JP2014234757A - Mbt点火時期演算装置及びこれを用いたエンジンの制御装置 - Google Patents

Mbt点火時期演算装置及びこれを用いたエンジンの制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】MBT点火時期を精度よく推定することができるようにし、これをエンジンのトルクベース制御等に利用することによりエンジントルクを精度よく制御できるようにする。【解決手段】エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Ecに基づいて、MBT点火時期の基準値SA−MBTを算出するMBT基準値算出手段121,221と、算出された基準値SA−MBTに対して、エンジンの運転状態を示す運転状態パラメータであるエンジンの機関温度TEM及びエンジン回転速度Neに応じた補正を行なうMBT補正手段125,225とを備える。トルクベース制御では、この補正されたMBT点火時期SAMBT2を用いて点火時期を制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、車両に搭載されたエンジンのMBT点火時期を演算する演算装置、及びこの演算装置を用いてエンジンを制御する制御装置に関するものである。
車両に搭載されたエンジンの制御手法の一つとして、エンジンに要求されるトルクの大きさを基準として吸気量や燃料噴射量,点火時期等を制御するトルクベース(トルクディマンド)制御がある。トルクベース制御では、例えばアクセル開度といったエンジン負荷やエンジン回転速度等に基づいてエンジントルクの目標値(目標エンジントルク)が演算され、この目標エンジントルクが得られるようにエンジンが制御される。また、自動変速機やオートクルーズ装置,車両安定装置といった外部制御システムを搭載した車両では、各外部制御システムからエンジンへの出力要求がトルクに換算されてエンジンECU(エンジン電子制御装置)内で一元化され、エンジンのトルク挙動が包括的に制御される。
このトルクベース制御では、吸気量や燃料噴射量や点火時期等を制御することによりエンジントルクを制御する。このうち、点火時期制御は、吸気量制御に比べて応答性が良いため、要求トルクの変化に速やかに対応するために用いられる。例えば、車両の変速機のレンジがニュートラルレンジから走行レンジに切換わると、変速機の回転負荷が増大するため、エンジン回転速度を維持するために変速機の回転負荷に相当するトルク上昇が必要になる。しかし、回転負荷の増加速度の方がスロットル制御(吸気量制御)によるトルク上昇速度よりも速い。この点、点火時期を進角制御すれば速やかにトルク上昇を実現できる。そこで、予め吸入空気量を増量、且つ点火時期をMBT(Minimum Advance for Best Torque)点火時期よりも遅角制御させて、MBT点火時期におけるトルクとの差分だけトルク余裕量(トルクリザーブ量)を確保しておき、瞬時のトルク上昇を可能にしている。
このようなトルクベース制御において、点火時期の基準となるMBT点火時期は、エンジンのある運転状態において最もトルクが出る点火時期である。つまり、エンジン負荷やエンジン回転速度といったエンジンの運転状態が一定であれば、点火時期を進角させていくとエンジントルクが増大しやがてピークに達して、その後は進角させていくとエンジントルクが減少していく特性がある。このエンジントルクがピークに達した点火時期がMBT点火時期である。ただし、この一方で、点火時期を進角していくとノッキングが発生するようになるので、MBTがこのノッキングの発生領域になる場合もあり、この場合には、ノッキングの発生限界付近の点火時期がノッキングの生じない範囲で最もトルクが出る点火時期となる。このようなノッキングの発生限界付近の点火時期をも含めて、MBTと定義する場合もある。
このように、同一吸入空気量では最もエンジントルクが高くなる点火時期がMBTであるが、言い換えると、エンジンから同一トルクを得るために必要な吸入空気量が最も少ない点火時期がMBTであり、すなわち燃費が最も良い点火時期であるとも言える。このため、従来から、エンジンの燃費を向上させるためにMBTを利用する技術が開発されている。つまり、予め、エンジンの運転状態毎にMBTを求めて、この対応関係を記憶させておき、逐次エンジンの運転状態を取得しながら、上記対応関係を用いてその運転状態におけるMBTを求めて、点火時期をMBT点火時期に制御するのである。
MBTは、エンジンの運転状態、主としてエンジン負荷やエンジン回転速度に依存するが、機関温度にも依存する。このため、エンジン負荷及びエンジン回転速度に応じて基本MBTを設定しこの基本MBTを機関温度によって補正する技術が開示されている(特許文献1,2)。また、温度によって燃焼遅れ期間の長さが変化することに着目して、所定温度で所定点火時期における燃焼遅れ期間を計測し、この燃焼遅れ期間データと、適当な温度で計測した最適点火時期における主燃焼期間の開始位置とに基づいて所定温度におけるMBTを設定する技術も開示されている(特許文献3)。
特許3846191号公報 特許3721996号公報 特許4224697号公報
ところで、トルクベース制御において、予め吸入空気量を増量すると共に点火時期をMBTよりも遅角制御させることによって、トルク余裕量(トルクリザーブ量)を確保する場合、機関温度等に起因したMBTの僅かなズレが、トルク余裕量の誤差になり、トルクベース制御の精度を大きく低下することが判明した。
図17に示す太線は、点火時期と図示平均有効圧Piとの関係を、水温(エンジン冷却水の水温)毎に示す図(エンジン出力特性曲線)であり、図示平均有効圧Piはエンジンのエンジン出力トルク(単に、エンジン出力とも言う)に対応し、水温は機関温度に対応する。なお、他の条件はここでは、エンジンが十分に暖機した水温90℃の場合、及びエンジンの暖機過程の水温70℃,50℃の場合を、それぞれ、太実線,太破線,太一点鎖線で示す。また、細破線,細一点鎖線は、各点火時期における水温90℃の場合に対する水温70℃,50℃の場合のエンジン出力の誤差率を示す。
水温90℃の場合を基準にすると、水温が70℃,50℃と低くなるほど、MBTは進角側にシフトし、同様に、エンジン出力特性曲線も進角側にシフトする。つまり、水温90℃の場合に比べて同一エンジントルクに対応する点火時期は進角する。このため、目標エンジントルクに対応した点火時期を設定する際に、水温90℃の場合のエンジン出力特性曲線によって設定した点火時期を水温が低い場合にもそのまま用いると、実際に得られる実エンジントルクは目標エンジントルクよりも低くなる。この出力低下は、細破線,細一点鎖線の誤差率曲線に示すようにMBTから離れるほど顕著になる。
このように、点火時期を、単にMBTに制御する場合よりも、トルクベース制御においてトルク余裕量を確保するために点火時期をMBTよりも遅角制御する場合の方が、機関温度によるエンジン出力特性曲線の変化の影響を強く受ける。特にアイドル運転時等に、トルク余裕量を大きく確保するためにMBT点火時期よりも大きく遅角させるほど、影響が大きく、例えば暖機運転中のアイドルクオリティの悪化が顕著に現れる。
このエンジン出力特性曲線のように、MBTが制御演算に含まれる場合には、エンジンの運転状態に対応したMBT点火時期を精度よく演算(推定)できるようにすることが、トルクベース制御をはじめとした各種のエンジン制御等において重要になる。上記特許文献1〜3に記載のように、基本MBTを機関温度によって補正することにより、MBT点火時期を精度よく演算できるが、更なる演算精度の向上が望まれる。
本発明は、このような課題に鑑みて創案されたもので、MBT点火時期を精度よく推定することができるようにしたMBT点火時期演算装置を提供することを第1の目的とする。また、このMBT点火時期演算装置により演算されたMBT点火時期をエンジンのトルクベース制御に利用することによりエンジントルクを精度よく制御することができるようにした、エンジンの制御装置を提供することを第2の目的とする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)本発明のMBT点火時期演算装置は、エンジンの最も出力の出る点火時期であるMBT(Minimum Advance for Best Torque)点火時期を、前記エンジンの運転状態に基づいて算出する装置であって、前記エンジンのエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づいて、前記MBT点火時期の基準値を算出するMBT基準値算出手段と、前記MBT基準値算出手段により算出された前記基準値に対して、前記エンジンの運転状態を示す運転状態パラメータの値に応じた補正を行なうMBT補正手段と、を備え、前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンの回転速度及び前記エンジンの温度である機関温度を取得し、前記エンジン回転速度及び前記機関温度に応じて前記基準値を補正する温度対応補正部を有することを特徴としている。
なお、MBT点火時期の基準値は、完全に暖機した機関温度におけるMBT点火時期とすることが好ましい。
(2)前記温度対応補正部は、前記運転状態パラメータとして前記エンジン負荷を更に取得し、前記エンジン回転速度,前記機関温度及び前記エンジン負荷に応じて前記基準値を補正することが好ましい。
(3)前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンの周囲の気圧を取得し、前記気圧に応じて前記基準値を補正する気圧対応補正部を有することが好ましい。
(4)前記MBT基準値算出手段は、前記エンジン回転速度,前記エンジン負荷及び前記エンジンに装備された可変バルブタイミング機構によって変更する吸気バルブの開閉タイミングに基づいて、前記基準値を算出することが好ましい。
(5)前記エンジンの空燃比を設定する空燃比設定手段を備え、前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンの空燃比を取得し、前記空燃比に応じて前記基準値を補正する空燃比対応補正部を有することが好ましい。
(6)前記エンジンには、排ガス再循環システムが装備され、前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンに装備された排ガス再循環システムにより吸気に還流される排ガスの割合であるEGR率を取得し、前記EGR率に応じて前記基準値を補正するEGR率対応補正部を有することが好ましい。
(7)前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータの値に応じて補正量を設定し、前記基準値に前記補正量を加減算することにより前記補正を実施することが好ましい。
(8)前記補正量には、上限値が設定されていることが好ましい。
(9)本発明のエンジンの制御装置は、上記のMBT点火時期演算装置と、車両に搭載されたエンジンに対する要求トルクを設定する設定手段と、前記要求トルクに基づき、前記エンジンの目標トルクを演算する目標トルク演算手段と、前記目標トルクに基づき、前記エンジンの出力トルクを制御するトルク制御手段と、前記目標トルクに対応した前記エンジンの目標点火時期を、前記MBT点火時期演算装置により算出された前記MBT点火時期に基づいて設定する目標点火時期設定手段と、前記エンジンの点火時期を前記目標点火時期に制御する点火時期制御手段と、を備えることを特徴としている。
なお、前記トルク制御手段は、前記エンジンに導入される空気量及び燃料量を制御して前記エンジンの出力トルクを制御する。
(10)前記目標点火時期設定手段は、前記エンジンの目標点火時期を、前記MBT点火時期から遅角させて設定することが好ましい。
(11)前記エンジンに外部負荷を与える外部負荷装置の作動状態に基づいて、前記外部負荷の変動を取得する外部負荷変動取得手段と、前記外部負荷変動取得手段の取得結果に応じて、前記設定手段で設定された前記要求トルクを補正するトルク補正手段と、を備え、前記トルク補正手段は、前記外部負荷変動取得手段で前記外部負荷の変動が取得された時に、前記変動に対応するためのトルク増分を前記設定手段で設定された前記要求トルクに加算して増分補正要求トルクを求め、前記MBT点火時期からの遅角量に応じて、前記増分補正要求トルクを増減させることが好ましい。
本発明のMBT点火時期演算装置によれば、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて設定されたMBT点火時期の基準値に対して、機関温度及びエンジン回転速度に応じた補正を行なうので、MBT点火時期が精度良く算出される。したがって、算出されたMBT点火時期をエンジンの制御に適用すれば、制御精度も向上する。特に、エンジンをトルクベースで制御する際に目標点火時期をMBT点火時期から遅角させて設定する場合、MBT点火時期の精度が制御精度に大きく影響するが、このMBT点火時期の算出精度の向上がトルクベース制御の精度向上に大きく寄与する。
