以下、本発明の実施形態を図1〜図7を用いて説明する。以下の説明では、誘導加熱方式の定着部1を含む複合機100(画像形成装置に相当)について説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概要)
まず、図1を用いて、実施形態に係る複合機100の概要を説明する。図1は、実施形態に係る複合機100の構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の複合機100は、側方に取り付けられた操作パネル2(操作部に相当)を有する。そして、複合機100は上部に原稿搬送部3aと画像読取部3bからなる読取部3を有する。又、複合機100は、内部に、印刷部10として、給紙部4a、第1搬送部4b、画像形成部5、定着部1、第2搬送部4cを含む。
まず、図1に示すように、操作パネル2は、複合機100の上部右側に設けられたアーム21の先に設けられる。そして、操作パネル2は、複合機100の状態や各種メッセージや設定用画面を表示する表示部22を備える。表示部22は、タッチパネル式である。表示部22に表示される画像の表示位置をタッチすることでも使用者の入力が受け付けられる。操作パネル2は、各種設定を受け付ける操作部としての役割を果たす。
原稿を搬送して読み取るとき、原稿搬送部3aは、原稿トレイに載置された原稿を1枚ずつ読取位置(送り読取用コンタクトガラス31)に向けて搬送する。又、載置読取用コンタクトガラス32に載置された原稿の読み取りのとき、原稿搬送部3aは、原稿を押さえるカバーとして機能する。画像読取部3bは、送り読取用コンタクトガラス31を通過する原稿や載置読取用コンタクトガラス32に載置された原稿を読み取り、原稿の画像データを生成する。
図1に示すように、給紙部4aは、複合機100の内部下方に配される。給紙部4aは、複数枚の用紙を収容し、印刷のとき、用紙を送り出す。
そして、第1搬送部4bは、給紙部4aから供給された用紙を画像形成部5まで導く。第1搬送部4bには、搬送ローラー対41、42や、レジストローラー対43が設けられる。レジストローラー対43は、搬送されてくる用紙を転写ローラー55の手前で待機させ、トナー像の用紙への転写のタイミングにあわせて用紙を送り出す。
画像形成部5は、感光体ドラム51、帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラー55、クリーニング装置56を含む。
感光体ドラム51は、回転可能に支持され、印刷のとき、所定の速度で回転する。帯電装置52は、感光体ドラム51の表面を一定の電位で帯電させる。露光装置53は、印刷する画像データに基づいた光信号(レーザー光、1点鎖線で図示)を帯電した感光体ドラム51に照射し、感光体ドラム51の周面に静電潜像を形成する。現像装置54は、トナーを飛翔させ、トナーで感光体ドラム51の周面上の静電潜像を現像する。転写ローラー55は、感光体ドラム51に圧接する。そして、レジストローラー対43から送り出された用紙にトナー像を転写するため、転写ローラー55には、所定の転写用の電圧が印加される。これにより、トナー像は用紙に転写される。クリーニング装置56は、転写後の感光体ドラム51の清掃を行う。
定着部1は、感光体ドラム51と転写ローラー55のニップよりも用紙搬送方向下流側に配される。そして、トナー像が転写された用紙を加熱・加圧して、用紙にトナー像を定着させる。尚、定着部1の詳細は後述する。
定着部1を通過した用紙は、分岐部44から複合機100の左側面に向かって延びる第2搬送部4cを通して搬送される。そして、用紙は、排出ローラー対45によって複合機100の左側面上部外側に設けられた排出トレイ46に排出される。これにより、1ページの印刷が完了する。尚、両面印刷のとき、定着部1から排出された片面印刷済みの用紙は、分岐部44から排出トレイ46方向に一旦送り出された後、複合機100の右側面方向に向かって用紙搬送方向がスイッチバックされる。そして、用紙は分岐部44を通過し、両面印刷用搬送部4dを通して下方に送られ、第1搬送部4bを経てレジストローラー対43に再度送られる。
