このように特許文献1記載の技術にあっては油圧ポンプの容量制御によって吐出量を制御しているが、油圧ポンプの吸入口の圧力は常に負圧となるので、キャビテーションを発生し易い不都合があった。
従って、この発明は上記した不都合を解消し、余剰油圧を油圧ポンプの吸入側に還流させてポンプ容量を適正に制御すると共に、油圧ポンプのキャビテーションを効果的に防止してポンプ効率を向上させるようにした油圧供給装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、駆動源の回転によってリザーバから油圧ポンプを介して作動油を汲み上げて少なくとも油圧アクチュエータを含む油圧需要先に油圧を供給する油圧供給装置において、前記油圧ポンプと前記油圧需要先とを接続する油路に配置されて前記油圧ポンプの吐出口から吐出される作動油の油圧を前記油圧需要先で要求される油圧に調圧する調圧弁と、前記調圧弁の排出ポートに接続されるノズルと前記リザーバに接続される吸入部とディフューザとを備え、前記ノズルから流入される作動油と前記吸入部から吸入される作動油を前記ディフューザで合流させて出口から出力するエジェクタと、前記エジェクタの出口と前記油圧ポンプの吸入口とを接続する還流油路と、前記還流油路に接続される前記油圧ポンプの吸入口の圧力を示すパラメータを検出する検出手段と、前記検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段を備える如く構成した。
請求項2に係る油圧供給装置にあっては、前記目標値は、大気圧またはその付近の値である如く構成した。
請求項3に係る油圧供給装置にあっては、前記油圧ポンプが可変容量ポンプであり、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記可変容量ポンプの吐出量を減少させて前記還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記可変容量ポンプの吐出量を増加させて前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成した。
請求項4に係る油圧供給装置にあっては、前記油圧ポンプは複数の油圧ポンプからなると共に、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路に接続される油圧ポンプの数を減少させて作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路に作動油を供給する油圧ポンプの数を増加させて作動油の流量を増加させる如く構成した。
請求項5に係る油圧供給装置にあっては、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路との接続を遮断することで前記還流油路に接続される油圧ポンプの数を減少させると共に、前記還流油路との接続が遮断される油圧ポンプから吐出される作動油を前記エジェクタのノズルに接続する如く構成した。
請求項6に係る油圧供給装置にあっては、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記調圧弁の排出量を減少させて前記還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記調圧弁の排出量を増加させて前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成した。
請求項7に係る油圧供給装置にあっては、前記油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、前記複数個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に前記油圧ポンプの吐出口に直列に接続されて前記複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、前記複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートを前記エジェクタのノズルに接続する如く構成した。
請求項8に係る油圧供給装置にあっては、前記油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、前記複数個の油圧需要先は前記油圧ポンプの吐出口に並列に接続されて前記複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、前記複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートを前記エジェクタのノズルに接続する如く構成した。
請求項9に係る油圧供給装置にあっては、前記排出ポートが前記エジェクタのノズルに接続される複数の調圧弁のいずれかは、前記要求される油圧の最も低い油圧需要先の油圧を調圧する調圧弁である如く構成した。
請求項1に係る油圧供給装置にあっては、油圧ポンプの吐出口から吐出される作動油の油圧を油圧需要先で要求される油圧に調圧する調圧弁の排出ポートに接続されるノズルとリザーバに接続される吸入部とディフューザとを備え、ノズルから流入される作動油と吸入部から吸入される作動油をディフューザで合流させて出口から出力するエジェクタと、エジェクタの出口と油圧ポンプの吸入口とを接続する還流油路とを備えることで、調圧弁から排出される余剰の作動油を油圧ポンプの吸入側に還流することができ、油圧ポンプに還流される作動油の量に応じた量を吐出させることができて油圧ポンプの容量を適正に制御することができる。
また、エジェクタによって調圧弁から排出される余剰の作動油を油圧ポンプの吸入側に還流油路を介して還流すると共に、還流油路に接続される油圧ポンプの吸入口の圧力を示すパラメータを検出し、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成すると共に、エジェクタのノズルを調圧弁の排出ポートに、吸入部をリザーバに、ディフューザ下流の出口を還流油路に接続するように構成したので、エジェクタによる流量増大効果によって油圧ポンプで発生した調圧弁の余剰油圧を利用して多くの作動油をリザーバから吸入して油圧ポンプの吸入側に還流させることができる。これによって油圧ポンプの吸入側の圧力をキャビテーションが発生し難い圧力、例えば大気圧あるいはその付近の値にでき、よってポンプ吸入側が負圧になることで生じるキャビテーションを防止でき、キャビテーションによる油圧低下を防止できることで油圧ポンプの効率を向上できると共に、油圧ポンプの磨耗や気化した作動油が発生する騒音を防止することができる。
特に、車両に搭載される駆動源に接続されるとき、ポンプ回転数が急激に上昇する車両の急加速時においてもキャビテーションが生じるのを効果的に防止することができる。
即ち、還流油路は閉回路となっても、還流油路の油圧ポンプ吸入口より上流側にエジェクタを介してリザーバに連通する分岐部を有しているので、車両の急加速などにより油圧ポンプの回転数が急激に上昇したり、あるいは油圧ポンプの吸入口に供給される作動油の量が不足してしまうような運転条件であったりしても、分岐部の上流のリザーバから作動油を引き込むことができるので、油圧ポンプの吸入側の圧力を、目標値を適宜設定することで例えば大気圧またはその付近の値に制御することができ、これによってキャビテーションが生じるのを防止でき、ポンプ効率を向上できると共に、油圧ポンプの磨耗や気化した作動油が発生する騒音を防止することができる。
