本発明の一実施形態に係る締結方法およびこれが適用されたシリンダ装置としての緩衝器について、図面を参照しつつ以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る緩衝器は、自動車用サスペンションストラットとして用いられるもので、液体あるいは気体等の流体が封入されるシリンダ11を有している。このシリンダ11は、円筒状の内筒12と、内筒12よりも大径で内筒12を覆うように同心状に設けられる有底円筒状の外筒13とを有しており、これら内筒12と外筒13との間にリザーバ室14が形成された二重筒構造をなしている。外筒13には、車両を懸架するスプリング(図示せず)の下端を支持するスプリングシート13Aが設けられている。
シリンダ11の内筒12内には、ピストン17が摺動可能に嵌装されている。このピストン17は、シリンダ11の内筒12内に嵌装されて内筒12内を上室18および下室19の2室に仕切っている。シリンダ11内には、図示は略すが、上室18および下室19内に流体としての作動液が封入され、リザーバ室14内に流体としての作動液およびガスが封入されている。なお、本発明が適用されるシリンダ装置は、単筒式のシリンダであってもよく、シリンダの形式にとらわれず、緩衝器以外の油圧、空圧シリンダに用いてもよい。
シリンダ11の内筒12内には、ロッド(ボルト)21が挿入されており、ロッド21は一端側が内筒12内に配置され、他端側がシリンダ11から外部に延出されていて、この他端側において車両に取り付けられる。ピストン17は、このロッド21の内筒12内に配置される一端側にナット22によって締結されている。ロッド21の他端側は、内筒12および外筒13の一端部に装着されたロッドガイド23およびオイルシール24に挿通されて外部へと延出されている。ロッドガイド23は段差状をなしており、小径部分が内筒12に大径部分が外筒13に、それぞれ嵌合されている。
ロッド21は、ロッドガイド23およびオイルシール24に摺動可能に嵌合される主軸部26と、ロッド21におけるシリンダ内側の端部にあって主軸部26よりも小径の取付軸部27とを有している。主軸部26には、取付軸部27側の端部に軸直交方向に沿う段面28が形成されている。取付軸部27には、主軸部26とは反対の先端部30側の所定範囲に上記したナット22が螺合される雄のネジ部29が形成されている。
ピストン17は、取付軸部27に嵌合されてロッド21に連結される略円板状のピストン本体31と、ピストン本体31の外周面に装着されて内筒12の内周面に摺接する摺接部材32とを有している。ピストン本体31には、径方向の中央にロッド挿通孔35が軸方向に貫通するように形成されており、このロッド挿通孔35においてロッド21の取付軸部27を挿通させている。
図2に示すようにロッド21に連結された状態で、ピストン本体31には、その軸方向の主軸部26とは反対側に、径方向のロッド挿通孔35の外側にて軸方向に突出する環状の取付ボス部36と、径方向の取付ボス部36よりも外側にて軸方向に突出する環状のシート部37とが形成されている。また、ピストン本体31には、その軸方向の主軸部26側に、径方向のロッド挿通孔35の外側にて軸方向に突出する環状の取付ボス部38と、径方向の取付ボス部38よりも外側にて軸方向に突出する環状のシート部39とが形成されている。
ピストン本体31には、ピストン本体31の軸方向における一端が取付ボス部36とシート部37との間に開口し、他端がシート部39よりも径方向外側に開口する流路43が、周方向に間隔をあけて複数カ所(図2では断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。また、ピストン本体31には、ピストン本体31の軸方向における一端がシート部37よりも径方向外側に開口し、軸方向の他端が取付ボス部38とシート部39との間に開口する流路44が周方向に間隔をあけて複数カ所(図2では断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。つまり、流路43,44は、ピストン本体31を軸方向に貫通している。
