JP2014214766A - シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造及び摺動式等速ジョイント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シャフト12の挿通部に外嵌部材(11)を嵌合させ、突出した挿通部の外周面のリング溝にCリング状の止め輪13が嵌め込まれ、リング溝に嵌め込まれた止め輪におけるリング溝から径方向外側に突出した端面のうち、挿通部の先端側の端面には、挿通部の先端側に向かって突出し、内周面が挿通部の外周面に対向する突起部13Tが形成されており、突起部は止め輪の全周に渡って形成されていることなく止め輪の中心を挟んで径方向において切欠部と反対側の位置を含む範囲に形成されている。
【選択図】図6
Description
図3の例に示すように、等速ジョイントでは、径方向外側に突出した複数のトリポード軸部11Aを有するトリポード部材11(図3の例ではトリポード部材11を断面で示しており、トリポード軸部11Aを1個のみ記載している)の貫通孔11Kに、シャフト12の挿通部12Aが挿通されて嵌合されている。なお、挿通部12Aの外周面にはスプライン12Bが形成されており、トリポード部材11の貫通孔11Kの内周面にはスプライン11Bが形成されている。
またトリポード部材11の一方の端面11Mの側における貫通孔11Kの縁部には(小)面取り部11Sが形成されており、他方の端面11Nの側における貫通孔11Kの縁部には(大)面取り部11Lが形成されている。なお、精度が要求される(大)面取り部11Lのほうが、(小)面取り部11Sよりも大きく形成されて(大きく面取りされて)、要求精度に応じた寸法管理がされている。
図6(B)に示すように、トリポード部材11の他方の端面11Nの側からシャフト12の挿通部12Aを挿通していくと、やがて挿通部12Aのスプライン12Bの端部に形成された突き当て部12C((大)面取り部11Lに対応した傾斜面)に(大)面取り部11Lが突き当たり、シャフト12に対するトリポード部材11の回転軸Z10方向の位置が位置決めされる。このとき、挿通部の先端はトリポード部材11から所定長さだけ突出しており、突出した挿通部の外周面であってトリポード部材11に隣接する位置には、円周方向にリング溝12Mが形成されている。そしてリング溝12Mに、従来の止め輪113が嵌め込まれ、挿通されたトリポード部材11がシャフト12から抜けないように保持されている。また従来の止め輪113は単純なC字状であり、図6(B)に示すように断面は単純な矩形である。なお図6(B)では、トリポード部材11と従来の止め輪113は、回転軸Z10方向に沿って切断した断面を示している。
また等速ジョイントでは、トリポード軸部に外嵌されるローラユニットとの干渉を回避するために、従来の止め輪113の径方向の高さは低く抑えられている。
しかし、シャフト径等に応じた専用の止め輪の種類が増えてしまうことは、誤組み付けや、管理工数の増加等が発生する可能性があるので好ましくない。
従って、より剛性が高く、種々のシャフト径等に対して共通して使用することが可能な止め輪が望まれている(止め輪の種類を削減することが望まれている)。
また特許文献2に記載された従来技術には、図7(B)に示すように、軸方向に向かう突起部113Eが、止め輪の全周に渡って形成された止め輪113Dが開示されている。この場合、止め輪113Dの収容部113Fがリング溝に収容され、突起部113Eの内周面はリング溝の縁部となるシャフトの外周面に圧接される。
また特許文献2に記載された、図7(B)に示す従来の止め輪113Dでは、止め輪の全周に渡って突起部113Eが形成されており、必要以上の剛性を有している。つまり、シャフトに外嵌された外嵌部材が抜けることを防止するための剛性だけでなく、止め輪113Dをリング溝に嵌め込むために止め輪113Dを開く方向の剛性まで必要以上に大きく上がってしまっている。従って、止め輪113Dをリング溝に嵌め込む際、止め輪113Dを開くためにより多くの力が必要となり、止め輪113Dをリング溝に嵌め込む際の作業性が(必要以上に)悪化する可能性がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、シャフトに外嵌した外嵌部材が抜けることを防止する止め輪の形状をより適切な形状とすることで、外嵌部材の抜ける方向に対する剛性を適切に向上させ、且つ止め輪をリング溝に嵌め込む際の作業性が悪化することを抑制することができる、シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造及び摺動式等速ジョイントを提供することを課題とする。