本発明の第1実施形態に係るMBT点火時期演算装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係るMBT点火時期演算装置の補正部(補正手段)の温度対応補正部の構成を使用するマップと共に示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る温度対応補正部で用いるマップの第1変形例を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る温度対応補正部で用いるマップの第2変形例を示す図である。 本発明の各実施形態に係るMBT点火時期の機関温度,エンジン回転速度,及びエンジン負荷に応じたシフト量を示すグラフであり、(a)〜(d)はそれぞれ異なるエンジン負荷における機関温度及びエンジン回転速度に応じたシフト量を示す。 本発明の第2実施形態に係るMBT点火時期演算装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係るMBT点火時期演算装置の補正部(補正手段)の温度対応補正部で使用するマップを示す図である。 本発明の第3実施形態に係るエンジンの制御装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本制御装置の要求トルク演算部を例示したブロック図である。 本制御装置の目標トルク演算部での制御プロセスを例示したブロック図である。 本制御装置の点火制御部での制御プロセスを例示したブロック図である。 本制御装置に係る実充填効率Ec,点火時期及びトルクの対応マップを例示するものである。 本制御装置に係る点火指標K及びリタード量Rの対応マップを例示するものである。 本制御装置の加算トルク演算部の制御プロセスを例示したブロック図である。 本制御装置の加算トルク演算部での制御内容を例示したフローチャートである。 本制御装置の制御作用を説明するためのグラフである。 本発明の課題を説明するためのグラフであり、異なる機関温度における点火時期とエンジンの出力トルク(図示平均有効圧Pi)との関係を示す。
以下、図面を参照して本発明に係るMBT点火時期演算装置及びエンジンの制御装置の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
また、ここでは、第1及び第2実施形態においてMBT点火時期演算装置を説明し、第3実施形態においてMBT点火時期演算装置を利用したエンジンの制御装置を説明する。
<第1実施形態>
[1.装置構成]
まず、図1〜図5を参照して第1実施形態にかかるMBT点火時期演算装置を説明する。
図1に示すように、このMBT点火時期演算装置100は、エンジンの実際の運転状態に基づきMBT点火時期を算出する第1演算部120と、エンジンの目標運転状態に基づきMBT点火時期を算出する第2演算部220とを有している。両演算部120,220は、MBT点火時期の算出に用いる運転状態パラメータの一部が実際値か目標値かの違いだけなので、ここでは、第1演算部120に着目してMBT点火時期演算装置100を説明する。
なお、MBT点火時期演算装置100には、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)が用いられる。この電子制御装置は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワークの通信ラインを介して他の車載電子制御装置と互いに接続される。
第1演算部120は、エンジンの運転状態を示す運転状態パラメータの値を取得する種々の運転状態取得手段110により取得された運転状態パラメータの値に基づいてMBT点火時期を演算する。
運転状態取得手段110としては、エンジンの回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ(エンジン回転速度取得手段)111と、エンジンの吸気流量Qに基づいてエンジン負荷に対応する実充填効率Ecを取得する充填効率算出部(エンジン負荷取得手段)112と、エンジンの機関温度に対応する冷却水の温度TEMを検出する水温センサ(温度取得手段)113と、エンジンの周囲の気圧PREを検出する気圧センサ(気圧取得手段)114と、可変バルブタイミング機構により変更可能な吸気バルブの開閉タイミングVVTinを設定する開閉タイミング設定部(開閉タイミング取得部)115と、エンジンの空燃比KAFNETを設定する空燃比設定部(空燃比設定手段)116と、排ガス再循環システムにおけるEGR率を設定するEGR率設定部(EGR率設定手段)117とを備えている。
なお、充填効率算出部112は、エアフローセンサ(図示略)で検出された吸気流量Qに基づき、制御対象の気筒の実際の充填効率を実充填効率Ecとして演算する。ここでは、制御対象の気筒について、直前の一回の吸気行程(ピストンが上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサで検出された吸気流量Qの合計から、制御対象の気筒に実際に吸入された空気量が演算され、実充填効率Ecが演算される。
第1演算部120は、エンジン回転速度センサ111で検出されたエンジン回転速度Ne,充填効率算出部112で算出された実充填効率(エンジン負荷)Ec及び開閉タイミング設定部115で設定された吸気バルブの開閉タイミングVVTinに基づいて、MBT点火時期の基準値SA−MBTを算出するMBT基準値算出部(MBT基準値算出手段)121と、算出されたMBT点火時期の基準値SA−MBTに対して、運転状態パラメータの値に応じた補正を行なうMBT補正部(MBT補正手段)122とを備えている。
MBT基準値算出部121は、図1に示すようなエンジン回転速度Ne及び実充填効率EcにMBT点火時期の基準値SA−MBTを対応させた3次元マップ121mが、複数の開閉タイミング(吸気バルブタイミング位相角)VVTin毎に設けられ、設定された吸気バルブの開閉タイミングVVTinに近い2つの3次元マップのエンジン回転速度Ne及び実充填効率Ecに対応した各MBT点火時期の基準値SA−MBTに対して、設定された吸気バルブの開閉タイミングVVTinに関する補間演算をして、基準値SA−MBTを算出する。
MBT補正部122は、基準値SA−MBTに対して、空燃比KAFNETに応じた補正(空燃比対応補正)を行なう空燃比対応補正部123と、EGR率に応じた補正(EGR率対応補正)を行なうEGR率対応補正部124と、冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度Neに応じた補正(温度対応補正)を行なう温度対応補正部125と、気圧PREに応じた補正(気圧対応補正)を行なう気圧対応補正部126と、を有している。
空燃比対応補正部123は、エンジンの空燃比KAFNETに基づくMBT点火時期の補正量(空燃比対応補正量)ΔMBT_A/Fを、例えばマップ123mを用いて算出して、空燃比対応補正量ΔMBT_A/Fによって基準値SA−MBTを加減算補正することにより空燃比対応補正をする。この空燃比対応補正は、マップ123mに示すように、空燃比KAFNETが小さいほど大きな空燃比対応補正量ΔMBT_A/Fによって補正する。ただし、空燃比対応補正量ΔMBT_A/Fは上限クリップ値で制限される。
EGR率対応補正部124は、排ガス再循環システムのEGR率REGRに基づくMBT点火時期の補正量(EGR率対応補正量)ΔMBT_EGRを、例えばマップ124mを用いて算出して、EGR率対応補正量ΔMBT_EGRによって基準値SA−MBTを加減算補正することによりEGR率対応補正をする。このEGR率対応補正は、マップ124mに示すように、EGR率REGRが大きいほど大きなEGR率対応補正量ΔMBT_EGRによって補正する。ただし、EGR率対応補正量ΔMBT_EGRは上限クリップ値で制限される。
温度対応補正部125は、冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度Neに基づくMBT点火時期の補正量(温度対応補正量)ΔMBT_TEMを、例えばマップ125mを用いて算出して、温度対応補正量ΔMBT_TEMによって基準値SA−MBTを加減算補正することにより温度対応補正をする。ただし、温度対応補正量ΔMBT_TEMは上限クリップ値で制限される。
ここで、温度対応補正部125についてさらに説明する。図2に示すように、温度対応補正部125は、基準のエンジン回転速度Ne0における冷却水温度(機関温度)TEMと温度対応補正量ΔMBT_TEMとを規定したマップ125mを用いて、検出された冷却水温度(機関温度)TEM1から基準のエンジン回転速度対応の温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe0)を算出する基準回転速度温度対応補正量算出部125aと、この基準温度対応補正量算出部125aにより算出された冷却水温度(機関温度)TEM1における温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe0)と、検出されたエンジン回転速度Ne1とから次式により、温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe1)を算出する検出回転速度温度対応補正量算出部125bとをそなえている。なお、基準のエンジン回転速度Ne0は例えば1000rpmとする。
ΔMBT_TEM(atNe1)
=min{ΔMBT_TEM(atNe0)×(Ne0/Ne1),上限クリップ値}
ここで、MBT点火時期が、機関温度,エンジン回転速度,及びエンジン負荷に応じて如何にシフトするかの特性を、図5の試験結果を示すグラフを用いて説明する。図5は、実充填効率(エンジン負荷)Ecが低,中,高の各場合の各エンジン回転速度(1000rpm,1500rpm,2000rpm)における冷却水温度(機関温度)に対するMBT点火時期のシフト量(MBT補正量に相当する)を示す。図5(a)は実充填効率Ec40(%)の場合を、図5(b)は実充填効率Ec60(%)の場合を、図5(c)は実充填効率Ec70(%)の場合を、図5(d)は実充填効率Ec80(%)の場合をそれぞれ示す。また、エンジン回転速度が1000rpmの場合は実線で、エンジン回転速度が1500rpmの場合は破線で、エンジン回転速度が2000rpmの場合は一点鎖線で、それぞれ示す。また、縦軸のMBT点火時期のシフト量は、進角側へのシフト量を示す。
図5に示すように、各実充填効率Ecにおいて、冷却水温度が高くなるほど、また、エンジン回転速度が高くなるほどシフト量(MBT補正量)は小さくなる。もちろん、シフト量(MBT補正量)は実充填効率Ecにも影響されるが、冷却水温度の影響が最も強く、次にエンジン回転速度の影響が強く、実充填効率Ecはその次であるので、本実施形態では、冷却水温度及びエンジン回転速度に基づいてΔMBT_TEM(atNe1)(温度対応補正量)を設定するものとしている。
特に、MBT点火時期のシフト量はエンジン回転速度の逆数にほぼ比例するので、基準のエンジン回転速度Ne0のマップのみを用意し、検出された冷却水温度(機関温度)TEM1から基準のエンジン回転速度対応の温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe0)を算出して、これに基準のエンジン回転速度Ne0と検出されたエンジン回転速度Ne1との比の値であるNe0/Ne1を乗算することによって、冷却水温度TEM1及びエンジン回転速度Ne1に応じた温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe1)を算出するのである。
また、最終的な温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe1)は、他の空燃比対応補正量ΔMBT_A/F,EGR率対応補正量ΔMBT_EGR,及び後述の気圧対応補正量ΔMBT_PREと同様に、上限クリップ値で制限するが、これは、他の補正量と同様に、センサの検出値等の取得された値がノイズ等に起因して誤った値となる場合にそなえたものである。
次に、気圧対応補正部126は、気圧PREに基づくMBT点火時期の補正量(気圧対応補正量)ΔMBT_PREを、例えばマップ126mを用いて算出して、気圧対応補正量ΔMBT_PREによって基準値SA−MBTを加減算補正することにより気圧対応補正をする。この気圧対応補正は、マップ126mに示すように、気圧PREが大きいほど大きな気圧対応補正量ΔMBT_PREによって補正する。ただし、気圧対応補正量ΔMBT_PREも上限クリップ値で制限される。
このようにして、MBT補正部122は、MBT基準値算出部121により算出されたMBT点火時期の基準値SA−MBTに、空燃比対応補正量ΔMBT_A/F,EGR率対応補正量ΔMBT_EGR,温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe1)及び気圧対応補正量ΔMBT_PREをそれぞれ加算することによって進角補正して、最終的なMBT点火時期の値SAMBT2を演算し出力する。これにより、点火時期に対するエンジン出力の特性曲線を決定することができる。
なお、図1に示すように、第2演算部220も、エンジンの運転状態を示す運転状態パラメータの値を取得する種々の運転状態取得手段110により取得された運転状態パラメータの値と、目標値として設定された運転状態パラメータの値とに基づいてMBT点火時期を演算する。
第2演算部220は第1演算部120と同様の構成であり、基準値SA−MBTを算出するMBT基準値算出部(MBT基準値算出手段)221と、基準値SA−MBTに対して補正するMBT補正部(MBT補正手段)222とを備え、MBT補正部222は、空燃比KAFNETに応じた補正を行なう空燃比対応補正部223と、EGR率に応じた補正を行なうEGR率対応補正部224と、冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度Neに応じた補正を行なう温度対応補正部225と、気圧PREに応じた補正を行なう気圧対応補正部226と、を有し、何れも第1演算部120の各部と同様の構成になっている。これにより最終的な目標値対応のMBT点火時期の値SASTD1を演算し出力する。
[2.作用及び効果]
