JP2014234363A - 有機リン化合物、エポキシ樹脂組成物、及び有機リン化合物の製造方法 - Google Patents

有機リン化合物、エポキシ樹脂組成物、及び有機リン化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノン−ハロゲンの難燃剤として好適な新規の化合物、及びその製造方法、並びに前記化合物を用いたエポキシ樹脂組成物の提供。【解決手段】一般式(I)で表される有機リン化合物;(Ia)で表される化合物と、(Ib)で表される化合物とを反応させる、有機リン化合物の製造方法。R1−R2はアリル基、R3−R6はH等、X1は脱離基を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、新規の有機リン化合物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物に関する。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が知られており、なかでもエポキシ樹脂は、特に秀でた特性を有するため、電気・電子絶縁材料、塗料、接着材料、複合材料等に広く使用されている。しかし、これらの熱硬化性樹脂は可燃性であり、これら樹脂に難燃性を付与するために、従来は臭素化BPA等の高ハロゲン含量のハロゲン系難燃剤が多量に使用されてきた。
しかしながら、ハロゲン系難燃剤は、燃焼時に有毒なダイオキシン等の有毒ガスを放出する等の問題点があり、特に近年の環境問題から、難燃剤にも低ハロゲン含量のものが要求されるようになってきた。
加えて産業界では、電子素子等の高速化・高集積化が進み、これらを形成する電子部品の小型化・軽量化・薄型化が求められてきた。これに伴って、難燃化剤にも難燃性能に加えて、ノン−ハロゲン等の高品質化が要求される様になってきた。例えば、半導体封止剤等では、封止剤中に残存する微量のハロゲン化合物が銅ワイヤーを腐食するという問題点があり、微量の残存ハロゲンが基板の信頼性に著しい悪影響をあたえていた。そこで、難燃剤として、ハロゲン化合物を含まないもの(ノン−ハロゲンのもの)が切望されている。
これに対して、非ハロゲン系難燃剤として各種含リン系難燃剤が提案されている。
このようなものとして、例えば、リン酸エステル等のリン系難燃剤が開示されている(特許文献1及び2参照)。
また、環状有機リン化合物が反応性難燃剤として開示されている(特許文献3〜5参照)。
さらに、フェノール性水酸基をアリル基で保護した化合物が反応性難燃剤として開示されている(特許文献6参照)。
特開2002−20394号公報 特開2002−80633号公報 特開昭61−236787号公報 特開平5−331179号公報 特開2001−302686号公報 特開2006−63243号公報
しかし、特許文献1及び2で開示されているリン系難燃剤は、樹脂の成形加工時における熱安定性が低く、樹脂からブリードアウトし、難燃性が不十分になってしまうため、高濃度に配合する必要があるという問題点があった。
また、特許文献3〜5で開示されている反応性難燃剤は、高融点で各種溶媒への溶解性が低いため、多量の溶媒が必要であり、多量の溶媒を使用しても溶け残ることがあるという問題点があった。加えて、この反応性難燃剤は、エポキシ樹脂等との相溶性が低いため、エポキシ樹脂と均一に混練できない、樹脂中に溶解せずに固体状態で不均一に存在する、成形加工等においてその機能が発揮されずに樹脂からブリードアウトする等の欠点があり、結果として難燃性が不十分になってしまうなど、樹脂加工品の品質を損なうという問題点があった。
また、特許文献6で開示されている反応性難燃剤は、溶媒への溶解性や樹脂との相溶性は良好であるものの、エポキシ樹脂との反応性を有するフェノール性水酸基がアリル基で保護されているため、そのままではエポキシ基とは反応しない。このようなフェノール性水酸基がアリルエーテル化された環状の有機リン化合物がエポキシ樹脂と反応することは、従来知られていない。そこで、この反応性難燃剤は、難燃性付与の対象が、電子・電気材料分野で汎用されているエポキシ樹脂ではなく、電子線やラジカル発生剤の存在下で硬化される、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂に限定されていた。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、ノン−ハロゲンの難燃剤として好適な新規の化合物、及びその製造方法、並びに前記化合物を用いたエポキシ樹脂組成物の提供を課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(I)で表される有機リン化合物を提供する。
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアリル基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R及びRが水素原子以外の基である場合、R及びRは相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよく;ただし、R〜Rのいずれか1〜3個はアリル基であり;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共にアリル基である場合には、R及びRは共に水素原子ではなく、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共に水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRのいずれか一方がアリル基で、他方が水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではない。)
本発明の有機リン化合物は、下記一般式(I)−1〜(I)〜7のいずれかで表されるものが好ましい。
(式中、Rは前記と同じであり;nは1又は2である。)
また、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含有し、前記硬化剤が上記本発明の有機リン化合物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、下記一般式(Ia)で表される化合物と、下記一般式(Ib)で表される化合物とを、遷移金属触媒の存在下で反応させて、上記本発明の有機リン化合物を得る工程を有することを特徴とする有機リン化合物の製造方法を提供する。
(式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R’及びR’が水素原子以外の基である場合、R’及びR’は相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよい。)
(式中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシロキシ基、一般式「−O−C(=O)−OR91(式中、R91はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、カルバメート基、一般式「−O−SO−R92(式中、R92はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、ホスフェート基、ホスホニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアリールオキシ基であり、Xがアシロキシ基である場合には、アシル基中の水素原子がアリルオキシカルボニル基で置換されていてもよい。)
本発明の有機リン化合物の製造方法は、前記遷移金属触媒が、周期表の第8族〜第12族のいずれかの遷移金属と、錯化剤とからなることが好ましい。
