以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である電子写真方式のカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の概略構成を示す図である。
同図において、プリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101と、制御手段となる制御部60とを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例に説明すると、このユニットは、図2に示すように、像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。画像形成ユニット1Kは、これら構成要素が共通のケーシングに保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着可能とされていて、それら構成要素を同時に交換可能に構成されている。
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電させる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電させる。より詳しくは、約−650[V]に一様に帯電させる。本形態において、帯電バイアスには直流電圧(又は直流電流として管理しても良い)に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる帯電方式を採用してもよい。
帯電装置6Kで一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約−100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写体でありベルト状の像担持体たる中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去するものである。ドラムクリーニング装置3Kは、回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。ドラムクリーニング装置3Kは、回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取り、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落とす。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。これらスクリュウ部材は、それぞれ軸線方向の両端部が軸受けによってそれぞれ回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設した螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所に、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有する所謂二成分のK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
このプリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kの各色のトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,K用のトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部60は、そのRAMに、Y,M,C,K用のトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,K用のトナー濃度検知センサからの各出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差がそれぞれ所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,K用のトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置のる第2搬送室内にY,M,C,Kのトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cのトナー像がそれぞれ形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオード等の光源から発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光しながら、複数の光学レンズやミラーを介して各感光体に照射するものである。光書込ユニット80としては、LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって感光体2Y,2M,2C,2K上に光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動させる転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、斥力ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写部材となる一次転写ローラ35Y,35M,35C,35K、転写部材としての二次転写ローラ36、ベルトクリーニング装置37などを備えている。
