JP2014199746A - リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム電池用負極およびリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム電池用負極およびリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】容量特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料を提供する。【解決手段】非晶質炭素に含まれる炭素結晶子のグラフェン層平面にホールが形成された非晶質炭素材料からなるリチウム二次電池用負極炭素材料。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム電池用負極およびリチウム二次電池に関するものである。
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、自己放電が少なく長期信頼性に優れる等の利点により、ノート型パソコンや携帯電話などの小型電子機器用の電池として広く実用化されている。近年では電子機器の高機能化や電気自動車への利用が進み、より性能の高いリチウム二次電池の開発が求められている。
現在、リチウム二次電池の負極活物質としては、炭素材料が一般的であり、電池性能の向上のために種々な炭素材料が提案されている。
特許文献1には、リチウムイオン二次電池用の炭素負極材において、炭素負極材を構成する難黒鉛化性炭素の微粒子表面の細孔入口径を、リチウム二次電池の電解液中のリチウムイオンが通過可能で、かつ、電解液中の有機溶媒が実質的に通過不可能な径としたことを特徴とするリチウム二次電池の炭素負極材が記載されている。この微粒子表面の細孔入口径は、熱分解性炭化水素蒸気または液状の熱分解性炭化水素化合物の熱分解法による析出により調節されることが記載されている。このような炭素負極材を用いることにより、電解液の有機溶媒が負極の難黒鉛化性炭素に吸着して放電容量を低下させることを防止でき、電池容量を向上させることができると記載されている。
特許文献2及び3には、熱分解炭素を析出させた難黒鉛化性炭素多孔体を用い、電解液中のリチウムイオンが通過可能で、かつ、電解液中の有機溶媒が実質的に通過不可能な細孔径を有するように調整されている、リチウムイオン二次電池用の難黒鉛化性炭素材料が記載されている。この材料の細孔径は、不活性雰囲気中、炭化水素気流下で加熱処理して熱分解炭素を析出させることにより調整することが記載されている。また、リチウムのドープ量を多くするために、熱分解炭素の析出前に一般的な賦活処理を行って細孔容積を増加させた炭素多孔体を基材として用いることが好ましいことが記載されている。このような負極材料を用いることにより、不可逆容量が小さく、放電容量の大きなリチウムイオン二次電池が得られることが記載されている。
特許文献4には、平均貫通幅が0.05〜5μmの三次元相互貫通孔を有するアモルファスカーボンからなる負極活物質が記載されている。この負極活物質はイオンの吸蔵−放出量に優れ、リチウムイオン二次電池の出力密度を改善できることが記載されている。
特許文献5には、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な非晶質炭素粒子を含む活物質とバインダをと含む負極層を備え、1nm以上3nm以下の孔径を有する細孔と、20nm以上100nm以下の孔径を有する細孔を特定の比率で有する負極が記載されている。この細孔の比率は、ロールプレス機を用いてプレスすることにより調整することができると記載されている。このような負極を用いることによりリチウムイオン電池の出力を向上できることが記載されている。
特開平7−230803号公報 特開2000−315500号公報 特開2000−315501号公報 特開2007−250469号公報 特開2012−164638号公報
近年、リチウム二次電池には、放電後に短時間で入力できる高入力特性が求められている。しかしながら、炭素材料のなかでも非晶質炭素を負極活物質に用いたリチウム二次電池は、入力特性は高いものの、容量特性は満足できるものではなかった。
本発明の目的は、上述した課題を解決することにあり、すなわち容量特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料、並びにこれを用いたリチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池を提供することにある。
本発明の一態様によれば、非晶質炭素に含まれる炭素結晶子のグラフェン層平面にホールが形成された非晶質炭素材料からなるリチウム二次電池用負極炭素材料が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の負極炭素材料を含むリチウム二次電池用負極が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の負極を含むリチウム二次電池が提供される。
