以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(画像形成装置の全体構成について)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置17を備えた画像形成装置1の概略構成を示す正面図である。
図1に示す画像形成装置1は、原稿読取り装置(図示せず)により読取られた原稿の画像又は外部から受信した画像データによって示される画像をカラーもしくは単色で用紙等の記録シートPに記録形成する画像形成部10を備えている。
画像形成部10は、露光装置11、現像装置12〜12、像担持体として作用する感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、転写部として作用する中間転写ローラ24〜24を含む中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙部として作用する給紙トレイ18、及び、排紙部として作用する排紙トレイ19、シート搬送装置20を備えている。
画像形成部10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、又は、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置12〜12、感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、中間転写ローラ24〜24は各色に応じた4種類の画像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられている。
感光体ドラム13〜13は、画像形成装置1の本体1aの上下方向におけるほぼ中央に配置されている。帯電器15〜15は、感光体ドラム13〜13の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。露光装置11は、ここでは、レーザダイオード及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニットであり、帯電された感光体ドラム13〜13表面を画像データに応じて露光して、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置12〜12は、感光体ドラム13〜13上に形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像する。クリーナ装置14〜14は、現像及び画像転写後に感光体ドラム13〜13表面に残留したトナーを除去及び回収する。
感光体ドラム13〜13の上方に配置されている中間転写ベルト装置16は、中間転写ローラ24〜24に加えて、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ベルトクリーニング装置25及びテンションローラ26を備えている。
中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ローラ24〜24、テンションローラ26は、中間転写ベルト21を張架して支持し、中間転写ベルト21を所定のシート搬送方向(図中矢印C方向)に周回移動させる。中間転写ローラ24〜24は、中間転写ベルト21内側に回転可能に支持され、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム13〜13に圧接されている。中間転写ベルト21は、各感光体ドラム13〜13に接触するように設けられており、各感光体ドラム13〜13表面のトナー像を中間転写ベルト21に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(各色のトナー像)を形成する。感光体ドラム13〜13から中間転写ベルト21へのトナー像の転写は、中間転写ベルト21内側(裏面)に圧接されている中間転写ローラ24〜24によって行われる。中間転写ローラ24〜24には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
画像形成部10は、転写部として作用する転写ローラ27aを含む2次転写装置27をさらに備えている。転写ローラ27aは、中間転写ベルト21の外側に接触している。上述の様に各感光体ドラム13〜13表面のトナー像は、中間転写ベルト21で積層され、画像データによって示されるカラーのトナー像となる。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト21と共に搬送され、2次転写装置27によって記録シートP上に転写される。中間転写ベルト21と2次転写装置27の転写ローラ27aとは、相互に圧接されて転写ニップ域を形成する。また、2次転写装置27の転写ローラ27aには、中間転写ベルト21上の各色のトナー像を記録シートPに転写させるための電圧(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
中間転写ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト21上の残留トナーを除去及び回収する。中間転写ベルトクリーニング装置25には、 例えばクリーニング部材として中間転写ベルト21に接触するクリーニングブレードが備えられており、このクリーニングブレードで残留トナーを除去及び回収することができる。
給紙トレイ18は、記録シートPを格納しておくためのトレイであり、画像形成装置1の本体1aにおける画像形成部10の下側に設けられている。また、画像形成部10の上側に設けられている排紙トレイ19は、印刷済みの記録シートPをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
また、画像形成装置1の本体1aには、給紙トレイ18の記録シートPを2次転写装置27や定着装置17を経由させて排紙トレイ19に送るためのシート搬送装置20が設けられている。シート搬送装置20は、Sの字形状のシート搬送経路Sを有し、シート搬送経路Sに沿って、ピックアップローラ31、一対の分離ローラ31a,31b、レジストローラ32、レジスト前ローラ33、定着装置17及び排紙ローラ34が配置されている。
