<偏光性積層フィルムの製造方法>
図1は、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。図1に示すとおり、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法は、下記工程:
〔1〕基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程S10、
〔2〕積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程S20、
〔3〕延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程S30、
をこの順で含む。
後述するように、偏光子層とその上に積層される保護フィルムとを備える偏光板は、染色工程S30までを実施して得られる偏光性積層フィルムの偏光子層上に保護フィルムを貼合して貼合フィルムを得(貼合工程S40)、次いで貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去する(剥離工程S50)ことによって得ることができる。
以下、偏光性積層フィルムの製造方法が備えるS10〜S30の各工程についてより詳細に説明する。
〔1〕樹脂層形成工程S10
本工程は、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層は、延伸工程S20及び染色工程S30を経て偏光子層となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルムの片面又は両面に塗工し、塗工層を乾燥させることにより形成することが好ましい。このような方法によれば、ポリビニルアルコール系樹脂層、ひいては偏光子層の厚みを小さくすることができるため、偏光性積層フィルム及び偏光板の薄膜軽量化に有利である。あらかじめ製膜したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材フィルムに貼合することによってポリビニルアルコール系樹脂層を形成することもできるが、偏光子層の薄膜化の観点からは、上記のように、塗工液の塗工によってポリビニルアルコール系樹脂層を形成することが好ましい。
樹脂層形成工程S10は、典型的には、長尺の基材フィルムの巻回し品であるフィルムロールから基材フィルムを連続的に巻出し、これを搬送させながら連続的に行われる。フィルム搬送はガイドロールなどを用いて行うことができる。
(基材フィルム)
基材フィルムは熱可塑性樹脂から構成することができ、中でも透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂など)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物などを含む。
基材フィルムは、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる1つの樹脂層からなる単層構造であってもよいし、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を複数積層した多層構造であってもよい。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。鎖状ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルムは、安定的に高倍率に延伸しやすい点で好ましい。中でも基材フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)、ポリエチレン系樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)などからなることがより好ましい。
基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂として好適に用いられる例の1つであるプロピレンを主体とする共重合体は、プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体である。
プロピレンに共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例は、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンのような直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンのような分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどを含む。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
上記他のモノマーの含有量は、共重合体中、例えば0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%である。共重合体中の他のモノマーの含有量は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行うことにより求めることができる。
上記の中でも、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体又はプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチック又はシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチック又はシンジオタクチックの立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂からなる基材フィルムは、その取扱性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
基材フィルムは、1種の鎖状ポリオレフィン系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上の鎖状ポリオレフィン系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上の鎖状ポリオレフィン系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報などに記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物などである。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどのノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
環状ポリオレフィン系樹脂は種々の製品が市販されている。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品の例は、いずれも商品名で、「Topas」(TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH社製、ポリプラスチックス(株)から入手できる)、「アートン」(JSR(株)製)、「ゼオノア(ZEONOR)」(日本ゼオン(株)製)、「ゼオネックス(ZEONEX)」(日本ゼオン(株)製)、「アペル」(三井化学(株)製)を含む。
また、いずれも商品名で、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「SCA40」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン(株)製)などの製膜された環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの市販品を基材フィルムとして用いてもよい。
基材フィルムは、1種の環状ポリオレフィン系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上の環状ポリオレフィン系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上の環状ポリオレフィン系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは結晶性の樹脂であるが、結晶化処理する前の状態のものの方が、延伸などの処理を施しやすい。必要であれば、延伸時、又は延伸後の熱処理などによって結晶化処理することができる。また、ポリエチレンテレタレートの骨格にさらに他種のモノマーを共重合することで、結晶性を下げた(もしくは、非晶性とした)共重合ポリエステルも好適に用いられる。このような樹脂の例として、例えば、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸を共重合させたものなどが挙げられる。これらの樹脂も、延伸性に優れるので、好適に用いることができる。
ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体以外のポリエステル系樹脂の具体例を挙げれば、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートなどが挙げられる。
基材フィルムは、1種のポリエステル系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上のポリエステル系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上のポリエステル系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