(複合機100のハードウェア構成)
次に、図2に基づき、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を説明する。図2は、複合機100のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る複合機100は、内部に制御部6を含む。制御部6は、装置の各部を制御する。制御部6は、CPU61や、印刷や送信に用いる画像データを生成する画像処理部62や、その他の電子回路や素子を含む。
CPU61は、中央演算処理装置であり、記憶部63に格納される制御プログラムや制御用データDに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。記憶部63は、バックアップメモリー63a(詳細は後述。図6参照)のようなROM、RAM63b(展開先メモリーに相当。詳細は後述。図6参照)、フラッシュROM、HDD等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される。
そして、制御部6は、用紙搬送やトナー像の形成や、転写、定着により印刷を行う印刷部10(給紙部4a、第1搬送部4b、画像形成部5、定着部1、第2搬送部4c、両面印刷用搬送部4d)を制御する。尚、制御部6の一部として、印刷部10の制御を行うエンジン制御部6を別途設けてもよい。制御部6は、記憶部63に記憶されたデータやプログラムに基づき印刷部10を制御する。
又、制御部6には、通信部64が接続される。通信部64は、パーソナルコンピューターのようなコンピューター200やFAX装置300と、ネットワークやケーブルを介して通信を行うためのインターフェイスである。通信部64は、コンピューター200から画像データや印刷設定を含む印刷用データを受信する。そして、制御部6は、印刷部10に印刷用データに基づき印刷を行わせる(プリンター機能)。又、通信部64は、読取部3を用いた原稿の読み取りに基づく画像データをコンピューター200やFAX装置300に送信することができる(送信機能)。
又、制御部6は、画像読取部3bや原稿搬送部3aの動作を制御する。又、制御部6は、操作パネル2の表示等の動作を制御する。又、制御部6は、操作パネル2でなされた設定内容を認識しジョブの内容、設定あるいは実行指示を認識する。
(定着部1の概要)
次に、図3を用いて、実施形態に係る定着部1を説明する。図3は実施形態に係る定着部1を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の定着部1は、加熱ローラー11と、定着ローラー13と、加熱ローラー11と定着ローラー13に張架される無端状の定着ベルト12(加熱回転体に相当)と、コイル14a、コア14b及び外部コア14cを含む誘導加熱部14と、加圧ローラー15を含む。尚、加熱ローラー11、定着ローラー13、定着ベルト12及び加圧ローラー15は、軸線方向が平行となるように、回転可能に支持される。尚、加熱ローラー11、定着ローラー13、定着ベルト12及び加圧ローラー15は、図3の紙面に対し垂直な方向(用紙搬送方向と垂直な方向、用紙幅方向)を軸線方向とする。
加熱ローラー11は、鉄製であり、誘導加熱部14によって誘導加熱される。そして、定着ローラー13が、加熱ローラー11に対し間隔を設けて対向する位置に、加熱ローラー11と軸線方向が平行となるように設けられる。定着ローラー13は、周面がスポンジ状の材料で形成され、弾性を有する。
又、定着ベルト12が加熱ローラー11と定着ローラー13にかけ回される。定着ベルト12は、加熱ローラー11の熱を定着ローラー13側に伝える。定着ベルト12は、樹脂製である。定着ベルト12は、薄く延ばされたニッケルのような金属製でもよい。
そして、定着ローラー13に対向し、加圧ローラー15が設けられる。加圧ローラー15は、その表面がスポンジ状の材料で形成される。加圧ローラー15と定着ローラー13は、定着ベルト12を挟む。また、加圧ローラー15は、定着ローラー13方向にばねのような付勢部材15aで付勢される。その結果、加圧ローラー15は、定着ベルト12に圧接し、定着ニップ部Nが形成される。
