JP2014233126A - 電力変換装置 - Google Patents

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隆太 長谷川
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俊介 玉田
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大地 鈴木
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Abstract

【課題】1パルス制御方式の電力変換装置において各単位変換器のコンデンサ電圧の変動を小さくする電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流コンデンサ53の直流を交流に変換するHブリッジ単位変換器5を複数直列接続した各相アーム4をデルタ結線してなり、各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧をパルス制御する変換器制御部73を備えるようにした。この変換器制御部73は、1パルス制御により、Hブリッジ単位変換器5の出力電圧の立ち上げ及び立ち下げ位相をずらすことで、各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧を階段状に積み上げてなる正弦波の相電圧を生成させ、出力電圧の立ち上げ及び立ち下げを三相交流系統の半周期に一回以下に制御するようにした。
【選択図】図5

Description

本実施形態は、無効電力を注入又は吸収する電力変換装置に関する。
長距離送電系統の定電圧制御や系統安定化対策として電力系統の無効電力を調整する無効電力補償装置が活用されている。無効電力補償装置は、例えば系統電圧が低いと無効電力を系統内に注入し、逆の場合には無効電力を吸収する。この無効電力補償装置は、電力系統における定電圧制御、系統安定化、調相の他、負荷に対する電圧フリッカの抑制や負荷不平衡の補償等の目的でも既に広く用いられている。
近年、大規模洋上風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーによる電力供給設備が次々に建設され、今後も普及していくことが予想されている。但し、それらの大規模再生可能エネルギー発電所から大都市などの消費地まで大電力を長距離に送電しようとした場合、交流送電網のインピーダンスによる位相変化や電圧上昇により、送電線の不安定などが発生し一定容量以上は送電できない問題が発生することが懸念されている。そのため、無効電力補償装置の適用範囲はますます拡がりつつある。
無効電力補償装置としては、電力系統に対して絶縁トランスを介して接続されるインバータを有し、交流系統を安定化させる方向及び位相の無効電流を生成して電力系統へ供給し、電力系統の電圧調整に供するものがある。インバータは、直流コンデンサを直流電圧源として備え、スイッチング素子のオンオフにより直流コンデンサの直流を交流へ変換する。このインバータとしては、3相2レベルインバータや3相3レベルインバータが多用されている。特に3相2レベルインバータを用いた無効電力補償装置は、直流から3相交流を出力する電力変換装置を構成する上で必要最小限の半導体スイッチング素子6個で構成されるため、小型低コスト化を図ることが出来る。
しかしながら、3相2レベルインバータを用いた場合、その出力電圧波形は、入力直流電圧をVdcとしたとき、各相ごとに、+Vdc/2と、−Vdc/2の2値の切替をPWM制御によるパルス幅変調で行い、擬似的な交流波形となる。そうすると、高耐圧のスイッチング素子を使用しているためにPWMスイッチング周波数を高く出来ない無効電力補償装置では、スイッチング高調波低減のために、3相交流出力にリアクトルやコンデンサで構成されるフィルタを挿入する必要が生じていた。
このフィルタは、電力系統に流れ出す高調波成分が他の機器に悪影響を及ぼさないレベルまで低減するために大きなフィルタ容量を有するものが必要とされ、無効電力補償装置のコスト向上及び重量増加を招いていた。
そこで、インバータを単位変換器として複数直列接続することで細かい電圧ステップを出力できるようにし、多段の階段状の電圧波形を出力する無効電力補償装置が研究開発の段階にある。出力電圧及び出力電流の波形が多レベル化により正弦波に近づけば、スイッチング高調波低減のためのフィルタを不要とすることができるメリットも生じるからである。
この回路方式においては、PWM制御が考えられる(例えば特許文献1参照)。PWM制御では、例えば、各単位変換器が三角キャリアの位相を均等にずらして、相全体で多段の階段状正弦波を合成するものである。しかしながら、本制御を適用する場合、三角波キャリア周波数を電源周波数より大きくする必要があり、スイッチングロスが大きくなってしまうし、スイッチング回数の低減には限界がある。
そこで、1周期に各単位変換器を1回スイッチングする1パルス制御が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。1パルス制御では、1周期の間に1回行われる各単位変換器の立ち上げと立下げの位相をずらすことで、各単位変換器の出力合成波を多段の階段状に形成するものである。スイッチング回数が大幅に低減するので、スイッチングロスの低減を図ることができる。
また、1パルス制御を採用するにあたっての必要事項としては、各単位変換器のコンデンサ電圧のバランスである。そこで、1パルス制御方式では、各単位変換器が出力する電圧の立ち上がり位相と立ち下がり位相を調整することで各単位変換器の充放電を均等化させることが提案されている。
しかしながら、従来の1パルス制御は1周期に各単位変換器を1回スイッチングする方式であるため、半周期におけるコンデンサ電圧の変動がPWM制御より大きくなる。そのため、出力電流歪みを回避するためにコンデンサ容量を大きくする必要があり、装置体積、コストが増大する問題があった。
また、従来の1パルス制御方式では電圧出力及び出力停止がなされる単位変換器の順番が規定されており、相電圧の大きさによっては電圧出力に関与せずに充電ができない単位変換器も存在していた。そのため、各単位変換器が出力する電圧の立ち上がり位相と立ち下がり位相を調整するだけでは、各単位変換器のコンデンサ電圧バランスを図る上で不十分であった。
特開2011−223784号公報