基材フィルムは、1種の(メタ)アクリル系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上の(メタ)アクリル系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上の(メタ)アクリル系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものなども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、いずれも商品名で、「フジタックTD80」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD80UF」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD80UZ」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD40UZ」(富士フイルム(株)製)、「KC8UX2M」(コニカミノルタオプト(株)製)、「KC4UY」(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
基材フィルムは、1種のセルロースエステル系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上のセルロースエステル系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上のセルロースエステル系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。基材フィルムを構成するポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなどであってもよい。
ポリカーボネート系樹脂は種々の製品が市販されている。ポリカーボネート系樹脂の市販品の例としては、いずれも商品名で、「パンライト」(帝人化成(株)製)、「ユーピロン」(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)、「SDポリカ」(住友ダウ(株)製)、「カリバー」(ダウケミカル(株)製)などが挙げられる。
基材フィルムは、1種のポリカーボネート系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上のポリカーボネート系樹脂の混合物から構成されていてもよいし、2種以上のポリカーボネート系樹脂の共重合物から構成されていてもよい。
以上の中でも、延伸性や耐熱性などの観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
基材フィルムには、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現されないおそれがある。
基材フィルムの厚みは適宜に決定し得るが、一般には強度や取扱性などの作業性の点から1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、さらには5〜200μmが好ましく、5〜150μmが最も好ましい。
(ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液)
塗工液は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒(例えば水)に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレンのようなオレフィン類で変性したもの;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸のような不飽和カルボン酸類で変性したもの;不飽和カルボン酸のアルキルエステルで変性したもの;アクリルアミドで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じ得る。上述のポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100〜10000の範囲にあることが好ましく、1000〜10000の範囲にあることがより好ましく、1500〜8000の範囲にあることがさらに好ましく、2000〜5000の範囲にあることが最も好ましい。平均重合度は、JIS K 6726−1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。平均重合度が100未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になってしまう。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80モル%以上、さらには90モル%以上、とりわけ94モル%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると、偏光性積層フィルムや偏光板にしたときの耐水性や耐湿熱性が十分でなくなる可能性がある。また、完全ケン化品(ケン化度が100モル%のもの)であってもよいが、ケン化度が高すぎると、染色速度が遅くなって、十分な偏光性能を与えるためには製造時間が長くなったり、場合によっては十分な偏光性能を有する偏光子層が得られなかったりすることがある。そこで、そのケン化度は99.5モル%以下、さらに99.0モル%以下であるのが好ましい。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化処理により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=〔(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)〕×100
で定義される。
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が多いことを意味し、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が少ないことを意味する。ケン化度は、JIS K 6726−1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
好適に用い得るポリビニルアルコール系樹脂の市販品の例は、いずれも商品名で、(株)クラレ製の「PVA124」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、「PVA117」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、「PVA117H」(ケン化度:99.5モル%以上)、「PVA624」(ケン化度:95.0〜96.0モル%)及び「PVA617」(ケン化度:94.5〜95.5モル%);日本合成化学工業(株)製の「AH−26」(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、「AH−22」(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、「NH−18」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)及び「N−300」(ケン化度:98.0〜99.0モル%);日本酢ビ・ポバール(株)製の「JC−33」(ケン化度:99.0モル%以上)、「JM−33」(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、「JM−26」(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、「JP−45」(ケン化度:86.5〜89.5モル%)、「JF−17」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、「JF−17L」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)及び「JF−20」(ケン化度:98.0〜99.0モル%)を含む。
塗工液は必要に応じて、可塑剤、界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。可塑剤としては、ポリオール又はその縮合物などを用いることができ、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが例示される。添加剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の20重量%以下とするのが好適である。
(塗工液の塗工及び塗工層の乾燥)
上記塗工液を基材フィルムに塗工する方法は、ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法などの公知の方法から適宜選択することができる。
基材フィルムの両面に塗工液を塗工する場合、上述の方法を用いて片面ずつ順番に行うこともできるし、ディッピング法やスプレーコート法やその他の特殊な装置などを用いて、基材フィルムの両面に同時に塗工することもできる。
塗工層(乾燥前のポリビニルアルコール系樹脂層)の乾燥温度及び乾燥時間は塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて設定される。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。乾燥時間は、例えば2〜20分である。
ポリビニルアルコール系樹脂層は、基材フィルムの一方の面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。両面に形成すると偏光性積層フィルムや偏光板の製造時に発生し得るフィルムのカールを抑制できるとともに、1枚の偏光性積層フィルムから2枚の偏光板を得ることができるので、偏光板の生産効率の面でも有利である。