定着部1には、加熱ローラー11、定着ローラー13、定着ベルト12、加圧ローラー15を回転させるための駆動機構が設けられる。駆動機構は、定着モーター16(図4参照)や各回転体を回転させるためのギアなどを含む。具体的に、定着ローラー13に、定着モーター16(図4参照)の駆動力が伝達される。これより、定着ローラー13が回転する。定着ローラー13が回転すると、定着ベルト12が回転し、あわせて加熱ローラー11が回転する。又、加圧ローラー15も定着ローラー13の回転にあわせて回転する。尚、加圧ローラー15や加熱ローラー11に定着モーター16の駆動力を伝達し、回転させてもよい。そして、定着ローラー13、定着ベルト12及び加圧ローラー15を回転させつつ、トナー像が転写された用紙を定着ニップ部Nに進入させる。定着ニップ部Nを通過してゆく用紙は、加熱加圧され、その結果、用紙にトナー像が定着する(図3に用紙搬送方向を破線で図示)。
次に、誘導加熱部14を説明する。図3に示すように、加熱ローラー11の定着ローラー13側と反対側の周面に対向し、誘導加熱部14としてのコイル14aとコア14bと外部コア14cが設けられる。そして、コイル14aは、加熱部や定着ベルト12に対向し、これらの軸線方向に沿ってかけ回される。又、コア14bや外部コア14cは、加熱ローラー11に対向する。そして、コア14bや外部コア14cは、フェライト製である。コア14bや外部コア14cは、磁束の拡散を防ぎ、加熱ローラー11に磁束が集中するように磁路を形成する。
(定着部1でのハードウェア構成と温度維持制御)
次に、図4に基づき、実施形態に係る定着部1に関するハードウェア構成と、定着部1での温度制御を説明する。図4は、定着部1に関するハードウェア構成を示す図である。
定着部1の動作の制御を制御部6が行う。定着部1には、加熱ローラー11や加圧ローラー15を回転駆動させる定着モーター16が設けられる。加熱ローラー11を誘導加熱するとき、制御部6は、定着モーター16を回転させる。
また、図4に示すように、本実施形態の定着部1には、定着部1の加熱に関する制御を行うIH制御部7が設けられる。IH制御部7は、制御部6からの定着部1の目標電力(目標出力)の指示を受けて誘導加熱部14(コイル14a)に対する電力制御を行う。IH制御部7は、インバーター9などの動作を制御するCPU71や、誘導加熱部14の出力制御に関するデータやプログラムを記憶する定着メモリー72等を含む。定着メモリー72は、ROMやRAMで構成される。具体的には、IH制御部7内のCPU71が誘導加熱による定着部1内の部材の温度制御を行う。
複合機100内に含まれる部分や、定着部1に電力を供給する部分として電源部8が複合機100内に設けられる。電源部8は、商用電源に接続され、商用電源から供給された交流電力がコンバーター90に入力される。コンバーター90は、交流を整流、平滑して直流電圧を生成する。
そして、図4に示すように、コンバーター90に基づき、誘導加熱部14のコイル14aへの交流電力の供給のON/OFFを行うインバーター9が設けられる。インバーター9は、単相フルブリッジ回路のようなコイル14aの両端の端子に交互にコンバーター90の出力を印加するためのブリッジ回路92を含む。そして、インバーター9は、コイル14aの端子への電圧の印加のON/OFFを行うためにIGBTのようなスイッチング素子91を複数含む。インバーター9は、インバーター9がON状態になれば、コイル14aの一方の端子に電圧が印加される。一方、インバーター9がOFF状態になれば、コイル14aへの電力供給が停止される。また、IH制御部7は、インバーター9に対し、スイッチングでのデューティ比(1周期中のコイル14aに電圧を印加する時間と1周期の時間の比)を指示する。インバーター9は、IH制御部7のデューティ比指示に応じたデューティ比でコイル14aに交流電力を供給する。
