JP2014233652A - 複合半透膜 - Google Patents

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清彦 高谷
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雅和 小岩
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将弘 木村
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由恵 丸谷
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Abstract

【課題】高透水性であり、2価イオンを選択的かつ十分に除去することができる複合半透膜を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上に設けられる多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成されたポリアミド分離機能層と、を備える複合半透膜であって、前記ポリアミド分離機能層が多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物によって形成され、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、グルコース1000mg/Lの水溶液を透過させたときのグルコースの透過係数が1.8×10−6m/s以上5.0×10−6m/s以下で、かつ、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、硫酸マグネシウム2000mg/Lの水溶液を透過させたときの硫酸マグネシウムの除去率が97%以上の複合半透膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、多価イオンや農薬などを選択的に除去し、イオン半径の小さな一価イオンを透過させる選択除去性を持つ複合半透膜に関する。この膜により、かん水や海水からの塩分除去やミネラル調整、食品分野での塩分除去やミネラル調整などが可能となる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば、海水、かん水、有害物を含んだ水などからの飲料水の製造や、飲料水の軟水化、食品用途、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられている。
膜分離法を用いた分離技術では、ランニングコストの一層の低減を図るため、より高い透水性能が求められている。また、飲料水の軟水化や食品用途、有価物の回収などに用いられる場合には、溶質除去性や溶質選択除去性も重要な性能であり、2価イオン除去性能や2価イオン選択除去性が指標として用いられている。
膜による選択的な除去方法として、例えば特許文献1に、ピペラジンまたは、ピペラジンおよび4,4’−ビピペリジンとのジアミン成分に、多官能芳香族カルボン酸塩化物を反応させて得られるポリアミドからなる複合ナノろ過膜が開示されている。
特許文献2〜4では、ピペラジンとトリメシン酸クロリドを反応させて得られる複合逆浸透膜を用いた1価イオンと2価イオンの分離が開示されている。
特許文献5では、フェニレンジアミンとトリメシン酸クロリドを反応させて得られるポリアミド弁別層に強鉱酸の水溶液を接触させて加熱することで、透水性能を高める方法が開示されている。
特開2007−277298号公報 特公平1−38522号公報 特開2010−137192号公報 特開昭62−201606号公報 特開平2−68102号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のナノろ過膜や逆浸透膜では、透水性能が不十分である。
また、特許文献4に記載の半透膜では、2価イオン選択除去性が不十分である。
さらに、特許文献5に記載の水軟化用膜では、2価イオンの除去性能が不十分である。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、グルコースの透過係数と硫酸マグネシウムの除去率をある範囲内に制御することで、透水性能、2価イオン除去性能および2価イオン選択除去性に優れた膜が得られることを見出した。
すなわち、本発明は下記(1)〜(11)の構成をとる。
(1)基材と、前記基材上に設けられる多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成されたポリアミド分離機能層と、を備える複合半透膜であって、前記ポリアミド分離機能層が多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物によって形成され、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、グルコース1000mg/Lの水溶液を透過させたときのグルコースの透過係数が1.8×10−6m/s以上5.0×10−6m/s以下で、かつ、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、硫酸マグネシウム2000mg/Lの水溶液を透過させたときの硫酸マグネシウムの除去率が97%以上の複合半透膜。
(2)前記グルコースの透過係数が2.5×10−6m/s以上4.0×10−6m/s以下である、請求項1に記載の複合半透膜。
(3)前記ポリアミド分離機能層の平均厚みが、20nm以上35nm以下である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の複合半透膜。
(4)前記ポリアミド分離機能層の多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比が下式の関係にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
1.3 ≦ 脂肪族多官能アミンのモル数/多官能酸ハロゲン化物のモル数
(5)前記多官能脂肪族アミンがピペラジンであり、前記多官能酸ハロゲン化物がトリメシン酸クロリドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
(6)基材と、前記基材上に設けられた多孔性支持層からなる多孔性支持膜上に多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によってポリアミド分離機能層を形成する工程A、続いて前記ポリアミド分離機能層に酸溶液を接触させる工程B、次いで前記ポリアミド分離機能層を加熱する工程C、最後に前記ポリアミド分離機能層を湿潤化する工程D、を行うことを特徴とする複合半透膜の製造方法。
(7)前記多官能脂肪族アミンがピペラジンであり、前記多官能酸ハロゲン化物がトリメシン酸クロリドである、請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
