JP2014232860A - 六方晶フェライト磁性粒子の製造方法およびこれにより得られた六方晶フェライト磁性粒子、ならびにそれらの利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄塩およびアルカリ土類金属塩を含む粒子を焼成しフェライト化することにより六方晶フェライト磁性粒子を得る工程を含み、前記粒子を、鉄塩にガラス成分を被着させた後にアルカリ土類金属塩を被着させることにより作製し、前記ガラス成分およびアルカリ土類金属塩が被着した粒子を焼成することにより、X線回折による分析において主成分として六方晶フェライトが検出される焼成物を得る、六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
【選択図】なし
Description
更に本発明は、上記製造方法および六方晶フェライト磁性粒子の利用にも関するものである。
また特許文献5に記載の方法も、フェライト化のために焼成を実施するため、同様の課題が存在する。
上記の点に関し、特許文献3には、共沈物をアルカリ土類金属化合物で被覆した後に焼成することにより、焼結を抑制することが提案されている。しかし本発明者の検討によれば、アルカリ土類金属化合物による焼結防止効果は必ずしも十分なものではない。高密度記録化を達成するためには、より効果的に焼結を防止する手段が求められる。
ただし、前述の特許文献4では、ε−酸化鉄を得るためにシリカコーティング内で酸化反応を進行させる必要があるため粒子を完全に覆う量のシリカコーティングを設けているのに対し、鉄塩に被着させるガラス成分量が過剰であると、焼成時にフェライト形成よりもヘマタイト(Fe2O3)形成が優位に進行する結果、焼成物は主成分として六方晶フェライトではなくヘマタイトを含むものとなってしまうことも判明した。以下、この点について更に説明する。
例えば、水酸化鉄と炭酸バリウムを含む粒子を焼成することによりバリウムフェライト磁性粒子を得ることができる。焼成中には、Fe(OH)2が酸化されFeOが生成し、BaCO3が分解しBaOとCO2が生成し、生成されたFeOとBaOによりバリウムフェライトが合成される。
しかし、炭酸バリウムはガラス成分との親和性が高い。したがって、水酸化鉄がガラス成分に完全に覆われた状態では、水酸化鉄に対してガラス成分の次に被着させた炭酸バリウムはガラス成分と親和してしまうため、フェライト化する実効のBa量が少なくなってしまう。また、BaCO3の分解反応にはCO2分圧依存性があり、焼成される粒子が多量のガラス成分で覆われていると、BaCO3の分解が阻害され、フェライト化する実効のBa量は少なくなる。加えて、焼成される粒子が多量のガラス成分に覆われていると、フェライト化反応における酸素分圧は低くなる。六方晶フェライトの合成には酸素分圧依存性があることが知られており、焼成時における酸素分圧が低いとフェライト化する実効のBaが少ない領域ではフェライト化が進行し難くなる。
以上が、鉄塩に被着させるガラス成分量が過剰であると、焼成時にヘマタイトの生成が優位に進行する理由と考えられる。他の鉄塩およびアルカリ土類金属塩を含む粒子を焼成する場合も同様に、アルカリ土類金属塩と鉄塩との反応が妨げられることが、フェライト形成が良好に進行しない理由と推察される。
以上の知見に基づき本発明者は、鉄塩にアルカリ土類金属塩を被着させる前にガラス成分を被着させたうえで焼成を実施し、焼成後にX線回折による分析において主成分として六方晶フェライトが検出される焼成物を得ることにより、微粒子の六方晶フェライト磁性粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
[1]鉄塩およびアルカリ土類金属塩を含む粒子を焼成しフェライト化することにより六方晶フェライト磁性粒子を得る工程を含み、
前記粒子を、鉄塩にガラス成分を被着させた後にアルカリ土類金属塩を被着させることにより作製し、
前記ガラス成分およびアルカリ土類金属塩が被着した粒子を焼成することにより、X線回折による分析において主成分として六方晶フェライトが検出される焼成物を得る、六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[2]前記ガラス成分は、ケイ素化合物の加水分解物である[1]に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[3]前記ケイ素化合物は、アルコキシシランである[2]に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[4]前記鉄塩を逆ミセル法により調製する工程を更に含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[5]前記鉄塩を含む溶液に前記ガラス成分の前駆体を添加し撹拌することにより、前記ガラス成分の前駆体の加水分解物であるガラス