JP2014225567A - Cigs系化合物太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明導電層やその下地となるバッファ層や光吸収層をスパッタダメージから保護し、高変換効率を有するCIGS系化合物太陽電池と、その製法を提供する。
【解決手段】基板1上に、CIGS光吸収層3と、バッファ層4と、透明導電層5とをこの順で備え、上記透明導電層5が、バッファ層4側に配置される第1の透明導電層5aと、その上に積層される第2の透明導電層5bとからなり、上記第1の透明導電層5aにおける平均グレインサイズが100nm以下に設定され、上記第2の透明導電層5bにおける平均グレインサイズが、上記第1の透明導電層5aにおける平均グレインサイズよりも大きく設定されるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、高い光変換効率(以下「変換効率」とする)を有し、Ib族、IIIb族およびVIb 族の元素からなるCuInSe2 (CIS)あるいはこれにGaを固溶させたCu(In,Ga)Se2 (CIGS)化合物半導体(I-III-VI族化合物半導体)を光吸収層に用いた化合物太陽電池およびこれを、効率よく製造する方法に関するものである。
太陽電池の中でも、CISまたはCIGS(以下「CIGS系」と総称する)化合物半導体を光吸収層に用いた化合物太陽電池は、高い変換効率を有し薄膜に形成できるとともに、光照射等による変換効率の劣化が少ないという利点を有していることが知られている。
このようなCIGS系化合物太陽電池の表面電極層として用いられる透明導電層としては、一般に、スパッタリング法(「スパッタ法」ともいう)により形成されたアルミニウム(Al)添加ZnO(AZO)やガリウム(Ga)添加ZnO(GZO)、有機金属気相成長法(MOCVD法)によって形成されたホウ素(B)添加ZnOが用いられている(例えば、非特許文献1の第16頁〜第17頁を参照)。
中田時夫著「CIGS太陽電池の基礎技術」 日刊工業新聞社 2010年9月30日初版1刷発行
このような透明導電層は、抵抗値が低いものが求められる。抵抗値を下げるためには、透明導電層の厚みを増加させればよいが、厚みを単純に増加させると、光透過率の悪化や、クラックが生じやすくなるという別の問題が発生する。
また、スパッタリング装置として汎用されているマグネトロンスパッタ装置を用いて真空下で透明導電層を形成すると、高速で均一な膜厚のものを形成できるものの、スパッタリングで発生するプラズマ中の負イオンや高エネルギー電子が、透明導電層やその下地層であるバッファ層、光吸収層等にダメージを与えるようになるため、太陽電池の特性が低下することが判明し、問題となっている。そして、このようなスパッタリングによるダメージを受けることが、上記透明導電層の抵抗率上昇の一因であると考えられており、その改善が強く望まれている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、低抵抗の透明導電層を有し、透明導電層の層内やその下地となるバッファ層や光吸収層がプラズマによるダメージを受けていない、高変換効率を有する化合物太陽電池と、その製法の提供を目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、基板上に、CIGS系化合物半導体からなる光吸収層と、バッファ層と、透明導電層とをこの順で備え、上記透明導電層が、バッファ層側に配置される第1の透明導電層と、その上に積層される第2の透明導電層とからなり、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズが100nm以下に設定され、上記第2の透明導電層における平均グレインサイズが、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズよりも大きく設定されているCIGS系化合物太陽電池を第1の要旨とする。