F.Z.Peng, J.S. Lai, J. McKeever, J. VanCoevering, "A multilevel voltage sourceinverter with separate dc sources for static Var generation," ConferenceRecord of the IEEE-IAS Annual Meeting, 1995, pp. 2541-2548
本実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、1パルス制御方式の電力変換装置において各単位変換器のコンデンサ電圧の変動を小さくする電力変換装置を提供することを目的とする。
本実施形態の電力変換装置は、三相交流系統に対して無効電力を注入又は吸収する電力変換装置であって、直流コンデンサを含み、この直流コンデンサの直流を交流に変換する単位変換器と、前記単位変換器を複数直列接続してなる各相アームと、前記各相アームをデルタ結線して構成されるデルタ結線部と、前記単位変換器の出力電圧をパルス制御する変換器制御部と、を備え、前記変換器制御部は、1パルス制御により、前記単位変換器の出力電圧の立ち上げ及び立ち下げ位相をずらすことで、各単位変換器の出力電圧を階段状に積み上げてなる正弦波の相電圧を前記相アームに生成させ、前記出力電圧の立ち上げ及び立ち下げを三相交流系統の半周期に一回以下に制御すること、を特徴とする。
各無効電力補償装置の構成図である。 Hブリッジ単位変換器の構成図である。 制御部による制御全体構成を模式図である。 相間バランス制御部の制御構成を示す模式図である。 変換器制御部の制御態様を示すグラフである。 他の実施形態に係る無効電力補償装置の構成図である。
(構成)
以下、無効電力補償装置の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る無効電力補償装置の構成図である。この無効電力補償装置1は、3相50/60Hzの交流電力系統に対して、変圧器2を介した無効電流の注入又は吸収を行う電力変換装置である。交流電力系統の電圧が低いと無効電力を交流電力系統に注入し、交流電力系統の電圧が高いと無効電力を交流電力系統から吸収することにより、交流電力系統のインピーダンスを利用して交流電力系統の電圧を調整する。
この無効電力補償装置1はデルタ結線部3を備える。デルタ結線部3は、変圧器2を介して交流電力系統に接続されている。デルタ結線部3の各相には、相アーム4R、4S、4Tと短絡抑制用リアクトル6R,6S,6Tが直列接続されている。相アーム4R、4S、4Tは、N個(1≦N)のHブリッジ単位変換器5が直列接続されてなり、多段階段波形の相電圧を出力する電源回路を形成する。短絡抑制用リアクトル6R,6S,6Tは、デルタ結線部3内にリアクタンスを発生させ、デルタ結線部3内の循環電流の急増を抑制する。
Hブリッジ単位変換器5は、図2に示すように、スイッチ52を直列に2個接続したレグ51を2つと直流コンデンサ53とを並列に接続してなる。スイッチ52は、オン時には一方向に電流を流すIGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子と、この半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとにより構成される逆導通スイッチである。例えば、GTO、GCT、又はMOSFET等のように、自己消弧型素子であって、オンオフ制御可能なスイッチング素子であれば、IGBTに代えて代用可能である。
より詳細には、図1に示すように、R相アーム4Rの負側端子と短絡抑制用リアクトル6Sの正側端子とが接続され、短絡抑制用リアクトル6Sの負側端子とS相アーム4Sの正側端子とが接続されている。S相アーム4Sの負側端子と短絡抑制用リアクトル6Tの正側端子とが接続され、短絡抑制用リアクトル6Tの負側端子とT相アーム4Tの正側端子とが接続されている。T相アーム4Tの負側端子と短絡抑制用リアクトル6Rの正側端子とが接続され、短絡抑制用リアクトル6Rの負側端子とR相アーム4Rの正側端子とが接続されている。
これにより、各相アーム4R,4S,4Tと短絡抑制用リアクトル6R,6S,6Tとが直列接続の上、デルタ結線されている。尚、各相アーム4R,4S,4Tと短絡抑制用リアクトル6R,6S,6Tの接続位置関係は逆にすることもできる。
また、R相アーム4Rの正側端子、S相アーム4Sの正側端子、T相アーム4Tの正側端子は変圧器2の二次側に接続される。変圧器2の一次側は交流電力系統に接続される。変換器2は、各相において一次巻線と二次巻線とを備える絶縁トランスを有する。変圧器2の内部形態はデルタ結線又はY結線のどちらでもよく、電圧階級や接地の必要性を考慮し、最適な結線方式が選択される。
そして、この無効電力補償装置1には、各相アーム4R,4S,4Tの各スイッチ52の開閉を指令する制御部7(図3参照)を備えている。この制御部7は、同相のHブリッジ単位変換器5が同位相の正弦波の電圧を出力し、また各相のHブリッジ単位変換器5が120度シフトの正弦波の電圧を出力するようにスイッチング素子のオンオフを制御する。
更には、制御部7は、相間及び段間の直流コンデンサ53の電圧バランスを保つための零相電圧を出力するようにスイッチング素子のオンオフを制御する。尚、循環電流はデルタ結線部3内で完結し、変換装置外部には流出しない。よって、制御部7は任意の循環電流の生成を制御し、この循環電流を利用し、各相アーム4を構成する直流コンデンサ53の電圧バランスを制御する。
(制御動作)
図3に示す制御部7は、ASIC、FPGA、又はCPUを搭載したコンピュータのソフトウェア処理等によって実現される補償制御部71と相間バランス制御部72と変換器制御部73とを備えている。
補償制御部71は、交流電力系統に対する無効電力の注入又は吸収のために各相アーム4の出力電圧を制御する。相間バランス制御部72は、相間のコンデンサ電圧の平衡を図る。すなわち、補償制御部71と相間バランス制御部72は、循環電流を発生させる相電圧の瞬時値を決定する電圧決定部である。
変換器制御部73は、Hブリッジ単位変換器5に対するゲート信号の出力源であり、相内の各直流コンデンサ53の電圧平衡を図りつつ、補償制御部71及び相間バランス制御部72が生成した出力電圧指令値vr*、vs*、vt*に倣った出力電圧を各相アーム4に出力させる。
(補償制御部)
まず、補償制御部71は、3相/DQ変換部71aとPI制御部71bとDQ/3相変換部71cとを備える。3相/DQ変換部71aには、各相アーム4R,4S,4Tの電流値ir,is,itが入力される。3相/DQ変換部71aは、電流ir,is,itを3相/DQ変換してD軸電流値id及びQ軸電流値iqを出力する。