積層フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、3〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みを有するポリビニルアルコール系樹脂層であれば、後述する延伸工程S20及び染色工程S30を経て、二色性色素の染色性が良好で偏光性能に優れ、かつ十分に厚みの小さい偏光子層を得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みが30μmを超えると、偏光子層の厚みが10μmを超えることがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みが3μm未満であると、延伸後に薄くなりすぎて染色性が悪化する傾向にある。
塗工液の塗工に先立ち、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層が形成される側の基材フィルム表面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム(火炎)処理などを施してもよい。
また、塗工液の塗工に先立ち、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との密着性を向上させるために、基材フィルム上にプライマー層や接着剤層を介してポリビニルアルコール系樹脂層を形成してもよい。
(プライマー層)
プライマー層は、プライマー層形成用塗工液を基材フィルム表面に塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。プライマー層形成用塗工液は、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する成分を含む。プライマー層形成用塗工液は通常、このような密着力を付与する樹脂成分と溶媒とを含有する。樹脂成分としては、好ましくは透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。中でも、良好な密着力を与えるポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレンのようなオレフィン類で変性したもの;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸のような不飽和カルボン酸類で変性したもの;不飽和カルボン酸のアルキルエステルで変性したもの;アクリルアミドで変性したものなどが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いることが好ましい。
溶媒としては通常、上記樹脂成分を溶解できる一般的な有機溶媒や水系溶媒が用いられる。溶媒の例を挙げれば、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチルのようなエステル類;塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルムのような塩素化炭化水素類;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのようなアルコール類である。ただし、有機溶媒を含むプライマー層形成用塗工液を用いてプライマー層を形成すると、基材フィルムを溶解させてしまうこともあるので、基材フィルムの溶解性も考慮して溶媒を選択することが好ましい。環境への影響をも考慮すると、水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成するのが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために、プライマー層形成用塗工液に架橋剤を添加してもよい。架橋剤は、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、有機系、無機系など公知のものの中から適切なものを適宜選択する。架橋剤の例を挙げれば、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系の架橋剤である。
エポキシ系架橋剤としては、一液硬化型、二液硬化型のいずれも用いることができ、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ−又はトリ−グリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物などが挙げられる。
ジアルデヒド系架橋剤としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどが挙げられる。
金属系架橋剤としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物が挙げられる。金属塩、金属酸化物、金属水酸化物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、チタン、珪素、ホウ素、亜鉛、銅、バナジウム、クロム、スズのような二価以上の原子価を有する金属の塩、酸化物及び水酸化物が挙げられる。
有機金属化合物とは、金属原子に直接有機基が結合しているか、又は、酸素原子や窒素原子などを介して有機基が結合している構造を分子内に少なくとも1個有する化合物である。有機基とは、少なくとも炭素元素を含む一価又は多価の基を意味し、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基などであることができる。また結合とは、共有結合だけを意味するものではなく、キレート状化合物などの配位による配位結合であってもよい。
有機金属化合物の好適な例は、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機珪素化合物を含む。有機金属化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネートのようなチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテートのようなチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレートのようなチタンアシレート類などが挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピオネート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレートなどが挙げられる。有機珪素化合物としては、例えば、先に有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物において例示した配位子が珪素に結合した化合物が挙げられる。
以上の低分子系架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂のような高分子系架橋剤を用いることもできる。ポリアミドエポキシ樹脂の市販品の例を挙げれば、田岡化学工業(株)から販売されている「スミレーズレジン650(30)」や「スミレーズレジン675」(いずれも商品名)などである。
プライマー層を形成する樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ジアルデヒド系架橋剤、金属キレート化合物系架橋剤などが、架橋剤として好適に用いられる。
プライマー層形成用塗工液中の樹脂成分と架橋剤の割合は、樹脂成分100重量部に対して、架橋剤0.1〜100重量部程度の範囲から、樹脂成分の種類や架橋剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ0.1〜50重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層形成用塗工液は、その固形分濃度が1〜25重量%程度となるようにするのが好ましい。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μm程度であることが好ましく、0.1〜0.4μmであることがより好ましい。0.05μmより薄くなると、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光性積層フィルムや偏光板の薄膜化に不利である。
プライマー層形成用塗工液を基材フィルムに塗工する方法は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液と同様であることができる。プライマー層は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液が塗工される面(基材フィルムの片面又は両面)に塗工される。プライマー層形成用塗工液からなる塗工層の乾燥温度及び乾燥時間は塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて設定される。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。乾燥時間は、例えば30秒〜20分である。
プライマー層を設ける場合、基材フィルムへの塗工の順番は特に制約されるものではなく、例えば基材フィルムの両面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成する場合には、基材フィルムの両面にプライマー層を形成した後、両面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成してもよいし、基材フィルムの一方の面にプライマー層、ポリビニルアルコール系樹脂層を順に形成した後、基材フィルムの他方の面にプライマー層、ポリビニルアルコール系樹脂層を順に形成してもよい。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法において得られる積層フィルムは、典型的には長尺のフィルムである。この長尺の積層フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂層を形成した後に順次巻取っていくことにより、一旦フィルムロールの形態としてもよいし、巻き取ることなく、得られた積層フィルムを連続的に次の延伸工程S20に供給して、引き続き延伸処理を行ってもよい。