そして、本発明は、基板上に、CIGS系化合物半導体からなる光吸収層と、バッファ層と、第1の透明導電層と第2の透明電極層とからなる透明電極層とをこの順で形成することにより、第1の要旨に記載のCIGS系化合物太陽電池を製造する方法であって、上記透明電極層を形成する際、まず、マグネトロンスパッタでRF電源を用いて10〜50nm/分の成膜速度で第1の透明導電層を形成し、つぎに、マグネトロンスパッタでRF電源、DC電源、RF重畳DC電源のいずれかを用いて上記第1の透明導電層形成時の成膜速度より速い速度で第2の透明導電層を形成するようにしたCIGS系化合物太陽電池の製造方法を第2の要旨とする。
なお、第1の透明導電層および第2の透明導電層の平均グレインサイズは、以下のようにして求めた。すなわち、まず、対象とする表面を、透過型電子顕微鏡(Hitachi社製、H−7650)を用いて観察した。そして、観察した像に対して、パソコンソフト(イメージJ)を用い、各グレインの最大径をグレインサイズとして計測した。その後、一定範囲内に観察されるグレイン(250〜350個)のグレインサイズの平均を算出して平均グレインサイズとした。
本発明のCIGS系化合物太陽電池は、透明導電層が、バッファ層側に配置される第1の透明導電層と、その上に積層される第2の透明導電層とからなっており、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズが100nm以下に設定され、上記第2の透明導電層における平均グレインサイズが、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズよりも大きく設定されている。このため、透明導電層が単層で形成されるのと比べ、クラックの発生を抑制できるとともに、透明導電層全体の厚みを充分に厚くすることができるため、低抵抗化を実現できる。
そして、上記第1の透明導電層が、膜厚100nm以下であり、上記第2の透明導電層が、膜厚100nm以上、平均グレインサイズが100〜400nmであると、第1の透明導電層の形成にかかる時間が少なくて済み、経済的に優れるようになるとともに、平均グレインサイズの大きな第2の透明導電層の透明導電層全体に占める割合が高くなるため、電子移動速度を高めることができ、より透明導電層全体の低抵抗化を実現できる。
また、本発明のCIGS系化合物太陽電池の製造方法によれば、透明導電層を形成する際、まず、マグネトロンスパッタでRF電源を用いて10〜50nm/分の成膜速度で第1の透明導電層を形成しているため、バッファ層およびその下地層(光吸収層等)に対し、スパッタリングで発生するプラズマ中の負イオンや高エネルギー電子によるダメージを極力少なくすることができる。そして、第1の透明導電層の上に形成する第2の透明導電層の形成を、マグネトロンスパッタでRF電源、DC電源、RF重畳DC電源のいずれかを用いて上記第1の透明導電層形成時の成膜速度より速い速度で行うようにしているため、先に形成した第1の透明導電層が保護層となり、スパッタリングで発生する大量のプラズマ中の負イオンや高エネルギー電子から、バッファ層およびその下地層(光吸収層等)を保護した状態で第2の透明導電層を素早く形成することができる。すなわち、本発明のCIGS系化合物太陽電池の製造方法は、充分な膜厚の透明導電層を、短時間で、しかもバッファ層およびその下地層(光吸収層等)に極力ダメージを与えずに形成することができる。
本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池の断面を模式的に示した説明図である。 上記CIGS太陽電池のバッファ層の形成に用いられる対向ターゲットスパッタリング装置における陰極ターゲットと基板との位置関係の説明図である。 上記対向ターゲットスパッタリング装置における陰極ターゲットと基板との位置関係の他の例を示す説明図である。 上記対向ターゲットスパッタリング装置における陰極ターゲットと基板との位置関係のさらに他の例を示す説明図である。
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池の断面図である。このCIGS太陽電池は、基板1と、裏面電極層2と、CIGS光吸収層(化合物半導体層)3と、バッファ層4と、透明導電層5とをこの順で備えており、上記透明導電層5が、後述するように、平均グレインサイズが100nm以下に設定された第1の透明導電層5aと、この第1の透明導電層5aより平均グレインサイズが大きく設定された第2の透明導電層5bとからなっている。以下、各層を詳細に説明する。