PI制御部71bは、3相/DQ変換部71aが出力するD軸電流値id及びQ軸電流値iqとD軸電流指令値id*及びQ軸電流指令値iq*の入力を受ける。D軸電流指令値id*及びQ軸電流指令値iq*は、交流電力系統に対して予定される注入電流又は吸収電流を示す。このPI制御部71bは、比例積分制御により、D軸電流id及びQ軸電流iqがD軸電流指令値id*及びQ軸電流指令値iq*に追従するためのD軸電圧指令値vd*及びQ軸電圧指令値vq*を算出する。
そして、DQ/3相変換部71aは、PI制御部71bが算出したD軸電圧指令値vd*及びQ軸電圧指令値vq*をDQ/三相変換により各相の電圧指令値に戻す。制御部7では、加算部72hにより、これら各相の電圧指令値に対して零相電圧指令値vz*が加算される。零相電圧指令値vz*は、各相間の電圧バランスをとるための指令値であり、相間バランス制御部72から出力される。
(相間バランス制御部)
図4に基づき、相間バランス制御部72による零相電圧指令値vz*の生成について説明する。相間バランス制御部72は、全相のコンデンサ電圧平均と各相のコンデンサ電圧平均との各偏差を是正する循環電流フィードバック指令値を生成し、その循環電流フィードバック指令値を出力する零相電圧指令値を決定する。すなわち、相間バランス制御部72は、循環電流制御部721と零相電圧制御部722とを備える。循環電流制御部721は、移動平均算出部72aと全相平均算出部72bと偏差算出部72cと三相/二相変換部72dとPI制御部72eと循環電流算出部72fを備える。
まず、相間バランス制御部72では、移動平均算出部72aにより、各相のコンデンサ電圧移動平均値vc_r_ma、vc_s_ma、vc_t_maと全コンデンサ電圧移動平均値vc_maを算出する。移動平均の周期は、直流コンデンサ53の充放電周期である交流系統の2倍であり、交流系統の周波数が50Hzのときは移動平均周期は100Hz、電源周波数が60Hzのときは移動平均周期は120Hzである。全コンデンサ電圧移動平均値vc_maは、全相平均算出部72bにより各コンデンサ電圧移動平均値vc_r_ma、vc_s_ma、vc_t_maを平均することで算出される。
偏差算出部72cは、全コンデンサ電圧移動平均値vc_maと各相のコンデンサ電圧移動平均値vc_r_ma、vc_s_ma、vc_t_maのそれぞれの偏差をとる。すなわち、相間バランス制御部72は、この各偏差を零にする零相電圧値vz*を算出するものであり、各相のコンデンサ電圧を全相のコンデンサ電圧平均に揃える制御を行う。
そこで、相間制御部72では、各相の偏差を三相/二相変換部72dにより、偏差算出部72cが算出した3相量の偏差をαβ変換することで、2相の偏差成分dvc_α、dvc_βに等価変換しておく。そして、PI制御部72eは、この偏差成分dvc_α、dvc_βのそれぞれを比例積分制御して、2相の電流指令値成分pi_vc_α、pi_vc_βを算出する。
電流指令値成分pi_vc_α、pi_vc_βは、三相間のコンデンサ電圧の不平衡度合いを示す。すなわち、ベクトル(pi_vc_α,pi_vc_β)の大きさは、不均衡の度合いを示し、向きはどの相のコンデンサ電圧が大きいか乃至は小さいかを表している。
そこで、循環電流算出部72fは、ベクトル(pi_vc_α,pi_vc_β)の大きさを√
(pi_vc_α+pi_vc_β)の計算により導いて循環電流振幅指令値amp_iz*とし、ベクトル(pi_vc_α,pi_vc_β)の偏角をArctan(pi_vc_β/pi_vc_α)の計算により導いて循環電流位相指令値θ_iz*とする。
循環電流振幅指令値amp_iz*は相間コンデンサ電圧の不平衡度合いを表し、循環電流位相指令値θ_iz*はどの相のコンデンサ電圧が大きいか乃至は小さいかを表している。そこで、循環電流算出部72fは、循環電流振幅指令値amp_iz*と循環電流位相指令値θ_iz*から偏差を是正する循環電流フィードバック指令値iZ*fbを計算する。すなわち、iZ*fb=amp_iz*×sin(θ−θ_iz*)を計算する。尚、θは全体の出力電圧位相指令値θである。
ここで、正相電流のみを出力しているとき、各直流コンデンサ53の漏れ電流や各スイッチング素子の漏れ電流のバラツキが存在しない理想の状態においては、各相アーム4の1周期のエネルギー収支は0となり、相間のコンデンサ電圧は原理的に平衡を保つ。また、逆相電流を出力するとき、各相アーム4の1周期のエネルギー収支は0とならずに相間のコンデンサ電圧は不平衡に傾くが、相間バランス制御部72のフィードバック制御によって定常状態では平衡状態を保つことができる。すなわち、逆相電流をin×sin(θn)とすると、フィードバック制御により流れる循環電流は、逆相電流と同一の振幅、位相となる。
しかしながら、逆相電流が変化する過渡状態においては、直流コンデンサ53の不平衡度合いが大きくなる傾向がある。そこで、相間バランス制御部72は、循環電流算出部72fと零相電圧制御部722との間に、フィードフォワード指令値加算部72iを備えている。フィードバック制御のみである場合には、相間のコンデンサ電圧がアンバランスとなって初めてバランス制御が機能することとなるが、フィードフォワード制御が追加されれば、相間のコンデンサ電圧のアンバランスを事前に抑制できる。
フィードフォワード指令値加算部72iは、循環電流フィードバック指令値iZ*fbを受け取り、この循環電流フィードバック指令値iZ*fbに循環電流フィードフォワード指令値iZ*_ffを加算した循環電流指令値iZ*を生成し、零相電圧制御部722に出力する。すなわち、フィードフォワード指令値加算部72iは、iZ*=iZ*_ff+iZ*_fbを行う。循環電流フィードフォワード指令値iZ*_ffは、逆相電流と同一の振幅及び同位相であり、iZ*_ff=in×sin(θn)とする。
零相電圧制御部722は、デルタ結線部3の循環電流izを検出し、循環電流指令値iZ*の入力を受けることで比例積分制御により零相電圧指令値vz*を出力する。循環電流izは、各相アーム4R,4S,4Tの電流ir,is,itから(iz+is+it)/3の計算により算出される。そして、循環電流フィードバック指令値iZ*fbと循環電流izとにより得られる偏差信号が入力されたPI制御部72gにより、循環電流izが循環電流指令値iZ*に追従するための零相電圧指令値vz*を算出する。加算部72hは、補償制御部71が出力した各相の電圧指令値に零相電圧指令値vz*を加算し、各相の電圧指令値vr*、vs*、vt*とする。電圧指令値vr*、vs*、vt*は瞬時値である。
