JP2014199795A - 有機デバイスの製造方法、有機デバイスの製造装置及び有機デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】封止性能の高い封止構造を有する有機デバイスを、コストを低く抑え、スループットを低下させずに形成することができる製造方法を提供する。
【解決手段】一又は複数の隔壁部120と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層101上に中間層103が形成された基板を搬入する工程と、前記基板に形成された中間層103をエッチバックする工程と、を有し、前記エッチバックする工程は、前記一又は複数の隔壁部120のうち少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層101の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層105と接触可能な程度に前記中間層103から露出するまで実行される、有機デバイスの製造方法。
【選択図】図1

Description

有機デバイスの製造方法、有機デバイスの製造装置及び有機デバイスに関する。
近年、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL:electro Luminescence)を利用した有機EL素子が開発されている。有機EL素子は、ブラウン管等に比べて消費電力が小さく、自発光であり、液晶ディスプレイに比べて視野角に優れている等の利点がある。
一方、有機EL素子は水分に弱い。このため、有機EL素子の欠陥部から水分が浸入すると、発光輝度が低下したり、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が発生したりする。このため、有機EL素子の表面には、例えば耐透湿性を有する封止層が形成される場合がある。この場合、有機EL素子にダメージを与えない低温プロセスで形成でき、かつ、耐透湿性が要求される封止層として、例えば窒化珪素等の無機層が用いられることがある。
ところが、上記封止層では、電極パッドの開口された側面から水分が浸入し、浸入した水分が有機EL素子を劣化させ、寿命を短くさせることが懸念される。
そこで、有機EL素子上に中間層(平坦化層)とバリア層とが1以上積層された多層封止層により有機EL素子を封止することも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2012−253036号公報
しかしながら、特許文献1では、中間層を成膜するためにマスクが必要であり、かつ、マスクと基板との位置合わせが必要であるため、スループットが低下し、製造コストが高くなるという課題を有する。
上記課題に対して、一側面では、封止性能の高い封止構造を有するデバイスを、コストを低く抑え、スループットを低下させずに形成することを目的とする。
上記課題を解決するために、一の態様によれば、
一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層上に中間層が形成された基板を搬入する工程と、
前記基板に形成された中間層をエッチバックする工程と、を有し、
前記エッチバックする工程は、
前記一又は複数の隔壁部のうち少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層と接触可能な程度に前記中間層から露出するまで実行される、
ことを特徴とする有機デバイスの製造方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、他の態様によれば、
基板上に形成された一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層を成膜する第1の成膜装置と、
前記第1の封止層上に中間層を塗布する第2の成膜装置と、
前記中間層をエッチバックするエッチング装置と、
を有し、
前記エッチング装置は、
前記一又は複数の隔壁部のうち少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層と接触可能な程度に前記中間層から露出するまで前記中間層をエッチバックする、
ことを特徴とする有機デバイスの製造装置が提供される。
また、上記課題を解決するために、他の態様によれば、
一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層上に、少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が露出するように中間層が形成され、
前記中間層上の第2の封止層が、該中間層から露出した前記第1の封止層と接触するように形成された、
ことを特徴とする有機デバイスが提供される。
一の態様によれば、封止性能の高い封止構造を有するデバイスを、コストを低く抑え、スループットを低下させずに形成することができる。
図1(a)は、一実施形態に係る有機デバイスの概略断面図、図1(b)は、比較する有機デバイスの概略断面図。 一実施形態に係る有機デバイスの製造装置の全体構成図。 一実施形態に係る隔壁部が形成された基板に有機EL素子を形成した図。 一実施形態に係る有機EL素子を設けた基板に第1の封止層を形成し、中間層を形成した図。 一実施形態に係る中間層をエッチバックし、第2の封止層を形成した図。 一実施形態に係る有機EL素子及びその周辺をカバーシートで覆い、電極パッド部をエッチングして開口した図。 一実施形態に係る隔壁部の形成例。 一実施形態に係るリフローの作用を説明するための図。 一実施形態の変形例1において中間層をエッチバックし、第2の封止層を形成する図。 一実施形態の変形例2において中間層をエッチバックし、第2の封止層を形成する図。 一実施形態の変形例3において中間層の形成及びエッチバックを繰り返し実行した図。 一実施形態の変形例3においてエッチバックを繰り返し実行した後、第2の封止層を形成した図。 一実施形態の変形例3において有機EL素子及びその周辺をカバーシートで覆い、電極パッド部をエッチングして開口した図。 一実施形態に係るエッチング処理装置の一例を示した概略断面図。 一実施形態に係る成膜装置の一例を示した概略断面図。 一実施形態に係る原料ガス供給構造体の一例を示した図。 一実施形態に係るプラズマ励起用ガス供給構造体の一例を示した図。 一実施形態に係る封止層の積層構造例を説明するための図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
<はじめに>
一般に、有機EL素子は水分に弱い。有機EL素子の欠陥部から水分が浸入すると、発光輝度が低下したり、ダークスポットと呼ばれる非発光部領域が発生したりする。このため、有機EL素子の表面には、耐透湿性を有する封止層が形成される。例えば、図1(a)及び図1(b)に示されるように、ガラス基板S(以下、単に基板Sという。)上には、有機EL素子50を封止する封止層101(第1の封止層)が形成される。