(8)前記酸溶液に含まれる酸が不揮発性の酸である、請求項6〜7のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
(9)前記酸溶液に含まれる酸が、硫酸、リン酸のいずれかである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
(10)前記加熱乾燥する工程Cの加熱温度が、40℃以上80℃以下である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
本発明によって、かん水や海水からの塩分除去やミネラル調整、食品分野での塩分除去やミネラル調整、溶質の濃縮などを従来よりも省エネルギーで行うことができる複合半透膜を供給することができる。
1.複合半透膜
本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む多孔性支持膜と、該多孔性支持膜上に形成されたポリアミド分離機能層とを備える。
一般的に、複合半透膜の透水性に影響を及ぼす因子として、分離機能層の孔径、厚み、溶媒や溶質との親和性、荷電などが考えられる。本発明者らは、特に分離機能層の孔径に着目した。なお、ここでいう分離機能層の孔径とは、正確には分離機能層を形成しているポリアミドの間隙のことである。ナノメートルオーダーの孔径を直接測定することは困難であり、一般的には所定の分子量を持った化合物の透過実験から分画分子量を求めて表すことが多い。本発明者らは、グルコースの透過実験により求めたグルコースの透過係数および硫酸マグネシウムの除去率を孔径の指標とし、鋭意検討を行った。その結果、グルコースの透過係数および硫酸マグネシウムの除去率をある範囲内に制御することで、高い透水性能、高い2価イオン除去性能および高い2価イオン選択除去性を持つ膜が得られることを見出した。
本発明における複合半透膜のグルコース透過係数は、1.8×10−6m/s以上5.0×10−6m/s以下の範囲であり、好ましくは2.5×10−6m/s以上4.0×10−6m/s以下の範囲である。
本発明における複合半透膜の硫酸マグネシウム(MgSO)の除去率は、97%以上である。
グルコース透過係数が1.8×10−6m/s以上5.0×10−6m/s以下の範囲であり、かつ硫酸マグネシウム(MgSO)の除去率が97%以上であることにより、水や1価イオンが通りやすい大きさの孔径であり、かつ2価イオンは通りにくい大きさの孔径となる。よって、高い透水性能、高い2価イオン除去性能、および高い2価イオン選択除去性を持つ複合半透膜となる。
複合半透膜のグルコース透過係数は、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、グルコース1000mg/Lの水溶液を透過させるグルコース透過実験および以下の式により求めることができる。
非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
Jv=Lp(ΔP−σ・Δπ) (1)
Js=P(Cm−Cp)+(1−σ)C・Jv (2)
ここで、Jvは膜透過体積流束(m/m/s)、Lpは純水透過係数(m/m/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは溶質の膜面濃度(mol/m)、Cpは透過液濃度(mol/m)、Cは膜両側の濃度(mol/m)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで(2)式を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) (3)
ただし、
F=exp{−(1−σ)Jv/P} (4)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−Cp/Cm (5)
で定義される。
ΔPを種々変化させることにより(1)式からLpを算出でき、またJvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して(3)、(4)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσを同時に求めることができる。
複合半透膜の硫酸マグネシウム(MgSO)の除去率は、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、硫酸マグネシウム2000mg/Lの水溶液を透過させたときの硫酸マグネシウム透過実験を行い、供給水と透過水の電導度を測定し、電導度から水溶液中の硫酸マグネシウム濃度を算出し、以下の式によって求めることができる。
MgSO除去率(%)={1−(透過水中のMgSO濃度)/(供給水中のMgSO濃度)}×100
本発明におけるポリアミド分離機能層の平均膜厚は20nm以上35nm以下であることが好ましい。平均膜厚が薄いと、透水性能は高いが2価イオン除去性能は低くなり、平均膜厚が厚いと、2価イオン除去性能は高いが透水性能は低くなる。平均膜厚が20nm以上35nm以下であれば、高い透水性能と高い2価イオン除去性能が得られる。
ポリアミド分離機能層の平均膜厚は、透過型電子顕微鏡、TEMトモグラフィー、集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)等の観察手法を用いて分析できる。例えば、TEMトモグラフィーで観察するのであれば、複合半透膜を水溶性高分子で処理してポリアミド分離機能層の形状を保持したのち、四酸化オスミウム等で染色し観察を行う。ポリアミド分離機能層の膜厚の平均膜厚は、少なくとも50箇所の測定値より算出する。
(1−1)ポリアミド分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層であり、本発明においてはポリアミドを含む。
ポリアミド分離機能層は、具体的には、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる架橋ポリアミドからなる。
多官能脂肪族アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミン、次の(I)に示される成分、およびこれらの誘導体である。ピペラジン系アミンとしては、例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどが例示される。上記多官能脂肪族アミンは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよいが、性能発現の安定性から、特に、ピペラジンが好ましい。
Figure 2014233652
(R=−Hまたは−CH3 、nは、0から3の整数)