(変換器制御部)
変換器制御部73は、各相の電圧指令値vr*、vs*、vt*が入力され、各Hブリッジ変換器5の充放電タイミングを規定するゲート信号を各Hブリッジ変換器5の各スイッチング素子に出力することで、各Hブリッジ変換器5の出力の開始又は停止と出力方向の正負を制御する。この制御は、各Hブリッジ変換器5を均等に使用することで、相内の各直流コンデンサ53の電圧の平衡化を図るものである。
すなわち、変換器制御部73は、出力の立ち上げ及び立ち下げを実施する各直流コンデンサ53を、相内の各直流コンデンサ53が有するコンデンサ電圧の大小で選択する。選択の際は、コンデンサ電圧が高い順にHブリッジ変換器5を選択する。また、充放電に関与しなかった直流コンデンサ53が存在する場合、充放電の切り換えタイミングで、最もコンデンサ電圧が高い直流コンデンサ53を有するHブリッジ変換器5と充放電に不関与のHブリッジ変換器5との出力の開始又は停止を入れ替える。充放電に不関与のHブリッジ変換器5のコンデンサ電圧が高い場合には入れ替えを実施しない。
また、変換器制御部73は、立ち上げ及び立ち下げの位相を、出力の開始又は停止するHブリッジ変換器5の直流コンデンサ53が有するコンデンサ電圧と電圧指令値vr*、vs*、vt*との定量的関係により決定する。Hブリッジ変換器5の出力方向の正負は、電圧指令値vr*、vs*、vt*の正負により決定される。
以下、図5に基づき、この変換器制御部73による各相内の各コンデンサ電圧のバランス制御の具体例を説明する。説明の都合上、R相出力電流irの位相をR相出力電圧vrより90度進ませる進相運転を例に採る。また、R相アーム4Rは4つの各Hブリッジ単位変換器5で構成されているものとし、各Hブリッジ単位変換器5をCr1〜Cr4と区別し、これらHブリッジ単位変換器5をCr1〜Cr4のコンデンサ電圧をvc_r1〜vc_r4とし、その移動平均をvc_r1_ma〜vc_r4_maとする。移動平均の周期は、直流コンデンサ53の充放電周期であり、R相アーム4の出力電流ir及び出力電圧vrの2分の1である。
(タイミングt0〜t4:コンデンサ放電期間)
まず、出力電圧指令値vr*の値が正及び出力電流irが正の期間t0〜t4では、直流コンデンサ53は放電期間である。この期間t0〜t4では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を長くし、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を短くする。
(タイミングt1:コンデンサ放電期間)
まず、期間t0〜t4では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧vc_r1_ma〜vc_r4_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r1_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧vc_r1÷2を上回ったタイミングt1で、Hブリッジ単位変換器cnv_r1にゲート信号を出力し、Hブリッジ単位変換器cnv_r1に正電圧を出力させる。すなわち、Hブリッジ単位変換器cnv_r1の正電圧を立ち上げる。
(タイミングt2:コンデンサ放電期間)
タイミングt1経過後もR相アーム4への出力電圧指令値vr*は引き続き正であり、出力電流irも引き続き正である。そのため、直流コンデンサ53は放電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力を行っていないコンデンサ電圧vc_r2_ma〜vc_r4_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r2_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧(vc_r1+vc_r2÷2)を上回ったタイミングt2で、Hブリッジ単位変換器cnv_r2へのゲート信号出力を追加し、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の正電圧出力を追加させる。
(タイミングt3:コンデンサ放電期間)
タイミングt2経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き正であり、出力電流irも引き続き正である。そのため、直流コンデンサ53は放電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力を行っていないコンデンサ電圧vc_r3_ma又はvc_r4_maのうち大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r3_maが大きい電圧であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧(vc_r1+vc_r2+vc_r3÷2)を上回ったタイミングt3で、Hブリッジ単位変換器cnv_r3へのゲート信号出力を追加し、Hブリッジ単位変換器cnv_r3の正電圧出力を追加させる。
(タイミングt4:充放電切り替わりタイミング)
次に、期間t4〜t8では出力電圧指令値vr*の傾きが負及び出力電流irが負に転じる。すなわち、直流コンデンサ53は充電期間に転じる。そのため、直前充電期間t0〜t4で電圧を出力しなかったHブリッジ単位変換器cnv_r4は充電される機会を失う。コンデンサはコンデンサ自身やスイッチング素子の漏れ電流により徐々に放電されるので、充電される機会が無いとコンデンサ電圧vc_r4は電圧が低下する一方となり、コンデンサ電圧がアンバランスとなる。
そこで、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*の傾きが負に転じ、直流コンデンサ53が充電期間に転じたタイミングt4で、最もコンデンサ電圧が高い直流コンデンサ53を有するHブリッジ変換器5と充放電に不関与のHブリッジ変換器5との出力の開始又は停止を入れ替える。この動作は、一のHブリッジ単位変換器5の電圧出力を停止する代わりに、別の一のHブリッジ単位変換器5が電圧を出力するので、全体の出力電圧vrには影響しない。