しかし、封止層101を設けても、図1(b)に示されるように、デバイス製造工程中や製造後において水分が電極パッド部52の上方から入り、有機EL素子50まで浸入した場合、有機EL素子50を劣化させ、素子の寿命を短くさせる。
そこで、水分が有機EL素子50まで浸入することを抑止するために、本実施形態により製造される有機デバイスでは、図1(a)に示されるように、有機EL素子50と電極パッド部52との間に隔壁部(バンク)120が設けられ、その上の位置Bにおいて封止層101の上部は、封止層105(第2の封止層)に対して一部埋め込まれた状態で接触し、密着する。これにより、位置Bにて水分浸入抑止用の壁部が形成される。
かかる構成によれば、デバイス製造工程中や製造後において電極パッド部52の上方から浸入した水分は、壁部によりブロックされ、有機EL素子50のエリアAまで浸入することが困難になる。これにより、有機EL素子50が水分によって劣化し、その寿命が短くなることを抑止できる。以下では、本実施形態に係る有機デバイスの製造装置及び有機デバイスの製造方法について図面を参照しながら説明する。
[有機デバイスの製造装置]
まず、本発明の一実施形態に係る有機デバイスの製造装置の全体構成について、図2を参照しながら説明する。また、本発明の一実施形態に係る有機デバイスの製造装置の動作について、主に図3A〜図3Dを参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る有機デバイスの製造装置の全体構成図である。図3A〜図3Dは、本実施形態に係る有機デバイスを製造するための各工程を示した図である。
有機デバイスの製造装置1は、基板Sが搬入されるロードロックモジュール(LLM)10から順に、洗浄装置(前処理)12、トランスファーモジュール(TM)14、蒸着装置16、トランスファーモジュール(TM)18、成膜装置A20、トランスファーモジュール(TM)22、成膜装置B24、ロードロックモジュール(LLM)26、成膜装置C28、加熱装置30(リフロー)、エッチング装置32、成膜装置D34、カバーの貼り合わせ装置36及びパッドのエッチング装置38を有する。
上記構成のうち、ロードロックモジュール10からロードロックモジュール26までは、基板Sを真空中で処理するインラインの装置構成である。トランスファーモジュール(TM)14、18、22は、隣接する装置間で基板Sを受け渡しするための装置であって、例えば搬送ロボットを用いて基板Sを搬送してもよい。ただし、トランスファーモジュール(TM)14、18、22が行う搬送方法はこれに限らず、コロ搬送等を使用してもよい。
(基板搬入)
ロードロックモジュール10は、基板Sを装置外部から真空雰囲気の洗浄装置12へ受け渡すように機能する。受け渡される基板Sの一例を図3Aに示す。例えば、図3Aの「S0」に示されるように、受け渡される基板Sには陽極となる、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IGZO、ZnO、グラフェン等や隔壁部110,120が既に形成されている。以下では、陽極としてITOを例に挙げて説明する。
アノード層90(陽極層)及び電極パッド部52は、ITOで形成されている。隔壁部110、120の形成には、フォトリソグラフィー(露光)技術を用いてもよい。つまり、隔壁部110、120は、基板S上に感光性の有機ポリイミド等の樹脂を塗布(スピンコート)し、パターン状に露光、現像することにより形成される。形成された隔壁部110、120はアニール処理される。これにより、隔壁部110、120中の水分が除去される。
図3Aの「S1」に示されるように、隔壁部110は、有機EL素子50の形成用の隔壁部である。隔壁部120は、水分の浸入抑止用の隔壁部である。ただし、各隔壁部の機能はこれに限らず、例えば、隔壁部110は、水分の浸入を抑止する機能も有する。
本実施形態では、隔壁部110と電極パッド部52との間には、隔壁部120が1つだけ設けられている。しかし、隔壁部の形成パターンはこれに限らず、隔壁部110と電極パッド部52との間に複数の隔壁部を形成してもよい。例えば、図4では、隔壁部110と金属パッド部52との間には、数μmの間隔で3つの隔壁部120,130,140が形成されている。隔壁部110の内側には有機EL素子50が形成されている。3つの隔壁部120,130,140は、有機EL素子50及び隔壁部110を囲むように設けられている。つまり、有機EL素子50を中心として、内周側から外周側に向けて隔壁部110、120、130、140が形成され、最も外側に電極パッド部52が形成されている。ここでは、電極パッド部52は一つ図示されているが、これに限らず、周方向に複数設けられ得る。
なお、隔壁部110は、有機層に隣接する第1の隔壁部の一例である。隔壁部120,130,140は、第1の隔壁部の外側であって第1の隔壁部と電極パッド部との間にて有機層を囲むように設けられた一又は複数の第2の隔壁部の一例である。
図3Aに戻って、隔壁部の形状について説明すると、本実施形態において隔壁部110、120の高さは概ね同一であり、2μm程度である。また、隔壁部110、120の側壁の傾斜(角度)も概ね同一である。隔壁部120は、少なくとも有機EL素子50のエリアAの隔壁部110よりも幅を狭くする。隔壁部120は、根元側において数μm程度の幅を有していればよい。また、隔壁部120は、先端側が根元側よりも細く形成されていることが好ましい。また、隔壁部120は、隔壁部120上に形成される中間層を考慮して、台形形状よりも先端側がR形状であることが好ましい。中間層については後述する。
(洗浄)
洗浄装置(前処理)12は、搬入された基板Sを洗浄する。洗浄方法の一例としては、高周波放電による酸素プラズマを生成し、生成された酸素ラジカルを利用して有機化合物を酸化及び分解させることで、基板表面の有機物を除去する酸素ラジカル洗浄が挙げられる。ただし、基板Sを洗浄する方法は、洗浄装置(前処理)12が行うような洗浄方法に限らない。
(有機層の成膜)
蒸着装置16は、真空蒸着法にて、ITO90上にホール注入層、ホール輸送層、青発光層、赤発光層、緑発光層及び電子輸送層からなる有機層を成膜する。ただし、有機層の成膜方法は、蒸着装置16が行うような蒸着方法に限らない。
(カソード層の成膜)
成膜装置A20は、パターンマスクを用いて、例えば銀、アルミニウム、アルミニウム合金、リチウムアルミ合金、又はマグネシウム及び銀の合金等を蒸着する。これにより、電子輸送層上にカソード層92が成膜される。ただし、カソード層の成膜方法は、成膜装置A20が行うような蒸着方法に限らない。
以上により、図3Aの「S1」に示されるように、成膜装置A20によってカソード層92(陰極層)が形成され、蒸着装置16によりITO(アノード層)90とカソード層92との間に有機層の積層膜が形成される。このようにして、隔壁部110内に有機EL素子50が形成される。なお、図3B及びそれ以降の図面では、有機EL素子50中のアノード層90及びカソード層92の図示は省略する。
(封止層の成膜)