無端の中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、斥力ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、本形態では図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、図1において反時計回り方向に無端移動せしめられる。
一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31をそれぞれ感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、図示しない一次転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kの各トナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Yの表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に移動して一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写された中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kのトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせのトナー像が形成される。
一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備する弾性ローラで構成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、感光体2Y,2M,2C,2Kの軸心に対し、それぞれの軸心を、約2.5[mm]ずつベルト移動方向下流側にずらした位置を占めるように配設されている。本プリンタでは、このような一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを一次転写部材として採用してもよい。
転写ユニット30の二次転写ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の斥力ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、二次転写ローラ36とが当接する二次転写ニップNが形成されている。図1、図2に示す例では、二次転写ローラ36は接地されているのに対し、斥力ローラ33は、二次転写バイアスの電源39によって電圧としての二次転写バイアスが印加される。これにより、斥力ローラ33と二次転写ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを斥力ローラ33側から二次転写ローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。レジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止する。そして、挟み込んだ記録紙Pを二次転写ニップN内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開し、記録紙Pを二次転写ニップNに向けて送り出す。二次転写ニップNで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括二次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップNを通過すると、二次転写ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
斥力ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。二次転写ローラ36も、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。
二次転写ニップN内に挟み込んだ記録材Pに対して中間転写ベルト31上のトナー像を転写するために電圧(以下「二次転写バイアス」と記す)を出力する電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、二次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力する構成とされている。本形態では、図1に示すように、二次転写バイアスを斥力ローラ33に印加しつつ、二次転写ローラ36を接地している。
二次転写バイアスの供給形態としては、図1の形態に限定されるものではなく、図3に示すように電源39からの重畳バイアスを二次転写ローラ36に印加しつつ、斥力ローラ33を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。すなわち、図1に示すように、マイナス極性のトナーを用い且つ二次転写ローラ36を接地した条件で、斥力ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。
これに対し、図3に示す形態のように、斥力ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスを二次転写ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。
