以下、本発明による無線通信制御装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による無線通信制御装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信制御装置は、体験品質の目標値と達成値との差が小さくなるように無線リソースの割り当てや無線ネットワークトポロジーの変更等の制御を行うものである。
図1は、本実施の形態による無線通信制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による無線通信制御装置1は、通信部11と、送信キュー12と、通信品質取得部13と、達成値取得部14と、観測結果取得部15と、受付部16と、目標値生成部17と、算出部18と、制御部19と、処理部20とを備える。この無線通信制御装置1は、例えば、ステーションやモバイルノード等の端末装置であってもよく、1以上の端末装置と無線通信を行うアクセスポイント等の無線基地局であってもよく、または、無線通信を行うその他の装置であってもよい。また、無線通信制御装置1は、通常、無線LAN等の自律分散型無線ネットワークにおいて無線通信を行う装置である。また、その無線ネットワークは、他の無線システムと混在する環境であってもよい。すなわち、多数の無線通信機器が、同一周波数帯を共用していてもよい。また、無線通信制御装置1は、通常、センシング機能を有している。
通信部11は、アンテナを介して無線通信を行う。通信部11が行う無線通信は、どのようなものであってもよい。その無線通信は、例えば、無線LANによる通信であってもよく、他の移動体通信であってもよく、その他の無線通信であってもよい。本実施の形態では、その無線通信が無線LANによる通信である場合について主に説明する。通信部11は、送信キュー12で送信対象の情報がキューイングされている場合に、その情報を送信してもよい。また、例えば、制御部19によって無線ネットワークトポロジーの変更が行われる場合に、その無線ネットワークトポロジーの変更に関する情報を送信してもよい。その情報は、例えば、通信先の装置を変更する旨の指示であってもよい。また、通信部11による送信は、例えば、制御部19による無線リソースの割り当てに応じてなされてもよい。その無線リソースの割り当てについては、後述する。また、通信部11は、キャリアセンスの結果を用いた制御に応じた送信を行ってもよい。また、通信部11は、他の装置から送信された無線信号を受信してもよい。具体的には、通信部11は、後述する観測結果を受信してもよく、制御情報を受信してもよく、その他の情報を受信してもよい。その観測結果は、他の装置(例えば、無線基地局であってもよく、端末装置であってもよく、その他の装置であってもよい)から送信された、無線通信の品質に関する情報である。制御情報は、例えば、無線通信の品質の変更を指示する情報であってもよい。無線通信の品質の変更は、例えば、無線通信のパラメータに関する指示であってもよい。具体的には、制御情報は、変調方式、符号化率、周波数、送信電力、信号帯域幅、及び通信優先順位から選ばれる1以上のものに関する指示を含んでいてもよい。なお、その指示は、変調方式等の変更の指示(例えば、増加させる、減少させる等)であってもよく、変調方式等をある値に設定する旨の指示(例えば、Aに設定する、Bに設定する等)であってもよく、変調方式等に関するその他の指示であってもよい。また、その制御情報は、アプリケーション(アクセスクラス)ごとの情報であってもよく、または、そうでなくてもよい。その制御情報は、例えば、無線通信制御装置1の含まれるセルや、他のセルにおける無線通信を適切なものにするため(例えば、混雑を緩和するためなど)に送信されるものである。その制御情報は、例えば、無線基地局が繰り返し送信するビーコンに含まれていてもよい。また、通信部11は、後述するキャリアセンスや観測結果の取得で用いられる情報を受信すると、その情報を図示しない記録媒体で記憶してもよい。その情報は、例えば、受信信号強度や、周波数スペクトル、スペクトログラム等であってもよく、その他の情報であってもよい。なお、通信部11は、無線通信を行うための無線の通信デバイス(例えば、ネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、通信部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは通信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
送信キュー12には、送信前の情報が一時的に記憶される。送信キュー12における情報のキューイングは、例えば、アプリケーションごとに行われてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、ボイス通信の情報と、ビデオ通信の情報とが区別可能にキューイングされてもよい。送信キュー12は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスクなど)によって実現されうる。
通信品質取得部13は、通信部11が行う無線通信の通信品質を取得する。その通信品質は、無線通信制御装置1と、1以上の通信先の装置との間の伝送路が空いているのか混雑しているのかを示す情報であり、例えば、その無線通信のQoSであると考えてもよい。この通信品質は、通常、客観的に評価される品質である。その通信品質は、例えば、パケットの送受信に応じて測定できる情報を含んでもよく、送信キュー12でキューイングされている情報(例えば、パケット等)の数に応じて取得できる情報を含んでもよく、それらのうち少なくとも一方の情報に対応する値であってもよい。その情報に対応する値とは、例えば、その情報を引数とする関数の値であってもよく、その情報にテーブル等によって対応付けられている値であってもよい。パケットの送受信に応じて測定できる情報は、例えば、スループットであってもよく、遅延であってもよく、ジッタであってもよく、パケットロス率(パケット損失率)であってもよく、周波数帯域が利用されているかどうかを示す周波数の利用状況であってもよく、ビットエラー率であってもよく、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよい。また、パケットの送受信に応じて測定できる情報は、スループット等のうち、1以上の情報に対応する値であってもよい。その1以上の情報に対応する値とは、例えば、その1以上の情報を引数とする関数の値であってもよく、その1以上の情報にテーブル等によって対応付けられている値であってもよい。例えば、スループットが高いほど通信品質は高くなり、遅延が短いほど通信品質は高くなり、ジッタが小さいほど通信品質は高くなり、パケットロス率が低いほど通信品質は高くなり、使用されている周波数帯域(チャネル)が少ないほど通信品質は高くなり、ビットエラー率が低いほど通信品質は高くなる。なお、これらの情報は、無線通信制御装置1が観測した情報であってもよく、無線通信制御装置1の通信先の装置が観測した情報であってもよく、その両方であってもよい。通信先の装置が観測した結果も用いる場合には、通信品質取得部13は、通信部11が受信した、通信先の装置で観測された結果を用いて通信品質を取得してもよい。また、パケットの送受信に応じて測定できる情報を取得するために、プローブパケットが用いられてもよく、または、他の用途のパケットが用いられてもよい。また、キューイングされている情報の数に応じて取得できる情報は、送信キュー12でキューイングされている情報の数であってもよく、キューイングされている情報の数の変化の割合(例えば、単位時間あたりの増加率や減少率等)であってもよく、その両方であってもよく、または、キューイングされている情報数、及び、その情報数の変化の割合のうち、少なくとも一方に対応する値であってもよい。少なくとも一方に対応する値とは、例えば、その少なくとも一方を引数とする関数の値であってもよく、その少なくとも一方にテーブル等によって対応付けられている値であってもよい。例えば、送信キュー12でキューイングされている情報の数が増加している場合やしきい値よりも多い場合には、例えば、送信トラフィックや再送が多く、通信品質は低いと考えられる。また、送信キュー12でキューイングされている情報の数が減少している場合やしきい値よりも低い場合には、例えば、送信トラフィックや再送が少なく、通信品質は高いと考えられる。なお、この通信品質の情報は、アプリケーションごとの情報であってもよい。その場合には、パケットの送受信に応じて測定できる情報は、例えば、あるアプリケーションで送受信されるパケットを用いて測定される情報であってもよく、キューイングされている情報の数に応じて取得できる情報は、例えば、あるアプリケーションで用いられる送信キュー12でキューイングされている情報の数に応じて取得される情報であってもよい。本実施の形態では、通信品質取得部13が、送信キュー12でキューイングされている情報の数に応じて通信品質を取得する場合について主に説明する。