ピストン本体31の軸方向の主軸部26とは反対側には、ピストン本体31側にディスクバルブ50が、ディスクバルブ50のピストン本体31とは反対側にバルブ規制部材52が、それぞれ設けられている。ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52は、環状をなしており、それぞれの内周側にロッド21の取付軸部27が挿通され、この状態で、ナット22の座面53Aとピストン本体31の取付ボス部36とによって内周側がクランプされる。よって、ナット22の座面53Aは、ロッド21への締結対象物であるバルブ規制部材52に当接する。
また、ピストン本体31の軸方向の主軸部26側には、ピストン本体31側にディスクバルブ55が、ディスクバルブ55のピストン本体31とは反対側にバルブ規制部材57が、それぞれ設けられている。ディスクバルブ55およびバルブ規制部材57は、環状をなしており、それぞれの内周側にロッド21の取付軸部27が挿通され、この状態で、ピストン本体31の取付ボス部38とロッド21の主軸部26の段面28とによって内周側がクランプされる。
ピストン17の主軸部26とは反対側に設けられたディスクバルブ50は、複数枚の単板ディスクが積層されてなるもので、ピストン本体31のシート部37に当接して流路43を閉じる。ロッド21が図1に示すシリンダ11内から突出する突出量を増やす伸び側に移動したときに、上室18の圧力上昇によって作動液がピストン17に設けられた流路43を通って上室18から下室19に向け流通することになり、その際に、ディスクバルブ50は、外周側がピストン本体31のシート部37から離れるように撓んで流路43を開く。これにより、ピストン17に設けられた流路43は、ロッド21が伸び側に移動したときに上室18の圧力上昇によって作動液が上室18から下室19に向け流通することになり、ディスクバルブ50は、この流路43の開閉量を調整して減衰力を発生させる伸び側の減衰バルブとなっている。図2に示すバルブ規制部材52は、ディスクバルブ50のシート部37から離れる方向への所定量以上の変形を規制するものである。
ピストン17の主軸部26側に設けられたディスクバルブ55も、複数枚の単板ディスクが積層されてなるもので、ピストン本体31のシート部39に当接して流路44を閉じる。ロッド21が図1に示すシリンダ11への進入量を増やす縮み側に移動したときに、下室19の圧力上昇によって作動液がピストン17に設けられた流路44を通って下室19から上室18に向け流通することになり、その際に、ディスクバルブ55は、外周側がピストン本体31のシート部39から離れるように撓んで流路44を開く。これにより、ピストン17に設けられた流路44は、ロッド21が縮み側に移動したときに下室19の圧力上昇によって作動液が下室19から上室18に向け流通することになり、ディスクバルブ55は、この流路44の開閉量を調整して減衰力を発生させる縮み側の減衰バルブとなっている。図2に示すバルブ規制部材57は、ディスクバルブ55のシート部39から離れる方向への所定量以上の変形を規制するものである。
なお、このディスクバルブ等はなくてもよく、また、内周をクランプせずにリフトするリフト弁であったり、ピストン17内部に設けるポペット弁であってもよい。
図1に示すように、外筒13は円筒状の胴部58と胴部58の一端を閉塞する底部59とを有している。外筒13の底部59と内筒12との間には、シリンダ11内で下室19と上記したリザーバ室14とを画成するベースバルブ61が設けられている。ベースバルブ61は、シリンダ11内に嵌装されてシリンダ11内を下室19およびリザーバ室14の2室に仕切る略円板状のバルブ本体62を有している。バルブ本体62は、段差状をなしており、小径部分が内筒12に嵌合している。