本実施形態にかかるMBT点火時期演算装置は、上述のように構成されるので、以下のような作用効果を得ることができる。第1演算部120に着目して説明する。
MBT補正部122が、MBT基準値算出部121により算出されたMBT点火時期の基準値SA−MBTに、空燃比対応補正量ΔMBT_A/F,EGR率対応補正量ΔMBT_EGR,温度対応補正量ΔMBT_TEM(atNe1)及び気圧対応補正量ΔMBT_PREをそれぞれ加算することによって進角補正して、最終的なMBT点火時期の値SAMBT2を演算するので、MBT点火時期を精度良く算出することができる。これにより、点火時期に対するエンジン出力の特性曲線がどの点火時期において最大値をとるかを決定することができる。
このとき、MBT基準値算出部121では、エンジン回転速度Ne,実充填効率(エンジン負荷)Ec及び可変バルブタイミング機構によって変更する吸気バルブの開閉タイミングVVTinに基づいて、基準値SA−MBTを算出するので、適切に基準値SA−MBTを算出することができる。
そして、温度対応補正部125では、エンジン回転速度Ne及び機関温度(冷却水温度)TEMに応じて基準値SA−MBTを補正するので、温度が変化した場合にも、この温度対応補正によってMBT点火時期を精度良く求めることができる。
しかも、この温度対応補正に加えて、気圧対応補正部126によってエンジンの周囲の気圧PREに応じた気圧対応補正を行なうので、平地に比べて気圧が大きく異なる高地などでも、この気圧対応補正によってMBT点火時期を精度良く求めることができる。
さらに、空燃比対応補正部123によってエンジンの空燃比KAFNETに応じた空燃比対応補正を実施するので、空燃比の状態に応じてMBT点火時期を精度良く求めることができる。
また、本エンジンには、排ガス再循環システムが装備されており、EGR率対応補正部124によってEGR率に応じたEGR率対応補正を実施するので、この点からもMBT点火時期を精度良く求めることができる。
また、MBT補正部122内の各補正部123,124,125,126では、各運転状態パラメータの値に応じて補正量を設定し、基準値SA−MBTにこの補正量を加減算することにより補正を実施するので、複数の補正を容易に統合させることができ、シンプルな補正ロジックで各種の補正を適正に行なうことができる。
さらに、こうした補正量に対して上限値が設定され、各補正量は上限値で制限されるので、検出信号にノイズが加わったりして補正量が瞬間的に過剰な値となる不具合が防止され、この点からもMBT点火時期の算出精度を確保することができる。
したがって、このようにして算出されたMBT点火時期をエンジンの制御に適用すれば、制御精度も向上する。特に、エンジンをトルクベースで制御する際に目標点火時期をMBT点火時期から遅角させて設定する場合、MBT点火時期の精度が制御精度に大きく影響するが、このMBT点火時期の算出精度の向上がトルクベース制御の精度向上に大きく寄与する。
なお、上記の空燃比対応補正部123,223と、EGR率対応補正部124,224と、温度対応補正部125,225と、気圧対応補正部126,226とによる補正を何れも実施することが好ましいが、本発明としては、温度対応補正部125,225による補正を必須とし、他の補正は適宜採用する構成としても良い。また、MBT点火時期の基準値SA−MBTの算出には、開閉タイミングVVTinを用いているが、開閉タイミングが固定であれば、例えば、エンジン回転速度Ne及び実充填効率EcにMBT点火時期の基準値SA−MBTを対応させた1つの3次元マップ121mを用いるなどにより、エンジン回転速度Ne及び実充填効率Ecに基づいてMBT点火時期の基準値SA−MBTを算出すればよい。
また、本実施形態では、温度対応補正部125を、基準回転速度温度対応補正量算出部125aと、検出回転速度温度対応補正量算出部125bとから構成したが、図3に示すような冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度NeをMBT点火時期の温度対応補正量ΔMBT_TEMに対応させた3次元マップを用いてダイレクトに、温度対応補正量ΔMBT_TEMを求めても良い。また、図4に示すような冷却水温度(機関温度)TEMをMBT点火時期の温度対応補正量ΔMBT_TEMに対応させた2次元マップを、複数のエンジン回転速度Ne毎に設け、検出したエンジン回転速度Neに隣接する2つのマップを利用した補間演算によって、温度対応補正量ΔMBT_TEMを求めてもよい。
<第2実施形態>
[1.装置構成]
次に、図6,図7を参照して第2実施形態にかかるMBT点火時期演算装置を説明する。
図6に示すように、このMBT点火時期演算装置100は、MBT補正部122,222の中の温度対応補正を行なう温度対応補正部125´,225´のみが第1実施形態と異なっている。
つまり、本実施形態にかかる温度対応補正部125´,222は、冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度Neに加えて、エンジン負荷である実充填効率Ecにも基づいてMBT点火時期の補正量(温度対応補正量)ΔMBT_TEMを算出する。図5を参照して既に説明したように、MBT点火時期のシフト量は、実充填効率(エンジン負荷)Ecにも依存する。エンジン負荷への依存度は低いが、本実施形態の温度対応補正部125´では、温度対応補正量ΔMBT_TEMをさらに精度よく求めるために、実充填効率Ecにも基づいて温度対応補正量ΔMBT_TEMを算出する。
なお、ここでは、図7に示すように、複数の実充填効率Ecにおいて、冷却水温度TEM及びエンジン回転速度Neを温度対応補正量ΔMBT_TEMに対応させた3次元マップ125m´,225m´を設け、実充填効率Ecの値に隣接する2つのマップを利用した補間演算によって、温度対応補正量ΔMBT_TEMを求める。
[2.作用及び効果]
本実施形態にかかるMBT点火時期演算装置は、上述のように構成され、冷却水温度(機関温度)TEM及びエンジン回転速度Neに加えて、実充填効率(エンジン負荷)Ecにも対応して温度対応補正を実施するので、最終的なMBT点火時期の値SAMBT2をより精度良く算出することができ、これにより、点火時期に対するエンジン出力の特性曲線がどの点火時期において最大値をとるかをより精度よく決定することができる。したがって、算出されたMBT点火時期をエンジンの制御に適用すれば、制御精度も一層向上する。特に、エンジンをトルクベースで制御する際に目標点火時期をMBT点火時期から遅角させて設定する場合に、このMBT点火時期の算出精度の向上がトルクベース制御の精度向上に大きく寄与する。
<第3実施形態>
次に、第1又は第2実施形態にかかるMBT点火時期演算装置によって求めたMBT点火時期を利用して、エンジンを制御するエンジンの制御装置の一例を、図8〜図16を参照して説明する。
[1.装置構成]
本実施形態の制御装置は、図8に示す車載のエンジン10に適用される。ここでは、多気筒四サイクル型のエンジン10に設けられた複数のシリンダのうち、一つのシリンダを示す。シリンダの頂部には点火プラグ13がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。また、燃焼室のシリンダヘッド側の頂面には、吸気通路11及び排気通路12が接続される。
吸気通路11側にはインジェクタ14,ETV15(Electric Throttle Valve)及びエアフローセンサ7(AFS,Air Flow Sensor)が設けられる。インジェクタ14は吸気通路11内に燃料を噴射するものであり、ETV15はその開度を変更することでシリンダ内に導入される空気の吸気量を変更するための電子制御式スロットルバルブである。また、エアフローセンサ7はシリンダ内への吸気量を検出するセンサであり、ここではETV15を通過する吸気流量Qが検出される。
このエンジン10には、クランクシャフトの角度θCRを検出するクランク角度センサ6(エンジン回転速度検出手段)が設けられる。クランク角度センサ6で検出されたクランクシャフトの角度θCR及びエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qは、後述するエンジンECU1に伝達される。なお、単位時間あたりの角度θCRの変化量からエンジン回転速度Neを把握することができる。したがって、クランク角度センサ6はエンジン10のエンジン回転速度Neを検出する手段としての機能を持つ。エンジン回転速度Neは、クランク角度センサ6で検出されたクランクシャフトの角度θCRに基づいてエンジンECU1が演算する構成としてもよいし、クランク角度センサ6の内部で演算する構成としてもよい。
エンジン10を搭載した車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量に対応する操作量θACを検出するアクセルペダルセンサ5(APS,Acceleration pedal Position Sensor,アクセル操作量検出手段)と、ステアリングホイールの操作角度(ステアリング角度)θ_SASを検出するステアリング角度センサ8(SAS,Steering Angle Sensor,ステアリング角度検出手段)と、車速Vを検出する車速センサ9(車速検出手段)が設けられる。これらの各センサで検出されたアクセルペダルの操作量θAC,ステアリング角度θ_SAS及び車速Vは、エンジンECU1に伝達される。
なお、アクセルペダルの踏み込み操作量θACは運転者の加速要求に対応するパラメータであり、言い換えるとエンジン10の負荷に相関するパラメータである。また、本実施形態の車両のステアリングホイールは油圧式パワーステアリング装置による操舵力がアシストされるものであり、ステアリング角度θ_SASが大きいほどエンジン10への負荷が増大する。したがって、ステアリング角度θ_SASもエンジン10の負荷に相関するパラメータである。
この車両には電子制御装置として、エンジンECU1(Engine - Electronic Control Unit,エンジン電子制御装置),CVT-ECU16(Continuously Variable Transmission ECU),エアコンECU17及び電装品ECU18が設けられる。これらの電子制御装置は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワークの通信ラインを介して互いに接続される。
CVT-ECU16は、図示しないCVT装置(無段変速装置)の動作を制御するものであり、エアコンECU17は、図示しないエアコン装置(空調装置)の動作を制御するものである。また、電装品ECU18は、車載投光装置や各種照明装置,パワーウィンドウ装置,ドア施錠装置といったボディ系の各種電装品の動作を制御するものである。
以下、これらのエンジンECU1以外の電子制御装置のことを外部制御システムとも呼び、外部制御システムによって制御される装置のことを外部負荷装置とも呼ぶ。外部負荷装置の作動状態等は、エンジン10の運転状態に関わらず変化しうる。上記の各外部制御システムは、外部負荷装置からエンジン10に要求されるトルクの大きさを随時演算し、エンジンECU1に伝達する。また、外部制御システムがエンジン10に要求するトルクのことを外部要求トルクと呼ぶ。なお、外部要求トルクは、CVT-ECU16,エアコンECU17といった個々の外部制御システムで演算された後にエンジンECU1に伝達されることとしてもよいし、あるいは個々の外部制御システムで収集された情報に基づいてエンジンECU1で演算されることとしてもよい。
エンジンECU1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する電子制御装置である。ここでは、トルクベース制御によって実際のエンジン10のトルク挙動が管理されている。トルクベース制御とは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準として吸気量や燃料噴射量,点火時期等を制御するものである。前述の点火プラグ13,インジェクタ14及びETV15の動作は、トルクベース制御によって調整される。この制御では、例えば運転者からの出力要求や外部制御システムからの出力要求がトルクに換算され、それらのトルクが総合的に判断されてエンジントルクの目標値が演算され、この目標値のトルクが得られるように吸気量や燃料噴射量,点火時期等が制御される。
また、エンジンECU1は、外部負荷装置からエンジン10に与えられる負荷の変動を検出して、その負荷変動に対応するためのトルク増分を加味したトルクベース制御を実施する。ここでいう負荷の変動とは、例えばCVT装置のシフトレバー操作やエアコン装置,油圧式パワーステアリング装置,各種電装品の起動操作に伴って発生する過渡的な負荷変動を意味する。
一般に、外部負荷装置からエンジン10に与えられる負荷の大きさは、定常的には変動が小さく、急変することは少ない。しかし、シフトレバー操作や各種電装品の起動操作の直後といった過渡状態では、負荷が安定化するまでの間に一時的に急変する可能性がある。そのため、外部制御システムからの出力要求をトルクに換算したものだけでは負荷変動を抑制することができず、エンジン10の運転状態が不安定になる場合がある。上記のトルク増分とは、このような負荷変動に対応するためのトルクの加算分である。
本実施形態のエンジンECU1で実施されるトルクベース制御には、アイドルフィードバック制御及び燃料カット制御が含まれている。アイドルフィードバック制御は、所定のアイドル条件(例えば、車速Vやアクセルペダルの踏み込み操作量θACに関する条件)が成立したエンジン10のアイドル運転状態時に、実際のエンジン回転速度Neを目標アイドル回転速度に近づけるとともに、その目標アイドル回転速度でのエンジン回転を維持するフィードバック制御である。また、燃料カット制御は、所定の燃料カット条件(例えば、エンジン回転速度Neやアクセルペダルの踏み込み操作量θACに関する条件)が成立したときに、燃料の噴射を停止させる制御である。
