JP2014201640A - アスファルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、アスファルト舗装の耐流動性や耐ひび割れ性などの長期供用性に優れた舗装用アスファルトとして、特許文献1には、特定の性状を有するストレートアスファルトと、常圧蒸留残油や減圧蒸留残油をライトリフォーメートを溶剤として抽出処理して得られる溶剤脱れきピッチと、特定の性状を有するクラリファイドオイル(CLO)とからなる舗装用アスファルト及びその製造方法が開示されている。
本発明は、常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置に通油してアスファルトを製造する方法において、得られるアスファルトの針入度の値を低下させることができ、また、それにより減圧蒸留装置における加熱温度の低下及び/または減圧度の低下を可能とし、省エネルギー及びコスト低減の要求を満足しうるアスファルトの製造方法を提供することを目的とする。
〔1〕常圧蒸留残渣油に対し、重質油を、得られる混合油全体基準で5容量%以上50容量%以下の割合で混合した後、得られた混合油を減圧蒸留設備に通油する工程を有する、アスファルトの製造方法。
〔2〕前記重質油が、流動接触分解残油(CLO)、重質サイクル油(HCO)、エキストラクト、エチレンボトム油(HAR)、熱分解残油(CBO)及びスロップ油から選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕記載のアスファルトの製造方法。
〔3〕前記重質油が、1質量%以上35質量%以下のレジン分、0.1質量%以上10質量%以下のアスファルテン分、及び40質量%以上95質量%以下の芳香族分を含有する、上記〔1〕または〔2〕に記載のアスファルトの製造方法。
〔4〕前記重質油が流動接触分解残油(CLO)である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔5〕前記流動接触分解残油(CLO)が、重油流動接触分解装置(RFCC装置)から得られたものである、上記〔4〕記載のアスファルトの製造方法。
〔6〕前記重質油が70質量%以上80質量%以下の芳香族分を含有する、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔8〕前記減圧蒸留設備における処理温度が350℃以上440℃以下である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔9〕得られるアスファルトの25℃における針入度が300(1/10mm)以下である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔10〕得られるアスファルトの25℃における針入度が250(1/10mm)以下である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔11〕前記減圧蒸留設備における処理圧力が3kPa以上15kPa以下、及び/又は処理温度が350℃以上440℃以下であって、得られるアスファルトの25℃における針入度が250(1/10mm)以下である、上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
〔12〕得られるアスファルトの軟化点が30℃以上である、上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
本発明の製造方法において、原料油として使用される常圧蒸留残渣油は、通常の原油を常圧蒸留装置で処理して得られる残渣油であり、その性状に特に制限はないが、15℃における密度が好ましくは0.95g/cm3以上0.99cm3以下、より好ましくは0.96g/cm3以上0.99cm3以下であり、また、50℃における動粘度が好ましくは100mm2/s以上2000mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以上1500mm2/s以下のものが用いられる。上記範囲の密度及び動粘度を有する常圧蒸留残渣油を使用することにより、重質油と混合して減圧蒸留処理することで、得られるアスファルトの針入度の数値を低下させることができ、また減圧蒸留設備において減圧残渣分を効率的に得ることができる。
なお、ここで、動粘度は、JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に基づき求められる値であり、密度は、JIS K2249「原油及び石油製品−密度試験方法」に基づき得られる値である。以下も同様である。
上記常圧蒸留残渣油に混合する重質油としては、その種類については特に制限はなく、その製造方法等によらず、通常、15℃における密度が1.00g/cm3以上1.10cm3以下程度、好ましくは1.01g/cm3以上1.08cm3以下であって、50℃における動粘度が25mm2/s以上400mm2/s以下程度、好ましくは50mm2/s以上350mm2/s以下のものが使用できる。
