JP2014230497A - Dnaチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法 - Google Patents

Dnaチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 DNAチップを用いた生物の検出における誤判定を抑制する。
【解決手段】 検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させ、増幅産物の有無をハイブリダイゼーションによって確認する、DNAチップを用いた生物の検出方法であって、核酸断片の増幅にホットスタート仕様のDNA合成酵素を使用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、環境中における微生物などの存否を確認するための検査方法等に関する。
近年、食品製造現場や臨床現場、文化財保護環境等において、カビや細菌などの微生物が存在するか否かを検査して、環境の安全性を確認するとともに、その繁殖を防止することが重要となっている。
このようなカビの検査では、一般的に、環境中から試料を採取して前培養し、次いで菌種ごとに最適な培地で20日程度の培養を行った後に、形態的特徴を観察することで、カビを同定する形態観察法(培養法)が行われている。
また、最近は、カビの検査においてDNAを用いた同定法も行われている。例えば、環境中から採取した試料を培養した後、培養細胞からDNAを抽出して、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法によりDNAにおける増幅対象領域(標的領域)を増幅し、その増幅産物を解析することで、試料中のカビを同定することが行われている。増幅産物を解析する方法としては、例えば電気泳動によって増幅産物のサイズを分析する方法や、増幅産物と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、試料中に存在するカビを検出することが行われている。
このようなDNAチップを用いた生物の検出において、本来は検出されるはずの生物が検出できない偽陰性反応が問題となっていた。すなわち、PCR法などによって検出対象の生物のDNAにおける標的領域を増幅することができており、かつその増幅産物に相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて反応を行っても、増幅産物がプローブに十分に結合されず、検出対象の生物が検出できないことがあった。
偽陰性反応が生じたケースでは、PCRにおいて、一般的なDNA合成酵素が用いられていた。このようなスタンダード仕様のDNA合成酵素は、活性化のための特別な制御がされておらず、PCR増幅産物として、目的産物以外の副産物が生じていた。このような副産物の発生は、高温下で活性化を開始するように制御された、いわゆるホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることで、抑制できることが知られている(特許文献1−3参照)。
すなわち、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、PCRの開始にあたって低温の反応液をDNAが変性する高温にまで昇温する途中において、DNAがアニーリングする温度付近でプライマーが標的領域以外にミスマッチ結合をすると、次にDNA合成酵素が活性化する温度になったときにこのミスマッチ結合したプライマーからDNAが合成される。このため、以後のPCRのサイクルにおいて、増幅産物として目的産物以外の副産物が発生する。
一方、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合、DNAがアニーリングする温度付近でプライマーが標的領域以外にミスマッチ結合をしても、DNAが変性する高温を経てからでないとDNA合成酵素が活性化されない。このため、高温時にミスマッチ結合したプライマーは解離し、このようなミスマッチ結合にもとづく副産物は発生しない。したがって、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いれば、PCRにおける副産物の発生を抑制することが可能となっている。
特許第4053363号公報 特許第5020074号公報 特許第5022383号公報
ここで、目的産物と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いた生物の検出において、目的産物とプローブとの結合が、副産物によって阻害される可能性がある。また、副産物の発生を抑制すれば、偽陰性反応が低減し、誤判定が抑制される可能性がある。
しかしながら、これまで、PCRにおけるホットスタート仕様のDNA合成酵素の使用が、目的産物とプローブとの結合に影響を与えることは知られておらず、また、DNAチップによる誤判定が抑制されるか否かは明らかではなかった。
そこで、本発明者らは鋭意研究して、PCRにおけるホットスタート仕様のDNA合成酵素の使用により、DNAチップによる誤判定が抑制されることを見いだして、本発明を完成させた。
本発明は、誤判定を抑制することが可能なDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のDNAチップを用いた生物の検出方法は、検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させ、増幅産物の有無をハイブリダイゼーションによって確認する、DNAチップを用いた生物の検出方法であって、核酸断片の増幅にホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いる方法としてある。