成膜装置B24は、CVD(Chemical Vapor Deposition)処理により、隔壁部110,120と有機EL素子50とを封止する封止層101を形成する。封止層101は、例えば、窒化珪素(SiN)により形成されてもよいし、窒化酸化珪素(SiON)により形成されてもよい。成膜装置B24の構成については後程説明する(図10)。
封止層101として窒化珪素膜を成膜する場合には、成膜装置B24には、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス、水素(H)ガス、シラン系ガスが供給される。シラン系ガスは、例えば、シラン(SiH)ガスやジシラン(Si)ガスなどが用いられる。窒素ガス及び水素ガスに替えて、アンモニア(NH)ガスを供給することもできる。また、シランガスに替えて、他のSi含有ガス、例えば、トリシリルアミン(TSA)やオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を供給することもできる。
図3Bの「S2」に示されるように、封止層101が、隔壁部110,120、有機EL素子50及び電極パッドP上に形成されている。封止層101の厚さは、50nm〜200nm程度である。
成膜装置B24により、アルミナ(Al)の封止層101を成膜してもよい。アルミナの封止層101は、透明性が高いという利点を有する。また、窒化珪素層とアルミナ層とを組み合わせて封止層101を形成してもよい。この場合、例えば、水分の浸入をより抑止するために、窒化珪素層の薄膜上に、所定の厚さになるまでアルミナ層を成膜するほうが好ましい。窒化珪素層は、例えば、CVD処理により成膜してもよい。アルミナ層は、例えば、CVD処理あるいはALD(Atomic Layer Deposition)処理により成膜してもよい。封止層101は、アルミナの他、酸化マグネシウム(MgO)でもよい。なお、封止層101は、一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層の一例である。また、成膜装置B24は、基板上に形成された一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層を成膜する第1の成膜装置の一例である。
(基板搬出)
ロードロックモジュール26は、基板Sを成膜装置B24内の真空雰囲気から外部(大気)へと受け渡す。
(中間層の形成)
成膜装置C28は、アクリル酸エステルもしくはビニル化合物の液体材料を塗布(スピンコート)し、中間層を形成する。その結果、図3Bの「S3」に示されるように、封止層101上には、中間層103が形成される。中間層103は、有機EL素子50を保護し、かつ、基板Sに付着したゴミを埋没するように機能する。
中間層103を形成する材料は、融点が低い、例えば、融点が100℃以下の液体材料を用いる。中間層103が形成された後、硬化(キュア)処理が実行される。硬化(キュア)処理には、UV光の照射、電子ビームの照射、プラズマキュア等を使用することができる。このとき、処理温度は有機EL素子50にダメージを与えない範囲で行われる。
中間層103は、流動性がある液体状態の材料で形成した層である。このため、表面張力により下地の封止層101の角部(突出部)では、平坦部よりも膜が薄くなる。よって、前述の通り、隔壁部120は、先端側が根元側よりも細く形成されることが好ましい。これにより、図3Bの「S3」に示されるように、隔壁部120上に形成された中間層103の厚さTh1は、隔壁部110上に形成された中間層103の厚さTh2よりも薄くなる。更に、隔壁部120の先端側がR形状であれば、中間層103を薄く形成できるため好ましい。なお、成膜装置C28は、第1の封止層(封止層101)上に中間層103を塗布する第2の成膜装置の一例である。
中間層103は、熱CVD又は蒸着により、炭化水素系化合物(CxHyOzNw;z,wは0を含む)の材料によって形成されてもよい。炭化水素系化合物(炭化水素材料)による中間層103は、例えば、真空蒸着法によって形成する。具体的には、室温で固体状態にある炭化水素材料を加熱することによって、炭化水素材料を蒸発させ、炭化水素材料の蒸気をアルゴンガス等の搬送ガスによって搬送し、封止層101上に供給する。炭化水素材料の蒸気を供給する際、基板Sを炭化水素材料の融点よりも低い温度に保持することで、封止層101上に供給された炭化水素材料の蒸気を凝縮させる。これにより、中間層103を形成することができる。中間層103の厚みは、例えば0.5〜2.0μmである。
中間層103に使用する代表的な炭化水素材料の分子式、分子量及び融点を下記表1に示す。有機EL素子50の劣化を抑制するためには、融点が約100℃以下の炭化水素材料を用いることが好ましい。融点が約50℃以下の炭化水素材料を用いると、より確実に有機EL素子50の劣化を抑制することができるためより好ましい。
Figure 2014199795
この場合、次に説明するリフロー処理により、中間層103を溶融させてもよい。中間層103を形成する場合、リフロー処理を実行してもよいが、リフロー処理を実行せずに次工程のエッチバック処理を行ってもよい。リフロー処理を実行した場合、中間層(CxHy)103が基板表面に存在するパーティクル等の異物の隙間を埋め込み、次に成膜する封止層105の被膜性を格段に向上させることができる。
(リフロー)
リフロー処理は、加熱装置30により行われる。加熱装置30は、成膜された中間層103に対して赤外線を照射することによって、炭化水素材料を加熱する。これにより、中間層103の炭化水素材料を軟化又は融解させ、リフロー作用によって、中間層103を平坦化させる。図5の「S3'」にした矢印は赤外線を表している。中間層103の加熱温度は、炭化水素材料が軟化又は融解し、かつ有機EL素子50が劣化しない温度範囲で行う。炭化水素材料を軟化又は融解させることで、カバレッジが良好で、かつ平坦な中間層103を形成することができる。
基板Sには、通常、不純物パーティクルが付着している。不純物パーティクルには3μm程度のものがあり、該不純物パーティクルの形状によっては、基板S及び不純物パーティクルが中間層103で覆われずに欠陥部が発生することがある。欠陥部が生じると、耐透湿性が低下するおそれがあり、後工程の成膜処理にも悪影響を及ぼす恐れがあり、好ましくない。そこで、炭化水素材料を軟化又は融解させることにより、中間層103を平坦化させる。これにより、欠陥部を埋没させることができる。特に隔壁部110、120上の中間層103の角部を平坦化させることができる。中間層103の成膜後にリフロー処理が実行される場合、中間層103の成膜後の硬化(キュア)処理は、リフロー処理後に実行されることが好ましい。
(エッチバック)