[2.制御構成]
エンジンECU1には、要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4が設けられる。
要求トルク演算部2(設定手段)は、運転者から要求されるトルクや外部制御システムから要求されるトルクを集約し、アクセル要求トルクPi_APSと、制御操作に対する応答性が異なる二種類の要求トルクと、アイドル要求トルクPi_NeFBとを演算し、これらをエンジン10への要求トルクとして設定するものである。
アイドル要求トルクPi_NeFBは、エンジン10の運転状態をアイドル運転状態に維持するのに要求されるトルク等を含むトルクである。また、アクセル要求トルクPi_APSは、車両の定常運転時にドライバに要求されているトルク等を含むトルクである。ここでは、アクセル要求トルクPi_APSに基づいて、点火制御用要求トルクPi_EXT_SAと吸気制御用要求トルクPi_EXTとが演算される。
前者のトルクが用いられる点火制御とは、いわゆる高応答トルク制御であり、例えば点火時期操作や燃料噴射量操作によってトルクを制御するものである。また、後者のトルクが用いられる吸気制御は、いわゆる低応答トルク制御であり、例えば電子制御スロットルの操作に代表される吸入空気量操作によってトルクを制御するものである。一般に、点火制御はトルクの調整代が小さいものの応答性が高く、吸気制御は応答性が低いもののトルクの調整代が大きい。要求トルク演算部2で演算された上記のアイドル要求トルクPi_NeFB、アクセル要求トルクPi_APS、及び二種類の要求トルクは、目標トルク演算部3に伝達される。
目標トルク演算部3(目標トルク演算手段)は、要求トルク演算部2で演算されたアイドル要求トルクPi_NeFB、アクセル要求トルクPi_APS、または点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTに基づき、二種類の制御目標としての目標トルクを演算するものである。ここでは、点火制御用目標トルクPi_TGT(第一目標トルク)と、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STD(第二目標トルク)とが演算される。ここで演算された点火制御用目標トルクPi_TGT及び吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDは、制御部4に伝達される。
制御部4は、目標トルク演算部3で演算された二種類の目標トルクに基づいて吸気量(実充填効率Ec)及び点火プラグ13での点火時期をフィードバック制御するものである。ETV15の開度は、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいて制御され、点火プラグ13での点火時期は、点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて制御される。
なお、これらの要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4の各機能は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−1.要求トルク演算部]
図9に示すように、要求トルク演算部2には、アイドル要求トルク設定部2a,アクセル要求トルク演算部2b,最終要求トルク演算部2c及び加算トルク演算部2dが設けられる。
アイドル要求トルク設定部2aは、エンジン10がアイドル運転状態である時のエンジン回転速度Neの目標値として、目標アイドル回転速度を設定するものである。この目標アイドル回転速度は、例えばエアコン装置の負荷やエンジン冷却水温といった外部負荷装置の状態に応じて適宜設定される。また、アイドル要求トルク設定部2aは、設定された目標アイドル回転速度に対応するトルク(エンジン回転速度Neを目標アイドル回転速度に維持するために要するトルク)をアイドル要求トルクPi_NeFBとして設定する。ここで設定されたアイドル要求トルクPi_NeFBは、目標トルク演算部3に伝達される。
なお、図中の記号Piは図示平均有効圧Piを意味しており、ここでは図示平均有効圧Piを用いてトルクの大きさを表現している。本実施形態では、エンジン10で生じる力のモーメントのことだけでなく、エンジン10のピストンに作用する平均有効圧(例えば、図示平均有効圧Piや正味平均有効圧Pe)で表現されたトルク相当量(トルクに相当する圧力)のことも便宜的にトルクと呼ぶ。
アクセル要求トルク演算部2b(第一演算手段)は、クランクシャフトの角度θCRに基づいて得られるエンジン回転速度Neやアクセルペダルの操作量θAC等に基づき、アクセル要求トルクPi_APSを演算するものである。アクセル要求トルクPi_APSは、車両の定常運転時におけるエンジンの出力目標値のベースとなるパラメータである。
アイドル要求トルク設定部2aで設定されるアイドル要求トルクPi_NeFBとアクセル要求トルク演算部2bで演算されるアクセル要求トルクPi_APSとのそれぞれには、外部負荷要求トルクPi_AUXが含まれている。外部負荷要求トルクPi_AUXとは、外部負荷装置の駆動によってエンジン10に与えられる定常的な負荷に対応するトルクである。この外部負荷要求トルクPi_AUXの具体的な値は、例えば外部負荷装置の種類や作動状態に応じて予め設定された所定値とすることが考えられる。あるいは、外部負荷装置の種類の区別なく一律の固定値として記憶させておいてもよい。
最終要求トルク演算部2c(第二演算手段)は、アクセル要求トルク演算部2bで演算されたアクセル要求トルクPi_APSをベースとして、二系統の演算プロセスを実行するものである。一方のプロセスは、図9中に黒矢印で示すように、点火制御用要求トルクPi_EXT_SAを演算するプロセスであり、他方のプロセスは、図9中に白抜き矢印で示すように、吸気制御用要求トルクPi_EXTを演算するプロセスである。これらの点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTは、互いに独立して最終要求トルク演算部2c内で演算される。それぞれの要求トルクは、車両の運転者の意図や車両安定性,運転性等を考慮して集約されたトルクであり、ともに目標トルク演算部3に伝達される。
加算トルク演算部2dは、上記の外部負荷要求トルクPi_AUXの補正量、すなわち、外部負荷の変動の影響を考慮して加算されるトルク増分を演算するものである。ここでは、外部負荷の変動に対応するためのトルク増分(トルクの余裕分)を加算トルクPi_ADD(増分補正要求トルク)として演算する。なお、加算トルク演算部2dの具体的なブロック構成については後述する。
加算トルクPi_ADDは、例えばCVT装置のシフトレバー操作,ステアリングホイールの操舵操作,エアコン装置や各種電装品の起動操作等に伴って発生する過渡的な負荷の変動に対応した大きさのトルクであり、その値は外部負荷装置の種類や作動状態に応じて変更される。ここで演算された加算トルクPi_ADDは、目標トルク演算部3に伝達される。
[2−2.目標トルク演算部]
目標トルク演算部3での演算プロセスを図10に例示する。目標トルク演算部3には、要求トルク演算部2で演算又は設定されたアイドル要求トルクPi_NeFB,アクセル要求トルクPi_APS, 点火制御用要求トルクPi_EXT_SA,吸気制御用要求トルクPi_EXT及び加算トルクPi_ADDが入力される。この目標トルク演算部3には、第一選択部3a,第二選択部3b,燃料カット部3c,吸気遅れ補正部3d及び外部負荷補正部3eが設けられる。
第一選択部3aは、点火制御用要求トルクPi_EXT_SA,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうちの何れか一つを点火制御用のトルクの目標値として選択するものである。また、第二選択部3bは、吸気制御用要求トルクPi_EXT,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうちの何れか一つを吸気制御用のトルクの目標値として選択するものである。
第一選択部3a及び第二選択部3bにおけるトルクの目標値の選択条件としては、例えば外部制御システムからのトルクの要求の有無や、後述するアイドル条件判定部21での判定結果(エンジン10のアイドル運転の要否)等が考えられる。第一選択部3aで選択されたトルク値は燃料カット部3cに伝達され、第二選択部3bで選択されたトルク値は吸気遅れ補正部3dに伝達される。
燃料カット部3cは、燃料カット制御の実施時に点火制御用目標トルクPi_TGTをゼロに設定するものである。燃料カット制御の実施条件は、図示しない燃料カット制御部において、例えばエンジン回転速度Neやアクセルペダルの操作量θAC,エンジン冷却水温等に基づいて随時判定される。また、燃料カット部3cは、燃料カット制御の非実施時には、第一選択部3aで選択されたトルク値をそのまま点火制御用目標トルクPi_TGTとして設定する。ここで設定された点火制御用目標トルクPi_TGTは制御部4に伝達される。
吸気遅れ補正部3dは、ETV15からエンジン10の気筒に導入される空気の吸気遅れに応じた補正演算を行うものである。ここでは、エンジン10やETV15の吸気特性に基づき、吸気遅れを考慮したトルク値が演算される。なお、具体的な吸気遅れ補正部3dでの補正演算手法は、ETV15の制御態様に応じて種々考えられる。例えば、第二選択部3bで選択されたトルク値に対して、実際の吸気遅れを模擬した一次遅れ処理,二次遅れ処理を施すことによって、実現したいトルク変動の軌跡を生成してもよい。ここで演算されたトルク値は外部負荷補正部3eに伝達される。
外部負荷補正部3eは、入力されたトルク値に加算トルクPi_ADDを加算して吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを演算するものである。つまりここでは、吸気制御用のトルク値に対して外部負荷に応じた大きさのトルクが加算される。ここで演算された吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDは、制御部4に伝達される。
[2−3.制御部]
図8に示すように、制御部4には点火制御部4a(点火時期検出手段)及び吸気制御部4h(制御手段)が設けられる。点火制御部4aは点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて点火制御を実施するものであり、吸気制御部4hは吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいて吸気制御を実施するものである。
吸気制御部4hは、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいてETV15の開度を調整する吸気制御を実施する。例えば、吸気制御部4hは、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを得るために必要な気筒内の空気量を演算し、その空気量が制御対象の気筒内に導入されるようにETV15の開度を制御する。
図10に示すように、目標トルク演算部3では、加算トルクPi_ADDが吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算プロセスのみに用いられ、点火制御用目標トルクPi_TGTの演算プロセスには用いられない。したがって、エンジン10に導入される空気量は外部負荷に応じて補正される反面、点火プラグ13での点火時期はこのような補正が加えられていない点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて制御される。
点火制御部4aでの演算プロセスを図11に例示する。点火制御部4aには、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGT,エアフローセンサ7で検出された吸気流量Q及びエンジン回転速度Neが入力される。また、点火制御部4aには、実充填効率演算部4b,MBT演算部4c,実トルク演算部4d,点火指標演算部4e,リタード量演算部4f及び減算部4gが設けられる。なお、MBT演算部4cには、第1実施形態又は第2実施形態で説明したMBT点火時期演算装置100が適用される。ただし、吸気バルブの開閉タイミングは固定されているので、MBTの基準値は、実充填効率Ec及びエンジン回転速度Neに基づき求める。
実充填効率演算部4bは、入力された吸気流量Qに基づき、制御対象の気筒の実際の充填効率を実充填効率Ecとして演算するものである。ここでは、制御対象の気筒について、直前の一回の吸気行程(ピストンが上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qの合計から、制御対象の気筒に実際に吸入された空気量が演算され、実充填効率Ecが演算される。ここで演算された実充填効率Ecは、MBT演算部4c及び実トルク演算部4dに伝達される。