また、本発明のDNAチップを用いた生物の検出方法は、検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させて目的産物を取得する核酸増幅工程と、目的産物の一部と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、目的産物とプローブとをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした目的産物を検出することにより検出対象の生物の存否を判定する生物検出工程とを有し、核酸増幅工程において、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて核酸断片を増幅させ、目的産物以外の増幅産物である副産物の発生を抑制することにより、生物検出工程において、副産物による目的産物とプローブとのハイブリダイゼーション阻害効果を抑制し、偽陰性反応の発生を抑制する方法とすることも好ましい。
さらに、本発明の誤判定抑制方法は、検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させて目的産物を取得する核酸増幅工程と、目的産物の一部と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、目的産物とプローブとをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした目的産物を検出することにより検出対象の生物の存否を判定する生物検出工程とを有する、DNAチップを用いた生物の検出における誤判定抑制方法であって、核酸増幅工程において、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて核酸断片を増幅させ、目的産物以外の増幅産物である副産物の発生を抑制することにより、生物検出工程において、副産物による目的産物とプローブとのハイブリダイゼーション阻害効果を抑制し、偽陰性反応の発生を抑制する方法としてある。
本発明によれば、DNAチップを用いた生物の検出における偽陰性反応の発生を抑制し、誤判定を抑制することが可能となる。
本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するための試験1で用いたプライマーセットの塩基配列を示す図である。 本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するための試験1で用いたプローブの塩基配列を示す図である。 本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するための試験1の結果を示す図である。 核酸増幅工程における副産物が目的産物とプローブとのハイブリダイゼーションを阻害することを示唆する試験2の結果を示す図である。 電気泳動を行ったゲルから目的産物を分離抽出精製してDNAチップによる判定を行った試験3の結果を示す図である。 本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するための試験4で用いたプローブの塩基配列を示す図である。 本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するための試験4の結果を示す図である。
以下、本発明のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、この実施形態及び後述する実施例の具体的な内容に限定されるものではない。
本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法は、いずれも検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させ、増幅産物の有無をハイブリダイゼーションによって確認する方法であり、核酸断片の増幅にホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることを特徴とする。
また、これらの方法は、核酸増幅工程と、生物検出工程とを有することが好ましく、核酸増幅工程においてホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることにより、生物検出工程における偽陰性反応を抑制する構成とすることが好ましい。
核酸増幅工程では、検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させて目的産物を取得する。
具体的には、まず検出対象の生物からゲノムDNAを抽出する。その方法は特に限定されないが、例えば、生物の細胞を、φ0.5mmジルコニアビーズを入れたバイアル瓶に入れ、液体窒素に浸して凍結した後、振盪装置を用いて細胞を破砕する。そして、得られた細胞の破砕物から、CTAB法(Cetyl trimethyl ammonium bromide)やDNA抽出装置により、DNAを抽出する。
検出対象の生物の種類は、特に限定されない。すなわち、本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法は、カビなどの真菌や、食中毒菌などの細菌等の微生物の検査に好適に用いることができ、またヒトを含むあらゆる動物及び植物の同定に用いることも可能である。
次に、抽出したDNAを用いて、標的領域を含む核酸断片を増幅させる。この標的領域とは、PCR法などによって増幅させる対象となるターゲットの領域を意味する。また、核酸断片とは、PCR法などにより、プライマーセットを用いて増幅されるゲノムDNAの一部分を意味する。
核酸断片を増幅する方法としては、PCR法を好適に用いることができる。PCR法では、標的領域を含む核酸断片を増幅させるためのプライマーセットを含有するPCR反応液を用いて、核酸断片の増幅処理が行われる。PCR装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができる。