まず、本発明の第1の発明は、軸方向における一方端の側に外嵌部材を嵌合可能な挿通部を有するシャフトに、前記挿通部と嵌合される貫通孔を有する前記外嵌部材を嵌合させ、前記外嵌部材から軸方向に突出した前記挿通部の外周面であって前記外嵌部材に隣接する位置に周方向に形成されたリング溝に、前記外嵌部材が前記シャフトから抜けることを防止する止め輪が嵌め込まれている、シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造である。
前記止め輪は、周方向の一部に切欠部が形成されたCリング状の形状を有しており、前記リング溝に嵌め込まれた止め輪における前記リング溝から径方向外側に突出した端面のうち、前記挿通部の先端側の端面には、前記挿通部の先端側に向かって突出し、前記リング溝と前記挿通部の外周面とを接続する縁部から前記挿通部の先端側に向かって前記挿通部の外周面に対向する内周面を有する突起部が形成されており、
前記突起部は、前記止め輪の全周に渡って形成されていることなく前記止め輪の中心を挟んで径方向において前記切欠部と反対側の位置を含む範囲に形成されている。
また、止め輪の全周に渡って突起部が形成されているのではなく、止め輪の突起部を、切欠部に対して位相が180°異なる位置を含む範囲に設けたことにより、止め輪の剛性が高くなり、止め輪を開くのに大きな荷重が必要となる。
従って、止め輪にスラスト荷重がかかったときに止め輪が開くのを確実に防止でき、止め輪及び外嵌部材が抜けることを確実に防止できる。
また、止め輪の全周に渡って突起部が形成されていないので、止め輪を開く方向の剛性が(必要以上に)上がることを抑制しており、止め輪を開いてリング溝に嵌め込む際の作業性が(必要以上に)悪化することを抑制することができる。
これにより、止め輪及び外嵌部材が抜けることを、さらに確実に防止することができる。
これにより、止め輪のコストをより低減することができる。
前記止め輪は、周方向の一部に切欠部が形成されたCリング状の形状を有しており、前記リング溝に嵌め込まれた止め輪における前記リング溝から径方向外側に突出した端面のうち、前記挿通部の先端側の端面には、前記挿通部の先端側に向かって突出し、前記リング溝と前記挿通部の外周面とを接続する縁部から前記挿通部の先端側に向かって前記挿通部の外周面に対向する内周面を有する突起部が形成されており、前記突起部は、前記止め輪の全周に渡って形成されていることなく前記止め輪の中心を挟んで径方向において前記切欠部と反対側の位置を含む範囲に形成されている。
これにより、トリポード軸に対してローラが傾斜したとき、ローラと止め輪の干渉を確実に回避しながら、トリポード部材が抜けることを確実に防止できる。
また、止め輪の全周に渡って突起部が形成されていないので、止め輪を開く方向の剛性が(必要以上に)上がることを抑制しており、止め輪を開いてリング溝に嵌め込む際の作業性が(必要以上に)悪化することを抑制することができる。
●[(摺動式)等速ジョイントの全体構成(図1、図2)]
まず図1及び図2を用いて、(摺動式)等速ジョイント1(以降、等速ジョイント1と記載する)の全体構成について説明する。なお、本実施の形態の説明では、ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントを例として説明する。
図1は等速ジョイント1の分解斜視図を示しており、図2(A)は等速ジョイント1の軸方向断面図を示しており、図2(B)は図2(A)におけるB−B断面図を示している。なお図1では図2(A)に示すブーツ40の記載を省略している。
図1に示すように、等速ジョイント1は、回転駆動力の入力側である駆動部20と、回転駆動力の出力側である受動部10とにて構成されており、駆動部20の回転軸Z20(外輪軸に相当)に対して受動部10の回転軸Z10が一致せずに所定角度で傾斜しても、回転軸Z10と回転軸Z20とを常に等速で回転させて回転駆動力を伝達することができる。なお、符号10と符号20は、どちらが駆動部であってもよく、一方が駆動部となれば他方が受動部となる。本実施の形態では符号20を駆動部として説明する。
トリポード部材11は外輪21内に収容され、トリポード部材11には、外輪21の内周面に形成された3つの案内溝21Aのそれぞれに向かって突出する3本の軸部であるトリポード軸部11Aが設けられている。そしてトリポード軸部11Aのそれぞれには、ローラユニット30が外嵌されている。そしてローラユニット30は、案内溝21Aに対向配置されたローラ案内面21Bの間に配置されている。
駆動部20は、外輪21と、当該外輪21に固定された連結軸22と、にて構成されている。
外輪21には、略筒状の形状を有して駆動部20の回転軸Z20の軸方向に沿うように対向配置されたローラ案内面21Bを有する3つの案内溝21Aが内周面に形成されている。
また図2(A)に示すように、外輪21の開口部には、ブーツ40が取り付けられ、異物や水の浸入を防止するとともに潤滑油を内部に保持する。