成分を前記鉄塩に被着させることを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[6]前記ガラス成分の前駆体を、前記溶液中に存在する鉄1モルに対して0.05〜0.4モル%の範囲の量で添加する[5]に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[7]前記鉄塩に前記ガラス成分を被着させることにより得られた生成物を含む溶液に、前記アルカリ土類金属塩の前駆体および該前駆体を前記アルカリ土類金属塩に転換するための追加成分を添加し撹拌することにより、前記生成物に前記アルカリ土類金属塩を被着させることを含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[8]前記アルカリ土類金属塩の前駆体および追加成分とともにアンモニア水を添加する、[7]に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[9]前記粒子は、前記鉄塩として水酸化鉄を含み、前記アルカリ土類金属塩としてアルカリ土類金属の炭酸塩を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[10]前記焼成物表面からガラス成分を除去する工程を更に含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[11]前記ガラス成分を、アルカリにより溶解除去する[10]に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法により得られた六方晶フェライト磁性粒子。
[13]粒子サイズが10〜20nmの範囲である[12]に記載の六方晶フェライト磁性粒子。
[14][12]または[13]に記載の六方晶フェライト磁性粒子からなる磁気記録用磁性体。
[15][12]または[13]に記載の六方晶フェライト磁性粒子と有機溶媒とを含む磁性塗料。
[16]水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物を更に含む、[15]に記載の磁性塗料。
[17]結合剤を更に含む、[15]または[16]に記載の磁性塗料。
[18]磁気記録媒体の磁性層形成のために使用される、[15]〜[17]のいずれかに記載の磁性塗料。
[19][16]〜[18]のいずれかに記載の磁性塗料の製造方法であって、
[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法により六方晶フェライト磁性粒子を作製すること、
作製した六方晶フェライト磁性粒子を水洗すること、および、
前記水洗中または水洗後に、前記六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液に、水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物を添加し該化合物を前記六方晶フェライト磁性粒子表面に被着させること、
を含む、前記磁性塗料の製造方法。
[20]前記化合物が被着した六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液を溶媒置換処理に付すことにより有機溶媒に溶媒置換することを更に含む、[19]に記載の磁性塗料の製造方法。
[21]非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁性層を、[18]に記載の磁性塗料を用いて形成することを含む、前記磁気記録媒体の製造方法。
[22]前記磁性塗料を、[19]または[20]に記載の製造方法により作製することを含む、[21]に記載の磁気記録媒体の製造方法。
[23]非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は、[12]または[13]に記載の六方晶フェライト磁性粒子である磁気記録媒体。
[24][21]または[22]に記載の方法によって得られた磁気記録媒体である、[23]に記載の磁気記録媒体。
先に説明したように、上記の本発明の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法によれば、焼成時の焼結を抑制することができ、これにより微粒子状の六方晶フェライト磁性粒子を得ることが可能となる。
以下、本発明の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法について、更に詳細に説明する。
上記水溶性塩としては、鉄の硝酸塩、塩化物等を挙げることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができる。