本発明実施形態によれば、容量特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料、並びにこれを用いたリチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池を提供することができる。
実施例1及び比較例1の炭素材料のXRDパターンを示す図。 KOH水溶液処理後熱処理前の非晶質炭素のSEM画像を示す図。
本実施形態による非晶質炭素材料は、非晶質炭素に含まれる炭素結晶子のグラフェン層平面(ベーサル面、グラフェン積層部のエッジ以外の部位)にホールが形成されている。このようなホールの形成により、リチウムイオンとの反応サイト(Li反応サイト)が増加し、反応容量を増大させることができ、このような炭素材料を負極に用いることによりリチウム二次電池の容量特性を改善することができる。
このようなホールは、炭素結晶子の表面側のグラフェン層の内側のグラフェン層平面にも形成されていることが好ましい。少なくとも表層から内側へ3層にホールが形成されていることがより好ましく、少なくとも表層から内側へ5層にホールが形成されていることがさらに好ましく、さらに多くの層(例えば10層以上)にホールを形成することができる。炭素結晶子を構成する全てのグラフェン層にホールを形成することができる。また、複数のグラフェン層を貫通するようにホールを形成することもできる。内部のグラフェン層平面のホールは、種々の方法で炭素材料を切断して断面を出し、TEM、SEM等の電子顕微鏡で観測することができる。
ホールがLiイオンを通過できる十分な開口サイズを有する場合は、反応容量の向上に加えて、グラフェン層の積層方向(ベーサル面に垂直方向)の奥へ至るLi経路が形成され、入力特性向上に寄与することができる。
ホールの開口サイズは、容量特性向上に寄与でき、入力特性等の他の電池特性に悪影響を与えないサイズであれば特に制限はないが、ナノメートルサイズに設定でき、0.2nm以上10nm以下が好ましい。ここで、「ナノメートルサイズ」とは0.1nm〜数十nm(50nm未満)を意味する。「開口サイズ」とは、開口の最大長さ(最大開口サイズ)を意味し、開口の輪郭を収容できる最小面積の円の直径に相当する。十分なホール形成効果を得る点から、ホール開口の輪郭の内側に存在できる最大面積の円の直径に相当する開口サイズ(最小開口サイズ)も0.2nm以上10nm以下が好ましい。
このような開口サイズを有するホールの数密度は、50〜300個/μm2の範囲にあることが好ましく、100〜200個/μm2の範囲の範囲にあることがより好ましい。ホールの数密度が低すぎると十分なホール形成効果が得られず、逆にホールの数密度が高すぎると比表面積が大きくなりすぎて充放電時の副反応が生じやすくなり、充放電効率が低下する場合がある。このホールの数密度は、非晶質炭素材料表面の電子顕微鏡画像において、表面の100nm×100nmの領域を任意に10カ所選び、各領域内で開口サイズが2nm以上のホールの個数をカウントし、10カ所における平均値(個数/μm2)として求めることができる。本実施形態によれば、炭素結晶子の表層から内部へ3層目程度はホールの数密度がほとんど変わらない非晶質炭素材料を形成することができる。また、表層から内部へ複数層を貫通するホールを形成することができ、30層程度まで到達するホールを形成することもできる。その際、表層から内側へ奥にいくほど、ホールの開口径は小さくなり、数密度も低下する傾向がある。十分なホール形成効果を得る点から、少なくとも表層及びその内側のグラフェン層においてホールの数密度が上記の範囲にあることが好ましく、少なくとも表層から該表層を含む3層目までのグラフェン層においてホールの数密度が上記の範囲にあることがより好ましく、少なくとも表層から該表層を含む5層目までのグラフェン層においてホールの数密度が上記の範囲にあることがさらに好ましく、少なくとも表層から該表層を含む10層目までのグラフェン層においてホールの数密度を上記の範囲にすることもできる。
また、ホールはグラフェン層平面において全面にわたって形成されていることが好ましく、均一に分布していることが好ましい。複数のホール間隔(隣り合うホールの開口間の最小距離、平均値)は、10〜100nmの範囲にあることが好ましい。このようにホールが形成されていることにより、ホールの形成効果(容量特性向上)をより高めることができる。このホール間隔は、非晶質炭素材料表面の電子顕微鏡画像において、表面の100nm×100nmの領域を任意に10カ所選び、各領域内でホールの間隔を測定し、10カ所における平均値として求めることができる。
このようなホールは、非晶質炭素材料に固有の空隙(一次粒子間の空隙や、欠陥、エッジ近傍の空隙や割れ)とは異なる。このような通常の非晶質炭素を負極に用いても、リチウム二次電池の容量特性は十分なものではない。
ホールの形成は、非晶質炭素をKOH水溶液などのアルカリ水系溶液で浸漬処理し、濾別等の固液分離後に熱処理を行うことで形成することができる。
アルカリ水系溶液としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を水系溶媒に溶解したものを用いることができるが、KOH水溶液が好ましい。KOH等のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物の濃度は、0.1M〜10Mの範囲に設定できる。