上記基板1は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等のなかから、目的や設計上の必要に応じて適宜のものが選択して用いられる。上記ガラス基板としては、アルカリ金属元素の含有量が極めて低い低アルカリガラス(高杢点ガラス)、アルカリ金属元素を含まない無アルカリガラス、青板ガラス等があげられる。なかでも、アルカリ金属元素の添加量を正確に制御することができガラス基板から光吸収層にアルカリ金属元素が拡散しないよう制御することができる低アルカリガラスまたは無アルカリガラスを用いることが好ましい。
また、このCIGS太陽電池を、ロールトゥロール方式またはステッピングロール方式で製造する場合、上記基板1は、長尺状で可撓性を有することが好適である。なお、上記「長尺状」とは長さ方向の長さが幅方向の長さの10倍以上あるものをいい、30倍以上あるものがより好ましく用いられる。
そして、上記基板1の厚みは、5〜200μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜100μmの範囲である。すなわち、厚みが厚すぎると、CIGS太陽電池の屈曲性が失われ、CIGS太陽電池を曲げた際にかかる応力が大きくなってCIGS光吸収層3等の積層構造にダメージを与えるおそれがあり、逆に薄すぎると、CIGS太陽電池を製造する際に、基板1が座屈して、CIGS太陽電池の製品不良率が上昇する傾向がみられるためである。
上記基板1の上に形成される裏面電極層2の形成材料としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等があげられる。そして、これらの形成材料を用い、例えばスパッタ法、蒸着法、インクジェット法等の方法により、単層もしくは複層に形成されている。
上記裏面電極層2の厚み(複層の場合は、各層の厚みの合計)は、10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。ただし、前記基板1が導電性を有し、裏面電極層2の機能を有する場合には、この裏面電極層2を設けなくてもよい。
また、基板1由来の不純物が熱拡散するとCIGS化合物太陽電池の性能が悪影響を受けるため、これを防止することを目的として、基板1または裏面電極層2の上にバリア層(図示せず)を設けてもよい。このようなバリア層の形成材料としては、例えばCr、ニッケル(Ni)、NiCr、コバルト(Co)等があげられる。
上記裏面電極層2の上に形成されるCIGS光吸収層3は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4元素からなるカルコパイライト型結晶構造の化合物半導体で形成されている。そして、その厚みは、1.0〜3.0μmの範囲にあることが好ましく、1.5〜2.5μmの範囲にあることがより好ましい。厚みが薄すぎると、光吸収層として用いた際の光吸収量が少なくなり、太陽電池の性能が低下する傾向がみられ、逆に、厚すぎると、CIGS光吸収層3の形成にかかる時間が増加し、生産性に劣る傾向がみられるためである。
また、上記CIGS光吸収層3におけるCu、In、Gaの組成比は、0.7<Cu/(Ga+In)<0.95(モル比)の式を満たすことが好ましい。この式を満たすようになっていると、上記CIGS光吸収層3内にCu(2-x) Seが過剰に取り込まれることをより阻止でき、しかも層全体としてわずかにCuが不足した状態にできるためである。また、同属元素であるGaとInとの比は、0.10<Ga/(Ga+In)<0.40(モル比)の範囲にあることが好ましい。
上記CIGS光吸収層3の上に形成されるバッファ層4は、IIa族金属およびZn酸化物の混晶で形成されている。そして、上記CIGS光吸収層3とpn接合できるよう、高抵抗のn型半導体であることが好ましく、単層だけでなく、複数の層を積層したものであってもよい。バッファ層4として、複数の層が積層したものを用いると、上記CIGS光吸収層3とのpn接合をより良好にできる。このようなバッファ層4の形成材料としては、MgおよびZnOの混晶の他、CdS、ZnMgO、ZnCaO、ZnMgCaO、ZnMgSrO、ZnSrO、ZnO、ZnS、Zn(OH)2 、In2 3 、In2 3 およびこれらの混晶であるZn(O,S,OH)、Zn(O,S)等があげられる。また、その厚みは、50〜200nmの範囲にあることが好ましい。