すなわち、変換器制御部73は、電圧未出力のコンデンサ電圧vc_r4_maがvc_r1_ma〜vc_r4_maの中で最小か判断し、最小であれば、コンデンサ電圧vc_r1_ma〜vc_r3_maのうち最も大きい電圧を特定する。コンデンサ電圧vc_r1_maが最大であったとすると、変換器制御部73は、Hブリッジ単位変換器cnv_r1に対するゲート信号の出力を停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r1の電圧出力は停止させ、代わりに、Hブリッジ単位変換器cnv_r4へのゲート信号出力を追加し、Hブリッジ単位変換器cnv_r4の正電圧出力に入れ替える。換言すれば、Hブリッジ単位変換器cnv_r1の電圧を立ち下げ、代わりに、Hブリッジ単位変換器cnv_r4の電圧を立ち上げる。
(タイミングt4〜t8:コンデンサ充電期間)
出力電圧指令値vr*の値が正及び出力電流irが負の期間t4〜t8では、直流コンデンサ53は充電期間となる。この期間t4〜t8では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を長くし、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を短くする。
(タイミングt5:コンデンサ充電期間)
まず、期間t4〜t8では、変換器制御部73は、電圧出力を継続しているコンデンサ電圧vc_r2_ma〜vc_r4_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r2_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧(vc_r2÷2+vc_r3+vc_r4)を下回ったタイミングt5で、Hブリッジ単位変換器cnv_r2へのゲート信号出力を停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の電圧出力を停止させる。すなわち、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の電圧を立ち下げる。
(タイミングt6:コンデンサ充電期間)
タイミングt5経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き正であり、出力電流irも引き続き負である。そのため、直流コンデンサ53は充電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力中のコンデンサ電圧vc_r3_ma又はvc_r4_maのうち大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r3_maが大きい電圧であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧(vc_r3÷2+vc_r4)を下回ったタイミングt6で、Hブリッジ単位変換器cnv_r3へのゲート信号出力を停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r3の正電圧出力を停止させる。
(タイミングt7:コンデンサ充電期間)
タイミングt6経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き正であり、出力電流irも引き続き負である。そのため、直流コンデンサ53は充電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力中のHブリッジ単位変換器cnv_r4へのゲート信号出力を、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧vc_r4÷2を下回ったタイミングt7で停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r4の正電圧出力を停止させる。
(タイミングt8〜t12:コンデンサ放電期間)
出力電圧指令値vr*の値が負及び出力電流irが負の期間t8〜t12では、直流コンデンサ53は放電期間である。この期間t8〜t12では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力を長くし、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を短くする。
(タイミングt9:コンデンサ放電期間)
まず、期間t8〜t12では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧vc_r1_ma〜vc_r4_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r4_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−vc_r4÷2を下回ったタイミングt9で、Hブリッジ単位変換器cnv_r4にゲート信号を出力し、Hブリッジ単位変換器cnv_r4に負電圧を出力させる。すなわち、Hブリッジ単位変換器cnv_r4の負電圧を立ち上げる。
(タイミングt10:コンデンサ放電期間)
タイミングt9経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き負であり、出力電流irも引き続き負である。そのため、直流コンデンサ53は放電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力を行っていないコンデンサ電圧vc_r1_ma〜vc_r3_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r3_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−(vc_r3÷2+vc_r4)を下回ったタイミングt9で、Hブリッジ単位変換器cnv_r3へのゲート信号出力を追加し、Hブリッジ単位変換器cnv_r3の負電圧出力を追加させる。
(タイミングt11:コンデンサ放電期間)