達成値取得部14は、体験品質の達成値を取得する。体験品質とは、通信部11が行う無線通信に関する品質であり、ユーザの体験に応じた品質である。通信品質が通常、客観的に評価された品質であるのに対して、体験品質は、主観的に評価された品質となる。なお、体験品質は、ユーザの体験に応じた品質であるが、実際にユーザが評価した品質ではなく、通信品質を用いて予測されたユーザの体験に応じた品質であってもよい。すなわち、ユーザが仮に体験したとすると、このような評価になると予測される品質が、体験品質であってもよい。また、体験品質の達成値は、体験品質の取得時点における体験品質の値、すなわち、現在値である。通信品質と体験品質には通常、正の相関があるため、達成値取得部14は、通信品質を引数とする関数を用いて体験品質の達成値を取得してもよい。その関数は、引数である通信品質に関する単調非減少関数であってもよい。単調非減少関数とは、x<yならばF(x)≦F(y)となる関数のことであり、広義の単調増加関数と呼ばれることもある。その単調非減少関数は、通常、非線形の関数である。その関数は、例えば、図4A,図4Bで示されるように、通信品質が第1の範囲にある場合における傾きが、通信品質が第2の範囲にある場合の傾きよりも大きいものであってもよい。ここで、第2の範囲は、第1の範囲より値の大きい範囲であり、両範囲は重なり合っていないことが好適である。また、第1の範囲と第2の範囲との境界は、図4A,図4Bで示されるように、関数の傾きが変化する点または範囲であることが好適である。なお、第1や第2の範囲における傾きとは、例えば、各範囲における傾きの平均であってもよく、各範囲の両端点を用いて算出された傾き、すなわち、各範囲における通信品質の最小値に応じた体験品質と、通信品質の最大値に応じた体験品質とを用いて算出された傾きであってもよい。また、第1の範囲と第2の範囲とは、図4Aで示されるように連続していてもよく、図4Bで示されるように、連続していなくてもよい。後者の場合であっても、両範囲のギャップは、小さい方が好適である。また、その関数の傾きは、通信品質に関して単調非増加関数(すなわち、広義の単調減少関数)となっていてもよい。また、その関数の傾きは、図4A、図4Bで示されるように、通信品質が十分大きくなった場合に0となってもよい。また、関数を用いて体験品質の達成値を取得することは、例えば、引数に通信品質を代入した関数の値である体験品質の達成値を算出することであってもよく、通信品質と、その通信品質を引数とする関数の値である体験品質の達成値とを対応付けるテーブル等の情報を用いて、通信品質に対応する体験品質の達成値を取得することであってもよい。なお、この体験品質の達成値は、アプリケーションごとの値であってもよい。その場合には、達成値取得部14は、あるアプリケーションに対応する体験品質の達成値を、そのアプリケーションに対応する通信品質を用いて取得してもよい。本実施の形態では、達成値取得部14は、次式のように体験品質の達成値ηを算出するものとする。その関数Fは、上述の単調非減少関数である。なお、qは、通信品質取得部13が取得した通信品質である。また、この体験品質の達成値ηは、QoE(Qualify of Experience)であると考えることもできる。
η=F(q)
観測結果取得部15は、通信部11が行う無線通信に関するセンシング結果を含む観測結果を取得する。センシング結果は、例えば、周波数スペクトルであってもよく、時間領域における無線信号の強度(受信電力)の変化を示す情報であってもよく、スペクトログラムであってもよい。周波数スペクトルは、通信部11で受信された無線信号をフーリエ変換することによって取得できる。また、無線信号の強度の時間変化は、受信された無線信号の受信電力を時間領域において記録することによって取得できる。また、スペクトログラムは、通信部11で受信された無線信号を所定の時間ごとにフーリエ変換することによって得ることができる。そのフーリエ変換は、例えば、離散フーリエ変換(DFT)であってもよく、高速フーリエ変換(FFT)であってもよい。また、観測結果は、センシング結果以外の情報を含んでいてもよく、または、含んでいなくてもよい。また、センシング結果は、周波数スペクトルや、受信電力の時間変化、スペクトログラムから得られる情報であってもよい。その情報は、例えば、時間領域におけるビジー期間のパターンや、周波数領域における周波数の利用のパターンであってもよく、ビジー割合やアイドル割合であってもよく、連続したビジー状態の平均時間長であってもよく、周波数チャネルの使用・未使用を示す情報であってもよく、使用されている周波数チャネルにおいて無線通信を行っている送信源の種類を特定する情報であってもよく、周波数スペクトル等から得られるその他の情報であってもよい。なお、送信源の種類は、例えば、無線信号の帯域幅を用いることによって特定することができる。具体的には、無線LAN(IEEE802.11a規格)の1チャネルの帯域幅は20MHzであり、Bluetooth(登録商標)の1チャネルの帯域幅は1MHzであるため、周波数帯域幅に応じて、信号源の種類を特定することが可能となる。観測結果が、センシング結果以外の情報を含んでいる場合に、その情報も、通信部11が行う無線通信に関して観測された結果であることが好適である。その情報は、例えば、通信の品質に関する情報であってもよい。通信の品質に関する情報は、例えば、スループットや遅延、ジッタ、パケットロス率、ビットエラー率のいずれかであってもよく、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよい。また、観測結果は、無線通信制御装置1において観測された情報であってもよく、無線通信制御装置1の通信先の装置において観測された情報であってもよく、その両方であってもよい。観測結果が、通信先の装置において観測された情報である場合、または、その情報を用いて取得される場合には、観測結果取得部15は、通信部11が受信した、通信先の装置において観測された情報を用いて観測結果を取得してもよい。
受付部16は、状況情報を受け付ける。状況情報は、平常時または非常時を示す情報である。その状況情報によって、現在が平常時であるのか、非常時であるのかが示されることになる。非常時とは、多くの人が通信を行いたいと考える状況のことであり、例えば、地震や洪水、台風、火災等の災害時などである。その情報は、例えば、気象庁や他の官庁、管理者等において人手で設定されたものであってもよく、地震計や風速計、気圧計、雨量計等の計測機器等を用いて自動的に設定されたものであってもよい。受付部16は、例えば、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された情報を受け付けてもよく、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された情報を受信してもよい。なお、受付部16は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、入力デバイスやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受付部16は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
目標値生成部17は、観測結果を用いて、体験品質の目標とする値である目標値を生成する。なお、目標値生成部17は、例えば、受付部16が受け付けた状況情報をも用いて目標値を生成してもよく、通信部11が受信した制御情報をも用いて目標値を生成してもよい。本実施の形態では、目標値生成部17が、観測結果fと、状況情報eと、制御情報cとを用いて体験品質の目標値η0を生成する場合について説明する。なお、体験品質の目標値η0は、次のように、観測結果f、状況情報e、制御情報cを引数とする関数Gとして表現することもできる。
η0=G(f,e,c)
ここで、観測結果や、状況情報、制御情報を用いて体験品質の目標値を生成する処理について説明する。体験品質の目標値は、例えば、観測結果によって伝送路が空いていることが示される場合に、より高い値となり、伝送路が混雑していることが示される場合に、より低い値となってもよい。すなわち、関数Gは、観測結果に応じた伝送路の空き具合に対する増加関数であってもよい。目標値を用いた制御が行われることによって、結果として、伝送路の混雑状況に応じた通信が行われるようにするためである。なお、伝送路が混雑しているかどうかは、観測結果によって示されるビジー割合やアイドル割合によって判断してもよく、観測結果によって示される周波数帯域の使用状況によって判断してもよい。具体的には、関数Gは、ビジー割合に関する減少関数、すなわち、アイドル割合に関する増加関数であってもよい。また、例えば、関数Gは、利用されている周波数帯域(利用されている周波数チャネル数)に関する減少関数であってもよい。また、体験品質の目標値は、例えば、状況情報が平常時であることを示す場合に、より高い値となり、非常時であることを示す場合に、より低い値となってもよい。すなわち、任意のf,cについて、G(f,e=平常時,c)>G(f,e=非常時,c)であってもよい。非常時には、より多くのユーザが無線通信を行いたいと考えるため、目標値を低くしてより多くの通信機会が得られるようにするためである。また、体験品質の目標値は、例えば、制御情報によって通信の品質を下げることが指示される場合(例えば、通信チャネル数を減らすことが指示される場合や、信号帯域幅を狭くすることが指示される場合等)に、より低い値となり、通信の品質を上げることが指示される場合(例えば、通信チャネル数を増やすことが指示される場合や、信号帯域幅を広くすることが指示される場合等)に、より高い値となってもよい。すなわち、関数Gは、制御情報に応じた通信の品質を上げる程度に対する増加関数であってもよい。目標値を用いた制御が行われることによって、結果として、制御情報に応じた制御が行われるようにするためである。また、体験品質の目標値は、アプリケーションごとに生成されてもよい。その場合には、目標値生成部17は、例えば、ビデオ通信のように多くのデータを通信するアプリケーションについては、より高い値となる目標値を生成し、テキスト通信のように少ないデータを通信するアプリケーションについては、より低い値となる目標値を生成してもよい。なお、伝送路が空いている、混雑しているとは、それぞれ無線通信が空いている、混雑していることであると考えてもよい。