尚、コイル14aには、コンデンサー14dが接続されて共振回路を構成する。インバーター9のスイッチング周波数は、共振周波数を勘案して定められる。
コイル14aに交流電流が流されると、磁束が加熱ローラー11を貫き、加熱ローラー11の内部に渦電流が発生する。発生した渦電流によるジュール熱で、加熱ローラー11が熱せられる(誘導加熱)。誘導加熱時、定着ローラー13、定着ベルト12、定着ローラー13及び加圧ローラー15を回転させることで、加熱ローラー11の熱が、定着ベルト12によって定着ローラー13や加圧ローラー15に伝わる。このようにして、定着部1が暖められる。本実施形態の定着部1では、印刷を行うときや、省電力モードでないときの通常モードの待機時定着ベルト12や定着ローラー13は、定着に適した定着制御温度としての170°C程度まで暖められる。
ここで、本実施形態の定着部1には、定着ベルト12の温度を検知し、定着ベルト12や定着ローラー13の温度を定着制御温度に保つために温度センサー17が設けられる(図3、図4参照)。温度センサー17は、サーミスターを含み、定着ベルト12の温度によって、出力電圧が変化する。温度センサー17の出力(電圧)は、制御部6に入力される。そして、制御部6は、記憶部63に記憶された温度センサー17の出力電圧に対応する温度のデータを参照し、定着ベルト12の温度を認識する。
そして、制御部6は、ウォームアップ処理完了後、複合機100が省電力モードに移行する前の通常モードでは、定着ベルト12や定着ローラー13の温度を定着制御温度に維持する温度維持制御を行う。温度維持制御では、制御部6は、認識した温度に応じて、IH制御部7にコイル14aにONすべき目標電力を示すデータを一定の周期で送信する。制御部6は、検知温度が定着制御温度よりも低いほど、大きな目標電力をIH制御部7に与える。又、検知温度が定着制御温度を超えていれば、制御部6は、目標電力0の指示をIH制御部7に与えて、コイル14aへの電力供給をOFFさせる。
IH制御部7は、制御部6からの目標電力の指示に基づき、インバーター9のデューティ比を変化させて、コイル14aに流れる電流を調整し、指示された目標電力に合うようにコイル14aに電力を供給する(誘導加熱部14の出力調整)。尚、電流量検知センサー(不図示)を設け、IH制御部7は、電流量検知センサーの出力に基づき、コイル14aに流れる電流の大きさを検知し、コイル14aの消費電力が目標電力と一致するように、フィードバック制御を行うようにしてもよい。
(ウォームアップ処理)
次に、図2、図5、図6を用いて、主電源ONのときのウォームアップ処理について説明する。図5は、ウォームアップ処理の流れを示す図である。図6は、バックアップメモリー63aからの制御用データDの読み出しを説明するための図である。
図2に示すように、本実施形態の複合機100には、商用電源と接続され、複合機100に含まれる各部分に供給するための複数種の電圧を生成する電源部8が設けられる。また、本実施形態の複合機100には、複合機100の主電源のON/OFFを行うための電源スイッチPSが設けられる。電源スイッチPSにより複合機100の主電源をOFFすると、電源部8からの複合機100の各部分への電力供給が停止され、複合機100は、主電源OFF状態となる。一方、電源スイッチPSにより複合機100の主電源がONされると、電源部8が動作し、制御部6、記憶部63、読取部3、操作パネル2、印刷部10、通信部64のような複合機100を構成する部分の全てに対する電力供給が開始される。図5では、t0の時点が電源スイッチPSにより主電源がONされた時点である。
電源スイッチPSのONにより、制御部6、記憶部63及びIH制御部7にも電力供給が開始され、制御部6、記憶部63及びIH制御部7のような電子回路が起動する。そして、制御部6は、複合機100を全機能が利用できる状態にまで立ち上げるためのウォームアップ処理の制御を開始する。