図2に示したエッチング装置32は、酸素(O)ガスや希ガス(Ar等)をチャンバ内に導入し、高周波電力を供給することで、酸素ガスを電離及び解離させて酸素プラズマを生成する。エッチング装置32は、生成された酸素プラズマにより、中間層103をエッチバックする。中間層103の厚さは、隔壁部110、120の形状に基づき隔壁部120上にて最も薄くなる。よって、図3Cの「S4」に示されるように、中間層103のエッチバックの際、位置Bの封止層101の頂部が、最も早く中間層103から露出する。中間層103は、選択比により封止層101よりもエッチングレートが高い。よって、位置Bにおいて、封止層101の頂部が中間層103から露出した後もエッチバックを続ければ、封止層101の先端部が、中間層10から突出する。
また、中間層103をエッチバックする際、封止層101がストッパーになって有機EL素子50がエッチングされたり、ダメージを受けたりすることを回避できる。
以上のように、本実施形態にかかるエッチバック処理は、隔壁部110,120のうち少なくとも最も外側に位置する隔壁部120上の封止層101の少なくとも一部が、次工程において成膜される封止層と接触可能な程度に中間層103から露出するまで実行される。
(封止層の成膜)
次に、図2に示した成膜装置D34は、CVD(Chemical Vapor Deposition)処理により、中間層103上に封止層105を形成する。封止層105は、例えば、窒化珪素(SiN)により形成されてもよいし、窒化酸化珪素(SiON)や酸化マグネシウム(MgO)等により形成されてもよい。
図3Cの「S5」に示されるように、中間層103上の封止層105は、中間層103から露出した封止層101と位置Bで接触する。封止層105の厚さは、100nm〜1000nm程度である。成膜装置D34は、CVD処理に加えてALD処理と組み合わせて封止層105を成膜してもよい。
なお、封止層105は、中間層103をエッチバックした後に成膜される第2の封止層の一例である。また、成膜装置D34は、中間層103のエッチバック後に封止層105を成膜し、成膜した封止層105を、中間層103から露出した封止層101と接触させる第3の成膜装置の一例である。
図3Cの「S5」に示されるように、隔壁部120上の位置Bにおいて、封止層101の上部は、封止層105に対して一部埋め込まれた状態で密着(接触)している。これにより、少なくとも最も外側の隔壁部、すなわち、最も電極パッド部52に近い位置Bの隔壁部120において、封止層101と封止層105とが密着した壁部を形成することができる。これにより、図1(a)に示したとおり、水分が電極パッド部52の上方から浸入したとしても、封止層101と封止層105とから形成された壁部によりブロックされ、有機EL素子まで浸入することは困難である。この結果、水分による有機EL素子50の発光輝度の低下やダークスポットと呼ばれる非発光領域の発生が抑止される。このようにして本実施形態によれば、水分による有機EL素子50の劣化を抑止して有機デバイスの寿命が短くなることを防ぎ、製品の信頼性を高めることができる。
図2に示した貼合わせ装置36は、図3Dの「S6」に示されるように、カバーシート107を接着剤(粘着層)によって有機EL素子52をカバーするように取り付ける。これにより、有機デバイスの機械的強度を保ち、有機EL素子52を保護することができる。カバーシート107は、透明なガラスやプラスチックにより形成されている。
エッチング装置38は、カバーシート107をマスクとして、電極パッド部52上の封止層105、中間層103、封止層101をエッチングし、電極パッド部52を開口する。これにより、有機デバイスの製造が完了する。
電極パッド部52を開口したことにより、電極パッド部52の上方から水分が入り込む。しかし、水分は、前述の通り、封止層101と封止層105とから形成された壁部によりブロックされ、有機EL素子50まで浸入できない。これにより、有機EL素子50の劣化を抑止して有機デバイスの寿命の低下を防ぐことができる。
図2に示した有機デバイスの製造装置1は、更に制御部51を有する。制御部51は、CPU(Central Processing Unit)53,ROM(Read Only Memory)54、RAM(Random Access Memory)56、HDD(Hard Disk Drive)58及びインターフェイス59を有する。CPU52は、上記記憶領域に格納された各種レシピに従ってシステム全体を制御する。レシピには、各装置の制御情報であるプロセス時間、チャンバ内温度、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種ガス流量、搬送タイミング等が設定されている。
(変形例1)
図3Cの「S5」では、隔壁部120上の位置Bにおいて、封止層101と封止層105とを密着させて壁部を形成することにより、電極パッド部52側からの水分の浸入がブロックされた。これに対して、変形例1では、図6の「S4」に示されるように、隔壁部120上の位置Bのみならず、隔壁部110上の位置C,Dにおいても、封止層101と封止層105とによる壁部によって、電極パッド部52側からの水分の浸入がブロックされる。その際には、図6の「S4」に示されるように、位置B,C,Dにおいて、中間層103から封止層101が露出されるまでエッチバックが実行される。これにより、図6の「S5」に示されるように、中間層103c封止層105は、中間層103から露出した封止層101と位置B,C,Dにおいて接触する。
かかる構成によれば、位置B,C,Dにおいて形成された壁部により、電極パッド部52側からの水分は、より確実にブロックされ、有機EL素子50まで浸入できない。これにより、有機EL素子50の劣化をより確実に抑止することができる。
(変形例2)
更に、変形例2では、図7の「S4」に示されるように、隔壁部110、120上の位置B,C,Dのみならず、隔壁部110が形成されていない位置E,Fにおいても、封止層101と封止層105とが接触する。製造工程では、図7の「S4」に示されるように、位置B,C,D,E,Fにおいて、中間層103から封止層101が露出されるまでエッチバックが実行される。この場合、中間層103は、障壁部の側面にのみ形成されている状態になる。これにより、図7の「S5」に示されるように、中間層103上に成膜される封止層105は、中間層103から露出した封止層101と位置B,C,D,E,Fにおいて接触する。
かかる構成によれば、位置B,C,D,E,Fにおいて形成された壁部により、水分は、更に確実にブロックされ、有機EL素子50まで浸入することをより確実に抑止することができる。
(変形例3)
変形例3では、中間層の形成及びエッチバックを繰り返し実行する。例えば、100〜500nmの厚さの封止層101を形成後に中間層103を形成した基板に対して、図7の「S4」に示した中間層103のエッチバックが行われる。その後、図8Aの「S4−1」に示したように、再度、中間層103を形成する。次に、図8Aの「S4−2」に示したように、形成された中間層103を更にエッチバックする。次に、図8Bの「S5−1」に示したように、封止層105を形成する。ここでは、中間層103の形成及びエッチバックを2度繰り返して実行したが、中間層103の形成及びエッチバックの繰り返しの回数はこれに限られない。