ピックアップローラ31は、給紙トレイ18のシート搬送方向における下流側端部に設けられ、給紙トレイ18から記録シートPを1枚ずつシート搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。一方の分離ローラ31aは、他方の分離ローラ31bとの間に記録シートPを通過させて1枚ずつ分離しつつシート搬送経路Sへと搬送する。レジストローラ32は、停止状態において、搬送されて来た記録シートPの先端を突き当てて、記録シートPの先端を揃え、中間転写ベルト21と2次転写装置27との間の転写ニップ域で中間転写ベルト21上のトナー像が記録シートPに転写されるように、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像と同期をとって、記録シートPをタイミングよく搬送する。レジスト前ローラ33は、記録シートPの搬送を促進補助するための小型のローラである。
定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされており、複数のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)に定着ベルト173(回転定着部材の一例)が巻き掛けられている。定着ベルト173は、加熱ローラ172から定着ローラ171へ熱伝達できるようになっている。定着装置17は、定着ベルト173を介して定着ローラ171に加圧ローラ174(加圧部材の一例)が押圧されるようになっている。また、定着ベルト173は、予め定めた所定の厚み(例えば250μm)を有しており、幅が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば350mm程度)になっている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された記録シートPを受け取り、記録シートPを定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟み込んで搬送する。各色のトナー像の定着後の記録シートPは、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。なお、定着装置17については、のちほど詳述する。
以上説明した画像形成装置1では、給紙トレイ18から給紙された記録シートPをシート搬送経路Sに沿って搬送している途中で、記録シートPに対して感光体ドラム13〜13で形成されて転写ベルト21に搬送されたトナー像(未定着画像)を2次転写装置27によって転写させ、さらに定着装置17によって定着させることで印刷処理を行う。
詳しくは、感光体ドラム13〜13は、一方向に回転駆動され、除電装置(図示せず)により除電された表面がクリーナ装置14〜14によりクリーニングされた後、帯電器15〜15により均一に帯電される。露光装置11は、画像データに基づいて変調したレーザ光によって感光体ドラム13〜13の表面を主走査方向に繰り返し走査して、感光体ドラム13〜13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12〜12は、トナーを感光体ドラム13〜13の表面に供給して静電潜像を現像(顕像化)し、感光体ドラム13〜13の表面にトナー像を形成する。中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13〜13上に形成されたトナー像を転写ベルト21に転写する。2次転写装置27は、転写ベルト21上に形成されたトナー像を転写ベルト21と転写ローラ27aとの間を通過する記録シートPに転写する。定着装置17は、トナー像が形成された記録シートPを加熱及び加圧して記録シートP上のトナー像を記録シートPに定着させる。こうして、画像形成装置1は、一連の印刷動作を完了する。
尚、4つの画像形成ステーションのうち少なくとも一つを用いて、モノクロ画像を形成し、モノクロ画像を中間転写ベルト装置16の中間転写ベルト21に転写することも可能である。このモノクロ画像も、カラー画像と同様に、中間転写ベルト21から記録シートPに転写され、記録シートP上に定着される。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態に係る定着装置の実施の形態について、ベルト定着方式の定着装置17を例にとって以下に説明する。
図2及び図3は、それぞれ、第1実施形態に係る定着装置17の概略構成を示す正面図及び斜視図である。なお、定着装置17の背面図は正面図とは左右が反転するだけで実質的に同じ図であるために、図2では正面図のみを示し、背面図は図示を省略している。また、図3並びに後述する図4、図5、図12、図14及び図16から図21において加圧ローラ174は図示を省略している。
定着装置17は、図2及び図3に示すように、定着ローラ171を含む複数(ここでは二つ)のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)と、定着ローラ171及び加熱ローラ172に巻き掛けられた無端状の定着ベルト173とを備えている。
定着装置17は、さらに加圧ローラ174(図2参照)を備えており、定着ベルト173を間にして定着ローラ171と加圧ローラ174とを相互に押圧した状態で、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に定着ニップ域(定着ニップ部)N(図2参照)を形成するようになっている。なお、定着装置17は、図示を省略したが、加圧ローラ174を定着ローラ171に向けて押圧する押圧手段として作用する押圧装置をさらに備えている。この押圧装置は、従来公知の構成とすることができ、ここでは説明を省略する。
そして、定着ローラ171は、定着ベルト173を介して記録シートP上における未定着のトナーTに対向するようになっており、加熱ローラ172は、定着ベルト173を加熱するようになっている。
具体的には、定着ローラ171は、定着ベルト173を介在させた状態で記録シートP上における未定着のトナーTに対向し、加圧ローラ174に対して定着ベルト173を介在させた状態で定着ベルト173と加圧ローラ174との間の記録シートP上における未定着のトナーTに対向して未定着のトナーTを加圧ローラ174と共に押圧する。また、加熱ローラ172は、ハロゲンヒータ等の熱源177を備えており、熱源177によって加熱されることで定着ベルト173を加熱する。加熱ローラ172は、筒状の芯金を備えている。加熱ローラ172の内側には、加熱ローラ172を加熱する熱源(ここではハロゲンヒータランプ)177が設けられている。これにより、加熱ローラ172が熱源177によって加熱され、加熱ローラ172の熱が定着ベルト173に伝導され、さらに、定着ベルト173を介して定着ローラ171の表面に伝導されて定着ローラ171が加熱される。