バルブ本体62には、径方向の中央にピン挿通孔63が軸方向に貫通するように形成されている。また、バルブ本体62のピン挿通孔63よりも径方向の外側には、軸方向に貫通する流路64が、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されており、流路64よりも径方向の外側には、軸方向に貫通する流路65が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。径方向内側の流路64は、一方で、下室19とリザーバ室14との間の作動液の流通を可能とし、径方向外側の流路65は、他方で、下室19とリザーバ室14との間の作動液の流通を可能とする。
ベースバルブ61は、バルブ本体62の軸方向のリザーバ室14側に、減衰バルブとして作用するディスクバルブ68を有している。また、ベースバルブ61は、バルブ本体62の軸方向の下室19側に、サクションバルブとして作用するディスクバルブ69を有している。これらディスクバルブ68およびディスクバルブ69は、環状をなしており、それぞれの内側に挿通されバルブ本体62のピン挿通孔63に挿通される取付ピン70とバルブ本体62とによって内周側がクランプされる。
ディスクバルブ68は、内側の流路64を開閉するものであり、ロッド21が縮み側に移動しピストン17が下室19側に移動して下室19の圧力が上昇すると、バルブ本体62から離座して内側の流路64を開く。これにより、バルブ本体62に設けられた内側の流路64は、ロッド21が縮み側に移動したときに流体が下室19からリザーバ室14に向け流通することになり、ディスクバルブ68は、この流路64を開閉し減衰力を発生する縮み側のディスクバルブとなっている。なお、ディスクバルブ68は、ピストン17に設けられた縮み側のディスクバルブ55との関係から、主としてロッド21のシリンダ11への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室19からリザーバ室14に液を流す機能を果たす。なお、縮み側のディスクバルブをシリンダ内圧が高くなったときに圧力をリリーフするリリーフ弁としてもよい。
下室19側のディスクバルブ69は、外側の流路65を開閉するものであり、ロッド21が伸び側に移動しピストン17が上室18側に移動して下室19の圧力が下降するとバルブ本体62から離座して流路65を開く。これにより、バルブ本体62に設けられた外側の流路65は、ロッド21が伸び側に移動したときに流体がリザーバ室14から下室19に向け流通することになり、ディスクバルブ69は、この流路65を開閉する伸び側のディスクバルブとなっている。なお、ディスクバルブ69は、ピストン17に設けられた伸び側のディスクバルブ50との関係から、主としてロッド21のシリンダ11からの突出に伴う液の不足分を補うようにリザーバ室14から下室19に液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度)流す機能を果たす。
なお、バルブ本体62をなくし、単なるオリフィスとしてもよい。
図2に示すように、ロッド21の一端側の取付軸部27は、バルブ規制部材57、流路44を開閉するディスクバルブ55、ピストン17、流路43を開閉するディスクバルブ50およびバルブ規制部材52に挿通される。そして、この状態で、ロッド21の取付軸部27の主軸部26とは反対側に形成されたネジ部29にナット22が螺合される。これにより、ロッド21の段面28がバルブ規制部材57に、ナット22の座面53Aがバルブ規制部材52にそれぞれ当接しつつ、段面28を含むロッド21の主軸部26と座面53Aを含むナット22とが、バルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52の内周側を挟持する。これにより、これらバルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52がロッド21に締結される。言い換えれば、ナット22は、ロッド21の一端側に形成されたネジ部29に螺合され、バルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52に、ロッド21とで軸力を付与する。よって、ロッド21は、ナット22に螺合されてバルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52を挟持するボルトとして機能する。