日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。粒子が集合した粉体については、500個の粒子のサイズを測定し、それら粒子サイズの平均値を粒子サイズ(平均粒子サイズ)とする。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
形状異方性は(2)、(3)、(1)の順に大きくなる。磁化容易軸を面内に配向させる場合には形状異方性を単純に大きくできる方を選択することが、微粒子化の観点から好ましい。一方、垂直記録用に磁化容易軸を面に対し垂直に配向する場合には、塗布等の流動配向の観点を加味すべきであるため、(2)、(1)、(3)の順に好ましくなっていく。
本発明の六方晶フェライト磁性粒子は、本発明の製造方法により得られたものであるため、例えば10〜20nmの範囲の粒子サイズの微粒子であることができる。このような微粒子磁性体は、磁気記録用磁性体として好適である。本発明の六方晶フェライト磁性粒子によれば、六方晶フェライト磁性粒子を結合剤および溶媒と混合し塗布液として支持体上に塗布することにより磁性層を形成することができる。したがって、本発明の六方晶フェライト磁性粒子は、塗布型磁気記録媒体への適用に好適である。したがって本発明の他の態様は、磁性層の強磁性粉末として本発明の六方晶フェライト磁性粒子を含む塗布型磁気記録媒体に関する。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と本発明の磁性粒子および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する重層構成の磁気記録媒体であることもでき、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であることもできる。本発明の六方晶フェライト磁性粒子を用いて磁気記録媒体を製造するためには、磁気記録媒体に関する公知技術を適用することができる。また、後述の本発明の磁気記録媒体の製造方法に関する記載も参照できる。
本発明の磁性塗料は、磁性粒子として前述の製造方法により得られた六方晶フェライト磁性粒子を含むものである。好ましくは、水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物も含むものである。なお本発明において「水系」とは、「水を含む」との意味で用いることとする。また、以下においては上記化合物を「分散剤」ともいう。
水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物は、有機溶媒系の磁性塗料中で六方晶フェライト磁性粒子の分散剤として機能することができる。これは、水系溶液中でアニオン性基となる官能基が磁性粒子表面に吸着することで、磁性粒子同士が凝集することを防ぐことができるからである。したがって、そのような化合物が本発明の磁性塗料に含まれることにより、前述の製造方法により得られた六方晶フェライトを、有機溶媒中に高度な分散状態で存在させることが可能となる。こうして得られた磁性塗料は、磁性粒子が高度に分散していることが望まれる塗布型磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として好適である。本発明によれば微粒子状の六方晶フェライト磁性粒子を得ることができるので、得られた微粒子状六方晶フェライト磁性粒子を磁性塗料中に高度な分散状態で存在させることによって、超高密度記録用磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として好適な磁性塗料を得ることができる。
前述の本発明の製造方法により六方晶フェライト磁性粒子を作製すること、
作製した六方晶フェライト磁性粒子を水洗すること、および、
前記水洗中または水洗後に、前記六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液に、前記分散剤を添加し該分散剤を前記六方晶フェライト磁性粒子表面に被着させること、
を含む、本発明の六方晶フェライト磁性粒子と、前記分散剤と、有機溶媒と、を含む磁性塗料の製造方法、
にも関する。
上記磁性塗料の製造方法は、前記分散剤が被着した六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液を溶媒置換処理に付すことにより有機溶媒に溶媒置換することを更に含むことが好ましい。
スルホン酸(塩)基[−S(=O)2OM];
硫酸(塩)基[−(O)−S(=O)2OM];
スルフィン酸(塩)基[−S(=O)OM];および
亜硫酸(塩)基[−(O)−S(=O)OM]、
が包含される。ここでスルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基とそのアルカリ金属塩基を包含する意味で用いることとする。硫酸(塩)基等についても同様である。また、以下に記載のホスホン酸(塩)基等についても同様である。