請求項2に係る油圧供給装置にあっては、目標値は、大気圧またはその付近の値である如く構成したので、上記した効果に加え、油圧ポンプの吸入口を大気圧またはその付近の値にすることができ、キャビテーションが生じるのを一層効果的に防止できてポンプ効率を向上させることができる。
請求項3に係る油圧供給装置にあっては、油圧ポンプが可変容量ポンプであり、検出されたパラメータが目標値以上のときは可変容量ポンプの吐出量を減少させて還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは可変容量ポンプの吐出量を増加させて還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成したので、上記した効果に加え、例えば偏心型の油圧ポンプであれば、偏心量を変化させるなどして作動油の流量を増減することができ、構成が簡易となる。
請求項4に係る油圧供給装置にあっては、油圧ポンプは複数の油圧ポンプからなると共に、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路に接続される油圧ポンプの数を減少させて作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路に作動油を供給する油圧ポンプの数を増加させて作動油の流量を増加させる如く構成したので、上記した効果に加え、作動油の流量を簡易に増減することができる。
請求項5に係る油圧供給装置にあっては、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路との接続を遮断することで還流油路に接続される油圧ポンプの数を減少させると共に、還流油路との接続が遮断される油圧ポンプから吐出される作動油をエジェクタのノズルに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、油圧ポンプの効率を一層向上させることができる。
請求項6に係る油圧供給装置にあっては、検出されたパラメータが目標値以上のときは調圧弁の排出量を減少させて還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは調圧弁の排出量を増加させて還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成したので、上記した効果に加え、調圧弁の排出量を増減することで作動油の流量を増減することができ、構成が簡易となる。
請求項7に係る油圧供給装置にあっては、油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、複数個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に油圧ポンプの吐出口に直列に接続されて複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートをエジェクタのノズルに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、複数個の油圧需要先が要求される油圧の高い順に油圧ポンプの吐出口に直列に接続される構成においても、作動油の流量を増減することができる。
請求項8に係る油圧供給装置にあっては、油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、複数個の油圧需要先は油圧ポンプの吐出口に並列に接続されて複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートをエジェクタのノズルに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、複数個の油圧需要先が油圧ポンプの吐出口に並列に接続される構成においても、作動油の流量を増減することができる。
請求項9に係る油圧供給装置にあっては、排出ポートがエジェクタのノズルに接続される複数の調圧弁のいずれかは、要求される油圧の最も低い油圧需要先の油圧を調圧する調圧弁である如く構成したので、上記した効果に加え、最も油圧エネルギの低い作動油を還流させることになり、油圧ポンプの効率を一層向上させることができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る油圧供給装置を実施するための形態を説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係る油圧供給装置を自動変速機の油圧供給装置を例にとって概略的に示す模式図、図2は図1に示す油圧供給機構を中心としてこの実施例に係る油圧供給装置の構成を詳細に示す模式図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関(駆動源))を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両14に搭載される(車両14はエンジン10と駆動輪12などで部分的に示す)。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル16との機械的な接続が絶たれ電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構18に接続され、DBW機構18で開閉される。
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルドを通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブが開弁されたとき、当該気筒の燃焼室に流入する。燃焼室において混合気は点火プラグで点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフトに接続される出力軸22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
エンジン10の出力軸22の回転はトルクコンバータ24を介してバリエータ26に入力される。即ち、エンジン10の出力軸22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24は、シリンダ内を摺動自在なピストンからなるロックアップクラッチ(油圧アクチュエータ)24cを備える。
バリエータ26は具体的には無段変速機(Continuously Variable Transmission。自動変速機)を構成する、メインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されるドライブ(DR)プーリ26aと、メインシャフトMSに平行であると共に、駆動輪12に連結されるカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されるドリブン(DN)プーリ26bと、その間に掛け回される無端伝達要素、例えば金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2と、可動プーリ半体26a2の側方に設けられて油圧(作動油の圧力)を供給されるとき可動プーリ半体26a2を固定プーリ半体26a1に向けて押圧する、ピストンとシリンダとスプリングからなる油圧アクチュエータ26a3を備える。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2と、可動プーリ半体26b2の側方に設けられて油圧を供給されるとき可動プーリ半体26b2を固定プーリ半体26b1に向けて押圧する、ピストンとシリンダとスプリングからなる油圧アクチュエータ26b3を備える。