次に、図8Cの「S6−1」に示されるように、有機EL素子52をカバーするように、カバーシート107を接着剤(粘着層)によって取り付ける。これにより、有機デバイスの機械的強度を保ち、有機EL素子52を保護することができる。カバーシート107は、透明なガラスやプラスチックにより形成されている。
エッチング装置38は、カバーシート107をマスクとして、電極パッド部52上の封止層105、中間層103、封止層101をエッチングし、電極パッド部52を開口する。これにより、有機デバイスの製造が完了する。
変形例3に係る有機デバイスの製造によれば、中間層103の形成及びエッチバックを繰り返した後に封止層105を形成する。このように、中間層103の塗布とエッチバックを複数回繰り返すことにより、表面の形状をより滑らかにし、封止層105(第2の封止層)を形成したときのカバレッジを良好にし、ピンホール等の発生を抑制することができる。この結果、有機素子への水分の浸入をより抑制することができる。
特に、変形例3に係る有機デバイスの製造では、下地層の表面に凹凸がある基板に対して封止層105の成膜時にカバレッジを良好にするという効果がある。
上記実施形態及び変形例1〜3に係る有機デバイスの製造によれば、メタルマスクを使用しないため、パーティクルの懸念が少ない。また、パターン形成によるリソグラフィー(露光工程)は1回だけであり、簡単かつ低コスト化が可能であり、大面積の基板への対応も容易である。また、上記実施形態及び変形例1〜3に係る有機デバイスの製造に、LCD等の既存設備を使用することができるため、新たな設備投資を必要とせず、製造コストを抑制できる。
なお、封止層101と封止層105とから形成される壁部は、上記実施形態及び変形例1,2において明記した位置に限らない。壁部は、中間層103の機能を損なわない範囲でエッチバックを行い封止層101が露出した位置において形成できる。ただし、より外側の隔壁部上、つまり、電極パッド部52に近い位置に壁部を形成するほど、水分の浸入抑止の効果は高く好ましい。よって、基板S上に形成された一又は複数の隔壁部のうち少なくとも最も外側に位置する隔壁部上に封止層101と封止層105とから形成される壁部を形成することが好ましい。ただし、一又は複数の隔壁部のうち少なくとも一つの隔壁部上に封止層101と封止層105とから形成される壁部を形成してもよい。例えば、有機EL素子50の形成用の隔壁部110以外の隔壁部を形成せず、隔壁部110上に上記の壁部を形成してもよい。
以上、本実施形態に係る有機デバイスの製造装置1の全体構成及び動作について説明した。これによれば、中間層103から封止層101が露出するまで中間層103がエッチバックされる。エッチバック後に成膜される封止層105は、露出した封止層101と接触し、これにより、壁部が形成される。水分は、かかる壁部によりブロックされ、有機EL素子50まで浸入することは困難である。よって、水分による有機EL素子50の劣化が妨げられ、これにより、有機デバイスの寿命を維持し、その信頼性を高めることができる。特に、本実施形態によれば、製品化後だけでなく、製造工程中においても水分をブロックできるため、有機EL素子の劣化がより確実に防げる。
また、本実施形態に係る有機デバイスの製造方法によれば、中間層103を成膜するためのマスクは不要であり、マスクと基板との位置合わせが不要である。よって、本実施形態では、封止性能の高い封止構造を有するデバイスを、コストを低く抑え、スループットを低下させずに形成することができる。
(装置構成例:エッチング装置)
次に、中間層103をエッチバックするエッチング装置32の装置構成例について、図9を参照しながら説明し、更に、封止層101(封止層105)を成膜する成膜装置B24(成膜装置D34)の装置構成例について、図9を参照しながら説明する。
エッチング装置32は、内部が気密に保持され、電気的に接地されたチャンバCを有している。チャンバCは円筒状であり、例えばチャンバ内壁表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から形成されている。エッチング装置32は、図示しないガス供給源に接続されている。中間層103をエッチバックする場合、ガス供給源からチャンバC内に、例えば、酸素ガスを含むガスが導入される。
チャンバCの内部には、基板Sを載置する載置台202が設けられている。載置台202は、支持台に支持されている。載置台202は、下部電極としても機能する。つまり、載置台202は、図示しない整合器を介して高周波電源210に接続されている。これにより、載置台202には、高周波電源210から所定周波数(例えば2MHz)のバイアス用の高周波電力が供給される。
載置台202の上方には、載置台202と対向する位置に上部電極204が設けられている。上部電極204は、図示しない整合器を介して高周波電源208に接続されている。これにより、上部電極204には、高周波電源208から所定周波数(例えば40MHz)のプラズマ生成用の高周波電力が供給される。
チャンバCの底部には、排気管206が設けられている。排気管206には、図示しない排気装置が接続されている。排気装置は、チャンバCのガスを排気する。
(装置構成例:成膜装置)
次に、封止層101(封止層105)を成膜する成膜装置B24(成膜装置D34)の構成例について図10を参照しながら説明する。図10は、成膜装置の構成の一例を示す縦断面図である。成膜装置D34は、成膜装置B24と同様な構成であるため、以下では成膜装置B24について説明する。なお、本実施形態の成膜装置B24は、ラジアルラインスロットアンテナを用いてプラズマを発生させるCVD装置である。
成膜装置B24は、例えば上面が開口した有底円筒状のチャンバCを備えている。チャンバCは、例えばアルミニウム合金により形成されている。またチャンバCは、接地されている。チャンバCの底部のほぼ中央部には、例えば基板Sを載置するための載置部としての載置台131が設けられている。
載置台131には、電極板132が埋め込まれてもよい。電極板132は、直流電圧源133に接続されてもよい。直流電圧源133は、電極板132に電圧を供給してもよい。これにより、載置台131の表面には静電気力が生じ、基板Sは載置台131上に静電吸着される。また、載置台131は、整合器134を介して高周波電源135に接続されてもよい。載置台131には、高周波電源135からの高周波電力によりバイアス電界が印加されてもよい。高周波電源135は、例えば、周波数が400kHz〜13.56MHzのものを用いてもよい。高周波電源135は、高周波電力を出力することによって、載置台131に対してバイアス電界を印加することができる。また、高周波電源135は、高周波電力を出力することによって、載置台131に載置された基板S及び基板S上に形成された膜にバイアス電界を印加することができる。
