JP2014189510A - アクリル酸の製造方法 - Google Patents
アクリル酸の製造方法Info
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Abstract
【課題】副生成物を除去し高純度のアクリル酸を得るアクリル酸の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、前記反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、1以上の蒸留工程と、を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の製造方法が提供される。
【選択図】図1
【解決手段】本発明によれば、乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、前記反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、1以上の蒸留工程と、を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の製造方法が提供される。
【選択図】図1
Description
本発明は、アクリル酸の製造方法に関する。より詳細には、乳酸法を用いて高純度のアクリル酸を高い生産性で得る、アクリル酸の製造方法に関する。
アクリル酸は、アクリル繊維共重合体用、あるいはエマルションとして粘接着剤に用いられる他、塗料、繊維加工、皮革、建築用材等として用いられ、その需要は拡大している。また、吸水性樹脂の原料でもあり、この場合には特に不純物の少ないアクリル酸が要求されている。このため、安価な原料を使用して大量生産を可能とし、かつ、高純度のアクリル酸を得るための製造方法が引き続き検討されている。
従来、アクリル酸は、石油資源から、プロピレン等の接触気相酸化反応によって製造されることが一般的である。この場合には、副生成物として酢酸が生成することが知られている。アクリル酸と酢酸とは分離が困難であるため、不純物である酢酸を除くために多様な技術が開発されてきた。例えば、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物から(メタ)アクリル酸と水溶性溶剤とを分離する蒸留において、特定の値以下の濃度の酢酸を含有する組成物を用いる技術が知られている(下記特許文献1)。また、共沸分離塔において特定の混合溶剤を用いることにより、酢酸とアクリル酸とを分離する技術が知られている(下記特許文献2)。
一方、地球温暖化防止および環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源を従来の化石原料の代替として用いることが注目されている。例えば、アクリル酸を含む汎用化成品の原料として、トウモロコシや小麦等の澱粉系バイオマス、サトウキビなどの糖質系バイオマス、および菜種の絞りかすや稲わら等のセルロース系バイオマス等のバイオマス資源を原料として利用する方法の開発が試みられている。
バイオマスを原料としてアクリル酸を製造する方法としては、発酵法で得られる3−ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応、植物油のエステル交換で得られるグリセリンの脱水反応、および発酵法で得られる乳酸の脱水反応(乳酸法)等がある。この中で乳酸法は、乳酸が既に発酵法により大規模生産されていることから、有力なバイオマス原料アクリル酸の製造方法といえる。例えば、乳酸を用いてアクリル酸を製造する技術として、固体触媒を用いる気相脱水方法が知られている(下記非特許文献1)。
高知大学、恩田歩武著「ゼオライト触媒によるバイオマス由来化合物の変換」シーエムシー出版、2013年2月、p.26-29
しかしながら、乳酸を原料としてアクリル酸を合成する場合には、副反応によってアセトアルデヒドが副生しうる。アセトアルデヒドは蒸留の際に重合防止のために供給される酸素によって酸化されて酢酸となりやすく、アクリル酸とは分離しにくくなることから、最終製品となるアクリル酸の純度低下の原因となる。またアセトアルデヒドは、反応器内で重合することにより閉塞の原因となるだけでなく、アクリル酸中に混入すると安定性を損ない、着色や純度低下しやすくなる恐れがある。このような副生成物は、特に高純度のアクリル酸が要求される吸水性樹脂の製造等の用途において問題となる。しかしながら、従来技術では、乳酸法によるアクリル酸製造において、副生成物であるアセトアルデヒドを除去することに関してはこれまで十分な検討がなされていなかった。
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、副生成物であるアセトアルデヒドに着目することにより、乳酸法による高純度のアクリル酸の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。すなわち、本発明によれば、
乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、
前記反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、
1以上の蒸留工程と、
を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の製造方法が提供される。
乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、
前記反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、
1以上の蒸留工程と、
