以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に第1液管8aと第2液管8bと第3液管8cとで構成される液管8およびガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cと、第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cとで構成される流量調整手段30とを備えている。
上記各構成要素は次のように接続されている。第1液管8aの一端が第1膨張弁30aの一方の接続ポートに、他端が室内機5aの閉鎖弁53aにそれぞれ接続され、第2液管8bの一端が第2膨張弁30bの一方の接続ポートに、他端が室内機5bの閉鎖弁53bにそれぞれ接続され、第3液管8cの一端が第3膨張弁30cの一方の接続ポートに、他端が室内機5cの閉鎖弁53cにそれぞれ接続されている。また、第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、第3膨張弁30cの他方の接続ポートは、各々に接続された冷媒配管が合流して室外機2の閉鎖弁28に接続されている。また、ガス管9は一端が室外機2の閉鎖弁29に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各閉鎖弁54a〜54cにそれぞれ接続されている。このように、室外機2と室内機5a〜5cとが液管8およびガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、アキュムレータ24と、オイルセパレータ25と、室外ファン26と、一端が流量調整手段30に接続された冷媒配管の他端が接続された閉鎖弁28およびガス管9の一端が接続された閉鎖弁29と、油戻し管48と、室外機制御手段200とを備えている。そして、室外ファン26および室外機制御手段200を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口は、オイルセパレータ25の冷媒流入側に吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ24の冷媒流出側に吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、オイルセパレータ25の冷媒流出側に冷媒配管43で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管44で接続されている。ポートcは、アキュムレータ24の冷媒流入側と冷媒配管47で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁29と室外機ガス管46で接続されている。
室外熱交換器23は、後述する室外ファン26の回転により図示しない吸込口から室外機2内部に取り込まれた外気と冷媒とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は上述したように冷媒配管44で四方弁22のポートbに接続され、他方の冷媒出入口は室外機液管45で閉鎖弁28に接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
アキュムレータ24は、上述したように、冷媒流入側が四方弁22のポートcと冷媒配管47で接続され、冷媒流出側が圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。アキュムレータ24は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機21に吸入させる。
オイルセパレータ25は、上述したように、冷媒流入側が圧縮機21の冷媒吐出口に吐出管41で接続され、冷媒流出側が四方弁22のポートaに冷媒配管43で接続されている。オイルセパレータ25は、圧縮機21から吐出された冷媒に含まれる圧縮機21の冷凍機油を冷媒から分離する。
室外ファン26は、室外熱交換器23の近傍に配置される樹脂材で形成されたプロペラファンであり、図示しないファンモータによって回転することで室外機2に設けられた図示しない吸込口から室外機2内部に外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を室外機2に設けられた図示しない吹出口から室外機2外部へ放出する。
油戻し管48は、一端がオイルセパレータ25の油戻し口に接続され、他端が吸入管42に接続されている。油戻し管48には電磁弁27が設けられており、電磁弁27を開くことで、オイルセパレータ25で分離された冷凍機油は、油戻し管48を流れて吸入管42に流入し、吸入管42を流れて圧縮機21に吸入される。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管43には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ31が設けられている。冷媒配管47におけるアキュムレータ24の冷媒流入側近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交温度センサ35が設けられている。室外機液管45には、室外熱交換器23に流入あるいは室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ36が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度検出手段である外気温度センサ37が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン26の制御状態、後述する各種テーブル等を記憶する。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
CPU210には、センサ入力部240を介して各種センサでの検出値が入力されるとともに、室内機5a〜5cから送信される運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら入力された各種情報に基づいて、室外膨張弁26の開度制御や、圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行う。
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、第1液管8aと第2液管8bと第3液管8cがそれぞれ接続された閉鎖弁53a〜53cおよび分岐したガス管9の他端がそれぞれ接続された閉鎖弁54a〜54cと、室内ファン55a〜55cと、室内機制御手段500a〜500cとを備えている。そして、室内ファン55a〜55cおよび室内機制御手段500a〜500cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、図1(A)では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aの回転により室内機5aに備えられた図示しない吸込口から室内機5a内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が閉鎖弁53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口が閉鎖弁54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
室内ファン55aは、室内熱交換器51aの近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5a内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を室内機5aに備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内機液管71aには、室内熱交換器51aに流入あるいは室内熱交換器51aから流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61aが設けられている。室内機ガス管72aには、室内熱交換器51aから流出あるいは室内熱交換器51aに流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62aが設けられている。そして、室内機5aの吸込口510a付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度検出手段である室内温度センサ63aが備えられている。
