幅装置を用いたスピーカシステムを示すブロック図である。図1および図2と同一または類似する部材は同一または類似の符号を付して、重複する部材の説明を省略する。
図中の電流駆動型アンプを用いるスピーカシステム10は、スピーカコーン20の起電力をフィードバックさせるように接続されている。電流駆動型アンプは理想電流源と見做すことができるので、ボイスコイル18若しくはスピーカコーン20は開放端となる。よってボイスコイル18は、スピーカコーン20の動作速度により発生した起電力をボイスコイル18のインピーダンスに依存することなく発生することができる。
ここで、スピーカシステム10は、単純に起電力e0をn倍するオペアンプ28にフィードバックさせても電流駆動型アンプとしての機能を発揮することが困難である。つまり、スピーカコーン20を電流駆動した際に生じるボイスコイルインピーダンスZeによる起電力がスピーカシステム10の内部に発生し、スピーカ内部の加算器38によりフィードバック値に加算され、駆動系全体の系に影響してしまうからである。
そこで、入力端子12、加算器14、オペアンプ16を含む電流駆動型アンプ側に図4に示すようなボイスコイルインピーダンス30(Ze)を相殺させる補正インピーダンス素子30(Ze’)を設けるとよい。より具体的には、ボイスコイルインピーダンス36(Ze)を相殺するボイスコイルインピーダンス30(Ze’)によるミラー回路34を設け、このボイスコイルインピーダンス30(Ze’)へスピーカのボイスコイル18に流入する検出電流を流入させ、オペアンプ16側に加算器32を設けてボイスコイルインピーダンス36(Ze)の両端電圧を予測することができる。
そして、この予測電圧を、ボイスコイルインピーダンス36(Ze)の両端電圧から差し引くことにより、スピーカシステム10全体の系からボイスコイルインピーダンス36(Ze)が排除され、図1に示すようなシンプルなフィードバック系を含むスピーカシステムを提供することができる。
本実施形態のスピーカシステムによれば、スピーカ総てのパラメータを知る必要が無くアンプおよびスピーカの回路を設計できるという利点がある。つまり、図4に示すボイスコイルの静的インピーダンス36(Ze)を検知するだけでスピーカコーン20を正確に駆動することができる。よってテスターやLCRメータのような計測機器を用いてボイスコイルインピーダンス36(Ze)の抵抗成分とインダクタンス成分を測定するだけでスピーカシステムの回路設計が可能である。
引き続き、コンピュータを用いて本実施形態のスピーカシステムの動作確認シミュレーションを実施することができる。
スピーカシステムの動作確認シミュレーションでは、BL積を等価的に2倍にするスピーカシステム10(図1、参照)が安定に動作するか否かをシミュレーションにて検証すると共に、理想的な動作に対して各種音響特性を観測する。
電圧制御型アンプによるスピーカ駆動は、スピーカ両端電圧波形がアンプの入力信号に対し正確である。これに対して、本実施形態の電流駆動型アンプを用いるスピーカシステム10では、スピーカ駆動において、スピーカの両端電圧が図4に示すフィードバック値である。すなわち、起電力帰還手段40の出力電圧e0とボイスコイルインピーダンス36(Ze)の両端電圧を加算器38により加算する加算値e2となる。
より具体的には、図5に示す一定の電圧値を有する入力信号波形49を入力端子に印加した場合、大きい加速電圧46の瞬間的なボイスコイル18の立ち上がり速度によるインパルス的な起電力波形が発生した直後に、図中に示す強い制動によるボイスコイル18の起電力波形47の急降下が必要である。その後、ボイスコイル18はスピーカコーン20の振動を吸収しながら、ボイスコイルの抵抗成分に一定の電流を流すことによる起電力48に、緩やかに収束することが望ましい。したがって、電圧制御型アンプとスピーカ両端電圧が一致することは、電流駆動型アンプが機能していないことを意味する。このことから、電圧制御型アンプとスピーカ両端電圧波形が一致しないことを検証する。
起電力予測電圧は,図4に示す加算器32の出力電圧e0’であり、加算器38の出力電圧e0との比較値から特定することができる。出力電圧e0’と出力電圧e0が一致していれば、本実施形態の電流駆動型アンプは正常に機能していることが理解できる。つまり、図1に示すスピーカシステム10に置き換えることができる。次に、電圧制御型アンプと比較する項目と期待する結果を示す。
スピーカ両端電圧e2は、電圧制御型アンプとスピーカ両端電圧波形が不一致であり、起電力予測電圧e0’は起電力波形e0と一致する。