アルカリ水系溶液への非晶質炭素の浸漬時間は、1分〜24時間の範囲に設定でき、浸漬時は必要に応じて適宜攪拌を行うことができる。浸漬時のアルカリ水系溶液の温度は、10℃〜60℃の範囲に設定でき、20℃〜50℃の範囲が好ましい。
浸漬処理後の熱処理は、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気で行うことができる。熱処理温度は400℃〜1200℃の範囲に設定でき、熱処理時間は0.5時間〜24時間に設定できる。熱処理後、水洗し、乾燥を行ってホールが形成された非晶質炭素材料が得られる。
例えば、非晶質炭素をKOH水溶液に浸漬すると、グラフェン層上にその平面の全体にわたってKOH結晶が斑点状に分布して形成される(図2)。その後の熱処理時に、2KOH+C→2K+H2O+COで示される反応が起こり、KOH結晶の形成位置の炭素が欠損し、またはその付近の炭素が欠損し、KOH結晶のサイズと同じかそれ以上のサイズのホールが形成される。このような反応は内側のグラフェン層においても順次進行し、内側のグラフェン層にもホールを形成することができる。
ホールの開口サイズ、数密度、分布は、KOH結晶等の結晶のサイズや数密度、分布に依存し、KOH等のアルカリ水系溶液の濃度や、浸漬時間、浸漬温度、浸漬時の攪拌等の浸漬条件によって制御でき、さらに、浸漬処理後の熱処理温度、熱処理時間、雰囲気等の熱処理条件によって制御することができる。
本実施形態によれば非晶質材料の構造を著しく劣化させることなく、グラフェン層平面にホールを形成することができるため、非晶質材料本来の特性による電池特性を大きく損なうことなく、リチウム二次電池の容量特性を改善することができる。
非晶質炭素としては、特に限定されないが、X線回折法による002面の面間隔(d002)が0.340nmを超えるものが好ましく、0.350nm以上であるものがより好ましく、0.360nm以上であるものがさらに好ましく、0.380nm以下が好ましい。このような非晶質炭素としては、タールピッチ等の有機材料を熱処理(2500℃以下)して得られた炭素材料やコークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等のソフトカーボン(相構造の一部に黒鉛結晶相が存在するものを含む)、フェノール樹脂等の高分子樹脂を熱処理して得られる炭素材料等のハードカーボンが挙げられる。また、酸素と炭素の元素比(O/C比)が0.01未満の非晶質炭素を用いることができる。
本実施形態による非晶質炭素材料は、導電性の観点から、酸素と炭素の元素比(O/C比)が0.01未満であることが好ましく、0.008以下であることがより好ましく、0.005以下であることがさらに好ましい。
本実施形態による非晶質炭素材料は、そのグラフェン層に、Liと合金化できる金属またはその酸化物を形成することができる。この金属または金属酸化物は、リチウムと反応可能であり、リチウム二次電池の充放電において電気化学的に活性なものである。このような金属または金属酸化物としては、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはその酸化物を用いることができる。
このような金属または金属酸化物は、グラフェン層に形成されたホール周辺に形成されることが好ましい。
このような金属または金属酸化物を形成することにより、反応容量を増大することができる。特に、金属または金属酸化物がホール周辺に形成されることにより、ホール周辺において、その他の部位と比べて金属または金属酸化物が強く結合でき、可逆性に優れるLi反応サイトが増加し、反応容量を向上させることができる。
このような金属または金属酸化物の形成手法としては、CVD、スパッタ、電解めっき、無電解めっき、水熱合成法などが挙げられる。
金属または金属酸化物の含有量は、非晶質炭素材料に対して0.1〜30質量%が好ましい。この含有量が少なすぎると十分な含有効果がなく、この含有量が多すぎると、金属または金属酸化物の充放電時の体積膨張収縮の影響が大きく、炭素材料が劣化しやすくなる。
本実施形態による非晶質炭素材料は他の非晶質炭素で被覆することができる。これにより、非晶質炭素材料と電解液との副反応を抑制でき、充放電効率が向上し、反応容量を増大することができる。
非晶質炭素を被覆する方法としては、水熱合成法、CVD、スパッタなどが挙げられる。
水熱合成法による非晶質炭素材料への非晶質炭素の被覆は、例えば次のようにして行うことができる。まず、非晶質炭素材料の粉末を炭素前駆体溶液に浸漬し、混合する。その後、真空ろ過を行って粉末を分離する。次に、分離された粉末を不活性雰囲気下で熱処理する。次いで、得られた粉末の凝集体を粉砕して所望の粒径に揃える。炭素前駆体溶液としては種々の糖溶液を用いることができ、特にスクロース水溶液が好ましい。この水溶液のスクロース濃度は0.1〜10Mに設定でき、浸漬時間は1分〜24時間に設定できる。熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で、400〜1200℃、0.5〜24時間行うことができる。
