JP2014224272A - 樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた電気電子部品封止体ならびにその製造方法 - Google Patents

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【課題】 架橋ポリエチレン被覆電線やポリプロピレンなどのオレフィンに対する良好な接着性を有し、かつPET、PBTおよびガラエポ(ガラス布基材エポキシ樹脂基板)に対しても良好な接着性を有する樹脂組成物を提供する。【解決手段】 樹脂組成物全体を100重量%としたとき、20〜70重量がプロピレン鎖を主成分とするポリマーであり、20〜70重量%がエチレン鎖を主成分とするポリマーであり、5〜40重量%が酸変性オレフィンであり、かつ結晶性共重合ポリエステルが5〜45重量%であり、前記結晶性共重合ポリエステルが、エーテル結合を有し、ガラス転移温度が0℃以下である封止体用樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は特定の樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた電気電子部品封止体およびその製造方法に関する。
ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのオレフィン樹脂は低価格で軽く、強度や耐薬品性、耐加水分解性に優れることより、自動車や家電製品をはじめさまざまな分野で幅広く用いられている。特に近年では自動車の燃費向上のために軽量化が強く求められ、金属の代替としても幅広く検討されてきている。
しかしながらPPやPEなどは極性を有さないために、これらの成形品やフィルムに対して良好な接着性を有する樹脂がなく、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂や金属などとの複合体を形成させるためには穴を開けネジでとめる必要があった。
一方、自動車や電化製品などに広汎に使用されている電気電子部品は、その使用目的を達成する為に、意図的に外部と導通させる部分を除き、外部との電気絶縁性が必須である。例えば、電線は電気絶縁性を有する塩化ビニルや架橋ポリエチレンなどの絶縁樹脂で被覆されており、電気電子基板などもエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などで封止されている。特に複雑な形状を有する回路基板等の電気電子部品を封止するときは、その電気電子部品の形状に確実に追随し未充填部が発生しない封止方法が求められる。その為には、被覆時の封止樹脂の粘度を下げる方法が一般的に有効である。
たとえば予め封止樹脂を溶剤に溶解して溶液状として電気電子部品間に含浸させかつ電気電子部品を包み込み、その後溶媒を蒸発させる方法は封止樹脂組成物の粘度を下げ充填性を向上させことができる点で有効な方法の一つであるが、溶剤の蒸発時に気泡が残存したり、溶剤として有機溶剤を使用するために作業環境中への有機溶剤の揮散に対応する生産設備を要する等、問題点が多い。
そこで、これまでは封止後の耐久性も加味して、二液硬化型エポキシ樹脂が一般的に使用されてきた。これは主剤と硬化剤を封止直前に混合して、未反応の低粘度の樹脂組成物を電気電子部品間に含浸させかつ電気電子部品を包み込み、次いで数時間から数日間加熱し続けることで硬化反応を促進させ、完全に固化させるものである。しかしこの方法においては、二液の混合比率を精密に調整する必要があるため手間とコストがかかり、混合比率のぶれによる不良発生のリスクが懸念され、さらには混合後の樹脂組成物の使用可能期間が数時間と短いので余剰分は廃棄せざるを得ない。さらに、硬化に数時間から数日間といった長い養生期間を必要とするので、生産性が低く、また養生中に異物が混入して電気回路をショートさせてしまう可能性がある。また、硬化反応に際して生じるエポキシ樹脂の硬化収縮による応力が、電気電子部品と導線を接合するハンダや金属細線などの物理的強度の弱いところに応力集中して、その部分を剥離させたり、断線させたりする場合があるという問題点もある。更には液状エポキシ樹脂の環境への悪影響も懸念される。
このような問題点を含みながら使用されてきた二液型エポキシ樹脂を代替する封止用樹脂として、ホットメルトタイプのものが提案されている。ホットメルト樹脂は加温溶融するだけで粘度が低下し電気電子部品を容易に封止できることより溶剤含有系における作業環境上の問題点が解決される。また、封止後冷却するだけで固化して封止体が形成されるので生産性も高くなる。加えて、一般に熱可塑性の樹脂を使用するので、製品としての寿命を終えた後も加熱して樹脂を溶融除去することで、部材のリサイクルが容易に可能となる。しかし、このように封止用樹脂としての高い潜在能力を有しながら、これまで二液硬化型エポキシ樹脂を充分に代替する材料となり得ていなかったのは、それに適した素材が提案されていなかったことによる。
例えば、樹脂単体で種々の素材への高い密着性を発現するポリアミドは、低い溶融粘度と高い樹脂強度により低圧射出成形用樹脂材料として優れてはいるが(例えば特許文献1参照)、基本的に吸湿性が高いために最も重要な特性である電気絶縁性を確保することが難しい場合が多い。