また、本発明は、原料として上記本発明の有機リン化合物を加熱して、アリル基をクライゼン転位させることにより、前記原料とは異なる上記本発明の有機リン化合物を新たに生じさせる工程を有することを特徴とする有機リン化合物の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記本発明の製造方法で得られ、ハロゲンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする有機リン化合物を提供する。
本発明によれば、ノン−ハロゲンの難燃剤として好適な新規の化合物、及びその製造方法、並びに前記化合物を用いたエポキシ樹脂組成物が提供される。
実施例1で得られた化合物(I)−101のIRデータである。 実施例2で得られた化合物(I)−102のIRデータである。 実施例3で得られた化合物(I)−801のIRデータである。 実施例4で得られた化合物(I)−901のIRデータである。 実施例5で得られた化合物(I)−301のIRデータである。
<有機リン化合物>
本発明に係る有機リン化合物は、下記一般式(I)で表されるもの(以下、「化合物(I)」と略記することがある)であり、優れた難燃性を有する。
化合物(I)は、その構造中にハロゲンを含まないノン−ハロゲンの化合物であり、ハロゲン化合物を用いずに製造することも可能であり、環境への負荷が小さく、電気・電子部品の樹脂加工品材料や半導体封止剤材料としても好適である。
また、化合物(I)は、融点が低く、溶媒への溶解性が高く、エポキシ樹脂等の難燃性付与の対象物との相溶性及び混錬性にも優れ、化合物(I)とエポキシ樹脂等を用いた樹脂組成物を、特に効率的に製造できる。
また、化合物(I)は、フェノール性水酸基がエポキシ樹脂と反応することで、リン原子を含有する成分がエポキシ樹脂に組み込まれて、難燃性を発現するが、R及びRがアリル基であっても、加熱によってクライゼン転位(Claisen Rearrangement)が生じ、アリル基が転位してフェノール性水酸基を有する構造となるので、化合物(I)は、エポキシ樹脂との反応性に優れ、潜在反応性を有するといえるものである。
このように、化合物(I)は、エポキシ樹脂等と均一に反応した樹脂組成物、及び難燃性硬化物を形成可能である。
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアリル基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R及びRが水素原子以外の基である場合、R及びRは相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよく、ただし、R〜Rのいずれか1〜3個はアリル基であり;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共にアリル基である場合には、R及びRは共に水素原子ではなく、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共に水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRのいずれか一方がアリル基で、他方が水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではない。)
式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアリル基(2−プロペニル基)である。
また、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基である。
〜Rにおける前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜10であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基が例示できる。
環状の前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、多環状である場合、その環員数は2以上であれば特に限定されない。
環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示でき、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、上記で例示したものが挙げられる。
〜Rにおける前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、多環状である場合、その環員数は2以上であれば特に限定されない。
前記アリール基は、炭素数が6〜12であることが好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が例示でき、さらに、これらアリール基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、あるいはアリール基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基、並びにアリール基としては、上記で例示したものが挙げられる。
〜Rにおける前記アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)等、R〜Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)で置換されてなる基が例示でき、二重結合の位置は特に限定されない。
前記アルケニル基は、炭素数が2〜10であることが好ましい。
〜Rにおける前記アラルキル基としては、ベンジル基(フェニルメチル基)、1−メチルベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)等、R〜Rにおける前記アルキル基の1個の水素原子が、R〜Rにおける前記アリール基で置換されてなる基が例示できる。
前記アラルキル基は、炭素数が7〜22であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。
及びRが水素原子以外の基である場合、R及びRは相互に結合して、これらが結合している炭素原子と共に、水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよい。すなわち、R及びRは相互に結合して、これらが結合しているベンゼン環骨格(−OR、−OR、−Rが結合している環骨格)とあわせて、ナフタレン環骨格を形成していてもよく、新たに形成された環の水素原子はアルケニル基で置換されていてもよい。
水素原子を置換するアルケニル基としては、R〜Rにおける前記アルケニル基と同じものが例示できる。
アルケニル基で置換される水素原子の数は特に限定されないが、0〜2であることが好ましい。また、アルケニル基で置換される水素原子の位置は特に限定されない。
化合物(I)において、R〜Rは上記のとおりであるが、これらのうちR〜Rのいずれか1〜3個はアリル基である。
また、R及びRが相互に結合してベンゼン環を形成しない場合には、以下の(i)〜(iv)のものは、化合物(I)には含まれない。
(i)R及びRが共にアリル基で、R及びRが共に水素原子であるもの
(ii)R、R、R及びRが共にアリル基であるもの
(iii)R及びRが共に水素原子で、R及びRは共にアリル基であるもの
(iv)R及びRのいずれか一方がアリル基で、他方が水素原子であり、R及びRが共にアリル基であるもの