以上に説明したホールが形成された非晶質炭素材料は、グラフェン層にLiと合金化できる金属またはその酸化物が形成された上記の構成と、非晶質炭素材料で被覆された上記の構成のいずれか一方または両方を備えることができる。
本実施形態による負極炭素材料は、充填効率や混合性、成形性等の点から、粒子状のものを用いることができる。粒子の形状としては、球状、楕円球状、鱗片状が挙げられる。一般的な球状化処理を行ってもよい。
本実施形態による負極炭素材料の平均粒径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、入出力特性の観点や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、40μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(メジアン径:D50)を意味する。
本実施形態による負極炭素材料のBET比表面積(窒素吸着法による77Kでの測定に基づく)は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、10m2/g未満が好ましく、5m2/g以下がより好ましい。一方、十分な入出力特性を得る点から、BET比表面積は、0.5m2/g以上が好ましく、1m2/g以上がより好ましい。
以上に説明した負極炭素材料は、リチウムイオン二次電池の負極活物質に適用でき、この炭素材料を負極活物質として用いることにより入力特性が高く、容量特性が改善されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池用の負極は、例えば、負極集電体上に、この炭素材料からなる負極活物質と結着剤を含む負極活物質層を形成することで作製することができる。この負極活物質層は、一般的なスラリー塗布法で形成することができる。具体的には、負極活物質、結着剤および溶媒を含むスラリーを調製し、これを負極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加圧することで、負極を得ることができる。負極スラリーの塗布方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、ディップコーティング法が挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を集電体として形成して、負極を得ることもできる。
負極用の結着剤としては、特に制限されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。スラリー溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水を用いることができる。水を溶媒として用いる場合、さらに増粘剤として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールを用いることができる。
この負極用の結着剤の含有量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、負極活物質100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲にあることが好ましく、0.5〜25質量部の範囲がより好ましく、1〜20質量部の範囲がさらに好ましい。
負極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、銅、ニッケル、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタルおよびこれらの2種以上を含む合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
本発明の実施形態によるリチウムイオン二次電池は、上記負極と正極と電解質を含む。
正極は、例えば、正極活物質、結着剤及び溶媒(さらに必要により導電補助材)を含むスラリーを調製し、これを正極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加圧することにより、正極集電体上に正極活物質層を形成することにより作製できる。
正極活物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、リチウム複合酸化物やリン酸鉄リチウムなどを用いることができる。リチウム複合酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn24);コバルト酸リチウム(LiCoO2);ニッケル酸リチウム(LiNiO2);これらのリチウム化合物のマンガン、コバルト、ニッケルの部分の少なくとも一部をアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛など他の金属元素で置換したもの;マンガン酸リチウムのマンガンの一部を少なくともニッケルで置換したニッケル置換マンガン酸リチウム;ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を少なくともコバルトで置換したコバルト置換ニッケル酸リチウム;ニッケル置換マンガン酸リチウムのマンガンの一部を他の金属(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛の少なくとも一種)で置換したもの;コバルト置換ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の金属元素(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛の少なくとも一種)で置換したものが挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。