本発明においては、重質油として、密度が常圧蒸留残渣より高いものの、全般に軽質であり、それ自体はアスファルトの範疇に入らない流動接触分解残油(CLO)なども包含する。本発明においては、これらの重質油を原料油の一部として減圧蒸留装置に通油することにより、重質油中の重質留分を残渣分として抽出することが可能となり、結果として、減圧残渣の針入度の値を低下させることができる。これにより、減圧蒸留装置において、減圧蒸留に必要な熱を供給する加熱炉における加熱温度の低減、もしくは、減圧蒸留塔に必要な減圧度の低下(より正圧側での蒸留)が可能となり、アスファルトを製造する際の製造エネルギーコストを低減することが可能となる。
同様の観点から、重質油のレジン分は、より好ましくは1質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、アスファルテン分は、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、芳香族分は、より好ましくは45質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上95質量%以下、特に好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
上記観点から、本発明における重質油としては流動接触分解残油(CLO)が特に好ましい。
なお、ここで、レジン分、芳香族分及びアスファルテン分含有量は、JIP−5S−70−2010(石油学会)TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法にて測定した。ただし、クロマトグラム中に現れる5本のピークの帰属については、ピーク1(飽和分)、ピーク2+ピーク3(芳香族分)、ピーク4(レジン分)、ピーク5(アスファルテン分)とした。
本発明に用いられる流動接触分解残油(CLO)または重質サイクル油(HCO)は、高温ガスクロマトグラフィーにより得られる蒸留曲線において10%〜90%留分が200〜700℃であり、250〜650℃であればより好ましい。
本発明においては、流動接触分解残油(CLO)または重質サイクル油(HCO)中に含まれる水泥分は、5000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
エチレンボトム油(HAR)はHeavy Aromatic Residue油のことであり、ナフサ留分等の原料油を熱分解してエチレン、プロピレン等の化学品原料を製造するスチームクラッカーのボトム油である。エチレンボトム油(HAR)はボトム油そのものであっても、ボトム油を水素化処理して得られる水素化油であってもよい。
本発明においては、さらに、重質油として、原油をエチレンクラッカーで処理して得られる熱分解残油(CBO)、及び石油精製工程において発生する廃油であるスロップ油等も使用可能である。
本発明においては、前記常圧蒸留残渣油に、前記重質油を混合した後、減圧蒸留設備に通油する。重質油の混合割合は、得られるアスファルトの針入度の値を低下させるとともに、減圧蒸留装置における加熱温度の低下及び/または減圧度の低下を可能にする観点から、得られる混合油全体に対し5容量%以上50容量%以下の割合である。上記割合が5容量%未満であれば、上記本発明の効果が十分でなく、また、50容量%を超える場合は、アスファルトの得率が低下するため好ましくない。上記観点から、上記割合は、5容量%以上30容量%以下であることが好ましく、5容量%以上20容量%以下であることがさらに好ましい。なお、常圧蒸留残渣油と重質油との混合方法、混合順序等については、特に制限はない。
本発明においては、前記常圧蒸留残渣油に、前記重質油を上記割合で混合した後、減圧蒸留設備に通油する。
減圧蒸留設備における減圧蒸留処理条件(温度、圧力、時間等)としては通常の条件を適宜採用することができ、蒸留設備の塔頂圧力3kPa以上15kPa以下の減圧下、加熱炉温度350℃以上440℃以下の条件下で混合油を減圧蒸留処理することもできるが、本発明の製造方法を用いることにより、従来の製造方法で得られるアスファルトの針入度と同等の針入度を得る場合、その処理条件をさらに緩和することができ、省エネルギー及びコスト低減の要請に資することができる。具体的には、本発明の製造方法により、減圧蒸留処理条件は、塔頂圧力として、好ましくは4kPa以上12kPa以下の減圧下で、さらに好ましくは6kPa以上10kPa以下の減圧下で行うことが可能であり、及び/または、加熱炉温度として、好ましくは370℃以上420℃以下、さらに好ましくは390℃以上410℃以下の温度で行うことも可能である。
上記本発明の製造方法により得られるアスファルトにおいては、従来の製造方法に比べ、比較的温和な減圧蒸留処理条件下で、25℃における針入度(1/10mm)が好ましくは300以下、より好ましくは280以下、より好ましくは260以下、さらに好ましくは250以下、特に好ましくは240以下とすることが可能である。その下限値については、特に制限はないが、一般に50程度である。また、得られるアスファルトの軟化点は好ましくは30℃以上であり、より好ましくは34℃以上48℃以下である。