つぎに、上記バッファ層4の上に形成される透明導電層5は、表面抵抗率が10Ω/□以下であることが好ましく、バッファ層側に配置される第1の透明導電層5aと、その上に配置される第2の透明導電層5bとからなっている。そして、第1の透明導電層5aおよび第2の透明導電層5bは、高透過率で低抵抗な薄膜となる材料から形成されることが好ましく、このような材料としては、ITOの他、IZO、GZO、酸化亜鉛アルミニウム(AlZnO)等があげられる。なお、第1の透明導電層5aおよび第2の透明導電層5bは、同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。
そして、第1の透明導電層5aおよび第2の透明導電層5bからなる透明導電層5の厚みは、170〜350nmの範囲にあることが好ましい。また、この透明導電層5の光透過率は、80%を超えるものであることが好ましい。
上記第1の透明導電層5aは、アモルファス構造を有するような非結晶質のものが好ましく、その平均グレインサイズは、クラック発生の防止の点から、100nm以下に設定されている。また、その膜厚は、生産性の点から100nm以下であることが好ましく、20〜50nmの範囲にあることがより好ましい。
また、上記第2の透明導電層5bは、第1の透明導電層5aより平均グレインサイズが大きく設定されており、とりわけ、平均グレインサイズ100〜400nmの範囲に設定されることが好ましく、250〜400nmの範囲に設定されることがより好ましい。すなわち、平均グレインサイズが大きすぎると、第2の透明導電層5bの結晶化度が高くなりすぎ、クラックが発生しやすくなる傾向がみられ、逆に、小さすぎると、電子移動速度を高めることができず、透明導電層全体の低抵抗化を実現できなくなるおそれがあるためである。
そして、上記第2の透明導電層5bの厚みは、第1の透明導電層5aより厚い方が好ましく、150〜300nmの範囲にあることがより好ましい。厚みが厚すぎると、光透過率の低下を招き、太陽電池の変換効率が低下するおそれがあり、逆に、薄すぎると、低抵抗を実現することが困難になるおそれがあるためである。
上記構成のCIGS太陽電池によれば、透明導電層5が、バッファ層4側に配置される第1の透明導電層5aと、第1の透明導電層5aの上に配置される第2の透明導電層5bの2層からなるとともに、上記第1の透明導電層5aの平均グレインサイズが100nm以下に設定され、かつ、上記第2の透明導電層5bの平均グレインサイズが第1の透明導電層5aの平均グレインサイズより大きくなるよう設定されているため、低抵抗とクラック発生の防止とを両立することができる。したがって、変換効率に優れ、長期にわたって良好な変換効率を維持することができる。
上記CIGS太陽電池は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、長尺状の基板1を準備し、その表面に、ロールトゥロール方式で裏面電極層2を形成し、同じくロールトゥロール方式で、その上にCIGS光吸収層3を形成し、これを所定のサイズとなるよう切断した後、上記CIGS光吸収層3の上に、バッファ層4、透明導電層5をこの順で積層することによって得ることができる。以下、この製法を、各層の形成工程ごとに詳細に説明する。
〔裏面電極層2の形成工程〕
ロールトゥロール方式により、長尺状の基板1を走行させながら、その表面に、Mo等の形成材料を用いて、スパッタリング法、蒸着法、インクジェット法等により、裏面電極層2を形成する。
〔CIGS光吸収層3の形成工程〕
つぎに、上記裏面電極層2が形成された基板1を、同じくロールトゥロール方式で走行させながら、その裏面電極層2の上に、CIGS光吸収層3を形成する。CIGS光吸収層3の形成方法としては、真空蒸着法、セレン化/硫化法、スパッタ法等があげられる。なお、アルカリ金属元素を含有しない基板1を用いる場合には、このCIGS光吸収層3の成膜前か成膜中にアルカリ金属元素を、蒸着により供給することができる。
〔バッファ層4の形成工程〕