そして、本実施形態においては、ナット22が、バルブ規制部材52に当接する座面53A側の第1ナット22Aと、第1ナット22Aの座面53Aとは反対側に第1ナット22Aと当接して配置される第2ナット22Bとの2部材からなっている。第1ナット22Aには、後述する加締め工程が実行されることになり、これにより、第1ナット22Aおよび第2ナット22Bのロッド21に対する回り止めつまり緩み止めが施されている。
図3に示すように、加締め工程前の第1ナット22Aは、軸方向一側に軸直交方向に沿って上記した座面53Aが形成されており、軸方向他側には、座面53Aと平行な頂面72Aと、頂面72Aの外周側にあってテーパ状をなす面取り73Aとが形成されている。第1ナット22Aには、径方向の中央に軸方向に貫通するネジ穴75Aが形成されており、ネジ穴75Aには、ロッド21の雄のネジ部29に螺合する雌のネジ部76Aが形成されている。なお、ネジ部76Aは、加締め工程の前は一様な螺旋状をなしている。つまり、ネジ部76Aは、加締め工程の前は、切削または転造でネジ加工された状態のままである。言い換えれば、加締め工程の前、ネジ部76Aの両端を除く有効範囲は、外径および谷の径がいずれも一定でありピッチ寸法(一巻き当たりの軸方向移動距離)も一定となっている。第1ナット22Aの外周側には、締結トルクを入力するための図示略の工具が装着される工具装着部78Aが形成されている。工具装着部78Aは、6つ(図2では断面とした関係上2つのみ図示)の平坦な面部79Aを有し、ネジ穴75Aの中心軸と中心を一致させた正六角柱形状をなしており、図示は略すがインパクトレンチ等の工具が装着されることになる。
第2ナット22Bには、第1ナット22Aの頂面72Aに当接する軸方向一側の端部に、当接面(端面)53Bが軸直交方向に沿って形成されており、その外周側には、テーパ状の面取り74Bが形成されている。また、第2ナット22Bの軸方向他側には、当接面53Bと平行な頂面72Bが形成されている。第2ナット22Bには、径方向の中央に軸方向に貫通するネジ穴75Bが形成されており、ネジ穴75Bには、ロッド21の雄のネジ部29に螺合する雌のネジ部76Bが形成されている。第2ナット22Bの外周側には、締結トルクを入力するための図示略の工具が装着される工具装着部78Bが形成されている。工具装着部78Bは、6つ(図2では断面とした関係上2つのみ図示)の平坦な面部79Bを有し、ネジ穴75Bの中心軸と中心を一致させた正六角柱形状をなしており、図示は略すがインパクトレンチ等の工具が装着されることになる。
第2ナット22Bには、第1ナット22A側の端面となる当接面53Bの内周側に凹部81Bが形成されている。凹部81Bは、ネジ穴75Bのネジ部76Bの最大径よりも大径であり、当接面53Bと平行な円環状の段面82Bと、段面82Bの外周縁部と当接面53Bの内周面とを繋ぐ円筒状の内周面83Bとを有している。
上記の第1ナット22Aが、図3に示すように、加締め工程の前の第1螺合工程において、座面53Aでバルブ規制部材52に当接し、バルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52に軸力を付与するようにロッド21の取付軸部27の雄のネジ部29に螺合され、所定の締め付けトルクで締め付けられることになる。この状態では、第1ナット22Aのネジ部76Aが、座面53Aと反対側(図3の上側)に向く螺旋状の面でロッド21のネジ部29の主軸部26側(図3の下側)に向く螺旋状の面に密着する一方、座面53A側(図3の下側)に向く螺旋状の面がロッド21のネジ部29の主軸部26とは反対側(図3の上側)に向く螺旋状の面に対し密着しない状態となる。
次に、加締め工程の前の第2螺合工程において、上記の第2ナット22Bが、当接面53Bで第1ナット22Aの頂面72Aに当接するまでロッド21の取付軸部27のネジ部29に螺合されることになる。
