JP2014219032A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】密封装置を軸受に圧入嵌合後、軸受内部空間内の潤滑剤が軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】外輪2と、内輪4と、内外輪間の車両インナ側端部に配置し、密封した軸受内部空間6を形成する密封装置8と、を備え、密封装置8は、内輪4の外周面に嵌合される円筒部83aと円筒部83aの車両インナ側端部から径方向外方へ延在するフランジ部83bとからなるスリンガ83と、スリンガ83に対向した状態で外輪2の内周面に嵌合され、スリンガ83に摺接するシール部材82と、フランジ部83bの車両インナ側の面である固着面84に固着されるパルサリング86と、を有し、軸受内部空間6内にグリースG1を封入したハブユニット1であって、固着面84には、円筒部83aに接続する端部から延在し漏出したグリースG1を溜める凹部85が周方向の数箇所に形成される。【選択図】図2

Description

本発明は、車輪用軸受装置に関する。
車両の車輪に用いる車輪用軸受装置は、雨水や泥水の影響を受けるような悪環境で使用されるため、軸受の外輪と内輪との間の環状空間を密封装置により密封し、これにより形成される軸受内部空間の密封性を高めている。
環状空間の車両インナ側端部に装着される密封装置は、内輪の外周面に嵌合されるスリンガと、外輪の内周面に嵌合され、スリンガに摺接するシール部材とから構成され、所謂パックシールと呼ばれるものである。また、スリンガには、車輪の回転速度を検出するためのパルサリングが固着されている。(特許文献1)
特開2009−162677号公報
上記の車輪用軸受装置は、軸受内部空間内に潤滑剤(例えば、グリース)を封入した状態で、内輪と外輪と転動体と車両アウタ側の密封装置とを組み立て、次に車両インナ側の密封装置を圧入嵌合して組み立てられる。この密封装置を圧入する際に、軸受内部空間の体積が密封装置の体積分減少するので、軸受内部空間の圧力が上昇する。また、スリンガと内輪の外周面との嵌合部が金属同士であることから、それぞれの面粗さによっては微少な隙間が生じることがある。その結果、車輪用軸受装置では、軸受内部空間の圧力が上昇しているため、軸受内部空間内に封入されたグリースの基油がこの隙間から押し出され、軸受の外側面に漏出する場合がある。特に、組み立てられた車輪用軸受装置が、単体のままで長期間、例えば2〜3週間保管されたときには、基油の漏出が確認されることがある。このとき、車輪用軸受装置を車両に取り付ける際、漏出した基油に手が触れることがあり、作業環境が悪化する。
そこで、車輪用軸受装置は、密封装置を軸受に圧入嵌合後、軸受内部空間内に封入されたグリースの基油などの潤滑剤が軸受の外側面に漏出するのを抑制することが課題となっていた。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、密封装置を軸受に圧入嵌合後、軸受内部空間内の潤滑剤が軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る車輪用軸受装置の構成上の特徴は、車両インナ側の車両固定部材に固定される外輪と、車両アウタ側の車輪が取り付けられる内輪と、内外輪間に形成される環状空間の車両インナ側端部に配置し、前記環状空間を密封して軸受内部空間を形成する密封装置と、を備え、前記密封装置は、前記内輪の外周面に嵌合される円筒部とこの円筒部の車両インナ側端部から径方向外方へ延在するフランジ部とからなるスリンガと、前記スリンガに対向した状態で前記外輪の内周面に嵌合され、前記スリンガに摺接するシール部材と、前記フランジ部の車両インナ側の面である固着面に一体的に固着される回転速度検出用のパルサリングと、を有し、前記軸受内部空間内に潤滑剤を封入した車輪用軸受装置であって、前記固着面には、前記円筒部に接続する端部から延在し漏出した潤滑剤を溜める凹部形成されることである。
請求項1の車輪用軸受装置によれば、密封装置を圧入嵌合することにより軸受内部空間の圧力が上昇し、その結果、軸受内部空間内に封入された潤滑剤が内輪の外周面とスリンガの円筒部とが嵌合する嵌合部を通過して軸受の外方へ漏出する。漏出した潤滑剤は、円筒部の端部から延在するフランジ部の固着面に設けられる凹部に導かれて溜まる。これにより、軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる。
請求項2に係る車輪用軸受装置の構成上の特徴は、前記固着面は、前記内輪の端面より車両アウタ側に配置されることである。
請求項2の車輪用軸受装置によれば、内輪の外周面とスリンガの円筒部とが嵌合する嵌合部を通過して軸受の外方へ漏出した潤滑剤は、固着面が内輪の端面より車両アウタ側に配置されるので、固着面に設けられる凹部に多く導かれて溜まる。これにより、軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる。