つぎに、上記ロールトゥロール方式によって裏面電極層2とCIGS光吸収層3とが形成され、ロール状に巻き取られた基板1を、再度巻き出しながら、所定の切断装置を用いて、これを所定の長さごとに切断して、所定サイズの積層体(基板1+裏面電極層2+CIGS光吸収層3の積層体)を得る。そして、切断された積層体のCIGS光吸収層3の上に、MgおよびZnOの混晶等の形成材料を用い、溶液成長法、真空蒸着法、スパッタリング法等により、バッファ層4を形成する。
上記バッファ層4の形成には、特に、スパッタリング法が好適である。なかでも、一般的なマグネトロンスパッタ法とは異なり、2枚の陰極ターゲットを対向して配置し、ターゲット表面に垂直に配置された片方のターゲットからもう一方のターゲットに向かって磁界を印加する対向ターゲットスパッタ法を用いることが好適である。すなわち、対向ターゲットスパッタ法によれば、対向するターゲット間にプラズマを閉じ込めることができ、基板1にプラズマが晒されないことから、荷電粒子(電子、イオン)や反跳アルゴンによるダメージが小さく、成膜面やその下地となる面に欠陥やボイドが生じにくいからである。そして、上記一対のターゲットに対する印加は、高周波(RF)電源によるか、高周波(RF)電源に直流(DC)電源を重畳することによることが好適である。
そして、上記対向ターゲットスパッタ法において、図2に示すように、基板1の層形成面から垂直状に延びる仮想中心軸Xを想定し、この仮想中心軸Xを挟んだ両側にこれら2枚のターゲット6,6’を対向させ、その両者6,6’が基板1の層形成面側(以下「基板1側」という)に向かって広がる略V字状となるよう配置したものを用いると、より少ない電力で成膜することができるため、成膜面やその下時となる面が、さらにダメージを受けにくくなり、好適である。なかでも、上記ターゲット6,6’のうち、少なくとも一方、例えば、ターゲット6の表面7と、仮想中心軸Xとで形成される角度θが5〜15°の範囲に設定されていることが、特に好適である。なお、図2においては、基板1に形成された裏面電極層2およびCIGS光吸収層3の図示を省略している。
〔透明導電層5の形成工程〕
つぎに、ITO等の形成材料を用いて、スパッタリング法(DC、RF、RF重畳)、蒸着法、有機金属気相成長法(MOCVD法)等により、上記バッファ層4の上に、まず、第1の透明導電層5aを形成し、その上に第2の透明導電層5bを形成することにより、透明導電層5を形成する。
(第1の透明導電層5aの形成)
第1の透明導電層5aは、例えば、マグネトロンスパッタでRF電源を用い、成膜速度を低くすることにより形成することができる。とりわけ、マグネトロンスパッタでRF電源を用い、その成膜速度を10〜50nm/分に設定すると、所望の平均グレインサイズのものを容易に形成することができるため好ましい。
すなわち、すでに述べたように、マグネトロンスパッタでRF電源を用い、成膜速度を低くして形成すると、バッファ層4およびその下地層(光吸収層3等)に対し、スパッタリングで発生するプラズマ中の負イオンや高エネルギー電子によるダメージを極力少なくすることができるためである。
(第2の透明導電層5bの形成)
第2の透明導電層5bは、例えば、マグネトロンスパッタでDC電源、RF電源またはRF重畳DC電源を用いることによって形成することができる。また、蒸着法、有機金属気相成長法(MOCVD法)等によっても形成することができる。とりわけ、生産性向上の点から、マグネトロンスパッタでRF重畳DC電源を用い、第1の透明導電層5aより高い成膜速度で形成することが好ましい。
すなわち、第2の透明導電層5bを、マグネトロンスパッタでRF重畳DC電源を用い、第1の透明導電層5aより高い成膜速度で形成すると、すでに述べたように、先に形成した第1の透明導電層が保護層となり、高速スパッタリングで発生する大量のプラズマ中の負イオンや高エネルギー電子から、バッファ層4およびその下地層(光吸収層3等)を保護した状態で第2の透明導電層5bを形成することができる。このため、平均グレインサイズが大きく、しかも、充分な膜厚を有する透明導電層5bを、短時間で、バッファ層4およびその下地層(光吸収層3等)にダメージを与えずに形成することができる。
このようにして、本発明のCIGS太陽電池を得ることができる。
なお、上記の製法において、基板1が裏面電極層2の機能を有する場合(導電性を有する場合等)には、上記〔裏面電極層2の形成工程〕は不要であり、上記基板1をそのまま裏面電極層2として利用することができる。