一方、電気絶縁性・耐水性が共に高いポリエステルはこの用途に非常に有用な材料と考えられるが、ホットメルト接着剤用として開発されたポリエステル(例えば特許文献2)は一般に溶融粘度が高く、複雑な形状の部品を封止するには数十〜数百MPaもの高圧での射出成形が必要となり、封止対象である電気電子部品を破壊してしまう虞がある。また、電気電子部品のモールディング用に開発されたポリエステル(例えば特許文献3)は溶融粘度が低く低圧成形が可能となり電気電子部品を破壊することなく封止することができるが、高温高湿下では加水分解が進行し分子量が低下することにより強度が低下してしまう、という問題点があった。また、ポリオレフィン系樹脂を被覆した電線への接着力が低いので、封止体の内外をポリオレフィン系樹脂被覆電線で接続する場合には、ポリエステル系樹脂封止剤とオレフィン系樹脂被覆電線の界面から水が浸入し本来の目的である電気絶縁性を阻害するという大きな欠点があった。
一方、ポリオレフィンを主成分とした樹脂組成物を成形材料として用いた際には、電気電子部品を搭載した基板や電線などの基材への接着強度が低くなってしまうために、粘着性付与剤等の添加が必要となる(特許文献4)が、粘着性付与剤の添加は金型からの離型性を大きく損ね、生産性を大幅に低下させてしまうきらいがある。
以上のように従来の技術では、複雑な形状を有する電気電子部品封止用樹脂として、全ての要求性能を充分満足する素材は提案されていなかった。
特開2001−24550号公報 特開昭60−18562号公報 特許第3553559号公報 特開2007−106850号公報
本発明の課題は、架橋ポリエチレン被覆電線やポリプロピレンなどのオレフィンに対する良好な接着性を有し、かつPET、PBTおよびガラエポ(ガラス布基材エポキシ樹脂基板)に対しても良好な接着性を有する樹脂組成物を提供することである。
上記目的を達成する為、本発明者等は鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。即ち本発明は、以下に示す樹脂組成物、および該樹脂組成物を用いた電気電子部品封止体ならびに電気電子部品封止体の製造方法に関する。
(1) 樹脂組成物全体を100重量%としたとき、20〜70重量%がプロピレン鎖を主成分とするポリマーであり、20〜70重量%がエチレン鎖を主成分とするポリマーであり、5〜40重量%が酸変性ポリオレフィンであり、かつ5〜45重量%が結晶性共重合ポリエステルであり、前記結晶性共重合ポリエステルが、エーテル結合を有し、ガラス転移温度が0℃以下であ封止体用樹脂組成物。
(2) 測定温度190℃、加重2160gで測定したメルトフローレイト(MFR)が40g/10分以上である(1)記載の封止体用樹脂組成物。
(3) 相分離構造を有する(1)または(2)に記載の封止体用樹脂組成物。
(4) 前記相分離構造が海島構造である(3)に記載の封止体用樹脂組成物。
(5) 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなることを特徴とする(4)に記載の封止体用樹脂組成物。
(6) 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部がエチレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなることを特徴とする(4)に記載の封止体用樹脂組成物。
(7) 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部がエチレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部の中に更に結晶性共重合ポリエステルから主としてなる相が分散状態で存在していることを特徴とする(4)に記載の封止体用樹脂組成物。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の封止体用樹脂組成物により電気電子部品の一部または全体を封止した封止体。
(9) (1)〜(7)のいずれかに記載の封止体用樹脂組成物を用い、20MPa以下の圧力で、かつ280℃以下の温度で、電気電子部品をインサート成形により封止する封止体の製造方法。
本発明の樹脂組成物は、架橋ポリエチレン被覆電線やポリプロピレン成形体など従来のポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂では良好な接着強度が確保できなかったポリオレフィン系樹脂への良好な接着強度を有する樹脂組成物を提供する。
更には電気電子部品などを低圧インサート成形する際に、電気電子部品にダメージを与えることがない程度の低温低圧で溶融成形することが可能であり、しかも良好な電気絶縁性を発現することができることにより、電気電子部品封止体に高度の防水性を付与することができる。このため、本発明の樹脂組成物を用いることにより、高度な防水性を有する電気電子部品封止体等を製造することができる。
成形性評価用封止体サンプルの外観および断面構造を示す模式図である。 剪断接着強度測定用サンプルの模式図である。 実施例の樹脂組成物の相分離状態を示す透過型電子顕微鏡写真の一例である。
11:導電線
12:架橋ポリエチレン被覆部
13:封止樹脂組成物
21:ガラスエポキシ樹脂板
22:銅箔
23:封止樹脂組成物
31:プロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなる海部
32:エチレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなる島部
33:結晶性共重合ポリエステルから主としてなる島部の中の分散相
本発明の樹脂組成物は、さまざまな用途に用いることができるが、特に電気電子部品の低圧インサート成形用に用いることができる。一般に電気電子部品の低圧インサート成形は、金型内に電気電子部品を搭載した基板を配置し、加熱溶融して流動性を与えた封止用樹脂組成物を0.1〜10MPaの低圧で金型内に押し出すことにより行われ、電気電子部品封止体の製造に用いられる成形方法である。すなわち、従来一般的にプラスチックの成形に用いられている40MPa以上の高圧での射出成形に比べて非常に低圧で行われるため、耐熱性及び耐圧性に制限のある電気電子部品を破壊することなく封止することができるものである。封止樹脂組成物として本発明の樹脂組成物を選択することにより、ポリオレフィン被覆電線をはじめ、PETやPBTなどのポリエステル基材、ガラエポ基板、ポリプロピレン樹脂、金属等の電気電子部品を構成する様々な材質に対して良好な接着性を与えることにより高度な防水性を発現させ、かつ環境負荷に耐える密着耐久性を有する封止体を得ることができるものである。以下に、発明を実施するための形態の詳細を順次説明していく。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物全体を100重量%としたとき、20〜70重量%がプロピレン鎖を主成分とするポリマーであり、20〜70重量%がエチレン鎖を主成分とするポリマーであり、5〜40重量%が酸変性ポリオレフィンであり、かつ結晶性共重合ポリエステルが5〜45重量%であることが必須である。これらの4種類の成分を配合することにより、架橋ポリエチレンやガラエポなどへの良好な接着性を発現することができるとともに、封止体製造時の結晶化速度や封止樹脂組成物の結晶化度を調整することができることより、結晶化の際の応力集中を緩和させることができ、基材への接着強度を更に高めることができる。
本発明において、プロピレン鎖を主成分とするポリマー(ポリプロピレン系樹脂)とはプロピレン成分を50重量%以上含むものを指し、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンの共重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重合体などを単独で用いることができるし、これらをブレンドして用いることもできる。
本発明において、エチレン鎖を主成分とするポリマー(ポリエチレン系樹脂)とはエチレン成分を50重量%以上含むものを指し、ホモポリエチレン、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、グリシジルアクリレート、マレイン酸およびフマール酸などの不飽和酸および不飽和酸のアルキルエステルとエチレンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体でもよい。
なお本発明において、α−オレフィンとは具体的には、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテンなどを指し、炭素数4以上かつα位に1つのみ炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素のみを指し、エチレンおよびプロピレンは含まないものとする。
本発明に用いられる酸変性ポリオレフィンの元となる被酸変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などが挙げられるが、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体であることが耐熱性や他の樹脂との相溶性の点で望ましい。被酸変性ポリオレフィンとしては、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸などの不飽和酸および不飽和酸のアルキルエステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレンおよびα−オレフィンを共重合したものを使用することができる。
本発明に用いられる酸変性ポリオレフィンは、炭素数3〜10の不飽和カルボン酸、その酸無水物およびそのエステルからなる群より選択される少なくとも1種を、グラフト重合したものであることが好ましい。酸変性ポリオレフィン全体に対するグラフト鎖の重量は、好ましくは0.5〜10重量%である。より好ましくは、1〜6重量%である。グラフト鎖の重量分率が少なすぎるとガラエポ基材などの基板に対する密着性が低下し、多すぎると吸湿性が高くなるとの問題を生じる傾向にある。
炭素数3〜10の不飽和カルボン酸、その酸無水物およびそのエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。これらの中でもマレイン酸、イタコン酸およびこれらの酸無水物が反応性の点で好ましい。