バリエータ26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする、シリンダ内を摺動自在なピストンからなる前進クラッチ(油圧アクチュエータ)28aと、後進方向への走行を可能にする、シリンダ内を摺動自在なピストンからなる後進ブレーキクラッチ(油圧アクチュエータ)28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。バリエータ26はエンジン10に前進クラッチ28aを介して接続される。
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介して入力プーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32からドライブシャフト(駆動軸)34を介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ36を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ36の操作によるレンジ選択は油圧供給機構40のマニュアルバルブに伝えられる。
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ42が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ44が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構18のアクチュエータにはスロットル開度センサ46が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル16の付近にはアクセル開度センサ50が設けられてアクセルペダル16の運転者による踏み込み量(アクセルペダル操作量)に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。
上記したクランク角センサ42などの出力は、エンジンコントローラ52に送られる。エンジンコントローラ52はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいてDBW機構18の動作を制御すると共に、インジェクタ20と点火装置(図示せず)を介して燃料噴射と点火時期を制御する。
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)54が設けられてメインシャフトMSの回転数NT(変速機入力軸回転数)を示すパルス信号を出力すると共に、バリエータ26の入力プーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)56が設けられて入力プーリ26aの回転数NDRに応じたパルス信号を出力する。
また、出力プーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)60が設けられて出力プーリ26bの回転数NDN(変速機出力軸回転数)を示すパルス信号を出力すると共に、セカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近には車速センサ(回転数センサ)62が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(車速Vを示すパルス信号)を出力する。
また、前記したレンジセレクタ36の付近にはレンジセレクタスイッチ64が設けられ、運転者によって選択されたP,R,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
上記したNTセンサ54などの出力はシフトコントローラ66に送られる。シフトコントローラ66もCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ52と通信自在に構成される。
シフトコントローラ66はそれら検出値に基づき、油圧供給機構40を動作させ、バリエータ26のドライブ/ドリブンプーリ26a,26bの油圧アクチュエータ26a3,26b3に油圧を供給して可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させ、ドライブ/ドリブンプーリ26a,26b間のプーリ幅を変化させてベルト26cの巻掛け半径を変化させ、よってエンジン10の回転を駆動輪12に伝達する変速比(レシオ)を無段階に変化させる。
また、シフトコントローラ66は油圧供給機構40を動作させ、トルクコンバータ24のロックアップクラッチ(油圧アクチュエータ)24cに油圧を供給し、ロックアップクラッチ24cを係合・開放すると共に、運転者によって操作されたレンジセレクタ36の位置に応じて動作するマニュアルバルブを介して前後進切換機構28の前進クラッチ(油圧アクチュエータ)28aまたは後進ブレーキクラッチ(油圧アクチュエータ)28bに油圧を供給し、車両14を前進方向あるいは後進方向に走行可能にする。
図2は図1に示す油圧供給機構40を中心として第1実施例に係る油圧供給装置の構成を詳細に示す模式図、図3はその動作を示すフロー・チャートである。
図示の如く、油圧供給装置は、エンジン10の出力軸22に接続され、エンジン10の回転によって動作してリザーバ70から作動油を汲み上げて第1油路72に吐出する油圧ポンプ74と、第1油路72に配置されて油圧ポンプ74の吐出口74aから吐出される作動油の油圧をバリエータ26、より具体的にはその油圧アクチュエータ(グループ1)26a3,26b3で要求される油圧に調圧する第1調圧弁76と、第1調圧弁76の排出ポート(ドレン)76aから第2油路80に排出される余剰の作動油の油圧をクラッチ系の油圧アクチュエータ(グループ2)24c,28a,28bで要求される油圧に調圧する第2調圧弁82と、第2調圧弁82の排出ポート82aから第3油路84に排出される余剰の作動油の油圧を潤滑系(グループ3)86で要求される油圧(「Plub」という)に調圧する第3調圧弁90とを備える。
油圧ポンプ74は公知の可変容量ポンプ(送油ポンプ)からなり、図示は省略するが、エンジン10の出力軸22に接続される外歯ギヤと、外歯ギヤと噛合すると共に、出力軸22から偏心された位置に回転中心を有する内歯ギヤを備え、外歯ギヤの回転中心に対する内歯ギヤの回転中心の偏心量が減らされると吐出量が減少する一方、偏心量が増やされると吐出量が増加するように構成される。
リザーバ70はバリエータ26が変速機ケース(図示せず)に収容されて車両14に搭載されるとき、重力方向において下方に形成されるオイルパン(油溜め)を意味する。
潤滑系86はトルクコンバータ24、プーリ26a,26b、前後進切換機構28、ギヤ30a,30bなどの潤滑用に作動油を必要とするバリエータ26の部位を意味する。油圧アクチュエータ26a3,26b3,24c,28a,28bと潤滑系86を「油圧需要先」という。
第1、第2、第3調圧弁76,82,90はそれぞれスプリングで所定の位置に付勢されるピストン(図示せず)を備え、第1、第2、第3油路72,80,84を流れる作動油の油圧を油圧需要先で要求される油圧に調圧し、余剰の作動油を排出ポートから排出する。
第2調圧弁82は油圧ポンプ74の吐出口74aに対して第1調圧弁76と直列に接続されると共に、第3調圧弁90は油圧ポンプ74の吐出口74aに対して第2調圧弁82と直列に接続される。
さらに、油圧供給装置はエジェクタ92を備える。エジェクタ92は、第3調圧弁90の排出ポートに接続されるノズル92aと、リザーバ70に接続される吸入部92bと、ディフューザ92cとを備え、ノズル92aから流入される作動油と吸入部92bから吸入される作動油をディフューザ92cで合流させて出口92dから出力する。