以上の第1,第2螺合工程によって、第1ナット22Aが、バルブ規制部材57、ディスクバルブ55、ピストン17、ディスクバルブ50およびバルブ規制部材52に所定の軸力を付与し、第2ナット22Bが第1ナット22Aに接触した状態となる。この状態において、取付軸部27の主軸部26とは反対側の先端部30が第2ナット22Bよりも主軸部26とは反対側に突出する状態となる。
次に、第1,第2螺合工程後の加締め工程において行われる、ナット22をロッド21に螺合状態で締結する締結方法について説明する。
上記した第1,第2螺合工程後のロッド21が、図4に示す加締め装置91の所定のセット位置にセットされる。この加締め装置91は、図示は略すが、ロッド21の第1ナット22A等とは反対側を支持することでロッド21、第1ナット22Aおよび第2ナット22B(図4ではロッド21を断面とした関係上図示略)を所定のセット位置に鉛直状に保持するワーク支持台と、このワーク支持台の上方に設けられた装置台101と、装置台101に取り付けられた駆動源としての複数のシリンダ102と、各シリンダ102に取り付けられ各シリンダ102によって往復移動させられる複数の先細形状のポンチ103とを有している。
シリンダ102およびポンチ103は、具体的には6つずつ設けられている。6つのシリンダ102は、例えば油圧で駆動されるもので、シリンダ本体106と、シリンダ本体106に対し直線運動で往復動する往復動ロッド107とを有している。これらシリンダ102は、いずれも、往復動ロッド107を、ロッド21のセット位置側に向けた姿勢で、装置台101にシリンダ本体106において取り付けられる。これらシリンダ102およびポンチ103は、ロッド21のセット位置から等距離の位置に、このロッド21のセット位置を囲むように周方向に均等位置に配置されており、このロッド21のセット位置を中心として放射状に配置されている。図示略のワーク支持台によってロッド21、第1ナット22Aおよび第2ナット22Bが基準高さのセット位置に保持された状態で、すべてのポンチ103は、図3に示すように先端部110が第1ナット22Aの第2ナット22B側の端部位置にロッド21の軸方向における位置を合わせることになり、また、図4に示すように第1ナット22Aの各面部79Aに垂直に対向することになる。
加締め工程は、上記の加締め装置91を用いて行われる。つまり、加締め工程では、すべてのポンチ103が後退端に位置する待機状態で、図示略のワーク支持台にロッド21が取り付けられることになり、これにより、ロッド21、第1ナット22Aおよび第2ナット22Bが基準高さのセット位置にセットされる。この状態で、図示略の駆動制御部がすべてのシリンダ102を同時に等速度で駆動することになり、これにより、周方向の均等位置に配置されたすべての同形状のポンチ103が、同時に、図3に示す第1ナット22Aの工具装着部78Aの各面部79Aの第2ナット22B側の端部に径方向外側から同等の押圧力で押し当てられ、外周方向から均等に工具装着部78Aをロッド21の中心に向け加締める。
この加締め工程によって、第1ナット22Aの工具装着部78Aが各ポンチ103の先端部110の形状に倣うように塑性変形する。その結果、図2に示すように、工具装着部78Aには、周方向に部分的に、ロッド21および第1ナット22Aの中心に向けて径方向内側に凹む凹状部120Aが、周方向の均等位置に複数、具体的には6カ所(図2では断面とした関係上2カ所のみ図示)形成されることになる。また、すべての凹状部120Aの位置で凹状部120Aが形成された分の体積の肉が、ロッド21、第1ナット22Aおよび第2ナット22Bの軸方向において、工具装着部78Aから第2ナット22B側に流動(塑性変形)して第2ナット22Bをロッド21の先端部30の方向に押圧しながら凹部81B内においてロッド21の先端部30側に延び、この延びた延長部121Aが凹部81B内に入り込む。この延長部121Aは、凹部81Bの段面82Bと内周面83Bとロッド21のネジ部29の外周面とに同時に密着する。これにより、第1ナット22Aと第2ナット22Bとの間の摩擦抵抗が増大し、これらが相対回転不可に一体化される。