また、前述のように、基板1とCIGS光吸収層3との間(基板1の上または裏面電極層2の上)に、金属拡散防止層を形成する場合は、上記の製法において、基板1の形成後、もしくはCIGS光吸収層3の形成後に、Cr等の金属拡散防止層形成材料を用いて、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法、液相析出法等によって、金属拡散防止層を形成する。
また、上記の製法では、バッファ層4の形成工程において、対向ターゲットスパッタ法を用いることが好適である、としているが、この対向ターゲットスパッタ法において、陰極ターゲット6,6’の組成やスパッタリングの条件によっては、上記陰極ターゲット6,6’を基板1側に向かって広がる略V字状に配置せず、図3に示すように、両陰極ターゲット6,6’を平行に配置するようにしてもよい。また、図4に示すように、一方の陰極ターゲットのみ(この例では、陰極ターゲット6)を、仮想中心軸Xに対し、角度θだけ傾けた形で配置するようにしてもよい。
さらに、上記の製法では、裏面電極層2の形成とCIGS光吸収層3の形成を、ロールトゥロール方式で行ったが、必ずしもロールトゥロール方式を採用する必要はなく、当初から基板1を枝葉タイプで準備して並べ、その上に順次、各層を形成していく方式を用いても差し支えない。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(裏面電極層の形成)
まず、脱脂したソーダライムガラス(厚み0.55mm、幅20mm×長さ20mmの平面視正方形状)からなる基板の表面に、マグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、SH−450)を用いて、放電ガスにはアルゴン(Ar)を使用し、スパッタリング圧力が1Paとなるよう直流(DC)電源を用い、成膜速度60nm/分の条件で、厚み0.8μmのMoからなる裏面電極層を形成した。
(CIGS光吸収層の形成)
つぎに、上記裏面電極層の上に、CIGS光吸収層を形成した。すなわち、真空蒸着装置のチャンバー内に、Ga,In,Cu,Seのそれぞれを蒸着源として配置し、このチャンバー内を真空度1×10-4Paとし、基板を昇温速度550℃/hにて550℃まで加熱した。このとき、上記蒸着源の温度がそれぞれGa:950℃、In:780℃、Cu:1100℃、Se:140℃、となるよう加熱し、これらの元素を同時に蒸発させることにより、上記裏面電極層の上にCIGS光吸収層を形成した。得られたCIGS光吸収層の組成(原子数%)は、Cu/III 族=0.89、Ga/III 族=0.31であり、その厚みは2.1μmであった。
(バッファ層の形成)
つぎに、図2に示す一対の陰極ターゲットが略V字状に配置された対向ターゲットスパッタ装置(仮想中心軸Xに対する角度θがそれぞれ10°)を用いて、上記CIGS光吸収層の上に、バッファ層を形成した。なお、陰極ターゲットとして、Zn0.85Mg0.15Oからなる組成のものを使用し、スパッタリングの際の放電ガスにArを用い、高周波(RF)電源により、電力密度0.7kW/cm2 、スパッタリング圧力0.3Paの条件下で、電力および形成時間を調整することにより、膜厚70nmのバッファ層を得た。
(第1の透明導電層の形成)
つぎに、上記バッファ層の上に、マグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、SH−450)を高周波(RF)電源で用い、成膜速度25nm/分の条件で、厚み25nmのITOからなる第1の透明導電層を形成した。
(第2の透明導電層の形成)
つぎに、上記第1の透明導電層の上に、マグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、SH−450)を高周波(RF)重畳直流(DC)電源で用い、成膜速度150nm/分の条件で、厚み200nmのITOからなる第2の透明導電層を形成した。
〔実施例2〜17、比較例1〜4〕
第1の透明導電層および第2の透明導電層の形成を、後記の表1に示す条件で行うように変更したほかは、実施例1と同様にして、CIGS太陽電池を得た。なお、比較例1および2は、第1の透明導電層のみ形成し、第2の透明導電層を形成していない。