算出部18は、目標値と達成値との差を示す差情報を算出する。この差情報は、結果として両者の差の程度を知ることができる情報であればよく、例えば、目標値と達成値との差分であってもよく、目標値と達成値との比であってもよく、両者の差の程度を示すその他の情報であってもよい。本実施の形態では、差情報が両者の差である場合、すなわち、次式で示される場合について主に説明する。なお、体験品質の達成値や目標値がアプリケーションごとの情報である場合には、算出部18は、アプリケーションごとに差情報を算出してもよい。
差情報=目標値η0−達成値η
制御部19は、差情報の示す差が小さくなるように、観測結果を用いた無線リソースの割り当て、及び無線ネットワークトポロジーの変更の少なくとも一方の制御を行う。「差情報の示す差が小さくなるように」とは、差情報が目標値と達成値の差分である場合には、差情報が0に近づくようにという意味であり、差情報が目標値と達成値の比である場合には、差情報が1に近づくようにというという意味である。また、制御部19は、差情報の示す差が小さくなるように、観測結果を用いた無線リソースの割り当ての制御を行ってもよく、差情報の示す差が小さくなるように、無線ネットワークトポロジーの変更の制御を行ってもよく、その両方の制御を行ってもよい。なお、差情報の示す差が十分小さい場合、すなわち、体験品質の目標値と達成値が近似している場合には、制御部19は、差情報の示す差を小さくするための制御を行なわなくてもよい。また、制御部19は、観測結果に応じて、通信部11による送信を制御してもよい。具体的には、制御部19は、観測結果に応じて空いている周波数を特定し、その特定した周波数で送信するように通信部11を制御してもよい。また、制御部19は、すべての周波数が利用されている場合、または、通信に用いている周波数が利用されている場合には、センシング結果に応じて、周波数に空きの生じた後に無線信号を送信するように通信部11を制御してもよい。そのセンシングは、例えば、物理キャリアセンスであってもよく、仮想キャリアセンスであってもよい。そのセンシングは、例えば、観測結果取得部15によって行なわれてもよい。また、制御部19は、通信部11による無線信号の送信についてエラーが発生した場合、すなわち、その無線信号が送信先で適切に受信されなかった場合に、エラーとなった無線信号を再送するように通信部11を制御してもよい。制御部19による制御は、例えば、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)の制御であってもよい。なお、観測結果やセンシング結果に応じて無線信号の送信を制御することなどはすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。また、差情報がアプリケーションごとの情報である場合には、制御部19は、アプリケーションごとに制御を行ってもよい。
ここで、制御部19が無線リソースの割り当てを行う場合について説明する。無線リソースの割り当ては、例えば、通信部11が無線通信を行う周波数帯域の割り当て、通信部11が送信する無線信号の変調方式の選択、通信部11が送信する無線信号の符号化率の選択、通信部11が送信する無線信号の送信電力の選択、通信部11が送信する無線信号の送信時刻の選択、送信部11が送信する無線信号の送信期間の選択、通信部11が送信する無線信号の発射の向きの選択から選ばれる1以上のものであってもよく、その他の無線リソースの割り当てであってもよい。変調方式等を選択することは、変調方式等を決定することであってもよい。なお、無線信号の発射の向きの選択は、例えば、通信部11が2以上のアンテナを介して送信を行う場合には、送信で用いるアンテナの選択であってもよく、通信部11が2以上のモードに対応した2以上の偏波方向を有するアンテナを介して送信を行う場合には、その偏波方向に対応するモードの選択であってもよく、無線信号の発射の向きに関するその他の選択であってもよい。観測結果によって、伝送路が混雑していないことが示される場合であって、差情報によって、目標値の方が達成値よりも高いことが示される場合には、制御部19は、通信部11による通信により多くの無線リソースを割り当てる。具体的には、制御部19は、より広い周波数帯域を通信部11による通信に割り当ててもよく、伝送レートのより高い変調方式を割り当ててもよく、より長い送信期間を割り当ててもよい。また、観測結果によって、伝送路が混雑していないことが示される場合であって、差情報によって、目標値の方が達成値よりも低いことが示される場合には、制御部19は、通信部11による通信により少ない無線リソースを割り当ててもよい。具体的には、制御部19は、より狭い周波数帯域を通信部11による通信に割り当ててもよく、送信時刻までの期間をより長くしてもよく、より短い送信期間を割り当ててもよい。また、観測結果によって、伝送路が混雑していることが示される場合であって、差情報によって、目標値の方が達成値よりも高いことが示される場合には、制御部19は、伝送路の混雑が変わらないか、緩和され、通信部11による通信により多くの無線リソースを割り当てることができるように制御してもよい。具体的には、空いている周波数帯域(周波数チャネル)が存在するのであれば、使用する周波数を、その空いている周波数帯域に変更するように制御してもよい。また、達成値の低いこと(すなわち、通信品質の低いこと)が無線信号の衝突に起因する場合には、制御部19は、無線信号の伝送レートが低くなりすぎないように、その伝送レートに下限を設ける制御を行ってもよい。無線信号の衝突に応じて低い伝送レートが選択され、その結果として無線信号の長さが長くなることによって、送信機会が減少し、さらに無線信号の衝突を招くという悪循環に陥らないようにするためである。ここで、通信品質の低い原因が無線信号の衝突であるかどうかを判断する方法について簡単に説明する。無線信号が送信先の装置で受信されない理由(エラーの理由)としては、例えば、無線信号の衝突による場合と、SNRの悪化による場合とがある。したがって、SNRが高いにも関わらずエラーが発生した場合には、その原因は無線信号の衝突であると考えられる。また、混雑している状況においてエラーが発生した場合にも、その原因は無線信号の衝突であると推定することができる。したがって、通信品質が低い場合であって、SNRが高かったり、伝送路が混雑していたりする場合には、通信品質の低い原因が無線信号の衝突であると判断することができうる。また、達成値の低いことがSNRの悪化に起因する場合には、制御部19は、通信部11が送信する無線信号の送信電力がより高くなるように制御してもよい。また、観測結果によって、伝送路が混雑していることが示される場合であって、差情報によって、目標値の方が達成値よりも低いことが示される場合には、制御部19は、通信部11による通信により少ない無線リソースを割り当ててもよい。具体的には、制御部19は、より狭い周波数帯域を通信部11による通信に割り当ててもよく、より高い符号化率を割り当ててもよく、より混雑を緩和できる無線信号の発射の向きを割り当ててもよい。なお、無線リソースの割り当ては、受付部16が受け付けた状況情報をも用いて行われてもよい。制御部19は、例えば、状況情報によって平常時であることが示される場合には、通常の割り当てを行い、状況情報によって非常時であることが示される場合には、たとえ通信の品質が低くなったとしても、より通信機会が確保されるように無線リソースの割り当てを行ってもよい。具体的には、制御部19は、より狭い周波数帯域を通信部11による通信に割り当ててもよく、伝送レートのより低い変調方式を割り当ててもよく、より低い符号化率を割り当ててもよい。