本発明における酸変性ポリオレフィンを製造する際のグラフト重合は、公知の方法で実施することができ、特にその方法は限定されない。例えば、前記ポリオレフィンと前記不飽和カルボン酸成分との溶融混合物に、または、前記ポリオレフィンと前記不飽和カルボン酸成分をトルエンやキシレンなどの溶媒に溶解した混合物溶液に、有機過酸化物を添加して行うことができる。グラフト重合を行う際には、空気および酸素の混入を避けるのが好ましく、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。前記有機過酸化物の例としては、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、190℃で加重2160gでのMFRが40g/10分以上であることが成形性の観点から望ましい。より好ましいMFRは80g/10分以上である。MFRが40g/10分未満では電気電子部品にダメージを与えない程度の温度では溶融粘度が高くなりすぎ、良好な成形性を確保するためには成形時に温度や圧力を上げざるを得ず、電気電子部品にダメージを与えてしまう。MFRを40g/10分以上にするためには組成物として最も大きな体積を占めるプロピレン鎖を主成分とするポリマーもしくはエチレン鎖を主成分とするポリマーのMFRを高くすることが重要である。
本発明の樹脂組成物は相分離構造をとることが好ましく、海島構造または共連続構造であることが望ましい。本発明において海島構造とは、相分離構造ドメインのうちの1種が連続相を形成しており、他のドメインが非連続相を形成している相分離構造のことを指すものとする。また本発明において共連続構造とは、相分離構造ドメインのうちの2種が連続相を形成しており、他のドメインが非連続相を形成している相分離構造のことを指すものとする。相分離構造を発現させるためには各配合物の比率の調整が必要であるのはいうまでもなく、更には混練時の温度や時間、スクリュー構成、スクリュー回転速度等にも大きな影響を受けることはいうまでもない。温度や回転速度を上げすぎると分子鎖の切断や架橋反応が起こる可能性もある。
本発明の樹脂組成物の海島構造は、海部(連続相)がプロピレン鎖を主成分とするポリマーであることが望ましく、島部(分散相)がエチレン鎖を主成分とするポリマーであることが望ましい。また、エチレン鎖を主成分とする島部(分散層)の中に更に結晶性共重合ポリエステルが分散状態で存在していることが望ましい。
また本発明の樹脂組成物の共連続構造は、連続相を示す2種のドメインがプロピレン鎖を主成分とするポリマーとエチレン鎖を主成分とするポリマーであることが望ましい。また、エチレン鎖を主成分とする連続相の中に更に結晶性共重合ポリエステルが分散状態で存在していることが望ましい。
本発明の組成物は相分離構造をとること、特に海島構造または共連続構造を取ることにより各々の成分の特徴が平均化されることなく優れた特性、特に耐熱性や基材に対する接着性を発現することが可能となる。
本発明の樹脂組成物の相分離構造は、透過型電子顕微鏡を用いて観察することができる。例えば、クライオミクロトームで凍結切片を作製後、四酸化ルテニウム蒸気中で電子染色を施したものを透過型電子顕微鏡で2000倍程度に拡大して観察することができる。
本発明の樹脂組成物に用いられる結晶性共重合ポリエステルは分子内にエーテル結合を有するものが好ましく、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。エーテル結合を分子内に有することにより樹脂の溶融粘度を低下させることができるとともにガラス転移温度を下げることができる。ガラス転移温度は冷熱サイクル特性に大きく寄与するため、より好ましくは−20℃以下である。なお、本発明における結晶性共重合ポリエステルとは、セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度220℃で5分ホールドして試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで20℃/minの昇温速度で測定したときに、融点を示すものを指す。
本発明に用いられる結晶性共重合ポリエステルは、例えば、二塩基酸もしくはその無水物やアルキルエステルなどの酸成分とグリコール成分を脱水縮合もしくは脱アルコール縮合することにより得られる。
前記二塩基酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、或いはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
また、前記グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3’−ヒドロキシプロパネート、2−(n−ブチル)−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類や、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族グリコール類、或いはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系グリコール類、あるいはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち、結晶性を発現させやすいことよりエチレングリコールや1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールなどを結晶性共重合ポリエステルの全グリコール成分のうち50モル%以上用いることが好ましい。