を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の製造方法が提供される。
本発明によれば、乳酸法を用いた場合に、副生成物であるアセトアルデヒドを効果的に分離することにより、アセトアルデヒドより副生する酢酸量を低減した、高純度のアクリル酸を高効率で得られるアクリル酸の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明のアクリル酸の製造方法は、少なくとも、乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、1以上の蒸留工程と、を有する。さらに、最初の蒸留工程への供給液中のアクリル酸に対するアセトアルデヒドの質量比を、アセトアルデヒド/アクリル酸 0.06以下とすることが特徴である。蒸留工程への供給液とは、蒸留操作を行う蒸留塔等の装置に直接導入される原料液をいう。
<第一実施形態>
図1は、本発明の好ましい一例である第一実施形態の概要を説明するための概略図である。図1中、反応工程(A)では乳酸法によりアクリル酸を生成する反応が行われ、反応生成物ガス11が取り出される。反応生成物ガス11は、凝縮工程(B)に移送され、冷却され、気相12とアクリル酸を含む凝縮液13とに分離される。凝縮液13は抽出工程(C−1)に移送され、アクリル酸を含む油相14と水相15とに分離される。第一実施形態では、凝縮液13および油相14の少なくとも一方において、アクリル酸に対するアセトアルデヒドの質量比を、アセトアルデヒド/アクリル酸 0.06以下とすることができる。油相14は、蒸留工程(D)に移送され、塔頂留出液16とアクリル酸を含む塔底液17が得られる。第一実施形態では、蒸留工程(D)が最初の蒸留工程となる。塔底液17は粗アクリル酸であり、好ましくは精製工程(E)に移送される。精製工程(E)を経て、精製アクリル酸18が得られる。以下、各工程について説明する。
図1は、本発明の好ましい一例である第一実施形態の概要を説明するための概略図である。図1中、反応工程(A)では乳酸法によりアクリル酸を生成する反応が行われ、反応生成物ガス11が取り出される。反応生成物ガス11は、凝縮工程(B)に移送され、冷却され、気相12とアクリル酸を含む凝縮液13とに分離される。凝縮液13は抽出工程(C−1)に移送され、アクリル酸を含む油相14と水相15とに分離される。第一実施形態では、凝縮液13および油相14の少なくとも一方において、アクリル酸に対するアセトアルデヒドの質量比を、アセトアルデヒド/アクリル酸 0.06以下とすることができる。油相14は、蒸留工程(D)に移送され、塔頂留出液16とアクリル酸を含む塔底液17が得られる。第一実施形態では、蒸留工程(D)が最初の蒸留工程となる。塔底液17は粗アクリル酸であり、好ましくは精製工程(E)に移送される。精製工程(E)を経て、精製アクリル酸18が得られる。以下、各工程について説明する。
[反応工程(A)]
反応工程(A)では、乳酸を脱水してアクリル酸を得る方法(乳酸法)によりアクリル酸を生成し、アクリル酸を含む反応生成物ガスを得る。具体的には、下記式のように、好ましくは触媒の存在下、乳酸(2−ヒドロキシプロピオン酸)の脱水反応によりアクリル酸を生成する。その際、乳酸法特有の副生成物として、同時にアセトアルデヒドが生成する。
反応工程(A)では、乳酸を脱水してアクリル酸を得る方法(乳酸法)によりアクリル酸を生成し、アクリル酸を含む反応生成物ガスを得る。具体的には、下記式のように、好ましくは触媒の存在下、乳酸(2−ヒドロキシプロピオン酸)の脱水反応によりアクリル酸を生成する。その際、乳酸法特有の副生成物として、同時にアセトアルデヒドが生成する。
反応に使用する乳酸は、一般的な製造法である発酵法で製造されたものでも化学法で製造されたものでもどちらでも使用できる。乳酸は通常水溶液の形態で流通しており、そのまま使用してもよいし、水でさらに希釈してもよく、また蒸発等の操作を利用して水分を除去して適宜濃縮して用いてもよい。前記希釈に用いる水としてはとしては乳酸をイオン交換水、純水、通常の水道水などに希釈したものを使用してよいし、製造工程で発生する廃水をリサイクル使用してもよい。乳酸の濃度はプロセス効率の観点から10質量%以上、さらに言えば20質量%以上であることが好ましい。また、高い反応収率を得るために、乳酸の濃度は90%以下、さらに言えば80質量%以下であることが好ましい。ここで、「乳酸の濃度」とは、乳酸単量体と乳酸オリゴマー、ラクチドを含む濃度のことをいい、JIS K8726記載の方法により定量された濃度のことをいう。
乳酸を脱水してアクリル酸を得る方法は、公知の方法を用いることができる。乳酸を含む原料を、好ましくは触媒の存在下、加熱して脱水反応を起こす。脱水反応工程は特に限定されず液相または気相での反応が可能であるが、気相での反応が好ましい。その際は、乳酸を含む原料を加熱し、脱水反応を気相で行うことによりアクリル酸を得る。より具体的には、乳酸を含む原料を蒸発させ、気化した原料をキャリアガスを用いて触媒を充填した反応器へ導入して脱水反応を行う。
反応ガスは乳酸や乳酸オリゴマーのみで構成されるガスであってもよく、反応ガス中の乳酸濃度を調整するためのガスを含んでいるものであっても良い。この濃度調整のためのガスとしては、水蒸気、窒素、空気などが例示できる。また、反応ガスのおける乳酸および乳酸オリゴマーの濃度は、0.1〜100モル%であると良く、好ましくは1モル%以上であり、経済的かつ高効率にアクリル酸を生成させるためには3モル%以上である。
蒸発に用いる蒸発器は、液体状態で供給される原料に効率的に熱を伝えることができる構造を有するものであることが好ましく、公知の蒸発器をいずれも使用できる。このようにして、アクリル酸を含む反応生成物ガスが得られる。反応生成物ガスには、通常、アクリル酸およびアセトアルデヒドの他、水、乳酸、酢酸、2,3−ペンタンジオン等が含まれている。
