JP2014233262A - 塩味増強剤 - Google Patents

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英昭 田口
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Abstract

【課題】飲食品に異味を与えることなく且つ塩味のみを特異的に増強できる技術であって、複雑な操作を強いることなく低コストにて施用可能な技術を提供する。
【解決手段】穀類を糖化処理した後に得られる固形分に対して、温度140〜180℃及び圧力0.36〜12.5MPaの高温高圧条件であり、かつ亜臨界状態になった水を1分間以上接触させる条件にて、亜臨界水処理を行って得られた亜臨界水処理物。その亜臨界水処理物からの水溶性溶媒抽出物を有効成分として含有する塩味増強剤、またその塩味増強剤を含有してなる飲食品とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、穀類を糖化処理した後に得られる固形分に対して特定条件にて亜臨界水処理して得られる亜臨界水処理物に関する。また、本発明は、前記亜臨界水処理物の水溶性溶媒抽出物を有効成分としてなる塩味増強剤に関する。
食塩は、風味付けや保存の際に必須の調味料として、古来から食生活になくてはならないものであるが、食塩の過剰摂取は、高血圧、腎臓病、心臓病等をはじめとする生活習慣病を誘発する原因となっている。そのため、健康増進を目的とした減塩飲食品に注目が集まっており強く望まれている。
しかし、既存の飲食品の配合から単に塩分を抜いた場合、風味全体のバランスが悪くなり、喫食の際に味気ない印象を与えるものとなる。これは、飲食品の嗜好性を大幅に低下させる問題に繋がる。
そこで、飲食品業界では食塩の含有量を減らすと同時に塩味を感じさせる技術の開発が行われてきた。例えば、食塩(塩化ナトリウム)の一部を塩化カリウムに代替して適度な塩味を呈させる技術が提案されている(特許文献1 参照)。しかし、当該技術では、塩化カリウムに代替により飲食品にカリウムイオンの不快な風味が付与され、風味の点で課題が残ることが指摘されていた。また、カリウムイオンを多く摂取し過ぎた場合、高カリウム血症の危険性も指摘されていた。
また、魚介類蛋白質及び大豆蛋白質を特定酵素で分解処理して分解物を得、これを塩味増強剤として使用する技術が提案されている(特許文献2 参照)。しかし、当該技術では、原料及び酵素処理にコストがかかる技術であり、また煩雑な工程が必要である。即ち、特許文献2に係る技術には操作性や費用等の点での課題が指摘されていた。
特開昭59-198953号公報 特開2011-010657号公報
三上重明, 清酒醸造における細胞壁分解酵素の機能, 第42回, 独立行政法人酒類総合研究所講演会報告, 講演要旨, 平成18年10月23日
本発明は、上記課題を解決し、飲食品に異味を与えることなく且つ塩味のみを特異的に増強できる技術であって、複雑な操作を強いることなく低コストにて施用可能な技術を開発することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、穀類の糖化処理後に得られる固形分を亜臨界水処理し得られた抽出物に、塩味を特異的に増強する作用があることを見出した。
そして、飲食品の製造において当該抽出物を含有させることにより、食塩の使用を大幅に低減した場合でも強い塩味を呈する飲食品が提供できることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいてなされたものである。
[請求項1]に係る発明は、下記(A)に記載の原料に対して、下記(B1)及び(B2)に記載の条件にて亜臨界水処理を行って得られた亜臨界水処理物に関するものである。
(A):穀類を糖化処理した後に得られる固形分。
(B1):温度140〜180℃及び圧力0.36〜12.5MPaの高温高圧条件。
(B2):前記原料と亜臨界状態になった水を1分間以上接触させる条件。
[請求項2]に係る発明は、請求項1に記載の亜臨界水処理物からの水溶性溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする塩味増強剤に関するものである。
[請求項3]に係る発明は、前記(A)に記載の穀類が、米、小麦、大麦、及びトウモロコシから選ばれる1以上のものである、請求項2に記載の塩味増強剤に関するものである。
[請求項4]に係る発明は、前記(A)に記載の糖化処理が、麹菌培養物を添加して行うものである、請求項2又は3に記載の塩味増強剤に関するものである。
[請求項5]に係る発明は、前記(A)に記載の糖化処理が、アミラーゼ剤及び/又はプロテアーゼ剤を添加して行うものである、請求項2〜4のいずれかに記載の塩味増強剤に関するものである。
[請求項6]に係る発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有してなる飲食品に関するものである。
[請求項7]に係る発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有してなる調味料に関するものである。
[請求項8]に係る発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有させることを特徴とする飲食品の製造方法に関するものである。
[請求項9]に係る発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有させることを特徴とする飲食品の塩味増強方法に関するものである。
本発明によれば、飲食品に異味を与えることなく且つ塩味のみを特異的に増強できる技術を提供することを可能とする。また、本発明は、穀類の糖化処理後に得られる固形分(実質的には飲食品製造時に得られる未利用廃棄物)を亜臨界水処理した抽出物を有効成分とする技術であるため、複雑な操作を強いることなく低コストにて施用可能な技術である。
これにより、本発明によれば、食塩使用量が大幅に少ない飲食品であっても、異味を呈さずに強い塩味を呈する飲食品を、低コストにて提供することを可能とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、穀類を糖化処理した後に得られる固形分に対して特定条件にて亜臨界水処理して得られる亜臨界水処理物に関する。また、本発明は、前記亜臨界水処理物の水溶性溶媒抽出物を有効成分としてなる塩味増強剤に関する。
[亜臨界水処理の原料]
本発明の亜臨界水処理に供する原料としては、穀類を糖化処理した後に得られる固形分を用いることができる。当該固形分として具体的には、穀類を糖化処理し固液分離した後に残った粕(穀類糖化粕)を指すものである
・穀類
ここで、‘穀類’とは、イネ科植物の種子のうち食用となる澱粉質を含む種子を指し、麦や稲だけでなく雑穀に分類される種類も含むものである。
具体的には、米、小麦、大麦、ライ麦、燕麦(エンバク、オーツ麦、カラス麦の栽培種)、ワイルドグラス、シコクビエ、キビ、ヒエ、アワ、ハトムギ、トウモロコシ、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)、トウジンビエ、テフ、フェニオ、コドラ(コードンビエ)、マコモなどを挙げることができる。
本発明では、これらの中でも澱粉含量の高いものを好適に用いることができるが、特に主要な穀類であり穀物調味料や酒類の原料にもなる米、大麦、小麦、トウモロコシを好適に用いることができる。
また、これらの穀類のうちの2以上を配合したものを用いることも好適である。