図6は、シミュレーションで用いた本実施形態のスピーカシステムの原理を示す回路図である。放射空間負荷を含めたスピーカの電気的等価回路は、スピーカの物理的なBL積を含んでいる。なお、シミュレーションの条件として、「Extra Hi System M(非特許文献3、参照)」の スピーカを用いる場合の各種パラメータのステップ関数を入力するとよい。
図6に示す回路の原理図に示すように、図左下に示すオシレータから矩形波を発生させ、オシレータの下流に接続するパワーオペアンプに矩形波を供給する。そして、パワーオペアンプは電流検出抵抗素子を介して節点50へスピーカ駆動電流を供給する。
ボイスコイル(抵抗およびインダクタンス素子のインピーダンス)は、節点50から駆動電流の供給を受けて、下流に接続する機械系の振動インピーダンス(設置電位に接続された抵抗およびインダクタンス素子)を駆動する。
機械系の振動インピーダンスは、その下流に接続する空気等価素子(例えば、キャパシタ)に音圧力値を供給し、この空気等価素子はその下流に位置する基準電位に直列接続されたキャパシタおよび抵抗素子に音圧力値を供給し、スピーカコーンの音圧値をキャパシタおよび抵抗素子の間に設けられた節点52から出力する。
スピーカコーンは、その下流に接続する音響ダクト等価回路へスピーカーコーンの音圧値を出力する。音響ダクト等価回路の出力値は節点54から検出することができる。さらに節点50の上流に位置する電流検出抵抗素子は、その両端電圧を図左上に示すボイスコイルミラー回路へ供給する。ボイスコイルミラー回路は、n倍のBL積の値を出力する起電力帰還回路としてのインピーダンス回路へスピーカ駆動電流を電圧値に変換した信号を、上述したパワーオペアンプの入力段へ供給することができる。
図7は、本実施形態のスピーカシステムの回路を例示する図である。例示する抵抗値、キャパシタ容量値、およびインダクタンス値は本発明を限定するものではなく、他の受動素子および能動素子を用いても本発明の効果を得ることができることは自目であろう。
図8は、本実施形態のスピーカシステムのシミュレーション結果を示す電圧波形グラフを示す図である。図示するシミュレーション結果は図5に示す理想的な動作を行っている。つまり、入力信号(○でトレースする波形)に節点50の電圧e0(▽でトレースする波形)が追従している。
コンピュータへステップ関数を入力しシミュレーションによるスピーカ両端の電圧波形では、電流駆動型アンプはスピーカコーンのフィードバック値を供給されているので加算器38の入力信号e0とボイスコイルインピーダンス30(Ze)の両端電圧を加算器38により加算した電圧値e2の波形を示している。この波形から、図中の電圧値e0であるボイスコイル速度による真の起電力と、加算器32の出力電圧値e0’である起電力予測電圧が完全に一致している。したがって本実施形態の電流駆動型アンプは従来に比してスピーカの駆動を精度よく、且つ俊敏に動作させることができる。なお、真の起電力と起電力予測電圧波形を図9に示す。つまり、真の起電力v(□でトレースする波形)と起電力予測電圧v(○でトレースする波形)が重畳している。
本実施形態の電流駆動型アンプを実装するスピーカーシステムを図10に示す。この電流駆動型アンプは、シンプルな電気回路系を構築できるものの、ボイスコイルインピーダンスの両端電圧、ボイスコイルの予測電圧によりフィードバック値をオペアンプに返していることから、発振しやすいときがある。したがって、回路の設計ノウハウや部品の実装技術を用いるとよい。
例えば、スピーカシステムの音質向上のため、使用する導線においては、左右のチャンネルをそれぞれ等距離となるように調整してもよく、導線の向きを配慮してもよい。要は、電流駆動型アンプの回路設計において最小の面積に能動部品や受動部品を実装するように、何度も試行錯誤を繰り返して音響効果を確認するとよい。
また、筐体としてのベース板には10mm厚の真鍮板を使い、振動による音質への影響を最小限に抑えることができる。音質に影響するコンデンサにはフィルム・コンデンサを用い、高周波域で働くコンデンサには高周波域でインピーダンスの低いセラミック・コンデンサを用いるとよい。
さらに、オペアンプの電源部に必要な電解コンデンサには「ELNA社」のセラファイン・シリーズ(登録商標)を用いることができ、音質向上を目指すことができる。電流駆動型アンプの実装には数MHz帯での外乱にも対応させるため、回路パターンや実装方法に細心の注意を払ってもよいし、