エジェクタ92は公知の如く、ノズル92aから流入させた流体の流速を縮径部で上げて負圧あるいは真空を生成し、それによって吸入部92bから別の流体を吸入してディフューザ92cで合流(混合)させ、出口92dから出力させる機能を奏する。
このように、グループ1,2,3からなる油圧需要先と第1、第2、第3調圧弁76,82,90からなる調圧弁がそれぞれ3個(複数個)からなり、3個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に油圧ポンプ74の吐出口74aに直列に接続されて複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、複数個の調圧弁のいずれか、より具体的には第3調圧弁90の排出ポートをエジェクタ92のノズル92aに接続するように構成される。
さらに、油圧供給装置は、エジェクタ92の出口と油圧ポンプ74の吸入口74bとを接続する還流油路94と、還流油路94に配置され、還流油路94に接続される油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力を示すパラメータを検出する圧力センサ(検出手段)96を有する。還流油路94は、油圧ポンプ74の吸入口74bより上流側にエジェクタ92を介してリザーバ70に連通する分岐部を有するように構成される。
圧力センサ96の出力はシフトコントローラ66に送られる。シフトコントローラ66は圧力センサ96の出力に基づき、油圧ポンプ74の動作を制御する還流流量制御手段として機能する。即ち、この実施例に係る油圧供給装置は油圧供給機構40とシフトコントローラ66から構成される。
図3はシフトコントローラ66の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S10において圧力センサ96の出力から得られる油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力Ppumpin(圧力を示すパラメータ)を読み込み、S12に進み、得られた圧力Ppumpinが目標値より大きいか否か判断する。目標値はキャビテーションが発生し難い値、具体的には大気圧またはその付近の値に設定される。
S12で肯定されるときはS14に進み、油圧ポンプ74の仕事量が不要に大きいことから偏心量を減らす(ポンプ吐出量を減少させる)一方、否定されるときはS16に進み、油圧ポンプ74の偏心量を増やす(ポンプ吐出量を増加させる)。
油圧ポンプ74の吐出量が増加されると、第1調圧弁76に流入される作動油の量が増加し、それと直列に配置される第2調圧弁82を介して第3調圧弁90から排出されてエジェクタ92のノズル92aから流入される作動油の量も増加し、出口92dから還流油路94に流入される作動油の量も増加する。その結果、油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力はキャビテーションが発生し難い圧力(大気圧あるいはその付近の値)となる。
この実施例は上記の如く構成したので、第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ74の吸入口74bに還流することができ、油圧ポンプ74に還流される作動油の量に応じた量を吐出させることができて油圧ポンプ74の容量を適正に制御することができる。
より具体的には、エジェクタ92によって第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ74の吸入側に還流油路94を介して還流すると共に、還流油路94に接続される油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力を示すパラメータPpmupinを検出する検出手段(圧力センサ96)と、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは油圧ポンプ74の偏心量を減少させて還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは油圧ポンプ74の偏心量を増加させて還流油路94に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S10からS16)を備える如く構成すると共に、エジェクタ92のノズル92aを第3調圧弁90の排出ポートに、吸入部92bをリザーバ70に、ディフューザ92c下流の出口92dを還流油路94に接続するように構成したので、エジェクタ92による流量増大効果によって油圧ポンプ74で発生した第1から第3調圧弁76,82,90の余剰油圧を利用して多くの作動油をリザーバ70から吸入して油圧ポンプ74の吸入側に還流させることができる。これによって油圧ポンプ74の吸入側の圧力をキャビテーションが発生し難い圧力、具体的には大気圧あるいはその付近の値にでき、よって油圧ポンプ74の吸入側が負圧になることで生じるキャビテーションを防止でき、油圧ポンプ74の効率を向上できると共に、油圧ポンプ74の磨耗や気化した作動油が発生する騒音を防止することができる。
特に、車両14に搭載されるエンジン10に接続されるとき、ポンプ回転数が急激に上昇する車両14の急加速時においてもキャビテーションが生じるのを効果的に防止することができる。
即ち、還流油路94は閉回路となるが、還流油路94の油圧ポンプ74の吸入口74bより上流側にエジェクタ92を介してリザーバ70に連通する分岐部を有しているので、車両14の急加速などにより油圧ポンプ74の回転数が急激に上昇したり、あるいは油圧ポンプ74の吸入口74bに供給される作動油の量が不足してしまうような運転条件であったりしても、分岐部の上流のリザーバ70から作動油を引き込むことができるので、油圧ポンプ74の吸入側の圧力を大気圧またはその付近の値に制御することができ、これによってキャビテーションが生じるのを防止でき、ポンプ効率を向上できると共に、油圧ポンプ74の磨耗や気化した作動油が発生する騒音を防止することができる。
また、目標値は大気圧またはその付近の値である如く構成したので、油圧ポンプ74の吸入口74bを大気圧またはその付近の値にすることができ、油圧ポンプ74においてキャビテーションが生じるのを一層効果的に防止することができる。
また、油圧ポンプ74が可変容量ポンプであり、検出されたパラメータが目標値以上のときは可変容量ポンプ74の吐出量を減少させて還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは可変容量ポンプ74の吐出量を増加させて還流油路94に供給される作動油の流量を増加させる如く構成したので、偏心型の油圧ポンプであることも相俟って、偏心量を変化させるなどして作動油の流量を増減できることから構成が簡易となる。
また、油圧需要先と第1、第2、第3調圧弁76,82,90がそれぞれ3個(複数個)からなり、3個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に油圧ポンプ74の吐出口74aに直列に接続されて複数個の調圧弁のいずれかで調圧されると共に、複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートをエジェクタ92のノズル92aに接続する如く構成したので、3個の油圧需要先が要求される油圧の高い順に油圧ポンプ74の吐出口に直列に接続される構成において、作動油の流量を増減することができる。