本発明における乳酸の脱水反応に使用する反応装置としては、特に限定されないが撹拌式反応器、固定床型、流動床型、噴流床型などが挙げられ、好ましくは固定床型である。
本発明における固定床反応器は、固体触媒が充填された反応管を備えており、該反応管に、原料である乳酸水溶液の揮発成分を通過させながら、気相接触反応により乳酸を脱水させ、アクリル酸を得るものである。
脱水反応の反応温度は特に制限はないが、通常250℃〜500℃であり、好ましくは300℃〜400℃である。ここで、気相脱水反応における「反応温度」とは、反応器の温度制御をおこなうための熱媒等の設定温度を意味する。また、脱水反応の反応圧力も特に限定されないが、30kPa〜200kPaの範囲が好ましく、60kPa〜150kPaの範囲がより好ましい。
固定床反応器を用いて、乳酸の気相脱水反応を行う場合、固定床反応器へ導入する反応ガスの流量は、原料濃度やキャリアガス量、触媒の性能、生産性などを考慮して適宜調整すればよいが、触媒単位体積あたりのガス空間速度(GHSV)で表すと、通常50〜20000h−1、好ましくは100〜10000h−1であり、より好ましくは150〜6000h−1である。
反応に使用する触媒としては、特に制限されないが、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライト、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。
硫酸塩としては、例えば、Na2SO4、K2SO4、CaSO4、Al2(SO4)3などが挙げられる。リン酸塩としてはNa3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、K3PO4、K2HPO4、KH2PO4、CaHPO4、Ca3(PO4)2、AlPO4、CaH2P2O7、Ca2P2O7などが挙げられる。硝酸塩としては、例えば、NaNO3、KNO3、Ca(NO3)2などが挙げられる。
ゼオライトとしては、例えば、ZSM、ZSM−12、ZSM−11、Xゼオライト、Ti−MWW、Ti−MCM−41、SAPO−34、SAPO−11、NaXゼオライト、NaAゼオライト、MFI、MCM−68、MCM−22、LTAゼオライト、ETS−10、BEAゼオライト、Al−MCM−41、有機ゼオライト、ゼオライトL、ゼオライトA、モルデナイト、ホージャサイト、クリノブチロライト、βゼオライト、シリカライト、Yゼオライト、ZSM−5が挙げられる。シリカライトとしては、例えば、シリカライト−1が挙げられる。Yゼオライトとしては、例えば、HYゼオライト、NaYゼオライト、USYゼオライトが挙げられる。ZSM−5としては、例えば、HZSM−5、Cu−ZSM−5、Fe/ZSM−5、NaZSM−5が挙げられる。
これらの触媒のうち好ましくはリン酸塩であり、特に好ましくはCa3(PO4)2、またはCa2P2O7である。
これらの触媒は、担体に担持して使用してもよい。担体としては、シリカ、珪藻土、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ニオビア、セリア、ゼオライト、炭化ケイ素、炭化物などが挙げられ、チタニア、シリカ、ジルコニア、またはアルミナが好ましい。この中から1種の担体に担持してもよく、2種以上の複合体や混合物からなる担体に担持してもよい。また、これらの触媒は、添加剤としてCs、Ba、Y、La、Ceなどの金属を含んでもよい。
また、これらの触媒は粉体、破砕体、または成形体のいずれかであっても良い。その成形体形状としては、限定されるものではなく、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム型等が挙げられる。
[凝縮工程(B)]
凝縮工程(B)では、反応工程(A)で得られた反応生成物ガスを冷却し、アクリル酸を分縮する。「分縮」とは、ガスあるいは蒸気の一部を凝縮させ目的物を分離する方法を意味し、凝縮工程(B)では、気相を分離してアクリル酸を液体として回収し、アクリル酸を含む凝縮液を得る。気相には、アセトアルデヒドのほか、CO、CO2等が含まれる。
凝縮工程(B)では、反応工程(A)で得られた反応生成物ガスを冷却し、アクリル酸を分縮する。「分縮」とは、ガスあるいは蒸気の一部を凝縮させ目的物を分離する方法を意味し、凝縮工程(B)では、気相を分離してアクリル酸を液体として回収し、アクリル酸を含む凝縮液を得る。気相には、アセトアルデヒドのほか、CO、CO2等が含まれる。
第一実施形態では、凝縮工程(B)および後述する抽出工程(C−1)の少なくとも一方において、得られる凝縮液または油相(抽出溶媒相)中、アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が0.06以下となるように制御することができる。アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比は、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.045以下である。質量比の下限値は特に制限はなく、0に近い程好ましく、最も好ましくは0である。凝縮液または油相中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が上記の範囲であると、後の最初の蒸留工程である蒸留工程(D)への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が上記の範囲となる。抽出工程(C−1)で得られる油相はそのまま蒸留工程(D)へ供給されるため、油相が供給液となる。また、凝縮液は抽出工程(C−1)を経てさらにアセトアルデヒドが除去されるため、凝縮液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が上記の範囲であれば、抽出工程(C−1)から移送される供給液である油相中の質量比も上記範囲に含まれるからである。アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比は、凝縮工程(B)および抽出工程(C−1)の両方で制御してもよいが、工程の簡便さの点からはどちらか一方で行うことが好ましい。