・前処理
(a) 粉砕処理等
これら穀類原料は、後述する糖化処理にそのまま供することが可能であるが、望ましくは粉砕等により穀物粉の状態にして用いることが望ましい。後述する糖化処理を効率良く行うことができるためである。ここで穀物粉の状態とは、種子を粉砕、破砕、研削、磨砕、擂潰、粉末化など施した状態を指す。例えば、粉砕機、ブラシ式精米機、研削式精米機などを用いて処理した状態を挙げることができる。
(b) 加水加熱処理
また、後述する糖化処理の効率を向上させるために、種子を水存在下で加熱処理してから行うことが望ましい。例えば、蒸煮、煮る、蒸す等をした状態にしてから供することが望ましい。水存在下(水中)での加熱によって、細胞が吸水して細胞壁が物理的に破壊され、細胞内部の澱粉粒が糖化作用を受けやすくなるからである。
・糖化処理
本発明の糖化処理は、穀類に含まれる澱粉を糖化させて難消化性の糖質を得るために行う処理である。具体的には、グルコース、マルトース、イソマルトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などに分解した後に残る難消化性糖質を得るための処理である。
ここで、穀類に対する糖化処理を行わずに亜臨界水処理の原料に供した場合、穀類中の澱粉のほとんどを分解することができない。即ち、亜臨界水処理の原料となる難消化性多糖類を得ることができず好ましくない。
(a) 液化処理
糖化処理の第一段階としては、液化酵素として機能する耐熱性α-アミラーゼを用いた液化処理を行うことが望ましい。当該液化処理は、糖化処理の一部に相当する。
当該液化処理は、酵素が作用できるように水を添加した状態にして行うことが望ましい。水の添加量としては、例えば原料質量に対して容量が0.5〜50倍量、好ましくは1〜25倍量を挙げることができる。
当該液化処理を行う温度としては、澱粉糊化が起こりやすい70〜110℃程度の温度が好適である。この場合の反応時間としては、5〜120分程度、好ましくは10〜90分程度で行うことが好適である。溶液のpHは、酵素の活性に合わせたpHで行うことができるが、pH4〜6程度、好ましくはpH4.5〜5.5程度に調整することが望ましい。
なお、当該液化処理を行う場合、上記前処理における加水加熱処理を省略することが可能となる。
(b1) 実質的な糖化処理(酵素糖化)
本発明における実質的な糖化処理は、澱粉糖化が可能な酵素であるアミラーゼ存在下にて行うことが可能である。
ここでアミラーゼとは、澱粉を構成するアミロースやアミロペクチンの非還元末端側からα-(1→4)結合やα-(1→6)結合を加水分解し、単糖類(ブドウ糖等)、二糖類(マルトース等)、オリゴ糖に加水分解する酵素である。具体的には、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼなどが挙げられる。
α-アミラーゼは、澱粉のα-1,4-結合を不規則に切断し多糖、マルトース、オリゴ糖を生成させる酵素である。耐熱性を有するものは上記液化酵素として用いることもできる。また、β-アミラーゼは、澱粉を麦芽糖に分解する酵素である。また、グルコアミラーゼは、比較的分子量の高い澱粉を基質として、澱粉の非還元末端からα-1,4-結合及びα-1,6-結合の両方を分解する酵素である。ブドウ糖単位で加水分解できる酵素である。また、α-グルコシダーゼは、麦芽糖をブドウ糖に加水分解する酵素である。
当該糖化処理では、これらいずれのアミラーゼを用いることができるが、好ましくはα-アミラーゼとβ-アミラーゼを含むようにして用いることが好適である。
また、当該糖化処理は、アミラーゼに加えて、β-グルカン分解酵素及び/又はプロテアーゼの存在下で行うことで、糖化効率をさらに向上させることができる。
ここで、β-グルカン分解酵素が存在すると、当該酵素活性により、穀類種子の細胞壁成分が分解され、上記アミラーゼの澱粉糖化効率が向上する。β-グルカンとは、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン等の細胞壁を構成する多糖類を指す。β-グルカン分解酵素としては、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、キシラナーゼ、ポリガラクツロナーゼ等の各種酵素を挙げることができる(非特許文献1 参照)。
また、プロテアーゼが存在すると、穀類種子の細胞壁成分や澱粉粒の構成タンパク質が分解され、上記アミラーゼの澱粉糖化効率が向上する。
当該糖化処理は、上記酵素群が作用できるように水を添加した状態にして行うことが望ましい。水の添加量としては、例えば原料質量に対して容量が0.5〜50倍量、好ましくは1〜25倍量を挙げることができる。
糖化反応の温度は、前記糖化酵素の活性に合わせた温度で行うことができるが、糖化酵素の多くは、50〜70℃程度、好ましくは55〜65℃で安定に作用することから、溶液温度を当該範囲に調整して反応を行うことが望ましい。また、反応時間としては、3〜48時間程度、好ましくは6〜36時間程度、さらに好ましくは8〜24時間程度で行うことが好適である。
反応溶液のpHは、上記多くの糖化酵素が機能できるpHであるpH4〜6程度、好ましくはpH4.5〜5.5程度に調整することが望ましい。
当該糖化処理としては、酵素剤(市販の各種酵素剤)を用いることが好適であるが、麹菌培養物を添加して行うことも可能である。麹菌培養物には、麹菌が外分泌した糖化酵素とプロテアーゼが多く含まれているためである。特に、アミラーゼに分類される酵素を多く含まれる。
ここで麹菌とは、コウジカビ(Aspergillus属)に属する微生物を指す。具体的には、糖化酵素及びプロテアーゼの生成能の観点から黄麹菌(A.oryzae, A.sojae, A.tamarii)を用いることが望ましいが、白麹菌(A.kawachii)や黒麹菌(A.awamori)を用いることも可能である。麹菌培養物として具体的には、米麹、麦麹、餅麹等を指すが、特に米麹又は麦麹を用いることが望ましい。
なお、麹菌培養物を添加して糖化を行う際の反応条件は、上記条件と同じ条件を採用することができる。
当該糖化処理では、各酵素剤や麹菌培養物をそれぞれ別途に添加して単独処理しても良いが、操作効率や生産効率の点を踏まえると、各種酵素剤及び麹菌培養物を同時に添加して処理することが望ましい。
(b2) 実質的な糖化処理(麹菌による糖化)
本発明の糖化処理は、生きている麹菌による糖化作用を利用して行うこともできる。上記のように、麹菌が培養された環境には、各種糖化酵素及びプロテアーゼが大量に外分泌されるからである。
ここで、麹菌としては、糖化酵素及びプロテアーゼの生成能の観点から黄麹菌(A.oryzae, A.sojae, A.tamarii)を用いることが望ましいが、白麹菌(A.kawachii)や黒麹菌(A.awamori)を用いることも可能である。
麹菌培養物を用いた糖化処理としては、麹菌培養物が糖化作用を行うのに適した温度にて処理することが望ましい。例えば、5〜65℃程度で行うことが望ましい。5℃より低温の場合、麹菌培養物が含有する糖化酵素の働きが弱くなるため好ましくない。また、65℃を超えると麹菌培養物に含有する糖化酵素は失活し、糖化作用を失ってしまう。
糖化作用を行う時間としては、麹菌培養物(例えば米麹、麦麹、餅麹)を用いて糖化液を調製する場合であれば0.5〜7日程度が好適である。また、種々の発酵等を併用して行う場合であれば、さらに長い時間が必要となる。この場合、3〜60日程度、みりんの糖化熟成に至っては60日以上(長いものでは1年以上)が好適である。