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等のハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロリドが好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物で構成されるポリアミド分離機能層からなる複合半透膜は、一般的にナノろ過膜と定義され、逆浸透膜と限外ろ過膜との間に位置づけられる分画特性を有する領域の膜である。具体的には、原水中の1価イオンの除去性能に比べ、2価イオンの除去性能が特に高いものである。逆浸透膜として一般に知られた膜は、実際に全部のイオンを除去する傾向にあり、そのために、イオン種を有効に分離することができない。他方において、限外ろ過膜は、通常、大部分のイオン種を除去せず、但し、分画分子量を基準にしてより高分子量の分子を除去することが見いだされている。また、ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜はカルボキシル基やアミノ基などのイオン性官能基を持っているため、膜として荷電を有している。それにより、膜と1価イオンや2価イオンのような電解質の間に静電的な相互作用が働き、孔径よりもずっと小さな1価イオンを一部除去できる。
本発明のポリアミド分離機能層は、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比が、「1.3≦ 多官能脂肪族アミンのモル数/多官能酸ハロゲン化物のモル数」の関係を満足することが好ましい。このとき、ポリアミド分離機能層中のカルボキシ基およびアミノ基量がほぼ等価であり、ポリアミド架橋構造による孔形成が均一になるため、孔径分布も制御できる。多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比が1.3よりも小さいと、アミノ基量が少なくなり、膜荷電と孔径のバランスが崩れ、2価イオン除去性能が低下するとともに、2価イオン選択除去性が低下する。
ポリアミド分離機能層における多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比は、多孔性支持膜から剥離した分離機能層を13C−NMR測定することや、多孔性支持膜から剥離した分離機能層を強アルカリ水溶液で加水分解した試料を用いてH−NMR測定することで分析できる。
ポリアミド分離機能層における多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比を制御する方法としては、界面重縮合時の多官能脂肪族アミン濃度と多官能酸ハロゲン化物濃度の比率を制御する方法、多官能酸ハロゲン化物を溶解する溶媒を変える方法、界面重縮合場を界面活性剤によって乱す方法、界面重縮合途中で反応停止させる方法、界面重縮合時に反応を阻害するような添加剤を加える方法、などがある。
(1−2)支持膜
支持膜は、基材と前記基材上に設けられる多孔性支持層とを備えるものであり、実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
支持膜の厚みは、複合半透膜の強度および複合半透膜を膜エレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、支持膜の厚さは50〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100〜250μmの範囲内である。
なお、本明細書において、特に付記しない限り、層又は膜の厚みとは、それぞれ平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。
(1−2−1)多孔性支持層
本発明における多孔性支持層は、下記素材を主成分として含有することが好ましい。多孔性支持層の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、あるいはポリフェニレンオキシドなどのホモポリマー又はコポリマーを単独で若しくはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなどが使用され、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホンなどのホモポリマーまたはこれらのコポリマーが好ましい。
より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。
これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、さらに成型が容易であることからポリスルホンが特に好ましくに使用できる。
具体的には、多孔性支持層の主成分となる素材として、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径を制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2014233652
本発明で使用されるポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを展開溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000の範囲内にあるものである。
このMwが10,000以上であることで、多孔性支持層として、好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200,000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
多孔性支持層における孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面即ち基材側の面まで徐々に大きな微細孔となり、かつ、分離機能層が形成される側の表面における微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような孔が好ましい。
多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンを溶解させたN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と称することもある。)溶液を、基材上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることにより得られる。この方法によって得られた支持膜は、その表面の大部分が直径1〜30nmの微細な孔を有することができる。
また、多孔性支持層の厚みは、得られる複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、厚みが10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜15kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)によって観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