次に、制御部19が無線ネットワークトポロジーの変更を行う場合について説明する。無線ネットワークトポロジーの変更は、通信部11が行う無線通信の通信先の変更、他の装置が行う無線通信の通信先の変更から選ばれる1以上のものであってもよい。差情報によって、目標値の方が達成値よりも高いことが示される場合であって、無線通信制御装置1が端末装置である場合には、制御部19は、通信部11が行う無線通信の通信先である無線基地局を変更してもよい。その変更は、例えば、より高い受信信号強度の得られる無線基地局に変更することであってもよく、よりスループットの高い無線通信を行うことができる無線基地局に変更することであってもよく、より混雑していない無線基地局に変更することであってもよい。混雑の程度は、例えば、無線基地局の送信するビーコンに、その無線基地局を介して通信を行っている端末装置の数に応じた情報が含まれている場合には、その情報を用いて判断してもよい。また、差情報によって、目標値の方が達成値よりも高いことが示される場合であって、無線通信制御装置1が無線基地局である場合には、制御部19は、通信先の端末装置が行う無線通信の通信先である無線基地局を、無線通信制御装置1から、他の無線基地局に変更するように、通信先の端末装置に指示を送信してもよい。その指示に応じて、通信部11の通信先の端末装置は、無線通信の通信先である無線基地局を、無線通信制御装置1から他の無線基地局に変更してもよい。その変更は、例えば、より高い受信信号強度の得られる無線基地局に変更することであってもよく、よりスループットの高い無線通信を行うことができる無線基地局に変更することであってもよく、より混雑していない無線基地局に変更することであってもよい。また、差情報によって、目標値の方が達成値よりも低いことが示される場合であって、無線通信制御装置1が端末装置である場合には、制御部19は、通信部11が行う無線通信の通信先である無線基地局を変更してもよい。その変更は、例えば、より混雑していない無線基地局に変更することであってもよい。他の無線機の体験品質を向上させるようにするためである。また、差情報によって、目標値の方が達成値よりも低いことが示される場合であって、無線通信制御装置1が無線基地局である場合には、制御部19は、他の無線基地局と通信している端末装置の通信先を、無線通信制御装置1に変更するように制御してもよい。具体的には、制御部19は、端末装置の通信先を無線通信制御装置1にする旨のメッセージを他の無線基地局に送信してもよい。そして、そのメッセージに応じて、他の無線基地局が、通信先の端末装置に、通信先の無線基地局を無線通信制御装置1に変更する旨の指示を送信し、それに応じて端末装置の通信先が無線通信制御装置1に変更されてもよい。
処理部20は、受信された情報、送信される情報に関する処理を行う。処理部20は、その処理をアプリケーションごとに行ってもよい。例えば、ボイス通信が行われている場合には、処理部20は、ボイス通信に応じた送信対象の情報を送信キュー12に蓄積したり、通信部11が受信したボイス通信に応じた情報を受け取り、その情報に応じた音声出力の処理を行ったりしてもよい。なお、送信キュー12において、アプリケーションごとにキューイングを行うことができる場合には、処理部20は、アプリケーションごとに情報を送信キュー12に蓄積してもよい。また、アプリケーションごとに体験品質の目標値の生成等が行われる場合には、処理部20は、現在送信されている情報に対応するアプリケーションを示す情報(例えば、アプリケーションのID等)を目標値生成部17等に渡してもよい。
図2は、本実施の形態による無線通信制御装置1を含む無線通信システムの一例を示す図である。図2において、無線通信制御装置1と、無線通信装置2,3,4とが無線通信システムに含まれており、無線通信制御装置1と無線通信装置2とが、アプリケーションAに関する情報の送受信を行っているとする。すると、無線通信制御装置1は、その情報の送受信において無線信号が伝送される無線ネットワークの観測結果を取得し、また、その無線ネットワークを介して送信される制御情報を受信する。また、無線通信制御装置1は、状況情報をも受け付ける。そして、それらに応じて体験品質の目標値を生成し、また通信品質に応じた体験品質の達成値を取得し、両者の差が小さくなるように、無線リソースの制御や、無線ネットワークトポロジーの制御等を行う。
次に、無線通信制御装置1の動作について図3A、図3Bのフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)通信品質取得部13は、通信品質を取得するかどうか判断する。そして、通信品質を取得する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS103に進む。例えば、通信品質取得部13は、通信品質を取得すると定期的に判断してもよく、所定のイベント(例えば、スループット等が測定されたことや、通信品質が受信されたことなど)に応じて通信品質を取得すると判断してもよい。
(ステップS102)通信品質取得部13は、通信部11が行う無線通信に関する通信品質を取得する。そして、ステップS101に戻る。取得された通信品質は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS103)観測結果取得部15は、観測結果を取得するかどうか判断する。そして、観測結果を取得する場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS105に進む。例えば、観測結果取得部15は、観測結果を取得すると定期的に判断してもよく、所定のイベント(例えば、観測結果が受信されたことなど)に応じて観測結果を取得すると判断してもよい。
(ステップS104)観測結果取得部15は、観測結果を取得する。そして、ステップS101に戻る。なお、取得された観測結果は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS105)受付部16は、状況情報を受け付けたかどうか判断する。そして、状況情報を受け付けた場合には、ステップS106に進み、そうでない場合には、ステップS107に進む。
(ステップS106)受付部16は、受け付けた状況情報を図示しない記録媒体に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS107)通信部11は、無線信号を受信したかどうか判断する。そして、無線信号を受信した場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS109に進む。
(ステップS108)通信部11は、受信した無線信号に応じた処理を行う。そして、ステップS101に戻る。例えば、制御情報を受信した場合には、通信部11は、その受信した制御情報を目標値生成部17に渡してもよい。また、例えば、観測結果を受信した場合には、通信部11は、その受信した観測結果を観測結果取得部15に渡してもよい。また、例えば、その他の情報を受信した場合には、通信部11は、その受信した情報を処理部20に渡してもよい。
(ステップS109)制御部19は、無線リソースの割り当てなどに関する制御を行うかどうか判断する。そして、その制御を行う場合には、ステップS110に進み、そうでない場合には、ステップS114に進む。例えば、制御部19は、制御を行うと定期的に判断してもよく、所定のイベント(例えば、通信品質や観測結果、制御情報、状況情報が更新されたことなど)に応じて制御を行うと判断してもよい。
(ステップS110)達成値取得部14は、通信品質取得部13が取得した最新の通信品質を用いて、体験品質の達成値を取得する。その取得された体験品質の達成値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS111)目標値生成部17は、観測結果取得部15が取得した最新の観測結果と、受付部16が受け付けた最新の状況情報と、通信部11が受信した最新の制御情報とを用いて、体験品質の目標値を生成する。その生成された体験品質の目標値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS112)算出部18は、体験品質の目標値と、体験品質の達成値との差を示す差情報を算出する。その算出された差情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS113)制御部19は、算出部18が算出した最新の差情報の示す差が小さくなるように、無線リソースの割り当ての制御や、無線ネットワークトポロジーの変更の制御を行う。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS114)通信部11は、無線信号を送信するかどうか判断する。そして、送信する場合には、ステップS115に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。例えば、通信部11は、送信キュー12にキューイングされている情報がある場合には、無線信号を送信すると定期的に判断してもよい。
(ステップS115)観測結果取得部15は、キャリアセンスを行うかどうか判断する。そして、キャリアセンスを行う場合には、ステップS116に進み、そうでない場合には、ステップS117に進む。観測結果取得部15は、例えば、前回のキャリアセンスからあらかじめ決められた時間以上、経過している場合に、キャリアセンスを行うと判断してもよく、伝送路品質の低下が検出された場合に、キャリアセンスを行うと判断してもよく、または、その他のタイミングでキャリアセンスを行うと判断してもよい。