正極活物質の平均粒径については、電解液との反応性やレート特性等の観点から、例えば平均粒径が0.1〜50μmの範囲にある正極活物質を用いることができ、好ましくは平均粒径が1〜30μmの範囲にある正極活物質、より好ましくは平均粒径が5〜25μmの範囲にあるものを用いることができる。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(メジアン径:D50)を意味する。
正極用の結着剤としては、特に制限されるものではないが、負極用結着剤と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。正極用の結着剤の含有量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、正極活物質100質量部に対して1〜25質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましく、2〜10質量部の範囲がさらに好ましい。ポリフッ化ビニリデン(PVdF)以外の結着剤としては、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。スラリー溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることができる。
正極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性の観点から、例えば、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼(SUS)、その他のバルブメタル、又はそれらの合金を用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。
正極の作製に際して、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
電解質としては、1種又は2種以上の非水溶媒に、リチウム塩を溶解させた非水系電解液を用いることができる。非水溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;γ−ブチロラクトンなどのγ−ラクトン;1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテルが挙げられる。その他、非水溶媒として、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を用いることもできる。
非水溶媒に溶解させるリチウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えばLiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO22、LiN(CF3SO22、リチウムビスオキサラトボレートが挙げられる。これらのリチウム塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。また、非水系電解液の代わりにポリマー電解質を用いてもよい。
正極と負極との間にはセパレータを設けることができる。このセパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリイミド等からなる多孔性フィルムや織布、不織布を用いることができる。
電池形状としては、円筒形、角形、コイン型、ボタン型、ラミネート型が挙げられる。ラミネート型の場合、正極、セパレータ、負極および電解質を収容する外装体としてラミネートフィルムを用いることが好ましい。このラミネートフィルムは、樹脂基材と、金属箔層、熱融着層(シーラント)を含む。この樹脂基材としては、ポリエステルやナイロンが挙げられ、この金属箔層としては、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン箔が挙げられる。熱溶着層の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性高分子材料が挙げられる。また、樹脂基材層や金属箔層はそれぞれ1層に限定されるものではなく2層以上であってもよい。汎用性やコストの観点から、アルミニウムラミネートフィルムが好ましい。
正極と負極とこれらの間に配置されたセパレータは、ラミネートフィルム等からなる外装容器に収容され、電解液が注入され、封止される。複数の電極対が積層された電極群が収容された構造とすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