(1−2−2)基材
支持膜を構成する基材としては、例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、機械的強度、耐熱性、耐水性等により優れた支持膜を得られることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。
本発明で用いられるポリエステル系重合体とは、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルであり、本発明における基材の主成分であることが好ましい。
酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸などの芳香族カルボン酸;アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができる。
また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなどを用いることができる。
ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の共重合体も挙げられる。中でも製造面でのコストに特に優れている点からポリエチレンテレフタレートのホモポリマーまたはこれらのコポリマーが好ましく用いられる。
本発明における基材は、前記重合体等からなる布帛状のものである。前記布帛には、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。
基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。
長繊維不織布又は短繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。縦配向については後述する。
そのような構造を取ることにより、強度を保つことで複合半透膜の膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、分離機能層に凹凸を付与する際の、多孔性支持層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、分離機能層表面の凹凸形状が安定するので好ましい。
より具体的に、前記長繊維不織布又は短繊維不織布の、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましい。また、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と、多孔性支持層側の表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において顕著である。
収縮することにより寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
本明細書において「繊維配向度」とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。連続製膜を行う際の製膜方向、すなわち不織布基材の長手方向を0°とし、前記製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は以下のように測定する。
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、該サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルから繊維を10本ずつ選び、計100本の繊維について、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°とし、不織布の幅方向(横方向)を90°としたときの角度を測定する。測定した角度の平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度として求める。
また、基材の厚みは30〜200μmの範囲内にあることが機械的強度及び充填密度の点から好ましく、より好ましくは50〜120μmの範囲内である。
本発明に使用する支持膜は、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるし、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法などに従って製造することもできる。
なお、基材の厚みおよび複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、分離機能層の厚みは多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを多孔性支持膜の厚みとみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材の厚みもしくは複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。断面観察の電子顕微鏡写真から厚み方向に直交する方向(層又は膜の面方向、水平方向)に20μm間隔で測定した20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
2.製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、多孔性支持膜の形成工程、分離機能層の形成工程、および分離機能層の孔径制御工程を含む。
(2−1)多孔性支持膜の形成工程
多孔性支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程および溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃〜60℃の範囲が好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な多孔性支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる多孔性支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10℃〜50℃である。凝固浴の温度が上限以下であれば、熱運動による凝固浴面の振動を抑えることができ、膜形成後の膜表面の平滑性を保持できる。また温度が下限以上であれば凝固速度が維持できるため、製膜性を向上できる。