二次転写バイアスとなる重畳バイアスの供給形態としては、斥力ローラ33や二次転写ローラ36の何れか一方に印加するのではなく、図4、図5に示すように、電源39から直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、電源39から交流電圧を他方のローラに印加するようにしてもよい。
二次転写バイアスの供給形態としては、上記の形態だけでなく、図6、図7に示すように、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを一方にローラに切替えて供給可能としても良い。図6に示す形態では、斥力ローラ33に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給し、図7に示す形態では、二次転写ローラ36に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給可能としている。
二次転写バイアスの供給形態としては、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを切替える場合、図8、図9に示すように、「直流電圧+交流電圧」を何れか一方のローラに供給可能とし、「直流電圧」を他方のローラに供給可能として、適宜電圧供給を切替えるようにしてもよい。図8に示す形態では、斥力ローラ33に「直流電圧+交流電圧」を供給可能とし、二次転写ローラ36に直流電圧を供給可能としている。図9に示す形態では、斥力ローラ33に「直流電圧」を、二次転写ローラ36に「直流電圧+交流電圧」をそれぞれ供給可能としている。
このように二次転写ニップNに対する二次転写バイアスの供給形態としては様々あるが、この場合の電源としては、電源39のように「直流電圧+交流電圧」を供給できるものや、「直流電圧」と「交流電圧」とを個別に供給できるもの、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を1つの電源で切替えて供給できるものなど、その供給形態に対応させて適宜選択して用いればよい。二次転写バイアス用の電源39は、直流電圧だけからなるものを出力する第一のモードと、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(重畳電圧)を出力する第二のモードとに切替え可能な構成としている。また、図1、図3〜図5の形態では、交流電圧の出力をオン/オフすることでモード切替えが可能となる。図6〜図9に示す形態では、リレーなどからなる切替え手段を用いて使用する2つの電源とし、これら2つの電源を選択的に切替えることでモード切替えを行えるようにすれば良い。
たとえば、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、第一のモードにして、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加する。また、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、第2のモードにして、二次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力する。すなわち、使用する記録紙Pの種類(記録紙Pの表面凹凸の大きさ)に応じて、二次転写バイアスを第一のモードと第二モードで切り替え可能としてもよい。
二次転写ニップNを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップするものである。
二次転写ニップNよりも記録紙搬送方向下流側となる図1中右側方には、定着装置90が配設されている。定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、未定着トナー像の担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化されて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
本プリンタでは、標準モード、高画質モード、高速モードが制御部60に設定されている。標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約280[mm/s]と設定されている。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも遅い値に設定されている。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも速い値に設定されている。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、プリンタに設けられた操作パネル50(図10参照)に対するユーザーのキー操作、あるいはプリンタに接続されているパーソナルコンピュータ側でのプリンタプロパティメニューによって行われる。
本プリンタにおいて、モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35Y,35M,35Cを支持している図示しない揺動自在な支持板を移動せしめて、一次転写ローラ35Y,35M,35Cを、感光体2Y,2M,2Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,2M,2Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
本プリンタにおいて、二次転写バイアスの直流成分は、電圧の時間平均値(Vave)、すなわち、直流成分の電圧たる時間平均電圧値(時間平均値)Vaveと同じ値である。電圧の時間平均値Vaveとは、電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