更に本発明に用いられる結晶性共重合ポリエステルには、前記二塩基酸成分の一部を3官能以上のカルボン酸に置換し、もしくは前記グリコール成分の一部を3官能以上のポリオールに置換し、共重合することもできる。これら3官能以上の化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等の多価カルボン酸等やそれらの無水物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリンなどの多官能グリコールが挙げられる。3官能以上の化合物の共重合量は結晶性や反応性の観点から全成分中0〜5モル%が望ましい。
更に本発明に用いられる結晶性共重合ポリエステルには、グリコール酸やラクトン類、ラクチド類、(ポリ)カーボネート類の共重合や後付加、あるいは酸無水物の後付加、グリコール酸の共重合もできる。
本発明に用いられる結晶性共重合ポリエステルはエーテル結合を有する化合物を共重合することが望ましい。エーテル結合を有する化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられるが、結晶性を高める観点からポリテトラメチレングリコールが望ましい。
また、本発明の樹脂組成物には酸化防止剤を加えることが好ましい。好ましい酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を挙げることができるが、これらの1種または2種以上を併用することができる。特にヒンダードフェノール系酸化防止剤と他の酸化防止剤の併用が有効である。また、熱老化防止剤、銅害防止剤、帯電防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤を添加することが望ましい。特に燐原子を分子内に含むフェノール系酸化防止剤を用いることが効率的なラジカル捕獲ができる点で望ましい。更には、結晶核剤や難燃剤等を添加することもできる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤や安定剤としては、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリ(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−メチル−ベンゼンプロパノイック酸、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6トリイル)トリ−p−クレゾール、ジエチル[[3,5−ビス[1,1−ジメチルエチル]−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2’3−ビス[[3−[3、5−ジ−ter−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4−8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤や安定剤としては、3,9−ビス(p−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、イソデシルフェニルフォスファイト、ジフェニル2−エチルヘキシルフォスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)エステルフォスフォラス酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ペンタエリスリトールビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルフォスファイト)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイト、ビス[2,4−ビス[1,1−ジメチルエチル]−6−メチルフェニル]エチルエステル亜燐酸、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトなどが上げられる。
硫黄系酸化防止剤や安定剤としては、4,4’−チオビス[2−tert−ブチル−5−メチルフェノール]ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン]ビス[3−(テトラデシルチオ)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3−n−ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル) チオジプロピオネート、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル−3,3’ −チオジプロピオネート 、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,4−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などが挙げられる。