従来のプロピレン酸化法やグリセリン脱水法によるアクリル酸の製造では、副生成物のアセトアルデヒドは反応器中で既に酸化され、酢酸となっている。また、3−ヒドロキシプロピオン酸脱水法では、アセトアルデヒドは生成しない。したがって、アセトアルデヒドは、乳酸法でアクリル酸を製造した場合に特有の副生成物であるといえる。アセトアルデヒドは蒸留工程で重合防止のために供給される酸素によって酸化され酢酸となり、酢酸とアクリル酸は非理想性が高いことから、蒸留によって両者を分離するには、高い理論段数や高い還流比が必要となり、設備費や変動費のコストが高く、また、蒸留工程でのアクリル酸の重合や回収率が低くなるといった問題がある。この問題に対して、本発明では、乳酸法を用いて、蒸留工程(D)の前に副生成物のアセトアルデヒドを分離することを可能にしたものである。従来は酢酸となって最終製品のアクリル酸中に残存していた副生成物を、本発明では分離しやすいアセトアルデヒドの状態で除去し蒸留工程の前に一定量範囲に制限することにより、分離の困難な酢酸の量を効果的に低減することができ、産業上大きな利点がある。これにより、最終製品のアクリル酸中の酢酸を低減することができ、高純度のアクリル酸を得ることができる。
凝縮器(冷却器)は、捕集目的であるアクリル酸の沸点(141℃;101kPa)未満に冷却すればアクリル酸を液体として回収できる。本発明では、さらに、副生成物のアセトアルデヒドの沸点(20℃;101kPa)を超える適当な温度となるように反応生成物ガスを冷却することにより、アセトアルデヒドを気体として分離することができる。凝縮器の温度は、反応生成物ガスの組成により操作温度を決定する。従来の凝縮工程では、アクリル酸の回収率をあげるため、凝縮温度を低くする傾向にあったが、本発明では、アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を上記範囲内となるよう、操作温度を適宜設定する。また、反応生成物ガスの凝縮時の圧力としては、大気圧下が好ましい。得られる凝縮液中のアクリル酸濃度は、反応生成物ガスの組成その他の条件によって異なるが、通常、凝縮液の全質量に対して5〜90質量%である。
反応生成物ガスの冷却に用いる凝縮器としては、特に制限はなく、多管式熱交換器、フィンチューブ式熱交換器、空冷式熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、直接接触式熱交換器、プレート式熱交換器等の公知の凝縮器を使用することができる。
凝縮工程で分離されたガス成分は、そのまま反応器に戻してもよく、さらに凝縮してアクリル酸を回収し、精製しても良い。
凝縮工程で得られた凝縮液には、重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤は凝縮器内で添加しても良く、凝集液に添加しても良い。
重合禁止剤としては、従来公知の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)等のキノン類;フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルファノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等のフェノチアジン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6、−テトラメチルペリジノオキシル、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6、−テトラメチルペリジノオキシル)フォスファイト等のN−オキシル化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅等の銅塩化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、ギ酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、過マンガン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸のマンガン塩化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンやその塩、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンやその塩、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミンやその塩等のニトロソ化合物等が挙げられる。これらの重合禁止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの重合禁止剤の中でも、ハイドロキノン、メトキノン等のキノン類が好ましく用いられる。
重合禁止剤の添加量は凝縮液中でアクリル酸の重合防止効果が発揮される範囲で適宜設定すればよく、例えば、凝縮液中のアクリル酸に対して1〜100000ppm、よりこのましくは3〜1000ppm、さらに好ましくは10から500ppmの範囲となるように重合禁止剤が加えられることが好ましい。
[抽出工程(C−1)]