なお、麹菌培養物を用いた糖化処理は、前記した酵素糖化と組み合わせて行うことも可能である。例えば、前記酵素糖化(b1に記載の処理)を行ってから、麹菌培養物による糖化(b2に記載の処理)を行うことが可能である。また、麹菌培養物による糖化(b2に記載の処理)を行ってから前記酵素糖化(b1に記載の処理)を行うことも可能である。さらに、麹菌培養物と糖化酵素を同時に使用して糖化を行うことも可能である。
・固形分の回収
上記糖化処理を行った後は、糖化液を分離して固形分を回収する。当該固形分の主成分は、セルロース、ヘミセルロース、及びペクチン等の細胞壁成分に由来する難消化性多糖類(不溶性のβ-グルカン、繊維質)である。なお、当該固形分中にはタンパク質も混在するが、その含有量はごく僅かである。
固形分の回収手段としては、固液分離によって行うことができる。例えば、圧搾、濾過、遠心分離、加圧や減圧によるフィルトレーションなどの手段を採用することができる。
ここで、分離した糖化液は、糖液として飲食品に添加して有用に用いることができる。また、調味料類や酒類の製造における糖化醪として有用に用いることができる。一方、固形分である糖化粕(上記工程を得て回収された穀類糖化粕:酵素糖化粕、麹糖化粕、併用糖化粕など)は、本発明の亜臨界水処理の原料となる。
・飲食品製造時の穀類糖化粕の利用
本発明の原料である穀類糖化粕としては、穀類を原料とする糖液、各種調味料、酒類を製造する時に生じる糖化粕などの、飲食品製造時に副産物として生成される穀類糖化粕を好適に用いることができる。
例えば、各種穀類から糖液を製造する工程での糖化粕、食酢製造工程での糖化粕(食酢製造時の糖化液の圧搾粕:穀物酢粕、米酢粕など)、みりん粕(みりん製造時の圧搾粕)、酒粕(日本酒製造時の粕:純米酒粕など)、穀類焼酎粕(穀類焼酎製造時の圧搾粕:米焼酎粕、麦焼酎粕など)等を好適に用いることができる。このような飲食品製造時に生じる糖化粕(糖液製造時の糖化粕、調味料粕、酒類粕など)を用いることで、亜臨界水処理に用いる原料コストを大幅に削減することが可能となる。
・原料の組み合わせ
本発明では、上記調製した固形分(酵素糖化粕、麹糖化粕、併用糖化粕、糖液製造時の糖化粕、調味料粕、酒類粕など)のいずれを用いることができるが、最終製品とする飲食品の性質を考慮して、原料を任意に選択して用いることができる。また、最終製品の風味を変化させるために、2種以上の穀類糖化粕を混合して用いる態様も可能である。
[亜臨界水処理]
本発明では、原料(上記調製した穀類糖化粕)を「亜臨界状態の水」と接触させる工程を必須とするものである。ここで、‘亜臨界状態の水’とは、水を常圧での沸点(100℃)から臨界温度(374℃)の範囲で加圧(高温高圧処理)することにより、外見は液体を保っているが、通常の液体の水分子よりも極めて高いエネルギーが付与されている水の状態を指す。
当該亜臨界状態の水は、比誘電率が低くイオン積が大きい等、通常の液体の水の状態とは全く異なる性質を有する。
本発明では、原料が亜臨界状態の水と接触することによって、当該原料に含まれる難消化性多糖類が加水分解され、水溶性多糖類が生成される。なお、水以外の亜臨界状態となった溶媒(例えば、二酸化炭素)を用いた場合では、所望の加水分解作用を期待することができない。
なお、本発明では、臨界点である374℃以上で且つ22MPa以上である「臨界状態の水」で処理することは、好適ではない。臨界状態の水分子は、亜臨界状態の水分子よりもさらに高いエネルギーを有し、全く異なる性質を示す。そのため、臨界状態の水で処理した場合、所望の性状や風味適性を有する処理物を得ることができないからである。
本発明における亜臨界水処理は、原料が亜臨界状態の水と接触する態様として、以下の(I)及び(II)のいずれかの態様を採用することができる。
具体的には、(I) 原料を水溶性溶媒と接触した状態にし、当該溶媒に含まれる液体の水を亜臨界状態とすることで、原料中の難消化性多糖類を分解する作用を発揮させる態様を採用することができる。
当該態様においては、好ましくは原料の少なくとも半分が、最も好ましくは原料の全体が、溶媒に浸漬した状態にて行うことにより、効率的な当該処理を行うことが可能となる。なお、当該亜臨界水処理は、必ずしも原料と溶媒が均一に混ざった状態で処理に供することを要しない。但し、原料の形状が、粉砕物、粒状物、擂潰物、流動物などである場合には、攪拌や混合等を行って原料と溶媒が均一に混ざった状態にして行うと、処理時間の短縮となる。
また、(II) 原料に対して加水を行わず、亜臨界状態の飽和水蒸気で処理する態様を採用することもできる。当該態様では、加水や混合等の操作を行う必要がないため、バッチ処理を行うことが可能となる。
・原料と溶媒の固液比
本発明における亜臨界水処理は、原料と溶媒の固液比を所定比率に調整して行うことで、分解効率が向上し抽出効率を向上される。具体的には、固体(原料の乾燥質量)1に対する液体(原料中の水分及び溶媒の総液量)の比を1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上を挙げることができる。固体に対する液体の割合が少なすぎる場合、亜臨界処理の作用が十分に発揮されない。
一方、固体に対する液体の割合が多い場合、重大な支障は生じにくいが、液量が多過ぎて旨味や風味が薄くなり過ぎる場合がある。このような場合には、別途の濃縮工程等を行うことが必要となる。そのため、溶媒量の上限としては、固体1に対する液体の比を30以下、好ましくは20以下、さらには好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは7以下、さらに特に好ましくは5以下に調整することが好適である。
なお、ここでの当該固液比の調整は、(i) 含水量の少ない原料を用いる場合には、原料質量と溶媒容量の値から調整することが可能であるが、(ii)含水量の多い原料を用いる場合には、原料中の含水率に注意して調整する必要がある。
・各種添加剤
(a) エタノール
本発明の亜臨界水処理に用いる溶媒としては、低濃度のエタノールを含む水溶液を用いることが望ましい。ここで添加剤であるエタノールは、亜臨界状態となった水分子が原料多糖類やタンパク質等を加水分解する作用を増幅する働きを発揮する。即ち、亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用の力価をさらに強めることが可能となる。
当該亜臨界水処理の効果を増幅する作用は、具体的には、「原料中の水分と溶媒の総液量に対してエタノールを所定濃度(「%(容量/容量)」: 以下「%(v/v)」と表記する場合あり。)で含むように調整した溶媒」を用いた場合に発揮される。
当該増幅作用が強く発揮されるエタノール濃度としては、原料中の水分を考慮した終濃度にて25〜60%(v/v)、好ましくは30〜50%(v/v)、さらに好ましくは30〜40%(v/v)の範囲に調整することが好適である。エタノール濃度が当該濃度範囲を外れる場合(所定濃度より低すぎる場合, 又は, 高すぎる場合)、エタノールによる当該増幅作用は十分に発揮されない。
(b) 有機酸
本発明の亜臨界水処理に用いる溶媒としては、微量の特定種類の有機酸を含有させることが好適である。具体的には、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、酢酸などの有機酸を挙げることができる。これらのうち、クエン酸は、亜臨界水処理の加水分解効率をさらに向上できるため好適である。即ち、亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用の力価をさらに強めることが可能となる。