図5に示すように、ウォームアップ処理では、記憶部63に含まれるバックアップメモリー63aからの制御用データDの読み出し処理(詳細は後述)の後に、主電源ONのときに行われる予め定められた起動時処理(詳細は後述)がなされる。また、ウォームアップ処理では、読み出し処理や起動時処理に並行して、温度センサー17の出力に基づく温度認識を行いつつ、誘導加熱部14に電力を供給して、定着ベルト12の温度を定着制御温度にまで温める定着ウォームアップ処理(詳細は後述)がなされる。
[読み出し処理]
制御部6は、バックアップメモリー63aから制御用データDの読み出しを行う(図5参照)。バックアップメモリー63aは、記憶部63に含まれるROMである。具体的に、本実施形態の複合機100では、バックアップメモリー63aにEEPROMが用いられる。制御用データDは、制御部6が各種制御を行うために、バックアップメモリー63aに不揮発的に記憶されるデータやプログラムである。
そして、図6に示すように、バックアップメモリー63a内の制御用データDには、複合機100の設置地域を示すデータである設置地域データD2や、定着ウォームアップ処理で、誘導加熱部14の出力制御のパラメータとしての値であり、コイル14aへの電力供給制御に関する出力制御値D1が含まれる。
ここで、設置地域(国や地域)により、商用電源の電圧値が異なり、又、コンセントの規格での電流や電力の上限値(定格電流や定格電力)が異なる。そこで、操作パネル2は、複合機100の設置地域の設定を受け付ける。複合機100の設置地域の設定は、複合機100の設置場所への搬入設置時などに、サービスマンや使用者などによって行われる。
具体的に、操作パネル2は、国の単位で設置地域を設定するための画面を表示し、国を選択する入力を受け付ける。例えば、複合機100がヨーロッパ向けのものであるとき、操作パネル2は、画面に表示された設置候補地のうち、ドイツやイギリスのように複合機100の設置地域の選択入力を受け付ける、尚、1つの国で、商用電源の電圧値や、コンセントの規格での電流や電力の上限値が異なる場合があるので、1つの国のうち、更に地方を選択できるようになっていてもよい。
そして、操作パネル2にて設定された設置地域を示す設置地域データD2は、制御用データDとしてバックアップメモリー63aに不揮発的に記憶される。
また、制御用データDには、出力制御値D1が含まれる。出力制御値D1は、定着ウォームアップ処理のときの誘導加熱部14(コイル14a)への電力供給制御に関する値である。本実施形態の複合機100では、出力制御値D1は、インバーター9のコイル14aへの電圧印加のON/OFFの周期におけるデューティ比(ONデューティ)である。定着ウォームアップ処理では、インバーター9は出力制御値D1としてのデューティ比に基づき、スイッチング素子91のスイッチングを行う。
具体的に、複合機100のバックアップメモリー63aは、設置地域ごと(電力事情ごと)に予め定められる複数の出力制御値D1を記憶するようにしてもよい。出力制御値D1は、設置地域で可能な範囲で誘導加熱部14の出力が最大になるように設定される。言い換えると、出力制御値D1は、複合機100に流れる電流が設置地域での規格上の電流や電力の上限値と同じ、あるいは、上限値に近づくように定められたデューティ比である。設置地域に応じた出力制御値D1を用いて定着ウォームアップ処理を行うことで、使用できる電流や電力を使い切るように(許容範囲で誘導加熱部14の出力が最大となるように)、誘導加熱部14に電力が供給される。
そして、制御部6は、制御用データDの出力制御値D1のうち、設置地域データD2に基づく複合機100の設置地域に対応する出力制御値D1を選択する。そして、定着ウォームアップ処理のとき、制御部6は、選択された出力制御値D1に基づくデューティ比で、IH制御部7やインバーター9にスイッチング素子91のスイッチングを行わせ、誘導加熱部14に電力を供給させる。これにより、設置地域の電力事情に対応しつつ、定着ベルト12をできるだけ速く定着制御温度に到達させることができる。
読み出し処理では、記憶部63のバックアップメモリー63aの内容は、一旦、記憶部63に含まれるRAM63bに展開される。そして、制御部6は、定着ウォームアップ処理で用いる出力制御値D1を誘導加熱部14の定着メモリー72に送信する。