化合物(I)で好ましいものとしては、下記一般式(I)−1〜(I)〜7のいずれかで表されるもの(以下、それぞれ「化合物(I)−1」〜「化合物(I)〜7」と略記することがある)が例示できる。化合物(I)−1、(I)−2、(I)−4及び(I)−5は、一般式(I)において、水素原子以外の基であるR及びRが相互に結合して、ベンゼン環を形成しているものである。
(式中、Rは前記と同じであり;nは1又は2である。)
式中、Rは一般式(I)におけるRと同じである。
また、nは1又は2である。
化合物(I)−3は、符号nを付したアリル基が、ベンゼン環骨格を構成する3’位、4’位及び6’位のいずれの炭素原子に結合していてもよいが、3’位及び6’位の両方の炭素原子に結合することはない。
化合物(I)でより好ましいものとしては、以下のものが例示できる。
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−3’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−4’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−6’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−3’,4’−ジアリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−2’,6’−ジアリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−3’,4’,6’−トリアリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−3’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’−ヒドロキシ−5’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(5’−ヒドロキシ−2’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’−ヒドロキシ−5’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−フェニル−9,10−ジヒドロ−10−(2’−ヒドロキシ−5’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジアリルオキシ−3’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジアリルオキシ−4’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジアリルオキシ−6’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−メチル−9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジアリルオキシ−3’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−イソプロピル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−フェニル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’−ヒドロキシ−3’−アリル−4’−アリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−エチル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’−ヒドロキシ−3’−アリル−4’−アリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、
8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’−ヒドロキシ−3’−アリル−4’−アリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド
構造式で示すと、化合物(I)でより好ましいものとしては、下記式(I)−101〜(I)−102、(I)−201、(I)−301〜(I)−303、(I)−401〜(I)−402、(I)−501、(I)−801〜(I)−802、(I)−901〜(I)−904、(I)−1001〜(I)−1002で表されるもの(以下、それぞれ「化合物(I)−101」等と略記することがある)が例示できる。
化合物(I)は、フェノール性水酸基の水素原子がアリル基で置換されているもので、特に融点が低く、溶媒への溶解性が高く、エポキシ樹脂等の難燃性付与の対象物との相溶性及び混錬性に優れる傾向にある。
化合物(I)は、例えば、下記一般式(Ia)で表される化合物(以下、「化合物(Ia)」と略記することがある)と、下記一般式(Ib)で表される化合物(以下、「化合物(Ib)」と略記することがある)とを、遷移金属触媒の存在下で反応させて、化合物(I)を得る工程を有する方法(以下、「製造方法(1)」と略記することがある)で製造できる。ただし、化合物(I)の製造方法はこれに限定されない。
(式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R’及びR’が水素原子以外の基である場合、R’及びR’は相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよい。)
(式中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシロキシ基、一般式「−O−C(=O)−OR91(式中、R91はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、カルバメート基、一般式「−O−SO−R92(式中、R92はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、ホスフェート基、ホスホニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアリールオキシ基であり、Xがアシロキシ基である場合には、アシル基中の水素原子がアリルオキシカルボニル基で置換されていてもよい。)
一般式(Ia)において、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、これらR’〜R’におけるアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基としては、一般式(I)のR〜Rにおける前記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基と同じものが例示できる。R’及びR’が水素原子以外の基である場合、R’及びR’は相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよい。
一般式(Ib)において、式中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシロキシ基、一般式「−O−C(=O)−OR91(式中、R91はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、カルバメート基、一般式「−O−SO−R92(式中、R92はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、ホスフェート基、ホスホニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアリールオキシ基であり、Xがアシロキシ基である場合には、アシル基中の水素原子がアリルオキシカルボニル基(−C(=O)−O−CH−CH=CH)で置換されていてもよい。