抽出工程(C−1)では、凝縮工程(B)で得られた凝縮液中のアクリル酸を抽出溶媒を用いて回収する。「抽出」とは目的物を溶媒に溶解させることにより分離する方法をいい、ここでは目的物であるアクリル酸を酢酸エチル等の油相となる抽出溶媒に溶解させて、水相と分離する。乳酸法では水の量が多いため、抽出は、第二実施形態で抽出の代わりに行う蒸留による分離よりも、コストの点で優れている。
抽出工程(C−1)では、凝縮工程(B)で得られた凝縮液中のアクリル酸を抽出溶媒を用いて回収する。「抽出」とは目的物を溶媒に溶解させることにより分離する方法をいい、ここでは目的物であるアクリル酸を酢酸エチル等の油相となる抽出溶媒に溶解させて、水相と分離する。乳酸法では水の量が多いため、抽出は、第二実施形態で抽出の代わりに行う蒸留による分離よりも、コストの点で優れている。
第一実施形態では、上述の凝縮工程(B)および抽出工程(C−1)の少なくとも一方において、得られる凝縮液または油相(抽出溶媒相)中、アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が0.06以下となるように制御することができる。アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比は、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.045以下である。質量比の下限値は特に制限はなく、0に近い程好ましく、最も好ましくは0である。また、油相中、アクリル酸の濃度は油相の全量に対して10〜70質量%となる。水相には、水の他、アセトアルデヒドおよび未反応の乳酸が溶解して、アクリル酸と分離される。
アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を上記の範囲にするには、アセトアルデヒドとアクリル酸の分配係数を考慮して抽出溶媒を選択する。
抽出溶媒としては、水と混合せず、アクリル酸を溶解させ得る有機溶媒で、アセトアルデヒドを溶解させにくいものを適宜使用できる。また、蒸留工程での分離の観点から、大気圧下での沸点が、アクリル酸の沸点である、140℃以下であることが好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類が用いられる。これらは単独でも二種以上を組み合わせても使用できる。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度が好ましく、具体的には10〜60℃が適当である。
抽出装置としては特に制限はなく、公知の液液抽出装置を適宜使用することができる。工業的に用いられる液液抽出装置は、ミキサーセトラー、並流式混合器、連続向流抽出塔等、種々の形式がある。化学工業の連続製造装置の場合には、一般的には連続向流抽出塔が好適であり、例えば充填塔、スプレー塔、多孔板塔等があり、接触効率を高めた往復動プレート式向流抽出装置等も使用しうる。
反応生成物ガス中に未反応乳酸を含有する場合は、抽出工程の水溶液から未反応乳酸を回収し、反応工程または原料精製工程にリサイクルしてもよい。
[蒸留工程(D)]
蒸留工程(D)では、アクリル酸を含む塔底液と低沸点成分を分離する。蒸留工程(D)では、揮発性成分である、上記の抽出溶媒、2,3−ペンタンジオン等の低沸点成分が塔頂留出液として、塔底から得られる粗アクリル酸と分離される。
蒸留工程(D)では、アクリル酸を含む塔底液と低沸点成分を分離する。蒸留工程(D)では、揮発性成分である、上記の抽出溶媒、2,3−ペンタンジオン等の低沸点成分が塔頂留出液として、塔底から得られる粗アクリル酸と分離される。
蒸留工程(D)を実施する蒸留塔としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔を用いることができる。かかる蒸留塔は、通常棚段塔または充填塔が好ましく、塔内装物として充填物・棚段があり、いずれでもよい。また、理論段数は3〜50段であることが好ましく、より好ましくは5〜40段である。
蒸留工程(D)の蒸留条件は、アクリル酸と抽出溶媒等が分離できる、従来公知の蒸留条件で蒸留することができる。例えば、還流比が0.1〜10、より好ましくは0.1〜5となるように温度や圧力等の運転条件を選択することができる。例えば、塔頂圧は1〜110Pa、より好ましくは20〜105Pa、塔底温度は30〜200℃、より好ましくは60〜160℃で行うことができる。このような蒸留条件により、塔底から粗アクリル酸が得られる。塔底液中のアクリル酸濃度は、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上となり、塔底液中の酢酸濃度は1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下にまで低減できる。また、蒸留工程でのアクリル酸の回収率は98質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
蒸留の際は、アクリル酸の重合防止のために、重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤としては従来公知のものを使用でき、先に例示したような重合禁止剤が挙げられる。さらなる安定化のために、蒸留塔には、酸素含有ガス、好ましくは空気または空気及び窒素からなる混合物を導入することができる。
蒸留工程(D)で得られた粗アクリル酸は、用途によって、最終製品としてもよく、さらなる精製工程(E)を実施してもよい。
[精製工程(E)]