MBT演算部4cは、実充填効率演算部4bで演算された実充填効率Ec及びエンジン回転速度Neに基づき、最大のトルクを発生させる点火時期(MBT)の基準値に各補正を実施してSA_MBTとして演算するものである。MBTの基準値は、実充填効率Ec及びエンジン回転速度Neに関し、各補正を省略すれば、例えば図12に示すように、実充填効率Ec,点火時期及び理論空燃比で発生するトルクの対応関係をエンジン回転速度Ne毎及び吸気バルブの各開閉タイミングVVTin毎のマップとして記憶しており、これを用いて点火時期の基準値SA_MBTを演算する。ここで演算された点火時期SA_MBTは減算部4gに伝達される。なお、図12のマップでは、実充填効率Ecが所定値Ec10であるときの点火時期SA_MBTがT10であり、実充填効率Ecが所定値Ec20であるときの点火時期SA_MBTがT20である。
実トルク演算部4dは、実充填効率演算部4bで演算された実充填効率Ecにて、制御対象の気筒で生じうる最大のトルク(すなわち、実充填効率Ecで点火時期をMBTに設定した場合に発生するトルク)を実トルクPi_ACT_MBTとして演算するものである。ここでいう実トルクPi_ACT_MBTは、図12中に示された各実充填効率Ecでのトルク変動グラフの最大値に対応する。実トルク演算部4dは、例えばMBT演算部4cに記憶されたこのようなマップを用いて実トルクPi_ACT_MBTを演算する。図12のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec10であるときの実トルクPi_ACT_MBTがTq10であり、実充填効率Ecが所定値Ec20であるときの実トルクPi_ACT_MBTがTq30である。ここで演算された実トルクPi_ACT_MBTは、点火指標演算部4eに伝達される。
なお、図12のマップは、同一の燃焼条件(例えば、エンジン回転速度及び空燃比が一定の条件)において一定の実充填効率Ecで点火時期のみを変化させた場合に生成されるトルクの大きさをグラフ化するとともに、異なる実充填効率Ecでのグラフを重ねて表示したものである。一定の実充填効率Ecでは、横軸の点火時期の変化に対して縦軸のトルクが上に凸の曲線となる。このグラフの頂点の座標に対応する点火時期がMBTであり、頂点の座標に対応するトルクが実トルクPi_ACT_MBTである。また、実充填効率Ecが増加すると、気筒内に導入される空気量の増大によりトルクが増大するとともに燃焼速度(気筒内での火炎伝播速度)が上昇し、MBTは遅角方向へと移動する。
ここで、実充填効率Ecが所定値Ec10である場合にMBT点火時期から所定値αだけ点火時期をリタードさせた際に得られるトルクをTq20とおき、実充填効率Ecが所定値Ec20である場合にMBT点火時期から所定値αだけ点火時期をリタードさせた際に得られるトルクをTq40とおくと、これらのトルク間には、(Tq20)/(Tq10) = (Tq40)/(Tq30) の関係が成立する。実トルク演算部4dは、このような特性を持つマップを用いて実充填効率Ecから実トルクPi_ACT_MBTを演算する。
点火指標演算部4eは、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルク演算部4dで演算された実トルクPi_ACT_MBTとの比K〔K=(Pi_TGT)/(Pi_ACT_MBT),点火指標 〕を演算するものである。ここでは、実際にエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qに基づいて生成されうるトルクの大きさに対してどの程度の割合で点火制御用目標トルクPi_TGTが必要なのかが演算される。なお、本実施形態の点火指標演算部4eでは、点火制御によって実トルクPi_ACT_MBTを超えるような過剰なトルクが生じないようにすべく、比Kの値が1以下の範囲でクリップされる。ここで演算された比Kはリタード量演算部4f及び前述の加算トルク演算部2dに伝達される。
リタード量演算部4fは、MBTを基準として、比Kに応じた大きさのリタード量R(点火時期の遅角量)を演算するものである。リタード量演算部4fは、例えば図13に示すように、比Kとリタード量Rとの対応関係をエンジン回転速度Ne毎のマップとして記憶しており、このマップを用いてリタード量Rを演算する。なお、ここでいうリタード量RはMBTを基準としたものであり、比K(0≦K≦1)が1に近づくほどリタード量Rがゼロに近づく特性を持つ。また、リタード量Rは、例えば図13中に破線で示すように、エンジン回転速度Neが大きいほど増大する特性を持つ。ここで演算されたリタード量Rは、減算部4gに伝達される。
なお、リタード量RはMBTを基準とした点火時期のずれ(時刻の相違量、ずれ時間、あるいは、これに対応する角度であってクランクシャフト回転角に対する位相のシフト量)の大きさを表す値である。また、図13に示すように、リタード量Rは比Kの値に対応して一意に定められる。したがって、比KもMBTを基準とした点火時期の「ずれ量(進角量又は遅角量)」に対応する値である。本実施形態では、点火指標演算部4eで演算された比Kがエンジン10での実際の点火時期に対応するパラメータとして加算トルク演算部2dに伝達され、加算トルクPi_ADDの演算に用いられる。
減算部4gは、リタード量演算部4fで演算されたリタード量Rに基づいて実行点火時期SA_ACTを演算するものである。ここでは、例えばMBT演算部4cで演算された点火時期SA_MBTからリタード量Rが減算され、実行点火時期SA_ACTが演算される。ここで演算された実行点火時期SA_ACTは、点火制御用目標トルクPi_TGTに対応するトルクを生じさせる点火時期である。
点火制御部4aは、制御対象の気筒に設けられた点火プラグ13を実行点火時期SA_ACTに点火させる点火制御を実施する。
[2−4.加算トルク演算部]
加算トルク演算部2dのブロック構成を図14に示す。加算トルク演算部2dには、アイドル条件判定部21,条件判定部26,タイマー部27と、外部負荷の変動を検出(取得)する検出手段としてのP/S(Power assisted Steering)負荷判定部22,T/M(Transmission)負荷印加判定部23,A/C(Air Conditioning)負荷印加判定部24及び電気負荷印加判定部25が設けられる。また、加算トルクPi_ADDの補正演算に係る第一補正量設定部28,第二補正量設定部29,第三補正量設定部30,補正量保持設定部31及び第四補正量設定部32といったトルク補正手段が設けられる。
この加算トルク演算部2dには、アクセルペダルセンサ5で検出された操作量θAC,ステアリング角度センサ8で検出された操作角度θ_SAS,車速センサ9で検出された車速Vのほか、外部制御システムから伝達される外部負荷装置の作動信号,点火指標演算部4eで演算された比Kが入力される。以下、比Kのことを点火指標Kとも呼ぶ。
アイドル条件判定部21(アイドル検出手段)は、アクセルペダルの操作量θAC及び車速Vに基づいて、エンジン10のアイドル運転状態を検出するものである。ここでは、車速Vが所定速度V1以下(例えば、10[km/h])であり、かつ、アクセルペダルの踏み込みが検出されない(操作量θACが0である、または、操作量θACが微小な所定角度θAC1以下である)場合にアイドル運転状態であると判定し、そうでない場合にはアイドル運転状態ではないと判定する。上記のアイドル運転状態の判定条件のことを条件Aと呼ぶ。
P/S負荷判定部22(検出手段)は、操作角度θ_SASに基づいて油圧式パワーステアリング装置による外部負荷の変動を検出するものである。例えば、操作角度θ_SASが0[deg]よりも大きい場合(すなわち、P/S負荷がある場合)に、ステアリング操作に係る外部負荷が変動する可能性があると判定し、操作角度θ_SASが0[deg]である場合にステアリング操作に係る外部負荷の変動がないと判定する。ここでの判定結果は、条件判定部26に伝達される。なお、ここでは少なくともステアリングホイールが中立位置にあるか否かを判定できればよい。したがって、ステアリング角度センサ8の代わりに、ステアリングホイールの操舵の有無を検出するセンサやスイッチ等を用いてもよい。
T/M負荷印加判定部23(検出手段)は、CVT-ECU16から伝達されるCVT装置の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものである。ここでは例えば、CVT装置のシフトレバーが非走行レンジから走行レンジへと切り換えられた場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。なお、CVT-ECU16から伝達される情報の代わりに、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサで検出されたシフト位置情報を用いて上記の判定を行う構成としてもよい。ここでの判定結果は、タイマー部27に伝達される。
A/C負荷印加判定部24(検出手段)は、エアコンECU17から伝達されるエアコン装置の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものである。ここでは例えば、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。ここでの判定結果は、タイマー部27に伝達される。同様に、電気負荷印加判定部25(検出手段)は、各種電装品の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものであり、各種電装品のメインスイッチがオフからオンに操作された場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。ここでの判定結果も、タイマー部27に伝達される。
タイマー部27は、P/S負荷判定部22,T/M負荷印加判定部23及びA/C負荷印加判定部24のうちの何れかで外部負荷の変動が検出された場合に、タイマーのカウントを開始するものである。タイマーは時間経過とともにその値が減少し、その値が0になったときにカウントを停止するデクリメント型の計時手段である。タイマー部27は、外部負荷の変動が検出されたときにタイマーの値Tとして初期値Tstを代入する。これにより、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間(初期値Tstに対応する時間)が計測される。
条件判定部26は、入力される外部負荷の状態に応じた大きさの加算トルクPi_ADDを出力するための条件判定を行い、以下の設定部28〜32に加算トルクPi_ADDの補正演算を指示するものである。ここで判定される条件を以下に列挙する。これらの条件1〜5は番号の若い順に優先される。例えば、条件2は条件1が不成立の場合に判定され、条件3は条件1及び条件2がともに不成立の場合に判定される。また、条件2〜4中には点火指標Kの閾値として第一指標K1(第一基準値)及び第二指標K2(第二基準値)が設定される。これらの閾値の大小関係は図13に示すように0<K2<K1<1とする。
条件1.条件Aが成立し、かつタイマーの値Tが初期値Tstである
条件2.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1以上であり、かつP/S負荷がある
条件3.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1以上であり、かつT>0である
条件4.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1未満、第二指標K2以上であり、
かつ、P/S負荷があるかタイマーの値TがT>0である
条件5.上記の条件1〜4が何れも成立しない
また、条件判定部26は、条件1が成立した場合に、加算トルクPi_ADDの補正演算を第一補正量設定部28に指示する。同様に、条件2が成立した場合には第二補正量設定部29に指示し、条件3が成立した場合には第三補正量設定部30に指示する。条件4が成立した場合には補正量保持設定部31に演算を指示し、条件5が成立した場合には第四補正量設定部32に指示する。
第一補正量設定部28,第二補正量設定部29及び第三補正量設定部30は、加算トルクPi_ADDを増加方向に補正するものであり、第四補正量設定部32は、加算トルクPi_ADDを減少方向に補正するものである。
第一補正量設定部28は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第一補正量は、P/S負荷以外の外部負荷(すなわち、T/M負荷,A/C負荷及び電気負荷の少なくとも何れかの外部負荷)が入力された直後のトルク加算量である。
第二補正量設定部29は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第二補正量は、P/S負荷が入力されている間は常時加算されるトルク量に対応する。
第三補正量設定部30は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第三補正量は、P/S負荷以外の外部負荷が入力されてから所定時間が経過するまでの間のみ加算されるトルク量に対応する。
補正量保持設定部31は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDをそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDに設定する。
第四補正量設定部32は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量を減算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。ただし、加算トルクPi_ADDは0以上の範囲内(Pi_ADD≧0)にクリップされるものとする。なお、このような下限値だけでなく、加算トルクPi_ADDに上限値を設定してもよい。これらの第一補正量設定部28,第二補正量設定部29,第三補正量設定部30,補正量保持設定部31及び第四補正量設定部32で補正演算された加算トルクPi_ADDは、目標トルク演算部3に伝達され、前述の外部負荷補正部3eにおいて吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算に用いられる。