アミン系酸化防止剤や安定剤として4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンや2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、N,N’−ジ−2ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−ビス[3−(ドデシルチオ)プロパノイルオキシメチル]−1,3−プロパンジオールビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]などが挙げられる。
酸化防止剤の添加量は樹脂組成物全体に対して0.1重量%以上5重量%以下が好ましい。0.1重量%未満だと熱劣化防止効果に乏しくなることがある。5重量%を超えると、密着性等に悪影響を与える場合がある。
本発明の樹脂組成物には、結晶性共重合ポリエステル以外のポリエステルやエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、フェノール樹脂等の他の樹脂を配合することもでき、密着性、柔軟性、耐久性等が改良される場合がある。他の樹脂の配合量としては、樹脂組成物全体の40重量%未満が望ましい。また、イソシアネート化合物、メラミン等の硬化剤、タルクや雲母等の充填材、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、三酸化アンチモン、臭素化ポリスチレン等の難燃剤を配合しても差し支えない。
本発明の樹脂組成物にはロジンやテルペンなどのタッキファイヤーを配合することができ、密着性を向上させる場合がある。配合量としては樹脂組成物全体の40重量%未満が望ましい。
本発明の電気電子部品封止体は、電気電子部品を搭載した基板や端子と電線をカシメ等の手段により接合したもの等の電気電子部品の一部または全体を金型内に配置し、本発明の樹脂組成物の溶融体を金型内に押し出すことで製造することができる。より具体的には、たとえば、スクリュータイプのホットメルト成形加工用アプリケーターを用いた場合は、160〜280℃で樹脂組成物を加熱溶融し、樹脂組成物の溶融体をノズルを通じて金型へ押し出し注入し、その後所定の冷却時間をおいて組成物の溶融体を固化させ、ついで成形物を金型から取り外して電気電子部品封止体を得ることが出来る。
ホットメルト成形加工用アプリケーター装置としては特に限定されないが、例えばスクリュータイプとしてはNordson社製ST2や株式会社井元製作所製半自動ホットメルト一軸押出成形機 EMC−18F9等が挙げられる。また、一般的に使用されている射出成形機も使用できるが、封止される電気電子部品に損傷を与えないよう、射出圧力を低く抑えるよう注意する必要がある。
本発明の樹脂組成物を用いて電気電子部品をインサート成形する際には、樹脂組成物を加熱したスクリューを用いて280℃以下に溶融し、10MPa以下の低圧で成形することが、電子部品にダメージを与えにくい点で望ましい。
<<樹脂、樹脂組成物及び成形体の評価方法>>
<MFR(メルトフローレイト)の測定>
株式会社東洋精機製作所製のメルトインデクサーを用い、JIS K 7210に準拠し、190℃で2160g加重で樹脂組成物を押し出したときの吐出重量を測定し、10分あたりの量(単位:g/10分)に換算してあらわした。
<融点、ガラス転移温度の測定>
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度220℃で5分ホールドして試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の変曲点の温度をガラス転移温度、吸熱ピーク温度を融点とした。
<成形性評価>
住電日立ケーブル(株)製架橋ポリエチレン被覆電線「600V CV」の塩ビ製シースーを剥がし、架橋ポリエチレン被覆部(6.3mmφ)を露出させたものを50mmの長さにカットする。この電線の一方の端部の架橋PE被覆部分に、成形後の直径が10mm、電線と成形樹脂との接触長さが20mm、成形樹脂のみの長さが30mmの円筒状になるように樹脂組成物を成形し、封止体サンプルを得た。封止体サンプルの模式図を図1に示す。上記樹脂組成物の成形は、株式会社井元製作所製半自動ホットメルト一軸押出成形機 EMC−18F9を用い、240℃、成形圧力3MPa、保圧3MPa、保圧時間20秒で行った。
評価基準 ○:完全に充填され、ヒケ無し。
△:ショートショット無く充填されるが、ヒケ有り。
×:ショートショット有り。
<樹脂組成物の引っ張り強伸度評価>
株式会社井元製作所製半自動ホットメルト一軸押出成形機 EMC−18F9を用い、125mm×125mm×2mmの平板作製用金型を用い、240℃、成形圧力3MPa、保圧3MPa、保圧時間20秒で樹脂組成物の平板を成形した。得られた平板サンプルをJIS3号ダンベルに打ち抜き、23℃、60%Rhの環境下で株式会社島津製作所製引っ張り試験機 オートグラフAG−ISを用いて引っ張り速度50mm/分で引っ張り強伸度を測定した。
<接着強度評価>
(1)対架橋ポリエチレン被覆電線
上記成形性評価に用いた封止体サンプルのA部とB部(図1参照)を把持し、株式会社島津製作所製引っ張り試験機 オートグラフAG−ISを用いて上下に引っ張ることにより、架橋ポリエチレンと封止樹脂組成物間の接着強度を評価した。23℃、60%Rhの環境下で引っ張り速度50mm/分で測定した。
(2)対ガラスエポキシ樹脂銅張積層板