二次転写バイアスを斥力ローラ33に印加し、且つ二次転写ローラ36を接地した本プリンタでは、二次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、二次転写ニップN内において、マイナス極性のトナーを斥力ローラ33側から二次転写ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、二次転写ニップN内において、マイナス極性のトナーを二次転写ローラ36側から斥力ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
ところで、記録紙Pとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなるため、特許文献1では、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを二次転写バイアスとして印加している。
しかしながら、本発明者らは実験により、かかる構成においては、画像先端部(用紙先端部)での画像濃度が薄くなってしまうという問題があることを見出した。そこで、本発明者らは、画像先端部(用紙先端部)での濃度不足を発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことがわかってきた。
トナーを往復運動させて紙の凹凸に転写させるためには交流電圧又は電流を印加することを必須としているが、そのためには高圧回路内に、交流成分の電圧又は電流の通り道となるバイパスコンデンサを配置する必要がある。そのため直流成分のみを用いる画像形成装置に対して、充電される容量が非常に大きくなっている。この結果、従来の転写バイアスでは、転写ニップN内で転写に必要な直流成分にまで立ち上げる速度が非常に遅くなっていることが分かった。
そこで、本発明においては、転写バイアスにおける直流成分の立ち上げ時の出力が、画像部の(画像を記録材に転写させるときの)出力よりも大きくなるようにすることで、直流成分の立ち上げを早くして(画像転写に必要な値にまで素早く立ち上がるようにして)画像先端部(用紙先端部)での濃度不足発生を防止する。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図10は、図1に示したプリンタの制御系の一部を示すブロック図である。同図において、転写バイアス出力手段の一部を構成する制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit),不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory),一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等を有している。プリンタ全体の制御を司る制御部60には、様々な構成機器やセンサ類が通信可能に電気的に接続されているが、図10においては、本プリンタの特徴的な構成に関連する構成機器だけを示している。
一次転写電源81(Y,M,C,K)は、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに印加するための一次転写バイアスを出力するものである。二次転写用の電源39は、二次転写ニップNに供給する二次転写バイアスを出力するものである。図1の形態では、斥力ローラ33に印加するための二次転写バイアスを出力する。この電源39は、制御部60とともに転写バイアス出力手段を構成している。オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成されていて、タッチパネルの画面に画像表示可能であり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受付け、入力情報を制御部60に送信する機能を備えている。オペレーションパネル50は、制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することもできる。
ところで、上述したように、本発明においては、転写バイアスにおける直流成分の立ち上げ時の出力目標値が、画像部の出力目標値よりも大きいことを特徴としている。または、立ち上げ時に二次転写ローラ36に出力される直流成分の出力が、トナー像を記録紙Pへ転写する際に二次転写ローラ36に出力される直流成分の出力よりも大きいことを特徴としている。
ここで、バイアスの直流成分の立ち上げについて説明する。図11において、上段は制御信号の波形、下段は斥力ローラ33に出力される電流または電圧の波形を示す。制御信号はバイアスの直流成分の出力目標値に対応する。図11の上段で示すように、転写材(記録媒体)が転写ニップに進入する前に、大きな出力目標値(電流又は電圧)で立ち上げ始め、記録材に画像を転写する時点(画像先端部)およびそれ以降では、画像転写に適した出力目標値(電流又は電圧)に下げている。これにより、図11の下段の波形図に示すように、転写材(記録媒体)が転写ニップに進入する前に、斥力ローラ33に出力される電流または電圧の直流成分は大きな出力(電流又は電圧)で立ち上がり始め、ピーク値Pとなる。その後、記録材に画像が転写され始める時点(画像先端部)では、ピーク値Pよりも小さな出力であって画像転写に適した出力(電流又は電圧)に下がる。