本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法では、例えば以下のような反応条件でPCRを行うことにより、標的領域を含む核酸断片を好適に増幅させることができる。
(a)95℃ 10分、(b)95℃(DNA変性工程) 30秒、(c)56℃(アニーリング工程) 30秒、(d)72℃(DNA合成工程) 60秒((b)〜(d)を40サイクル)、(e)72℃ 10分
PCR用の反応液としては、例えば以下の組成からなるものを使用することが好ましい。すなわち、核酸合成基質(dNTPmixture(dCTP、dATP、dTTP、dGTP))、プライマーセット、核酸合成酵素(Nova Taq HotStart DNA polymeraseなど)、蛍光標識試薬(Cy5−dCTPなど)、試料のゲノムDNA、緩衝液、及び残りの成分として水を含むPCR反応液を好適に使用することができる。なお、緩衝液としては、例えばAmpdirect(R)(株式会社島津製作所製)を用いることができる。
本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法では、核酸合成酵素として、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いる。
ホットスタート仕様のDNA合成酵素は、反応液の温度が、最初にDNA変性工程の温度(上記の例では95℃)に昇温された後に、DNA合成工程の温度(上記の例では72℃)になると活性化されるDNAポリメラーゼである。このようなホットスタート仕様のDNA合成酵素の活性化の制御には、DNAポリメラーゼ抗体を用いて行うもの、化学修飾によるもの、核酸添加剤を用いて行うものなど種々の方法があり、いずれの方法を用いるものであっても良い。例えば、Nova Taq HotStart DNA polymerase(メルク株式会社製)、Phire Hot Start II DNA Polymerase(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)、PfuTurbo Hotstart DNA Polymerase(アジレントテクノロジー株式会社製)などを用いることが可能である。
このようなホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて核酸断片を増幅させることで、標的領域以外の核酸断片(標的領域であって増幅対象領域を全て含まないものを含む)が増幅されることを抑制し、目的産物以外の増幅産物である副産物の発生を抑制することができる。
すなわち、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いると、反応液を最初にDNA変性工程の温度にまで昇温する途中において、反応液の温度がアニーリング工程の温度付近に達したときに、プライマーが標的領域における結合予定位置以外の場所にミスマッチ結合する。そして、反応液の温度がDNA合成工程の温度に達したときに、スタンダード仕様のDNA合成酵素はプライマーのミスマッチ結合部分からDNAを合成して伸長させる。さらに、以降は、この伸長されたDNAを鋳型として、標的領域以外の核酸断片が増幅され、副産物が発生することになる。
これに対し、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いると、反応液の温度がアニーリング工程の温度付近に達したときに、プライマーが標的領域における結合予定位置以外の場所にミスマッチ結合しても、DNAの合成は起こらない。そして、反応液の温度がDNA変性工程の温度に達した時点で、ミスマッチ結合したプライマーは解離する。したがって、このようなミスマッチ結合にもとづく核酸断片の増幅は行われず、副産物の発生を抑制することが可能になっている。
また、核酸増幅工程において、二以上の標的領域を同時に増幅させる場合がある。例えば、複数の種類の生物から抽出したゲノムDNAにおける標的領域を同時に増幅させたり、ゲノムDNAにおける複数の標的領域を対象として、これらを同時に増幅させたりする場合がある。このような場合にはより一層ミスマッチ結合が生じやすくなるため、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて副産物の発生を抑制することは、非常に有効である。
次に、生物検出工程では、目的産物の一部と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、目的産物とプローブとをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした目的産物を検出することにより検出対象の生物の存否を判定する。
このDNAチップとしては、既存の一般的な方法で製造されたものを使用ことができ、プローブが固定化された担体であれば良く、その他の点では特に限定されない。例えば、貼り付け型のDNAチップは、DNAスポッターによりプローブを基板上に固定化して、各プローブに対応するスポットを形成することにより作成される。また、合成型DNAチップは、光リソグラフィ技術により、基板上で一本鎖オリゴDNAを合成することにより作成される。基板はガラス製に限定されず、プラスチック基板やシリコンウエハー等を用いることもできる。また、基板の形状は平板状のものに限定されず、様々な立体形状のものとすることもでき、その表面に化学反応が可能となるように官能基を導入したものなどを用いることもできる。
このようなDNAチップに目的産物を滴下し、目的産物とDNAチップに固定化されたプローブとをハイブリダイズさせて、ハイブリダイズした目的産物の標識を検出する。