(ステップS116)観測結果取得部15は、通信部11が受信した無線信号を用いてキャリアセンスを行う。観測結果取得部15は、例えば、図示しない記録媒体で記憶されている最新の受信信号強度等を用いてキャリアセンスを行ってもよい。
(ステップS117)通信部11は、最新のキャリアセンスの結果を用いた制御部19の制御に応じて無線信号を送信する。そして、ステップS101に戻る。例えば、通信部11は、キャリアセンスの結果がアイドル状態であった場合には無線信号を送信し、キャリアセンスの結果がビジー状態であった場合には無線信号を送信しなくてもよい。また、無線信号を送信する場合には、通信部11は、制御部19によって制御される変調方式や符号化率、周波数帯域、送信電力等で無線信号を送信してもよい。
なお、図3A、図3Bのフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。また、通信品質の取得のタイミングや、観測結果の取得のタイミングは、図3Aのフローチャートと異なっていてもよい。例えば、制御を行うと判断された場合に、通信品質が取得され、観測結果が取得されてもよい。また、達成値の取得と、目標値の生成との順序は問わない。例えば、目標値を生成した後に、達成値を取得してもよい。このように、図3A、図3Bのフローチャートには、ある程度の任意性があることになる。
次に、本実施の形態による無線通信制御装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、説明を簡単にするため、制御部19が無線リソースの割り当てに関する制御のみを行う場合について説明する。
まず、伝送路が非常に空いている状態で無線通信が行われていたとする。また、受付部16で受け付けられた最新の状況情報は、「平常時」を示していたとする(ステップS105,S106)。すると、通信品質取得部13は、高い通信品質を取得し、図示しない記録媒体に蓄積する(ステップS101,S102)。また、観測結果取得部15は、通信部11で受信された無線信号を用いて、スペクトログラムである観測結果を取得し、図示しない記録媒体に蓄積したとする(ステップS103,S104)。また、通信部11は、無線通信の品質を変更しなくてよい旨の制御情報を受信し、その制御情報を目標値生成部17に渡したとする(ステップS107,S108)。目標値生成部17は、受け取った制御情報を、図示しない記録媒体に蓄積する。
その後、制御を行うと判断すると、制御部19は、図示しない経路を介して達成値取得部14と目標値生成部17とに、それぞれ達成値の取得の指示、及び目標値の生成の指示を出す(ステップS109)。達成値取得部14は、その指示に応じて、図示しない記録媒体で記憶されている通信品質を読み出し、図4Aで示される関数を用いて、体験品質の達成値ηを算出する(ステップS110)。ここで、達成値の算出に用いられた通信品質は、図4Aの第2の範囲に存在しており、非常に高い体験品質の達成値が算出されたものとする。また、目標値生成部17は、制御部19からの指示に応じて、図示しない記録媒体で記憶されている観測結果と、状況情報と、制御情報とを用いて、体験品質の目標値η0を生成する(ステップS111)。観測結果によって、伝送路が空いていることが示され、状況情報が「平常時」を示すものであり、制御情報が品質を変更しなくてもよい旨を示すものであるため、生成された体験品質の目標値η0は、高いものであったとする。その後、算出部18は、差情報(=η0−η)を算出し、制御部19に渡す(ステップS112)。その差情報は、0に近い値であったとする。すると、制御部19は、差情報に応じた無線リソースの割り当ての変更を行わず、観測結果に応じた送信の制御のみを行う(ステップS113)。
その後、無線通信を行う装置が増えてきた結果として、伝送路が混雑してきたとする。また、それに応じて、通信部11は、品質を下げる旨の制御情報を受信したとする(ステップS107,S108)。また、それに応じて通信品質取得部13が取得した通信品質も少し低下したとする(ステップS101,S102)。ただし、その通信品質は、図4Aの第2の範囲内であったとする。そのような状況で、制御部19が無線リソースの割り当ての制御を行うと判断すると(ステップS109)、達成値取得部14は、上述の達成値とほぼ同じ体験品質の達成値ηを算出する(ステップS110)。一方、目標値生成部17は、上述の目標値よりも低い体験品質の目標値η0を生成する(ステップS111)。その結果、η>η0となり、算出部18は負の値の差情報(=η0−η)を算出して制御部19に渡す(ステップS112)。観測結果によって伝送路が混雑していることが示され、また差情報によって目標値の方が低いことが示されるため、制御部19は、通信部11の周波数帯域を狭くしたり、符号化率を上げたりする制御を行う。その結果、無線通信制御装置1による情報の送信に応じて占有される周波数領域や時間領域の幅や長さが短くなり、混雑が緩和されるようになる。
以上のように、本実施の形態による無線通信制御装置1によれば、体験品質の目標値と達成値とが近づくように制御を行うことにより、限られた無線リソースを複数のユーザ間で共用したり、無線ネットワークトポロジーを適切なものに変更したりすることができる。具体的には、体験品質の達成値が目標値より低い場合には、その達成値が目標値に近づくように無線リソースの確保等を行うため、無線通信制御装置1において、体験品質を満足させるために必要な無線通信の品質を確保することができる。なお、その場合であっても、体験品質の達成値が目標値を超えると、それ以上に余分な無線リソースの確保等は行わないため、他の無線機に与える影響を最小限にすることができる。また、体験品質の達成値が目標値より高い場合には、無線通信制御装置1において、自主的に無線リソースの開放等を行うため、他の無線機と、無線リソースを分け合うことができるようになる。このように、通信品質を用いてその制御を行うのではなく、体験品質を用いてその制御を行うことによって、ユーザの満足度をできるだけ維持しながらも、リソースを分け合うことが可能となる。例えば、図4A等で示されるように、通信品質と体験品質との関係は線形ではなく、一定の通信品質の低下が、体験品質を同程度低下させるとは言えない。具体的には、通信品質が第2の範囲内で変化する場合には、ほぼ体験品質が変わらないため、体験品質を基準に制御を行う場合には、通信品質を大きく減少させることにより多くの無線リソースを開放したとしても、体験品質にはあまり影響を与えないこともあり、より効果的な制御を行うことが可能となる。したがって、限られた無線リソースの下で、体験品質をできるだけ維持しつつも、ユーザ数を増やすことが可能となりうる。また、状況情報を用いた目標値の生成等を行うことによって、平常時と非常時とで異なる制御を行うことができ、状況に応じたより適切な対応が可能となる。具体的には、災害時などのような非常時には、アプリケーション品質をある程度犠牲にしても、非常に混み合う環境において、無線通信が確立することを優先することができる。その結果、そのような状況において、とりあえずつながればよいというユーザの要求に柔軟に応えることができるようになる。
なお、本実施の形態において、達成値取得部14は、受付部16が受け付けた状況情報に応じて、体験品質の達成値の取得に用いる関数を変更してもよい。具体的には、図4Cで示されるように、状況情報が非常時であることを示す場合には、同じ通信品質であったとしても、平常時よりも、より体験品質が高くなる関数を用いてもよい。このようにすることで、同じ通信品質であっても、非常時の体験品質の達成値は高い値となる。その結果、より容易に達成値が目標値を上回ることになり、無線リソースをより多くのユーザ間で分け合うことができるようになる。
また、本実施の形態において、達成値取得部14は、アプリケーションに応じて、体験品質の達成値の取得に用いる関数を変更してもよい。具体的には、通信量が少なくてもよいアプリケーション(例えば、テキスト通信等)については、図4Cの非常時の関数と同様に、同じ通信品質であっても、より高い達成値となる関数を用い、通信量が多いアプリケーション(例えば、ビデオ通信等)については、図4Cの平常時の関数と同様に、同じ通信品質であっても、より低い達成値となる関数を用いてもよい。