(実施例1)
非晶質炭素(ソフトカーボン、平均粒径10μm、比表面積2m2/g、真密度2g/cc)を7M KOH水溶液に室温で12時間浸漬した。その後、真空ろ過により炭素材料を分離し、これを窒素雰囲気下で800℃1時間熱処理を行った。この炭素材料を水洗した後、70℃24時間乾燥を行って、ホールが形成された非晶質炭素材料を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にしてホールを形成した非晶質炭素材料を1Mスクロース水溶液に浸漬し、ミキサーで10分混合した。その後、真空ろ過により炭素材料を分離し、これを窒素雰囲気下で1000℃3時間の熱処理を行って、非晶質炭素で被覆された炭素材料粉末の凝集体を得た。得られた炭素材料粉末の凝集体を粉砕して、所定の平均粒径を有する炭素材料を得た。
(比較例1)
実施例1と同じ非晶質炭素を用意し、そのまま負極材料として用いた。
(黒鉛系材料の結晶構造の測定)
X線回折法(XRD)により、実施例1のホールが形成された炭素材料および比較例1の未処理の非晶質炭素の結晶構造を測定した。得られたXRDパターンを図1に示す。比較例1と比べて実施例1は、熱処理の影響により結晶性が若干高まったようにみられるものの、ほぼ比較例1と同じ結晶構造を有していることが分かる。したがって、非晶質炭素の結晶構造に大きな影響を与えず、ホールが形成されていることがわかる。
(非晶質炭素材料の表面の観察)
実施例1において、KOH水溶液に浸漬後、真空ろ過により分離した非晶質炭素粉末を、走査型電子顕微鏡で観察した。そのSEM画像を図2に示す。この図に示されるように、KOHの結晶が斑点状にグラフェン層平面上に形成されていることが分かる。
(充放電試験)
炭素材料と導電剤(カーボンブラック)と結着剤(PVdF)を、炭素材料:導電剤:結着剤=92:1:7の質量比率で混合し、NMPに分散させてスラリーを作製した。このスラリーを銅箔上に塗布し、乾燥、圧延した後、22×25mmに切り出して電極を得た。この電極を作用極とし、セパレータを挟んで対極のLi箔と組み合わせて積層体を得た。この積層体と電解液(1MのLiPF6を含むECとDECの混合溶液、容量比EC/DEC=3/7)をアルミラミネート容器内に封入し、電池を作製した。
所定の電流値で、対極に対する作用極の電位が0Vまで充電(作用極にLiを挿入)し、1.5Vまで放電(作用極からLiを脱離)した。この充放電時の電流値は、作用極の放電容量を1時間で流す電流値を1Cとし、1サイクル目および2サイクル目の充放電は0.1C充電−0.1C放電とし、3サイクル目は1C充電−0.1C放電とした。
充放電特性として、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)、充電レート特性(3サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)を求めた。結果を表1に示す。
表1に示されるように、グラフェン層平面にホールが形成された非晶質炭素材料(実施例1)を用いることにより、充電レート特性を劣化させることなく、容量特性が向上することがわかる。また、実施例1の非晶質炭素材料を非晶質炭素で被覆した実施例2の炭素材料を用いることにより、実施例1に対して容量特性および充電レート特性が改善されることがわかる。

Claims (10)

  1. 非晶質炭素に含まれる炭素結晶子のグラフェン層平面にホールが形成された非晶質炭素材料からなるリチウム二次電池用負極炭素材料。
  2. 前記ホールの開口サイズがナノメートルサイズである、請求項1に記載の負極炭素材料。
  3. 前記ホールの開口サイズが0.2nm〜10nmの範囲にある、請求項1又は2に記載の負極炭素材料。
  4. 前記ホールの数密度は、50〜300個/μm2の範囲にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の負極炭素材料。
  5. 炭素結晶子内の複数のグラフェン層平面にホールが形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の負極炭素材料。
  6. 前記グラフェン層にリチウムと合金化できる金属またはその酸化物が形成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極炭素材料。
  7. 前記非晶質炭素材料が非晶質炭素で被覆されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の負極炭素材料。
  8. 前記非晶質炭素材料は、前記非晶質炭素としてハードカーボン又はソフトカーボンを用いて形成された、請求項1から7のいずれか一項に記載の負極炭素材料。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の負極炭素材料を含むリチウム二次電池用負極。
  10. 請求項9に記載の負極を含むリチウム二次電池。
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