標識の検出は、蛍光スキャニング装置などの一般的な標識検出装置を用いて行うことができ、例えば東洋鋼鈑株式会社のBIOSHOTを用いて、目的産物における蛍光標識の蛍光強度を測定することにより行うことができる。測定結果は、S/N比値(Signal to Noise ratio,(メディアン蛍光強度値−バックグラウンド値)÷バックグラウンド値)として得ることが好ましい。なお、標識は蛍光に限定されず、その他のものを用いることもできる。
ここで、PCRによって得られた増幅産物の中に、標的領域を含む核酸断片が適切に増幅された目的産物以外に、プライマーのミスマッチ結合にもとづく増幅産物である副産物が含まれている場合、次のようなハイブリダイゼーション阻害効果があると推測される。
まず、副産物の二本鎖のうちの一方が、DNAチップに固定されたプローブにハイブリダイズして、副産物に含まれる標識が検出される。このとき、副産物のサイズは通常は目的産物よりも小さく、標識量も少ない。また、副産物の二本鎖のうちのもう一方は、目的産物とハイブリダイズして、目的産物がプローブにハイブリダイズする結合領域をブロックすると考えられる。このため、目的産物とプローブとのハイブリダイゼーションが阻害され、副産物によって、偽陰性反応が生じると推測される。
そこで、本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法では、副産物による目的産物とプローブとのハイブリダイゼーション阻害効果を抑制するために、核酸増幅工程においてDNA合成酵素としてホットスタート仕様のものを用い、これによって生物検出工程における偽陰性反応の発生を抑制することを可能にしている。
以下、本発明の実施形態に係るDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法の効果を確認するために行った試験について、具体的に説明する。
(試験1)
まず、施設環境から野生カビを採取し、これを検出対象の生物として使用した。具体的には、エアーサンプラーを用いて施設環境内の空気を採取し、これをPDA培地に吹き付けて、25℃の暗所で、7日間静置させて培養した。次に、培地に生じたカビの各コロニーの一部を採取して、それぞれ25℃の暗所で7〜10日間PDA培地により分離培養を行った。そして、分離培養された各コロニーのカビをDNA配列解析に供して、その菌種を確認した。その結果、ユーロチウム属菌のカビ、具体的には、ユーロチウム ヘルバリオラム(Eurotium herbariorum)と、ユーロチウム ルブラム(Eurotium rubrum)の存在が確認された。
また、培地に生じたカビの各コロニーの一部を一括して採取し、φ0.5mmジルコニアビーズを入れたバイアル瓶に入れ、液体窒素に浸して凍結した後、振盪装置を用いて、カビの細胞を破砕した。そして、DNA抽出装置によりカビのゲノムDNAを抽出した。
次に、PCR法により、カビのゲノムDNAにおけるITS領域を標的領域として、この標的領域を含む核酸断片を増幅した。
このとき、ITS領域増幅用プライマーセットとして、図1に示す配列番号1の塩基配列からなるフォワードプライマー(Fプライマー)及び配列番号2の塩基配列からなるリバースプライマー(Rプライマー)を使用した。また、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとして、同図に示す配列番号3の塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号4の塩基配列からなるリバースプライマーを用いた。これらのプライマーは、オペロンテクノロジー株式会社により合成された。
また、PCR用反応液として、Ampdirect(R)(株式会社島津製作所製)を使用し、次の組成のサンプルを20μlずつ作成した。
すなわち、DNA合成酵素としてスタンダード仕様のもの(NovaTaq DNA polymerase)を用いたサンプル1,2、及びDNA合成酵素としてホットスタート仕様のもの(NovaTaq HotStart DNA polymerase)を用いたサンプル1,2の4種類のPCR用反応液を作成した。スタンダード仕様のサンプル1とホットスタート仕様のサンプル1の組成は、DNA合成酵素以外は同一であり、試料のDNAも同じものを用いている。スタンダード仕様のサンプル2とホットスタート仕様のサンプル2の組成についても同様である。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(2.5μM)(配列番号1) 1.0μl
6.ITS1-Rv primer(2.5μM)(配列番号2) 1.0μl
7.BtF primer(10μM)(配列番号3) 1.0μl
8.BtR primer(10μM)(配列番号4) 1.0μl
9.Template DNA 1.0μl
10.NovaTaq HotStart DNA polymerase 又は NovaTaq DNA polymerase 0.2μl
11.水(全体が20.0μlになるまで加水)
上記各PCR用反応液を使用して核酸増幅装置(TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(R) Gradient タカラバイオ株式会社製)により、次の条件でDNAの増幅を行った。
(a)95℃ 10分
(b)95℃ 30秒
(c)56℃ 30秒
(d)72℃ 60秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 10分
DNAチップには、ジーンシリコン(R)(東洋鋼鈑株式会社製)を用い、図2に示されるユーロチウム属菌検出用プローブ(配列番号5,ITS領域から選択、配列番号6,β−チューブリン遺伝子から選択)を固定化したものを使用した。これらのプローブは、DNA配列解析により同定されたユーロチウム ヘルバリオラム(Eurotium herbariorum)及びユーロチウム ルブラム(Eurotium rubrum)のゲノムDNAにおけるITS領域、又はβ−チューブリン遺伝子の標的領域を含む核酸断片の増幅産物とそれぞれハイブリダイズするものである。