このようにして得られた実施例および比較例の太陽電池をそれぞれ20個製造し、これらの変換効率を下記の手順に従って測定し、平均変換効率を算出した。また、実施例および比較例に用いた透明導電層(第1の透明導電層、第2の透明導電層)の平均グレインサイズおよび表面抵抗率を下記の手順に従って測定した。得られた結果を、後記の表1〜表4に併せて示す。
<太陽電池の変換効率>
CIGS太陽電池をそれぞれ20個準備し、これらに擬似太陽光(AM1.5)を照射し、IV計測システム(山下電装社製、YSS−150)を用いて、それぞれの変換効率を測定した。
<透明導電層における平均グレインサイズ>
第1の透明導電層および第2の透明導電層のそれぞれの表面を、透過型電子顕微鏡(Hitachi社製、H−7650)を用いて観察した。そして、観察した像に対して、パソコンソフト(イメージJ)を用い、各グレインの最大径をグレインサイズとして計測した。その後、一定範囲内に観察されるグレイン(250〜350個)のグレインサイズの平均を算出して平均グレインサイズとした。
<透明導電層の抵抗値>
実施例および比較例における透明導電層(第1の透明導電層および第2の透明導電層)の形成と同様の方法によって、透明導電層(第1の透明導電層および第2の透明導電層)を、ガラス基板(サイズ:30mm×30mm)の上に形成し、試験サンプルとした。この試験サンプルの透明導電層の表面抵抗率を、抵抗率計(三菱油化社製、ロレスタ MCP−P600)を用いて4端子4探針法により測定した。
Figure 2014225567
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上記の結果から、すべての実施例品は、変換効率が7%を上回っており、優れた変換効率を有することがわかった。また、すべての実施例品において、透明導電層の表面抵抗率が15Ω/□以下の低抵抗を示し、これらの透明導電層が優れた性能を有することがわかった。
なお、上記実施例1〜17はCIGS太陽電池であるが、同様の手順によりCIS太陽電池を製造して、上記と同様の評価を行ったところ、これらについても、上記CIGS太陽電池と同様、透明導電層の表面抵抗率を低くすることができ、高い変換効率が得られることがわかった。
本発明の化合物太陽電池は、薄膜で変換効率が高く、また透明導電層にクラックが生じにくく長寿命化が図られているため、多分野に渡って広く利用することができる。
1 基板
2 裏面電極層
3 CIGS光吸収層
4 バッファ層
5 透明導電層
5a 第1の透明導電層
5b 第2の透明導電層

Claims (3)

  1. 基板上に、CIGS系化合物半導体からなる光吸収層と、バッファ層と、透明導電層とをこの順で備え、上記透明導電層が、バッファ層側に配置される第1の透明導電層と、その上に積層される第2の透明導電層とからなり、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズが100nm以下に設定され、上記第2の透明導電層における平均グレインサイズが、上記第1の透明導電層における平均グレインサイズのよりも大きく設定されていることを特徴とするCIGS系化合物太陽電池。
  2. 上記第1の透明導電層が、膜厚100nm以下であり、上記第2の透明導電層が、膜厚100nm以上、平均グレインサイズが100〜400nmである請求項1記載のCIGS系化合物太陽電池。
  3. 基板上に、CIGS系化合物半導体からなる光吸収層と、バッファ層と、第1の透明導電層と第2の透明電極層とからなる透明電極層とをこの順で形成することにより、請求項1に記載のCIGS系化合物太陽電池を製造する方法であって、上記透明電極層を形成する際、まず、マグネトロンスパッタで高周波電源(RF電源)を用いて10〜50nm/分の成膜速度で第1の透明導電層を形成し、つぎに、マグネトロンスパッタで高周波電源(RF電源)、直流電源(DC電源)、高周波重畳直流電源(RF重畳DC電源)のいずれかを用いて上記第1の透明導電層形成時の成膜速度より速い速度で第2の透明導電層を形成するようにしたことを特徴とするCIGS系化合物太陽電池の製造方法。
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