アクリル酸の用途によって、高純度のアクリル酸が必要とされる場合には、精製工程(E)を実施し、粗アクリル酸をさらに精製することが好ましい。本発明では、粗アクリル酸の精製方法に関する制限はなく、従来公知の精製法のいずれを組みあわせてもよい。例えば、蒸留、放散、晶析、抽出、吸収、分縮のいずれを用いてもよく、これらを適宜組み合わせてアクリル酸を精製してもよい。このうち、蒸留および晶析が一般的に行われている。ここで、「放散」とは、放散ガスを供給して液相中の目的物を気相に移す方法、「晶析」とは目的物を結晶として分離する方法、「吸収」とは、気相または液相中の目的物を液体または固体に接触させ分離する方法、をそれぞれ意味する。
アクリル酸の用途によって、高純度のアクリル酸が必要とされる場合には、精製工程(E)を実施し、粗アクリル酸をさらに精製することが好ましい。本発明では、粗アクリル酸の精製方法に関する制限はなく、従来公知の精製法のいずれを組みあわせてもよい。例えば、蒸留、放散、晶析、抽出、吸収、分縮のいずれを用いてもよく、これらを適宜組み合わせてアクリル酸を精製してもよい。このうち、蒸留および晶析が一般的に行われている。ここで、「放散」とは、放散ガスを供給して液相中の目的物を気相に移す方法、「晶析」とは目的物を結晶として分離する方法、「吸収」とは、気相または液相中の目的物を液体または固体に接触させ分離する方法、をそれぞれ意味する。
蒸留を行う場合は、蒸留塔としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔のいずれを用いてもよい。通常、棚段塔または充填塔が好ましく、塔内装物として充填物・棚段があり、いずれでもよい。また、理論段数は3〜50段であることが好ましい。蒸留条件は、不純物の沸点に応じてアクリル酸と分離しうる従来公知の温度、圧力、滞留時間、還流比の条件で運転することができる。蒸留の際には、上記と同様に重合防止剤を添加してもよい。
また、反応生成物ガス中に未反応乳酸を含有する場合は、蒸留ボトムから未反応乳酸を回収し、反応工程、または原料精製工程にリサイクルしてもよい。
晶析を行う場合は、晶析装置の種類は特に制限されず、例えば、伝熱面を有しており、伝熱面での熱交換によって、アクリル酸が結晶化するものを用いることができる。伝熱面を有する晶析装置としては、一般に熱交換器として用いられる装置を採用することができ、例えば、プレート式熱交換器、多管式(シェル・アンド・チューブ式)熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、スパイラル式熱交換器等を採用することができる。晶析を行うには、アクリル酸の融点は13.5℃であるが、粗アクリル酸は不純物を含むことから凝固点はこの融点よりも低くなる。そのため、凝固点以下に十分に冷却することにより、アクリル酸を結晶化させる。この冷却は、段階的に行ってもよい。また、晶析は発汗工程を組み合わせて行ってもよい。
精製工程(E)を経て、高純度の精製アクリル酸が得られる。吸水性樹脂原料などの高純度が要求される場合には、通常、99質量%以上のアクリル酸、かつ、酢酸濃度0.3質量%以下の製品が求められる。本発明の方法によれば、アセトアルデヒドの状態で副生成物を除去できることにより、このような要求を満たすことが可能である。
また、また、反応生成物ガス中に未反応乳酸を含有する場合は、晶析ろ液から未反応乳酸を回収し、反応工程、または原料精製工程にリサイクルしてもよい。
<第二実施形態>
図2は、本発明の好ましい別の一例である第二実施形態の概要を説明するための概略図である。図2中、反応工程(A)では乳酸法によりアクリル酸を生成する反応が行われ、反応生成物ガス11が取り出される。反応生成物ガス11は、凝縮工程(B)に移送され、冷却され、気相12とアクリル酸を含む凝縮液13とに分離される。第二実施形態では、凝縮工程(B)において、凝縮液13中のアクリル酸に対するアセトアルデヒドの質量比を、アセトアルデヒド/アクリル酸 0.06以下に制御することができる。凝縮液13は蒸留工程(C−2)に移送され、塔頂留出液24と粗アクリル酸である塔底液25とが得られる。塔頂留出液24はこのましくはさらに精製工程(E)に移送される。精製工程(E)を経て、精製アクリル酸26が得られる。
図2は、本発明の好ましい別の一例である第二実施形態の概要を説明するための概略図である。図2中、反応工程(A)では乳酸法によりアクリル酸を生成する反応が行われ、反応生成物ガス11が取り出される。反応生成物ガス11は、凝縮工程(B)に移送され、冷却され、気相12とアクリル酸を含む凝縮液13とに分離される。第二実施形態では、凝縮工程(B)において、凝縮液13中のアクリル酸に対するアセトアルデヒドの質量比を、アセトアルデヒド/アクリル酸 0.06以下に制御することができる。凝縮液13は蒸留工程(C−2)に移送され、塔頂留出液24と粗アクリル酸である塔底液25とが得られる。塔頂留出液24はこのましくはさらに精製工程(E)に移送される。精製工程(E)を経て、精製アクリル酸26が得られる。
反応工程(A)、凝縮工程(B)、精製工程(E)については、第一実施形態と同様である。ただし、第二実施形態では、凝縮工程(B)において、得られる凝縮液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を上記範囲に制御する。アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比は、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.045以下である。質量比の下限値は特に制限はなく、0に近い程好ましく、最も好ましくは0である。かかる質量比の制御の方法は、第一実施形態において説明したとおりである。