次に、サンプル毎に、PCR産物に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合して、94℃で5分間加温し、上記DNAチップに滴下した。
このDNAチップを45℃で1時間静置し、ハイブリダイズしなかったPCR産物を上記緩衝液を用いてDNAチップから洗い流した。
次いで、DNAチップを標識検出装置(GenePix4100A Molecular Devices社製)にかけて、各プローブにおける蛍光強度を測定し、S/N比値を算出した。そして、このS/N比値が3以上を示した場合に陽性と判定した。
また、スタンダード仕様のDNA合成酵素と、ホットスタート仕様のDNA合成酵素により増幅された増幅産物の相違の有無を確認するために、電気泳動を行って、バンドの位置及び濃さを確認した。
具体的には、MultiNA(R)(株式会社島津製作所製)を用いて、マイクロキャピラリー電気泳動により、サンプル1〜4を使用して得られたPCRの増幅産物を泳動させた。
その結果、図3に示すように、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、及びホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合のいずれにおいても、目的産物が増幅されていることが確認された。すなわち、図1に示すプライマーセットを用いて増幅されるユーロチウム属菌のITS領域の増幅産物のサイズはおよそ260bpであるところ、いずれのサンプルにおいても260bp付近に濃いバンドが見られた。また、図1に示すプライマーセットを用いて増幅されるユーロチウム属菌のβ−チューブリン遺伝子の増幅産物のサイズはおよそ460bpであるところ、いずれのサンプルにおいても460bp付近にバンドが見られた。
また、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合では、電気泳動画像に目的産物のバンド以外に、副産物のバンドが多数見られた。
一方、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合では、副産物のバンドは無いか、又はほとんど見られなかった。
また、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号5)において検出されたS/N比値は、サンプル1では1.95、サンプル2では0.05、β−チューブリン遺伝子プローブ(配列番号6)において検出されたS/N比値は、サンプル1では84.1、サンプル2では73.8となっており、ITS領域プローブにおけるS/N比値が3未満であるため、全体として陰性反応を示している。一方、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号5)において検出されたS/N比値は、サンプル1では52.0、サンプル2では51.1、β−チューブリン遺伝子プローブ(配列番号6)において検出されたS/N比値は、サンプル1では39.2、サンプル2では41.1となっており、陽性反応を示している。
すなわち、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合には、偽陰性反応が発生しているが、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合には、偽陰性反応の発生を抑制できていることがわかる。
(試験2)
次に、副産物が目的産物とプローブとのハイブリダイゼーションを阻害している可能性があることを確認するための試験を行った。この試験では、サンプルとして、試験1で使用したスタンダード仕様のDNA合成酵素によるサンプル1,2と同じものをそれぞれ使用した。
すなわち、サンプル1,2によりそれぞれ得られたPCR産物10μlを、アドバンス社製の電気泳動装置Mupidを使用して、1.5%アガロースゲルにて電気泳動させた。その結果、ゲル上に、目的産物のバンドと、副産物のバンドが生じた。
次に、UV装置上で目的産物のサイズ(およそ260bp)を確認しながら、カッターを用いて、サンプル毎に、ゲルにおける目的産物のバンド部分を切り出した。さらに、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、切り出したゲルから目的産物を抽出精製し、得られた目的産物を30μlの滅菌水に懸濁した。
そして、試験1と同様に、この目的産物の懸濁液に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合し、94℃で5分間加温して、DNAチップに滴下した。次いで、このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流し、標識検出装置により、ITS領域プローブ(配列番号5)における蛍光強度を測定して、S/N比値を算出した。そして、試験1の分離抽出精製前のITS領域プローブ(配列番号5)におけるS/N比値と、試験2の分離抽出精製後のITS領域プローブ(配列番号5)におけるS/N比値とを比較した。この分離抽出のイメージ画と、分離抽出精製前後のITS領域プローブにおけるS/N比値の変化を図4に示す。
同図に示すように、分離抽出精製前のITS領域プローブにおけるS/N比値には、副産物の影響が有ったと推測され、サンプル1のS/N比値は1.95、サンプル2のS/N比値は0.05であり、いずれも陰性を示していた。
一方、これらのサンプルのゲルから、目的産物のバンド部分を切り出して測定した分離抽出精製後のITS領域プローブにおけるS/N比値には、副産物の影響が無いと考えられ、サンプル1のS/N比値は4.1、サンプル2のS/N比値は0.8であった。
すなわち、PCR産物から副産物を除去し、目的産物のみを用いてDNAチップによるハイブリダイゼーションを行うと、S/N比値が上昇することがわかる。