チャンバCの上部開口には、例えば気密性を確保するためのOリングなどのシール材140を介して、誘電体窓141が設けられている。この誘電体窓141によってチャンバC内が閉鎖されている。誘電体窓141の上部には、プラズマ生成用のマイクロ波を供給するプラズマ励起部としてのラジアルラインスロットアンテナ142が設けられている。なお、誘電体窓141には例えばアルミナ(Al)が用いられる。かかる場合、誘電体窓141は、ドライクリーニングで用いられる三フッ化窒素(NF)ガスに耐性を有する。また、さらに三フッ化窒素ガスに対する耐性を向上させるため、誘電体窓141のアルミナの表面にイットリア(Y)、スピネル(MgAl)、又は窒化アルミニウム(AlN)を被覆してもよい。
ラジアルラインスロットアンテナ142は、下面が開口した略円筒状のアンテナ本体150を備えている。アンテナ本体150の下面の開口部には、多数のスロットが形成された円盤状のスロット板151が設けられている。アンテナ本体150内のスロット板151の上部には、低損失誘電体材料により形成された誘電体板152が設けられてもよい。アンテナ本体150の上面には、マイクロ波発振装置153に通じる同軸導波管154が接続されている。マイクロ波発振装置153は、チャンバCの外部に設置されており、ラジアルラインスロットアンテナ142に対し、所定周波数、例えば2.45GHzのマイクロ波を発振できる。かかる構成により、マイクロ波発振装置153から発振されたマイクロ波は、ラジアルラインスロットアンテナ142内に伝搬され、誘電体板152で圧縮され短波長化された後、スロット板151で円偏波を発生させ、誘電体窓141からチャンバC内に向けて放射される。
チャンバC内の載置台131とラジアルラインスロットアンテナ142との間には、例えば略平板形状の原料ガス供給構造体60が設けられている。原料ガス供給構造体60は、外形が平面から見て少なくとも基板Sの直径よりも大きい円形状に形成されている。この原料ガス供給構造体60によって、チャンバC内は、ラジアルラインスロットアンテナ142側のプラズマ生成領域R1と、載置台131側の原料ガス解離領域R2とに区画されている。なお、原料ガス供給構造体60には例えばアルミナを用いるのがよい。かかる場合、アルミナはセラミックスであるため、アルミニウム等の金属材料に比べ高耐熱性や高強度を有する。また、プラズマ生成領域R1で生成されたプラズマをトラップすることもないので、ガラス基板に対して十分なイオン照射を得ることができる。そして、ガラス基板上の膜への十分なイオン照射によって、緻密な膜を生成することができる。また、原料ガス供給構造体60は、ドライクリーニングで用いられる三フッ化窒素ガスに耐性を有する。さらに、三フッ化窒素ガスに対する耐性を向上させるため、原料ガス供給構造体60のアルミナの表面にイットリア、スピネル又は窒化アルミニウムを被覆してもよい。
原料ガス供給構造体60は、図11Aに示すように同一平面上で略格子状に配置された一続きの原料ガス供給管61により構成されている。原料ガス供給管61は、軸方向から見て縦断面が方形に形成されている。原料ガス供給管61同士の隙間には、多数の開口部62が形成されている。原料ガス供給構造体60の上側のプラズマ生成領域R1で生成されたプラズマは、この開口部62を通過して載置台131側の原料ガス解離領域R2に進入できる。
原料ガス供給構造体60の原料ガス供給管61の下面には、図10に示すように多数の原料ガス供給口63が形成されている。これらの原料ガス供給口63は、原料ガス供給構造体60面内において均等に配置されている。原料ガス供給管61には、チャンバCの外部に設置された原料ガス供給源64に連通するガス管65が接続されている。原料ガス供給源64には、例えば原料ガスとして、シラン系ガスであるシラン(SiH4)ガスと水素(H2)ガスが個別に封入されている。ガス管65には、バルブ66、マスフローコントローラ67が設けられている。かかる構成によって、原料ガス供給源64からガス管65を通じて原料ガス供給管61に所定流量のシランガスと水素ガスとがそれぞれ導入される。そして、これらシランガスと水素ガスは、各原料ガス供給口63から下方の原料ガス解離領域R2に向けて供給される。
プラズマ生成領域R1の外周面を覆うチャンバCの内周面には、プラズマの原料となるプラズマ励起用ガスを供給する第1のプラズマ励起用ガス供給口70が形成されている。第1のプラズマ励起用ガス供給口70は、例えばチャンバCの内周面に沿って複数箇所に形成されている。第1のプラズマ励起用ガス供給口70には、例えばチャンバCの側壁部を貫通し、チャンバCの外部に設置された第1のプラズマ励起用ガス供給源71に通じる第1のプラズマ励起用ガス供給管72が接続されている。第1のプラズマ励起用ガス供給管72には、バルブ73、マスフローコントローラ74が設けられている。かかる構成によって、チャンバC内のプラズマ生成領域R1内には、側方から所定流量のプラズマ励起用ガスを供給することができる。本実施形態においては、第1のプラズマ励起用ガス供給源71に、プラズマ励起用ガスとして、例えばアルゴン(Ar)ガスが封入されている。
原料ガス供給構造体60の上面には、例えば原料ガス供給構造体60と同様の構成を有する略平板形状のプラズマ励起用ガス供給構造体80が積層され配置されている。プラズマ励起用ガス供給構造体80は、図11Bに示すように格子状に配置された第2のプラズマ励起用ガス供給管81により構成されている。なお、プラズマ励起用ガス供給構造体80には例えばアルミナが用いられるとよい。かかる場合においても、上述したようにアルミナはセラミックスであるため、アルミニウム等の金属材料に比べ高耐熱性や高強度を有する。また、プラズマ生成領域R1で生成されたプラズマをトラップすることもないので、ガラス基板に対して十分なイオン照射を得ることができる。そして、ガラス基板上の膜への十分なイオン照射によって、緻密な膜を生成することができる。また、プラズマ励起用ガス供給構造体80は、ドライクリーニングで用いられる三フッ化窒素ガスに耐性を有する。さらに、三フッ化窒素ガスに対する耐性を向上させるため、プラズマ励起用ガス供給構造体80のアルミナの表面にイットリア又はスピネルを被覆してもよい。
第2のプラズマ励起用ガス供給管81の上面には、図10に示すように複数の第2のプラズマ励起用ガス供給口82が形成されている。これらの複数の第2のプラズマ励起用ガス供給口82は、プラズマ励起用ガス供給構造体80面内において均等に配置されている。これにより、プラズマ生成領域R1に対し下側から上方に向けてプラズマ励起用ガスを供給できる。なお、本実施形態では、このプラズマ励起用ガスは例えばアルゴンガスである。また、アルゴンガスに加えて、原料ガスである窒素(N2)ガスもプラズマ励起用ガス供給構造体80からプラズマ生成領域R1に対して供給される。
格子状の第2のプラズマ励起用ガス供給管81同士の隙間には、開口部83が形成されており、プラズマ生成領域R1で生成されたプラズマは、プラズマ励起用ガス供給構造体80と原料ガス供給構造体60を通過して下方の原料ガス解離領域R2に進入できる。
第2のプラズマ励起用ガス供給管81には、チャンバCの外部に設置された第2のプラズマ励起用ガス供給源84に連通するガス管85が接続されている。第2のプラズマ励起用ガス供給源84には、例えばプラズマ励起用ガスであるアルゴンガスと原料ガスである窒素ガスが個別に封入されている。ガス管85には、バルブ86、マスフローコントローラ87が設けられている。かかる構成によって、第2のプラズマ励起用ガス供給口82からプラズマ生成領域R1に対し、所定流量の窒素ガスとアルゴンガスをそれぞれ供給できる。