次に、本発明者らが行なった実験と、実施形態に係るプリンタの更なる特徴的な構成について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて各機器構成を下記の設定として各種のプリントテストを行った。
・各感光体や中間転写ベルト31の線速であるプロセス線速:176[mm/s]
・二次転写バイアスの交流成分の周波数f:500[Hz]
・二次転写バイアスの画像部の転写電流:−40[μA]
・記録紙P:特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名)175kg紙(四六版連量)
なお、レザック66は、「さざ波」(商品名)よりも紙表面の凹凸の度合いが大きい紙である。紙表面の凹部の深さは最大で100[μm]程度である。
試験環境は、温度23℃/湿度50%、温度10℃/湿度15%の2環境で行なった。バイアス印加手段となる電源は、図12に示す構成の電源を使用した。
そして、マゼンタとシアンのベタ画像を重ねたブルーベタ画像を作像し、先端部の画像濃度が得られるかを判断した。
図12の構成では、DC高圧電源71とAC高圧電源72を備えており、DCバイアス及び重畳バイアス(ACを重畳したDCバイアス)とを印加可能な構成である。DCバイアスを印加する場合、DC高圧電源71は、PWM T2(+)の信号に基づいて、2kV(50μA)の高圧出力をする。重畳バイアスを印加する場合、DC高圧電源71及びAC高圧電源72は、PWM T2(-)の信号とPWM T2(AC)の信号に基づいて、100μA(−10kV)+10kVpp(1mA)のAC重畳の高圧出力をする。上記2つの高圧出力は、定電流定電圧切替制御信号で定電圧出力と定電流出力を切り換られる構成となっており、I/O制御部70からの制御信号で切替、斥力ローラ33から二次転写ローラ36を通じてGNDに電流を流して用紙にトナーを吸着させる。
なお、図11及び後述の図13〜図16に示す制御信号は、図12においてI/O制御部70が出力するパルス幅変調信号であるPWM T2(-)信号のデューティ比であって、バイアスの直流成分の出力目標値に対応するものである。
以下に比較例と共に本発明の実施例を示す。表1に直流成分の立ち上げ方を、表2に先端濃度の結果を示す。
比較例1:AC電源を搭載していない画像形成装置
比較例2:AC電源を搭載しているが、直流の立ち上げ電流が画像部と同じもの。
実施例1:AC電源を搭載し、立ち上げを画像部よりも大きくしたもの。
実施例2,3:AC電源を搭載し、立ち上げを2段階にしたもの(第1段出力>第2段出力)。
実施例4,5:AC電源を搭載し、立ち上げを2段階に別け(第1段出力>第2段出力)、一段目を画像部の500%以上にしたもの。
表1の立ち上げ部に「第一段、第二段」とあるのは、2段階で立ち上げたものである。ただし立ち上げの段数はこれらに限らず、3段階以上で立ち上げても良い。
「MM」は標準温湿度環境、「LL」は低温低湿度環境を示す。また、画像濃度の「×」は画像濃度が不足していること、「△」は画像濃度がやや不足していること、「○」は画像濃度が十分であること、「◎」は「○」よりもさらに高い画像濃度が得られていること、をそれぞれ示す。
表2より、本発明の実施例においては、交流電源(交流成分を印加可能に構成された電源)を使用した場合であっても、直流成分の出力が用紙先端部における画像濃度を満足できていることが分かる。
比較例1のように交流電源を使用しない場合は、図13に示すように、画像部と同じ値で立ち上げた場合であっても、必要な電圧は足りている。一方、比較例2は交流電源を使用したものであり、その場合、画像部と同じ出力目標値で立ち上げただけでは、図14に示すように直流成分の立ち上がりが遅いため、表2のように濃度不足が発生している。
なお、図13、図14の上段は制御信号を、下段は斥力ローラに出力される電流または電圧の波形を示す。この図からもわかるように、実際の出力波形は出力目標値(制御信号)のように垂直に立ち上がるわけではなく、次第に立ち上がってくる。したがって、図14(比較例2)のように画像先端部までに必要な値まで立ち上がっていないと濃度不足が発生する。
実施例1では、画像部に対して大きな値で立ち上げることによって、画像先端部までに必要な値にまで立ち上がっており、その結果、表2に示すように、画像先端部での濃度不足は発生していない。
実施例2は2段階の出力で立ち上げたものであり、この場合には出力の立ち上がりが良好となり、画像先端部に必要な値が十分に得られ、表2に示すように、先端部においても優れた画像濃度が得られている。2段階で立ち上げる場合、第1段の出力目標値は第2段の出力目標値よりも大きいほうが好ましい。第1段の出力目標値は画像部出力目標値の300%以上とするのが好ましい。また、第2段の出力目標値は画像部出力目標値の120〜300%とするのが好ましい。実施例2の第2段出力目標値は画像部出力目標値の120%である。実施例3の第2段出力目標値は画像部出力目標値の200%である。
なお、直流成分を2段階で立ち上げる理由としては、次のような理由による。すなわち、第1段の立ち上げはできるだけ早く立ち上げたいために非常に大きな出力目標値(制御信号)で立ち上げるのが良い。しかし、用紙が転写ニップに進入した後でもその大きな出力目標値のままでは放電が発生してしまう。そのため、2段階で立ち上げる(第2段出力目標値<第1段出力目標値)ことで、素早い立ち上がりと放電の防止とを実現している。
また、直流成分の2段階立ち上げは低温低湿度環境(LL環境)で効果が大きく、LL環境における画像先端部での濃度不足の防止に優れた効果が得られる。図15及び図16に、LL環境での実施例1と実施例2の出力波形を示す。