したがって、この結果から、PCR産物に目的産物以外の副産物が含まれることにより、目的産物とプローブとのハイブリダイゼーションが阻害される可能性があることが明らかとなった。
(試験3)
次に、試験2に示したような分離抽出精製を行うと、目的産物のDNA量にロスが生じるため、通常はS/N比値が下がることを確認するための試験を行った。この試験では、サンプルとして、試験1で使用したホットスタート仕様のDNA合成酵素によるサンプル1,2と同じものをそれぞれ使用した。
すなわち、サンプル1,2によりそれぞれ得られたPCR産物10μlを、アドバンス社製の電気泳動装置Mupidを使用して、1.5%アガロースゲルにて電気泳動させた。その結果、ゲル上に、目的産物のバンドが生じたが、副産物のバンドは生じなかった。
次に、UV装置上で目的産物のサイズ(およそ260bp)を確認しながら、カッターを用いて、サンプル毎に、ゲルにおける目的産物のバンド部分を切り出した。さらに、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、切り出したゲルから目的産物を抽出精製し、得られた目的産物を30μlの滅菌水に懸濁した。
そして、試験1と同様に、この目的産物の懸濁液に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合し、94℃で5分間加温して、DNAチップに滴下した。次いで、このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流し、標識検出装置により、ITS領域プローブ(配列番号5)における蛍光強度を測定して、S/N比値を算出した。そして、試験1の分離抽出精製前のITS領域プローブ(配列番号5)におけるS/N比値と、試験3の分離抽出精製後のITS領域プローブ(配列番号5)におけるS/N比値とを比較した。この分離抽出のイメージ画と、分離抽出精製前後のITS領域プローブにおけるS/N比値の変化を図5に示す。
同図に示すように、分離抽出精製前のITS領域プローブにおけるS/N比値には、副産物の影響が無く、サンプル1のS/N比値は52.0、サンプル2のS/N比値は51.1であり、いずれも陽性を示していた。
一方、これらのサンプルのゲルから、目的産物のバンド部分を切り出して測定した分離抽出精製後のITS領域プローブにおけるS/N比値にも、副産物の影響が無く、サンプル1のS/N比値は12.4、サンプル2のS/N比値は4.6であった。
すなわち、PCR産物に副産物が含まれない場合に、目的産物を分離抽出精製してDNAチップによるハイブリダイゼーションを行うと、S/N比値が大きく低減することがわかる。これは、分離抽出精製によって、目的産物のDNA量にロスが生じるためであると考えられる。
したがって、この結果から、試験2に示したような分離抽出精製を行うと、通常はS/N比値が下がるにも拘わらず、副産物を除去することで、S/N比値が上昇したことがわかる。
よって、試験1−3の結果を考慮すると、核酸増幅工程において副産物の発生を抑制すれば、生物検出工程において副産物によるハイブリダイゼーション阻害効果を抑制でき、偽陰性反応の発生を抑制できると考えられる。
(試験4)
次に、ユーロチウム ヘルバリオラム(Eurotium herbariorum)と、ユーロチウム ルブラム(Eurotium rubrum)以外のカビに対しても、ホットスタート仕様のDNA合成酵素が誤判定の抑制に有効であることを確認するための試験を行った。
検出対象の生物としては、アスペルギルス ペニシリオイデス(Aspergillus penicillioides,JCM22971)、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus,JCM10253)、アスペルギルス バージカラー(Aspergillus versicolor,JCM12756)、スタキボトリス チャタラム(Stachybotrys chartarum,NBRC5369)を使用した。菌株番号がJCMからはじまるものは、独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(Japan Collection of Microorganisms)から分譲された菌株であり、NBRCからはじまるものは、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NITE Biological Resource Center)から分譲された菌株である。
試験4では、PCR法により、各カビのゲノムDNAにおけるITS領域とβ−チューブリン遺伝子を標的領域として、これらの標的領域をそれぞれ含む核酸断片を同時に増幅した。これらの標的領域の両方の増幅産物にもとづいて、DNAチップにより共に陽性反応が得られた場合にのみ検出対象の生物が存在すると判定することで、偽陽性反応による誤判定を抑制することが可能となっている。
このとき、ITS領域増幅用プライマーセットとして、図1に示す配列番号1の塩基配列からなるフォワードプライマー(Fプライマー)及び配列番号2の塩基配列からなるリバースプライマー(Rプライマー)を用いた。また、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとして、同図に示す配列番号3の塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号4の塩基配列からなるリバースプライマーを用いた。なお、いずれもオペロンテクノロジー株式会社により合成したものを使用した。
また、PCR用反応液として、Ampdirect(R)(株式会社島津製作所製)を使用し、次の組成のサンプルを20μlずつ作成した。