定着ローラ171は、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に回転自在に設けられており、回転軸171aと、芯金171b(図2参照)と、弾力性(クッション性、柔軟性)を有する弾力層171c(図2参照)を備えている。
詳しくは、定着ローラ171は、芯金171bの外表面に弾力層171cが設けられている。すなわち、定着ローラ171は、外表面に弾力層171cが形成されたローラとされている。
芯金171bは、円柱状(中実)の金属製芯材からなっている。芯金171bとしては、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金171bは、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
弾力層171cとしては、例えば、多孔質の樹脂材料、発泡樹脂材料を用いることができる。発泡樹脂材料としては、代表的には、ウレタンゴム(発泡ウレタン)、シリコーンゴム(発泡シリコーン)等の発泡ゴムを例示できる。弾力層171cは、ここでは、発泡ウレタンからなっている。
定着ベルト173は、柔軟性を有する筒状の基体の表面に、離型層として、耐熱性及び離型性に優れた合成樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素系樹脂)が形成された2層構成となっている。また、定着ベルト173の寄り力を低減するために、ベルト基材の内面に、フッ素系樹脂等のコーティングを施してもよい。
加圧ローラ174は、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に回転自在に設けられており、芯金174a(図2参照)と、離型性を有する離型層174b(図2参照)とを備えている。加圧ローラ174は、芯金174a上に離型層174bが設けられている。
芯金174aは、中空円筒状の金属製芯材からなっている。芯金174aとしては、定着ローラ171と同様の材料、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金174aは、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
離型層174bとしては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂を用いることができる。離型層174bは、ここでは、PFAからなっている。
定着装置17では、画像形成装置1の本体1a(図1参照)に装着された状態において、本体1a側のギア等の駆動機構(図示せず)が定着ローラ171の回転軸171aに設けられたギア(図示せず)に噛合され、本体1a側の駆動機構からの回転駆動力がギアを介して定着ローラ171の回転軸171aに伝達されて、定着ローラ171が所定の回転方向E1に回転駆動される。定着ローラ171の回転に伴い、定着ベルト173が定着ローラ171の回転方向E1と同じ周回りの回転方向Eに周回移動して加熱ローラ172が回転方向E1に回転し、さらに加圧ローラ174が定着ローラ171の回転方向E1とは逆方向E2に従動回転する。そして、記録シートPは、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟まれつつ搬送されて、定着ニップ域Nで加熱及び加圧される。これにより、記録シートP上における未定着のトナーTが溶融、混合、圧接されて熱定着される。
なお、定着装置17は、定着ベルト173の内側又は外側に配置され、かつ、定着ベルト173の張り力を付与するように定着ベルト173に対して外側又は内側へ押圧するテンションローラを備えていてもよい。定着装置17は、テンションローラに代えて或いは加えて、加熱ローラ172の回転軸172aにおける両端部に対して定着ローラ171とは反対側へ付勢力を付与する付勢部材(例えばコイルバネ)を備えていてもよい。また、定着ローラ171及び/又は加圧ローラ174に、熱源177が設けられていてもよい。また、テンションローラが設けられる場合、テンションローラに熱源177が設けられていてもよい。また、定着ベルト173がさらに他のローラに巻き掛けられる場合、他のローラの少なくとも一つに熱源177が設けられていてもよい。
なお、図2及び図3において、説明していない符号の構成要素については、のちほど説明する。このことは、後述する図4以降の図についても同様である。
図4及び図5は、それぞれ、第1実施形態に係る定着装置17における定着ローラ171部分を示す概略側面図及び概略断面図である。図6は、第1実施形態に係る定着装置17における保持部材180及びそれに保持された剥離部の概略構成を示す分解斜視図である。また、図7は、保持部材180におけるベース部182及びそれに保持された剥離部の一端部を拡大して示す斜視図である。
定着装置17は、長手方向Xに延びた剥離板175(剥離部の一例)と、剥離板175を保持する保持部材180とをさらに備えている。
剥離板175は、加圧ローラ174(図2参照)及び定着ベルト173により形成される定着ニップ域N(図2参照)において記録シートP上における未定着のトナーを定着するにあたり、定着ニップ域Nの回転方向Eにおける下流側に配設されて定着ベルト173に対して予め定めた所定の間隔ds(図5参照)を設けた状態(非接触の状態)で定着ベルト173から記録シートPを剥離する構成とされている。ここで、所定の間隔dsは、剥離板175と定着ベルト173との間の間隔である。保持部材180は、周回りの回転方向Eに回転される定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部(記録シートPの有効画像領域Gにおける外側の部分)173a,173a(図3及び図4参照)の定着ベルト173の表面に摺接された状態で両端部173a,173a間において回転方向Eにおける上流側の側面180a(図3から図5参照)で剥離板175を保持する構成とされている。ここで、有効画像領域Gは、最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPに対して画像形成するときに感光体ドラム13〜13に画像が形成されるべき最大の領域(具体的には310mm)に相当する。剥離板175の先端175b(図2及び図5から図7参照)と定着ベルト173の表面との隙間d(間隔ds、図5参照)は、狭ければ狭い方がよいが、例えば、それには限定されないが、0.3mm〜0.5mm程度を例示できる。