ホスホン酸(塩)基[−P(=O)(OM)2];
ホスフィン酸(塩)基[−P(−H)(=O)(OM)];
リン酸(塩)基[−O−P(=O)(OM)2];および
亜リン酸(塩)基[−O−P(−H)(=O)(OM)]、
が包含される。
なお本発明において、置換基を有する基について「炭素数」とは、置換基を含まない部分の炭素数を意味するものとする。また、本発明において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
前述のように、分散剤の水系溶液への溶解性が高いほど、多くの分散剤を磁性粒子表面に吸着させ磁性粒子の分散性を向上することができる。この点からは、一般式(II)中のR21〜R23の中で、前記硫黄系極性基またはこれを含む基以外は、置換基を有していてもよいアルキル基またはシクロアルキル基であることが好ましく、水酸基および/もしくはアルコキシル基によって置換されたアルキル基、またはシクロアルキル基であることがより好ましい。水酸基およびアルコキシル基によって置換されたアルキル基としては、これらによって置換された分岐アルキル基がより一層好ましい。また、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基がより一層好ましい。
また、分散性向上の観点から、前記カルボン酸(塩)基とともに水酸基を含む化合物も、分散剤として好ましい化合物である。
前記磁性層は、本発明の六方晶フェライト磁性粒子と結合剤を含む層である。磁性層の結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報段落[0029]〜[0031]を参照できる。また、上記樹脂とともにポリイソシアネート系硬化剤を使用することも可能である。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明では、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を形成することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落[0036]〜[0039]を参照できる。
前記方法で調製された磁性塗料は、非磁性層上に直接、または非磁性層等の他の層を介して非磁性支持体上に塗布される。これにより、非磁性支持体上に、必要に応じて非磁性層等の他の層を介して磁性層を有する磁気記録媒体を得ることができる。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが、好ましくは3〜80μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.02〜0.12μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.10μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明では、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層形成のための塗布液は、本発明の六方晶フェライト磁性粒子を使用する点以外、通常の磁性層形成用塗布液の調製方法と同様の方法で作製することができる。好ましくは、先に記載した本発明の磁性塗料の製造方法により、磁性層形成のための塗布液を作製することができる。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる磁性粒子、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、分散剤、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。なお、前記分散剤は、磁性層形成用塗布液調製のための工程において、有機溶媒中に六方晶フェライト磁性粒子を含む溶液に添加することも可能である。また、本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液、非磁性層塗布液またはバックコート層塗布液を分散させるには、ガラスビーズやその他のビーズを用いることができる。このような分散メディアとしては、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。磁気記録媒体の製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報段落[0051]〜[0057]を参照できる。
〔手順1:ミセル溶液の調製〕
ミセル溶液Iおよびミセル溶液IIを、以下の方法で作製した。
(1)ミセル溶液Iの作製
硝酸鉄(III)9水和物10.46g、臭化セチルトリメチルアンモニウム123.7gに純水207.9gを添加した後、n−オクタン439.8g、1−ブタノール101.2gを添加し撹拌し溶解した。
(2)ミセル溶液IIの作製