このとき、核酸合成酵素としてスタンダード仕様のDNA合成酵素(NovaTaq DNA polymerase)を用いたサンプルと、核酸合成酵素としてホットスタート仕様のDNA合成酵素(NovaTaq HotStart DNA polymerase)を用いたサンプルを、カビ毎にそれぞれ1個ずつ作成した。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(2.5μM)(配列番号1) 1.0μl
6.ITS1-Rv primer(2.5μM)(配列番号2) 1.0μl
7.BtF primer(10μM)(配列番号3) 1.0μl
8.BtR primer(10μM)(配列番号4) 1.0μl
9.Template DNA 1.0μl
10.NovaTaq HotStart DNA polymerase 又は NovaTaq DNA polymerase 0.2μl
11.水(全体が20.0μlになるまで加水)
上記各PCR用反応液を使用して核酸増幅装置(TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(R) Gradient タカラバイオ株式会社製)により、次の条件でDNAの増幅を行った。
(a)95℃ 10分
(b)95℃ 30秒
(c)56℃ 30秒
(d)72℃ 60秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 10分
DNAチップには、ジーンシリコン(R)(東洋鋼鈑株式会社製)を用い、図6に示される、以下のプローブを固定化したものを使用した。以下において、(ITS)はITS領域から選択されたプローブを示し、(β)はβチューブリン遺伝子から選択されたプローブを示している。これらはいずれも各カビのゲノムDNAにおけるそれぞれの標的領域から選択されたものであり、各標的領域を含む核酸断片の増幅産物とハイブリダイズするものである。
・アスペルギルス ペニシリオイデス用 配列番号7(ITS),配列番号8(β)
・アスペルギルス フミガタス用 配列番号9(ITS),配列番号10(β)
・アスペルギルス バージカラー用 配列番号11(ITS),配列番号12(β)
・スタキボトリス チャタラム用 配列番号13(ITS),配列番号14(β)
次に、サンプル毎に、PCR産物に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合して、94℃で5分間加温し、上記DNAチップに滴下した。
このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流した。
次いで、DNAチップを標識検出装置(GenePix4100A Molecular Devices社製)にかけて、各プローブにおける蛍光強度を測定し、S/N比値を算出した。そして、ITS領域から選択されたプローブとβチューブリン遺伝子から選択されたプローブの両方のS/N比値が3以上を示した場合に陽性と判定した。その結果を図7に示す。
同図に示すように、アスペルギルス ペニシリオイデス(Aspergillus penicillioides)では、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号7)におけるS/N比値は6.2、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号8)におけるS/N比値は39.0であり、陽性反応を示した。ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合は、ITS領域プローブ(配列番号7)におけるS/N比値は38.4、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号8)におけるS/N比値は29.5であり、同様に陽性反応を示したが、ITS領域プローブにおけるS/N比値が大きく上昇している。このことから、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることにより、偽陰性反応の発生する可能性を、低減できることがわかる。
また、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)では、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号9)におけるS/N比値は17.4、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号10)におけるS/N比値は39.1であり、陽性反応を示した。ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合は、ITS領域プローブ(配列番号9)におけるS/N比値は67.1、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号10)におけるS/N比値は51.6であり、同様に陽性反応を示したが、ITS領域プローブにおけるS/N比値が大きく上昇している。このことから、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることにより、偽陰性反応の発生する可能性を、低減できることがわかる。
また、アスペルギルス バージカラー(Aspergillus versicolor)では、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号11)におけるS/N比値は0.05、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号12)におけるS/N比値は68.3となっており、ITS領域プローブにおけるS/N比値が3未満であるため、全体として陰性反応を示している。一方、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合は、ITS領域プローブ(配列番号11)におけるS/N比値は56.0、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号12)におけるS/N比値は61.3であり、陽性反応を示している。このように、本ケースでは、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合には陰性と誤判定されたが、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることにより、このような偽陰性反応にもとづく誤判定を抑制できていることがわかる。