91及びR92における前記アルキル基、アラルキル基及びアリール基としては、R〜Rにおける前記アルキル基、アラルキル基及びアリール基と同じものが例示できる。
における前記ハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
における前記アシロキシ基としては、R〜Rにおける前記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基が、カルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
また、Xがアシロキシ基であり、そのアシル基中の水素原子がアリルオキシカルボニル基で置換される場合の置換数は、特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよいが、1個であることが好ましい。また、アリルオキシカルボニル基で置換される水素原子の位置は、特に限定されない。
における前記アルコキシ基としては、R〜Rにおける前記アルキル基が、酸素原子(−O−)に結合してなる一価の基が例示できる。
における前記アルケニルオキシ基としては、R〜Rにおける前記アルケニル基が、酸素原子(−O−)に結合してなる一価の基が例示できる。
における前記アリールオキシ基としては、R〜Rにおける前記アリール基が、酸素原子(−O−)に結合してなる一価の基が例示できる。
好ましい化合物(Ib)としては、アリルアルコール、アリルメチル炭酸エステル、アリルエチル炭酸エステル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、安息香酸アリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、トルエンスルホン酸アリル、リン酸アリルジメチルエステル、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル等が例示できる。
化合物(Ib)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できるが、通常は1種でも十分である。
化合物(Ib)の使用量は、特に限定されないが、化合物(Ib)中のアリル化に寄与し得る(化合物(Ia)をアリル化し得る)アリル基の量が、化合物(Ia)中のアリル化しようとする水酸基に対して、好ましくは1〜20モル当量、より好ましくは1〜5モル当量となる使用量であるとよい。
前記遷移金属触媒とは、遷移金属を用いた触媒を意味し、遷移金属は単体又は錯体として非酸化状態であってもよいし、例えば、カルボン酸塩、ハロゲン化物、酸化物、硝酸塩又は硫酸塩等の塩として酸化状態であってもよい。
遷移金属触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できるが、通常は1種でも十分である。
好ましい前記遷移金属としては、周期表の第8族〜第12族のもの(例えば、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、コバルト、白金、ニッケル、銅、オスミウム、鉄、亜鉛、銀、金)や、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム等が例示でき、白金族のもの(ロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金、オスミウム)がより好ましく、パラジウムが特に好ましい。
前記遷移金属触媒は、周期表の第8族〜第12族のいずれかの遷移金属と、錯化剤とからなるものが好ましい。
前記錯化剤は、遷移金属触媒の活性を安定させ、かつ増強するための配位子として作用するものである。錯化剤は、目的とする反応での使用前に、別途、遷移金属と混合(錯化)して用いてもよいし、遷移金属及び錯化剤をそれぞれ別々に反応液に添加して(in situで錯化して)用いてもよい。
好ましい前記錯化剤としては、有機モノホスフィン、有機ジホスフィン、有機亜リン酸エステル等のリン配位子;カルベン配位子;カルボニル配位子;アミン配位子等が例示でき、ホスフィン配位子(有機モノホスフィン、有機ジホスフィン)がより好ましく、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリ−(o,p,m)トリルホスフィン、トリス−p−メトキシフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリス−イソプロピルホスファイト、ジフェニルホスフィノエタン、スルホン化トリフェニルホスフィン等が例示でき、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、ジフェニルホスフィノエタンが特に好ましい。
錯化剤の量は、遷移金属1モルに対して0.1〜100倍モルであることが好ましく、1〜10倍モルであることがより好ましい。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応において、遷移金属触媒の使用量は特に限定されないが、遷移金属の量が化合物(Ia)中の水酸基に対して、好ましくは1×10−8モル当量(0.01モルppm)〜1モル当量、より好ましくは1×10−7モル当量(0.1モルppm)〜0.01モル当量となる使用量であるとよい。
反応溶媒は、化合物(Ia)、化合物(Ib)及び前記遷移金属触媒の種類に応じて、適宜選択すればよい。
好ましい反応溶媒としては、ヘキサン、デカン、ドデカン、灯油、軽油等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、メトキシプロパノール等のアルコール;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジアリルエーテル、ジベンジルエーテル等のエーテル;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、酢酸アリル等のエステル;アセトニトリル等のニトリル;ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;スルホラン等のスルホン等が例示できる。
また、例えば、化合物(Ib)を過剰量用いて、溶媒を兼ねて化合物(Ib)を用いてもよい。
反応溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応において、反応溶媒の使用量は、化合物(Ia)1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応において、反応温度は0〜150℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応において、反応時間は、他の反応条件に応じて適宜調節すればよいが、0.1〜24時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応は、大気雰囲気下で行ってもよいし、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
化合物(Ia)及び(Ib)の反応の終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(I)を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(I)を取り出せばよい。また、取り出した化合物(I)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(I)は、さらに、加熱してアリル基をクライゼン転位させることにより、異なる種類の化合物(I)とすることができる。すなわち、化合物(I)は、原料として異なる種類の化合物(I)を加熱して、アリル基をクライゼン転位させることにより、この原料とは異なる化合物(I)を新たに生じさせる工程を有する方法(以下、「製造方法(2)」と略記することがある)でも製造できる。