第二実施形態では、第一実施形態での抽出工程(C−1)に代えて蒸留工程(C−2)を実施する。したがって、蒸留工程(C−2)が最初の蒸留工程となる。蒸留工程(C−2)においてアセトアルデヒドが存在すると、重合防止のために供給される酸素により酸化されて酢酸となり、アクリル酸との分離が困難となる。そのため、第二実施形態では、蒸留工程(C−2)の前にアセトアルデヒドを分離する。凝縮工程(B)で得られる凝縮液は蒸留工程(C−2)にそのまま移送されるため、凝縮液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が上記の範囲内であれば、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比が上記の範囲内であることになる。
蒸留工程(C−2)では、アクリル酸を含む塔底液と低沸点成分を分離する。すなわち、揮発性成分である、水、2,3−ペンタンジオン等の低沸点成分が塔頂留出液として、塔底から得られる粗アクリル酸と分離される。粗アクリル酸は、用途に応じて最終製品としてもよく、さらに蒸留操作を実施してもよい。
蒸留工程(C−2)を実施する蒸留塔としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔を用いることができる。かかる蒸留塔は、通常棚段塔または充填塔が好ましく、塔内装物として充填物・棚段があり、いずれでもよい。また、理論段数は3〜50段であることが好ましく、より好ましくは5〜45段である。
蒸留工程(C−2)の蒸留条件は、アクリル酸と水等が分離できる、従来公知の蒸留条件で蒸留することができる。例えば、還流比が0.1〜10、より好ましくは0.1〜5となるように温度や圧力等の運転条件を選択することができる。例えば、塔頂圧は1〜110Pa、より好ましくは20〜105Pa、塔底温度は30〜200℃、より好ましくは60〜160℃で行うことができる。このような蒸留条件により、塔底から粗アクリル酸が得られる。塔底液中のアクリル酸濃度は、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上となり、塔底液中の酢酸濃度は1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下にまで低減できる。
蒸留の際は、アクリル酸の重合防止のために、第一実施形態と同様に重合防止剤を添加してもよい。また、さらなる安定化のために、蒸留塔には、酸素含有ガス、好ましくは空気または空気及び窒素からなる混合物を導入することができる。
また、蒸留工程(C−2)で得られた粗アクリル酸は、用途によって、最終製品としてもよく、第一実施形態と同様にさらなる精製工程(E)を実施してもよい。精製工程(E)を経て精製アクリル酸が得られる。
<アクリル酸の精製方法>
本発明は、1以上の蒸留工程を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の精製方法をも提供する。粗アクリル酸中に不純物としてアセトアルデヒドが含まれる場合には、蒸留前に除くことにより、蒸留工程後に得られる製品アクリル酸中の酢酸を低減することができる。
本発明は、1以上の蒸留工程を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の精製方法をも提供する。粗アクリル酸中に不純物としてアセトアルデヒドが含まれる場合には、蒸留前に除くことにより、蒸留工程後に得られる製品アクリル酸中の酢酸を低減することができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例には限定されない。
[触媒調製例]
Applied Catalysis A:General 396(2011) 194−200を参考にリン酸カルシウム−ピロリン酸カルシウム触媒を調製した。触媒は粉体のリン酸カルシウム−ピロリン酸カルシウム触媒を油圧プレスで圧縮成型してから破砕し、ふるいで粒子径を約1mm前後にそろえて使用した。
Applied Catalysis A:General 396(2011) 194−200を参考にリン酸カルシウム−ピロリン酸カルシウム触媒を調製した。触媒は粉体のリン酸カルシウム−ピロリン酸カルシウム触媒を油圧プレスで圧縮成型してから破砕し、ふるいで粒子径を約1mm前後にそろえて使用した。
[反応例1]
原料として、50質量%乳酸水溶液1kg/hをキャリアガスである窒素2.3L/hとともに、ナイターバスで360℃に保温した固定床反応器(反応管内径2cm、触媒層長1.5m、上記で製造した触媒を350ml充填)に、101kPaの圧力で供給して気相脱水反応を行った。反応器から出るガスは冷却器を通して凝縮させて液体として回収した。
原料として、50質量%乳酸水溶液1kg/hをキャリアガスである窒素2.3L/hとともに、ナイターバスで360℃に保温した固定床反応器(反応管内径2cm、触媒層長1.5m、上記で製造した触媒を350ml充填)に、101kPaの圧力で供給して気相脱水反応を行った。反応器から出るガスは冷却器を通して凝縮させて液体として回収した。
[実施例1](蒸留工程(C−2)の実施)
反応器から出るガスを冷却器を通して85℃で凝縮させて0.886kg/hの液体として回収した。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸32.9質量%、水64.7質量%、アセトアルデヒド1.2質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であり、アセトアルデヒド/アクリル酸=0.037であった。
反応器から出るガスを冷却器を通して85℃で凝縮させて0.886kg/hの液体として回収した。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸32.9質量%、水64.7質量%、アセトアルデヒド1.2質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であり、アセトアルデヒド/アクリル酸=0.037であった。