〔2〕延伸工程S20
本工程は、基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る工程である。延伸工程S20は、典型的には、長尺の積層フィルムを搬送させながら、又は、長尺の積層フィルムの巻回し品であるフィルムロールから積層フィルムを連続的に巻出し、これを搬送させながら連続的に行われる。フィルム搬送はガイドロールなどを用いて行うことができる。
積層フィルムの延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、積層フィルムの元長に対して5倍超17倍以下であり、より好ましくは5倍超8倍以下である。延伸倍率が5倍以下であると、ポリビニルアルコール系樹脂層を構成するポリビニルアルコール系樹脂の高分子鎖が十分に配向しないため、偏光子層の偏光度が十分に高くならないことがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。延伸処理は通常、一軸延伸である。
延伸処理は、フィルム長手方向(フィルム搬送方向)に延伸する縦延伸であることができるほか、フィルム幅方向に延伸する横延伸又は斜め延伸などであってもよい。縦延伸方式としては、ロールを用いて延伸するロール間延伸〔距離を置いて設置された2つのニップロール間を搬送させながら、これら2つのニップロールの間の周速差によって縦一軸延伸を行う方式〕、熱ロール延伸〔延伸可能な所望の温度に表面が加熱された熱ロールと、熱ロールとは周速の異なる(周速の大きい)ガイドロール(又は熱ロールであってもよい)との間を通すことにより、熱ロールと接触することで生じる加熱状態下に熱ロールとの接触時(熱ロール上)又はその近傍で縦一軸延伸を行う方式〕、圧縮延伸、チャック(クリップ)を用いた延伸などが挙げられ、横延伸方式としては、テンター法などが挙げられる。延伸処理は、湿潤式延伸方法、乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、延伸温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
延伸温度は、ポリビニルアルコール系樹脂層及び基材フィルム全体が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定され、好ましくは基材フィルムの相転移温度(融点又はガラス転移温度)の−30℃から+30℃の範囲であり、より好ましくは−30℃から+5℃の範囲であり、さらに好ましくは−25℃から+0℃の範囲である。基材フィルムが複数の樹脂層からなる場合、上記相転移温度は該複数の樹脂層が示す相転移温度のうち、最も高い相転移温度を意味する。
延伸温度を相転移温度の−30℃より低くすると、5倍超の高倍率延伸が達成されにくいか、又は、基材フィルムの流動性が低すぎて延伸処理が困難になる傾向にある。延伸温度が相転移温度の+30℃を超えると、基材フィルムの流動性が大きすぎて延伸が困難になる傾向にある。5倍超の高延伸倍率をより達成しやすいことから、延伸温度は上記範囲内であって、さらに好ましくは120℃以上である。延伸温度が120℃以上の場合、5倍超の高延伸倍率であっても延伸処理に困難性を伴わないからである。
延伸処理における積層フィルムの加熱方法としては、ゾーン加熱法(例えば、熱風を吹き込むことによって所定の温度に調整した加熱炉のような延伸ゾーン内で加熱する方法);熱ロール延伸によって延伸する場合において、ロール自体を加熱する方法;ヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーターなどを積層フィルムの上下に設置し輻射熱で加熱する方法)などがある。ロール間延伸方式においては、延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。この場合、2つのニップロールは調温した延伸ゾーン内に設置してもよく、延伸ゾーン外に設置してもよいが、積層フィルムとニップロールとの粘着を防止するために延伸ゾーン外に設置する方が好ましい。
なお、延伸温度とは、ゾーン加熱法の場合、ゾーン内(例えば加熱炉内)の雰囲気温度を意味し、ヒーター加熱法においても炉内で加熱を行う場合は炉内の雰囲気温度を意味する。また、熱ロール延伸の場合は、ロールの表面温度を意味する。
延伸処理は、一段での延伸に限定されず、多段で行うこともできる。この場合、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
延伸工程S20に先立ち、積層フィルムを予熱する予熱処理工程を設けてもよい。予熱方法としては、延伸処理における加熱方法と同様の方法を用いることができる。延伸処理方式がロール間延伸である場合、予熱は、上流側のニップロールを通過する前、通過中、通過した後のいずれのタイミングで行ってもよい。延伸処理方式が熱ロール延伸である場合には、予熱は、熱ロールを通過する前のタイミングで行うことが好ましい。延伸処理方式がチャックを用いた延伸である場合には、予熱は、チャック間距離を広げる前のタイミングで行うことが好ましい。予熱温度は、延伸温度の−50℃から±0℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−40℃から−10℃の範囲であることがより好ましい。
また、延伸工程S20における延伸処理の後に、熱固定処理工程を設けてもよい。熱固定処理は、延伸フィルムの端部をクリップにより把持した状態で緊張状態に維持しながら、結晶化温度以上で熱処理を行う処理である。この熱固定処理によって、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化が促進される。熱固定処理の温度は、延伸温度の−0℃〜−80℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−0℃〜−50℃の範囲であることがより好ましい。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法において得られる延伸フィルムは、典型的には長尺のフィルムであり、通常は延伸処理の後に順次巻取っていくことによりフィルムロールの形態で得られる。
〔3〕染色工程S30
本工程は、延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ、偏光子層とする工程である。本工程を経て基材フィルムの片面又は両面に偏光子層が積層された偏光性積層フィルムが得られる。二色性色素による染色は、長尺の延伸フィルムのフィルムロールから延伸フィルムを連続的に巻出し、二色性色素を含有する染色槽を通る搬送経路(パスライン)に沿って延伸フィルムを搬送させて、連続的に染色槽に浸漬することによって行うことができる。フィルム搬送はガイドロールなどを用いて行うことができる。
本発明において染色工程S30は、下記工程:
〔a〕第1フィルムを上述の染色槽を通る搬送経路に沿って搬送させることにより、染色槽に浸漬する工程、
〔b〕第1フィルムの終端部と第2フィルムの始端部とを接合して接合部を形成する工程、
〔c〕接合部を上記搬送経路に沿って搬送させることにより、染色槽に浸漬する工程、
を含む。
第1フィルム及び第2フィルムの少なくともいずれか一方は、延伸工程S20で得られた延伸フィルムである。上述の工程〔a〕〜〔c〕を含む染色工程S30によれば、工程〔a〕により、上記搬送経路に沿って先行して搬送された第1フィルムが終わりに近づいてきたときには、このフィルムの終端部と、予め準備した別の第2フィルム(通常はフィルムロールとして準備されている。)の始端部とを接合するロールの切替を行って(工程〔b〕)、引き続き接合された第2フィルムについて染色処理を実施することができるため、偏光性積層フィルムの連続製造が可能となる。本発明においては、所望する偏光性積層フィルムの製造量に応じて、第2フィルムに第3フィルムを接合したり、第3フィルムにさらに第4フィルム(さらには第5フィルム、第6フィルム、・・・)を接合したりすることができる。
染色工程S30に供されるフィルム(第1フィルム及び第2フィルムの少なくともいずれか一方)は、基材フィルムごと延伸処理を施した延伸フィルムであり、あらかじめ十分な延伸がなされている。従って、特許文献2に記載の方法のようにポリビニルアルコール系樹脂のフィルム原反を未延伸の状態で染色槽に浸漬する場合とは異なり、第1フィルムと第2フィルムとの接合部を染色槽に浸漬したときの接合部の変形を効果的に抑制することができる。このような変形に対する耐性によって、変形に起因する接合部でのフィルムの破断や剥離を効果的に抑制することができる。
接合部が耐変形性に優れることから、本発明においては接合部を上述の染色槽を通る搬送経路にそのまま通すことができる(工程〔c〕)。すなわち、特許文献1に記載の方法のように接合部の破断や剥離を懸念して、接合部が染色槽に浸漬されないように搬送経路を変更する必要がない。本発明の方法によれば、搬送経路を変更する煩雑な作業を回避できるだけでなく、染色処理できないフィルム部分の発生を回避することができ、さらには、工程〔b〕にてロールを切り替えた後、フィルムの状態が安定するまでの時間を飛躍的に短縮させることができるため、フィルムのロスをほとんど生じず、極めて高い製造効率で偏光性積層フィルムを連続製造することができる。