各種有機酸を含む溶媒としては、「原料中の水分と溶媒の総液量に対して、当該有機酸を所定濃度(「%(質量/容量)」:以下「%(w/v)」と表記する場合あり。)で含むように調整した溶媒」として調整することが可能となる。
溶媒中の有機酸の濃度としては、原料中の水分を考慮した終濃度にて0.2〜3%(w/v)、好ましくは0.25〜2%(w/v)、さらに好ましくは0.5〜1.5%(w/v)とすることが好適である。なお、これらの(b)に記載の有機酸を2種以上併存するように添加することも可能であるが、これらの合計量が上記範囲内となるように添加することが望ましい。
(c) その他有機物
本発明の亜臨界水処理に用いる溶媒としては、微量の特定種類のアミノ酸や糖類を含有させることが好適である。具体的には、アミノ酸であるアルギニン、ヒスチジンを挙げることができる。また、ポリペプチドであるγ-ポリグルタミン酸を挙げることができる。また、単糖類であるアラビノース、グルタチオンを挙げることができる。
これらのうち、アルギニン、ヒスチジン、γ-ポリグルタミン酸、アラビノースは、亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用の力価をさらに強めることが可能となる。特には、力価向上及び風味への影響の無さを総合的に踏まえると、ヒスチジン、アラビノースが好適である。
なお、亜臨界水処理を行った後において、これらアルギニン、ヒスチジン、γ-ポリグルタミン酸、アラビノースを添加しても、亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用の力価は強まらない。即ち、本発明においては、これらの有機物を添加した後に、原料(上記調製した穀類糖化粕)とともに加熱加圧処理することにより、塩味増強作用の力価をさらに強めることが可能となる。
当該有機物を含む溶媒としては、「原料中の水分と溶媒の総液量に対して、当該有機物を所定濃度(%(w/v))で含むように調整した溶媒」として調整することが可能となる。
溶媒中の当該物質の濃度としては、原料中の水分を考慮した終濃度にて0.1〜2%(w/v)、好ましくは0.2〜1.5%(w/v)、さらに好ましくは0.3〜1.0%(w/v)とすることが好適である。なお、これら(c)に記載の有機物を2種以上併存するように添加することも可能であるが、これらの合計量が上記範囲内となるように添加することが望ましい。
(d) その他
本発明においては、上記した(a)低濃度エタノール、(b)特定有機酸(クエン酸等)、(c)特定有機物(ヒスチジン、アラビノース等)を併存するように添加した場合、亜臨界水処理の効率が著しく向上する。即ち、亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用の力価を著しく向上させることができる。
なお、(a),(b),(c)に記載の各添加剤は、それぞれ別枠として含量を計算して含有させることができる。
また、本発明においては、上記以外の添加時の他にも風味付け等の目的のために、様々な化合物や食品素材を含有させることが可能である。
・温度条件
本発明の亜臨界水処理は、140〜180℃の温度条件で行うことが必要である。当該温度範囲で処理を行うことにより、処理抽出物は好適な塩味増強作用を有するものとなる。
当該亜臨界水処理では、処理温度が高いほど加水分解作用が強まる傾向があるため、十分な力価の処理抽出物を得るためには、140℃以上、好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは155℃以上で処理を行うことが好適である。ここで、処理温度が140℃より低い場合、亜臨界水処理における加水分解作用自体が弱過ぎてしまい、塩味増強作用を有する有効成分の生成が起こらない。
一方、当該亜臨界水処理では、180℃より高い場合、加水分解作用自体が強過ぎてしまい、処理物の焦げや苦味が強くなり、穀物加工食品の香味が好ましくなくなる。焦げや苦味の付与を回避するためには、180℃以下、好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下、特に好ましくは165℃以下の温度で当該処理を行うことが好適である。
これらを総合すると、亜臨界水処理の好適温度は、140〜180℃、好ましくは150〜170℃、さらに好ましくは155〜165℃である。
・圧力条件
本発明における亜臨界水処理の加水分解作用は、圧力条件による影響をほとんど受けない。そのため、当該圧力条件としては、上記温度にて水の亜臨界状態が担保される圧力であれば如何なる圧力でも採用できる。例えば、0.36〜12.5MPaの圧力条件であれば問題なく採用することができる。
なお、加圧や減圧等の圧力調節を行う操作や機器の手間を考慮すると、上記温度における飽和水蒸気圧で処理を行うことが好適である。
・処理時間
本発明の亜臨界水処理では、前記原料と亜臨界状態となった水を少なくとも1分間以上接触させること(即ち、亜臨界水処理を1分間以上行うこと)によって、亜臨界水処理抽出物に前記した塩味増強作用を付与することが可能となる。
なお、当該塩味増強作用が発揮するためには、好ましくは5分間以上、さらには10分間以上の処理を行うことが好適である。また、処理時間の上限としては、数時間以内であれば特に制限はないが、例えば、180分間以内、好ましくは120分間以内、さらに好ましくは90分間以内、より好ましくは60分間以内、特に好ましくは30分間以内を挙げることができる。
但し、高温での処理の際には、処理時間が長くなると分解が進み過ぎ、焦げ及び苦味が付与される傾向がある。そこで、例えば、180℃付近で処理を行う場合には、30分間以下、好ましくは20分間以下、さらに好ましくは10分間以下にて処理を行うことが望ましい。
・塩味増強作用の有効成分
上記亜臨界水処理により、原料(穀類の糖化処理後に得られる固形分)の主成分である難消化性多糖類が加水分解され水溶性多糖類が生成される。当該水溶性多糖類の中には、本発明の有効成分である特定の水溶性多糖類も含まれることになる。
当該水溶性多糖類を含む亜臨界水処理物は、強い苦味を呈するため、それ自体を飲食品とすることはできない。しかし、当該水溶性多糖類を飲食品に添加する(含有させる)ことによって、当該飲食品の塩味を著しく向上させる作用が奏される。また、当該成分は、塩味のみを特異的に強める作用を発揮するため、飲食品自体の風味に悪影響を与えない。
なお、当該水溶性多糖類は、亜臨界水処理をしていない当該原料には全く含まれない成分である。即ち、穀類の糖化処理後に得られる固形分を温水浸漬等して抽出操作を行っただけでは、当該有効成分である水溶性多糖類を抽出することはできない。
・抽出工程
本発明では、上記亜臨界水処理後の処理物に対して、水溶性溶媒で抽出操作を行うことで、塩味増強作用を有する成分を含む抽出物(組成物)を回収することができる。
当該抽出操作として具体的には、上記(I)の亜臨界水処理の態様(原料に加水して亜臨界水処理をする態様)の場合、亜臨界水処理自体によって、生成された有効成分の抽出を同時に行うことが可能となる。また、亜臨界水処理後、当該処理物に対して別途に抽出操作を行うことも可能である。
一方、上記(II)の亜臨界水処理の態様(原料に加水せず、亜臨界状態の飽和水蒸気で処理する態様)の場合、当該処理物に対して別途に抽出操作を行うことが必須となる。
有効成分を抽出する操作としては、処理物を水溶性溶媒に浸漬する操作や、ドリップ抽出する操作を採用できる。具体的には、浸漬後に混合や攪拌操作をする態様により行うことができる。