タイミングt10経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き負であり、出力電流irも引き続き負である。そのため、直流コンデンサ53は放電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力を行っていないコンデンサ電圧vc_r1_ma及びvc_r2_maのうち大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r2_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−(vc_r2÷2+vc_r3+vc_r4)を下回ったタイミングt11で、Hブリッジ単位変換器cnv_r2へのゲート信号出力を追加し、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の負電圧出力を追加させる。
(タイミングt12:充放電切り替わりタイミング)
次に、期間t12〜t15では出力電圧指令値vr*の傾きが正及び出力電流irが正に転じる。すなわち、直流コンデンサ53は充電期間に転じる。そのため、直前充電期間t12〜t15で電圧を出力しなかったHブリッジ単位変換器cnv_r1は充電される機会を失う。そこで、変換器制御部73は、直流コンデンサ53が充電期間に転じたタイミングt12で、最もコンデンサ電圧が高い直流コンデンサ53を有するHブリッジ変換器5と充放電に不関与のHブリッジ変換器5との出力の開始又は停止を入れ替える。
但し、変換器制御部73は、電圧未出力のコンデンサ電圧vc_r1_maがvc_r1_ma〜vc_r4_maの中で最小か判断し、最小でなければ充電不要として、タイミングt4のようにHブリッジ単位変換器5の出力電圧を入れ替えない。
(タイミングt12〜t15:コンデンサ充電期間)
まず、出力電圧指令値vr*の値が負及び出力電流irが正の期間t12〜t15では、直流コンデンサ53は充電期間である。この期間t12〜t15では、変換器制御部73は、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を長くし、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を短くする。
(タイミングt13:コンデンサ充電期間)
この期間t12〜t15では、変換器制御部73は、電圧出力を継続しているコンデンサ電圧vc_r2_ma〜vc_r4_maのうち最も大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r2_maが最大であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−(vc_r2÷2+vc_r3+vc_r4)を上回ったタイミングt13で、Hブリッジ単位変換器cnv_r2へのゲート信号出力を停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の負電圧出力を停止させる。すなわち、Hブリッジ単位変換器cnv_r2の負電圧を立ち下げる。
(タイミングt14:コンデンサ充電期間)
タイミングt13経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き負であり、出力電流irも引き続き正である。そのため、直流コンデンサ53は充電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力中のコンデンサ電圧vc_r3_ma又はvc_r4_maのうち大きい電圧を特定する。特定の結果、コンデンサ電圧vc_r3_maが大きい電圧であったとする。そうすると、変換器制御部73は、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−(vc_r3÷2+vc_r4)を上回ったタイミングt14で、Hブリッジ単位変換器cnv_r3へのゲート信号出力を停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r3の負電圧出力を停止させる。
(タイミングt15:コンデンサ充電期間)
タイミングt14経過後もR相アーム4Rへの出力電圧指令値vr*は引き続き負であり、出力電流irも引き続き正である。そのため、直流コンデンサ53は充電処理の継続である。そこで、変換器制御部73は、未だ電圧出力中のHブリッジ単位変換器cnv_r4へのゲート信号出力を、出力電圧指令値vr*がコンデンサ電圧−vc_r4÷2を上回ったタイミングt15で停止し、Hブリッジ単位変換器cnv_r4の負電圧出力を停止させる。
以上の各Hブリッジ単位変換器5に対するスイッチング制御は他相についても同一に採用される。また、R相出力電流irの位相をR相出力電圧vrより90度遅らせる遅相運転の場合でも、コンデンサの充放電方向、コンデンサ電圧の大小、出力電圧指令値の正負から判断し、Hブリッジ単位変換器5の電圧出力位相を決定する。すなわち、充電期間では、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5は立ち下げさせ、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5は立ち上げる。放電期間では、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5は立ち上げさせ、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5は立ち下げる。
但し、遅相運転の場合、出力電圧指令値vr*の傾きが正のときにはコンデンサが充電状態となるので、全てのコンデンサに充電機会が与えられる。よって、進相運転でのタイミングt4のときのように、充電機会を与えるために電圧出力するHブリッジ単位変換器5を入れ替えなくともよい。遅相運転の場合には放電機会が与えられなくとも、直流コンデンサ53はコンデンサ自身やスイッチング素子の漏れ電流により徐々に放電されるためである。
(効果)
以上のように、本実施形態に係る無効電力補償装置1は、直流コンデンサ53の直流を交流に変換するHブリッジ単位変換器5を複数直列接続した各相アーム4をデルタ結線してなり、各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧をパルス制御する変換器制御部73を備えるようにした。
この変換器制御部73は、1パルス制御により、Hブリッジ単位変換器5の出力電圧の立ち上げ及び立ち下げ位相をずらすことで、各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧を階段状に積み上げてなる正弦波の相電圧を相アーム4に生成させ、出力電圧の立ち上げ及び立ち下げを三相交流系統の半周期に一回以下に制御するようにした。