回路の実装が配線の浮遊容量による発振を抑制させるように、信号の位相余裕を稼ぐため、信号の帯域の制限を超えないように、1MHzの帯域幅を確保することができる。
もうひとつ鑑みなければならないのが、ボイスコイルインピーダンスのミラー回路を構成する部分の時定数の決定である。いくら正確に計算して決められた時定数を達成する回路を組んでも、部品は必ず誤差を含んでおり、さらに温度によって部品の値は変化することが知られている。
したがって、ボイスコイルインピーダンスは正の値を設定する。一方、ミラー回路との差が負の値に設定すると、ボイスコイルインピーダンスが負の抵抗であると電流駆動型アンプが判断し、発振する場合がある。よって、より好適な実施の形態においては理想動作が確保できる範囲で、ボイスコイルインピーダンスより少し低い値の時定数を有するミラー回路を実装するとよい。なお、スピーカを損傷させないように厳重な過電流保護回路を安全回路として実装してもよいことは勿論である。
上述した電流駆動型アンプは、音質に深く関わる音圧時間特性、音圧を発生させるための制御量であるボイスコイル18(図1、参照)のスピーカコーン速度による物理評価と、音楽ソースによって本発明の目的である音の立ち上がり、抜けのよさの改善度を測定する心理評価を実施することができる。
本実施形態のスピーカシステムの物理評価として、電流駆動型アンプを評価するにあたり、音質に関連性が高い音圧時間特性を測定し、音圧を発生させる要因であるボイスコイル18のスピーカコーン20の速度を観測することが重要である。
ボイスコイル18を駆動するスピーカコーン20の速度は、専用機器が高価で入手しづらいため、放射空間負荷(例えば、音響ダクトの形状や音響ダクトの不圧損失)が変化した場合の測定は現実的でないので、コンピュータによるシミュレーションによりスピーカーシステムの物理評価を行うことが合理的である。
このように、音圧の物理測定は実測による評価とすることが好適な実施形態であり、ボイスコイル18が受けるスピーカコーン速度は他のシミュレーションにて物理評価を行うことが合理的である。また放射空間負荷が変化した場合の特性も他のシミュレーションにて物理評価することができる。
本実施形態のスピーカシステムの物理評価は、シミュレーションに使用したスピーカとして「Extra Hi System M(非特許文献5、参照)」のスピーカを用いることができる。このシミュレーションもこれに準じて実施することができる。従来のアンプとして、「Extra Hi System M(非特許文献5、参照)」のMusical Fidelity社A1(登録商標)の改造品を用いることもできる。
ここで、コンピュータによるシミュレーションの評価条件として、図3に示すをブロック図に示すシミュレーションの評価システムを用いてn値を2に設定することができる。入力信号12(IN)はボイスコイル速度の立ち上がり、制動を観測するため、5msecの単発パルス(例えば、矩形波)に設定する。
図中の観測点における出力信号OUTは入力信号INと同じ波形である。出力波形OUTが入力信号INに対してどの程度正確であるか否かを確認するべく、出力波形OUTと入力信号INとの相関を取ることができる。
ボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度の立ち上がり時間は、波形のピークまでの立ち上がりとし、放射負荷空間とのインピーダンスマッチングを意図した電流駆動型アンプが、放射空間の負荷変動に対してどのくらい影響を受けるのか、放射空間の負荷4倍と1/4倍にして共分散の値を検出することができる。
上述したシミュレーションによる評価結果として、まずボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度の時間波形を図11に示す。また、図12に示す時間対ボイスコイル速度特性を図12に示し、図12に示すグラフは時間軸(横軸)の「0〜3msec」までの拡大図である。
また、放射空間負荷を(例えば、通常の1/4倍、通常、通常の4倍)に変化させた波形を同時に表示させたグラフである。図12に示すように、従来のアンプに比べ、本実施形態の電流駆動型アンプはスピーカを駆動すると、ボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度の速やかな立ち上がりである強い駆動力と、強い制動が行われている制動力を発生させていることが理解することができる。