また、排出ポートがエジェクタ92のノズル92aに接続される3個の調圧弁のいずれかは、要求される油圧の最も低い油圧需要先の油圧を調圧する第3調圧弁90である如く構成したので、最も油圧エネルギの低い作動油を還流させることになり、油圧ポンプ74の効率を一層向上させることができる。
図4はこの発明の第2実施例に係る油圧供給装置の構成をより詳細に示す模式図、図5はその動作を示すフロー・チャートである。
図示の如く、油圧供給装置は、エンジン10の出力軸22に接続され、エンジン10の回転によって動作してリザーバ70から作動油を汲み上げて第1油路72に吐出する油圧ポンプ74と、油路72に配置されて油圧ポンプ74の吐出口74aから吐出される作動油の油圧をバリエータ26の油圧アクチュエータ(グループ1)26a3,26b3で要求される油圧に調圧する第1調圧弁76と、油圧ポンプ74の吐出口74aから第2油路800に排出される作動油の油圧をクラッチ系の油圧アクチュエータ(グループ2)24c,28a,28bで要求される油圧に調圧する第2調圧弁82と、油圧ポンプ74の吐出口74aから第3油路840に排出される作動油の油圧を潤滑系(グループ3)86で要求される油圧に調圧する第3調圧弁90と、第3調圧弁90の排出ポートに接続されるノズル92aと、リザーバ70に接続される吸入部92bと、ディフューザ92cとを備え、ノズル92aから流入される作動油と吸入部92bから吸入される作動油をディフューザ92cで合流させて出口92dから出力するエジェクタ92と、エジェクタ92の出口92dと油圧ポンプ74の吸入口74bとを接続する還流油路94と、還流油路94に配置され、還流油路94に接続される油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力を示すパラメータを検出する圧力センサ96と、検出されるパラメータに基づいて還流油路94の作動油の流量を増減させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66)とを有する。
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例にあっては第2調圧弁82は油圧ポンプ74の吐出口74aに対して第1調圧弁76と並列に接続されると共に、第3調圧弁90も油圧ポンプ74の吐出口74aに対して第1調圧弁76と第2調圧弁82と並列に接続されるように構成される。
図5は第2実施例に係る油圧供給装置の動作、より具体的にはシフトコントローラ66の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S100において圧力センサ96の出力から得られる油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力Ppumpin(圧力を示すパラメータ)を読み込み、S102に進み、得られた圧力Ppumpinが目標値より大きいか否か判断する。目標値は同様にキャビテーションが発生し難い値、具体的には大気圧またはその付近の値に設定される。
S102で肯定されるときは油圧ポンプ74の仕事量が不要に大きいことからS104に進み、油圧ポンプ74の偏心量を減らす(ポンプ吐出量を減少させる)一方、否定されるときはS106に進み、油圧ポンプ74の偏心量を増やす(ポンプ吐出量を増加させる)。
第2実施例は上記の如く構成したので、第1実施例と同様、第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ74の吸入口74bに還流することができ、油圧ポンプ74に還流される作動油の量に応じた量を吐出させることができて油圧ポンプ74の容量を適正に制御することができる。
また、エジェクタ92によって第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ74の吸入側に還流油路94を介して還流すると共に、還流油路94に接続される油圧ポンプ74の吸入口74bの圧力を示すパラメータPpumpinを検出する検出手段(圧力センサ96)と、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは油圧ポンプ74の偏心量を減少させて還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは油圧ポンプ74の偏心量を増加させて還流油路94に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S100からS106)を備える如く構成したので、同様に、油圧ポンプ74でキャビテーションが生じるのを効果的に防止してポンプ効率を向上させることができる。尚、第2実施例の残余の構成と効果は第1実施例と異ならない。
図6はこの発明の第3実施例に係る油圧供給装置の構成をより詳細に示す模式図、図7はその動作を示すフロー・チャートである。
第3実施例は第1実施例の変形例であり、第1実施例と相違する点は、第3実施例に係る油圧供給装置は、第1実施例の可変容量型の油圧ポンプ74に代え、公知のギヤポンプなどの固定容量型の油圧ポンプ740を備えることと、第1実施例のピストンの位置がスプリング90aの設定圧で決定される第3調圧弁90に代え、ピストンの位置が電磁ソレノイド900aで変更自在な電磁調圧弁900を備えることである。
その点を除くと、第3実施例に係る油圧供給装置も、エンジン10の出力軸22に接続され、エンジン10の回転によって動作してリザーバ70から作動油を汲み上げて第1油路72に吐出する油圧ポンプ740と、油路72に配置されて油圧ポンプ740の吐出口740aから吐出される作動油の油圧をバリエータ26の油圧アクチュエータ(グループ1)26a3,26b3で要求される油圧に調圧する第1調圧弁76と、第1調圧弁76の排出ポート(ドレン)76aから第2油路80に排出される余剰の作動油の油圧をクラッチ系の油圧アクチュエータ(グループ2)24c,28a,28bで要求される油圧に調圧する第2調圧弁82と、第2調圧弁82の排出ポート82aから第3油路84に排出される余剰の作動油の油圧を潤滑系(グループ3)86で要求される油圧に調圧する第3調圧弁900と、第3調圧弁900の排出ポートに接続されるノズル92aと、リザーバ70に接続される吸入部92bと、ディフューザ92cとを備え、ノズル92aから流入される作動油と吸入部92bから吸入される作動油をディフューザ92cで合流させて出口92dから出力するエジェクタ92と、エジェクタ92の出口92dと油圧ポンプ740の吸入口740bとを接続する還流油路94と、還流油路94に配置され、還流油路94に接続される油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力を示すパラメータを検出する圧力センサ(検出手段)96と、検出されるパラメータに基づいて還流油路94の作動油の流量を増減させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66)とを有する。
図7は第3実施例のシフトコントローラ66の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S200において圧力センサ96の出力から得られる油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力Ppumpin(圧力を示すパラメータ)を読み込み、S202に進み、得られた圧力Ppumpinが目標値より大きいか否か判断する。目標値は同様にキャビテーションが発生し難い値、具体的には大気圧またはその付近の値に設定される。