LL環境では立ち上がりが遅くなるため、実施例1では図15のように画像先端部で充分に立ち上がっておらず、先端部での濃度不足が発生する恐れがある。これに対し、直流成分を2段階で立ち上げる実施例2では、図16に示すようにLL環境においても素早い立ち上がりが得られており、LL環境でも画像先端部での濃度不足は発生しない。なお、常温上湿度環境では実施例1でも濃度不足は発生していない。
実施例4及び実施例5においては、第1段出力目標値を画像部の出力目標値の500%以上と大きくすることで、LL環境においても画像先端部で優れた濃度が得られることが分かった。なお、実施例4及び実施例5では、第2段出力目標値を画像部出力目標値の300%としている。なお、実施例2〜5では直流成分の立ち上げを2段階としたが、3段階以上で立ち上げてもよい。
このように、本発明においては、転写バイアスにおける直流成分の立ち上げ時の出力目標値(電圧の目標値又は電流の目標値)が、画像部(画像を記録材に転写させるとき)の出力目標値(電圧の目標値又は電流の目標値)よりも大きいことにより、直流成分を素早く立ち上げることができる。そのため、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、先端の画像濃度が薄くなること無く良好な画像を得ることが可能となる。
立ち上げ時の出力目標値(制御信号)は、画像部出力目標値の300%以上とするのが望ましい。これにより、画像先端部までに必要な値にまで立ち上げることができる。
また、直流成分の立ち上げを2段階以上に分けて行うことにより、素早い立ち上がりと放電現象の発生防止とを実現することができる。立ち上げを2段階以上に分ける場合、第2段の出力目標値は画像部出力目標値の120〜300%とするのが好ましい。
また、用紙に画像を転写する際の転写バイアスを定電流制御する場合は、直流成分の立ち上げ時の電流の出力目標値を画像部(画像を記録材に転写させるとき)の電流の出力目標値の300%以上とするのが好適である。
なお、実施形態のプリンタでは、転写バイアスとして直流成分のみを印加するDCモードと、転写バイアスとして重畳バイアス(直流成分+交流成分)を印加するAC+DCモードの2つのモードを有している。その2つのモードのいずれにおいても、上記した、直流成分の立ち上げ時の出力目標値を画像部(画像を記録材に転写させるとき)の出力目標値よりも大きくすることは実施可能である。
また、直流成分の立ち上げを2段階以上とする場合、用紙が転写ニップに進入したタイミングで直流成分の立ち上げが2段階目になる(第1段→第2段)ようにすると好適である。これは、1段目の出力目標値が大きく、その大きな出力目標値では画像転写時に斥力ローラ33へ過剰なバイアスが出力されることが多いので、1段目が画像にかぶらないようにするためである。実施形態のプリンタでは、用紙の転写ニップへの進入タイミングは、レジストローラ対101の駆動タイミングに基づいて判断できる。
また、重畳バイアスを印加する場合には、直流成分の立ち上げ開始後に交流成分を立ち上げるように制御している。その理由は、直流成分の立ち上がりの方が交流成分の立ち上がりよりも遅いためである。
ところで、転写ニップを構成する部材(図1のプリンタでは斥力ローラ33及び二次転写ローラ36)の電気抵抗は、使用環境等によって変化する。そのため、転写バイアスにおける直流成分の立ち上げに必要となる時間も使用環境によって異なる。そこで、環境状態を検知する温度検知手段又は温湿度検知手段を画像形成装置に搭載し、その検知手段の検知結果に基づいて上記直流成分の立ち上げ時間を制御する(変化させる)ように構成してもよい。
例えば図1のプリンタの場合、二次転写部と給紙部の間の位置に、環境条件検知手段としての温湿度センサ110を配置している。温湿度センサ110の出力は制御部60に入力される。温湿度センサ110による検知結果に基づいて、上記直流成分の立ち上げ時間を制御することにより、より良好な画像品質を得ることができる。
低温の場合、転写ローラ及び転写の電気抵抗が上昇する(低湿の場合は紙の水分量が減少し、紙の電気抵抗が上昇する)ため、転写に必要なバイアスが高くなる。そのため、立ち上がり時間を長くしないと必要な電圧まで立ち上がらない。
高温の場合、転写ローラ及び転写の電気抵抗が下降する(高湿の場合は紙の水分量が増加し、紙の電気抵抗が下降する)ため、転写に必要なバイアスが低くなる。そのため、立ち上がり時間を短くしないと過剰な電圧が印加されてしまう。
次の表3に、直流成分立ち上げ時間の制御例を示す。
なお、転写バイアスの直流成分を立ち上げる際の、立ち上げ部の大きな出力目標値(画像部の出力目標値よりも大きな出力目標値)でバイアスを出力している時間を「立ち上げ時間」と規定する。これは図11、図15に示す1段階立ち上げの場合はもちろん、図16に示す2段階(3段階以上の多段階でもよい)での立ち上げや、後述する変形例(立ち上げ用と画像転写用で制御信号を分ける)で制御する場合も同様である。
表3に示すように、常温常湿環境(一例として23℃、50%)での立ち上げ時間24ミリ秒に対して、LL環境(一例として10℃、15%)での立ち上げ時間は50ミリ秒、高温高湿度環境(一例として27℃、80%)での立ち上げ時間は10ミリ秒に制御する。なお、温度及び湿度の区分設定と、立ち上げ時間の設定例は一例であり、装置構成に応じて適宜な値に設定すればよいものである。