そして、剥離板175は、離型性(具体的にはトナーに対する離型性)を有し、かつ、回転方向Eにおける上流側の側面175aにおいて側面175aに対して交差(具体的には直交又は略直交)する方向に向けて突出した複数(ここでは5個)の突起部176〜176が設けられている。突起部176〜176は、剥離板175の側面175aに対して長手方向Xに間隔をおいて設けられている。突起部176〜176は、高さ方向Zに延びる長尺な突起部(いわゆるリブ)とされている。突起部176〜176は、嵌入部176a(図5参照)を有し、嵌入部176aが剥離板175の複数(ここでは二つ)の嵌入孔175c,175c及びベース部182の複数(ここでは二つ)の嵌入孔182d,182d(図5参照)に対して嵌入されるようになっている。突起部176〜176は、結露による水蒸気が頂点部にできるだけ付着しないように、頂点部の面積をできるだけ小さくした形状とされ、長手方向Xの幅(強度を維持できる程度にできるだけ小さくした幅)が基端部から頂点部にかけて一定又は略一定とされている。そして、頂点部が山形の形状とされるか、或いは、先鋭化されている。また、突起部176は、頂点部が記録シートPの搬送路に沿って延びており、該搬送路に対向している。
離型性を有する剥離板175は、金属材料からなっている。剥離板175に用いることができる金属材料としては、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。剥離板175は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(図2、図3、図5及び図6参照)。具体的には、剥離板175は、記録シートPを剥離する側の第1側板175d(図3、図5及び図6参照)と、第1側板175dに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)した第2側板175e(図3、図5及び図6参照)とを有している。剥離板175の表面には、フッ素系樹脂(具体的にはPFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)が塗布されている。また、剥離板175に設けられた突起部176は、フッ素系樹脂(具体的にはPFA)からなっている。フッ素系樹脂としては、PFAの他、それには限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。
本第1実施形態では、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における剥離板175の両端部175f,175f(図3、図4、図6及び図7参照)を支持する構成とされている。
詳しくは、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部173a,173aの表面に接触して定着ベルト173に対して剥離板175を位置決めする一対の隙間確保部材181,181と、一対の隙間確保部材181,181に架け渡すように設けられて一対の隙間確保部材181,181を支持するベース部182とを備えている。
本第1実施形態では、定着装置17は、剥離部材200をさらに備えている。剥離部材200は、ベース部182と剥離板175とで構成されている。剥離部材200は、定着ベルト173により記録シートP上におけるトナー像Tを定着するにあたり、予め定めた所定の間隔ds(図5参照)を設けた状態で定着ニップ域Nを通過後の記録シートPを定着ベルト173から剥離するものである。
ベース部182は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向において中央部で剥離板175を支持する一方、両端部182a,182a(図3、図4、図6及び図7参照)で一対の隙間確保部材181,181に螺子等の固定部材SC(図3、図4、図6及び図7参照)によって固定されるようになっている。本実施の形態では、剥離板175は、ベース部182に対してカシメ等の固定手段により密着した状態で固定されている。この固定手段については、後ほど詳しく説明する。
また、保持部材180は、一対の隙間確保部材181,181が定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F、図2参照)に定着ベルト173の回転軸線α1の方向に沿った回動軸線回りに揺動自在に設けられ、かつ、定着ベルト173に向けて付勢方向D1に付勢される構成とされている。
具体的には、保持部材180は、一対の隙間確保部材181,181を定着ベルト173側に向けて付勢方向D1にそれぞれ付勢する一対の付勢部材(ここではコイルバネ)183a,183a(図2参照)を含む付勢機構183を備えている。なお、図3から図5において付勢部材183aは図示を省略している。
付勢機構183は、一対の付勢部材183a,183aの付勢力によって一対の隙間確保部材181,181をそれぞれ定着ベルト173に対して予め定めた所定の荷重で押し付ける。詳しくは、付勢機構183は、一対の付勢部材183a,183aに加えて、一対の隙間確保部材181,181にそれぞれ固定された一対の支持軸183b,183bを備えている。一対の支持軸183b,183bは、回転軸線α1の方向である長手方向Xに沿って延びており、定着装置17の本体(具体的には定着フレームF,F、図2参照)にそれぞれ回動自在に支持されている。なお、一対の支持軸183b,183bは、それぞれ、定着装置17の本体(具体的には定着フレームF,F)に長手方向Xに沿って固定され、かつ、一対の隙間確保部材181,181を回動自在に支持するようになっていてもよい。
一対の隙間確保部材181,181は、先端側に定着ベルト173にそれぞれ摺接する摺接部181a,181a(定着ベルト173に対向して定着ベルト173に接触する面)を有している。一対の付勢部材183a,183a(図2参照)は、それぞれ、一対の隙間確保部材181,181を定着ベルト173に対して所定の荷重で押し付けるように、一端が定着装置17の本体(具体的には定着フレームF,F)に係止され、他端が一対の隙間確保部材181,181(具体的には係止部181h,181h、図2及び図5参照)に係止されている。各摺接部181a,181aは、有効画像領域G以外の摺接領域とされている。よって、定着ベルト173の表面が各摺接部181a,181a部分でたとえ削れたとしても、記録シートPに記録されるトナー画像への影響はない。
具体的には、剥離板175は、長手方向Xの長さH(図3及び図4参照)が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば340mm程度)の幅とされている。剥離板175は、長手方向X及び高さ方向Zの双方に直交する厚み方向Yの厚みが回転方向Eの上流側に行くに従って小さくなるように先鋭化した先端175b(図2及び図5参照)を有していてもよい。