S202で肯定されるときはS204に進み、油圧ポンプ740の仕事量が不要に大きいことから第3調圧弁900の電磁ソレノイド900aを励磁して潤滑系86で要求される油圧Plubを上げる、換言すれば排出ポートから排出される余剰の作動油の量を減少する一方、否定されるときはS206に進み、第3調圧弁900の電磁ソレノイド900aを励磁して潤滑系86で要求される油圧Plubを下げる、換言すれば排出ポートから排出される余剰の作動油の量を増加させる。
第3調圧弁900の排出ポートから排出される余剰の作動油の量が増加すると、エジェクタ92のノズル92aから流入される作動油の量も増加し、出口92dから還流油路94に流入される作動油の量も増加する。その結果、油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力は大気圧あるいはその付近の値となる。
第3実施例は上記の如く構成したので、第3調圧弁900から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ740の吸入口740bに還流することができ、同様に、油圧ポンプ740に還流される作動油の量に応じて適正に制御することができる。
より具体的には、エジェクタ92によって第3調圧弁900から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ740の吸入側に還流油路94を介して還流すると共に、還流油路94に接続される油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力を示すパラメータPpumpinを検出する検出手段(圧力センサ96)と、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは第3調圧弁900で調圧される油圧Plubを上げて還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは第3調圧弁900で調圧される油圧Plubを下げて還流油路94に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S200からS206)とを備える如く構成したので、同様に油圧ポンプ740でキャビテーションが生じるのを効果的に防止してポンプ効率を向上させることができる。尚、第3実施例の残余の構成と効果は第1実施例と異ならない。
図8はこの発明の第4実施例に係る油圧供給装置の構成をより詳細に示す模式図、図9はその動作を示すフロー・チャートである。
第3実施例が第1実施例の変形例であるのと同様、第4実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例と相違する点は、第4実施例に係る油圧供給装置は、第3実施例と同様、第2実施例の可変容量型の油圧ポンプ74に代え、公知のギヤポンプなどの固定容量型の油圧ポンプ740を備えることと、第2実施例のピストンの位置がスプリング90aの設定圧で決定される第3調圧弁90に代え、ピストンの位置が電磁ソレノイドで変更自在な電磁調圧弁900を備えることである。
その点を除くと、第4実施例に係る油圧供給装置も、エンジン10の出力軸22に接続され、エンジン10の回転によって動作してリザーバ70から作動油を汲み上げて第1油路72に吐出する油圧ポンプ740と、油路72に配置されて油圧ポンプ740の吐出口740aから吐出される作動油の油圧をバリエータ26の油圧アクチュエータ(グループ1)26a3,26b3で要求される油圧に調圧する第1調圧弁76と、油圧ポンプ740の吐出口740aから第2油路800に排出される作動油の油圧をクラッチ系の油圧アクチュエータ(グループ2)24c,28a,28bで要求される油圧に調圧する第2調圧弁82と、油圧ポンプ740の吐出口740aから第3油路840に排出される作動油の油圧を潤滑系(グループ3)86で要求される油圧に調圧する第3調圧弁900と、第3調圧弁900の排出ポートに接続されるノズル92aと、リザーバ70に接続される吸入部92bと、ディフューザ92cとを備え、ノズル92aから流入される作動油と吸入部92bから吸入される作動油をディフューザ92cで合流させて出口92dから出力するエジェクタ92と、エジェクタ92の出口92dと油圧ポンプ740の吸入口740bとを接続する還流油路94と、還流油路94に配置され、還流油路94に接続される油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力を示すパラメータを検出する圧力センサ(検出手段)96と、検出されるパラメータに基づいて還流油路94の作動油の流量を増減させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66)とを有する。
図9は第4実施例のシフトコントローラ66の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S300において圧力センサ96の出力から得られる油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力Ppumpin(圧力を示すパラメータ)を読み込み、S302に進み、得られた圧力Ppumpinが目標値より大きいか否か判断する。目標値は同様にキャビテーションが発生し難い値、具体的には大気圧またはその付近の値に設定される。
S302で肯定されるときはS304に進み、油圧ポンプ740の仕事量が不要に大きいことから第3調圧弁900の電磁ソレノイド900aを励磁して潤滑系86で要求される油圧Plubを上げて排出ポートから排出される余剰の作動油の量を減少する一方、否定されるときはS306に進み、第3調圧弁900の電磁ソレノイド900aを励磁して潤滑系86で要求される油圧Plubを下げて排出ポートから排出される余剰の作動油の量を増加させる。
第4実施例は上記の如く構成したので、第3調圧弁900から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ740の吸入口740bに還流することができ、同様に、油圧ポンプ740に還流される作動油の量に応じて適正に制御することができる。
より具体的には、エジェクタ92によって第3調圧弁900から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ740の吸入側に還流油路94を介して還流すると共に、還流油路94に接続される油圧ポンプ740の吸入口740bの圧力を示すパラメータPpumpinを検出する検出手段(圧力センサ96)と、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは第3調圧弁900で調圧される油圧Plubを上げて還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値未満のときは第3調圧弁900で調圧される油圧Plubを下げて還流油路94に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S300からS306)を備える如く構成したので、同様に油圧ポンプ740でキャビテーションが生じるのを効果的に防止してポンプ効率を向上させることができる。尚、第4実施例の残余の構成と効果は第1実施例と異ならない。
図10はこの発明の第5実施例に係る油圧供給装置の構成をより詳細に示す模式図、図11はその動作を示すフロー・チャートである。