本発明によれば、密封装置を軸受に圧入嵌合後、軸受内部空間内の潤滑剤が軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる車輪用軸受装置を提供できる。
本発明の一実施形態である車輪用軸受装置を備えたハブユニットの軸方向の断面図である。 図1に示すA部の拡大断面図である。 図2のB−B矢視図である。
以下、本発明の車輪用軸受装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態である車輪用軸受装置を備えたハブユニット1の軸方向の断面図である。図1を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、車両インナ側とは以下の図面における左側を示し、車両アウタ側とは以下の図面における右側を示すものとする。
図1に示すようにハブユニット1(車輪用軸受装置)は、例えば前輪駆動車の前輪用(駆動軸用)のものであり、複列外向きのアンギュラ玉軸受構造とされている。具体的には、ハブユニット1は、車両インナ側の車両固定部材であるナックル12に固定される外輪2と、外輪2の軸線11と同軸に配置されて車両アウタ側の車輪(図示省略)が取り付けられる内軸3(内輪)と、内軸3の車両インナ側端に一体形成された嵌め合い部3aの外周面に嵌着される内輪4と、外輪2と内軸3及び内輪4との間にて周方向に配置される複列の玉5とを備えている。
外輪2の内周面には、車両インナ側に配列された玉5用の軌道面2aと、車両アウタ側に配列された玉5用の軌道面2bとが形成されている。外輪2の外周面には、径方向外方へ突出してナックル12に固定される車両取付フランジ部2cが形成されている。外輪2の材料としては、例えば、高炭素鋼「S55C」が用いられる。
内軸3の外周面には、外輪2の軌道面2bに対向する軌道面3bが形成され、軌道面3bよりもさらに車両アウタ側には、径方向外方へ突出して車輪が取り付けられるフランジ3cが形成されている。内軸3の材料としては、例えば、高炭素鋼「S55C」が用いられる。
内輪4は、嵌め合い部3aに外嵌圧入され、嵌め合い部3aと一体化されている。内輪4の外周面には、外輪2の軌道面2aに対向する軌道面4aが形成されている。内輪4の材料としては、例えば、高炭素クロム軸受鋼材「SUJ2」が用いられる。
外輪2と内軸3及び内輪4との間には、転動体としての玉5を配置するための環状の環状空間Sが形成される。環状空間Sには、車両アウタ側に環状の密封装置7が装着され、車両インナ側に環状の密封装置8が装着されている。密封装置7及び密封装置8により、外輪2と内軸3及び内輪4とのそれぞれの相対回転を許容した状態で密封された軸受内部空間6が構成されている。
図2は、図1に示すA部の拡大断面図である。図3は、図2のB−B矢視図である。図2及び図3を参照しつつ説明する。
密封装置8は、環状のパックシールであり、芯金81、スリンガ83、シール部材82及びパルサリング86からなる。
芯金81は、外輪2の内周の車両インナ側端部に嵌合される円筒状の固定部81aと、固定部81aの車両アウナ側の端部から径方向内方へ延在する円板部81bとからなり、断面が略L字形に形成されている。芯金81の材料としては、例えば、防錆処理された冷延鋼板のSPCCが用いられる。
スリンガ83は、内輪4の外周の車両インナ側端部に嵌合され固定部81aに対向配置される円筒部83aと、円筒部83aの車両インナ側の端部から径方向外方へ延在し円板部81bに対向配置されるフランジ部83bとからなり、断面が略L字形に形成されている。スリンガ83の材料としては、例えば、ステンレス鋼のSUS430が用いられる。
芯金81には、弾性体からなる環状のシール部材82が加硫接着され一体化されている。シール部材82は、固定部81aの外周及び車両インナ側端部から車両アウタ側へ向かう途中位置まで形成されるシール嵌合部82aと、フランジ部83bの車両アウタ側の面に摺接するアキシャルリップ82bと、円筒部83aの外周面に摺接し車両インナ側に設けられる外方リップ82cと、円筒部83aの外周面に摺接し外方リップ82cよりも車両アウタ側に設けられる内方リップ82dと、を備える。密封装置8は、シール部材82がスリンガ83に摺接し、軸受内部空間6を車両インナ側にて密封している。シール部材82の材料としては、例えば、ニトリルゴムが用いられる。
シール嵌合部82aが弾性変形することにより、固定部81aが外輪2に締め代を有して嵌合され、この嵌合部が密封される。シール部材82は、外方リップ82cと内方リップ82dと円筒部83aとにより囲われる環状のリップ間空間82eを形成する。シール部材82には、リップ間空間82eと、アキシャルリップ82bの先端部の軸受内部側とに、それぞれに予めグリースG2,G3(潤滑剤)が塗布されている。これらのグリースG2,G3が三つのリップの摺接部を潤滑する。
スリンガ83のフランジ部83bの車両インナ側の面である固着面84には、N極,S極が交互に着磁され回転速度を検出するための環状のパルサリング86が、一体的に固着されている。