この凝縮液を理論段数40段の蒸留塔に連続的に供給し、還流比2、塔頂圧力101kPa、塔底温度141℃、塔頂から0.589kg/hで留出液が得られるように運転した結果、塔頂からはアセトアルデヒド 0.5質量%、酢酸1.7質量%、2,3−ペンタンジオン0.3質量%を含む水溶液が得られ、アクリル酸は検出されなかった。塔底からは粗アクリル酸が0.300kg/hで得られ、粗アクリル酸の組成はアクリル酸97.3質量%、酢酸0.07質量%、プロピオン酸2.0質量%、ヒドロキシアセトンを0.6質量であった。蒸留時のアクリル酸の回収率は99.9質量%であった。
[比較例1](蒸留工程の実施)
反応器から出るガスを冷却器を通して60℃で凝集させた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸31.6質量%、水64.3質量%、アセトアルデヒド3.0質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であり、アセトアルデヒド/アクリル酸=0.068であった。
反応器から出るガスを冷却器を通して60℃で凝集させた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸31.6質量%、水64.3質量%、アセトアルデヒド3.0質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であり、アセトアルデヒド/アクリル酸=0.068であった。
この凝縮液を蒸留塔に0.955kg/hで連続的に供給し、塔頂から0.669kg/hで留出液が得られるように運転した結果、塔頂からはアクリル酸1.6質量%、アセトアルデヒド 1.5質量%、酢酸4.4質量%、2,3−ペンタンジオン0.3質量%を含む水溶液が得られた。塔底からは粗アクリル酸が0.300kg/hで得られ、粗アクリル酸の組成はアクリル酸96.4質量%、酢酸1.0質量%、プロピオン酸2.0質量%、ヒドロキシアセトンを0.6質量であった。蒸留時のアクリル酸の回収率は96.7質量%であった。
[実施例2](抽出工程(C−1)の実施)
反応器から出るガスを冷却器を通して85℃で凝縮させて0.886kg/hの液体として回収した。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸32.9質量%、水64.7質量%、アセトアルデヒド1.2質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であった。
反応器から出るガスを冷却器を通して85℃で凝縮させて0.886kg/hの液体として回収した。得られた凝縮液の組成は、アクリル酸32.9質量%、水64.7質量%、アセトアルデヒド1.2質量%、プロピオン酸0.6質量%、ヒドロキシアセトン0.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であった。
この凝縮液に酢酸エチルを0.5kg/h添加し、抽出した。酢酸エチル相の組成はアクリル酸32.4質量%、水10.4質量%、アセトアルデヒド0.6質量%、プロピオン酸0.2質量%、ヒドロキシアセトン0.1質量%、2,3−ペンタンジオン0.1質量%、酢酸エチル56.1質量%であり、アセトアルデヒド/アクリル酸=0.036であった。
酢酸エチル相を0.856kg/hで理論段数20段の蒸留塔に連続的に供給し、還流比2、塔頂圧力101kPa、塔底温度141℃、塔頂から0.096kg/hで留出液が得られるように運転した結果、塔頂からはアクリル酸1.3質量%、アセトアルデヒド 2.8質量%、酢酸3.2質量%、2,3−ペンタンジオン0.4質量%を含む水溶液が得られた。塔底からは粗アクリル酸が0.280kg/hで得られ、粗アクリル酸の組成はアクリル酸98.6質量%、酢酸0.2質量%、プロピオン酸0.7質量%、ヒドロキシアセトンを0.2質量、2,3−ペンタンジオン0.2質量%であった。蒸留時のアクリル酸の回収率は99.5質量%であった。
11 反応生成物ガス、
12 気相、
13 凝縮液、
14 油相、
15 水相、
16、24 塔頂留出液、
17、25 塔底液、
18、26 精製アクリル酸、
A 反応工程、
B 凝縮工程、
C−1 抽出工程、
C−2、D 蒸留工程、
E 精製工程。
12 気相、
13 凝縮液、
14 油相、
15 水相、
16、24 塔頂留出液、
17、25 塔底液、
18、26 精製アクリル酸、
A 反応工程、
B 凝縮工程、
C−1 抽出工程、
C−2、D 蒸留工程、
E 精製工程。
Claims (4)
- 乳酸の脱水反応によりアクリル酸を生成し、反応生成物ガスを得る反応工程と、
前記反応生成物ガスを凝縮する凝縮工程と、
1以上の蒸留工程と、
を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の製造方法。 - 前記凝縮工程において、前記アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を制御する、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
- 前記最初の蒸留工程の前に抽出工程をさらに有し、前記凝縮工程および前記抽出工程の少なくとも一方において、前記アセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を制御する、請求項1または2に記載のアクリル酸の製造方法。
- 1以上の蒸留工程を有し、最初の蒸留工程への供給液中のアセトアルデヒド/アクリル酸の質量比を0.06以下とする、アクリル酸の精製方法。
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