各摺接部181a,181aは、定着ベルト173の表面に摺接する摺接面とされている。一対の隙間確保部材181,181は、耐熱性を有する樹脂材料からなっている。一対の隙間確保部材181,181に用いることができる耐熱性を有する樹脂材料としては、代表的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を例示できる。
一対の隙間確保部材181,181は、ベース部182の長手方向Xにおける両端部182a,182aにそれぞれ設けられている。ベース部182は、金属材料からなっている。ベース部182に用いることができる金属材料としては、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。ベース部182は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(図2、図3及び図5参照)。具体的には、ベース部182は、剥離板175における第1側板175d(図3から図6参照)が設けられる側の第1側板182bと、第1側板182bに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)して剥離板175における第2側板175e(図3、図5及び図6参照)が設けられる側の第2側板182cとを有している。
そして、剥離板175は、押圧方向K1におけるベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1(回転中心)とは反対側において固定手段により押し固定されている。こうすることで、ベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1とは反対側で固定された剥離板175により記録シートPを確実に剥離することが可能となる。
この例では、L字状の剥離板175は、L字状のベース部182の上側に設けられている。
次に、ベース部182に対して剥離板175を固定する固定手段について図8から図10を参照しながら説明する。
図8から図10は、ベース部182に対して剥離板175を固定する固定手段を説明するための説明図である。図8は、該固定手段としてカシメST1を用いた例を示しており、図9は、該固定手段として螺子ST2を用いた例を示しており、図10は、該固定手段として溶接ST3を用いた例を示している。なお、図8から図10において、一点鎖線は、後述するように剥離板175が変形した場合の状態を示している。
図8に示すように、固定手段としてカシメST1を用いた例では、金属の塑性変形を利用してベース部182に剥離板175を固定する。この例では、金属材料で構成されたベース部182と金属材料で構成された剥離板175とが互い重ねられた状態で、先端が尖った棒状のカシメ部材ST4(パンチ部材)により押圧方向K1に向けて押圧することで(図8の二点鎖線参照)、剥離板175をベース部182の貫通穴182e内に入り込ませる。これにより、剥離板175をベース部182に対して密着させた状態で固定することができる。
また、図9に示すように、固定手段として螺子ST2を用いた例では、螺子ST2の螺子部ST2bに対してベース部182に設けられた螺子孔182fへの締め付けを利用してベース部182に剥離板175を固定する。この例では、ベース部182における螺子孔182fと剥離板175の螺子孔182fに対応した位置に設けられた貫通孔175iとを揃えてベース部182及び剥離板175を互い重ねた状態で、螺子ST2の螺子部ST2bが押圧方向K1に向けて剥離板175における貫通孔175iを介してベース部182における螺子孔182fに螺合することで、螺子ST2の螺子頭ST2aがベース部182に向けて剥離板175を押圧する。これにより、剥離板175をベース部182に対して密着させた状態で固定することができる。
また、図10に示すように、固定手段として溶接ST3を用いた例では、熱又は圧力若しくはその両方による溶着を利用し、さらに必要があれば適当な溶加材を使用してベース部182に剥離板175を固定する。この例では、金属材料で構成されたベース部182と金属材料で構成された剥離板175とが互い重ねられた状態で、先端が尖った一対の棒状の電極部材ST5,ST6を両側から挟み込んで電極部材ST6が押圧方向K1に向けて押圧してベース部182及び剥離板175を圧着しつつ通電することで、剥離板175及びベース部182の電極部材ST5,ST6にて挟み込まれた部分が互いに溶着する。これにより、剥離板175をベース部182に対して密着させた状態で固定することができる。
ところで、剥離板175をベース部182に固定する際には、剥離板175が定着ベルト173への押圧方向K1とは反対方向K2(ここでは定着ベルト173から離間する方向)に変形することがある(図8、図9及び図10の一点鎖線参照)。
図11は、ベース部182に対して剥離板175Xを固定する固定手段を備えた定着装置17Xの不都合を説明するための説明図であって、固定手段によりベース部182に固定した剥離板175Xの定着ローラ171及び定着ベルト173との位置関係を示す概略断面図である。ここで、定着装置17Xにおいて、剥離板175X以外は第1実施形態に係る定着装置17と同様の構成とされており、同じ要素には同一符号を付している。
なお、図11に示す例では、固定手段として図8に示すようなカシメST1を用いた例を示しているが、図9及び図10に示すような螺子ST2や溶接ST3についても同様に示すことができる。