また、転写ニップを構成する部材(図1のプリンタでは斥力ローラ33及び二次転写ローラ36)の電気抵抗を検知する抵抗検知手段を画像形成装置に搭載し、その抵抗検知手段の検知結果に基づいて上記直流成分の立ち上げ時間を制御する(変化させる)ようにしても良い。例えば、図1のプリンタの場合、斥力ローラ33の電気抵抗を検知する抵抗検知手段120を設けている。抵抗検知手段120の出力は制御部60に入力される。抵抗検知手段120は、具体的には電流計あるいは電圧計である。なお、抵抗検知手段は電源39の内部に設けてもよい。
抵抗検知手段120が高い抵抗を検知した場合、転写に必要なバイアスが高くなる。そのため立ち上がり時間を長くしないと必要な電圧まで立ち上がらない。
抵抗検知手段120が低い抵抗を検知した場合、転写に必要なバイアスが低くなる。そのため立ち上がり時間を短くしないと過剰な電圧が印加されてしまう。
抵抗検知手段120の検知結果に基づく制御は、環境条件検知手段110による制御と同様に、抵抗検知手段の検知結果を高抵抗、中抵抗、高抵抗の3つに区分し、それぞれに対応する立ち上げ時間を設定すればよい。抵抗検知手段としては周知なものを採用可能である。また、抵抗値の区分や立ち上げ時間は装置構成に応じて適宜設定すればよい。さらに、環境による制御と抵抗による制御を合わせて行なってもよい。
次に、変形例について説明する。
図17は、変形例のプリンタの直流成分の制御信号と立ち上げについて説明する波形図である。また、図18は、変形例のプリンタの電源構成を示すブロック図である。
変形例における直流成分立ち上げ時の制御が先に説明した図11と異なる点は、制御信号を、立ち上げ用制御信号と画像転写用制御信号に分けていることである。2つの制御信号により制御することで、転写用バイアスの出力誤差を生じさせず、また、制御部の記憶領域の容量を大きくすることなく、大きな立ち上げ用バイアスを斥力ローラに出力しつつ、転写用バイアスを精度良く出力することができる。
上記2つの制御信号で直流成分を立ち上げるため、変形例のプリンタでは図18に示すような電源構成を備えている。図12で説明したものと異なる点は、2つのPWM信号線を備えることである。
I/O制御部70は、出力制御信号PWM T2(-)B用の信号線を介して立ち上げ用制御信号PWM T2(-)BをDC高圧電源71へ出力する。また、I/O制御部70は、出力制御信号PWM T2(-)A用の信号線を介して転写用制御信号PWM T2(-)AをDC高圧電源71へ出力する。
転写用制御信号PWM T2(-)Aは、記録紙Pへトナー像を転写するための転写用バイアスを斥力ローラ33に出力するための信号である。信号の出力目標値(デューティー比)は、たとえば装置の温湿度環境の変動や転写ニップを構成する部材の電気抵抗の変動があった場合に最適な転写条件となるように調整される。
一方、立ち上げ用制御信号PWM T2(-)Bは、直流成分のバイアスを素早く立ち上げるために、記録紙Pへトナー像を転写する際よりも大きな立ち上げ用バイアスを斥力ローラ33に出力するための信号である。
立ち上げ用バイアスと転写用バイアスとを単一の出力制御信号により制御する場合、信号の出力目標値(デューティー比)の最大値(デューティー比100%)は大きなバイアスである立ち上げ用バイアスに対応させる必要があるため、転写用バイアスの出力目標値は、狭い範囲で調整する必要がある。たとえば、立ち上げ用バイアスの出力目標値が100%、低湿度環境での転写用バイアスの出力目標値が20%であって、中湿度環境での転写用バイアスの出力目標値を低湿度環境での転写用バイアスの出力目標値の64%とする。このとき中湿度環境での転写用バイアスの出力目標値は12.8%となる。転写用バイアスの出力目標値は、12.8%から20%の狭い範囲で調整する必要がある。この場合、転写用バイアスの出力目標値として出力されるデューティー比に誤差が生じやすくなる。または、出力目標値を設定するために桁数の大きな数値を装置の記憶領域に記憶しておく必要があり、記憶領域の容量が必要になる。
本変形例では立ち上げ用バイアスと転写用バイアスを別々の出力制御信号で制御することにより、転写用バイアスの出力目標値に生じる誤差を低減でき、また制御部の記憶領域の容量を節約でき、大きな立ち上げ用バイアスを斥力ローラに出力しつつ転写用バイアスを精度よく斥力ローラに出力することができる。
なお、図18では出力制御信号PWM T2(-)B用の信号線と出力制御信号PWM T2(-)A用の信号線を別のものとして説明したが、I/O制御部70が出力する出力制御信号PWM T2(-)Bと出力制御信号PWM T2(-)Aとを別々に分ければよく、信号線は共通のものを用いてもよい。
図19は、変形例のプリンタの直流成分の制御信号と立ち上げについて説明する別の波形図である。図15と異なる点は、制御信号を、立ち上げ用制御信号と画像転写用制御信号に分けていることである。図17の場合と同様、転写用バイアスの出力目標値に生じる誤差を低減でき、また制御部の記憶領域の容量を節約できる。
図20は、変形例のプリンタの直流成分の制御信号と立ち上げについて説明するさらに別の波形図である。図16と異なる点は、制御信号を、立ち上げ用制御信号と画像転写用制御信号に分けていることである。図17の場合と同様、転写用バイアスの出力目標値に生じる誤差を低減でき、また制御部の記憶領域の容量を節約できることに加えて、以下のような特徴を有している。
図20の制御において、第一段の立ち上げ用バイアスは出力制御信号PWM T2(-)Bによって出力し、第二段の立ち上げ用バイアスおよび転写用バイアスは出力制御信号PWM T2(-)Aによって出力する。
出力制御信号をPWM T2(-)BからPWM T2(-)Aへ切り替えるときに、制御部における制御が遅延したり切替えタイミングに誤差が生じることによりバイアスの出力が一時的に小さくなるおそれがある。