バックアップメモリー63a内の全ての制御用データDが読み出されると、読み出し処理が完了となる。
[起動時処理]
読み出し処理が完了すると、制御部6は、予め定められた起動時処理を行う。制御部6は、起動時処理として、複合機100にどのようなオプション装置101が接続されているかを確認する処理を行う。複合機100には、取り付け可能なオプション装置101が多数用意される。尚、起動時処理の開始時点を図5では、時点t3で示している。
具体的に、オプション装置101としては、複合機100の側面や下部に増設される給紙部4aがある。通常、画像形成装置には少なくとも1つの給紙部4a(給紙段)が標準搭載される。標準搭載の給紙部4a以外に、オプション装置101しての給紙部4aを増設できるようになっている。図1に示す複合機100では、2つの給紙部4aが設けられるが、下方の1つがオプション装置101である。尚、オプション装置101としての給紙部4aは、更に複数段増設可能である。
また、読取部3の一部である原稿搬送部3aはオプション装置101である。標準では、板状のカバーであり原稿を抑える原稿抑え板が複合機100に取り付けられる。オプション装置101としての原稿搬送部3aを取り付けることにより、連続的、自動的に複数枚の原稿の読み取りが可能となる。
更に、図示しないが、複合機100に取り付けられるオプション装置101としては、印刷済みの用紙に対し、ステープルや穿孔などの処理を行う後処理装置がある。また、ICカードリーダーのような個人認証用のオプション装置101もある。
これらのオプション装置101は、バスや専用の通信線などで制御部6と接続される。そして、制御部6は、バスや専用の通信線などに信号を送信する。オプション装置101は、この呼びかけに対し、制御部6に向けて、オプション装置101のタイプを示す信号を返答する。制御部6は、オプション装置101からの応答の有無や応答内容に応じ、どのようなオプション装置101が接続されているかを確認する。
また、制御部6は、オプション装置101の接続が確認されると、オプション装置101に対するアドレスの割り当てや、通信の同期のような通信の確立に関する処理を行う。
また、制御部6は、起動時処理のとき、読み出された制御用データDに定義されるエラーチェック用のデータやプログラムに基づいて、複合機100の何れかの部分でエラーが生じていないかを確認する確認処理を行ってもよい
(定着ウォームアップ処理)
次に、図5を参照しつつ、図7を用いて、定着ウォームアップ処理の流れを説明する。図7は、定着ウォームアップ処理の流れを示すフローチャートである。
図7のスタートは、電源スイッチPSにより複合機100の主電源がONされた時点である。
まず、本実施形態の複合機100では、制御部6は、バックアップメモリー63aからの制御用データDの読み出し処理が完了する前に、IH制御部7に誘導加熱部14への電力供給を行わせる。言い換えると、制御部6は、ウォームアップ処理のとき、初期設定値D0に基づき、IH制御部7に見切り点灯を開始させる(ステップ♯1、図5のt0’の時点)。
具体的に、制御部6は、起動すると、IH制御部7に対し、見切り点灯を行うべき旨の指示を与える。このとき、IH制御部7は、予め定められた初期設定値D0に基づき、誘導加熱部14への電力供給を制御する。尚、初期設定値D0も、出力制御値D1と同様に、インバーター9の出力のON/OFF周期でのデューティ比である。
ここで、見切り点灯開始時では、制御用データDの読み出し中であるため、設置地域や設置地域に対応する出力制御値D1は不明である。一方で、どのような場所、国、地域に設置されたとしても、画像形成装置の電流や電力は、設置地域での規格における電流や電力の上限値を超えることは避けなくてはならない。
そのため、見切り点灯時の初期設定値D0は、複合機100がどのような場所に設置されても(設置地域の電力事情を問わず)、複合機100の電流や電力が上限値を超えないようなデューティ比とされる。