製造方法(2)においては、反応溶媒を用いてもよいし、用いなくてもよく、反応溶媒の使用量は、化合物(I)1質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜5質量部であることがより好ましい。
製造方法(2)で用いる反応溶媒は、製造方法(1)で用いる反応溶媒と同様でよい。
製造方法(2)においては、触媒を用いて反応を行ってもよい。
この場合の触媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等のアミド;ジメチルアミノピリジン、ピリジン、ナトリウムメトキシド(ソジウムメチラート)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の塩基性化合物;硫酸、塩酸、酢酸、無水酢酸等の酸性化合物;塩化アルミニウム;三フッ化ホウ素;4級アンモニウム塩;スルホニウム塩;イミダゾール塩;ホスホニウム塩等が例示できる。
触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できるが、通常は1種でも十分である。
製造方法(2)において、反応温度は100〜300℃であることが好ましく、150〜250℃であることがより好ましい。
製造方法(2)において、反応時間は、他の反応条件に応じて適宜調節すればよいが、0.1〜24時間であることが好ましく、0.1〜10時間であることがより好ましい。
製造方法(2)において、反応は大気雰囲気下で行ってもよいし、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
製造方法(2)において、反応の終了後は、製造方法(1)の場合と同様の方法で、化合物(I)を取り出せばよく、取り出した化合物(I)を精製してもよい。
化合物(I)は、上記の製造方法(1)及び(2)以外の方法でも製造でき、例えば、従来のように、アルカリ金属塩の存在下で、化合物(Ia)とハロゲン化アリルとを反応させて化合物(I)を得る工程を有するアリルエーテル化法でも製造できる。しかし、化合物(Ia)は、このようなアルカリ性条件下では不安定で加水分解され易く、副反応が多く生じて、化合物(I)の反応生成率及び選択率が低くなってしまい、数工程もの煩雑な精製操作も必要になるという問題点がある。さらに、この場合には、分離が困難な副生物として有機ハロゲン化物が形成されるという問題点もある。
これに対して、製造方法(1)は、反応を中性かつ温和な条件下(例えば、室温程度の反応温度)で行えるので、反応生成率及び選択率が高く、精製操作も省略可能であり、ノン−ハロゲンの化合物(I)が容易に得られ、例えば、Xがハロゲン原子ではない化合物(Ib)を用いることで、ハロゲンを含まない原材料を用いて、ハロゲンフリーの方法で化合物(I)が得られるなど、極めて優れた方法である。そして、製造方法(1)で得られた化合物(I)を製造方法(2)に供することにより、同様に、異なる種類のノン−ハロゲンの化合物(I)が容易に得られ、ハロゲンフリーの方法で化合物(I)を得ることも可能である。
上記の製造方法(1)及び(2)の方法で製造された化合物(I)は、ハロゲンの含有量を0.01質量%以下に抑制できる。
<エポキシ樹脂組成物>
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含有し、前記硬化剤が前記化合物(I)であることを特徴とする。
前記エポキシ樹脂組成物は、化合物(I)が難燃剤かつ硬化剤として機能するので、十分な難燃性及び硬化性を有する。
また、化合物(I)は、樹脂の成形加工時における熱安定性が高く、樹脂からのブリードアウト等が抑制されるので、前記エポキシ樹脂組成物は高い難燃性を維持できる。
また、前記エポキシ樹脂組成物は、加熱を伴わない通常の取扱い条件下では、化合物(I)がエポキシ樹脂と反応しないため、取扱い性が容易であり、しかも保存安定性が極めて高い。その一方で、化合物(I)は、硬化促進剤の共存下で加熱することにより、R又はRがアリル基であっても、このアリル基がクライゼン転位して、フェノール性水酸基を有する構造となる。
前記エポキシ樹脂組成物において、化合物(I)(硬化剤)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
前記エポキシ樹脂組成物において、化合物(I)の含有量は、エポキシ樹脂の含有量に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。化合物(I)の含有量が前記下限値以上であることで、高い難燃性を有する硬化物がより迅速に得られ、化合物(I)の含有量が前記上限値以下であることで、化合物(I)の過剰使用が抑制される。
前記エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂は特に限定されず、公知のものが使用できる。なお、本明細書において、「エポキシ樹脂」とは特に断りのない限り、硬化前のモノマー、オリゴマー及びポリマー(プレポリマー)を包括する概念とする。
好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック又はレゾルシノールノボラック等のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等のアルコールのグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸又はテトラヒドロフタル酸等のグリシジルエステル;アニリン又はイソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素がグリシジル基で置換されてなるもの等のグリシジル型(メチルグリシジル型を含む)エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合がエポキシ化されてなるビニルシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート又は2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;ビス(4−ヒドロキシ)チオエーテルのエポキシ化物;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;スチルベン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂等が例示できる。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
前記エポキシ樹脂組成物において、固形分の総含有量に占めるエポキシ樹脂の含有量は30〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量がこのような範囲であることで、所望の特性を有する硬化物がより安定して得られる。
前記エポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤は特に限定されず、塩基性及び酸性のいずれのものでもよく、公知のものが使用できる。