臭化セチルトリメチルアンモニウム123.7gに10%アンモニア水178.5g、純水47.3gを添加した後、n−オクタン439.8g、1−ブタノール101.2gを添加し撹拌し溶解した。
手順1で得たミセル溶液Iとミセル溶液IIを混合し撹拌しながら、当該混合液にテトラエトキシシラン(TEOS)を表1記載の量で加えた。約1日そのまま、撹拌し続けた。これにより、TEOSが加水分解し、混合液中に析出した水酸化鉄粒子の表面にシリカが被着する。
手順2で得られた溶液を分液ロートに入れ、純水、エタノールの1:1混合液を200ml加え、静置し、赤褐色の部分とそれ以外の部分に分かれるのを待ち、赤褐色の部分以外を捨てた。この操作を3回繰返した後、遠心分離機にセットして遠心分離処理した。
以上の処理で得られた沈殿物を回収した。回収された沈殿物をクロロホルムとエタノールの混合溶液を用いて再分散し、遠心分離を行い得られた沈殿物を回収した。
手順3で得られた沈殿物を、鉄を3.7mmol含むように分け、純水を40g添加し再分散した。
得られた分散液に5%の硝酸バリウムまたは硝酸ストロンチウム水溶液を、BaまたはSr量が六方晶フェライトの化学量論組成の3倍量になるよう加え、撹拌した後、5NのNaOHを1.3mlまたは10%のアンモニア水を0.9ml加え撹拌した。その後、5%の炭酸ナトリウム水溶液を17.6ml加え、一昼夜撹拌した。撹拌した水溶液を遠心分離し、沈殿物を洗浄し、風乾により乾燥させた。
以上の処理により、水酸化鉄粒子表面にシリカとともに炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウムが被着した粒子が得られる。
手順4で得られた沈殿物を乳鉢で粉砕した後、アルバック理工製イメージ炉で1L/minで空気を送りながら炉内温度を800℃として2分間、熱処理を施した。
手順5で得られた焼成物(熱処理粉)を3モル/LのNaOH水溶液中で24時間撹拌し、粒子表面のシリカの除去処理を行った。次いで、遠心分離処理を行い沈殿物を回収し純水で再分散し遠心分離処理をすることで洗浄を行い、その後、風乾により乾燥した。
手順2で表1のTEOSを加え、手順3を行った後、沈殿物を乾燥し、乳鉢で粉砕した。
その後、アルバック理工製イメージ炉で1L/minで空気を送りながら炉内温度を800℃として2分間熱処理(焼成)を施した。
得られた焼成物(熱処理粉)を3モル/LのNaOH水溶液中で24時間撹拌し、粒子表面のシリカの除去処理を行った。次いで、遠心分離処理を行い沈殿物を回収し純水で再分散し遠心分離処理をすることで洗浄を行った。得られた粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、直径約8nmであった。
得られた沈殿物に対して手順4以降の処理を施した。
(1)X線回折分析
実施例、比較例について、手順6により得られた粒子の粉末X線回折分析を、PANalytical社製X’Pert PRO(線源CuKα線、電圧45kV、電流40mA)により行った。
(2)磁気特性
上記(1)において主成分として六方晶フェライトが検出された粒子の磁気特性を、玉川製作所製超電導振動式磁力計VSM(外部磁場3T)より測定した。
(3)粒子サイズ測定
上記(1)において主成分としてバリウムフェライトが検出された粒子の粒子サイズを、透過型電子顕微鏡により前述の方法で測定した。
表1に示すように、実施例1〜3では、微粒子状のバリウムフェライト磁性粒子を得ることができた。
これに対し比較例1は、鉄塩粒子にガラス成分を被着させずにアルカリ土類金属塩を被着させた粒子を焼成(フェライト化)した例である。
比較例4は、鉄塩粒子に被着させたガラス成分を除去した後にアルカリ土類金属塩を被着させて焼成(フェライト化)を行った例である。
比較例1、4とも、焼成中に粒子が焼結し微粒子状のバリウムフェライト磁性粒子を得ることはできなかった。比較例4では、観察された粒径範囲は20〜200nmと粒度分布に大きなばらつきが見られた。なお比較例4では、アルカリ土類金属塩を被着させる前に、鉄塩粒子にガラス成分を被着させ焼成を行った。この焼成後に得られた粒子の直径は約8nmと微粒子であることからも、ガラス成分が焼結防止効果を発揮する成分であることが確認できる。
また、比較例2、3では、焼成後の粒子は、主成分としてヘマタイトが検出された。これはガラス成分により鉄塩粒子が完全に被覆された状態でアルカリ土類金属塩を二着し焼成を行ったため、バリウムフェライトの形成よりもヘマタイトの形成が優位に進行したためと考えられる。
(1)実施例1の手順1〜5を経て得られた焼成物(熱処理粉)1gを5Nの水酸化ナトリウム水溶液25ccの中に入れ、70℃の温度で超音波をかけながら4時間超音波処理し、その後、一昼夜撹拌した。
その後、水洗および遠心分離を繰返し、上澄み液のpHが8未満になるまで洗浄を行った。