上述の通り、加算トルク演算部2dでは、加算トルクPi_ADDの演算過程でのP/S負荷の扱いとその他の外部負荷の扱いとが区別されている。この理由の一つは、P/S負荷の変動量が他の負荷に比べて大きいからである。
また、CVT装置のシフトレバー操作やエアコン操作の場合には、操作が入力されてから所定時間が経過すれば負荷変動が安定する。つまり、油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷装置は、時間が経過に応じて変動が安定していく傾向がある。これに対して、パワーステアリング装置の動作は運転者の操作量に依存するため、どのようなタイミングでP/S負荷が急変するかを予測することが難しい。このような特性の相違も、P/S負荷の扱いとその他の外部負荷の扱いとを区別する理由の一つである。
また、点火指標Kは0に近いほど(小さいほど)リタード量が大きく、1に近いほど(大きいほど)点火時期がMBTに近い(リタード量が小さい)ことを意味する。つまり、点火指標Kが小さいほどトルクリザーブ量(MBTで点火したときに生じうる最大トルクと実際に生じるトルクとの差,点火制御によって増加させることが可能なトルクの余裕分であり、トルクを瞬時にどの程度増大させることができるかの指標)が大きく、点火指標が大きいほどトルクリザーブ量が小さいことになる。
条件2,3に含まれる点火指標Kの条件は、トルクリザーブ量が比較的小さい点火状態であることを判定するための条件といえる。したがって、条件2,3の成立時には、トルクリザーブ量を増加させるべく加算トルクPi_ADDが加算方向に補正される。一方、点火指標Kが小さくトルクリザーブ量が十分に大きい点火状態では、条件5が成立して加算トルクPi_ADDが減少方向に補正される。
[3.フローチャート]
加算トルク演算部2dで実行される制御手順の例として図15にフローチャートを示す。なお、このフローチャートに含まれる各判定条件は、上記の条件1〜5に含まれる個々の条件を分解して再構成したものである。
まず、ステップA10では、条件判定に用いられる各種情報が読み込まれる。続くステップA20では、アイドル条件判定部21において、アクセルペダルの操作量θAC及び車速Vに基づいて条件Aが成立するか否か(エンジン10がアイドル運転状態であるか否か)が判定される。ここで条件Aが成立する場合にはステップA30へ進み、条件Aが成立しない場合には条件1〜4の何れも成立しないため、条件5の成立時の制御に対応するステップA140へ進む。なお、ステップA140では、第四補正量設定部32において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算され、続くステップA150では減算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
ステップA30では、タイマー部27のタイマーの値Tが初期値Tstであるか否かが判定される。つまりここでは、P/S負荷以外の外部負荷が入力された直後であるか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT=Tstである場合には、条件1の成立時の制御に対応するステップA100へ進む。なお、ステップA100では、第一補正量設定部28において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
一方、ステップA30でタイマーの値TがT≠Tstである場合にはステップA40へ進む。ステップA40では、点火指標Kが第一指標K1以上であるか否かが判定される。ここで点火指標KがK≧K1である場合にはステップA50へ進み、K<K1である場合にはステップA70へ進む。
ステップA50では、例えば操作角度θ_SASに基づき、P/S負荷の有無が判定される。P/S負荷がある場合には、条件2の成立時の制御に対応するステップA110へ進み、P/S負荷がない場合にはステップA60へ進む。なお、ステップA110では、第二補正量設定部29において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
ステップA60では、タイマー部27のタイマーの値Tが0よりも大きいか否かが判定される。つまり、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間が所定時間未満であるか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT>0である場合には、条件3の成立時の制御に対応するステップA120へ進み、タイマーの値TがT=0である場合には、ステップA140へ進む。なお、ステップA120では、第三補正量設定部30において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
ステップA70では、点火指標Kが第一指標K1未満、第二指標K2以上であるか否かが判定される。ここで点火指標KがK1>K≧K2である場合にはステップA80へ進み、K<K2である場合にはステップA140へ進む。
ステップA80では、ステップA50と同様にP/S負荷の有無が判定される。P/S負荷がある場合には、条件4の成立時の制御に対応するステップA130へ進む。また、P/S負荷がない場合にはステップA90へ進み、ステップA60と同様にタイマー部27のタイマーの値Tが0よりも大きいか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT>0である場合にも、条件4の成立時の制御に対応するステップA130へ進む。一方、タイマーの値TがT=0である場合には、ステップA140へ進む。
ステップA130では、補正量保持設定部31において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDがそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDに設定され、続くステップA150ではその加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
なお、本フローチャートのステップA20での条件判定は、第四補正量(ステップA140)及びそれ以外の補正量(ステップA100〜A130)の何れかへのルートを選択するための条件判定である。つまりこの制御では、エンジンがアイドル運転状態にあるか否かによって補正量が増減している。
また、本フローチャートのステップA40及びA70での点火指標Kに関する条件判定は、ステップA110〜A140の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、点火時期の基準値(第一指標K1又は第二指標K2)からのずれ量に応じて補正量が増減している。
また、本フローチャートのステップA50及びA80でのP/S負荷に関する条件判定も、ステップA110〜A140の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、P/S負荷の有無に基づいて補正量が増減している。
さらに、本フローチャートのステップA30,A60及びA90でのタイマーTに関する条件判定は、ステップA100〜A150の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷が入力されてからの経過時間に基づいて補正量が増減している。
[4.作用]
[4−1.エアコン装置のオン操作時]
上記の制御により加算トルクPi_ADDが増加したときのトルク挙動の変化について説明する。
図16に示すように、エンジン10がアイドル運転状態であって実充填効率Ecが第一所定値Ec1であり、点火制御用目標トルクPi_TGTがTq4であるとき、点火時期は点Aに対応するT4に設定される。
点Aの制御状態では、実充填効率Ecが第一所定値Ec1であるときのMBTであるT1よりも点火時期が遅角方向に移動しており、リタード量Rtd1はT1-T4である。また、点Aでのトルクリザーブ量Rsrv1は、MBTでのトルクから点Aでのトルクを減算したTq1-Tq4である。
エアコン装置の主電源がオフからオンに操作されると、エアコン装置の作動状態に関する情報がエアコンECU17からエンジンECU1の要求トルク演算部2に伝達される。これを受けて、アイドル要求トルク設定部2aでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアイドル要求トルクPi_NeFBが設定される。一方、アクセル要求トルク演算部2bでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアクセル要求トルクPi_APSが演算され、これに基づいて最終要求トルク演算部2cで点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTが演算される。
また、加算トルク演算部2dのA/C負荷印加判定部24では、エアコン装置の作動状態に関する情報から、外部負荷が変動する可能性があると判定される。これを受けてタイマー部27では、タイマーの値Tとして初期値Tstが代入され、タイマーのカウントダウンが開始される。このタイマーの値Tは条件判定部26に伝達される。このとき、条件判定部26では条件1が成立するため、第一補正量設定部28において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
エンジン10がアイドル運転状態である場合、目標トルク演算部3の第二選択部3bでは、吸気制御用要求トルクPi_EXT,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうち、アイドル要求トルクPi_NeFBが吸気制御用のトルクの目標値として選択される。ここで選択されたアイドル要求トルクPi_NeFBには、吸気遅れ補正部3dで補正演算を加えられた後に、外部負荷演算部3eで加算トルクPi_ADDを加算される。
これにより、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDが増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量が一度に増量するようにETV15の開度が制御される。また、これに伴って吸気流量Qが増大し、実充填効率Ecも増大する。図16に示すように、このときの実充填効率を第二所定値Ec2とする。
これに対して、目標トルク演算部3での点火制御用目標トルクPi_TGTの演算プロセスでは、加算トルクPi_ADDが加算されない。つまり、加算トルクPi_ADDが増大したとしても、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しない。したがって、図16に示すように、点火時期は点Bに対応するT5に設定される。点Bにおけるリタード量Rtd2はT2-T5であり、トルクリザーブ量Rsrv2はTq2-Tq4となる。
前述の通り、実充填効率Ecが増大するとエンジン10で生成されるトルクが増大するため、トルク値Tq2はTq1よりも大きい。したがって、トルクリザーブ量Rsrv2は上記のトルクリザーブ量Rsrv1よりも大きく、加算トルクPi_ADDの増大によってトルクの余裕分が増加したことになる。一方、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq3から変化しないため、実際にエンジン10から出力されるトルクの大きさは変化せず、トルクリザーブ量のみが増大する。したがって、エアコン装置の起動時にトルクショックが発生するようなこともない。
加算トルク演算部2dでの次の演算周期では、タイマーの値Tが初期値Tstよりも減少した状態となるため、条件1は成立しない。一方、エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過するまでの間、すなわち、タイマーの値TがT>0である場合には、点火指標Kが第一指標K1以上であれば条件3が成立する。したがって、第三補正量設定部30において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
点火指標Kは、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルク演算部4dで演算された実トルクPi_ACT_MBTとの比〔 K=(Pi_TGT)/(Pi_ACT_MBT) 〕であるから、例えば点Bの制御状態では、K=Tq4/Tq2である。この値が第一指標K1以上であるのは、点火時期が比較的MBTに近いとき、すなわちトルクリザーブ量が比較的小さい点火状態であるときである。
加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算されると、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDがさらに増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量がさらに増量するようにETV15の開度が制御される。このとき、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、制御状態は点C方向に移動する。このような制御により、トルクリザーブ量がさらに増大する。このときのトルクリザーブ量Rsrv3は上記のトルクリザーブ量Rsrv2よりもさらに大きいTq3-Tq4となる。
エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過する前に点Cの制御状態に到達し、この点Cでの点火指標K=Tq4/Tq3がK1未満(ただしK2以上)になると、条件4が成立する。これにより、補正量保持設定部31において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDがそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。したがって、制御状態は点Cの位置に維持され、トルクリザーブ量Rsrv3もTq3-Tq4のまま維持される。
エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過すると、タイマーの値Tが0になる。これにより、P/S負荷がない限り条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。これにより、第四補正量設定部32において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算され、減算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。このとき、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、制御状態は点B方向に移動する。また、このような減算が繰り返されると加算トルクPi_ADDの値は最終的には0となり、点Aの制御状態となる。
なお、エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過していなくても、点火指標KがK2未満になるまで点火時期が遅角した場合には、P/S負荷がない限り条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。したがって、加算トルクPi_ADDが減少補正されるのに伴って、気筒内に導入される空気量が減量するようにETV15の開度が制御される。
このように、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合には、オン操作された直後の加算トルクPi_ADDの演算で第一補正量が加算され、その後所定時間が経過するまでの間は、点火指標Kの条件に応じて加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算される。また、点火時期の遅角量が増大してトルクリザーブ量が十分に確保された場合や所定時間が経過した場合には、加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算される。
上記の制御は、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合だけでなく、CVT装置のシフトレバーが非走行レンジから走行レンジへと切り換えられた場合や、各種電装品のメインスイッチがオフからオンに操作された場合にも同様に実施される。
[4−2.ステアリング操作時]
一方、エンジン10のアイドル運転時にステアリング操作が入力された場合には、エアコン装置の場合とは異なる制御が実施される。
例えば、ステアリング操作が入力されると、操作角度θ_SASがステアリング角度センサ8からエンジンECU1の要求トルク演算部2に伝達される。アイドル要求トルク設定部2aでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアイドル要求トルクPi_NeFBが演算され、これが目標トルク演算部3に伝達される。なお、アクセル要求トルクPi_APS,点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTについても、上記のエアコン装置の場合と同様に演算される。
また、加算トルク演算部2dのP/S負荷判定部22では、操作角度θ_SASの情報から、外部負荷が変動する可能性があると判定される。このとき、点火指標Kが第一指標K1以上であれば、ステアリング操作中は常に条件2が成立する。したがって、第二補正量設定部29において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
したがって、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDが加算トルクPi_ADD分だけ増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量が一度に増量するようにETV15の開度が制御される。また、これに伴って吸気流量Qが増大し、実充填効率Ecも第二所定値Ec2まで増大する。
これに対して、目標トルク演算部3での点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、点火時期は点Bに対応するT5に設定される。点Bにおけるリタード量Rtd2はT2-T5であり、トルクリザーブ量Rsrv2はTq2-Tq4となる。つまり、加算トルクPi_ADDの増大によって、エンジン10から出力されるトルクの余裕分が増加する。一方、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq3から変化しないため、実際にエンジン10から出力されるトルクの大きさは変化せず、トルクリザーブ量のみが増大する。したがって、ステアリング操作時にトルクショックが発生するようなこともない。
第二補正量設定部29による加算トルクPi_ADDの増加補正には時間的制約がないため、ステアリング操作の入力中は常に継続される。これにより、制御状態は点C方向に移動する。例えば、点Cの制御状態において点火指標K=Tq4/Tq3がK1未満(ただしK2以上)になると、条件4が成立する。これにより、補正量保持設定部31において加算トルクPi_ADDが保持され、制御状態は点Cの位置に維持される。
あるいは、点火指標KがK2未満になるまで点火時期が遅角した場合には、条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。したがって、加算トルクPi_ADDが減少補正されるのに伴って、気筒内に導入される空気量が減量するようにETV15の開度が制御される。
また、ステアリングホイールの操作位置が中立位置まで戻されると、P/S負荷判定部22においてステアリング操作に係る外部負荷が変動する可能性がないと判定され、条件5が成立する。この場合も加算トルクPi_ADDが減少補正され、吸入空気量を絞るようにETV15の開度が制御される。
[5.効果]
このように、上述の制御装置によれば、外部負荷の状態に応じて複数のパターンの加算トルクPi_ADDが設定され、これに基づいてエンジン10に導入される空気量が制御されるため、外部負荷の変動を考慮した多様なトルクベース制御を実現することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させることができるとともに、燃費を改善することができる。
また、上述の制御装置によれば、加算トルクPi_ADDが増大補正されるのは、条件判定部26で条件1〜3の何れかが成立したときのみであって、外部負荷の変動が検出された場合に限られるため、加算トルクPi_ADDが大きくなりすぎるような事態を防止することができ、燃費を改善することができる。
また、上述の制御装置では、加算トルクPi_ADDの値が、エアコン装置の主電源スイッチやCVT装置のシフトレバー,各種電装品のメインスイッチの操作状態に応じて設定される。つまり、外部負荷装置の作動状態に基づいて外部負荷の変動を検出しているため、トルクの余裕分を増大補正するタイミングを容易かつ正確に判断することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ燃費を向上させることができる。
このように、エンジン10が不安定になりやすい状態でのみ安定性を向上させることができる。また、エンジン10が不安定になりにくい状態では加算トルクPi_ADDの値を減少させる(例えば、0にする)ことで空気量を減少させることができ、燃費を改善することができる。
また、上述の制御装置では、外部負荷の変動に応じて加算トルクPi_ADDが増大補正されるだけでなく、さらに点火時期に応じて加算トルクPi_ADDの値が補正されるため、過剰に目標トルクが大きく設定されるような事態を防止しつつ、適正な目標トルクを設定することができる。この点でもエンジン10の運転状態の安定性を向上させることができるとともに、燃費を改善することができる。
また、加算トルクPi_ADDの補正手法と点火時期との関連について、上述の制御装置では、図13に示すように、点火指標KがK1以上である場合に加算トルクPi_ADDを増大補正し、点火指標KがK2未満である場合には加算トルクPi_ADDを減少補正している。つまり、加算トルクPi_ADDを増大補正するタイミングとして、トルクリザーブ量が小さい場合を選択しており、トルクリザーブ量が十分に確保されているときには加算トルクPi_ADDを減少補正することでトルクリザーブ量の適正化を図っている。
このように、点火時期が進角寄りである場合に加算トルクPi_ADDを増大させることで、トルクリザーブ量を増大させることができ、エンジン10の運転状態の安定性をより向上させることができる。
また、点火時期が遅角寄りである場合には加算トルクPi_ADDを減少させることで、トルクリザーブ量を減少させることができ、燃費をより向上させることができる。
さらに、点火指標Kが第一指標K1未満、かつ、第二指標K2以上である場合には、加算トルクPi_ADDの値がそのまま保持されるため、トルクリザーブ量を一定範囲内に収束させることができ、エンジン10の安定性及び燃費のバランスのよい状態を維持することができる。
なお、仮に吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを増大させると同時に点火制御用目標トルクPi_TGTも増大させて、点火時期をリタードさせないことも考えられる。しかしこの場合、上述の制御と比較してトルクリザーブ量が減少することになる。これに対して、本実施形態の制御装置では、吸気量を増大させる制御と同時に点火時期のリタードを実施しており、実充填効率Ecの増大によるトルク増分を、点火時期のリタードによって相殺している。したがって、実際のエンジン10の出力トルクを変動させることなくトルクリザーブ量を増大させることができ、負荷変動に対する安定性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の制御装置では、点火時期のリタードと同時に吸気量を増大させる制御を実施するにあたって、加算トルクPi_ADDを吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算のみに反映させ、点火制御用目標トルクPi_TGTの演算には反映させない演算プロセスを備えている。このように、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDのみを増大させることで、MBTで得られる最大トルクを確実に増大させることができる。つまり、実際のエンジン10の出力トルクを変動させることなく、トルクリザーブ量を確実に増大させることができ、制御のロバスト性を向上させることができる。
また、上述の制御装置では、エンジン10の運転状態が外部負荷の変動の影響を受けやすい(不安定になりやすい)アイドル運転状態であるときに加算トルクPi_ADDを増大させる構成を備えている。したがって、効果的にエンジン10の安定性を向上させることができる。
なお、アイドル運転状態でないときには、上記の条件1〜条件4が成立せず、条件5が成立することになるため、加算トルクPi_ADDが減少補正され、最終的には0となる。このように、アイドル運転状態でないときや外部負荷の変動が検出されないときに加算トルクPi_ADDを減少させることにより、過剰な空気量の増大を抑制することができ、効果的に燃費を向上させることができる。
また、加算トルクPi_ADDの補正手法に関して、上述の制御装置では外部負荷装置の種類に応じて異なる大きさのトルクを設定可能である。例えば、ステアリング操作に対しては第二補正量に基づく補正が可能である一方、エアコン装置やCVT装置,各種電装品の操作に対しては第三補正量に基づく補正が可能である。したがって、外部負荷装置の種類に応じた適切な大きさの加算トルクPi_ADDを演算することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ燃費を向上させることができる。特に、油圧パワーステアリング装置は、外部負荷装置の中でも負荷の変動が大きいため、操作中には常時、加算トルクPi_ADDを増大させることで、エンジンの運転状態の安定性を向上させる一助となる。
さらに、上述の制御装置では、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間に基づいて加算トルクPi_ADDの値の補正手法が変更される。これにより、例えば所定時間が経過すれば負荷変動が安定するような油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷装置に対して、適切な大きさの加算トルクPi_ADDを演算することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ、より一層燃費を向上させることができる。