なお、染色工程S30でのフィルムの破断や剥離を抑制するための考え得る方法として、フィルムにかかる張力を低くしてフィルムを搬送することが挙げられるが、この場合には、染色槽や任意で設けられる膨潤槽においてむしろ破断を生じやすい。また、張力が低い場合には、フィルムの蛇行が発生しやすくなる。この場合、張力を戻した後、フィルムの走行が安定するまでにしばらくの時間を要するため、フィルムのロスが多くなるとともに、製造効率が低下する。張力が低い場合には、ニップロールを通過するときにフィルムの流れが悪くなるので、シワなどの不具合も生じやすい。
図面を参照して染色工程S30についてより具体的に説明する。図2は、染色工程S30の実施態様の一例を示す概略側面図であり、先行する第1フィルムである延伸フィルム10が染色槽40、架橋槽50(ただし、架橋槽50は任意で設けられる槽である。)を順に通過することによって偏光性積層フィルム20が連続的に作製されるとともに、第1フィルムの終端部に接合された第2フィルムである延伸フィルム10が染色槽40を通過していく様子を示したものである。接合部15より下流側が第1フィルムであり、上流側が第2フィルムである。矢印はフィルムの搬送方向を示している。図示するように、本発明の方法によれば、第1フィルムと第2フィルムとの接合部15を、搬送経路を特段変更することなく、染色槽40を少なくとも含む染色工程S30を実施するための搬送経路にそのまま通すことができる。
染色工程S30におけるフィルムの搬送は、他の工程と同様、ガイドロール1などを用いて行うことができる。染色槽40に収容された二色性色素を含有する染色溶液41や架橋槽50に収容された架橋剤を含有する架橋溶液51へのフィルムの浸漬は、例えば図示するように、染色槽40や架橋槽50内において、上下に複数のガイドロール1を設け、これらに沿ってフィルムを搬送させればよい。ガイドロール1の設置数やガイドロール間の距離などは、溶液内での所望するフィルムの滞留時間(浸漬時間)などに応じて調整される。
染色槽40内の染色溶液41は、二色性色素を溶媒に溶解した溶液であることができる。染色溶液41に含有される二色性色素としては、ヨウ素又は二色性有機染料を挙げることができる。二色性有機染料の具体例は、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどを含む。二色性色素は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
染色溶液41に含有される溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。染色溶液41における二色性色素の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることがさらに好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、ヨウ素を含有する染色溶液41にヨウ化物をさらに添加することが好ましい。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。染色溶液41におけるヨウ化物の濃度は、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムとの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることがさらに好ましい。
染色溶液41への延伸フィルム10の浸漬時間は、通常15秒〜15分間の範囲であり、30秒〜3分間であることが好ましい。また、染色溶液41の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
図2に示すように、染色槽40を通る延伸フィルム10の搬送経路には、染色槽40の後(下流側)に架橋槽50を設けることが好ましい。すなわち、染色工程S30は、染色槽40における染色処理工程の後に実施される架橋処理工程を含むことが好ましい。架橋槽50内の架橋溶液51は、架橋剤を溶媒に溶解した溶液であることができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができ、例えば、ホウ酸、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。架橋剤は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋溶液51に含有される溶媒としては、例えば水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに含んでもよい。架橋溶液51における架橋剤の濃度は、1〜20重量%の範囲であることが好ましく、6〜15重量%の範囲であることがより好ましい。
架橋溶液51はヨウ化物を含むことができる。ヨウ化物の添加により、偏光子層の面内における偏光性能をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。架橋溶液51におけるヨウ化物の濃度は、0.05〜15重量%であることが好ましく、0.5〜8重量%であることがより好ましい。
染色槽40浸漬後のフィルムの架橋溶液51への浸漬時間は、通常15秒〜20分間であり、30秒〜15分間であることが好ましい。また、架橋溶液51の温度は、10〜90℃の範囲にあることが好ましい。
なお、架橋処理は、架橋剤を染色溶液41中に配合することにより染色処理と同時に行うこともできる。
染色工程S30は、上で説明した染色処理工程及び架橋処理工程の他、染色処理工程に先立って延伸フィルム10を膨潤させる膨潤処理工程;染色処理工程と架橋処理工程との間に実施される第1洗浄工程;架橋処理工程の後に実施される第2洗浄工程を含むことができる。膨潤処理工程は、例えば0〜40℃程度の水浴(イオン交換水、蒸留水のような純水浴)に延伸フィルム10を浸漬することにより行うことができる。
第1及び第2洗浄工程は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、イオン交換水、蒸留水のような純水に染色処理後の又は架橋処理後のフィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。水への浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3〜240秒間である。
第1及び第2洗浄工程は、水洗浄工程とヨウ化物溶液による洗浄工程との組み合わせであってもよい。また、水洗浄工程及び/又はヨウ化物溶液による洗浄処理で使用する洗浄液には、水のほか、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノールのような液体アルコールを適宜含有させることができる。
延伸フィルム10を染色槽に浸漬する工程においては、実質的に延伸処理を行わないことが好ましい。これにより、染色槽40への浸漬処理による接合部15の変形をより効果的に抑制することができる。染色槽40への浸漬中に延伸処理を実施すると、接合部15の変形量が増加し、接合部でのフィルムの破断や剥離が生じるおそれがある。
また、延伸フィルム10を染色槽40に浸漬する工程において実質的に延伸処理を行わないことにより、接合部15に対する延伸処理に起因して生じ得るシワの発生を防止することができる。シワが生じると、これを解消するためにある程度の時間を要することとなるため、製造効率が低下する。架橋槽50に浸漬する工程においては、必要に応じて延伸処理を施すこともできる。
なお、染色槽40に浸漬する工程において「実質的に延伸処理を行わない」とは、当該工程での延伸倍率を、当該工程に供される延伸フィルム10の元長に対して1.5倍以下、好ましくは1倍(延伸しない)に留めることを意味する。
次に、図3及び図4を参照して、染色工程S30の工程〔b〕における第1フィルムの終端部100と第2フィルムの始端部200との接合部15を形成する方法について説明する。接合部15の形成方法は、染色槽40や架橋槽50への浸漬によってもフィルムが剥離しにくい方法である限り特に制限されず、例えば両面テープ(基材両面に粘着層を有するフィルム)を用いた接合や、ヒートシールを用いた接合により接合部15を形成することができる。特別な機器を要しないという観点からは、両面テープによる接合は簡便で好ましい。ヒートシールには、従来公知の装置(ヒートシーラー)を用いることができる。
本発明の方法においては、染色工程S30において延伸処理を実施する必要がないため、特別に強力な接合方法を用いずともフィルムの破断や、剥離、シワの発生といった不具合を生じにくい。
第1フィルムの終端部100と第2フィルムの始端部200との接合部15におけるフィルムの接合形態も特に制限されず、例えば図3に示すように、両面テープやヒートシールによる1本の帯状の接着領域15aでの接着により接合を行ってもよいし、図4に示すように接着領域15aを複数設けてもよい。
工程〔b〕におけるロールの切替には、例えばターレット方式のような従来公知の自動紙継ぎ装置を用いることができる。また、自動紙継ぎ装置とヒートシーラーとが一体となった装置も市販されており、このような装置も好適に用いることができる。
ここで、染色工程S30で使用する第1フィルム及び第2フィルムは、上述のように、少なくともいずれか一方が延伸工程S20で得られた延伸フィルム10である。図2を用いた上述の説明では、第1フィルム及び第2フィルムがともに延伸フィルム10である場合を説明したが、これに限定されず、第1フィルム及び第2フィルムのいずれか一方が延伸フィルム10であり、他方がリードフィルムであってもよい。
リードフィルムは、搬送経路(パスライン)保持用のフィルムであり、染色工程S30を開始する前又は染色工程S30を中断する際に搬送経路に通しておく(搬送経路上に仮置きしておく)フィルムである。染色工程S30中断時にリードフィルムを搬送経路に通しておくことで、中断後の染色工程S30再開時に再び延伸フィルム10を搬送経路に通し直すような作業が不要になる。