つまり、第1ナット22Aの工具装着部78Aがロッド21および第1ナット22Aの周方向に部分的にポンチ103で加締められて形成される加締め部123Aは、上記した凹状部120Aと延長部121Aとを有しており、このような加締め部123Aが、ロッド21、第1ナット22Aおよび第2ナット22Bの周方向の均等位置に複数、具体的にはポンチ103と同数の6カ所、部分的に形成されることになる。その際に、第1ナット22Aの肉を周方向に部分的にロッド21の先端側に延びるように流動させて第2ナット22Bの凹部81B内に入り込ませる。第1ナット22Aの各加締め部123Aが、上記したように第2ナット22Bをロッド21の先端方向に押圧することにより、第2ナット22Bのネジ部76Bは、当接面53Bとは反対側(図2の上側)に向く螺旋状の面でロッド21のネジ部29の主軸部26側(図2の下側)に向く螺旋状の面に密着する一方、当接面53B側(図2の下側)に向く螺旋状の面でロッド21のネジ部29の主軸部26とは反対側(図2の上側)に向く螺旋状の面に対し密着しない状態となる。つまり、第2ナット22Bについては、加締め工程を行うことによって、回転させることなく締め付けた状態となる。
また、上記の加締め工程によって、すべての加締め部123Aが工具装着部78Aから半径方向内方にも押し出される。つまり、各加締め部123Aは、工具装着部78Aの加締め部123A以外の部分の内径よりもロッド21および第1ナット22Aの中心軸に向け突出し、その結果、工具装着部78Aのネジ穴75Aが、周方向に交互に径方向の凹凸を繰り返す形状となって波状に変形する。これにより、各加締め部123Aは、ロッド21のネジ部29に強く押し付けられ密着する。このとき、ロッド21の特にネジ部29の山側は、加締め部123Aで押圧されることにより、その周方向に部分的に径方向内方に変形して加締め部123Aに密着する。これにより、ロッド21のネジ部29の山が、周方向に交互に径方向の凹凸を繰り返す形状となって波状に変形する。これにより、ロッド21の波状のネジ部29と第1ナット22Aの波状のネジ穴75Aとが干渉して、第1ナット22Aの回転を阻止する。第1ナット22Aと第2ナット22Bとは上記のように延長部121Aで一体化されているため、第1ナット22Aの回転が阻止されることで、第2ナット22Bも回転不可に拘束される。加えて、第1ナット22Aのネジ部76Aおよび第2ナット22Bのネジ部76Bが広い面積でロッド21のネジ部29に接触し、摩擦抵抗を増大させる。
以上、第1ナット22Aの第2ナット22B側の端部の外周側に、周方向の複数カ所に加締め部123Aを形成し、第1ナット22Aのネジ部76Aを周方向に部分的に変形させることにより、第1ナット22Aのネジ部76Aとロッド21のネジ部29との密着面積が増大するとともに、ネジ部29,76Aの螺旋が変形して、ネジ部29,76A同士の相対回転が規制されることになって、第1ナット22Aがロッド21に対し緩み止めされた状態となる。また、加締め工程において、第1ナット22Aの周方向の複数カ所に加締め部123Aを形成する際に、加締め部123Aの肉をロッド21の先端側に延びるように流動させて第2ナット22Bの凹部81B内に入り込ませているため、第1ナット22Aと第2ナット22Bと一体化することになる。よって、ロッド21のネジ部29に対して第2ナット22Bのネジ部76Aの分も密着面積が増え、ロッド21に対しナット22がさらに緩み止めされた状態となる。但し、この状態でも、第2ナット22Bの工具装着部78Bに工具を装着して大きなトルクで回転させれば、第2ナット22Bをロッド21および第1ナット22Aに対し緩めることができ、その後、第1ナット22Aの工具装着部78Aに工具を装着して大きなトルクで回転させれば、ロッド21のネジ部29の変形等を戻しながら第1ナット22Aを緩めることは可能である。