次に、このようにして得られた多孔性支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄してもよい。このときの熱水の温度は40℃〜100℃が好ましく、60℃〜95℃がさらに好ましい。洗浄温度が上限以下であれば、多孔性支持膜の収縮度が大きくなり過ぎず、透水性能の低下を抑制することができる。また、洗浄温度が40℃以上であれば高い洗浄効果が得られる。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、多孔性支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド分離機能層を形成する。
多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、多孔性支持膜を破壊しないものであり、かつ、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しない、溶解性パラメーター(SP値)が15.2(MPa)1/2以上、かつ、logPが3.2以上の有機溶媒を用いる。SP値が15.2(MPa)1/2以上、かつ、logPが3.2以上であることで、界面重縮合時の多官能脂肪族アミンの分配、拡散が最適化され、官能基量を増加することができる。代表例としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカンなど、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能脂肪族アミンを含有する水溶液には、界面活性剤が含まれていることが好ましい。例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、スチレンビス(ナフタレンスルホン酸ナトリウム)などが挙げられる。界面活性剤が含まれることで、分離機能層と多孔性支持層との接着性を高める効果や、界面重合場を乱すことで官能基量が増加する効果が得られる。
多官能脂肪族アミンを含有する水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、それぞれ、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
界面重縮合を多孔性支持膜の表面で行うために、まず、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液で多孔性支持膜の表面を被覆する。多官能脂肪族アミンを含有する水溶液で多孔性支持膜表面を被覆する方法としては、多孔性支持膜の表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を多孔性支持膜の表面にコーティングする方法、多孔性支持膜を水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。多孔性支持膜と多官能脂肪族アミンを含有する水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上2分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
多孔性支持膜を、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液に浸漬する方法の場合、水溶液中の多官能脂肪族アミンの濃度は2.0重量%以上5.0重量%以下であることが好ましい。この範囲であると、ポリアミド分離機能層の平均膜厚が20nm以上35nm以下となり、高い透水性能が得られる。
その後、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液で被覆した多孔性支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、界面重縮合により架橋ポリアミドの分離機能層を形成させる。界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
多官能酸ハロゲン化物としてトリメシン酸クロリドを含有している場合、有機溶媒溶液におけるトリメシン酸クロリドの濃度は、0.30重量%以上0.70重量%以下程度が好ましい。トリメシン酸クロリド濃度が0.30重量%以上であれば高い2価イオン除去性が得られる。また、0.70重量%以下であれば高い2価イオン選択除去性が得られる。
多官能脂肪族アミンとしてピペラジンを、多官能酸ハロゲン化物としてトリメシン酸クロリドを含有している場合、ピペラジン濃度(重量%)/トリメシン酸クロリド濃度(重量%)が6.0以上であることが好ましい。6.0以上であると、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比が「1.3≦ 多官能脂肪族アミンのモル数/多官能酸ハロゲン化物のモル数」であるポリアミド分離機能層を得ることができ、高い2価イオン選択除去性が得られる。
次に、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法や送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法を用いることができる。特に、水とエアーの混合流体による除去が好ましい。水とエアーの混合流体を用いると、分離機能層中に水が含まれることで膨潤し、透水性能が高くなる。自然流下の場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下の間にあることが好ましく、1分以上3分以下の間であるとより好ましい。把持する時間が1分間以上であることで目的の機能を有する分離機能層を得やすく、3分間以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制することができる。
上述の方法により得られた複合半透膜は、さらに、25℃〜90℃の範囲内で1分間〜60分間熱水で洗浄処理する工程を付加することで、複合半透膜の溶質阻止性能をより一層向上させることができる。
(2−3)分離機能層の孔径制御工程
複合半透膜のグルコースの透過係数および硫酸マグネシウムの除去率を制御する方法としては、ポリアミド分離機能層を形成する過程で制御する方法やポリアミド分離機能層形成後に化学的な処理により制御する方法がある。例えば、ポリアミド分離機能層を形成する過程であれば、多官能脂肪族アミン濃度と多官能酸ハロゲン化物濃度の比率を制御する方法、多官能酸ハロゲン化物を溶解する溶媒を変える方法などがある。ポリアミド分離機能層形成後であれば、酸や多価アルコールを用いて分離機能層を膨潤させたり、アルカリによってアミド結合を切断したりする方法などがある。
具体的な方法として、分離機能層を酸またはアルコールと接触させる工程、次に複合半透膜を加熱する工程、最後に複合半透膜を湿潤化する工程を含む方法について、説明する。
まず、分離機能層表面に酸またはアルコールを接触させる。これらの接触方法としては、酸またはアルコールを含む水溶液を分離機能層表面に被覆する方法が好ましい。表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を多孔性支持膜表面にコーティングする方法で行えばよい。
酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、クエン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸が挙げられるが、後の加熱工程で揮発や析出を起こさない、硫酸、リン酸などが好ましい。アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。
次に、酸またはアルコールを含む水溶液で被覆された分離機能層を加熱する。
酸を用いる場合、加熱温度は40℃以上が好ましい。加熱温度が40℃以上であることは、透水性能を高める効果を得るには好ましい。
アルコールを用いる場合、加熱温度は100℃以上150℃以下が好ましい。加熱温度が100℃以上であれば短時間で透水性能を高める効果が得られ、150℃以下であれば、支持層および基材に及ぼす影響が小さく、透水性能や除去性能の低下が抑制される。また、アルコールの濃度は、30mmol/m以上であることが好ましい。30mmol/m以上であることが、透水性能を高める効果を得やすい。
最後に、複合半透膜を湿潤化する。ここでいう湿潤化とは、乾燥状態となった分離機能層および多孔性支持層に親水性の化合物を接触することで、再度水を保持した湿潤状態へと戻す工程のことである。湿潤化する方法は、複合半透膜にアルコールを含む水溶液を接触させる方法が好ましい。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコールが挙げられる。アルコールの濃度、接触時間は特に限定されず、適宜調整可能である。接触させる温度は、10℃以上60℃以下が好ましい。この範囲内であることにより、アルコールの浸透が早くなり効率的に湿潤化することができる。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、例えば1価イオン(ナトリウムイオンなど)と2価イオン(カルシウムイオンやマグネシウムイオンなど)を含有する硬水を膜分離処理し、軟水化する際や、海水からスケール成分である2価イオンを除去して工業用水を製造する際など、溶質を選択的に分離したいときに使用することができる。
本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものはない。
<特性評価>
(グルコース透過係数)
複合半透膜に、温度25℃、pH7.0、グルコース濃度1000mg/Lに調整した水溶液を操作圧力0.48MPaで供給して1時間膜ろ過処理を行なった。その後、供給水および透過水のグルコース濃度は屈折率計(島津製作所製RID-6A)によって求めた。こうして得られたグルコース濃度、膜透過水量から、グルコース透過係数を算出した。
(硫酸マグネシウム除去率)
複合半透膜に、温度25℃、pH7.0、硫酸マグネシウム濃度2000mg/Lに調整した塩水を操作圧力0.48MPaで供給して1時間膜ろ過処理を行なった。その後、供給水および透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわち硫酸マグネシウム濃度を得た。こうして得られた硫酸マグネシウム濃度および下記式に基づいて、硫酸マグネシウム除去率を算出した。
硫酸マグネシウム除去率(%)={1−(透過水中の硫酸マグネシウム濃度)/(供給水中の硫酸マグネシウム濃度)}×100
(塩化ナトリウム除去率)
複合半透膜に、温度25℃、pH7.0、塩化ナトリウム濃度500ppmに調整した評価水を操作圧力0.48MPaで供給して1時間膜ろ過処理を行なった。供給水および透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわち塩化ナトリウム濃度を得た。こうして得られた塩化ナトリウム濃度および下記式に基づいて、塩化ナトリウム除去率を算出した。
塩化ナトリウム除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩化ナトリウム濃度/供給水中の塩化ナトリウム濃度)}
(膜透過流束)
前項の試験において、供給水(硫酸マグネシウム水溶液または塩化ナトリウム水溶液)の膜透過水量を測定し、膜面1平方メートル当たり、1日当たりの透過水量(立方メートル)に換算した値を膜透過流束(m/m/日)とした。
(2価イオン選択除去性)
前項の試験において求めた、硫酸マグネシウム除去率および塩化ナトリウム除去率を用いて、下記式に基づいて、2価イオン選択除去性を求めた。
2価イオン選択除去性=(硫酸マグネシウム除去率)/(塩化ナトリウム除去率)
(分離機能層を構成する多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比)
複合半透膜から基材を剥離し、多孔性支持層と分離機能層の積層体とした後、ジクロロメタンで多孔性支持層を溶解させることで、分離機能層を得た。得られた分離機能層を強アルカリ重水溶液にて加熱することにより加水分解し、加水分解後の重水溶液をろ過してH−NMR測定した。測定で得られたデータを解析し、ピークの積分値から多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物の存在比を算出した。
(分離機能層の平均膜厚)
複合半透膜をPVAで包埋した後、四酸化オスミウムで染色して測定サンプルとした。得られたサンプルをTEMトモグラフィーを用いて撮影し、得られた3D画像を解析ソフトにより解析した。TEMトモグラフィー分析には、日本電子製電界放出型分析電子顕微鏡JEM2100Fを用いた。30万倍の倍率での取得画像を用いて、分離機能層の膜厚を50箇所の点について解析を行った。0.1ナノメートル以上の精度で上記の測定および解析を行い、平均膜厚を式1:
平均膜厚=測定膜厚の和/標本数 ・・・(式1)
に基づいて有効数字3桁で算出した。
(複合半透膜の作製)
〈比較例1〉
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm/sec)上に、ポリスルホンの15重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)で、かつ塗布厚み180μmでキャストした後、ただちに純水中に5分間浸漬することによって基材上に多孔性支持層を形成し、多孔性支持膜を作製した。
次に、この多孔性支持膜をピペラジンが3.0重量%、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが100ppmとなるように溶解した水溶液に10秒間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付け余分な水溶液を除去し、続いてn−デカンにトリメシン酸クロリドが0.40重量%となるように溶解した溶液を、多孔性支持層の表面全体に均一塗布した(塗布温度20℃)。次に、膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直にして液切りを行って、送風機を使い25℃の空気を吹き付けて乾燥した。その後、80℃の純水で2分間洗浄し、複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は、表1に示す値であった。