上述のように、染色工程S30の搬送経路には、染色槽40、架橋槽50のような薬液槽(ときには加温状態の薬液槽もある。)や、高温の乾燥炉などが配置されているため、再びはじめから延伸フィルム10を通し直す作業を実施するためには、薬液槽から薬液を抜いたり、搬送経路を形成しているガイドロールを動かしたり、乾燥炉の扉を開放するなどの煩雑な作業が必要となる。このような作業を実施すると、フィルムを通し直す時間に加えて、薬液槽の温度や乾燥炉の温度を再び定常状態とするのに非常に長い時間を要してしまい、製造効率が著しく低下する。
リードフィルムを搬送経路に通した状態でライン搬送を停止しておくことで、染色工程S30時の搬送経路をそのまま長時間保持することができるため、染色工程S30の再開にあたって、薬液を抜いたり、ガイドロールを動かしたり、乾燥炉の扉を開放したりする必要がない。従って、染色工程S30の再開時にその搬送経路を定常状態とする時間を飛躍的に短縮することができ、再開をスムーズに行うことができる。
リードフィルムとしては、安価であり、破断しにくく、シワを生じにくい、薬液に長時間浸漬しても腐食されにくい、などといった特性を有するフィルムを用いることが好ましい。具体的には、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムなどを好ましく用いることができる。リードフィルムは必ずしも延伸処理されたフィルムである必要はないが、延伸処理を施すことでフィルムの耐引裂強度や耐熱性などを向上させることができ、リードフィルムに好適な特性が得られやすい。また、延伸処理を施すとフィルム面積が増えるため、延伸処理されたフィルムは概して、未延伸のものと比べて安価である。
なお、リードフィルムとして延伸工程S20で得られる延伸フィルム10を用いることは好ましくない。延伸フィルム10をリードフィルムとして用いることは、延伸フィルム10のロスが膨大になり、製造コストの面で不利である。また、延伸フィルム10を搬送経路に通した状態でライン搬送を長時間停止すると、ポリビニルアルコール系樹脂層が染色槽等の薬液槽に徐々に溶解していき、薬液槽を汚染してしまう。
従って、染色工程S30で使用する第1フィルム及び第2フィルムがともに延伸フィルム10である場合とは、いずれか一方のフィルムがリードフィルムとして使用されるのではなく、接合された双方の延伸フィルム10が染色工程S30を経て偏光性積層フィルム20となることを意味している。
一方、第1フィルムが延伸フィルム10であり、第2フィルムがリードフィルムである場合とは、例えば、染色工程S30を中断するために、中断直前の延伸フィルム10の終端部にリードフィルムを接合し、接合部をそのまま搬送経路に沿って搬送させて、リードフィルムを搬送経路に通す場合である。第1フィルムがリードフィルムであり、第2フィルムが延伸フィルム10である場合とは、例えば、搬送経路にリードフィルムを通した中断状態から、リードフィルムの終端部に延伸フィルム10を接合して染色工程S30を再開する場合である。この場合、接合部、さらには第2フィルムを搬送経路に沿って搬送させて第2フィルムの染色処理を行い、偏光性積層フィルム20を得る。
染色工程S30の後、得られたウェットの偏光性積層フィルムを乾燥させる乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥などの任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は、通常20〜95℃であり、乾燥時間は、通常1〜15分間程度である。以上のようにして得られる偏光性積層フィルム20はそのまま偏光要素(偏光板)として使用することができるとともに、偏光子層と保護フィルムとを含む後述の偏光板を作製するための製造中間体としても有用である。
偏光性積層フィルム20が有する偏光子層の厚みは10μm以下であり、好ましくは7μm以下である。偏光子層の厚みを10μm以下とすることにより、薄型の偏光性積層フィルム20を構成することができる。
<偏光板の製造方法>
上で説明したような製造方法によって得られる偏光性積層フィルムは、図5に示すフローチャートに従い、偏光性積層フィルムの偏光子層上に保護フィルムを貼合して貼合フィルムを得る貼合工程S40、貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去する剥離工程S50を経て、偏光子層上に保護フィルムが貼合された偏光板とすることができる。剥離工程S50を実施することなく、貼合工程S40によって得られる基材フィルム、偏光子層及び保護フィルムを含む積層体を偏光板として用いることもできる。
〔4〕貼合工程S40
本工程は、偏光性積層フィルムの偏光子層上、すなわち、偏光子層の基材フィルム側とは反対側の面に保護フィルムを貼合して貼合フィルムを得る工程である。保護フィルムは、接着剤や粘着剤を用いて偏光子層に貼合することができる。偏光性積層フィルムが基材フィルムの両面に偏光子層を有する場合は通常、両面の偏光子層上にそれぞれ保護フィルムが貼合される。この場合、これらの保護フィルムは同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
(保護フィルム)
保護フィルムは、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂など)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂など)のようなポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物などからなるフィルムであることができる。環状ポリオレフィン系樹脂及びそのフィルム、並びにセルローストリアセテートなどの使用可能な市販品の例は上述のとおりである。
保護フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる樹脂フィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸など)したり、該フィルム上に液晶層などを形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
保護フィルムの偏光子層とは反対側の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。光学層は、貼合工程S40の実施に先立って保護フィルム上に予め形成しておいてもよいし、貼合工程S40実施後又は後述する剥離工程S50実施後に形成してもよい。
偏光子層上に保護フィルムを貼合するにあたり、保護フィルムの偏光子層側表面には、偏光子層との接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理(易接着処理)を行うことができ、中でも、プラズマ処理、コロナ処理又はケン化処理を行うことが好ましい。例えば保護フィルムが環状ポリオレフィン系樹脂からなる場合、通常プラズマ処理やコロナ処理が行われる。また、セルロースエステル系樹脂からなる場合には、通常ケン化処理が行われる。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
保護フィルムの厚みは薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る。一方、厚すぎると、透明性が低下したり、貼合後に必要な養生時間が長くなったりするなどの問題が生じる。したがって、保護フィルムの厚みは90μm以下が好ましく、より好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは5〜50μmである。また、偏光板の薄膜化の観点から、偏光子層と保護フィルムとの合計厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
(接着剤)
接着剤としては、水系接着剤又は光硬化性接着剤を用いることができる。水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などが挙げられる。とりわけ、保護フィルムとしてケン化処理などで表面処理(親水化処理)されたセルロースエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などを用いることができる。水系接着剤は、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などの添加剤を含むことができる。水系接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層の厚みは、通常1μm以下である。
水系接着剤を偏光性積層フィルムの偏光子層上及び/又は保護フィルム上に塗工し、これらのフィルムを接着剤層を介して貼合し、好ましくは貼合ロールなどを用いて加圧し密着させることにより貼合工程が実施される。水系接着剤(光硬化性接着剤についても同様)の塗工方法は特に制限されず、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などの従来公知の方法を用いることができる。
水系接着剤を用いる場合、上述の貼合を実施した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するためにフィルムを乾燥させる乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥は、例えばフィルムを乾燥炉に導入することによって行うことができる。乾燥温度(乾燥炉の温度)は、好ましくは30〜90℃である。30℃未満であると、保護フィルムが偏光子層から剥離しやすくなる傾向がある。また乾燥温度が90℃を超えると、熱によって偏光子層の偏光性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10〜1000秒程度とすることができ、生産性の観点からは、好ましくは60〜750秒、より好ましくは150〜600秒である。