剥離板175を所定の固定手段(例えば、カシメST1、螺子ST2や溶接ST3)によりベース部182に固定する場合、該固定手段により固定した固定部STa(例えば、カシメ部、螺子部、溶接部)から先端175bに向かって浮き(跳ね上がり)が発生することがある(図8、図9及び図10の一点鎖線参照)。そうすると、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間d(ギャップ)(図11参照)が変化し、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dが大きくなる傾向にあり、例えば、隙間dが定着ベルト173の回転軸線α1方向において固定手段(例えば、カシメST1、螺子ST2や溶接ST3)による剥離板175の変形により均一にならないことがある。この傾向により、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dが大きくなり過ぎると、記録シートPが剥離されずに隙間dに入り込んで記録シートPのジャム(シート詰まり)を招く。この場合、剥離板175をベース部182に固定する際の剥離板175の変形(ここでは定着ベルト173側とは反対方向K2の変形)を見越して予め剥離板175の先端175bを定着ベルト173側に近づけておくことが考えられる。しかし、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dを確保する隙間確保部材181,181(図3から図7参照)の厚みを予め薄くしておく必要があるところ、隙間確保部材181,181の厚みを薄くして強度を確保するにも限度がある。このため、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dを予め小さくしておくことは困難である。特に、本実施の形態のように、隙間確保部材181,181を非画像領域に設ける場合には、たとえ非画像領域において隙間確保部材181,181による隙間管理を行うことができたとしても、画像領域においては剥離板175が定着ベルト173から所定の間隔ds以上に浮いている可能性がある。
この点、第1実施形態に係る定着装置17は、後述する図12に示すような構成としている。
図12は、第1実施形態に係る定着装置17において剥離板175の定着ベルト173との隙間d部分を示す概略断面図である。また、図13は、図12に示す第1実施形態に係る定着装置17において、剥離板175の定着ベルト173との隙間d部分を拡大した概略拡大図である。なお、図12並びに後述する図14及び図16から図21において隙間確保部材181,181A及び加圧ローラ174は図示を省略している。
図12及び図13に示すように、ベース部182は、剥離板175の取り付け部材として作用する。剥離板175は、ベース部182に所定の固定手段により固定されて定着ベルト173に対向するようになっている。
そして、第1実施形態の剥離板175は、ベース部182に対して押圧方向K1に向けて変位する変位部175jを備え、変位部175jにおいて記録シートP(図13参照)を剥離する構成とされている。
詳しくは、第1実施形態の剥離板175は、ベース部182に固定されて変位部175jを支持する平面状の平面部175kをさらに備え、変位部175jが平面部175kに対して所定の曲げ角度θ(図12参照)で傾斜するように形成されている。なお、隙間確保部材181(図13参照)は、剥離板175における変位部175jと接触する部分が変位部175jの形状に応じた形状とされている。
具体的には、変位部175jは、回転軸線方向α1に沿った折り目γ1を境に平面部175kの端から定着ベルト173側に屈曲している。ここでは、剥離板175は、平板状の板金(金属板)を金型により曲げ加工してフッ素コート処理を施したものとされている。
ここで、図12に示すように、L字状のベース部182における短手側の長さL1は「 15mm」、長手側の長さL2は「35mm」、剥離板175における短手側の長さL3は「20mm」、剥離板175における平面部175kの長さL4は「36mm」、変位部175jの長さL5は「20mm」、所定の距離L6は「1mm」、剥離板175が押圧方向K1に変位した距離L7は「0.38mm」、ベース部182の厚みH1は「1mm」、剥離板175の厚みH2は「0.2mm」とされ、また、曲げ角度θは「0.5度(sinθ=(0.38−0.2)/20)」とされている。なお、所定の距離L6の説明については後述する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る定着装置17Aについて図14及び図15を参照しながら以下に説明する。
図14は、第2実施形態に係る定着装置17Aにおいて剥離板175Aの定着ベルト173との隙間d部分を示す概略断面図である。図15は、図14に示す第2実施形態に係る定着装置17Aにおいて、剥離板175Aの定着ベルト173との隙間d部分を拡大した概略拡大図である。
第2実施形態に係る定着装置17Aは、第1実施形態に係る定着装置17において第1実施形態の剥離板175及び隙間確保部材181に代えて剥離板175A及び隙間確保部材181Aを設けたものである。
図14及び図15に示すように、ベース部182は、剥離板175の取り付け部材として作用する。剥離板175Aは、ベース部182に所定の固定手段により固定されて定着ベルト173に対向するようになっている。
そして、第2実施形態の剥離板175Aは、第1実施形態の剥離板175と同様、ベース部182に対して押圧方向K1に向けて変位する変位部175Ajを備え、変位部175Ajにおいて記録シートP(図15参照)を剥離する構成とされている。
詳しくは、第2実施形態の剥離板175Aは、ベース部182に固定されて変位部175Ajを支持する平面状の平面部175Akをさらに備えている。変位部175Ajは、平面状とされている。剥離板175Aは、平面状とされた変位部175Ajが平面部175Akに対して所定の距離L7(図14参照)の段差γ2で平面部175Akと平行又は略平行な平行部175Aj1(図15参照)を備えている。なお、隙間確保部材181A(図15参照)は、剥離板175Aにおける変位部175Ajと接触する部分が変位部175Ajの形状に応じた形状とされている。
具体的には、変位部175Ajは、回転軸線方向α1(図5参照)に沿った折り目γ1を境に平面部175Akに対して定着ベルト173側に直角又は略直角に屈曲した屈曲部175Aj2(図15参照)をさらに備え、平行部175Aj1が屈曲部175Aj2の端から定着ベルト173側に直角又は略直角に屈曲している。ここでは、剥離板175Aは、平板状の板金(金属板)を金型により曲げ加工してフッ素コート処理を施したものとされている。
ここで、図14に示す第2実施形態の長さL1〜L5、距離L6,L7及び厚みH1,H2は、何れも図12に示す第1実施形態のものと同じ寸法とされている。
(本実施の形態について)