好ましい硬化促進剤としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、無水酢酸、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、エチルトリフェニルフォスホニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール及びその誘導体等が例示できる。ここで「誘導体」とは、その化合物の1個以上の水素原子がアルキル基等の置換基で置換されているものを意味する。
硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
前記エポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が前記下限値以上であることで、硬化物がより迅速に得られ、硬化促進剤の含有量が前記上限値以下であることで、硬化促進剤の過剰使用が抑制される。
前記エポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、エポキシ樹脂、化合物(I)及び硬化促進剤以外に、その他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
前記その他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
前記その他の成分の一例としては、化合物(I)以外のその他の難燃剤が挙げられる。
前記その他の難燃剤としては、公知のものが挙げられ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−HQ)、9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−4’−メチル−フェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−Me−HQ)、9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−4’−tert−ブチル−フェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−t−Bu−HQ)、9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジヒドロキシナフチル)]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−NQ)、ジフェニルホスフィニルハイドロキノン、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート等の縮合リン酸エステル;シリコーン系難燃剤等が例示できる。
前記その他の成分の一例としては、溶媒も挙げられる。溶媒を含有することで、エポキシ樹脂組成物は粘度が容易に調節される。
ここで好ましい溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メトキシエチル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;メトキシプロパノール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示できる。
前記エポキシ樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、化合物(I)、硬化促進剤、及び必要に応じて前記その他の成分を直接混練する方法、エポキシ樹脂、化合物(I)、硬化促進剤、及び必要に応じて前記その他の成分を溶媒に溶解させて溶液を調製した後、この溶液から前記溶媒を除去する方法等で製造できる。
前記溶液を調製する場合、用いる溶媒としては、前記その他の成分として示したものが例示できる。また、この溶媒は、全量が除去されずに、一部がエポキシ樹脂組成物中に残存してもよい。
前記エポキシ樹脂組成物は、化合物(I)をはじめとする原料全般でノン−ハロゲンのものを用いることで、同様にノン−ハロゲンのものとすることができ、ハロゲンフリーとすることも可能である。したがって、前記エポキシ樹脂組成物は、ノン−ハロゲン等の高品質化が要求される半導体封止剤等の電子材料分野での利用に好適なものである。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<化合物(I)の製造>
[実施例1]
(触媒の調製)
シュレンクを窒素ガスで置換した後、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(300mg)、トリフェニルホスフィン(1300mg)をシュレンクに取り、無水THF(40ml)を加えた。そして、得られた液体を濃暗赤色から黄金色透明液に変化するまで室温で攪拌し、触媒溶液を調製した。
(9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−101)の製造)
攪拌機、温度計を付置した4つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、THF(50ml)、HCA−NQ(3.74g)、アリルメチル炭酸エステル(2.55g)を仕込み、内温を30℃に調整した。撹拌下、ここへ上記の触媒溶液(40μl)をマイクロシリンジで注加し、1時間撹拌して反応させた。
次いで、得られた反応液を薄層クロマトグラフィー(プレート:メルク社製「60F254シリカゲルプレート」、展開液:トルエン/酢酸エチル=10/1(体積比))で分析したところ、原料であるHCA−NQは消失して反応が完結していた。
反応液をエバポレーターで濃縮後、濃縮残渣にトルエンを加えて、結晶を析出させた。この結晶をろ取し、乾燥させて、白色結晶(収量4.27g、収率94%)を得た。
得られた白色結晶は、融点が119℃であった。また、FAB−MS分析の結果から、この白色結晶は分子量が454であることが確認され、さらに元素分析、IR分析、NMR分析の結果から、この白色結晶が化合物(I)−101であることが確認された。このときのIRデータを図1に示す。
さらに、イオンクロマトグラフィーにより、この化合物のハロゲン含有量を測定したところ、1ppm以下であった。
[実施例2]
(8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジアリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−102)の製造)
HCA−NQ(3.74g)に代えて、8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジヒドロキシナフチル)]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(BzCA−NQ)(4.64g)を用いた点以外は、実施例1と同様に反応、後処理及び取り出しを行い、白色結晶(収量5.07g、収率93%)を得た。このとき、反応は1時間で完結していた。
得られた白色結晶は、融点が158℃であり、IR分析の結果から、化合物(I)−102(前記式(I)−102で表される化合物)であることが確認された。このときのIRデータを図2に示す。
さらに、イオンクロマトグラフィーにより、この化合物のハロゲン含有量を測定したところ、1ppm以下であった。
[実施例3]
(9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジアリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−801)の製造)
HCA−NQ(3.74g)に代えてHCA−HQ(3.24g)を用いた点以外は、実施例1と同様に反応、後処理及び取り出しを行い、白色結晶(収量3.83g、収率95%)を得た。このとき、反応は1時間で完結していた。