抽出を行う際の溶媒温度としては、常温で行うことも可能であるが、30〜100℃(好ましくは60〜98℃)に加温した溶媒で行うことが可能である。
ここで、水溶性溶媒としては、水を用いることができるが、具体的には、水に可溶な添加剤を添加した水溶液を用いることもできる。当該添加剤としては、最終製品の風味を考慮して、様々な化合物や食品素材を選択することができる。
当該抽出操作を行った後は、固液分離によって原料残渣を除去することで、当該有効成分を含む抽出液(抽出物)を回収することができる。例えば、濾過(濾紙、珪藻土濾過、濾布、メンブレンフィルター、セラミック膜など)、遠心操作、カラム精製などを採用することができる。また、必要に応じて、抽出液を濃縮、乾燥することで、当該有効成分を含む抽出物の乾燥物を得ることができる。また、HPLC等にて分画を行い、当該有効成分を極めて高純度で含む画分の精製物を得ることもできる。
このようにして得られた抽出物(塩味増強組成物)は、飲食品の塩味増強剤として用いることができる。剤の形態としては、抽出液や精製液をそのままの液体状、濃縮液のアンプル状、乾燥させた粉末状、賦形剤等と混合した固形状等にして提供することができる。
[飲食品への添加]
上記工程により得られた塩味増強組成物(塩味増強剤)は、飲食品に添加する(含有させる)ことによって、当該飲食品の塩味を顕著に増強することができる。
ここで、塩味増強対象である「飲食品」としては、食塩を含有する飲食品の全てを対象とすることができる。具体的には、つゆ(麺つゆ、てんつゆ、鍋つゆ等)、ぽん酢、調味酢(すし酢等)、醤油、味噌、だしの素、吸い物(乾燥粉末品を含む)、味噌汁(乾燥粉末品を含む)、煮物用調味液、鍋物用調味液、たれ類、ドレッシング類、ふりかけ類(おむすび山を想定)、米飯調味具剤類(五目ちらしを想定)などを挙げることができる。特に、調味料に対して好適に用いることができる。
上記飲食品の製造工程において、本発明の塩味増強組成物(塩味増強剤)を添加することで、次の目的を達することが可能となる。
例えば、(i) 食塩の使用量を大幅に削減し、その削減分の塩味を補うように本発明の塩味増強組成物(塩味増強剤)を添加することによって、食塩の使用量を削減し且つ異味が付与されていない(他の風味には悪影響がない)飲食品、を製造することが可能となる。即ち、低コストにて優れた減塩飲食品の製造が可能となる。
ここで、食塩使用量の削減可能な割合(減塩率)は飲食品によって異なるが、最大で4割、少なく見積もっても2割の減塩が可能である。
また、(ii) 常法の製造レシピに加えて、本発明の塩味増強組成物(塩味増強剤)をさらに添加することによって、‘通常の飲食品よりも塩味が増強・向上された飲食品’を製造することも可能となる。
本発明の塩味増強組成物(塩味増強剤)の飲食品への添加量(含有量)は、塩味増強組成物(塩味増強剤)の精製度合い、対象の飲食品の種類、添加の目的によって異なるため、一概に決定はできないが、塩味増強効果が奏される量を適宜調節して決定すればよい。
例えば、後述する実施例9の方法に準じて抽出液を調製した場合、液量として好ましくは、0.1〜8%(v/v)、より好ましくは0.2〜5%(v/v)、さらに好ましくは0.3〜4%(v/v)、特に好ましくは0.4〜3%(v/v)、さらに特に好ましくは0.5〜2%(v/v)を好適に添加することができる。
ここで、添加液量が少なすぎる場合十分な塩味増強効果が得られない。また、添加量が多過ぎた場合、糖化粕原料に由来する風味や色が付与される傾向があり好ましくない。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]『穀類糖化粕の亜臨界水処理抽出物が有する塩味増強作用』
穀類糖化粕の亜臨界水処理抽出物を、つゆに添加した場合の塩味に与える影響を調べた。
(1)「穀類糖化粕の調製」
小麦, 米, 及びコーンを破砕混合した穀類粉を調製した。当該穀類粉(370g)及び耐熱性α-アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製「クライスターゼT5」)(0.75g)を60℃の温水(1000mL)に添加混合し、加温して90℃で30分間保持した。さらに加温して120℃に達温した後(耐熱性α-アミラーゼを一度失活させた後)、60℃に冷却した。
次いで、耐熱性α-アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製「クライスターゼT5」)(0.15g), β-アミラーゼ(新日本化学工業株式会社製「スミチームSG」)(1.2g), プロテアーゼ(新日本化学工業株式会社製「LP-50G」)(0.1g), 及び米麹(1.8g)を添加混合し、醸造酢を用いてpHを5.0に調整した後、60℃にて18時間静置して酵素糖化処理を行った。
これを圧搾して糖化醪を分離し、残渣である‘穀類糖化粕’(酵素糖化粕)を得た。穀類糖化粕の構成成分は、難消化性の糖質やタンパク質である。
(2)「亜臨界水処理抽出物の調製」
上記穀類糖化粕12gと、表1-Aに示す溶媒60mLとを混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクター(オーエムラボテック(株)-MMJを外部から加圧できるように改造したもの)の反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる165℃及びその飽和水蒸気圧にて、10分間の亜臨界水処理を行った。なお、加圧は耐圧ステンレスチューブをリアクターと窒素ガスボンベに接続し、充填圧14.7Mpaの窒素ガスで行った。
冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液1-1, 1-3)。また、抽出液の一部を60℃で乾燥させた後、乾燥処理前と同量の液量の水を加えて再溶解した液を調製した(試料液1-2, 1-4)。
また、比較例として、亜臨界水処理を行う代わりに、60℃で7.5時間の加温浸漬を行って抽出液を得、これを濾過した液を調製した(試料液1-5, 1-6)。
Figure 2014233262
(3)「つゆの官能評価」
上記試料液を最終液量に対して0.5%(v/v)だけ含むように添加し、市販の2倍濃縮つゆ(追いかつおつゆ2倍, (株)ミツカン)を水で2倍希釈したつゆを調製した(つゆ1-1〜1-6)。また、比較例として、グルタチオン(GSH)1000ppmを含むようにして、同様にして2倍希釈したつゆを調製した(つゆ1-7)。また、対照例として、通常に水で2倍希釈したつゆを調製した。
得られた各つゆについて、対照を基準「0」とした場合の4段階(「0」〜「+3」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表1-Bに示した。
その結果、亜臨界水処理により得られた各試料液を添加したつゆ(つゆ1-1〜1-4)では、通常のつゆ(対照)に比べて塩味が増大することが示された。当該塩味の強さは、塩味増強物質であるグルタチオンを添加した場合(つゆ1-7)よりも大きいものであった。
なお、通常の加熱浸漬した抽出液を添加した場合では、対照と同程度の塩味しか感知されなかった(つゆ1-5, 1-6)。
当該塩味は、低濃度のエタノールを含む水溶液を用いて亜臨界水処理を行った場合で特に強くなることが示された(つゆ1-3, 1-4)。
なお、各試料液を添加したつゆ(つゆ1-1〜1-4)の風味に関しては、塩味以外の香味も良好であり、通常のつゆ(対照)に比べて風味への悪影響は感知されなかった。