本実施の形態(第1実施形態及び第2実施形態)に係る定着装置17及び画像形成装置1によれば、剥離板175,175Aは、ベース部182に対して剥離板175,175Aを押し固定する押圧方向K1に向けて変位する変位部175j,175Ajを備え、変位部175j,175Ajにおいて記録シートPを剥離するので、剥離板175,175Aがたとえ押圧方向K1とは反対方向K2に変形したとしても、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを間隔dsに確実に維持することができ、ひいては、記録シートPが剥離されずに隙間dに入り込む記録シートPのジャム(シート詰まり)の発生を抑制することができる。これにより、記録シートPを定着ベルト173から確実に剥離することが可能となる。しかも、本実施の形態では、剥離板175,175Aにおける変位部175j,175Ajは、ベース部182に対して変位した構成とされていることで、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを確保することが可能な隙間確保部材181,181において厚みを維持することが可能となる。特に、本実施の形態のように、隙間確保部材181,181を非画像領域に設ける場合には、非画像領域で隙間確保部材181,181による隙間管理を行うことができる上、画像領域で剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを維持することが可能となる。さらに、定着ベルト173の回転軸線α1方向において剥離板175,175Aに剛性をもたせることができる。従って、剥離板175,175Aをベース部182に固定する際に固定手段(例えば、カシメST1、螺子ST2や溶接ST3)により固定した固定部STa(例えば、カシメ部、螺子部、溶接部)において発生することがある剥離板175,175Aの変形を抑制でき、例えば、固定手段により固定した固定部から先端175bに向かって発生することがある浮きを抑制することができる。これにより、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを回転軸線α1方向において均一にすることが可能となる。このことは、本実施の形態の如く、ベース部182及び剥離板175,175Aの両部品を強固に固定することが可能な固定手段であるカシメ、螺子或いは溶接を採用する場合に、特に有効となる。
ところで、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dは、例えば、0.3mm〜0.5mm程度と高い精度が要求されるので、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを微調整できることが望まれる。
この点、本第1実施形態では、剥離板175は、変位部175jが平面部175kに対して所定の曲げ角度θで傾斜するように形成されていることで、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dを簡単にかつ容易に微調整することができる。例えば、本第1実施形態の如く、剥離板175が板金とされ、金型により成型される場合、隙間dを微調整していく上で、剥離板175を成型する金型を調整することで、平面部175kに対する変位部175jの曲げ角度θを微調整することができ、これにより、剥離板175の先端175bと定着ベルト173との隙間dを簡単にかつ容易に微調整することが可能となる。
また、本第2実施形態では、剥離板175Aは、変位部175Ajが平面部175Akに対して所定の距離L7の段差γ2をもって平面部175Akと平行又は略平行になるように形成されていることで、剥離板175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを簡単にかつ容易に微調整することができる。例えば、本第2実施形態の如くに、剥離板175Aが板金とされ、金型により成型される場合、隙間dを微調整していく上で、剥離板175Aを成型する金型を調整することで、変位部175Ajと平面部175Akとの段差γ2の距離L7を微調整することができ、これにより、剥離板175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを簡単にかつ容易に微調整することが可能となる。
ところで、本第1実施形態及び第2実施形態においては、変位部175j,175Ajがベース部182に接触していると、変位部175j,175Ajの曲げ寸法精度が悪化する。
この点、本第1実施形態及び第2実施形態では、剥離板175,175Aにおける平面部175k,175Akは、押圧方向K1と交差する交差方向(ここでは直交する面)に沿ってベース部182と重なり合うようにベース部182に固定されており、平面部175k,175Akに対して変位部175j,175Ajが変位する変位の開始点(折り目γ1)は、ベース部182と剥離板175,175Aとが重なり合う領域ε(図13及び図15参照)の剥離板175,175Aの先端方向(先端に向かう方向)D3における下流側端ε1から、先端方向D3に予め定めた所定の距離L6だけ離れた位置とされている。
本第1実施形態に係る定着装置17(図12及び図13参照)では、開始点(折り目γ1)は、変位部175jの曲がり開始点とされている。本第2実施形態に係る定着装置17A(図14及び図15照)では、開始点(折り目γ1)は、変位部175Ajの段差開始点とされている。
かかる構成を備えた定着装置17,17Aでは、開始点(折り目γ1)は、ベース部182と剥離板175,175Aとが重なり合う領域εの先端方向D3における下流側端ε1から、先端方向D3に所定の距離L6だけ離れた位置とされているので、ベース部182に対して余裕をもって変位部175j,175Ajを変位させることができ、これにより、変位部175j,175Ajのベース部182への接触による変位部175j,175Ajの曲げ寸法精度の悪化を回避することが可能となる。
ところで、剥離板175Aによって定着ベルト173から剥離された記録シートPが変位部175,175Ajの定着ベルト173とは反対側の平面175l,175Al(図13及び図15参照)に沿って案内されることがある。特に、図14及び図15に示す本第2実施形態においては、変位部175Ajと平面部175Akとの間に段差γ2があると、剥離板175Aによって定着ベルト173から剥離された記録シートPが変位部175Ajと平面部175Akとの段差γ2に引っ掛かり易い。
そこで、本第1実施形態に係る定着装置17では、剥離板175における変位部175jに設けられた突起部190(後述する図16参照)をさらに備えていてもよい。また、本第2実施形態に係る定着装置17Aでは、剥離板175Aにおいて段差γ2に設けられるか、或いは剥離板175Aの先端175bと段差γ2との間の位置に設けられた突起部190(後述する図17参照)をさらに備えていてもよい。
図16及び図17は、それぞれ、図12及び図13に示す第1実施形態に係る定着装置17、並びに、図14及び図15に示す第2実施形態に係る定着装置17Aにおいて、剥離板175,175Aに突起部190が設けられている一例を示す概略側面図である。