得られた白色結晶は、融点が137℃であり、IR分析の結果から、化合物(I)−801(前記式(I)−801で表される化合物)であることが確認された。このときのIRデータを図3に示す。
さらに、イオンクロマトグラフィーにより、この化合物のハロゲン含有量を測定したところ、1ppm以下であった。
[実施例4]
(9,10−ジヒドロ−10−(2’−ヒドロキシ−5’−アリルオキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−901)の製造)
HCA−NQ(3.74g)に代えてHCA−HQ(3.24g)を用い、アリルメチル炭酸エステルの使用量を2.55gに代えて1.16gとした点以外は、実施例1と同様に反応を行った。
得られた反応液を濃縮後、濃縮残渣に酢酸エチルを加えて、結晶を析出させた。この結晶をろ取し、酢酸エチルで再結晶させた後、乾燥させて、白色結晶(収量1.71g、収率47%)を得た。
得られた白色結晶は、融点が225℃であり、IR分析の結果から、化合物(I)−901(前記式(I)−901で表される化合物)であることが確認された。このときのIRデータを図4に示す。
[実施例5]
(9,10−ジヒドロ−10−(2’,5’−ジヒドロキシ−4’−アリルフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−301)の製造)
実施例3で得られた化合物(I)−801(1.09g)、DMF(1.0ml)を10mlナスフラスコに仕込み、窒素ガス雰囲気下、湯浴により180℃で0.5時間加熱攪拌した。次いで、ナスフラスコを100℃の油浴により急冷した後、反応液にトルエンを加えて、結晶を析出させた。この結晶をろ取し、乾燥させて、白色結晶(収量0.95g、収率87%)を得た。
得られた白色結晶は、融点が217℃であり、IR分析の結果から、化合物(I)−301(前記式(I)−301で表される化合物)であることが確認された。このときのIRデータを図5に示す。
[実施例6]
(9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジヒドロキシ−3’−アリル)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−201)の製造)
9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’−ヒドロキシ−4’−アリルオキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(化合物(I)−401)(1g)、DMF(0.3ml)を10mlナスフラスコに仕込み、窒素ガス雰囲気下、湯浴により160℃で10分間加熱攪拌した。次いで、ナスフラスコを冷却した後、反応液に酢酸エチルを加えて加熱溶解させ、冷却することにより、結晶を析出させた。この結晶をろ取し、乾燥させて、白色結晶を得た。
得られた白色結晶は、融点が242℃であり、IR分析の結果から、化合物(I)−201(前記式(I)−201で表される化合物)であることが確認された。
実施例5及び6から明らかなように、フェノール性水酸基を保護していたアリル基は、加熱によってクライゼン転位し、フェノール性水酸基が新たに生じていた。
[比較例1]
窒素ガスで置換した温度計、冷却器、攪拌機を備えた反応器に、THF(30ml)、HCA−HQ(8.1g)、炭酸カリウム(4.1g)を仕込み、内温が40℃となるまで加温した。次いで、滴下ロートよりここへ塩化アリル(4.6g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、40℃で反応を5時間行ったが、反応はほとんど進行しなかった。
[比較例2]
THF(30ml)に代えてN,N−ジメチルアセトアミド(15g)を用い、炭酸カリウム(4.1g)に代えて28%ナトリウムメトキシド(11.6g)を用いた点以外は、比較例1と同様に反応を行った。その結果、40℃で3時間反応を行った段階で、反応液は著しく着色した。
下記条件でHPLCにより分析したところ、この反応液中の成分として、HCA−HQ以外に化合物(I)−1001(前記式(I)−1001で表される化合物)、化合物(I)−901、化合物(I)−801、その他の化合物(HCA−HQ、化合物(I)−1001、化合物(I)−901、及び化合物(I)−801以外の化合物)が観測され、これら化合物の比率は、HCA−HQ/化合物(I)−1001/化合物(I)−901/化合物(I)−801/その他の化合物=4.1/14.5/54.1/23.6/3.7(ピーク面積比)であった。
次いで、得られた反応液をろ過し、過剰分の塩化アリル及び溶媒を減圧下で留去した。そして、濃縮残渣を多量の氷水中に投入し、褐色の不溶物を析出させ、この不溶物をろ別した後、乾燥させて、著しく着色した褐色固形物を得た。
下記条件でHPLCにより分析したところ、この褐色固形物中の成分として、HCA−HQ、化合物(I)−1001、化合物(I)−901、化合物(I)−801、その他の化合物が観測され、これら化合物の比率は、HCA−HQ/化合物(I)−1001/化合物(I)−901/化合物(I)−801/その他の化合物=4.1/14.5/54.1/23.6/3.7(ピーク面積比)であった。
本反応は、化合物(I)−801を得る目的で行ったが、このように化合物(I)−801を選択的に高収率で得ることはできなかった。また、イオンクロマトグラフィーにより、この褐色固形物のハロゲン含有量を測定したところ、280ppmであった。
(HPLC分析条件)
分析機器:島津製作所社製「LC−10A」
カラム:ガスクロ工業社製「Inertsil 15mm*20cm」
分析条件:
溶離液・・・CHCN/0.05%HPO(60/40、体積比)
流速・・・1.0 ml/min
温度・・・25℃
検出波長・・・254nm
感度・・・×10
分析サンプル・・・試料/1mlTHFの溶液を調製し、その0.4μlをチャージ。
[実施例7]
化合物(I)−101を、示差熱分析計(島津製作所社製「DSC60」)での分析に供した。すなわち、窒素気流下において、この化合物を昇温速度10℃/分で加熱し、吸熱温度(融点)と、アリル基のクライゼン転位の温度(転位温度)と、アリル基のクライゼン転位に伴う転位反応熱(発熱量)を測定した。結果を表1に示す。
[実施例8〜11]
化合物(I)−101に代えて、化合物(I)−401(実施例8)、化合物(I)−801(実施例9)、化合物(I)−901(実施例10)、又は化合物(I)−402(前記式(I)−402で表される化合物)(実施例11)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法で、これら化合物について、前記吸熱温度(融点)、転位温度及び発熱量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例3〜4]
化合物(I)−101に代えて、HCA−HQ(比較例3)、又はHCA−NQ(比較例4)を用いた点以外は、実施例7と同様の操作を行ったが、表1に示すように、これら化合物はアリル基のクライゼン転位を生じないため、転位温度及び発熱量は測定できなかった。
<エポキシ化合物との反応性の試験>
[試験例1]
化合物(I)−901(724mg)、フェニルグリシジルエーテル(900mg)、DMF(300mg)を仕込み、加熱することにより、均一な溶液を得た。この溶液を150℃で1時間、さらに210℃で1時間加熱して、化合物(I)−901と、フェノキシグリシジルエーテルのエポキシ基とを反応させた。得られた反応液は、その温度が120℃の段階で、状態の良否を目視で判定した。また、反応性は、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(プレート:メルク社製「シリカゲル60Fプラスチックシート」、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=10/4(体積比))により、原料化合物残存量で判定した。