チャンバCの底部の載置台131を挟んだ両側には、チャンバC内の雰囲気を排気するための排気口190が設けられている。排気口190には、ターボ分子ポンプなどの排気装置191に通じる排気管192が接続されている。この排気口190からの排気により、チャンバC内を所定の圧力、例えば後述するように10Pa〜60Paに維持できる。
以上の成膜装置B24には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。制御部100は、図2に示した制御部51と一体であってもよいし、別体であってもよい。プログラム格納部には、成膜装置B24における基板S上への封止膜101の成膜処理及び成膜装置D34における基板S上への封止膜105の成膜処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の原料ガスの供給や、プラズマ励起用ガスの供給、マイクロ波の放射、駆動系の動作等を制御して、成膜装置B24,34における成膜処理を実現させるためのプログラムも格納されている。また、プログラム格納部には、高周波電源135によって印加されるバイアス電界の印加タイミングを制御するためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。原料ガスの供給、プラズマ励起用ガスの供給、マイクロ波の放射、及びバイアス電界の印加タイミングについては後述する。
次に、以上のように構成された成膜装置B24において行われるSiN膜の成膜方法について説明する。成膜装置D34においても同様にSiN膜を成膜できる。なお、成膜装置B24において成膜されるSiN膜は封止膜101の一例であり、成膜装置D34において成膜されるSiN膜は封止膜105の一例である。
先ず、例えば成膜装置B24の立ち上げ時に、アルゴンガスの供給流量が調整される。具体的には、第1のプラズマ励起用ガス供給口70から供給されるアルゴンガスの供給流量と第2のプラズマ励起用ガス供給口82から供給されるアルゴンガスの供給流量が、プラズマ生成領域R1内に供給されるアルゴンガスの濃度が均一になるように調整される。この供給流量調整では、例えば排気装置191を稼動させ、チャンバC内に実際の成膜処理時と同じような気流を形成した状態で、各プラズマ励起用ガス供給口70、82から適当な供給流量に設定されたアルゴンガスが供給される。そして、その供給流量設定で、実際に試験用の基板に成膜が施され、その成膜が基板面内で均一に行われたか否かが検査される。プラズマ生成領域R1内のアルゴンガスの濃度が均一の場合に、基板面内の成膜が均一に行われるので、検査の結果、成膜が基板面内において均一に行われていない場合には、各アルゴンガスの供給流量の設定が変更され、再度試験用の基板に成膜が施される。これを繰り返して、成膜が基板面内において均一に行われプラズマ生成領域R1内のアルゴンガスの濃度が均一になるように、各プラズマ励起用ガス供給口70、82からの供給流量が設定される。
各プラズマ励起用ガス供給口70、82の供給流量が設定された後、成膜装置B24における基板Sの成膜処理が開始される。先ず、基板SがチャンバC内に搬入され、載置台131上に吸着保持される。このとき、基板Sの温度は100℃以下、例えば50℃〜100℃に維持される。続いて、排気装置191によりチャンバC内の排気が開始され、チャンバC内の圧力が所定の圧力、例えば10Pa〜60Paに減圧され、その状態が維持される。なお、基板Sの温度は100℃以下に限定されず、有機EL素子がダメージを受けない温度であればよく、有機EL素子の材質等によって決まる。
ここで、チャンバC内の圧力が20Paより低いと基板S上にSiN膜を適切に成膜することができないおそれがある。また、チャンバC内の圧力が60Paを超えると、気相中でのガス分子間の反応が増加し、パーティクルが発生するおそれがある。このため、上述のようにチャンバC内の圧力は、10Pa〜60Paに維持される。
チャンバC内が減圧されると、プラズマ生成領域R1内に、側方の第1のプラズマ励起用ガス供給口70からアルゴンガスが供給されると共に、下方の第2のプラズマ励起用ガス供給口82から窒素ガスとアルゴンガスが供給される。このとき、プラズマ生成領域R1内のアルゴンガスの濃度は、プラズマ生成領域R1内において均等に維持される。また、窒素ガスは例えば21sccmの流量で供給される。ラジアルラインスロットアンテナ142からは、直下のプラズマ生成領域R1に向けて、例えば2.45GHzの周波数で2.5W/cm2〜4.7W/cm2のパワーのマイクロ波が放射される。このマイクロ波の放射によって、プラズマ生成領域R1内においてアルゴンガスがプラズマ化され、窒素ガスがラジカル化(或いはイオン化)する。なお、このとき、下方に進行するマイクロ波は、生成されたプラズマに吸収される。この結果、プラズマ生成領域R1内には、高密度のプラズマが生成される。
プラズマ生成領域R1内で生成されたプラズマは、プラズマ励起用ガス供給構造体80と原料ガス供給構造体60を通過して下方の原料ガス解離領域R2内に進入する。原料ガス解離領域R2には、原料ガス供給構造体60の各原料ガス供給口63からシランガスと水素ガスが供給されている。このとき、シランガスは例えば18sccmの流量で供給され、水素ガスは例えば64sccmの流量で供給される。シランガスと水素ガスは、それぞれ上方から進入したプラズマにより解離される。そして、これらのラジカルとプラズマ生成領域R1から供給された窒素ガスのラジカルによって、基板S上にSiN膜が堆積する。
(封止層の積層構造例)
封止層101,105は、単層膜よりも多層膜にすると、界面にて物質の進入経路を変える封止効果が高まり、水分がより浸入し難い封止層を形成できる。
多層膜の封止層の形成方法について、図12を参照しながら簡単に説明する。ここでは、封止層101の成膜方法を説明するが、封止層105の場合も同様に成膜できる。図12は、封止層101の積層構造の一例における高周波電力の印加タイミングと各タイミングにおける成膜状態を示す図である。ここでは、封止層101としてSiN膜(窒化珪素膜)を成膜する例を挙げて説明する。
制御部100は、封止層101を形成する際、図12に示したタイムチャートに従い、図12に示した高周波電源135からの高周波電力の印加タイミングを制御する。これにより、載置台131へのバイアス電界が制御される。具体的には、制御部100は、最初に、ある時刻において、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス、水素(H)ガス、シラン系ガス、及びマイクロ波(μ波)パワーの供給を開始する。制御部100は、窒素ガス及び水素ガスに替えて、アンモニア(NH)ガスを供給することもできる。また、制御部100は、シランガスに替えて、他のSi含有ガスを供給することもできる。
アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス及びシランガスを供給した後、少し遅れてマイクロ波(μ波)のパワーの供給を開始する。このように、ガスの供給から少し遅れてマイクロ波(μ波)のパワーを供給することで、基板Sにダメージを与えずに成膜することができる。ガスの供給及びマイクロ波のパワーの供給が安定した時刻tの後の時刻tにおいて、有機EL素子50上にはSiN層101aが積層される。このとき、SiN層101aの厚さは、30〜100nm程度である。
上記各種ガス及びマイクロ波のパワーの供給は継続したまま、時刻t〜時刻tの間、高周波電源135からバイアス用の高周波電力(RFバイアス)が印加される。これにより、プラズマ中のイオンがSiN層101aへ引き込まれ、SiN層101aにイオン衝撃を付与し、SiN層101aと異なる堆積方向にSiN層101bを成長させるとともに、SiN層101aに発生したピンホールを非線形形状に成長させる。このとき、SiN層101bの厚さは、10〜50nm程度である。
このように、バイアス用の高周波電力の印加のオン及びオフを周期的に繰り返すことにより、SiN層101a及びSiN層101bが交互に積層がされた多層膜の封止層を形成できる。
これによれば、SiN層101a及びSiN層101bの各層の界面にて物質の進入経路を変えることができるので封止効果が高まり、水分がより浸入し難い封止層101を形成できる。その他に成膜中にシラン(SiH)ガスを間欠供給することで積層構造を作ることもできる。
以上、有機デバイスの製造方法、有機デバイスの製造装置及び有機デバイスを実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。また、上記実施例及び変形例を矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
例えば、本発明にかかるエッチング装置としては、図9に示した容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置に限られず、ラジアルラインスロットアンテナを用いたプラズマ装置、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron resonance Plasma)装置等を用いることができる。
また、本発明に係る成膜装置(成膜装置A〜D)としては、図10に示したラジアルラインスロットアンテナを用いたCVD装置に限られず、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)装置、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron resonance Plasma)装置等を用いることができる。
1:有機デバイスの製造装置、12:洗浄装置、16:蒸着装置、20:成膜装置A、24:成膜装置B、32:エッチング装置、34:成膜装置D、36:貼り合わせ装置、38:エッチング装置、50:有機EL素子、51:制御部、52:電極パッド部、100:制御部、101:封止層、103:中間層、105:封止層、110,120,130,140:隔壁部

Claims (10)

  1. 一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層上に中間層が形成された基板を搬入する工程と、
    前記基板に形成された中間層をエッチバックする工程と、を有し、
    前記エッチバックする工程は、
    前記一又は複数の隔壁部のうち少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層と接触可能な程度に前記中間層から露出するまで実行される、
    ことを特徴とする有機デバイスの製造方法。
  2. 前記エッチバックする工程は、
    前記一又は複数の隔壁部のうち少なくとも最も外側に位置する隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層と接触可能な程度に前記中間層から露出するまで実行される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
  3. 前記搬入する工程は、
    前記有機層に隣接する第1の隔壁部と、該第1の隔壁部の外側であって該第1の隔壁部と電極パッド部との間にて前記有機層を囲むように設けられた一又は複数の第2の隔壁部とが形成された基板を搬入する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機デバイスの製造方法。
  4. 一又は複数の前記第2の隔壁部の幅は、前記第1の隔壁部の幅よりも狭く形成されている、
    ことを特徴とする請求項3に記載の有機デバイスの製造方法。
  5. 一又は複数の前記第2の隔壁部は、先端側が根元側よりも細く形成されている、
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の有機デバイスの製造方法。
  6. 前記エッチバックする工程は、
    リフロー後の平坦化された前記中間層をエッチバックする、
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
  7. 基板上に形成された一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層を成膜する第1の成膜装置と、
    前記第1の封止層上に中間層を塗布する第2の成膜装置と、
    前記中間層をエッチバックするエッチング装置と、
    を有し、
    前記エッチング装置は、
    前記一又は複数の隔壁部のうち少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が、次工程において成膜される第2の封止層と接触可能な程度に前記中間層から露出するまで前記中間層をエッチバックする、
    ことを特徴とする有機デバイスの製造装置。
  8. 前記中間層をエッチバックした後、前記第2の封止層を成膜し、該第2の封止層を前記中間層から露出した前記第1の封止層と接触させる第3の成膜装置、
    を更に有することを特徴とする請求項7に記載の有機デバイスの製造装置。
  9. 一又は複数の隔壁部と陽極上の有機層とを封止する第1の封止層上に、少なくとも一つの隔壁部上の第1の封止層の少なくとも一部が露出するように中間層が形成され、
    前記中間層上の第2の封止層が、該中間層から露出した前記第1の封止層と接触するように形成された、
    ことを特徴とする有機デバイス。
  10. 前記第1の封止層と前記第2の封止層とは、少なくとも最も外側に位置する隔壁部上で前記有機層を囲むように接触する、
    ことを特徴とする請求項9に記載の有機デバイス。
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