ニッカン工業製ガラスエポキシ樹脂銅張積層板(L−6504C1 1.6mm厚)を25mm幅にカットし、ガラスエポキシ樹脂面同士が1mmの隙間をあけて相対するように2枚のエポキシ樹脂銅張積層板を金型にセットし、この隙間に接触長さが10mmになるように樹脂組成物を押出成形し、剪断接着強度測定用サンプルを成形した。剪断接着強度測定用サンプルの模式図を図2に示した。樹脂組成物の押出成形は、株式会社井元製作所製半自動ホットメルト一軸押出成形機 EMC−18F9を用い、240℃、成形圧力3MPa、保圧3MPa、保圧時間20秒で行った。得られたサンプルを株式会社島津製作所製引っ張り試験機 オートグラフAG−ISを用いて23℃、60%Rhの環境下で引っ張り速度50mm/分で測定した。
(3)対PBT板
上記(2)のガラスエポキシ樹脂銅張積層板の代わりに、ガラス繊維を30質量%含むポリブチレンテレフタレート樹脂を厚みが2mm、幅が25mmになるように成形した成形板を用いること以外は上記(2)と同様にしてサンプルを作製し、接着強度を測定した。
(4)対PET板
上記(3)のガラス繊維を30質量%含むポリブチレンテレフタレート樹脂の代わりに、ガラス繊維を30質量%含むポリエチレンテレフタレート樹脂を用いること以外は上記(3)と同様にしてサンプルを作製し、接着強度を測定した。
(5)対PP板
上記(3)のガラス繊維を30質量%含むポリブチレンテレフタレート樹脂の代わりに、ホモポリプロピレン樹脂を用いること以外は上記(3)と同様にしてサンプルを作製し、接着強度を測定した。
<相分離状態の評価>
クライオミクロトームで凍結切片を作製後、四酸化ルテニウム蒸気中で電子染色を施したものを、日本電子製JEM2100透過電子顕微鏡を用い、加速電圧は200kV、観察倍率は2,000倍で行った。
<<実施例>>
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例、比較例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
酸変性ポリオレフィン(a)の製造例
結晶性ポリプロピレン100g、無水マレイン酸15g、ジクミルパーオキサイド2gおよびトルエン150gを、撹拌機を取り付けたオートクレーブ中に投入し、密閉後に窒素置換を5分間行った後、加熱撹拌しながら140℃で5時間反応を行った。反応終了後に、反応液を大量のメチルエチルケトンに投入し、樹脂を析出させた。析出した樹脂を取り出し、さらにメチルエチルケトンで数回洗浄した後に乾燥し、酸変性ポリオレフィン(MFR=950g/10分、酸付加量3.1重量%)を得た。
酸変性ポリオレフィン(b)、(c)の製造例
上記酸変性ポリオレフィン(a)と同様にして、被変性ポリオレフィン樹脂の種類を変えることにより、酸変性ポリオレフィン(b)、(c)を得た。各酸変性ポリオレフィンの組成および特性を表1に示す。
ポリオレフィン樹脂1:結晶性プロピレン樹脂(重量平均分子量40,000)
ポリオレフィン樹脂2:プロピレン−エチレン−ブテン(=70/10/20(モル比))共重合体(重量平均分子量50,000)
ポリオレフィン樹脂3:プロピレン−エチレン(=70/30(モル比))共重合体(重量平均分子量50,000)
結晶性共重合ポリエステル(A)の製造例
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸166重量部、1,4−ブタンジオール180重量部、テトラブチルチタネート0.25重量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール「PTMG1000」(三菱化学社製)を300重量部とヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(BASFジャパン株式会社製)を0.5重量部投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A)を得た。このポリエステル樹脂(A)の融点は160℃で、溶融粘度は250dPa・sであった。
結晶性共重合ポリエステル(B)の製造例
上記結晶性共重合ポリエステル(A)同様にして、酸成分やグリコール成分を変化させることにより、結晶性共重合ポリエステル樹脂(B)を得た。各樹脂の特性を表2に示す。
TPA:テレフタル酸
NDCA:ナフタレンジカルボン酸
BD:1,4−ブタンジオール
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)
PTMG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
電気電子部品封止用樹脂組成物の製造例1
プロピレン鎖を主成分とするポリマーとして日本ポリプロ株式会社製ポリプロピレン ノバテックBC08Fを40質量部、エチレン鎖を主成分とするポリマーとして住友化学株式会社製 アクリフト CM5021を40質量部、酸変性ポリオレフィンとして、上記酸変性ポリオレフィン(a)を10質量部、結晶性共重合ポリエステルとして上記結晶性共重合ポリエステル(A)10質量部、酸化防止剤としてBASFジャパン株式会社製IRGANOX 1010を0.1質量部、住友化学株式会社製Sumilizer GPを0.1質量部、Sumilizer GA−80を0.1質量部、Sumilizer TP−Dを0.2質量部、金属不活性化剤としてBASFジャパン株式会社製IRGANOX MD1024を0.2質量部、着色剤として大日精化工業株式会社製カーボンブラックマスターバッチ PP−RM MK1510を0.5質量部加え、2軸押出機を用いて180℃で溶融混練りすることにより、樹脂組成物1を得た。