乾燥工程後、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20〜45℃程度の温度で12〜600時間程度養生する養生工程を設けてもよい。養生温度は、乾燥温度よりも低く設定されるのが一般的である。
上記光硬化性接着剤とは、紫外線などの活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤をいい、例えば、重合性化合物及び光重合開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むものなどを挙げることができる。重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマーなどの光重合性モノマーや、光重合性モノマーに由来するオリゴマーなどを挙げることができる。光重合開始剤としては、紫外線などの活性エネルギー線の照射により中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。重合性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化性接着剤として、光硬化性エポキシ系モノマー及び光カチオン重合開始剤を含むものを好ましく用いることができる。
光硬化性接着剤を用いる場合、上述の貼合を実施した後、必要に応じて乾燥工程を行い(光硬化性接着剤が溶媒を含む場合など)、次いで活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2となるように設定されることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による光硬化性接着剤の黄変や偏光子層の劣化を生じるおそれが少ない。
光硬化性接着剤への光照射時間についても、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。
なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01〜2μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。
(粘着剤)
保護フィルムの貼合に用いることができる粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。
粘着剤層の厚みは1〜40μmであることができるが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが好ましく、具体的には3〜25μmであることが好ましい。3〜25μmの厚みは、良好な加工性を有し、かつ偏光子層の寸法変化を押さえる上でも好適である。粘着剤層が1μm未満であると粘着性が低下し、40μmを超えると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。粘着剤を用いて保護フィルムを偏光子層に貼合する方法においては、保護フィルム面に粘着剤層を設けた後、偏光子層に貼合してもよいし、偏光子層面に粘着剤層を設けた後、ここに保護フィルムを貼合してもよい。
粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、保護フィルム面又は偏光子層面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む粘着剤組成物(粘着剤溶液)を塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、保護フィルムと偏光子層とを貼り合わせてもよいし、セパレータ(剥離フィルム)上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を保護フィルム面又は偏光フィルム面に転写し、次いで保護フィルムと偏光子層とを貼り合わせるようにしてもよい。粘着剤層を保護フィルム面又は偏光子層面に形成する際には、必要に応じて保護フィルム面若しくは偏光偏光子層面、又は粘着剤層の片面若しくは両面に表面処理、例えばコロナ処理などを施してもよい。
〔5〕剥離工程S50
本工程は、保護フィルムを貼合して得られる貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去工程である。この工程を経て、偏光子層上に保護フィルムが積層された基材フィルムを有しない偏光板を得ることができる。偏光性積層フィルムが基材フィルムの両面に偏光子層を有し、これら両方の偏光子層に保護フィルムを貼合した場合には、この剥離工程S50により、1枚の偏光性積層フィルムから2枚の偏光板が得られる。
基材フィルムを剥離除去する方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。基材フィルムは、貼合工程S40の後、そのまますぐ剥離してもよいし、貼合工程S40の後、一度ロール状に巻き取り、その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
以上のようして製造される偏光板は、実用に際して他の光学層を積層した光学フィルムとして用いることもできる。また、保護フィルムがこのような光学層の機能を有していてもよい。他の光学層としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム;表面反射防止機能付きフィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルムなどが挙げられる。
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えば、「DBEF」(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手可能)、「APF」(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。
視野角補償フィルムとしては、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向・固定されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムなどが挙げられる。
基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向・固定されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、「WVフィルム」(富士フイルム(株)製)、「NHフィルム」(JX日鉱日石エネルギー(株)製)、「NRフィルム」(JX日鉱日石エネルギー(株)製)などが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、「アートンフィルム」(JSR(株)製)、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製の「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両面にプロピレンの単独重合体(住友化学(株)製の「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の長尺の基材フィルムを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムの合計厚みは90μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
(2)プライマー層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の割合で混合して、プライマー層形成用塗工液を得た。
上記(1)で作製した基材フィルムを連続的に搬送させながら、その片面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面にマイクログラビアコーターを用いて上記プライマー層形成用塗工液を連続的に塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。さらに、基材フィルムの他方の面にもコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に、上記と同様にして厚み0.2μmのプライマー層を形成することにより両面にプライマー層を有する基材フィルムを得た。
(3)積層フィルムの作製(樹脂層形成工程)
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
上記(2)で作製した両面にプライマー層を有する基材フィルムを連続的に搬送させながら、一方のプライマー層表面にリップコーターを用いて上記ポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を連続的に塗工し、80℃で2分間、70℃で2分間、次いで60℃で4分間乾燥させることにより、プライマー層上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した。さらに、他方のプライマー層表面にも、上記と同様にしてポリビニルアルコール系樹脂層を形成することにより積層フィルムを得た。積層フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、それぞれ10.5μm、10.2μmであった。
(4)延伸フィルムの作製(延伸工程)
上記(3)で作製した積層フィルムを連続的に搬送させながら、ロール間延伸装置を用いて160℃の延伸温度(加熱炉内の雰囲気温度)で縦方向(フィルム搬送方向)に5.8倍の倍率で自由端一軸延伸を施して、延伸フィルムを連続的に作製し、順次巻取りを行って延伸フィルムのフィルムロールを得た。延伸フィルムにおける2つのポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、それぞれ5.1μm、4.9μmであった。以上の(1)〜(4)の工程を繰り返して、合計2本の延伸フィルムロールを作製した。