その結果、120℃で反応液は均一に混合して完溶した状態であった。また、150℃で1時間反応させた段階での反応液では、化合物(I)−901がフェニルグリシジルエーテルと反応して、2個のスポット(第1スポット:Rf0.28、 第2スポット:Rf0.23)が観測され、化合物(I)−901はすべて反応で消費されていることが確認された。この反応液の一部を採取して、トルエンを加えたところ、結晶が析出した。この結晶をろ取し、乾燥させて、白色結晶(融点158℃ Rf0.23)を得た。機器分析により、この白色結晶は、化合物(I)−901の2’位の水酸基がフェニルグリシジルエーテルと反応した反応生成物であることが確認された。続いて210℃で1時間反応させた段階での反応液では、上記の2個のスポットは消失し、新たなスポット(Rf0.09)が観測された。冷却後、反応液にTHFを加えて、粘稠油状物を加熱溶解させ、室温で一日静置すると結晶が析出した。この析出結晶をろ取し、乾燥させて白色結晶(融点174.9℃、Rf0.09)を得た。機器分析により、この白色結晶は、化合物(I)−901の5’位のアリル基が4’位に転位し、2’位及び5’位のフェノール性水酸基がフェニルグリシジルエーテルと反応した反応生成物であることが確認された。
ここまでの結果を表2に示す。
以上により、化合物(I)−901は溶媒への溶解性が良好であり、加熱によってフェノール性水酸基を保護していたアリル基がクライゼン転位して、フェノール性水酸基が新たに生じ、これがエポキシ化合物(エポキシ基)と反応することが確認された。
[試験例2〜6]
化合物(I)−901に代えて、化合物(I)−401(試験例2)、化合物(I)−801(試験例3)、化合物(I)−1001(試験例4)、HCA−HQ(試験例5)、又はHCA−NQ(試験例6)を用いた点以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、化合物(I)を用いた試験例2〜4では、試験例1と同様の結果が得られ、化合物(I)を用いなかった試験例5及び6よりも明らかに優れていた。
<エポキシ樹脂組成物の製造>
[実施例12]
エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP4001」、エポキシ当量190g/eq.)(500質量部)と、化合物(I)−401(180質量部)とを、メトキシプロパノール(680g)に溶解させ、メトキシプロパノール溶液を得た。次いで、硬化促進剤としてジシアンジアミド(19質量部)をDMFに溶解させたDMF溶液(190質量部)と、2−エチル−4−メチルイミダゾール(0.4g)をメタノールに溶解させたメタノール溶液(35質量部)とを、上記のメトキシプロパノール溶液と混合して、均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物は、不溶固形物は認められず、また、窒素ガス雰囲気下での保管中にも粘度の増大がなく、安定であった。
ゲル化試験機(高尾製作所社製「IMC−A0E2型」)を用いて、得られたエポキシ樹脂組成物のゲル化試験を行ったところ、このエポキシ樹脂組成物は210℃で50秒間加熱することでゲル化した。ゲル化物のガラス転移点(Tg)は155℃であり、このエポキシ樹脂組成物は充分に硬化するものであった。
本発明は、電気・電子絶縁材料、塗料、接着材料、複合材料等に利用可能であり、特に電気・電子部品の樹脂加工品材料や半導体封止剤材料として好適である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)で表される有機リン化合物。
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアリル基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R及びRが水素原子以外の基である場合、R及びRは相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよく;ただし、R〜Rのいずれか1〜3個はアリル基であり;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共にアリル基である場合には、R及びRは共に水素原子ではなく、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRが共に水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではなく;R及びRが前記ベンゼン環を形成せず、かつR及びRのいずれか一方がアリル基で、他方が水素原子である場合には、R及びRは共にアリル基ではない。)
  2. 下記一般式(I)−1〜(I)〜7のいずれかで表される請求項1に記載の有機リン化合物。
    (式中、Rは前記と同じであり;nは1又は2である。)
  3. エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含有し、前記硬化剤が請求項1又は2に記載の有機リン化合物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  4. 下記一般式(Ia)で表される化合物と、下記一般式(Ib)で表される化合物とを、遷移金属触媒の存在下で反応させて、請求項1又は2に記載の有機リン化合物を得る工程を有することを特徴とする有機リン化合物の製造方法。
    (式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基であり、R’及びR’が水素原子以外の基である場合、R’及びR’は相互に結合して水素原子がアルケニル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成していてもよい。)
    (式中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシロキシ基、一般式「−O−C(=O)−OR91(式中、R91はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、カルバメート基、一般式「−O−SO−R92(式中、R92はアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。)」で表される基、ホスフェート基、ホスホニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアリールオキシ基であり、Xがアシロキシ基である場合には、アシル基中の水素原子がアリルオキシカルボニル基で置換されていてもよい。)
  5. 前記遷移金属触媒が、周期表の第8族〜第12族のいずれかの遷移金属と、錯化剤とからなることを特徴とする請求項4に記載の有機リン化合物の製造方法。
  6. 原料として請求項1又は2に記載の有機リン化合物を加熱して、アリル基をクライゼン転位させることにより、前記原料とは異なる請求項1又は2に記載の有機リン化合物を新たに生じさせる工程を有することを特徴とする有機リン化合物の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法で得られ、ハロゲンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする有機リン化合物。
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