第5実施例は第1実施例の変形例であり、第1実施例と相違する点は、第1実施例の1個の可変容量型の油圧ポンプ74に代え、公知のギヤポンプなどの固定容量型からなる複数の油圧ポンプ、より具体的には第1油圧ポンプ741と第2油圧ポンプ742からなる2個の油圧ポンプを備えることと、第1、第2油圧ポンプ741,742の吐出口741a,742aを油路100によって第1油路72に接続すると共に、油路100の途中に方向切換弁102を設けるようにしたことである。
方向切換弁102は電磁ソレノイド(図示せず)を備え、油路100において第1油圧ポンプ741の吐出口741aの下流側で第2油圧ポンプ742の吐出口742aの上流側に配置されると共に、電磁ソレノイドがシフトコントローラ66に接続されて励磁・消磁される。
油路100において方向切換弁102は、消磁されるとき、図示の位置にあって第1油圧ホンプ741の吐出口741aを第1油路72に接続する。油路100には第2油圧ポンプ742の吐出口742aがそのまま(直接)接続されることから、第1、第2油圧ポンプ741,742から吐出される作動油が第1油路72に供給される。一方、方向切換弁102は励磁されるとき、図示の位置から図において左方に移動し、第1油圧ポンプ741の吐出口をリザーバ70に接続する。
第5実施例にあっては、第1油圧ポンプ741と第2油圧ポンプ742は同一の吐出容量を備えるように構成されると共に、方向切換弁102の電磁ソレノイドをデューティ制御することで、第1、第2油圧ポンプ741,742の合計吐出容量から第2油圧ポンプ742の吐出容量までの間で任意の流量の作動油を第1油路72に供給できるように構成される。
その点を除くと、第5実施例に係る油圧供給装置も、エンジン10の出力軸22に接続され、エンジン10の回転によって動作してリザーバ70から作動油を汲み上げて第1油路72に吐出する第1、第2油圧ポンプ741,742と、油路72に配置されて第1、第2油圧ポンプ741,742の吐出口741a,742aから吐出される作動油の油圧をバリエータ26の油圧アクチュエータ(グループ1)26a3,26b3で要求される油圧に調圧する第1調圧弁76と、第1調圧弁76の排出ポート(ドレン)76aから第2油路80に排出される余剰の作動油の油圧をクラッチ系の油圧アクチュエータ(グループ2)24c,28a,28bで要求される油圧に調圧する第2調圧弁82と、第2調圧弁82の排出ポート82aから第3油路84に排出される余剰の作動油の油圧を潤滑系(グループ3)86で要求される油圧に調圧する第3調圧弁90と、第3調圧弁90の排出ポートに接続されるノズル92aと、リザーバ70に接続される吸入部92bと、ディフューザ92cとを備え、ノズル92aから流入される作動油と吸入部92bから吸入される作動油をディフューザ92cで合流させて出口92dから出力するエジェクタ92と、エジェクタ92の出口92dと第1、第2油圧ポンプ741,742の吸入口741b,742bとを接続する還流油路94と、還流油路94に配置され、還流油路94に接続される第1、第2油圧ポンプ741,742の吸入口741b,742bの圧力を示すパラメータを検出する圧力センサ(検出手段)96と、検出されるパラメータに基づいて還流油路94の作動油の流量を増減させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66)とを有する。
図11は第5実施例のシフトコントローラ66の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S400において圧力センサ96の出力から得られる第1油圧ポンプ741の吸入口741bの圧力Ppumpin(圧力を示すパラメータ)を読み込み、S402に進み、得られた圧力Ppumpinが目標値より大きいか否か判断する。目標値は同様にキャビテーションが発生し難い値、具体的には大気圧またはその付近の値に設定される。
S402で肯定されるときはS404に進み、第1油圧ポンプ741の仕事量が不要に大きいことからポンプ数を減らす、即ち、方向切換弁100の電磁ソレノイドを励磁して方向切換弁102を図10に示す位置から左方に移動させ、第1油圧ポンプ741の吐出口をリザーバ70に接続し、還流油路94との接続を遮断することで還流油路94に接続される油圧ポンプの数を第2油圧ポンプ742のみとし、油圧ポンプの数を減少させて作動油の流量を減少させる。
一方、S402で否定されるときはS406に進み、ポンプ数を増やす、即ち、方向切換弁100の電磁ソレノイドを消磁して方向切換弁102を図10に示す位置とし、換言すれば還流油路94に接続される油圧ポンプの数を第1、第2油圧ポンプ741,742とし、油圧ポンプの数を増加させて作動油の流量を増加させる。
尚、S404あるいはS406の油圧ポンプの増減処理は、方向制御弁102を2位置制御して油圧ポンプの数を第2油圧ポンプ742のみに減少、あるいは第1、第2油圧ポンプ741,742に増加することに止まらず、方向切換弁102をデューティ制御して第2油圧ポンプ742のみの減少方向と第1、第2油圧ポンプ741,742の双方への増加方向の間の任意の位置に制御することも含む。
第5実施例は上記の如く構成したので、第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を第1、第2油圧ポンプ741,742の吸入口741b,742bに還流することができ、同様に、第1、第2油圧ポンプ741,742に還流される作動油の量に応じて適正に制御することができる。
より具体的には、油圧ポンプは複数(2個)の第1、第2油圧ポンプ741,742からなり、エジェクタ92によって第3調圧弁90から排出される余剰の作動油を第1、第2油圧ポンプ741,742の吸入側に還流油路94を介して還流すると共に、還流油路94に接続される第1、第2油圧ポンプ741,742の吸入口741b,742bの圧力を示すパラメータPpumpinを検出する検出手段(圧力センサ96)と、検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路94に接続される油圧ポンプの数を減少させて作動油の流量を減少させる一方、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路94に作動油を供給する油圧ポンプの数を増加させて作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S400からS406)を備える如く構成したので、同様に第1、第2油圧ポンプ741,742でキャビテーションが生じるのを効果的に防止してポンプ効率を向上させることができる。尚、第5実施例の残余の構成と効果は従前の実施例と異ならない。
図12はこの発明の第6実施例に係る油圧供給装置の構成をより詳細に示す模式図、図13はその動作を示すフロー・チャートである。
第6実施例は第5実施例の変形例であり、第5実施例と相違する点は、油路100において方向切換弁102は、消磁されるとき、図示の位置にある一方、励磁されるとき、図示の位置から図において左方に移動し、第1油圧ポンプ741の吐出口741aを油路104によってエジェクタ92のノズルに接続するようにしたことである。図13フロー・チャートの動作も含め、残余の構成は第5実施例と同様である。
即ち、第6実施例に係る油圧供給装置にあっては、還流流量制御手段(シフトコントローラ66)は、検出されたパラメータが目標値以上のときは還流油路94との接続を遮断することで還流油路94に接続される油圧ポンプの数を第2油圧ポンプ742のみに減少させると共に(S500からS504)、還流油路94との接続が遮断される第1油圧ポンプ741から吐出される作動油をエジェクタ92のノズル92aに接続する如く構成した。これにより、第1、第2油圧ポンプ741,742の効率を一層向上させることができる。残余の効果は第5実施例と異ならない。