しかも、このエンジン制御に用いるMBTは、第1実施形態又は第2実施形態にかかるMBT点火時期演算装置100によって高精度に求めたものなので、エンジン制御の精度も向上する。特に、エンジンをトルクベースで制御する際に目標点火時期をMBT点火時期から遅角させて設定する場合には、MBT点火時期の精度が制御精度に大きく影響するが、このMBT点火時期の算出精度の向上がかかるトルクベース制御の精度向上に大きく寄与する。
[6.変形例等]
上述した第3実施形態に限らず、本発明にかかるエンジンの制御装置は、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記の実施形態では、要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4の各機能を備えたエンジンECU1を例示したが、エンジンECU1の具体的な制御構成はこれに限定されない。少なくとも、外部負荷が要求する要求トルク(例えば、外部負荷要求トルクPi_AUX)をその外部負荷の状態に応じて補正する(例えば、加算トルクPi_ADDを加算補正する)手段と、補正後の要求トルクに応じたエンジン10の目標トルクを設定する手段と、その目標トルクがエンジン10から出力されるように空気量を制御する手段とを備えた電子制御装置であれば、上記の技術効果を奏するものとなる。したがって、具体的な制御構成については適宜追加、あるいは簡素化することが可能である。
また、上述の第3実施形態では、エンジン10のトルクベース制御において、点火制御に係る点火制御用目標トルクPi_TGT及び吸気制御に係る吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの二種類の目標トルクを並行して演算するものを例示したが、少なくとも吸気制御に係る吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを演算するものであればよい。
また、上述の実施形態における条件1〜条件5の具体的な内容は任意に設定することができ、補正手法をさらに追加することも可能である。補正条件を追加することでより正確かつきめの細かい制御が可能となり、エンジン10の安定性をさらに向上させることができるとともに、無用なトルクリザーブ量の増大を回避することができ、燃費をさらに向上させることができる。
また、上述の第3実施形態では、点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルクPi_ACT_MBTとの比を点火指標Kとして条件2〜条件4で判定するものを例示したが、点火指標Kの演算手法はこれに限定されない。例えば、点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルクPi_ACT_MBTとの差に基づいて遅角又は進角の度合いを把握してもよい。つまり、点火制御用目標トルクPi_TGT及び実トルクPi_ACT_MBTの相違の度合いと点火時期の進角又は遅角の度合いとの相関に着目した演算手法を用いれば、適切なトルクリザーブ量を確保するのに必要な点火時期を把握することが可能であり、上記の技術効果を奏するものとなる。
また、上述の第3実施形態の制御内での点火指標Kと加算トルクPi_ADDの補正量との関係に着目すると、例えば点火指標Kが第一指標K1からわずかに進角寄りであった場合でも、点火指標Kが第一指標K1から大きく進角寄りであった場合でも、補正量自体は変化していない。一方、上述のような制御に代えて、又は加えて、点火指標Kの第一指標K1,第二指標K2からの進角量,遅角量(ずれ量)に応じて加算トルクPi_ADDを増減補正することも考えられる。例えば、第一指標K1,第二指標K2からの進角量,遅角量(ずれ量)に応じて設定される係数を第一補正値〜第四補正値に乗算する構成としてもよいし、上記のずれ量に応じて予め設定された所定の補正値を第一補正値〜第四補正値に加算する構成としてもよい。
これらの場合、例えば進角量が大きいほど、あるいは遅角量が小さいほど加算トルクPi_ADDを増大させることにより、トルクリザーブ量を増大させることができ、エンジンの運転状態の安定性をより向上させることができる。また、例えば進角量が小さいほど、あるいは遅角量が大きいほど加算トルクPi_ADDを減少させることにより、トルクリザーブ量を減少させることができ、燃費をより向上させることができる。トルクリザーブ量は、点火時期がMBTであるときに最小となり、MBT点火時期からのずれ量が大きいほど増大する特性がある。したがって、ずれ量と補正値の増減量との関係は、このような特性と確保したいトルクリザーブ量とに応じて多様に設定することができる。
なお、上述の実施形態のエンジン10の燃焼形式は任意である。少なくとも、トルクベース制御が実施されるエンジン全般に適用可能であり、リーンバーンエンジンや可変バルブリフト機構を持ったエンジン等にも適用することができる。
<その他>
以上、本発明のMBT点火時期演算装置にかかる実施形態を二例説明し、このMBT点火時期演算装置を用いたエンジンの制御装置を一例説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明のMBT点火時期演算装置は、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づいて、MBT点火時期の基準値を算出し、機関温度及びエンジン回転速度に応じて、或いは、機関温度,エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて基準値を補正することで、MBT点火時期を高精度に求めることができるものであり、上記の実施形態で説明したように、これに更なるエンジンの運転状態パラメータに基づく補正を適宜加えることができ、これによって、より一層MBT点火時期を高精度に求めることができる。
また、このMBT点火時期演算装置を用いたエンジンの制御装置としては、要求トルクを設定し、この要求トルクに基づきエンジンの目標トルクを演算し、この目標トルクに基づきエンジンの出力トルクを制御するものであって、目標トルクに対応したエンジンの目標点火時期を、MBT点火時期算出装置により算出されたMBTに基づいて設定し、エンジンの点火時期を目標点火時期に制御するものであれば、効果的である。
特に、第三実施形態の装置のように、エンジンの目標点火時期をMBT点火時期から遅角させて設定するものに適用すれが、より効果的である。
もちろん、点火時期をMBT点火時期に制御する場合に用いるなど、MBT点火時期を利用する種々のエンジン制御に広く利用することができる。
1 エンジンECU
2 要求トルク演算部(設定手段)
2a アイドル要求トルク設定部
2b アクセル要求トルク演算部(第一演算手段)
2c 最終要求トルク演算部(第二演算手段)
2d 加算トルク演算部
3 目標トルク演算部(目標トルク演算手段)
4 制御部
4a 点火制御部(点火時期制御手段)
4h 吸気制御部(制御手段)
5 アクセルペダルセンサ(アクセル操作量検出手段)
6 クランク角度センサ(エンジン回転速度検出手段)
8 ステアリング角度センサ(ステアリング角度検出手段)
9 車速センサ(車速検出手段)
10 エンジン
21 アイドル条件判定部(アイドル検出手段)
22 P/S負荷判定部(外部負荷変動取得手段)
23 T/M負荷印加判定部(外部負荷変動取得手段)
24 A/C負荷印加判定部(外部負荷変動取得手段)
25 電気負荷印加判定部(外部負荷変動取得手段)
26 条件判定部
27 タイマー部
28 第一補正量設定部(トルク補正手段)
29 第二補正量設定部(トルク補正手段)
30 第三補正量設定部(トルク補正手段)
31 補正量保持設定部(トルク補正手段)
32 第四補正量設定部(トルク補正手段)
100 MBT点火時期演算装置
110 運転状態取得手段
111 エンジン回転速度センサ
112 充填効率算出部
113 水温センサ
114 気圧センサ
115 開閉タイミング設定部(開閉タイミング取得部)
116 空燃比設定部(空燃比設定手段)
117 EGR率設定部
120,220 演算部
121,221 MBT基準値算出部(MBT基準値算出手段)
122,222 MBT補正部(MBT補正手段)
123,223 空燃比対応補正部
124,224 EGR率対応補正部
125,225 温度対応補正部
126,226 気圧対応補正部

Claims (11)

  1. エンジンの最も出力の出る点火時期であるMBT点火時期を、前記エンジンの運転状態に基づいて算出する装置であって、
    前記エンジンのエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づいて、前記MBT点火時期の基準値を算出するMBT基準値算出手段と、
    前記MBT基準値算出手段により算出された前記基準値に対して、前記エンジンの運転状態を示す運転状態パラメータの値に応じた補正を行なうMBT補正手段と、を備え、
    前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジン回転速度及び前記エンジンの温度である機関温度を取得し、前記エンジン回転速度及び前記機関温度に応じて前記基準値を補正する温度対応補正部を有する
    ことを特徴とする、MBT点火時期演算装置。
  2. 前記温度対応補正部は、前記運転状態パラメータとして前記エンジン負荷を更に取得し、前記エンジン回転速度,前記機関温度及び前記エンジン負荷に応じて前記基準値を補正する
    ことを特徴とする、請求項1記載のMBT点火時期演算装置。
  3. 前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンの周囲の気圧を取得し、前記気圧に応じて前記基準値を補正する気圧対応補正部を有する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載のMBT点火時期演算装置。
  4. 前記MBT基準値算出手段は、前記エンジン回転速度,前記エンジン負荷及び前記エンジンに装備された可変バルブタイミング機構によって変更する吸気バルブの開閉タイミングに基づいて、前記基準値を算出する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のMBT点火時期演算装置。
  5. 前記エンジンの空燃比を設定する空燃比設定手段を備え、
    前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンの空燃比を取得し、前記空燃比に応じて前記基準値を補正する空燃比対応補正部を有する
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のMBT点火時期演算装置。
  6. 前記エンジンには、排ガス再循環システムが装備され、
    前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータとして前記エンジンに装備された排ガス再循環システムにより吸気に還流される排ガスの割合であるEGR率を取得し、前記EGR率に応じて前記基準値を補正するEGR率対応補正部を有する
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のMBT点火時期演算装置。
  7. 前記MBT補正手段は、前記運転状態パラメータの値に応じて補正量を設定し、前記基準値に前記補正量を加減算することにより前記補正を実施する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のMBT点火時期演算装置。
  8. 前記補正量には、上限値が設定されている
    ことを特徴とする、請求項7記載のMBT点火時期演算装置。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載のMBT点火時期演算装置と、
    車両に搭載されたエンジンに対する要求トルクを設定する設定手段と、
    前記要求トルクに基づき、前記エンジンの目標トルクを演算する目標トルク演算手段と、
    前記目標トルクに基づき、前記エンジンの出力トルクを制御するトルク制御手段と、
    前記目標トルクに対応した前記エンジンの目標点火時期を、前記MBT点火時期演算装置により算出された前記MBT点火時期に基づいて設定する目標点火時期設定手段と、
    前記エンジンの点火時期を前記目標点火時期に制御する点火時期制御手段と、を備えることを特徴とする、エンジンの制御装置。
  10. 前記目標点火時期設定手段は、前記エンジンの目標点火時期を、前記MBT点火時期から遅角させて設定する
    ことを特徴とする、請求項9記載のエンジンの制御装置。
  11. 前記エンジンに外部負荷を与える外部負荷装置の作動状態に基づいて、前記外部負荷の変動を取得する外部負荷変動取得手段と、
    前記外部負荷変動取得手段の取得結果に応じて、前記設定手段で設定された前記要求トルクを補正するトルク補正手段と、を備え、
    前記トルク補正手段は、
    前記外部負荷変動取得手段で前記外部負荷の変動が取得された時に、前記変動に対応するためのトルク増分を前記設定手段で設定された前記要求トルクに加算して増分補正要求トルクを求め、
    前記MBT点火時期からの遅角量に応じて、前記増分補正要求トルクを増減させる
    ことを特徴とする、請求項9又は10記載のエンジンの制御装置。
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