フランジ部83bの固着面84には、円筒部83aに接続する端部である内周縁から径方向外方へ延びる溝85(凹部)が周方向の8箇所に等配に形成される。ここで、溝85は、フランジ部83bの厚みを0.6mmとしたときに、例えば溝幅が0.5mm、溝深さが0.1〜0.2mm、溝長さが固着面84の径方向長さの7割程度として構成される。また、固着面84は、内輪4の車両インナ側端面より車両アウタ側に配置されている。
ハブユニット1の組立工程は、軸受内部空間6内にグリースG1(潤滑剤)を封入した状態で、外輪2と内軸3及び内輪4と玉5と密封装置7とを組み立て、次に密封装置8を圧入するようになっている。ハブユニット1では、密封装置8を圧入して軸受内部空間6が密封されると、軸受内部空間6の体積が圧入する密封装置8の体積分減少するので、軸受内部空間6の圧力が上昇する。
ハブユニット1では、円筒部83aの内周面と内輪4の外周面とが嵌合する嵌合部9が金属同士であることから、それぞれの面粗さによっては微少な隙間が生じることがある。その場合、軸受内部空間6の圧力が上昇しているため、軸受内部空間6内に封入されたグリースG1の基油が、僅かながらこの隙間から矢印F1で示す方向に押し出される。押し出された基油は、矢印F2で示す方向のように内輪4の端面より車両アウタ側に配置されている固着面84の溝85に導かれて溜まる。このとき、押し出された基油が、内輪4の端面に漏出することは少ない。
これにより、ハブユニット1は、組み立てられたハブユニット1が長期間、例えば2〜3週間保管される場合であっても、軸受内部空間6内に封入されたグリースG1の基油が、内輪4の端面などからなる軸受の外側面に漏出するのを抑制できる。
また、ハブユニット1は、組立品を保管する際、重量バランスや外径の大きさなどから車両アウタ側を鉛直方向の下側にすることが多い。このとき、嵌合部9から押し出される基油は、固着面84の溝85に多く導かれて溜まり、内輪4の端面に漏出することはほとんどない。
以上のように、本実施の形態に係るハブユニット1によれば、密封装置8を軸受に圧入嵌合後、軸受内部空間6内のグリースG1が軸受の外側面に漏出するのを抑制することができる。
なお、本発明は本実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、駆動輪の構成について説明したが、本発明は従動輪においても、もちろん適用できるものである。
また、本実施形態では、本発明の凹部に対応する溝85が、固着面84において円筒部83aに接続する端部から径方向外方に延び且つ周方向の8箇所に等配に形成されるとしたが、それに限るものではなく、例えば、網目状に形成される構成などに適用してもよい。
また、本実施形態では、溝85において、この溝の数、溝幅、溝深さ及び溝長さが、一実施例として設定されたが、それに限るものではなく、圧入する密封装置の体積やグリースの封入量などによりそれぞれ適宜決定すればよい。
また、上記実施形態では、好適な例として、固着面84が内輪4の端面より軸方向の内方側に配置されるとしたが、それに限るものではなく、例えば、固着面及び内輪の端面が軸方向に略同一に配置される構成に適用してもよい。
1:ハブユニット(車輪用軸受装置)、 2:外輪、 2c:車両取付フランジ部、 3:内軸(内輪)、 4:内輪、 5:玉、 6:軸受内部空間、 7,8:密封装置、 9:嵌合部、 11:軸線、 12:ナックル、 81:芯金、 81a:固定部、 81b:円板部、 82:シール部材、 82a:シール嵌合部、 82b:アキシャルリップ、 82c:外方リップ、 82d:内方リップ、 82e:リップ間空間、 83:スリンガ、 83a:円筒部、 83b:フランジ部、 84:固着面、 85:溝(凹部)、 86:パルサリング、 F1,F2:基油の流れ、 G1,G2,G3:グリース(潤滑剤)、 S:環状空間

Claims (2)

  1. 車両インナ側の車両固定部材に固定される外輪と、
    車両アウタ側の車輪が取り付けられる内輪と、
    内外輪間に形成される環状空間の車両インナ側端部に配置し、前記環状空間を密封して軸受内部空間を形成する密封装置と、を備え、
    前記密封装置は、
    前記内輪の外周面に嵌合される円筒部とこの円筒部の車両インナ側端部から径方向外方へ延在するフランジ部とからなるスリンガと、
    前記スリンガに対向した状態で前記外輪の内周面に嵌合され、前記スリンガに摺接するシール部材と、
    前記フランジ部の車両インナ側の面である固着面に一体的に固着される回転速度検出用のパルサリングと、を有し、
    前記軸受内部空間内に潤滑剤を封入した車輪用軸受装置であって、
    前記固着面には、前記円筒部に接続する端部から延在し漏出した潤滑剤を溜める凹部が形成されることを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記固着面は、前記内輪の端面より車両アウタ側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017207124A (ja) * 2016-05-18 2017-11-24 株式会社ジェイテクト 車輪用軸受装置

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