(5)偏光性積層フィルムの作製(染色工程)
染色工程を実施するための搬送経路(パスライン)が、染色槽40と架橋槽50との間に第1洗浄槽を含むとともに、架橋槽50の後に第2洗浄槽を含むこと以外は、図2と同様の装置を用いて染色工程を実施して、偏光性積層フィルムを作製した。第2洗浄槽の下流側には乾燥炉が設けられている。従って、この搬送経路に沿って搬送される延伸フィルムは、染色槽40、第1洗浄槽、架橋槽、第2洗浄槽、乾燥炉を順に通過して偏光性積層フィルムとなる。
染色槽40には、水100重量部あたりヨウ素を0.35重量部、ヨウ化カリウムを10重量部含む30℃の染色溶液41が収容されている。架橋槽50には、水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部、ヨウ化カリウムを5重量部含む76℃の架橋溶液51が収容されている。第1洗浄槽及び第2洗浄槽には、それぞれ10℃の純水が収容されている。乾燥炉は、その炉内温度が80℃に調整されている。
具体的には、次のようにして染色工程を実施して、偏光性積層フィルムを作製した。まず、上記(4)で作製した延伸フィルムロールの1つから第1フィルムである延伸フィルムを連続的に巻出し、上記の搬送経路に沿って連続的に搬送させることにより、染色槽40への浸漬(滞留時間:150秒)によるポリビニルアルコール系樹脂層の染色処理、第1洗浄槽への浸漬(滞留時間:4秒)による余分な染色溶液の洗い流しを行う第1洗浄処理、架橋槽50への浸漬(滞留時間:600秒)による架橋処理、第2洗浄槽への浸漬(滞留時間:4秒)による余分な架橋溶液の洗い流しを行う第2洗浄処理、乾燥炉内の通過(滞留時間:300秒)による乾燥処理をこの順で、第1フィルムに対して連続的に実施した。
第1フィルムが終わりに近づいてきたとき、第1フィルムの搬送を一時的に停止した状態で、第1フィルムの終端部と、上記(4)で作製したもう1つの延伸フィルムロールを構成する第2フィルムである延伸フィルムの始端部とを、両面テープを用い、図3に示すように帯状の接着領域15aを1箇所有するように接合した後、フィルムの搬送を再稼働して、第1フィルムと第2フィルムとの接合部、さらには第2フィルムを引き続き上記の搬送経路に沿って連続的に搬送させることにより、第2フィルムの終端部まで染色処理、第1洗浄処理、架橋処理、第2洗浄処理、乾燥処理を実施した。上記の搬送経路に沿って搬送されるフィルムにかかる張力を染色槽40付近で測定したところ、125N/mであった。
<実施例2>
搬送経路に沿って搬送されるフィルムにかかる張力を500N/mに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例3>
搬送経路に沿って搬送されるフィルムにかかる張力を1000N/mに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例4>
第1フィルムとして、フィルムロールから巻出される二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるリードフィルムを用いたこと以外は、実施例3と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例5>
第2フィルムとして、フィルムロールから巻出される二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるリードフィルムを用いたこと以外は、実施例3と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例6>
ヒートシールにより帯状の接着領域15aを2箇所有するように第1フィルムの終端部と第2フィルムの始端部とを接合したこと以外は、実施例3と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例7>
第1フィルムとして、フィルムロールから巻出される二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるリードフィルムを用いたこと以外は、実施例6と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<実施例8>
第2フィルムとして、フィルムロールから巻出される二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるリードフィルムを用いたこと以外は、実施例6と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<比較例1>
実施例1の(1)〜(4)を経て作製した延伸フィルムのフィルムロールの代わりに、ポリビニルアルコールからなる単層フィルム((株)クラレ製の「VF−PS 7500」)のフィルムロールを第1及び第2フィルムのフィルムロールとして用いたこと、染色槽40及び架橋槽50内で総延伸倍率が5.0倍となるように縦一軸延伸を行ったこと、ヒートシールにより帯状の接着領域15aを1箇所有するように第1フィルムの終端部と第2フィルムの始端部とを接合したこと、並びに、搬送経路に沿って搬送されるフィルムにかかる張力を400N/mに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
<比較例2>
帯状の接着領域15aを2箇所有するように第1フィルムの終端部と第2フィルムの始端部とを接合したこと以外は、比較例1と同様にして偏光性積層フィルムを作製した。
〔連続製造性の評価及び偏光性積層フィルムの偏光性能の評価〕
(連続製造性の評価)
各実施例及び比較例について、次の評価基準に基づいて偏光性積層フィルムの連続製造性を評価した。結果を表1に示す。
A:染色工程の間、第1フィルムと第2フィルムとの接合部に破断、剥離、シワなどの不具合は認められず、第1フィルム及びこれに接合した第2フィルムを染色工程の搬送経路に沿って連続的に問題なく搬送させることができ、偏光性積層フィルムを連続製造することができる、
B:染色工程実施中にフィルムに破断、接合部の剥離、接合部のシワなどの不具合が生じ、問題なく偏光性積層フィルムを連続製造できるとはいえない。
(偏光性積層フィルムの偏光性能の評価)
各実施例で得られた偏光性積層フィルムについて、第1フィルムと第2フィルムとの接合部近傍のフィルム部分の偏光性能(視感度補正単体透過率及び視感度補正偏光度)を測定し、接合部から離れたフィルム部分の偏光性能と比較して、次の評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。接合部近傍のフィルム部分とは、第1フィルムにリードフィルムを用いた実施例4及び7については接合部直後のフィルム部分、第2フィルムにリードフィルムを用いた実施例5及び8については接合部直前のフィルム部分、他の実施例については接合部直前及び直後のフィルム部分を指す。
A:接合部直前及び/又は直後のフィルム部分の偏光性能が、接合部から離れたフィルム部分の偏光性能と同等である、
B:接合部直前及び/又は直後のフィルム部分の偏光性能が、接合部から離れたフィルム部分の偏光性能よりも有意に低下している。
偏光性積層フィルムの視感度補正偏光度及び視感度補正単体透過率は、基材フィルムの両面にある偏光子層のうち一方の偏光子層を粘着テープを用いて剥離除去したものを測定サンプルとし、日本分光(株)製の分光光度計「V7100」を用いて、偏光子層側から光を入射することによって測定した。
表1に示すとおり、実施例1〜8においては、第1フィルムと第2フィルムとの接合部を、染色工程を実施するための搬送経路に沿って搬送させても、接合部でのフィルムの破断や、剥離、シワなどの不具合を生じず、偏光性積層フィルムの連続製造を行うことができた。実施例1〜8では、染色溶液41に加えて、76℃と高温の架橋溶液51に接合部を浸漬させているが、このように変形を生じさせやすい薬液に接合部を浸漬しても破断や剥離は生じなかった。また、実施例2〜8では、実施例1と比べてフィルムにかかる張力を大きくし、フィルムの破断がより生じやすい条件で染色工程を行ったが、フィルムの破断や剥離は生じなかった。さらに実施例1〜8においては、偏光性積層フィルムにおける接合部近傍の偏光性能は、接合部から離れた部分の偏光性能と同等であり接合による偏光性能の低下は認められなかったため、フィルムのロスを1m未満とすることができた。
これに対して、未延伸のポリビニルアルコール単層フィルムを染色工程に供し、染色工程内で延伸処理を行った比較例1及び2では、染色槽40内での延伸処理中に接合部でフィルムの破断が生じた。
<参考実施例:偏光板の作製>
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の割合で混合し、接着剤水溶液とした。
次に、実施例1で作製した偏光性積層フィルムを連続的に搬送させながら、上記接着剤水溶液を両面の偏光子層上に塗工した後、貼合面にケン化処理を施した保護フィルム〔トリアセチルセルロース(TAC)からなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製の「KC4UY」)、厚み40μm〕を偏光子層上に貼合し、一対の貼合ロール間に通すことにより圧着して、TAC/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/TACの層構成からなる貼合フィルムを作製した(貼合工程)。
次いで、貼合フィルムを、基材フィルムとプライマー層との界面で剥離分割して、TAC/偏光子層/プライマー層/基材フィルムからなるフィルムと、プライマー層/偏光子層/TACからなる偏光板を得た後、さらに前者のフィルムから基材フィルムを剥離除去して、もう1枚の偏光板を得た。基材フィルムを剥離する工程において、破断などの不具合は生じなかった。