このような評価結果により、入力信号との相関係数は(例えば、従来アンプが0.80、電流駆動型アンプが0.95)と本実施形態の電流駆動型アンプの特性が従来アンプに比して向上し、波形のピーク値は(例えば、従来アンプが0.16、電流駆動型アンプが0.11)と本実施形態の電流駆動型アンプの特性が従来アンプに比して向上し、波形のピークまでの立ち上がり時間は(例えば、従来アンプが1.99msec、電流駆動型アンプが0.95msec)と本実施形態の電流駆動型アンプの特性が従来に比して向上し、通常負荷より負荷4倍と1/4倍の係数における共分散は(例えば、従来アンプが0.116、電流駆動型アンプが0.027)と本実施形態の電流駆動型アンプの特性が従来に比して向上することができる。
すなわち、従来アンプと本実施形態の電流駆動型アンプの各々は、スピーカボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度波形のピークまでの立ち上がり、入力信号との相関係数、スピーカの大きさが変わったことを想定して、放射空間負荷を4倍,1/4倍した場合の収束値を1としたときの共分散を図示している。
図12に示すように何れの値も本実施形態の電流駆動型アンプの方が従来アンプの出力波形に対して入力信号と整合性が得られ、従来アンプは0m秒から0.5m秒程度まで入力信号値を下回り、その後(例えば、0.6〜1.0m秒の期間)入力信号を超える値の出力信号を出力しているため、本実施形態の電流駆動アンプの相関係数が従来に比して精度が向上していることが十分理解できる。
従来アンプと本実施形態の電流駆動型アンプとの入力信号との相関係数によると、電流駆動型アンプは従来アンプより相関係数が約0.15改善されていることが理解できるし、従来アンプは制動力がスピーカコーンの慣性に負けている(例えば、追従性が低い)のに対し、本実施形態の電流駆動型アンプは略理想に近い制動力を得ていることが理解することができる。さらに、電流駆動型アンプの方が従来アンプに比して波形の立ち上がりが半分短縮するので、例えば1.04m秒従来アンプに比して早く駆動させることができる。
したがって、図3に示す電流駆動型アンプをn倍のBL積に設定する場合は、従来アンプと比較した場合、負荷を4倍、1/4倍にした場合、共分散において約4倍の差があるので、本実施形態の電流駆動型アンプの方が従来アンプに比して放射空間負荷の変動に影響されにくいことがわかる。
上述したシミュレーションによる評価の考察として、本実施形態の電流駆動型アンプはスピーカの放射空間負荷に整合することができ、電流駆動型アンプは音圧の立ち上がりと関連性が高く、ボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度時間波形の立ち上がりが速やかなことから、瞬間的高効率エネルギー放射を行うことができる。
本願発明者は、電流駆動型アンプの実測による評価条件について、音圧周波数・群遅延特性を「B&K Audio Analyzer Type2012(登録商標)」により測定することができる。
音圧時間波形は、ステップ入力に対する音圧出力を調べことができる。インパルス入力ではスピーカコーン20の挙動と音圧との関係が不明なため、ステップ入力を採用する、さらに、スピーカと放射空間負荷との間にインピーダンスマッチングが成されているかを調べるため、放射空間負荷を増加させた場合の音圧時間波形を測定する。
スピーカの出力端に設けられる負荷(例えば、音響ダクト)は0.8リットルの半球体や板を適用させることができる、両負荷共に、音圧測定のためφ20mmの穴を空け、スピーカのフレームに密着する。測定システムはスピーカの近傍に音響マイクを設けてこの音響マイクからヘッドアンプを介してスコープコーダにスピーカ出力信号を記録すればよい。
上述した測定機器は、アナログ・ジェネレータ「HEWLETT・PACKARD 3312A(登録商標)」により10Hzの矩形波にて擬似ステップを生成し、音響マイク「B&K Condenser Microphone Type 4133(登録商標)」、ヘッドアンプ「B&K Type 5935(登録商標)」を用いてセンシングし、スコープコーダ「横河電機DL750(登録商標)」により測定することができる。
本実施形態の電流駆動型アンプの 実測による評価結果について説明する。電流駆動型アンプは音圧周波数および群遅延特性の結果を図13に示す。図13に示す音圧周波数特性において、測定最高周波数限界にて従来アンプより本実施形態の電流駆動型アンプの方が、約20dB音圧が高い。これにより再生周波数の広帯域化が見込めるのである。なお、群遅延特性において、大きな変化は見受けられない。