また、当該塩味の強さは、濾過後の処理液(濾液)を一度蒸発させて水に再溶解させた試料液でも同程度の塩味を呈することが示された(つゆ1-2, 1-4)。このことから、当該有効成分は、不揮発性の成分であることが示された。
Figure 2014233262
(4)「考察」
以上の結果から、穀類糖化物の搾汁粕を亜臨界水処理して得られた抽出物には、風味全体に悪影響を与えることなく、塩味を特異的に増強する作用があることが示された。当該塩味増強作用は、エタノールを添加した場合に特に力価が強まることが示された。
[実施例2]『亜臨界水処理のエタノール濃度の検討』
亜臨界水処理において、添加するエタノール濃度が塩味増強作用に与える影響を検討した。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
実施例1で調製した穀類酵素糖化粕(12g)と表2-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液2-1〜2-6)。
Figure 2014233262
(2)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を1%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ2-1〜2-6)を調製した。なお、比較例として、グルタチオン(GSH)1000ppmを含むようにして、同様にして2倍希釈したつゆを調製した(つゆ2-7)。また、対照例として、通常の2倍希釈したつゆを調製した。
各つゆについて、実施例1と同様の方法により塩味の強さを官能評価した。結果を表2-Bに示した。
その結果、エタノール濃度50%(v/v)以下の水溶液を用いて亜臨界水処理を行った場合(つゆ2-2〜2-6)、その抽出液は好適な塩味増強作用を発揮することが示された。特に、エタノール濃度35%(v/v)の水溶液にて亜臨界水処理を行った場合では(つゆ2-4, 2-5)、塩味増強作用の力価が特に強まることが示された。
なお、酢酸を低濃度で含むかどうかの違いは、塩味増強作用の力価に影響しないことが示された(つゆ2-1, 2-4)。
Figure 2014233262
(3)「考察」
これらの結果から、好適な塩味増強効果を奏する抽出液を得る目的で亜臨界水処理を行う場合には、添加剤としてエタノールと酢酸を用いることが好適であることが示された。特に、エタノールを35%(v/v)程度(30〜40%(v/v)と推測される範囲)含むようにして亜臨界水処理を行った場合に、塩味増強作用の力価が特に強まることが示された。
[実施例3]『亜臨界水処理の温度の検討』
亜臨界水処理をするにあたり、亜臨界水処理の温度条件が塩味増強作用に与える影響を調べた。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
実施例1で調製した穀類糖化粕(12g)と表3-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる表3-Aに示す温度及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液3-1〜3-3)。
Figure 2014233262
(2)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を1%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ3-1〜3-3)を調製した。なお、比較例として、グルタチオン(GSH)1000ppmを含むようにして、同様にして2倍希釈したつゆを調製した(つゆ3-4)。また、対照例として、通常の2倍希釈したつゆを調製した。
各つゆについて、実施例1と同様の方法により塩味の強さを官能評価した。結果を表3-Bに示した。
その結果、140〜180℃の温度にて亜臨界水処理を行った場合(つゆ3-1〜3-3)、その抽出液は好適な塩味増強作用を発揮することが示された。特に、160〜180℃にて亜臨界水処理を行った場合では(つゆ3-2, 3-3)、塩味増強作用の力価が特に強まることが示された。但し、180℃で亜臨界水処理を行った場合、塩味は増強するが焦げ臭さも付与されてしまった(つゆ3-3)。
Figure 2014233262
(3)「考察」
これらの結果から、140〜180℃付近の温度で穀類糖化粕の亜臨界水処理を行うことで、好適な塩味増強効果を奏する抽出物が得られることが示された。特に、160℃以上で亜臨界水処理を行った場合には、塩味増強作用の力価がさらに強まることが示された。但し、180℃を超えた温度で処理した場合には、焦げ臭さが付与されてしまう可能性があることが示唆された。
また、140℃を下回る温度で処理した場合では、塩味増強効果が得られにくくなることが示唆された。
[実施例4]『亜臨界水処理におけるクエン酸の影響』
亜臨界水処理をするにあたり、添加剤としてクエン酸を添加した時の効果を検討した。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
実施例1で調製した穀類糖化粕(表4-Aに示す量)と表4-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、表4-Aに示す固液比(原料質量と溶媒容量の比)の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液4-1〜4-4)。
Figure 2014233262
(2)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を1%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ4-1〜4-4)を調製した。各つゆについて、実施例1と同様の方法により塩味の強さを官能評価した。結果を表4-Bに示した。
その結果、1%(w/v)の酢酸を添加して亜臨界水処理を行った場合、原料を増量して固液比1:2.5にすると、十分に可溶化が進まず抽出液の調製が困難となることが示された(試料液4-2)。
一方、1%(w/v)のクエン酸を添加した場合では、原料を増量して固液比1:2.5にした場合でも、十分に可溶化して抽出液の調製が可能となることが示された(試料液4-4)。また、原料をより多く可溶化したことで、抽出液が有する塩味増強作用の力価が高まることが示された(つゆ4-3, 4-4)。
Figure 2014233262
(3)「考察」
以上の結果から、添加剤としてクエン酸を添加した場合、亜臨界水処理の加水分解効率を向上させる効果が発揮され、固液比における固体含量を増量できることが示された。これにより抽出物が有する塩味増強作用の力価が向上することが示された。
[実施例5]『各種添加剤の検討』
亜臨界水処理をするにあたり、亜臨界水処理において添加する各種物質の効果を検討した。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
実施例1で調製した穀類糖化粕(24g)と表5-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:2.5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液5-1〜5-7)。
Figure 2014233262