また、本実施の形態において、アプリケーションは、個々のアプリケーション(例えば、ボイス通信を行う特定のアプリケーションや、ビデオ通信を行う特定のアプリケーション等)であってもよく、または、アプリケーションの種類(例えば、ボイス通信やビデオ通信等)であってもよい。また、本実施の形態では、体験品質の達成値や目標値などがアプリケーションごとの情報である場合や、無線リソースの割り当て等の制御をアプリケーションごとに行う場合について言及したが、そうでなくてもよい。アプリケーションに関係なく情報の取得や生成、制御等を行ってもよく、すべてのアプリケーションを考慮して情報の取得や生成、制御等を行ってもよい。後者の場合には、例えば、個々のアプリケーションの体験品質の達成値や目標値等を総合した達成値等を用いてもよく、個々のアプリケーションについて総合された差情報を用いた制御が行われてもよい。なお、個々のアプリケーションについて総合された情報は、例えば、アプリケーションごとの情報について重み付けをした情報であってもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による無線通信制御装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信制御装置は、アプリケーションごとの達成値や目標値等を用いて、無線リソースの割り当ての制御を行うものである。
本実施の形態による無線通信制御装置1の構成も、図1で示されるものと同様である。ただし、通信品質や達成値、目標値、差情報は、アプリケーションごとの情報であるとする。すなわち、通信品質取得部13は、通信部11が行う無線通信の通信品質をアプリケーションごとに取得する。また、達成値取得部14は、体験品質の達成値をアプリケーションごとに生成する。また、目標値生成部17は、体験品質の目標とする目標値をアプリケーションごとに生成する。また、算出部18は、目標値と達成値との差を示す差情報をアプリケーションごとに算出する。それ以外の構成及び動作は、制御部19が後述する制御を行う以外、実施の形態1と同様であり、その詳細な説明を省略する。
制御部19は、アプリケーションの優先度と、そのアプリケーションの達成値との積を、達成値が目標値に達していることを示す差情報に対応する各アプリケーションについて加算した合計値を算出する。そして、制御部19は、その合計値が大きくなるように無線リソースの割り当てを行う。なお、制御部19は、アプリケーションごとに設定された優先度を用いて合計値を算出してもよく、アプリケーションの種類に依存する優先度を用いて合計値を算出してもよく、受付部16が受け付けた状況情報に依存する優先度を用いて合計値を算出してもよい。すなわち、アプリケーションの優先度は、アプリケーションごとに設定されたものでもよく、アプリケーションの種類に依存してもよく、状況情報に依存してもよい。優先度がアプリケーションの種類に依存する場合には、通信を優先したいアプリケーションの優先度が、そうでないプリケーションの優先度よりも高く設定されていてもよい。例えば、ビデオ通信の優先度が、ボイス通信の優先度よりも高く設定されていてもよい。また、優先度が状況情報に依存する場合には、例えば、ボイス通信のように非常時に重要となるアプリケーションについては、非常時の優先度が、平常時の優先度よりも高く設定されており、例えば、エンターテイメント系の通信のように非常時に重要でないアプリケーションについては、非常時の優先度が、平常時の優先度よりも低く設定されていてもよい。また、アプリケーションの優先度は、アプリケーションの種類と状況情報との両方に依存してもよい。
具体的には、制御部19は、その合計値として、次式の値を算出してもよい。
ここで、iは、アプリケーションを識別するために用いられる番号である。なお、無線通信制御装置1が、ステーション等の端末装置である場合には、iに関する和は、その端末装置と無線基地局との間の無線通信を行っている各アプリケーションに関する和であってもよい。また、無線通信制御装置1が、アクセスポイント等の無線基地局である場合には、iに関する和は、その無線基地局と各端末装置との間の無線通信を行っている各アプリケーションに関する和であってもよい。a
iは、アプリケーションiに対応するアプリケーションの種類である。eは、前述のように、状況情報である。w(a
i,e)は、アプリケーションの種類a
iと、状況情報eとに対応するアプリケーションiの優先度である。なお、各アプリケーションに関するアプリケーションの種類a
iを示す情報は、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、w(a
i,e)は、例えば、a
iやeにテーブル等によって対応付けられている情報であってもよく、a
iやeを引数とする関数の値であってもよい。また、重要なアプリケーションの種類の優先度は、高い値に設定されていることが好適である。また、優先度w(a
i,e)は、優先度が高いほど、大きな値を有するものであるとする。また、p(x)は、ステップ関数であり、負の引数xについては、p(x)=0となり、非負の引数xについては、p(x)=1となる。また、η
iは、アプリケーションiの体験品質の達成値であり、η
0,iは、アプリケーションiの達成品質の目標値である。したがって、アプリケーションiの差情報が、目標値η
0,i−達成値η
iである場合には、関数pの引数として、差情報に−1を掛けた値を用いてもよい。上記式から、制御部19が算出する合計値η'は、達成値が目標値に達していることを示す差情報に対応するアプリケーションの達成値と、そのアプリケーションの優先度との積を、各アプリケーションについて加算したものであると言うこともできる。なお、上記式を変形すると、次式のようになる。次式において、{j|p(η
j−η
0,j)=1}は、p(η
j−η
0,j)=1を満たすすべてのjの集合である。その次式から、合計値η'が、アプリケーションの優先度と、そのアプリケーションの達成値との積を、達成値が目標値に達していることを示す差情報に対応する各アプリケーションについて加算したものであることは明らかである。
なお、上記各式では、算出部18が算出する差情報が目標値と達成値との差である場合について示しているが、そうでなくてもよい。前述のように、差情報は、目標値と達成値との比であってもよい。その場合には、例えば、達成値/目標値(=η
j/η
0,j)が1以上であるアプリケーションについてのみ、すなわち、i∈{j|η
j/η
0,j≧1}についてのみ和をとるようにしてもよい。また、上記各式では、達成値が目標値に達しているとは、達成値≧目標値であることであるとしているが、そうでなくてもよい。すなわち、達成値が目標値未満であっても、実質的に目標値とほぼ同等の値であれば、達成値が目標値に達しているとしてもよい。すなわち、達成値+ε≧目標値である場合に、達成値が目標値に達しているとしてもよい。その場合には、合計値η'の算出式は、例えば、次式のようになる。
ここで、εは、達成値+ε≧目標値が満たされた場合に、達成値が目標値以上であるとできるほど小さい値である。また、εは通常、正の値であるが、負の値となってもよい。
次に、制御部19が、合計値η'を用いて、無線リソース等の制御を行う場合について説明する。上記合計値の関数は一般に非線形計画問題となるため、何らかの解法や、近似解を得る方法、あるいはモデルの簡略化などの検討が必要となる。ここでは、達成値取得部14が取得した達成値等を用いて、合計値η'が大きくなるように制御する方法について説明する。
制御部19は、合計値η'を用いて、各アプリケーションに無線リソースを割り当てるかどうか、すなわち、各アプリケーションに無線通信をさせるかどうかを制御する。本実施の形態では、その制御が無線リソースの割り当てとなる。具体的には、制御部19は、あるアプリケーションの通信を終了させる、継続させる、開始させる、または他のアプリケーションの通信に切り替えるなどの制御を実際に、または仮想的に行ってもよい。そして、制御部19は、その実際または仮想の制御によって合計値η'が増加した場合には、その制御、すなわちアプリケーションの通信の終了等の制御を確定して、次の制御に進み、その制御によって合計値η'が減少した場合には、その制御、すなわちアプリケーションの通信の終了等の制御を元に戻して、次の制御に進んでもよい。なお、その制御によって合計値η'が変化しない場合には、その制御を確定して、次の制御に進んでもよく、または、その制御を元に戻して、次の制御に進んでもよい。ここで、制御を確定するとは、実際に制御を行っている場合には、その制御後の状態を継続することであり、仮想的に制御を行っている場合には、その仮想的な制御と同じ制御を実際に行うことである。また、制御を元に戻すとは、実際に制御を行っている場合には、その制御前の状態となるように制御することであり、仮想的に制御を行っている場合には、その制御と同じ制御を実際には行わないことであり、また仮想的な状態を破棄または制御前に戻すことである。なお、アプリケーションの通信を終了させる場合には、合計値η'が増加するまで、アプリケーションを順次、終了させてもよい。また、仮想的な制御における目標値と通信品質と達成値の取得について簡単に説明する。アプリケーションの目標値は、実際にアプリケーションの通信が行われていなくても生成できるため、仮想的に通信を開始させる場合でも、所望のアプリケーションの目標値を取得可能である。その目標値の取得は、例えば、目標値生成部17によって行われてもよい。また、通信品質は、新たな通信の開始や現在の通信の終了によって変化し得る。したがって、厳密には、新たな通信の開始等に応じた変化を考慮して通信品質を取得すべきであるが、ここでは、そこまでの考慮を行わなくてもよい。すなわち、現状の通信品質に応じて、仮想的な通信品質の取得を行ってもよい。