ところが、図示する音圧時間特性には大きな変化が現れた。具体的には、図14に示す無負荷状態の音圧時間特性の結果に時間対音圧の追従性の精度が向上していることが十分理解できる。
本実施形態の電流駆動アンプは、従来アンプに比してより高いピークを示すこと、この差は電流駆動型アンプが波高値1.1に対し、従来アンプが波高値0.8であることからも明白である。例えば、電流駆動型アンプは従来に比して約2.8dBの改善を観測することができる。シミュレーションによる評価では、上述したように電流駆動型アンプをn倍のBL積に設定する場合は、従来アンプと比較した場合、負荷を4倍、1/4倍にした場合、共分散において約4倍の差があるので、本実施形態の電流駆動型アンプの方が従来アンプに比して放射空間負荷の変動に影響され難く、電流駆動型アンプより従来アンプの方が最大速度が約1.5倍高い値を示している。
しかし電流駆動型アンプの方が従来アンプに比して高い音圧を示すことができる。上述したように、従来アンプが最大速度に達する1m秒付近では、音圧は既にスロープに達しているので、電流駆動型アンプは低いボイスコイル速度を達成することができ、少ないスピーカコーンの移動量で大きな音圧を得ていることがわかる。
また従来アンプと本実施形態の電流駆動型アンプによる音圧時間波形の相互相関を調べた結果、立ち上がり時間が従来アンプより4μ秒ほど速い。これはシミュレーションにより調べたボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度の立ち上がり時間と関係があるのである。
したがって、本実施形態の電流駆動型アンプは等価的にBL積を増加させたことにより、質量のあるスピーカコーン20を瞬時に、そして力強く動かしていることがわかる。
また電流駆動型アンプは、放射負荷空間へのエネルギー供給をより多く達成していることも十分理解できるであろう。
さらに音圧時間波形のスロープの時定数が従来アンプでは、本実施形態の電流駆動型アンプが約24%改善されているので、制動力が増したことを意味していることも十分理解することができる。
本実施形態のスピーカシステムの放射空間負荷を与えた場合の音圧時間波形を図15および図16に示す。図15は電流駆動型アンプによる波形を、図16は従来アンプによる波形である。負荷無しの場合と、負荷ありの場合の共分散を分析することでインピーダンスマッチングが達成されているか否かを確認することができる。共分散は、両アンプの場合の無負荷状態の波形のピークを揃えて計算することができ、共分散が少ない程、負荷変動に強いことが十分理解できる。
例えば、負荷を半球体とした場合は、本実施形態の電流駆動型アンプは0.0016であり、従来アンプは0.0031であり、電流駆動型アンプの改善度は48%である。
また、負荷を板とした場合は、本実施形態の電流駆動型アンプは0.0015であり、従来アンプは0.0025であり、電流駆動型アンプの改善度は40%に達することができる。
本実施形態の電流駆動型アンプの実測による評価について説明する。音圧時間特性の結果である波高値が高いこと、音圧の立ち上がり時間が短いこととで、音圧周波数特性の結果が従来アンプに比して向上している。測定最高周波数限界にて従来アンプより電流駆動型アンプの方が20dB程度高いことが十分理解することができる。
そして電流駆動型アンプは、従来アンプに比してより音圧の速やかな立ち上がり、少ないコーンの移動量で大きな音圧を得ているのでこ、電流駆動型アンプが意図するBL積の等価的な増大によって、瞬間的高効率エネルギー放射を実行することができる。
またBL積の等価的な増大によりコーンの駆動力、制動力が増すため、負荷の変動による影響を抑えることができ、能動的なインピーダンスマッチングを達成することができる。
次に、本実施形態による電流駆動型アンプおよびスピーカシステムの心理評価について説明する。心理評価条件は、物理評価で瞬間的な音圧の立ち上がりと高効率的なエネルギー放射を確認した電流駆動型アンプが、従来アンプに比較して心理的にどのような変化があるかを調べるように、音質主観評価実験について解析する。音質評価概要として、実験場所を「JAIST AV評価実験室」、被検者人数を4名、評価尺度として7段階評価尺度「ITU−R(非特許文献6、参照)を準拠し、評価項目として音の立ち上がり、音の抜けのよさについて確認することができる。