(2)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を1%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ5-1〜5-7)を調製した。各つゆについて、対照を基準「0」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表5-Bに示した。
その結果、アルギニン、ヒスチジン、アラビノース、又はγ-ポリグルタミン酸を0.5%(w/v)添加して亜臨界水処理を行った場合、これらの抽出液は著しく強い塩味増強作用を発揮することが示された(つゆ5-1〜5-4)。特に、ヒスチジン又はアラビノースの塩味増強作用は顕著であり、つゆに対する風味の悪影響も皆無であった(つゆ5-2〜5-3)。
一方、グルタチオン、パン酵母を添加して亜臨界水処理を行った場合、これらを添加しないで亜臨界水処理を行った場合(つゆ5-7)に比べて、得られた抽出物の塩味増強作用は低下した(つゆ5-5, 5-6)。
Figure 2014233262
(3)「考察」
これらの結果から、アルギニン、ヒスチジン、アラビノース、又はγ-ポリグルタミン酸を添加した場合、亜臨界水処理の加水分解効率を向上させる効果が発揮され、塩味増強作用の力価が特に強まることが示された。特に、ヒスチジン又はアラビノースを添加した時の効果が顕著であった。
[実施例6]『ヒスチジン、アラビノースの塩味増強向上作用の再検討』
亜臨界水処理をするにあたり、ヒスチジン又はアラビノースを添加した時の効果を再検討した。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
実施例1で調製した穀類糖化粕(24g)と表6-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:2.5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
冷却後、得られた処理液に表6-Aに示す物質を添加混合した後、No.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液6-1〜6-5)。
Figure 2014233262
(2)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を2%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ6-1〜6-5)を調製した。各つゆについて、対照を基準「0」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表6-Bに示した。
その結果、ヒスチジン又はアラビノースを0.5%(w/v)添加して亜臨界水処理を行った場合、これらの抽出液は著しく強い塩味増強作用を発揮することが示された(つゆ6-1, 6-2)。一方、亜臨界水処理を行った後にヒスチジン又はアラビノースを0.3g(最終濃度0.5%(w/v))添加し混合して得た抽出液は、これらを添加しなかった場合(つゆ6-5)と同程度の塩味強度しか奏さなかった(つゆ6-3, 6-4)。
Figure 2014233262
(3)「考察」
これらの結果から、ヒスチジン又はアラビノースを添加した場合の塩味増強作用は、ヒスチジン又はアラビノースそのものが物質として発揮する作用ではなく、亜臨界水処理の効果を強めることによって発揮される作用であることが示された。
[実施例7]『各種原料の検討』
上記実施例で各種検討を行った‘穀類糖化粕’は、穀類原料を糖化した後、糖化醪を圧搾し分離した後の残渣である。そこで、穀物を原料として製造される調味料や酒類の製造過程において得られる粕について、原料として利用できるかを検討した。
(1)「各種糖化粕の調製」
・酒粕の調製
蒸米(200g), 米麹(60g), 50%乳酸溶液(20mL), 及び酵母(1.5g)を、水(300mL)に添加混合し15℃で約2.5週間静置することでアルコール発酵を行った。なお、この間、蒸米(400g), 米麹(70g), 水(500mL)を2回程追加投入した。当該静置中、麹菌による液化および糖化、タンパク質分解、酵母によるアルコール発酵が活発に行われていた。その後、圧搾して醪を絞り、残渣である‘酒粕’を得た。
・みりん粕の調製
蒸米(2500g), 米麹(500g)、を40%エタノール水溶液(1800mL)に添加混合し、容器を密閉して、常温(約20℃)にて約1ヵ月間の熟成を行った。その後、圧搾して醪を絞り、残渣である‘みりん粕’を得た。
・米酢粕の調製
米粉(360g), 耐熱性α-アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製「クライスターゼT5」)(1.0g)を60℃の温水(1000mL)に添加混合し、加温して90℃で30分間ホールドした。さらに加温して120℃に達温した後、60℃に冷却した。
次いで、耐熱性α-アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製「クライスターゼT5」)(0.15g), β-アミラーゼ(新日本化学工業株式会社製「スミチームSG」)(1.2g), プロテアーゼ(新日本化学工業株式会社製「LP-50G」)(0.1g), 及び米麹(0.9g)を添加混合し、醸造酢を用いてpHを5.0に調整した後、60℃にて18時間静置して酵素糖化処理を行った。
加温して85℃で10分間静置した後、60℃に冷却し、酸度付けのため醸造酢(230mL)を加えた。これを圧搾して糖化醪を分離し、残渣である‘米酢粕’(酵素糖化粕)を得た。
・酵素糖化粕の調製
実施例1に記載の方法と同様にして、穀類粉を糖化処理して‘酵素糖化粕’を調製した。
(2)「亜臨界水処理抽出物の調製」
表7-Aに示す各種糖化粕(24g)と表7-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:2.5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液7-1〜7-10)。
Figure 2014233262
(3)「つゆの官能評価」
上記調製した各試料液を2%(v/v)だけ含むように添加して、実施例1に記載の方法と同様にして2倍希釈した各つゆ(つゆ7-1〜7-10)を調製した。各つゆについて、対照を基準「0」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表7-Bに示した。
その結果、亜臨界水処理を行う各種原料として、酒粕、みりん粕、又は米酢粕を用いた場合、これらの抽出液は強い塩味増強作用を発揮することが示された(つゆ7-1, 7-4, 7-7)。これらの塩味強度向上作用は、酵素糖化処理により調製した酵素糖化粕を用いた場合(つゆ7-10)に比べて、1〜2段階高い力価を示した。
また、酒粕、みりん粕、又は米酢粕を原料として用いた場合でも、ヒスチジン又はアラビノースを添加することで、抽出液の塩味増強作用の力価は著しく向上した(つゆ7-2, 7-3, 7-5, 7-6, 7-8, 7-9)。
Figure 2014233262
(4)「考察」
これらの結果から、亜臨界水処理を行うにあたり、穀類を原料とした調味料や酒類の製造過程で生成される各種糖化粕を原料として用いて、強い塩味増強作用を有する抽出物が得られることが示された。また、ヒスチジン又はアラビノースを添加した場合の加水分解効率の向上効果は、これらの原料に対しても有効であることが示された。
[実施例8]『減塩効果の検証』
亜臨界水処理抽出液の添加によりどの程度の減塩が可能かを検証した。
(1)「食塩水希釈系列を用いた減塩効果の検討」