さらに、スタキボトリス チャタラム(Stachybotrys chartarum)では、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合、ITS領域プローブ(配列番号13)におけるS/N比値は0.13、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号14)におけるS/N比値は50.5となっており、ITS領域プローブにおけるS/N比値が3未満であるため、全体として陰性反応を示している。一方、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いた場合は、ITS領域プローブ(配列番号13)におけるS/N比値は26.0、βチューブリン遺伝子プローブ(配列番号14)におけるS/N比値は40.4であり、陽性反応を示している。このように、本ケースでは、スタンダード仕様のDNA合成酵素を用いた場合には陰性と誤判定されたが、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることにより、このような偽陰性反応にもとづく誤判定を抑制できていることがわかる。
以上の通り、本実施形態のDNAチップを用いた生物の検出方法、及び誤判定抑制方法によれば、生物検出工程における偽陰性反応の発生を抑制することができ、誤判定を抑制することが可能になっている。
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記試験のPCR用反応液における各種成分については、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を除き適宜変更することができる。また、上記のようなDNAチップを用いて蛍光検出を行うのではなく、電流検出方式など他の検出方式のDNAチップにより、プローブにハイブリダイズした増幅産物を検出することなども可能である。
本発明は、環境検査、食品検査、疫学的環境検査、臨床試験、家畜衛生等において、環境中の微生物などの存否を確認する検査を行う場合に、好適に利用することが可能である。

Claims (5)

  1. 検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させ、増幅産物の有無をハイブリダイゼーションによって確認する、DNAチップを用いた生物の検出方法であって、
    前記核酸断片の増幅にホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いることを特徴とするDNAチップを用いた生物の検出方法。
  2. 検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させて目的産物を取得する核酸増幅工程と、前記目的産物の一部と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、前記目的産物と前記プローブとをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした前記目的産物を検出することにより前記検出対象の生物の存否を判定する生物検出工程とを有し、
    前記核酸増幅工程において、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて前記核酸断片を増幅させ、前記目的産物以外の増幅産物である副産物の発生を抑制することにより、前記生物検出工程において、前記副産物による前記目的産物と前記プローブとのハイブリダイゼーション阻害効果を抑制し、偽陰性反応の発生を抑制することを特徴とする請求項1記載のDNAチップを用いた生物の検出方法。
  3. 前記核酸断片を増幅させるときに、二組以上のプライマーセットを使用して、二組以上の核酸断片を同時に増幅させるマルチプレックスPCRを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のDNAチップを用いた生物の検出方法。
  4. 前記生物が、カビ、酵母、又はバクテリアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のDNAチップを用いた生物の検出方法。
  5. 検出対象の生物のゲノムDNAにおける標的領域を含む核酸断片を増幅させて目的産物を取得する核酸増幅工程と、前記目的産物の一部と相補的に結合するプローブが固定化されたDNAチップを用いて、前記目的産物と前記プローブとをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした前記目的産物を検出することにより前記検出対象の生物の存否を判定する生物検出工程とを有する、DNAチップを用いた生物の検出における誤判定抑制方法であって、
    前記核酸増幅工程において、ホットスタート仕様のDNA合成酵素を用いて前記核酸断片を増幅させ、前記目的産物以外の増幅産物である副産物の発生を抑制することにより、前記生物検出工程において、前記副産物による前記目的産物と前記プローブとのハイブリダイゼーション阻害効果を抑制し、偽陰性反応の発生を抑制することを特徴とするDNAチップを用いた生物の検出における誤判定抑制方法。
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