なお、あるアプリケーションについて通信品質が取得されていない場合には、そのアプリケーションの通信品質として、無線通信全体の通信品質や、そのアプリケーションと同じまたは類似する種類のアプリケーションの通信品質が取得されてもよい。例えば、ボイス通信が行われていない場合には、その時点で行われている無線通信全体の通信品質を、ボイス通信の通信品質としてもよい。また、アプリケーションの達成値は、前述のようにして取得されたアプリケーションの通信品質を用いて生成されてもよい。その達成値の取得は、例えば、達成値取得部14によって行われてもよい。上述したような制御が繰り返されることにより、合計値η'が増加する制御のみが実行されることになり、制御が繰り返されるごとに合計値η'が増加することになる。その結果、適切な無線リソースの割り当てが行われるようになり得る。なお、上述の制御において、制御部19は、通信中の各アプリケーションについて順番に、通信を終了させる制御を、実際にまたは仮想的に行ってもよい。また、制御部19は、通信を開始したい各アプリケーションについて順番に、通信を開始させる制御を、実際にまたは仮想的に行ってもよい。また、制御部19は、通信中のアプリケーションと、通信を開始したいアプリケーションとの各ペアについて順番に、通信するアプリケーションを切り替える制御を、実際にまたは仮想的に行ってもよい。ここで、上記合計値の式は、優先度の高いアプリケーションが目標値に達した通信を行うほど高い値となるため、通信を終了させる場合には、優先度の低いアプリケーションの通信を終了させたり、達成値が目標値に達していないアプリケーションを終了させたりすることが好適である。また、通信を開始させたり、継続させたりする場合には、優先度の高いアプリケーションの通信を開始させたり、継続させたり、達成値が目標値に達しているアプリケーションの通信を開始させたり、継続させたりすることが好適である。また、あるアプリケーションの通信を他のアプリケーションの通信に切り替える場合には、通信を終了させるのにふさわしいアプリケーションと、通信を開始させるのにふさわしいアプリケーションとのペアを切り替えることが好適である。また、ある制御が実際に行われてから、その制御に応じて体験品質の達成値が変化し、合計値η'が変化するまでに少し時間のかかることがある。したがって、実際の制御を行う場合には、制御部19は、制御の結果、合計値η'が増加したか、減少したかの判断を、制御を行ってから、ある期間が経過した後に行ってもよい。その期間は、例えば、あらかじめ決められた期間であってもよく、合計値η'の単位時間の変化がしきい値よりも小さくなるまでの期間であってもよい。なお、ここで説明した制御部19による制御は一例であり、結果として、アプリケーションの優先度と、そのアプリケーションの達成値との積を、達成値が目標値に達していることを示す差情報に対応する各アプリケーションについて加算した合計値が大きくなるように無線リソースが割り当てられるのであれば、その方法は問わない。
なお、本実施の形態による無線通信制御装置1の動作は、ステップS110〜S112において、アプリケーションごとに達成値や目標値、差情報の算出を行い、ステップS113において、上述のように制御を行う以外、図3A,図3Bのフローチャートと同様であり、その詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態による無線通信制御装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、仮想的な制御ではなく、実際の制御が行われるものとする。また、この具体例では、アプリケーションの種類と状況情報とに応じた優先度は、次のように定められているものとする。
w(ビデオ通信,平常時)=8
w(ボイス通信,平常時)=3
w(その他,平常時)=5
w(ビデオ通信,非常時)=2
w(ボイス通信,非常時)=8
w(その他,非常時)=5
まず、非常に空いている状況で無線通信が行われていたとする。また、受付部16で受け付けられた最新の状況情報は、「平常時」を示していたとする(ステップS105,S106)。すると、通信品質取得部13は、高い通信品質qiをアプリケーションごとに取得し、図示しない記録媒体に蓄積する(ステップS101,S102)。また、観測結果取得部15は、通信部11で受信された無線信号を用いて、スペクトログラムである観測結果を取得し、図示しない記録媒体に蓄積したとする(ステップS103,S104)。また、通信部11は、無線通信の品質を変更しなくてよい旨の制御情報を受信し、その制御情報を目標値生成部17に渡したとする(ステップS107,S108)。目標値生成部17は、受け取った制御情報を、図示しない記録媒体に蓄積する。
その後、制御を行うと判断すると、制御部19は、図示しない経路を介して達成値取得部14と目標値生成部17とに、それぞれ達成値の取得の指示、及び目標値の生成の指示を出す(ステップS109)。達成値取得部14は、その指示に応じて、図示しない記録媒体で記憶されているアプリケーションごとの通信品質qiを読み出し、図4Aで示される関数を用いて、体験品質の達成値ηi=F(qi)をアプリケーションごとに算出する(ステップS110)。ここで、達成値ηiの算出に用いられた各通信品質qiは、図4Aの第2の範囲に存在しており、非常に高い体験品質の達成値が算出されたものとする。また、目標値生成部17は、制御部19からの指示に応じて、図示しない記録媒体で記憶されている観測結果と、状況情報と、制御情報とを用いて、体験品質の目標値η0,iをアプリケーションごとに生成する(ステップS111)。観測結果によって、伝送路が空いていることが示され、状況情報が「平常時」を示すものであり、制御情報が品質を変更しなくてもよい旨を示すものであるため、生成された体験品質の各目標値η0,iは、高いものであったとする。その後、算出部18は、差情報(=η0,i−ηi)をアプリケーションごとに算出し、制御部19に渡す(ステップS112)。その差情報は、0に近い負の値であったとする。すると、制御部19は、上述の合計値η'を算出し、その合計値が増大するように制御を行う。具体的には、この状況で何らかのアプリケーションの通信を終了させると、それだけ合計値η'が減少するため、通信の終了は行われないことになる。一方、新たな通信が開始されると、それだけ合計値η'が増加するため、通信の開始は行われることになる(ステップS113)。
その後、無線通信を行う装置が増えてきた結果として、伝送路が混雑してきたとする。また、それに応じて、品質を下げる旨の制御情報を受信したとする(ステップS107,S108)。また、それに応じて通信品質取得部13が取得したアプリケーションごとの通信品質も低下し、第1の範囲になったとする(ステップS101,S102)。そのような状況で、制御部19が無線リソースの割り当ての制御を行うと判断すると(ステップS109)、達成値取得部14は、上述の達成値よりも低い体験品質の達成値ηiをアプリケーションごとに算出する(ステップS110)。また、目標値生成部17も、上述の目標値よりも低い体験品質の目標値η0,iを生成する(ステップS111)。ここで、達成値の低下の方が、目標値の低下よりも大きかったものとする。すると、各アプリケーションについて、ηi<η0,iとなり、算出部18は正の値の差情報(=η0,i−ηi)を算出して制御部19に渡す(ステップS112)。その結果、制御部19が算出する合計値η'も、非常に小さい値となる。そのため、制御部19は、優先度の低いボイス通信や、その他の通信の少なくとも一部を切断し、ビデオ通信が優先されるようにする(ステップS113)。その制御の結果、ビデオ通信の達成値が目標値を上回り、合計値η'が増加したとする(ステップS109〜S112)。すると、次の制御のタイミングで、制御部19は、その制御に応じた変更を確定し、その後、他のボイス通信を切断したり、新たなビデオ通信を開始したりするなどの制御を行うことになる(ステップS113)。このようにして、優先度の高いアプリケーションに対して優先的に無線リソースを割り当てる制御が行われることになる。なお、状況情報が平常時から非常時に変わると(ステップS105,S106)、それに応じて、各アプリケーションの優先度が変更されることになる。したがって、そのような状況において伝送路が混雑すると、優先度の高いボイス通信に対して優先的に無線リソースの割り当てが行われ、ビデオ通信は切断されることになる。その結果、非常時には、動画配信などのビデオ通信を行えなくなる代わりに、電話等のボイス通信を行うことができるようになる。
以上のように、本実施の形態による無線通信制御装置1によれば、無線リソースが不足した場合に、より重要なアプリケーションに対して優先的に無線リソースを割り当てることができるようになる。したがって、無線リソースが不足した状況において、多くのアプリケーションが無線通信を行うことによってすべての無線通信が不可能になる共倒れを回避することができる。また、アプリケーションの種類に依存する優先度を用いることによって、アプリケーションごとに優先度を設定する必要がなくなり、アプリケーションの管理が容易となる。また、平常時と非常時では、優先されるべきアプリケーションが異なっていると考えられるため、状況情報に依存する優先度を用いることによって、そのような状況の変化に適切に対応した制御が可能となる。