そして、制御部6は、複合機100の設置位置に対応する出力制御値D1がRAM63bに読み出されたか(展開されたか)否かを確認する(ステップ♯2)。尚、設置位置に対応する出力制御値D1が読み出されたか否かは、RAM63bの記憶領域のうち、設置地域に対応する出力制御値D1が読み出される領域(アドレス)でのデータの値が全て「0(又は1)であるか否か」(初期化状態のままか否か)によって確認することができる。
まだ、設置地域に対応する出力制御値D1が読み出されていなければ(ステップ♯2のNo)、制御部6は、初期設定値D0に基づく見切り点灯を継続させる(ステップ♯3)。そして、フローはステップ♯2に戻る。一方、記憶部63のRAM63bに設置地域に対応する出力制御値D1が読み出されると(ステップ♯2のYes)、制御部6は、定着部1の定着メモリー72に設置地域に対応する出力制御値D1を送信(転送)する(ステップ♯4)。
ここで、図5の中央の白抜矢印を用いて示すように、記憶部63のRAM63bに設置地域に対応する出力制御値D1が読み出されても、従来の画像形成装置では、起動時処理がなされてから、定着部1の定着メモリー72に設置地域に対応する出力制御値D1が送信されていた。起動時処理ではオプション装置101の接続確認がなされるところ、通信を試みた種類のオプション装置101が接続されていなくても応答をタイムアウトまで待たなくてはならないなどの理由により、起動時処理には、1〜数秒程度の時間を要することがある。
そのため、見切り点灯は主電源ON直後から開始されるものの、出力制御値D1に基づくコイル14aへの電力供給は、起動時処理完了後から開始されていた(図5のt1の時点)。従って、従来、定着ウォームアップ処理でのヒーターの出力は、初期設定値D0に基づいた出力で抑えられた状態が続くものとなっていた。
そこで、図5の右端の白抜矢印を用いて示すように、制御部6は、記憶部63のRAM63bに設置地域に対応する出力制御値D1が読み出されると、起動時処理完了前から、直ちに、定着部1の定着メモリー72に設置地域に対応する出力制御値D1を送る。この制御部6からの出力制御値D1であるデューティ比を示すデータを受信し、定着メモリー72に格納すると、IH制御部7は、起動時処理完了前から、出力制御値D1に基づくデューティ比でインバーター9にスイッチングを行わせる(ステップ♯5、図5のt2の時点)。言い換えると、制御部6は、起動時処理完了前から、設置地域に対応した出力制御値D1にもとづき、誘導加熱部14への電力供給制御をIH制御部7に行わせる(ステップ♯5)。これにより、定着ベルト12をより短時間で定着制御温度にまで温めることができる。
そして、制御部6は、温度センサー17の出力に基づき、定着ベルト12の温度が定着制御温度に到達したか否かを確認する(ステップ♯6)。定着制御温度に到達していなければ(ステップ♯6のNo)、フローはステップ♯5に戻る。
一方、制御部6は、定着ベルト12の温度が定着制御温度に到達したことを認識すると、IH制御部7に設置地域に対応する出力制御値D1に基づく誘導加熱部14への電力供給制御を停止させる(ステップ♯7)。その結果、誘導加熱部14への電力供給が一旦停止される。
そして、ウォームアップ処理の完了に伴い、本フローは終了する(エンド)。本フローが終了すると、複合機100の省電力モードへの移行と主電源のOFFの何れか一方の条件が満たされるまで、制御部6は、IH制御部7に指示を与え、定着ベルト12の温度維持制御を行う。
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置(複合機100)は、トナー像が転写された用紙の加熱を行うための加熱回転体と、コイル14aによる誘導加熱によって加熱回転体を熱する誘導加熱部14を含む定着部1と、主電源のON/OFFを行うための電源スイッチPSと、画像形成装置(複合機100)の制御に関する制御用データDを不揮発的に記憶するバックアップメモリー63aと、バックアップメモリー63aから読み出された制御用データDが展開される展開先メモリー(RAM63b)と、画像形成装置の設置地域の設定を受け付ける操作部(操作パネル2)と、画像形成装置に含まれる各部分の動作を制御し、電源スイッチPSのONによって画像形成装置の主電源がONされるとなされる処理であって、バックアップメモリー63aから制御用データDを展開先メモリーに読み出させる読み出し処理と、読み出し処理の後になされる予め定められた起動時処理と、加熱回転体の温度を定着に適した定着制御温度にまで熱する定着ウォームアップ処理と、を含むウォームアップ処理を制御する制御部6と、を含み、制御用データDは、定着ウォームアップ処理のときに用いる値であって、画像形成装置に流れる電流が画像形成装置の設置地域の規格の電流の上限値に近づくように調整され、誘導加熱部14の出力制御に用いられる出力制御値D1を含み、制御部6は、定着ウォームアップ処理では、読み出し処理が完了する前から予め定められた初期設定値D0に基づき誘導加熱部14に電力を供給させ、読み出し処理で設置地域に応じた出力制御値D1が読み出された時点で、初期設定値D0から設置地域に応じた出力制御値D1に基づいて誘導加熱部14に電力を供給させ、初期設定値D0は、どのような場所に設置されても画像形成装置に流れる電流が規格上の上限値を下回るように定められていることとした。
これにより、出力制御値D1がバックアップメモリー63aから読み出されると、速やかに出力制御値D1に基づく誘導加熱部14への電力供給制御を開始することができる。ここで、出力制御値D1は、画像形成装置(複合機100)の設置地域の電力事情を勘案しつつ、可能な範囲で誘導加熱部14の出力を最大化するように設定される。従って、出力制御値D1による誘導加熱部14への電力供給制御を、従来よりも速い時点で開始するので、主電源ONからウォームアップ処理完了までの時間を従来よりも短くすることができる。また、主電源ONから画像形成装置が印刷可能となるまでの時間が短くなるので、使用者にとって使いやすい画像形成装置を提供することができる。
又、初期設定値D0は、画像形成装置(複合機100)が設置され得る地域のうち、規格に定められた電流の上限値が最も小さい設置地域の出力制御値D1であり、出力制御値D1は、画像形成装置の電流が設置地域での規格上の上限値となるような値であることとした。
これにより、画像形成装置(複合機100)がどのような国、地域で使用されても、見切り点灯のときに、画像形成装置(複合機100)の電力や電流は、設置地域での規格上の上限値を超えない。また、出力制御値D1に基づく誘導加熱部14への電力供給が開始されれば、誘導加熱部14には可能な限り大きな電力が投入され、ウォームアップ処理の完了までの時間が最短化される。
又、制御部6は、起動時処理のとき、画像形成装置(複合機100)に接続されているオプション装置101の接続確認処理を行うこととした。
これにより、従来と異なり、オプション装置101の接続確認処理がなされているときには、出力制御値D1に基づく誘導加熱部14への電力供給制御が既に開始されるので、速やかにウォームアップ処理を完了させることができる。
又、定着部1は、誘導加熱部14のコイル14aに交流電圧を印加するためのスイッチング素子91を複数含むインバーター9を含み、出力制御値D1は、スイッチング素子91のスイッチングにおけるデューティ比であることとした。
これにより、インバーター9によるコイル14aへの電圧印加のデューティ比を制御することにより、誘導加熱部14の出力を制御することができる。
次に、上述の実施形態の変形例を説明する。
上記の実施形態では、出力制御値D1として、デューティ比を例に挙げて説明した。しかし、出力制御値D1は、デューティ比ではなくインバーター9のスイッチング素子91のスイッチング周波数であってもよい。この場合、インバーター9のスイッチング素子91のスイッチングでのデューティ比を一定とし、共振周波数との周波数差を大きくしたり、小さくすることで、コイル14aに流れる電流の大きさを調整する。そして、その設置地域での出力制御値D1は、画像形成装置に流れる電流が、設置地域での規格での電流の上限値とほぼ同じとなるようなスイッチング周波数とされる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。