従来アンプを基準として、本実施形態の電流駆動型アンプとの音質比較評価を行う場合、被験者は、用いた評価語群の意味を理解でき、且つ安定な評価をする成人4名を含むことができる。そして、評価に用いたシステムとして、音源にCDプレイヤとしてCD34の改良品を用いることができ、従来アンプと本実施形態の電流駆動型アンプを平行して運用し、スピーカから出力される例えば、「Anne Murray、K-TEL,6782(POPS)」や、「死と乙女、WEAMUSIC、25P2-2465(クラシック)」音を被験者が比較することにより実施することができる。また、スピーカは「Extra Hi System M(登録商標)の宮原研製10cmフルレンジSpeaker(特別仕様品)、ユニット:10cm フルレンジ、(高能率,高感度,低Q)、アルニコ磁石、エンクロージャ:4リットル、バスレフ型を使用することができる。さらに、オーディオケーブルとして「FUJIKURA RF Coaxial Cable 3C-2W/S(登録商標)」、スピーカケーブルとして「MOGAMI NEGLEX 2804(登録商標)」、ピンプラグとしてスリーブを除去した「MOGAMI 7551(登録商標)」をそれぞれ使用することができる。
上述した「JAIST AV評価実験室」は、天井の素材が石綿吸音板、内壁の素材は穴あきシナ化粧ラワン合板を設置しており、床の構造は音楽専用のフローリングの根太支持を適用できる。スピーカの背面壁は無穴の全面反射面を設け、それに対面する壁は全面吸音面を設けている。側面壁の構造は波型になっており、壁素材において吸音面に対面する壁は反射面である。
評価尺度は「ITU-R BS.562-3(非特許文献6、参照)」に準拠した7段階評価(-3非常に悪い、-2悪い、-1やや悪い、0同じ、+1やや良い、+2良い、+3非常に良い)を選択することができる。この評価方法はブラインドテストによって被験者が納得するまで繰り返すことで達成することができる。
上述の評価は、音楽ソースと非常に関係が深い評価語(非特許文献7、参照)を抜粋して使用することができ、実験に用いた評価語は、「音の立ち上がり」と「抜けのよさ」である。これらの評価語は、音の吐き出しに関係が深く、瞬間的な高効率エネルギー放射や放射空間負荷とのインピーダンスマッチングを心理的に評価できる。
上述の心理評価結果として、4名の被験者の主観評価結果を平均した評価値を示す。
被験者の平均値として、音源「Anne Murray、K-TEL,6782(POPS)」では、音の立ち上がり(+1.8)、音の抜けのよさ(+1.8)が得られ、音源「死と乙女、WEAMUSIC、25P2-2465(クラシック)」では、 音の立ち上がり(+2)、音の抜けのよさ(+1.8)が得られる。したがって、本実施形態の電流駆動型アンプは従来アンプに比して 音の立ち上がり、音の抜けのよさに関しそれぞれ心理的評価が向上していることが理解できる。
さらに、「Anne Murray(ボーカル)」に関して、「歌い始めの吐息が生々しい」、「唇の動きが読めるようだ」、「死と乙女(クラシック)」 に関して、「バイオリンの音が向かってくるようだ」、「バイオリンの弦の音が最もらしい」という評価を本実施形態の電流駆動型アンプが受けることができる。
このように、本実施形態の電流駆動型アンプは、心理評価として、物理的に瞬間的な音圧の立ち上がり、高効率的なエネルギー放射を意図したアンプが醸し出す心理評価で音の立ち上がり、音の抜けのよさが向上することができ、物理量である瞬間的な音圧の立ち上がり、高効率的なエネルギー放射が心理量の音の立ち上がり、音の抜けのよさと関連性を高めることができる。
以上のように、本実施形態によれば、スピーカと放射空間負荷の動的インピーダンスマッチングとスピーカからの瞬間的な高効率エネルギー放射を目的とし、それに従って、スピーカと放射空間負荷の動的インピーダンスをマッチングする電流駆動型アンプの提案をした。
電流駆動型アンプは、第1のシミュレーションによって実現可能と判断し、受動部品および能動部品をプリント配線基板へ実装した上で第2のシミュレーションの実測による物理的評価と、音質にどのような影響があるか心理評価を行うことができる。
このように第1および第2のシミュレーションによる評価において、ボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度波形の入力信号との相関係数が0.15に改善され、理想波形に近い出力信号を出力する電流駆動型アンプおよびスピーカシステムを提供することができる。また負荷を4倍と1/4倍の場合の共分散を解析すると、電流駆動型アンプは従来アンプより負荷変動に対して影響を受けにくい。