本実施形態では、三相交流系統の周期の4分の1ごとに充放電を制御している。これにより、1パルス制御であっても同じ状態が継続する時間は短くなり、直流コンデンサ53の電圧変動を最小限に留めることができる。
また、変換器制御部73は、電圧決定部が各相アーム4の出力電圧バランスをとるために流す循環電流に応じて決定した相の瞬時電圧指令値vr*、vs*、vt*と、電圧出力しているHブリッジ単位変換器5の合計コンデンサ電圧との差を検出する。そして、直流コンデンサ53が放電期間の場合、その差が、次に電圧出力するHブリッジ単位変圧器5の電圧の半分を上回ると、当該次に電圧出力するHブリッジ単位変圧器5の電圧を出力させる。一方、直流コンデンサ53が充電期間の場合、その差が、次に出力停止するHブリッジ単位変圧器5のコンデンサ電圧の半分を下回ると、当該次に電圧出力するHブリッジ単位変圧器5の電圧出力を停止させるようにした。
すなわち、電圧の立ち上げ及び立ち下げの閾値は、既に出力している電圧に対して、次に電圧を立ち上げ又は立ち下げ対象のHブリッジ単位変換器5のコンデンサ電圧の2分の1を加算した値としている。従って、電圧指令値vr*、vs*、vt*に近い理想的な電圧を出力でき、コンデンサ電圧の変動が大きい1パルス制御であっても、出力電流歪を更に最小限に抑制できる。
また、変換器制御部73は、直流コンデンサ53が放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力期間を相対的に長くし、コンデンサ電圧が相対的に低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力を短くする。一方、直流コンデンサ53が充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高いHブリッジ単位変換器5の電圧出力停止期間を相対的に短くし、コンデンサ電圧が相対的に低いHブリッジ単位変換器5の電圧出力停止期間を相対的に長くする。
一例としては、変換器制御部73は、相電圧が立ち上がり位相で、直流コンデンサ53が放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高いHブリッジ単位変換器5を優先して電圧を立ち上げさせる。相電圧が立ち下がり位相で、直流コンデンサ53が充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高いHブリッジ単位変換器5を優先して電圧を立ち下げさせる。相電圧が立ち下がり位相で、直流コンデンサ53が放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に低いHブリッジ単位変換器5を優先して電圧を立ち下げさせる。相電圧が立ち上がり位相で、直流コンデンサ53が充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に低いHブリッジ単位変換器を優先して電圧を立ち上げさせる。
相電圧の立ち上がり位相とは、正電圧の正方向への増加期間又は負電圧の負方向への増加期間をいい、図5におけるタイミングt0〜t4、t8〜t12である。この相電圧の立ち上がり位相における電圧の立ち上げは、正電圧の正方向への増加期間であれば正電圧の出力をいい、負電圧の負方向への増加期間であれば負電圧の出力をいう。尚、この相電圧の立ち上がり位相における電圧の立ち下げは、正電圧の正方向への増加期間であれば正電圧の出力停止をいい、負電圧の負方向への増加期間であれば負電圧の出力停止をいう。
相電圧の立ち下がり位相とは、正電圧の減少期間又は負電圧の減少期間をいい、図5におけるタイミングt4〜t8、t12〜t15である。この相電圧の立ち下がり位相における電圧の立ち下げは、正電圧の減少期間であれば正電圧の出力停止をいい、負電圧の減少期間であれば負電圧の出力停止をいう。尚、この相電圧の立ち下げ位相における電圧の立ち上げは、正電圧の減少期間であれば正電圧の出力をいい、負電圧の減少期間であれば負電圧の出力をいう。
これにより、充電期間では、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5は立ち下げられ、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5は立ち上げられる。放電期間では、コンデンサ電圧の高いHブリッジ単位変換器5は立ち上げられ、コンデンサ電圧の低いHブリッジ単位変換器5は立ち下げられる。よって、直流コンデンサ53の蓄電圧の偏りが生じにくくなり、一相内の各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧のバランスをとり易くなるとともに、電圧指令値vr*、vs*、vt*に近い理想的な電圧の出力制御が可能となる。
更に、変換器制御部73は、直流コンデンサ53が放電期間から充電期間に変わるタイミングで、電圧出力するHブリッジ単位変換器5の入れ替えを行うようにした。入れ替えでは、電圧出力中のHブリッジ単位変換器5の一つを電圧出力停止させ、電圧未出力のHブリッジ単位変換器5を電圧出力させる。一例としては、変換器制御部73は、直流コンデンサ53が放電期間から充電期間に変わるタイミングで、電圧未出力のHブリッジ単位変換器5のコンデンサ電圧が、電圧出力しているHブリッジ単位変換器5のうちの最大コンデンサ電圧よりも高い場合、入れ替えを中止する。
これにより、電圧指令値vr*、vs*、vt*の振幅等に影響されることなく、直流コンデンサ53の蓄電圧の偏りが更に生じにくくなり、一相内の各Hブリッジ単位変換器5の出力電圧のバランスを更にとり易くなるとともに、電圧指令値vr*、vs*、vt*に近い理想的な電圧の出力制御が可能となる。
また、変換器制御部73は、Hブリッジ単位変換器5のコンデンサ電圧を三相交流系統の2分の1の周期で移動平均し、当該移動平均した値でコンデンサ電圧の大小比較を行うようにした。コンデンサ電圧の大小比較に移動平均値を用いることによって、局所的なコンデンサ電圧変動に影響されず、安定したバランス制御が実現できる。
また、電圧決定部は、比例積分制御により、全相のコンデンサ電圧平均と各相のコンデンサ電圧平均との各偏差を是正する循環電流フィードバック指令値iZ*fbを生成し、当該循環電流フィードバック指令値iZ*fbを出力する零相電圧指令値vz*を決定するようにした。