(2)洗浄後の水溶液に、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)の1%水溶液20ccを添加し超音波を照射した後、遠心分離を行い、上澄みを捨てた。
その後、メチルエチルケトン(MEK)を20cc加え超音波照射後遠心分離を行うことを2回繰返した。
(3)次いで、MEKを含んだ状態で、六方晶フェライト磁性粒子量が250mgになるよう秤量した液に、分散ビーズ(ニッカトー株式会社製YTZボールφ0.05mm)2.5g、AOT15mg、ポリウレタン樹脂35mg、MEK 397mg、シクロヘキサノン265mgを添加し、タイテック株式会社製卓上小型振とう機 Mix−EVRを用いて、水平偏芯振動にて2500r/minで21時間分散処理し、液中平均粒子径測定用の分散液を得た。
(4)上記(3)とは別に、MEKを含んだ状態で、六方晶フェライト磁性粒子量が250mgになるよう秤量した液に、カーボンブラック(粒子サイズ:20nm)2.5mg、AOT15mg、ポリウレタン樹脂35mg、MEK 397mg、シクロヘキサノン265mgを添加し、上記3.と同様の分散処理を行い、磁性シート作製用の分散液を得た。
得られた分散液を、帝人社製PENベース上に1milのドクターブレードを用いて塗布し、室温30分放置させて乾燥し塗膜を作製した。
実施例4の上記(2)においてMEKを加える前に磁性粒子を一旦乾燥させた点以外は、実施例4と同様の操作を行った。
(1)実施例1の手順1〜5を経て得られた焼成物(熱処理粉)1gを5Nの水酸化ナトリウム水溶液25ccの中に入れ、70℃の温度で超音波をかけながら4時間超音波処理し、その後、一昼夜撹拌した。
その後、水洗および遠心分離を繰返し、上澄み液のpHが8未満になるまで洗浄を行った後、磁性粒子を乾燥させた。
(2)乾燥粉を250mgになるよう秤量し、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)の1%水溶液20ccに添加し超音波を照射した後、遠心分離を行い、上澄みを捨てた。
その後、メチルエチルケトン(MEK)を20cc加え超音波照射後遠心分離を行うことを2回繰返した。
(3)その後、実施例4と同様の操作を行い分散液を得た。
実施例6の上記(2)においてAOTを使用しなかった点および分散液調製時にAOTを添加しなかった点以外は、実施例6と同様の操作を行い分散液を得た。
(1)液中平均粒子径の測定
実施例4〜7で得られた液中平均粒子径測定用の分散液を、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを体積比でメチルエチルケトン:シクロヘキサノン=6:4の割合で含む混合溶媒で固形分濃度0.2質量%となるように希釈した。
HORIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて測定した上記希釈液中の算術平均粒子径を、表2に示す。ここで測定される算術平均粒子径が小さいほど、磁性粒子が凝集せず分散性が良好であることを意味する。
(2)保磁力の測定
上記塗布膜の保磁力を、玉川製作所製超電導振動式磁力計(VSM)を使用し、印加磁場3184kA/m(40kOe)の条件で評価した。
(3)塗膜Raの測定
実施例4〜7で作製した塗膜の表面粗さを、以下の方法で測定した。
ZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置ZYGO Newview5022により走査型白色光干渉法にて、Scan Lengthを5μmとして、上記塗膜の表面粗さを測定した。対物レンズ:20倍、中間レンズ:1.0倍、測定視野は260μm×350μmとした。測定した表面をHPF:1.65μm、LPF:50μmのフィルター処理して、中心線平均表面粗さRa値を求めた。
表2に示す結果から、前記分散剤の使用によって、磁性塗料中で六方晶フェライト磁性粒子を高度な分散状態で存在させることができること、および表面平滑性に優れる塗膜を形成可能な磁性塗料が得られること、が確認できる。こうして得られた磁性塗料を用いることで、微粒子状の六方晶フェライト磁性粒子が高度に分散された磁性層を形成することができ、これにより高密度記録に好適な磁気記録媒体を得ることが可能となる。
なお分散剤を用いた実施例4〜6の中で、実施例4が分散性に関して最も良好な結果を示した理由は、乾燥処理を経ずに溶媒置換を行ったことにあると考えられる。また、実施例5と実施例6との比較において、実施例5が分散性に関して良好な結果を示した理由は、乾燥処理の前に分散剤による処理を行ったことにあると考えらえる。
Claims (24)
- 鉄塩およびアルカリ土類金属塩を含む粒子を焼成しフェライト化することにより六方晶フェライト磁性粒子を得る工程を含み、
前記粒子を、鉄塩にガラス成分を被着させた後にアルカリ土類金属塩を被着させることにより作製し、