また、音圧時間波形からは、低いボイスコイル速度で高い増幅率が得られ、電流駆動型アンプの方が従来アンプに比して速やかな音圧の立ち上がりを提供することができる。これらの物理評価から、電流駆動型アンプは従来アンプに比して放射空間負荷への効率的なエネルギー放射を行うことができ、心理評価から、音の立ち上がり、音の抜けのよさが従来アンプに比してより良いことから、電流駆動型アンプがもたらす強い駆動力、制動力による放射空間負荷への瞬間的な高効率エネルギー放射の有効性を達成することができる。
したがって、BL積の等価的な増大によって、ボイスコイル18に対する強い駆動力、制動力を備えた電流駆動型アンプは、放射空間負荷への瞬間的な高効率エネルギー放射へ寄与していることが十分理解することができる。そして、物理量である瞬間的な音圧の立ち上がり、高効率なエネルギー放射は、心理量である音の立ち上がり、音の抜けのよさに関連していることが十分理解できる。また今BL積を等価的に増大させたことにより高効率的なアンプを実現することができ、本来であれば,さらに良い音質を得るためにはスピーカのエンクロージャの体積を本来より大きくする必要がある。逆に考えると、エンクロージャが大きく、磁石が小さいスピーカに本実施形態の電流駆動型アンプを用いると、高い効果が得られることが期待することができる。
これまで述べたように、電流駆動型アンプはスピーカの特性を等価的に変化させることができ、BL積を等価的に増大させ、PID制御系を組み込むことによって、入力波形に対し更に精密なボイスコイル18の時間波形の改善を図ることができる。
またボイスコイル18が受けるスピーカコーン20の速度をフィードバックしていることから、ボイスコイル18の速度信号を積分することにより、ボイスコイル18の位置を知ることができ、これを応用してボイスコイル18の位置情報による磁束密度の変化を正確に補正することができる。
この考え方は、MFB(モーション・フィードバック)技術と同様であるが、動作原理が違う電流駆動型アンプの方がインピーダンス系がシンプルで音質も良い。さらに、MFBは何らかのセンサーによりボイスコイルの速度または位置を計器により読み取る必要があるが、電流駆動型アンプはセンサーを用いなくても精度が良い。
また昨今は低消費電力化、薄小軽量化が進み、電力増幅部はデジタルアンプ化が進んでいる。本実施形態の電流駆動型アンプは広範な応用を保有しており、電流駆動型アンプの中の電流源は、デジタルアンプを適用することは言うまでも無く、例えばデジタルシグナルプロセッサDSPやラージインストラクションMPUを使用することができるので将来性もがある。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、スピーカシステムを一体に構成することもできるし、イヤホンを接続するように別体にこうせいすることもできる。
10 スピーカシステム
14 加算器
16 オペアンプ
18 ボイスコイル
20 スピーカコーン
26 起電力帰還手段

Claims (2)

  1. 入力端子から音源信号を入力しスピーカを駆動する電流駆動型増幅装置であって、
    前記入力端子と、
    前記スピーカのスピーカコーンの動作速度により発生した起電力を負帰還するフィードバック系と、
    前記入力端子および前記フィードバック系に接続され前記スピーカコーンの動作速度により発生した起電力の負帰還値および音源信号を加算する加算器と、
    前記加算器の出力に接続され電流源として前記音源信号を出力電流に変換し前記スピーカに供給するオペアンプと、
    を備えたことを特徴とする電流駆動型増幅装置。
  2. 入力端子から音源信号を入力しスピーカを駆動する電流駆動型増幅装置によるスピーカシステムであって、
    前記入力端子および前記スピーカのスピーカコーンの動作速度により発生した起電力を負帰還するフィードバック系に接続され、前記スピーカコーンの動作速度により発生した起電力の負帰還値および音源信号を加算する加算器と、
    前記加算器の出力に接続され電流源として前記音源信号を出力電流に変換し前記スピーカに供給するオペアンプと、
    前記オペアンプの出力電流に応答して動作するスピーカコーンと、
    を備えることを特徴とするスピーカシステム。


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