以上に述べた本実施形態によれば、第1ナット22Aに加締め部123Aを形成して第2ナット22Bを一体化すると、ダブルナットの効果により、ナット22が緩み出す緩み出しトルクを格段に大きくでき、ナット22の緩み出しトルクの増加を図ることが可能となる。これにより、例えば、加締め工程でのポンチ103による加締め荷重を抑えて第1ナット22Aの加締め部123Aの加締め量を少なくしても緩み止め効果が得られることになり、加締めによるナット22の耐久性低下を抑制しつつ緩み止めを図ることができる。
また、第1ナット22Aの各加締め部123Aが、上記したように第2ナット22Bをロッド21の先端方向に押圧することにより、第2ナット22Bを、回転させることなく締め付けた状態とすることができるため、第2ナット22Bの締め付けトルクの管理が不要となり、第2ナット22Bの組み付け性を向上させることができる。
なお、第2ナット22Bの凹部81Bを、図5(a)に示すように、内周面83Bが段面82B側ほど小径となるテーパ状をなすようにしても良く、図5(b)に示すように、内周面83Bが段面82B側ほど大径となるテーパ状をなすようにしても良い。これにより、内周面83Bの表面積が増大するため、第1ナット22Aの延長部121Aと第2ナット22Bの凹部81Bとの接触面積を増やすことができ、これらの間の摩擦抵抗を増大させることができる。したがって、ナット22の緩み出しトルクの増加を図ることが可能となる。
また、図5(c)に示すように、第2ナット22Bの当接面53B側に、凹部81Bに加えて、当接面53Bから軸方向に凹む環状溝125Bを形成しても良く、図5(d)に示すように、このような環状溝125Bを複数形成しても良い。これにより加締め部123Aの肉を凹部81Bに加えて環状溝125Bに入り込ませることになるため、第1ナット22Aの加締め部123Aと第2ナット22Bとの接触面積を増やすことができ、これらの間の摩擦抵抗を増大させることができる。したがって、ナット22の緩み出しトルクの増加を図ることが可能となる。
以上に述べた実施形態は、ナットをボルトに螺合させて締結する締結方法であって、前記ナットは、座面側の第1ナットと、該第1ナットの前記座面とは反対側に前記第1ナットと当接して配置される第2ナットと、からなり、前記第2ナットには、前記第1ナット側の端面の内周側に凹部が形成されており、前記第1ナットの前記第2ナット側の端部を外周方向から複数カ所ポンチで加締める加締め工程を行うことで、前記第1ナットの肉を周方向に部分的に前記ボルトの先端側に延びるように流動させて前記凹部内に入り込ませる。これにより、第1ナットと第2ナットを一体化できることになり、ダブルナットの効果により、ナットが緩み出す緩み出しトルクの増加を図ることが可能となる。これにより、ナットの加締め量を少なくしても緩み止め効果が得られることになり、加締めによるナットの耐久性低下を抑制しつつ緩み止めを図ることができる。
また、上記実施形態は、流体が封入されたシリンダ内に摺動可能に設けられるピストンと、前記ピストンに設けられ、流体が流通する流路と、前記ピストンおよび前記流路を開閉する環状のディスクバルブに一端側が挿通され、他端側が前記シリンダから外部に延出されるロッドと、前記ロッドの一端側に形成されたネジ部に螺合され、前記ピストンおよび前記ディスクバルブに軸力を付与するナットと、を備えたシリンダ装置であって、前記ナットは、座面側の第1ナットと、該第1ナットの前記座面とは反対側に前記第1ナットと当接して配置される第2ナットと、からなり、前記第2ナットには、前記第1ナット側の端面の内周側に凹部が形成されており、前記第1ナットの前記第2ナット側の端部の外周側には、周方向の複数カ所に加締め部が形成され、前記加締め部は、肉を前記ロッドの先端側に延びるように流動させて前記凹部内に入り込ませていることを特徴とする。これにより、第1ナットと第2ナットを一体化できることになり、ダブルナットの効果により、ナットが緩み出す緩み出しトルクの増加を図ることが可能となる。これにより、ナットの加締め量を少なくしても緩み止め効果が得られることになり、加締めによるナットの耐久性低下を抑制しつつ緩み止めを図ることができる。