〈実施例1〉
比較例1において得られた複合半透膜の分離機能層表面に、0.6mmol/mとなるように硫酸を塗布し、70℃で3分間加熱した。その後、10wt%のイソプロピルアルコール水溶液に5分間接触させて湿潤化し、複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
〈実施例2〜4、比較例2〉
実施例1において、硫酸の濃度を表1または表2に示す値にした以外は同様の方法で複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の膜性能を表1または表2に示す。
〈実施例5、6、比較例3、4〉
実施例1において、加熱温度を表1または表2に示す値にした以外は同様の方法で複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の膜性能を表1または表2に示す。
〈比較例7、8、比較例5、6〉
比較例1において、ピペラジンの濃度およびトリメシン酸クロリド濃度を表1または表2に示す値にして複合半透膜を作製した後、実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の膜性能を表1または表2に示す。
〈実施例9、比較例7、8〉
実施例1において、使用する酸を表1または表2に示す酸にした以外は同様の方法で複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の膜性能を表1または表2に示す。
〈実施例10〉
比較例1において得られた複合半透膜の分離機能層表面に、30.0mmol/mとなるようにグリセリン水溶液を塗布し、120℃で5分間加熱した。その後、10wt%のイソプロピルアルコール水溶液に膜を5分間接触させて湿潤化し、複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表3に示す。
〈実施例11〉
実施例10において、使用するアルコールをエチレングリコールにした以外は同様の方法で複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の膜性能を表3に示す。
Figure 2014233652
Figure 2014233652
Figure 2014233652
表1、2の結果から明らかなように、本発明の複合半透膜は透水性能が高く(硫酸マグネシウム透過実験での膜透過流速1.1m/m/d以上)、2価イオン除去性能が高く(硫酸マグネシウム除去率97%以上)、かつ2価イオン選択除去性が高い(2.0以上)。
〈比較例9〉
比較例1において得られた複合半透膜を、1mol/Lの硫酸水溶液に70℃で3分間浸漬した(約12mol/m)。その後、20℃の純水で洗浄し複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表4に示す。
Figure 2014233652
表4の結果から明らかなように、分離機能層の孔径を制御する際には、浸漬にて加熱する方法は効果が低いことがわかる。

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材上に設けられる多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成された分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物との重合により生成されたポリアミドを含有し、
    前記複合半透膜に、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、グルコース濃度1000mg/Lの水溶液を透過させたときのグルコースの透過係数が1.8×10−6m/s以上5.0×10−6m/s以下であり、
    かつ、前記複合半透膜に、0.48MPa、水温25℃、pH7.0、濃縮水流量3.5L/minにて、硫酸マグネシウム2000mg/Lの水溶液を透過させたときの硫酸マグネシウムの除去率が97%以上である
    複合半透膜。
  2. 前記グルコースの透過係数が2.5×10−6m/s以上4.0×10−6m/s以下である、
    請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記分離機能層の平均厚みが、20nm以上35nm以下である、
    請求項1〜2のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  4. 前記分離機能層において、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物との存在比が下式の関係にある、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
    1.3 ≦ 多官能脂肪族アミンのモル数/多官能酸ハロゲン化物のモル数
  5. 前記多官能脂肪族アミンがピペラジンであり、前記多官能酸ハロゲン化物がトリメシン酸クロリドである、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  6. 基材と、前記基材上に設けられた多孔性支持層からなる多孔性支持膜上に、多官能脂肪族アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって分離機能層を形成する工程A、
    前記分離機能層に酸溶液を接触させる工程B、
    前記工程Bの後に、前記分離機能層を加熱する工程C、
    前記工程Cの後に、前記ポリアミド分離機能層を湿潤化する工程D、
    を備える
    複合半透膜の製造方法。
  7. 前記多官能脂肪族アミンがピペラジンであり、前記多官能酸ハロゲン化物がトリメシン酸クロリドである、
    請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
  8. 前記酸溶液に含まれる酸が不揮発性の酸である、
    請求項6〜7のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
  9. 前記酸溶液に含まれる酸が、硫酸、リン酸のいずれかである、
    請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
  10. 前記加熱乾燥する工程Cの加熱温度が、40℃以上80℃以下である、
    請求項6〜9のいずれか1項に記載の複合半透膜の製造方法。
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