以上の構成により、連結軸22から回転駆動力が入力されると、回転方向に対向しているローラ案内面21Bにローラユニット30が当接し、トリポード部材11及びシャフト12に回転駆動力を伝達する。
次に図3を用いてトリポード部材11の構造と、シャフト12の挿通部12Aの構造について説明する。なお図3においてトリポード部材11は回転軸Z10方向に切断した断面を示している。
トリポード部材11は、径方向外側に向かって突出する複数のトリポード軸部11A(この場合、トリポード軸部11Aは3本であるが図3では1本のみを記載している)を有するとともにシャフト12を嵌合(挿通)するための貫通孔11Kが形成されている。また貫通孔11Kが形成されている内周面には、シャフト12の挿通部12Aのスプライン12Bと嵌合するためのスプライン11Bが形成されている。
そしてトリポード部材11の一方の端面11Mの側における貫通孔11Kの縁部には、比較的小さな(小)面取り部11Sが形成されており、トリポード部材11の他方の端面11Nの側における貫通孔11Kの縁部には、(小)面取り部11Sよりも大きな(大)面取り部11Lが形成されている。また(大)面取り部11Lの寸法は、要求精度を満足するための寸法管理がなされている。
また挿通部12Aにおける先端とは反対の側には、挿通したトリポード部材11の(大)面取り部11Lを突き当ててシャフト12に対するトリポード部材11の回転軸Z10方向の位置決めをするための突き当て部12Cが設けられている。また突き当て部12Cは、(大)面取り部11Lに対応する傾斜面として形成されている。
また挿通部12Aの先端近傍の外周面には、リング溝12Mが円周方向に形成されている。
止め輪13は、周方向の一部が開口した(周方向の一部に切欠部13Cを有する)Cリング状である。
また図4に示すようにリング溝12Mに嵌め込まれた止め輪13におけるリング溝12Mから径方向に突出した端面のうち、挿通部の先端側に向かう端面13Mには、挿通部の先端側に向かう突起部13Tが形成されている。
また止め輪13がリング溝に嵌め込まれた場合、突起部13Tの内周面13Lは、リング溝と挿通部の外周面とを接続する縁部(挿通部の外周面とリング溝との境界部)から挿通部の先端側に向かって挿通部の外周面12Gに接する(図6(A)参照)。
また突起部13Tの形成位置は、切欠部13Tの近傍の位置13X、13Yとするよりも、切欠部13Cから離れた位置となる図5(A)に示す位置のほうが、トリポード部材11からのスラスト荷重F(図6(A)参照)を、より強固に受け止めることができるので、より好ましい。
また止め輪13における内周側の収容部13S(図5(B)参照)は、止め輪13がリング溝に嵌め込まれた場合、リング溝内に収容される(図6(A)参照)。
図6(A)は、図5に示した止め輪13にて、シャフト12に挿通したトリポード部材11を保持した状態を示している。また図6(B)は、従来の止め輪113にて、シャフト12に挿通したトリポード部材11を保持した状態を示している。
このため、従来では、シャフト12の径に応じた専用の止め輪が用いられており、止め輪の種類が多く、管理が大変であった。
なお、トリポード部材11の抜ける方向のスラスト荷重Fは、作業者による車両への等速ジョイントの組み付け工程において、等速ジョイントをデファレンシャルに圧入し、圧入状態を確認するために等速ジョイントを引張る際等にて発生する。
また、図5(A)、(C)に示すように、突起部13Tは全周に渡って形成されていないので、止め輪13をリング溝12Mに嵌め込む際、止め輪13を開くための力は、突起部13Tが全周に渡って形成されている場合よりも充分小さな力で済む。従って、止め輪13をリング溝12Mに嵌め込む際の作業性が悪化することを抑制することができる。
また、図5(A)に示す角度θ1を60度〜120度程度とすることで、外嵌部材(この場合、トリポード部材)が(シャフトから)抜ける方向に対する剛性を適切に向上させ、且つ止め輪をリング溝に嵌め込む際の作業性が悪化することを抑制することができる。
これにより、止め輪および外嵌部材が(シャフトから)抜けることを確実に防止できる。そして、止め輪の嵌め込み作業時間を短縮でき、コスト低減できる。
また、止め輪の突起部の内周面と、挿通部の外周面と、が接するように構成すると、止め輪にスラスト荷重がかかったとき、止め輪の変形と傾斜をより小さくすることができるので、より好ましい。
また、止め輪の突起部を、切欠部と反対側の位置を含む範囲に1個所のみ形成することで、製造・加工が容易となり、コストを低減することができる。
また、突起部13Tを設けても止め輪13の径方向の高さは変わらないので、ローラユニットと干渉することもない。
本実施の形態の説明では、ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントを例として説明したが、(本実施の形態にて説明した止め輪13を)シングルローラタイプ等、種々の構造の摺動式等速ジョイントに適用することが可能である。