なお、ここでいう25℃における針入度(1/10mm)、軟化点は、JIS K2207「石油アスファルト」に基づき求められる値である。
本発明の製造方法により得られるアスファルトは、道路舗装、ルーフィング材、シーリング材、接着剤、水路ライニング等の分野に広く利用できるが、針入度の値を低くでき、軟化点が高い等の観点から、道路舗装等に好適に使用できる。
JPI−5S−70−2010(石油学会法)TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法にて測定した。
[レジン分含有量]
JPI−5S−70−2010(石油学会法)TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法にて測定した。
[アスファルテン含有量]
JPI−5S−70−2010(石油学会法)TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法にて測定した。
[針入度、軟化点]
JIS K2207「石油アスファルト」に準拠して測定した。
[動粘度]
JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に基づき求められる値である。
[密度]
JIS K2249「原油及び石油製品−密度試験方法」に準拠して測定した。
中東原油を通常の方法で常圧蒸留処理して得られた常圧蒸留残渣(密度:0.9742g/cm3、動粘度(50℃):1050mm2/s)を、減圧蒸留装置に通油して、圧力−93.5kPaG、電気炉温度400℃の条件にて減圧蒸留して減圧残渣分としてアスファルトを得た。
得られたアスファルトの針入度は25℃で269(1/10mm)であり、軟化点は38℃であった。
比較例1で用いたとの同様の常圧蒸留残渣に、混合後の量が全体の15容量%となるように、流動接触分解残渣(CLO)(レジン分:4.9質量%、アスファルテン分:1.0質量%、芳香族分:74.6質量%、密度:1.0351g/cm3、動粘度(50℃):120mm2/s)を混合して得られた混合油を、比較例1と同じ条件で減圧蒸留装置にて減圧蒸留して減圧残渣分としてアスファルトを得た。
得られたアスファルトの針入度は、25℃で238(1/10mm)であり、軟化点は39℃であった。
Claims (12)
- 常圧蒸留残渣油に対し、重質油を、得られる混合油全体基準で5容量%以上50容量%以下の割合で混合した後、得られた混合油を減圧蒸留設備に通油する工程を有する、アスファルトの製造方法。
- 前記重質油が、流動接触分解残油(CLO)、重質サイクル油(HCO)、エキストラクト、エチレンボトム油(HAR)、熱分解残油(CBO)及びスロップ油から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のアスファルトの製造方法。
- 前記重質油が、1質量%以上35質量%以下のレジン分、0.1質量%以上10質量%以下のアスファルテン分、及び40質量%以上95質量%以下の芳香族分を含有する、請求項1または2に記載のアスファルトの製造方法。
- 前記重質油が流動接触分解残油(CLO)である、請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 前記流動接触分解残油(CLO)が、重油流動接触分解装置(RFCC装置)から得られたものである、請求項4に記載のアスファルトの製造方法。
- 前記重質油が70質量%以上80質量%以下の芳香族分を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 前記減圧蒸留設備における処理圧力が3kPa以上15kPa以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 前記減圧蒸留設備における処理温度が350℃以上440℃以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 得られるアスファルトの25℃における針入度が300(1/10mm)以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 得られるアスファルトの25℃における針入度が250(1/10mm)以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 前記減圧蒸留設備における処理圧力が3kPa以上15kPa以下、及び/又は処理温度が350℃以上440℃以下であって、得られるアスファルトの25℃における針入度が250(1/10mm)以下である、請求項1〜10のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
- 得られるアスファルトの軟化点が30℃以上である、請求項1〜11のいずれかに記載のアスファルトの製造方法。
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