上記した如く、第1から第6実施例にあっては、駆動源(エンジン)10の回転によってリザーバ70から油圧ポンプ74,740,741,742を介して作動油を汲み上げて少なくとも油圧アクチュエータを含む油圧需要先に油圧を供給する油圧供給装置において、前記油圧ポンプと前記油圧需要先とを接続する油路72,80,84,800,840に配置されて前記油圧ポンプ74,740,741,742の吐出口74a,740a,741a,742aから吐出される作動油の油圧を前記油圧需要先で要求される油圧に調圧する調圧弁76,82,90,900と、前記調圧弁の排出ポートに接続されるノズル92aと前記リザーバ70に接続される吸入部92bとディフューザ92cとを備え、前記ノズルから流入される作動油と前記吸入部から吸入される作動油を前記ディフューザで合流させて出口92dから出力するエジェクタ92と、前記エジェクタ92の出口92dと前記油圧ポンプ74,740の吸入口74b,740bとを接続する還流油路94と、前記還流油路に接続される前記油圧ポンプの吸入口の圧力を示すパラメータを検出する検出手段(圧力センサ)96と、前記検出されたパラメータをキャビテーションが発生し難い値に設定される目標値と比較し、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる還流流量制御手段(シフトコントローラ66,S10からS16,S100からS106,S200からS206,S300からS306,S400からS406,S500からS506)を備える如く構成した調圧弁から排出される余剰の作動油を油圧ポンプ74,740,741,742の吸入側に還流することができ、油圧ポンプに還流される作動油の量に応じた量を吐出させることができて油圧ポンプの容量を適正に制御することができる。
また、エジェクタによる流量増大効果によって油圧ポンプで発生した調圧弁の余剰油圧を利用して多くの作動油をリザーバから吸入して油圧ポンプの吸入側に還流させることができる。これによって油圧ポンプの吸入側の圧力をキャビテーションが発生し難い圧力、例えば大気圧あるいはその付近の値にでき、よってポンプ吸入側が負圧になることで生じるキャビテーションを防止でき、キャビテーションによる油圧低下を防止できることで油圧ポンプの効率を向上できると共に、油圧ポンプの磨耗や気化した作動油が発生する騒音を防止することができる。
また、前記目標値は、大気圧またはその付近の値である如く構成したので、上記した効果に加え、油圧ポンプ74,740,741,742の吸入口74b,740b,741b,742bを大気圧またはその付近の値にすることができ、キャビテーションが生じるのを一層効果的に防止できてポンプ効率を向上させることができる。
また、前記油圧ポンプ74が可変容量ポンプであり、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記可変容量ポンプ74,740の吐出量を減少させて前記還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記可変容量ポンプの吐出量を増加させて前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成したので、上記した効果に加え、第1、第2実施例で用いた偏心型の油圧ポンプ74であれば、偏心量を変化させるなどして作動油の流量を増減することができ、構成が簡易となる。
また、前記油圧ポンプは複数の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ741,742)からなると共に、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路94に接続される油圧ポンプの数を減少させて作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路に作動油を供給する油圧ポンプの数を増加させて作動油の流量を増加させる(シフトコントローラ66,S400からS406,S500からS506)如く構成したので、上記した効果に加え、作動油の流量を簡易に増減することができる。
また、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記還流油路94との接続を遮断することで前記還流油路94に接続される油圧ポンプの数を第2油圧ポンプ742のみに減少させると共に(シフトコントローラ66,S500からS504)、前記還流油路94との接続が遮断される第1油圧ポンプ741から吐出される作動油を前記エジェクタ92のノズル92aに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、油圧ポンプの効率を一層向上させることができる。
また、前記還流流量制御手段は、前記検出されたパラメータが前記目標値以上のときは前記調圧弁900の排出量を減少させて前記還流油路94に供給される作動油の流量を減少させる一方、前記検出されたパラメータが前記目標値未満のときは前記調圧弁の排出量を増加させて前記還流油路に供給される作動油の流量を増加させる如く構成したので、上記した効果に加え、調圧弁の排出量を増減することで作動油の流量を増減することができ、構成が簡易となる。
また、前記油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、前記複数個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に前記油圧ポンプ74,740,741,742の吐出口に直列に接続されて前記複数個の調圧弁76,82,90,900のいずれかで調圧されると共に、前記複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートを前記エジェクタ92のノズル92aに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、複数個の油圧需要先が要求される油圧の高い順に油圧ポンプ74,740の吐出口に直列に接続される構成においても、作動油の流量を増減することができる。
また、前記油圧需要先と調圧弁がそれぞれ複数個からなり、前記複数個の油圧需要先は要求される油圧の高い順に前記油圧ポンプの吐出口に並列に接続されて前記複数個の調圧弁76,82,90,900のいずれかで調圧されると共に、前記複数個の調圧弁のいずれかの排出ポートを前記エジェクタ92のノズル92aに接続する如く構成したので、上記した効果に加え、複数個の油圧需要先が要求される油圧の高い順に油圧ポンプ74,740の吐出口に直列に接続される構成においても、作動油の流量を増減することができる。
また、前記排出ポートが前記エジェクタ92のノズル92aに接続される複数の調圧弁のいずれかは、前記要求される油圧の最も低い油圧需要先の油圧を調圧する調圧弁90,900である如く構成したので、上記した効果に加え、最も油圧エネルギの低い作動油を還流させることになり、油圧ポンプ74,740,741,742の効率を一層向上させることができる。
尚、上記した第1から第6実施例において、油圧ポンプの吸入口の圧力を示すパラメータとして圧力Ppumpinを検出するようにしたが、油圧エネルギは圧力と流量の積で表されることから、圧力に代え、油圧ポンプの吸入口に流入する作動油の流量を測定しても良い。
また、上記において第1から第4実施例まで種々の構成を開示したが、それらは構成要素を増減するなどして種々の変形が可能であることはいうまでもない。