なお、本実施の形態では、アプリケーションごとに通信の可否を切り替えることによって、合計値η'が増加するように制御する場合について説明したが、さらに、実施の形態1での制御も組み合わせてもよい。すなわち、実施の形態2による無線リソースの割り当てを行うことによって、無線通信を行うかどうかをアプリケーションごとに制御し、無線通信を行うアプリケーションについて、実施の形態1による無線リソースの割り当てや無線ネットワークトポロジーの変更の制御を行ってもよい。具体的には、達成値が目標値に達しているアプリケーションについて、両者の差が小さくなるように制御を行ってもよい。このようにすることで、優先度に応じて重要なアプリケーションによる無線通信を優先させることができると共に、無線通信を行っているアプリケーションで、限られた無線リソースを適切に分け合うことができるようになる。
また、本実施の形態において、アプリケーションごとの目標値は、例えば、
η0,i=Gi(f,e,c)
のように、アプリケーションごとの関数によって生成されるものであってもよく、または、
η0,i=G(ai,f,e,c)
のように、アプリケーションの種類aiに依存した目標値であってもよい。
また、本実施の形態において、アプリケーションの優先度は、アプリケーションごとに設定されるものであってもよい。すなわち、その優先度は、wi(e)であってもよい。また、アプリケーションの優先度は、そのアプリケーションを使用するユーザの種別uに依存してもよい。すなわち、アプリケーションの優先度は、wi(u,e)であってもよい。例えば、警察や消防等の公共性や緊急性の高いユーザの種別の優先度は、一般のユーザの種別の優先度よりも高く設定されていてもよい。
また、上記各実施の形態では、受付部16が状況情報を受け付ける場合について説明したが、そうでなくてもよい。状況情報の受け付けが行われない場合には、無線通信制御装置1は、受付部16を備えていなくてもよい。なお、状況情報の受け付けが行われない場合には、例えば、アプリケーションの優先度は、状況情報に依存しないwiや、w(ai)等であってもよい。
また、上記各実施の形態では、達成値取得部14が通信品質を用いて体験品質の達成値を取得する場合について説明したが、そうでなくてもよい。達成値取得部14は、通信品質を用いないで体験品質の達成値を取得してもよい。その場合には、無線通信制御装置1は、通信品質取得部13を備えていなくてもよい。また、その場合には、達成値取得部14は、ユーザによる通信経路の評価に応じて、体験品質の達成値を取得してもよい。具体的には、無線通信制御装置1は、ユーザによる無線通信の評価を受け付けてもよい。無線通信制御装置1が、ユーザの操作する装置である場合には、ユーザによる通信経路の評価の受け付けは、入力デバイス等を介した情報の受け付けであってもよい。また、無線通信制御装置1が、ユーザの操作する装置ではない場合には、その評価の受け付けは、送信された評価の受信であってもよい。その受信は、通信部11を介してなされてもよい。そして、達成値取得部14は、その評価を用いて体験品質の達成値を取得してもよい。その評価は、例えば、ビデオや音声、テキスト等の通信にユーザが満足しているかどうかを示す情報であってもよい。その評価は、満足・不満足のように2段階の情報であってもよく、満足・普通・不満足等のように3段階の情報であってもよく、4段階以上の情報であってもよい。例えば、ビデオや音声が途切れたり、ノイズが多かったりする場合には、ユーザによる通信経路の評価は「不満足」となり、そうでない場合には、ユーザによる通信経路の評価は「満足」となる。なお、ユーザによる評価「不満足」を一定時間以上受け付けていない場合に、ユーザによる評価が「満足」であると考えてもよい。通信品質取得部13は、満足であることを示す評価が多いほど値が高くなり、不満足であることを示す評価が多いほど値が低くなるように体験品質の達成値を取得してもよい。なお、体験品質の達成値がアプリケーションごとの情報である場合には、あるアプリケーションに対応する体験品質の達成値は、そのアプリケーションに関するユーザの評価を用いて取得されてもよい。
また、上記各実施の形態において、例えば、無線基地局は、その無線基地局と無線通信を行う複数の無線通信制御装置1から、体験品質の達成値を収集し、同一の周波数帯を共用する自他無線機間で無線リソースの融通を行ってもよい。その場合には、全体の体験品質の達成値を、個々の体験品質の達成値から算出し、それを指標にして、複数の無線通信制御装置1に関する無線リソースの割り当ての制御を行ってもよい。また、上記各実施の形態における制御を行っても所望の体験品質を実現できない場合には、体験品質の目標値を増加させることによって、より多くの無線リソースを獲得したり、より体験品質が上がるように無線ネットワークトポロジーを変更したりするようにしてもよい。
また、上記各実施の形態において、通信部11が制御情報を受信する場合について説明したが、その制御情報の送信について簡単に説明する。制御情報を送信する装置は、無線通信に関する品質等を取得し、品質が向上するように、制御情報を送信してもよい。具体的には、その装置は、無線通信に関する品質が悪い場合には、周波数帯域幅を狭くする旨の制御情報を送信してもよい。また、その装置は、セル内で無線通信を行う無線機の台数がしきい値よりも多くなった場合には、周波数帯域幅を狭くする旨の制御情報を送信してもよい。また、上記各実施の形態では、非常時が災害時である場合について主に説明したが、年末年始等のように、多くの人が通信を行いたいと考えるイベントの発生時も、非常時に含まれると考えてもよく、または、そうでなくてもよい。
また、上記各実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
また、上記各実施の形態において、無線通信制御装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態1における無線通信制御装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、無線通信を行う通信部を備えた無線通信制御装置において、コンピュータを、通信部が行う無線通信に関する品質であり、ユーザの体験に応じた品質である体験品質の達成値を取得する達成値取得部、通信部が行う無線通信に関するセンシング結果を含む観測結果を取得する観測結果取得部、観測結果を用いて、体験品質の目標とする値である目標値を生成する目標値生成部、目標値と達成値との差を示す差情報を算出する算出部、差情報の示す差が小さくなるように、観測結果を用いた無線リソースの割り当て、及び無線ネットワークトポロジーの変更の少なくとも一方の制御を行う制御部として機能させるためのプログラムである。
また、上記実施の形態2における無線通信制御装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、無線通信を行う通信部を備えた無線通信制御装置において、コンピュータを、通信部が行う無線通信に関する品質であり、ユーザの体験に応じた品質である体験品質の達成値をアプリケーションごとに取得する達成値取得部、通信部が行う無線通信に関するセンシング結果を含む観測結果を取得する観測結果取得部、観測結果を用いて、体験品質の目標とする値である目標値をアプリケーションごとに生成する目標値生成部、目標値と達成値との差を示す差情報をアプリケーションごとに算出する算出部、アプリケーションの優先度と当該アプリケーションの達成値との積を、達成値が目標値に達していることを示す差情報に対応する各アプリケーションについて加算した合計値が大きくなるように無線リソースの割り当てを行う制御部として機能させるためのプログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
図5は、上記プログラムを実行して、上記各実施の形態による無線通信制御装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記各実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図5において、コンピュータシステム900は、CD−ROMドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図6は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図6において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記各実施の形態による無線通信制御装置1の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記各実施の形態による無線通信制御装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。