図16に示す例では、突起部190は、剥離板175において開始点(折り目γ1)を基準に(具体的には変位部175jの先端方向D3における上流端が折り目γ1に接触した状態で)変位部175jの定着ベルト173とは反対側の平面175l上に突設されている。また、図17に示す例では、突起部190は、剥離板175Aにおいて段差γ2を埋めるように(具体的には変位部175jの先端方向D3における上流端が屈曲部175Aj2に接触した状態で)変位部175Ajの定着ベルト173とは反対側の平面175Al上に突設されている。
かかる構成を備えた第1実施形態及び第2実施形態に係る定着装置17,17Aでは、剥離板175Aにより定着ベルト173から剥離された記録シートPを、突起部190により、搬送経路側へ円滑に案内することができる。特に、第2実施形態に係る定着装置17Aでは、剥離板175Aにより定着ベルト173から剥離された記録シートPを、段差γ2に設けられるか或いは剥離板175Aの先端175bと段差γ2との間の位置に設けられた突起部190により搬送経路側へ、記録シートPの先端P1が変位部175Ajと平面部175Akとの段差γ2に引っかからないように、円滑に案内することが可能となる。
なお、図16及び図17に示す第1実施形態及び第2実施形態に係る定着装置17,17Aにおいては、突起部190は、記録シートPを定着ベルト173とは反対側に案内する曲面又は傾斜面(この例では傾斜面191)を有している。突起部190は、開始点(折り目γ1)及び段差γ2を間にして変位部175j,175Ajの平面175l,175Alと平面部175k,175Akの定着ベルト173とは反対側の平面175m,175Amとを跨ぐように突設されていてもよい。
また、剥離板175,175Aに突起部190を設ける場合、剥離板175,175Aにおける前述した突起部176(図2から図6参照)を除去してもよい。
第1実施形態及び第2実施形態では、剥離板175,175Aが、押圧方向K1におけるベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1とは反対側において固定手段により固定される例を示したが、剥離板175,175Aが、押圧方向K1におけるベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1側において固定手段により固定されていてもよい。
(第3実施形態)
次に、本第1実施形態及び第2実施形態において、剥離板175,175Aが押圧方向K1におけるベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1側において固定手段により固定されている一例について図18及び図19を参照しながら以下に説明する。
図18及び図19は、それぞれ、図12及び図13に示す第1実施形態に係る定着装置17、並びに、図14及び図15に示す第2実施形態に係る定着装置17Aにおいて、剥離板175,175Aが押圧方向K1におけるベース部182を間にした定着ベルト173の回転軸線α1側において固定手段により固定されている一例を示す概略側面図である。なお、図18及び図19において図12及び図14に示す構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図18及び図19に示す定着装置17,17Aでは、L字状の剥離板175は、L字状のベース部182の下側に設けられている。
ところで、剥離板175,175Aをベース部182に固定する際の剥離板175,175Aの変形(ここでは定着ベルト173側への変形)により、剥離板175,175Aの先端が定着ベルト173に接触しまった場合には、定着ベルト173の表面に傷、こすれ等が発生し、これにより、定着画像に悪影響を及ぼすことがあるところ、本第3実施形態に係る定着装置17,17Aにおいても、図12から図15に示す定着装置17,17Aと同様、剥離板175,175Aは、ベース部182に対して剥離板175,175Aを押し固定する押圧方向K1に向けて変位する変位部175j,175Ajを備え、変位部175j,175Ajにおいて記録シートPを剥離するので、剥離板175,175Aがたとえ押圧方向K1とは反対方向K2に変形したとしても、剥離板175,175Aの先端175bと定着ベルト173との隙間dを間隔dsに確実に維持することができ、ひいては、剥離板175,175Aの先端が定着ベルト173に接触しまった場合での定着ベルト173の表面の傷、こすれ等の発生を抑制することができる。これにより、記録シートPを定着ベルト173から良好に剥離することが可能となる。
また、図18に示す定着装置17では、剥離板175における変位部175jに設けられた突起部190(後述する図20参照)をさらに備えていてもよい。また、図19に示す定着装置17Aでは、剥離板175Aにおいて段差γ2に設けられるか、或いは剥離板175Aの先端175bと段差γ2との間の位置に設けられた突起部190(後述する図21参照)をさらに備えていてもよい。
図20及び図21は、それぞれ、図18及び図19に示す定着装置17、並びに、図14及び図19に示す定着装置17Aにおいて、剥離板175,175Aに突起部190が設けられている一例を示す概略側面図である。なお、図20及び図21において図16及び図17に示す構成と同一構成には同一符号を付している。
突起部190は、剥離板175,175Aの定着ベルト173側とは反対側に設けられている。
かかる構成を備えた第3実施形態に係る定着装置17,17Aにおいても、剥離板175Aにより定着ベルト173から剥離された記録シートPを、突起部190により、搬送経路側へ円滑に案内することができる。
なお、本実施の形態(第1実施形態から第3実施形態)では、定着装置17として、定着ローラ171を含む複数のローラに巻き掛けられて加圧ローラ174との間に挟持された状態で加圧ローラ174との間で記録シートPを挟持しつつ記録シートPを搬送することで未定着のトナーTを定着する定着ベルト(回転定着部材の一例)を用いたベルト方式の定着装置を用いたが、加圧ローラ174との間で記録シートPを挟持しつつ記録シートPを搬送することで未定着のトナーTを定着する定着ローラ171を用いたローラ方式の定着装置を用いてもよい。この場合、定着ローラ171が回転定着部材とされる。
また、本実施の形態(第1実施形態から第3実施形態)では、剥離部として剥離板175を用いたが、剥離爪(具体的にはベース部182上に長手方向Xに間隔をおいて配設した複数の剥離爪)を用いてもよい。
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。