表8に示す各濃度の食塩水を2つずつ調製した。各濃度の食塩水の一方に、実施例2にて調製した試料液2-5(原料:穀類糖化粕、溶媒:35%EtOH, 1%酢酸水、固液比1対5、亜臨界水条件:160℃, 20分)を0.5%濃度で加えた。これを試料液添加区とした。他方、残りの各濃度食塩水を無添加区とした。
試料液添加区の各食塩水について塩味の官能評価を行い、無添加区の食塩水の希釈系列のどの濃度の塩味と同程度であるかを評価した。結果を表8に示した。
その結果、亜臨界水処理抽出液を0.5%添加した食塩水(試料液添加区)では、通常の食塩水(無添加区)よりも5〜8割程度の食塩の添加により、通常の食塩水と同程度の塩味が知覚されることが示された。なお、塩味の増強程度は、食塩が低濃度であるほど顕著に発揮されることが示された。
Figure 2014233262
(2)「考察」
以上の結果から、穀類糖化物の搾汁粕の亜臨界水処理抽出物を用いることによって最大で2〜5割の減塩飲食品の製造が可能であることが示唆された。なお、塩味の増強効果は、食塩が低濃度であるほど顕著に発揮されることが示された。
[実施例9]『減塩効果の検証』
亜臨界水処理抽出液を調味料生産の原料として添加することによって、実際にどの程度の減塩が可能かを検証した。
(1)「亜臨界水処理抽出液の調製」
表9-Aに示す各種糖化粕(24g)と表9-Aに示す溶媒(60mL)を混合し、固液比(原料質量と溶媒容量の比)1:2.5の溶液を調製した。
これを、高圧マイクロリアクターの反応容器内に添加し封入し、反応容器内の水が亜臨界状態となる160℃及びその飽和水蒸気圧にて、20分間の亜臨界水処理を行った。なお、当該処理の具体的な操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
冷却後、得られた処理液をNo.2濾紙で濾過し、濾液を‘亜臨界水処理抽出液’として回収した(試料液9-1〜9-4)。
Figure 2014233262
(2)「つゆに対する減塩効果の検証」
市販の通常醤油(食塩含量16g/100mL)31mL, 砂糖3g, 顆粒鰹だし2g, 湯を混合して通常のつゆ100mL(食塩含量4.96g/100mL)を調製した(対照)。
また、上記調製した各試料液を2%(v/v)含むように添加して、濃口醤油の一部又は全部を市販の減塩醤油(食塩含量8g/100mL,通常醤油に比べて塩味以外の官能的差異は感じられない)に代価して、減塩率1割、2割、3割、4割、5割の各つゆを調製した。
各つゆについて、対照を基準「+5」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表9-Bに示した。
その結果、亜臨界水処理抽出液を2%添加して調製したつゆでは、3割減塩して調製した場合でも、通常のつゆと同程度の塩味を呈することが示された。特に、米酢粕にヒスチジンを添加して亜臨界水処理を行って得た試料液9-4では、4割程度の減塩が可能であることが示された。また、つゆの風味全体への悪影響は知覚されなかった。
Figure 2014233262
(3)「ぽん酢に対する減塩効果の検証」
市販の通常醤油(食塩含量16g/100mL)40mL, 食酢20mL, みりん12mL, ゆず果汁適量を混合して通常のぽん酢100mL(食塩含量6.40g/100mL)を調製した(対照)。
また、上記調製した各試料液を2%(v/v)含むように添加して、市販の通常醤油の一部又は全部を市販の減塩醤油(食塩含量8g/100mL)に代価して、減塩率1割、2割、3割、4割、5割の各ぽん酢を調製した。
各ぽん酢について、対照を基準「+5」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表9-Cに示した。
その結果、亜臨界水処理抽出液を2%添加して調製したつゆでは、3割減塩して調製した場合でも、通常のぽん酢と同程度の塩味を有することが示された。特に、米酢粕にヒスチジンを添加して亜臨界水処理を行って得た試料液9-4では、4割程度の減塩が可能であることが示された。また、ぽん酢の風味全体への悪影響は知覚されなかった。
Figure 2014233262
(4)「すし酢に対する減塩効果の検証」
食酢90mL, 食塩10g, 砂糖36gを混合して通常のすし酢100mL(食塩含量10g/100mL)を調製した(対照)。
また、上記調製した各試料液を2%(v/v)含むように添加して、食塩の配合割合を調整して減塩率1割、2割、3割、4割、5割の各すし酢を調製した。
各つゆについて、対照を基準「+5」とした場合の7段階(「0」〜「+6」)の塩味の強さの評価を行った。結果を表9-Dに示した。
その結果、亜臨界水処理抽出液を2%添加して調製したすし酢では、2割減塩して調製した場合でも、通常のすし酢と同程度の塩味を有することが示された。特にヒスチジンを添加して亜臨界水処理を行って得た試料液9-2, 9-4では、3割程度の減塩が可能であることが示された。また、すし酢の風味全体への悪影響は知覚されなかった。
Figure 2014233262
(4)「考察」
以上の結果から、調味料を製造するにあたり、穀類糖化物の搾汁粕を亜臨界水処理して得られた抽出物を用いることによって、最大で2〜4割の減塩を達成した飲食品又は調味料の製造が可能となることが示された。
本発明によれば、食塩使用量が大幅に少ない飲食品であって、異味を呈さずに強い塩味を呈する飲食品を、低コストにて提供することが可能とがる。これにより、異味を付与することなく大幅に減塩された飲食品を提供することが可能となり、飲食品業界に有用に利用されることが期待される。
また、本発明は、穀類糖化粕(特に飲食品製造時に得られる未利用廃棄物)を亜臨界水処理した抽出物を有効成分とする技術であるため、複雑な操作を強いることなく低コストにて施用可能である。

Claims (9)

  1. 下記(A)に記載の原料に対して、下記(B1)及び(B2)に記載の条件にて亜臨界水処理を行って得られた亜臨界水処理物。
    (A):穀類を糖化処理した後に得られる固形分。
    (B1):温度140〜180℃及び圧力0.36〜12.5MPaの高温高圧条件。
    (B2):前記原料と亜臨界状態になった水を1分間以上接触させる条件。
  2. 請求項1に記載の亜臨界水処理物からの水溶性溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする塩味増強剤。
  3. 前記(A)に記載の穀類が、米、小麦、大麦、及びトウモロコシから選ばれる1以上のものである、請求項2に記載の塩味増強剤。
  4. 前記(A)に記載の糖化処理が、麹菌培養物を添加して行うものである、請求項2又は3に記載の塩味増強剤。
  5. 前記(A)に記載の糖化処理が、アミラーゼ剤及び/又はプロテアーゼ剤を添加して行うものである、請求項2〜4のいずれかに記載の塩味増強剤。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有してなる飲食品。
  7. 請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有してなる調味料。
  8. 請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有させることを特徴とする飲食品の製造方法。
  9. 請求項2〜5のいずれかに記載の塩味増強剤を含有させることを特徴とする飲食品の塩味増強方法。
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