また、(摺動式)等速ジョイントに限定されず、軸方向の一方端の側に外嵌部材を嵌合可能な挿通部を有するシャフトに、挿通部と嵌合される貫通孔を有する外嵌部材を嵌合させ、挿通部の突出部の外周面に形成されたリング溝に、図5(A)〜(C)に示した止め輪13を嵌め込んで、外嵌部材がシャフトから抜けることを防止できる。従って、等速ジョイントに限定されず、シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造として、図5(A)〜(C)に示した止め輪13を種々のものに適用することが可能である。
10 受動部
11 トリポード部材
11A トリポード軸部
11B、12B スプライン
11K 貫通孔
11L (大)面取り部
11M 一方の端面
11N 他方の端面
11S (小)面取り部
12 シャフト
12A 挿通部
12C 突き当て部
12G 外周面
12M リング溝
13 止め輪
13L 内周面
13S 収容部
13T 突起部
20 駆動部
21 外輪
21A 案内溝
21B ローラ案内面
22 連結軸
30 ローラユニット
Z10 (受動部の)回転軸
Z20 (駆動部の)回転軸(外輪軸)
Claims (4)
- 軸方向における一方端の側に外嵌部材を嵌合可能な挿通部を有するシャフトに、
前記挿通部と嵌合される貫通孔を有する前記外嵌部材を嵌合させ、
前記外嵌部材から軸方向に突出した前記挿通部の外周面であって前記外嵌部材に隣接する位置に周方向に形成されたリング溝に、前記外嵌部材が前記シャフトから抜けることを防止する止め輪が嵌め込まれている、シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造において、
前記止め輪は、周方向の一部に切欠部が形成されたCリング状の形状を有しており、
前記リング溝に嵌め込まれた止め輪における前記リング溝から径方向外側に突出した端面のうち、前記挿通部の先端側の端面には、前記挿通部の先端側に向かって突出し、前記リング溝と前記挿通部の外周面とを接続する縁部から前記挿通部の先端側に向かって前記挿通部の外周面に対向する内周面を有する突起部が形成されており、
前記突起部は、前記止め輪の全周に渡って形成されていることなく前記止め輪の中心を挟んで径方向において前記切欠部と反対側の位置を含む範囲に形成されている、
シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造。 - 請求項1に記載のシャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造であって、
前記止め輪の前記突起部の内周面は、前記リング溝と前記挿通部の外周面とを接続する縁部から前記挿通部の先端側に向かって前記挿通部の外周面と、接している、
シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造。 - 請求項1または2に記載のシャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造であって、
前記止め輪の前記突起部は、前記切欠部と反対側の位置を含む範囲に1個所形成されている、
シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のシャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造を有する摺動式等速ジョイントであって、
軸方向における一方端の側に外嵌部材を嵌合可能な挿通部を有するシャフトと、
径方向外側に向かって突出する3つの軸部であるトリポード軸部と、シャフトに外嵌するための貫通孔と、が設けられた外嵌部材であるトリポード部材と、
前記シャフトに外嵌された前記トリポード部材が前記シャフトから抜けることを防止する止め輪と、
前記トリポード軸部のそれぞれに外嵌されるローラユニットと、
前記シャフトに外嵌されて前記止め輪にて抜け防止が施されて前記ローラユニットが外嵌されたトリポード部材を収容する外輪と、を有する摺動式等速ジョイントにおいて、
前記止め輪は、周方向の一部に切欠部が形成されたCリング状の形状を有しており、
前記リング溝に嵌め込まれた止め輪における前記リング溝から径方向外側に突出した端面のうち、前記挿通部の先端側の端面には、前記挿通部の先端側に向かって突出し、前記リング溝と前記挿通部の外周面とを接続する縁部から前記挿通部の先端側に向かって前記挿通部の外周面に対向する内周面を有する突起部が形成されており、
前記突起部は、前記止め輪の全周に渡って形成されていることなく前記止め輪の中心を挟んで径方向において前記切欠部と反対側の位置を含む範囲に形成されている、
摺動式等速ジョイント。
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