これにより、無効電力補償装置1が逆相電流を出力するときであっても、逆相電流と同一振幅及び同位相の循環電流がデルタ結線部3を流れ、相間の電圧バランスは平衡に保たれる。しかも、この循環電流は、比例積分制御により算出される循環電流フィードバック指令値iZ*fbを基にしているため、残留偏差も生じ得ず、精度の高い相間の電圧バランスを図ることができる。
(その他の実施の形態)
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、実施形態の全て又は一部を採用したものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。例えば、図6に示すように、変圧器2を備えず、デルタ結線部3を交流系統に直接接続するようにしてもよい。
1 無効電力補償装置
2 変圧器
3 デルタ結線部
4 相アーム
4R R相アーム
4S S相アーム
4T T相アーム
5 Hブリッジ単位変換器
51 レグ
52 スイッチ
53 直流コンデンサ
6R、6S、6T 短絡抑制用リアクトル
7 制御部
71 補償制御部
71a 3相/DQ変換部
71b PI制御部
71c DQ/3相変換部
72 相間バランス制御部
721 循環電流制御部
72a 移動平均算出部
72b 全相平均算出部
72c 偏差算出部
72d 三相/二相変換部
72e PI制御部
72f 循環電流算出部
722 零相電圧制御部
72g PI制御部
72h 加算部
72i フィードフォワード指令値加算部
73 変換器制御部

Claims (8)

  1. 三相交流系統に対して無効電力を注入又は吸収する電力変換装置であって、
    直流コンデンサを含み、この直流コンデンサの直流を交流に変換する単位変換器と、
    前記単位変換器を複数直列接続してなる各相アームと、
    前記各相アームをデルタ結線して構成されるデルタ結線部と、
    前記単位変換器の出力電圧をパルス制御する変換器制御部と、
    を備え、
    前記変換器制御部は、
    1パルス制御により、前記単位変換器の出力電圧の立ち上げ及び立ち下げ位相をずらすことで、各単位変換器の出力電圧を階段状に積み上げてなる正弦波の相電圧を前記相アームに生成させ、
    前記出力電圧の立ち上げ及び立ち下げを三相交流系統の半周期に一回以下に制御すること、
    を特徴とする電力変換装置。
  2. 各相アームの出力電圧バランスをとる前記デルタ結線部内の循環電流に応じて相の瞬時電圧を決定する電圧決定部を備え、
    前記変換器制御部は、
    前記直流コンデンサが放電期間の場合、電圧出力している前記単位変換器の合計コンデンサ電圧と前記瞬時電圧との差が、次に電圧出力する前記単位変圧器の電圧の半分を上回ると、当該次に電圧出力する前記単位変圧器の電圧を出力させ、
    前記直流コンデンサが充電期間の場合、電圧出力している前記単位変換器の合計コンデンサ電圧と前記瞬時電圧との差が、次に出力停止する前記単位変圧器のコンデンサ電圧の半分を下回ると、当該次に電圧出力する前記単位変圧器の電圧出力を停止させること、
    を特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
  3. 前記変換器制御部は、
    前記直流コンデンサが放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高い前記単位変換器の電圧出力期間を相対的に長くし、コンデンサ電圧が相対的に低い前記単位変換器の電圧出力を短くし、
    前記直流コンデンサが充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高い前記単位変換器の電圧出力停止期間を相対的に短くし、コンデンサ電圧が相対的に低い前記単位変換器の電圧出力停止期間を相対的に長くすること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の電力変換装置。
  4. 前記変換器制御部は、
    相電圧が立ち上がり位相で、前記直流コンデンサが放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高い前記単位変換器を優先して電圧を立ち上げさせ、
    相電圧が立ち下がり位相で、前記直流コンデンサが充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に高い前記単位変換器を優先して電圧を立ち下げさせ、
    相電圧が立ち下がり位相で、前記直流コンデンサが放電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に低い前記単位変換器を優先して電圧を立ち下げさせ、
    相電圧が立ち上がり位相で、前記直流コンデンサが充電期間の場合、コンデンサ電圧が相対的に低い前記単位変換器を優先して電圧を立ち上げさせること、
    を特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
  5. 前記変換器制御部は、
    前記直流コンデンサが放電期間から充電期間に変わるタイミングで、電圧出力する前記単位変換器の入れ替えを行い、
    前記入れ替えでは、電圧出力中の前記単位変換器の一つを電圧出力停止させ、電圧未出力の前記単位変換器を電圧出力させること、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電力変換装置。
  6. 前記変換器制御部は、
    前記タイミングで、前記電圧未出力の前記単位変換器のコンデンサ電圧が、電圧出力している前記単位変換器のうちの最大コンデンサ電圧よりも高い場合、前記入れ替えを中止すること、
    を特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
  7. 前記変換器制御部は、
    前記単位変換器のコンデンサ電圧を前記三相交流系統の2分の1の周期で移動平均し、当該移動平均した値でコンデンサ電圧の大小比較を行うこと、
    を特徴とする請求項3、4、又は6記載の電力変換装置。
  8. 前記電圧決定部は、
    比例積分制御により、全相のコンデンサ電圧平均と各相のコンデンサ電圧平均との各偏差を是正する循環電流フィードバック指令値を生成し、当該循環電流フィードバック指令値を出力する零相電圧指令値を決定すること、
    を特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
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