前記ガラス成分およびアルカリ土類金属塩が被着した粒子を焼成することにより、X線回折による分析において主成分として六方晶フェライトが検出される焼成物を得る、六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。 - 前記ガラス成分は、ケイ素化合物の加水分解物である請求項1に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記ケイ素化合物は、アルコキシシランである請求項2に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記鉄塩を逆ミセル法により調製する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記鉄塩を含む溶液に前記ガラス成分の前駆体を添加し撹拌することにより、前記ガラス成分の前駆体の加水分解物であるガラス成分を前記鉄塩に被着させることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記ガラス成分の前駆体を、前記溶液中に存在する鉄1モルに対して0.05〜0.4モル%の範囲の量で添加する請求項5に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記鉄塩に前記ガラス成分を被着させることにより得られた生成物を含む溶液に、前記アルカリ土類金属塩の前駆体および該前駆体を前記アルカリ土類金属塩に転換するための追加成分を添加し撹拌することにより、前記生成物に前記アルカリ土類金属塩を被着させることを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記アルカリ土類金属塩の前駆体および追加成分とともにアンモニア水を添加する、請求項7に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記粒子は、前記鉄塩として水酸化鉄を含み、前記アルカリ土類金属塩としてアルカリ土類金属の炭酸塩を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記焼成物表面からガラス成分を除去する工程を更に含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 前記ガラス成分を、アルカリにより溶解除去する請求項10に記載の六方晶フェライト磁性粒子の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法により得られた六方晶フェライト磁性粒子。
- 粒子サイズが10〜20nmの範囲である請求項12に記載の六方晶フェライト磁性粒子。
- 請求項12または13に記載の六方晶フェライト磁性粒子からなる磁気記録用磁性体。
- 請求項12または13に記載の六方晶フェライト磁性粒子と有機溶媒とを含む磁性塗料。
- 水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物を更に含む、請求項15に記載の磁性塗料。
- 結合剤を更に含む、請求項15または16に記載の磁性塗料。
- 磁気記録媒体の磁性層形成のために使用される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の磁性塗料。
- 請求項16〜18のいずれか1項に記載の磁性塗料の製造方法であって、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法により六方晶フェライト磁性粒子を作製すること、
作製した六方晶フェライト磁性粒子を水洗すること、および、
前記水洗中または水洗後に、前記六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液に、水系溶液中でアニオン性基となる官能基を有する化合物を添加し該化合物を前記六方晶フェライト磁性粒子表面に被着させること、
を含む、前記磁性塗料の製造方法。 - 前記化合物が被着した六方晶フェライト磁性粒子を含む水系溶液を溶媒置換処理に付すことにより有機溶媒に溶媒置換することを更に含む、請求項19に記載の磁性塗料の製造方法。
- 非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁性層を、請求項18に記載の磁性塗料を用いて形成することを含む、前記磁気記録媒体の製造方法。 - 前記磁性塗料を、請求項19または20に記載の製造方法により作製することを含む、請求項21に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は、請求項12または13に記載の六方晶フェライト磁性粒子である磁気記録媒体。 - 請求項21または22に記載の方法によって得られた磁気記録媒体である、請求項23に記載の磁気記録媒体。
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