そこで、図20の制御では、第一段の出力制御信号を第二段の出力制御信号に切り替えた後に画像先端が転写ニップへ到達するように、出力制御信号の切り替えタイミングを設定している。これにより、出力が一時的に小さくなることに起因して画像先端の画像濃度が薄くなることを防止でき、良好な画像を得ることができる。
以上述べたように、本実施形態のプリンタにおいて、図11、図15、図16および図17、図19、図20に示す制御信号の波形、または表1に示す実施例1から実施例5のように電源の出力目標値を制御する。すなわち、トナー像が担持される中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31との間に二次転写ニップNを形成する二次転写ローラ36と、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを出力可能な電源39と、電源39を制御する制御部60と、を備え、電源39が出力する重畳バイアスまたは直流成分のみからなる直流バイアスにより、中間転写ベルト31上のトナー像を二次転写ニップNで記録紙Pへ転写するプリンタにおいて、制御部60は、直流成分の立ち上げ時の出力目標値(制御信号の値)が、トナー像を記録紙Pに転写する際の直流成分の出力目標値(制御信号の値)よりも大きくなるように電源39を制御する。
これにより、転写バイアスの直流成分を素早く立ち上げることができる。記録紙P表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、先端の画像濃度が薄くなること無く良好な画像を得ることができる。
また、対向部材に出力されるバイアスの直流成分の出力が、図11および図17に示す出力波形になるように電源を制御してもよい。すなわち、トナー像が担持される中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31との間に二次転写ニップNを形成する二次転写ローラ36と、二次転写ニップNにおいて中間転写ベルト31を介して二次転写ローラ36に対向する斥力ローラ33と、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを出力可能な電源39と、電源39を制御する制御部60と、を備え、電源39が出力する重畳バイアスまたは直流成分のみからなる直流バイアスにより、中間転写ベルト31上のトナー像を二次転写ニップNで記録紙Pへ転写するプリンタにおいて、制御部60は、立ち上げ時に二次転写ローラ36または斥力ローラ33に出力される直流成分の出力が、トナー像を記録紙Pへ転写する際に二次転写ローラ36または斥力ローラ33に出力される直流成分の出力よりも大きくなるように、電源39を制御する。
これにより、中間転写ベルト31、二次転写ローラ36、斥力ローラ33の抵抗変動や電源の出力変動が生じた場合であっても、より確実に転写バイアスの直流成分を素早く立ち上げることができる。記録紙P表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、先端の画像濃度が薄くなること無く良好な画像を得ることができる。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写部の構成は適宜な構成を採用可能であり、対向部材側をベルトで構成しても良い。また、重畳バイアスを出力可能な電源は周知であり、適宜な構成の電源を使用可能である。
画像形成装置各部の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの並び順などは任意である。また、4色機に限らず、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
本発明は、像担持体としての感光体ドラムと、転写手段としての転写ローラと、により形成される転写ニップにおいて感光体ドラム上の画像を記録媒体へ転写する装置、いわゆる直接転写方式の装置にも適用することができる。
すなわち、トナー像が担持される感光体ドラムと、感光体ドラムとの間に転写ニップを形成する転写ローラと、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを転写ニップへ出力可能な電源と、電源を制御する制御部と、を備え、電源が出力する重畳バイアスまたは直流成分のみからなる直流バイアスにより感光体ドラム上のトナー像を転写ニップで記録紙Pへ転写するプリンタにおいて、制御部は、直流成分の立ち上げ時の出力目標値(制御信号の値)が、トナー像を記録紙Pに転写する際の直流成分の出力目標値(制御信号の値)よりも大きくなるように電源を制御するプリンタにも適用することができる。
または、トナー像が担持される感光体ドラムと、感光体ドラムとの間に転写ニップを形成する転写ローラと、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを転写ニップへ出力可能な電源と、電源を制御する制御部と、を備え、電源が出力する重畳バイアスまたは直流成分のみからなる直流バイアスにより感光体ドラム上のトナー像を転写ニップで記録紙Pへ転写するプリンタにおいて、制御部は、立ち上げ時に転写ローラに出力される直流成分の出力が、トナー像を記録紙Pへ転写する際に転写ローラに出力される直流成分の出力よりも大きくなるように、電源を制御するプリンタにも適用することができる。この場合、感光体ドラムは接地されることが好ましい。
中間転写ベルトにかえてドラム形状の中間転写ドラムを用いても良い。ニップ形成ローラ(二次転写ローラ)にかえてベルト形状の二次転写ベルトを用いてもよい。