樹脂組成物2〜11の製造例
表3の組み合わせに従い、樹脂組成物1の製造例同様にして樹脂組成物2〜11を得た。
プロピレン鎖を主成分とするポリマー
P1:ノバテックPP BC08F(日本ポリプロ株式会社製ポリプロピレン)
P2:プライムポリプロ J709VM(株式会社プライムポリマー製ポリプロピレン)
エチレン鎖を主成分とするポリマー
E1:アクリフト CM5021(住友化学株式会社製エチレン・メチルメタアクリレート共重合物)
E2:スミカセンL CL5035(住友化学株式会社製LLDPE)
安定剤等
I−1010:IRGANOX 1010(BASFジャパン株式会社製)
S−GP :Sumilizer GP(住友化学株式会社製)
S−GA80:Sumilizer GA−80(住友化学株式会社製)
S−TPD :Sumilizer TP−D(住友化学株式会社製)
I−MD1024:IRGANOX MD1024(BASFジャパン株式会社製)
着色剤
MK1510:PP−RM MK1510(大日精化工業株式会社製カーボンブラックマスターバッチ)
結晶核剤
MW5000S:ミクロンホワイト 5000S(林化成株式会社製タルク)
実施例1
封止用樹脂組成物として樹脂組成物1を用い、株式会社井元製作所製半自動ホットメルト一軸押出成形機 EMC−18F9を用い、前述の方法で、架橋ポリエチレン電線への成形性評価を行ったところショート、ひけともなく良好であった。得られたサンプルの架橋ポリエチレンと樹脂組成物間の接着強度を測定したところ、290Nであった。また、ガラエポ、PBT、PET、PPからなる基材に対する接着強度を測定した結果を表4に示す。樹脂組成物1の透過型電子顕微鏡観察結果を図3に示す。
実施例2〜7及び比較例1〜4
封止用樹脂組成物として樹脂組成物2〜7及び比較樹脂組成物8〜11を用い、実施例1と同様にして接着強度を測定した結果を表4に示す。
実施例1〜7は特許請求の範囲を満たし、成形性、接着強度のいずれも良好である。比較例1は酸変性ポリオレフィンを含まず請求項1の範囲外であり、ガラエポ、PBT、PETに対する接着強度が低くなっている。比較例2は結晶性共重合ポリエステルを含まず請求項1の範囲外であり、PBTへの接着性が低くなっている。比較例3はプロピレン鎖を主成分とするポリマーを含まず請求項1の範囲外であり、PBTやPET、PPに対する接着性が低くなっている。比較例4はエチレン鎖を主成分とするポリマーを含まず請求項1の範囲外であり、架橋PEやPBT、PETに対する接着強度が低くなっている。
本発明の樹脂組成物は電気電子部品の封止剤として有用であり、特に架橋ポリエチレン被覆電線などを有し、複雑な形状を有する電気電子部品の防水、防塵成形材料として有用である。本発明の樹脂組成物で封止した封止体は、例えば自動車、通信、コンピュータ、家電用途各種のコネクター、ハーネスやあるいは電子部品、プリント基板を有するスイッチ、センサー等の封止成形用樹脂として有用である。

Claims (9)

  1. 樹脂組成物全体を100重量%としたとき、20〜70重量%がプロピレン鎖を主成分とするポリマーであり、20〜70重量%がエチレン鎖を主成分とするポリマーであり、5〜40重量%が酸変性ポリオレフィンであり、かつ5〜45重量%が結晶性共重合ポリエステルであり、前記結晶性共重合ポリエステルが、エーテル結合を有し、ガラス転移温度が0℃以下であ封止体用樹脂組成物。
  2. 測定温度190℃、加重2160gで測定したメルトフローレイト(MFR)が40g/10分以上である請求項1記載の封止体用樹脂組成物。
  3. 相分離構造を有する請求項1または2に記載の封止体用樹脂組成物。
  4. 前記相分離構造が海島構造である請求項3に記載の封止体用樹脂組成物。
  5. 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなることを特徴とする請求項4に記載の封止体用樹脂組成物。
  6. 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部がエチレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなることを特徴とする請求項4に記載の封止体用樹脂組成物。
  7. 前記海島構造における海部がプロピレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部がエチレン鎖を主成分とするポリマーから主としてなり、島部の中に更に結晶性共重合ポリエステルから主としてなる相が分散状態で存在していることを特徴とする請求項4に記載の封止体用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の封止体用樹脂組成物により電気電子部品の一部または全体を封止した封止体。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の封止体用樹脂組成物を用い、20MPa以下の圧力で、かつ280℃以下の温度で、電気電子部品をインサート成形により封止する封止体の製造方法。
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