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aと、センサ入力部540aとを備えている。
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部540aは、室内機5aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU510aに出力する。
CPU510aには、センサ入力部540aを介して各種センサでの検出値が入力されるとともに、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転条件やタイマー運転設定等を含んだ信号が図示しないリモコン受光部を介して入力される。CPU510aは、これら入力された各種情報に基づいて、室内膨張弁52aの開度制御や、室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
次に、流量調整手段30について説明する。前述したように、流量調整手段30は、第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cとから構成されており、第1膨張弁30aの一方の接続ポートが第1液管8aで室内機5aの閉鎖弁53aと、第2膨張弁30bの一方の接続ポートが第2液管8bで室内機5bの閉鎖弁53bと、第3膨張弁30cの一方の接続ポートが第3液管8cで室内機5cの閉鎖弁53cと、それぞれ接続されるとともに、各膨張弁の他方の接続ポートが冷媒配管で室外機2の閉鎖弁28に接続されている。
第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cは、全て室外機制御手段200によりその開度が制御され、各膨張弁の開度を制御することによって、室内機5a〜5cに流れる冷媒量を個別に調整できるようになっている。尚、第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cは、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整される。
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合について説明し、暖房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は冷媒の流れを示しており、室外機2に備えられた電磁弁27は閉じられている(図1(A)では、閉じている電磁弁27を黒塗りで図示している)。
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41からオイルセパレータ25を介して冷媒配管43に流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管44を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン26の回転により図示しない吸込口から室外機2内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から流出した冷媒は室外機液管45を流れ、閉鎖弁28を介して流量調整手段30の第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cとに分かれて流入する。尚、第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cとは、その開度が室内機5a〜5cで要求される冷房能力に応じて制御される。
流量調整手段30から流出し閉鎖弁53a〜53cを介して各室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機液管71a〜71cを流れて室内熱交換器51a〜51cに流入する。室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により図示しない吸込口から室内機5a〜5c内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内機5a〜5cが設置されている部屋に吹き出されることによって、各部屋の冷房が行われる。
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機ガス管72a〜72cを流れ、閉鎖弁54a〜54cを介してガス管9に流入する。ガス管9を流れ閉鎖弁29を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管46を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管47、アキュムレータ24、吸入管42へと流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
尚、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する。
次に、本実施形態の空気調和装置1において、図2乃至図4に示す各種テーブルを用いて、室内機5a〜5cで必要とされる運転能力や、第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cの開度を求め、また、求めた運転能力に基づいて圧縮機21の回転数を決定する方法について説明する。尚、以下の説明では、空気調和装置1が冷房運転を行っている場合を例に挙げて説明する。また、室外機制御手段200と室内機制御手段500a〜500cとで、本発明の制御手段が構成される。
空気調和装置1が冷房運転を行っているとき、室内機5cでの設定温度が室内機5aおよび室内機5bと比べて高く設定される場合、例えば、室外機2の外気温度センサ37で検出した外気温度が32℃であるとき、室内機5aおよび室内機5bでは設定温度が26℃、室内機5cでは設定温度が28℃、とされている場合は、室内機5cの使用者は、室内機5a、5bの使用者に比べて、部屋が暑いと感じていないと考えられる。従って、室内機5cから吹き出される空気の温度が室内機5a、5bから吹き出される空気の温度と比べて高くても、室内機5cの使用者に不快感を与えないと考えられる。
このとき、室内温度センサ63a、63bで検出した室内機5a、5bが設置された部屋の室内温度が28℃であり、室内温度センサ63cで検出した室内機5cが設置された部屋の室内温度が30℃であれば、室内機5a〜5cでは、設定温度と室内温度との温度差が全て2℃となるため、背景技術で説明した空気調和装置のように、設定温度と室内温度との温度差に基づいて各室内機で必要となる運転能力を算出する場合は、その結果は全て同じとなる。
上記のように算出された運転能力に基づいて圧縮機21の回転数と第1膨張弁30a、第2膨張弁30bおよび第3膨張弁30cのそれぞれの開度が決定された場合は、室内機5a〜5cで同じ冷房能力が発揮されるため、室内機5cでは使用者が望む以上の冷房能力となっている虞があった。つまりは、設定温度と室内温度との温度差に基づいて決定した圧縮機21の回転数では、室内機5cで冷房能力が過剰となっており、省エネルギー性が低下するという問題があった。
この問題を解決する手段として、室内機5cの設定温度が、例えば、他の室内機5a、5bより高く設定されていることを考慮して圧縮機21の回転数を単純に低下させると、冷媒回路10の冷媒循環量が低下するために室内機5a、5bで冷房能力が低下して、室内機5a、5bの使用者の快適性が損なわれる虞があった。
そこで、本発明の空気調和装置1では、図2乃至図4に示す各種テーブルを備え、外気温度と室内温度との温度差を用いて、各種テーブルを参照して各室内機5a〜5cで必要となる運転能力や第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cの開度を決定することで、適切な圧縮機21の回転数および室内機5a〜5cの冷媒流量とし、省エネルギー性と使用者の快適性とを両立させている。以下、各種テーブルについて詳細に説明するとともに、これら各種テーブルを用いて各室内機5a〜5cで必要となる運転能力を補正する方法や、補正した運転能力に基づいて圧縮機21の回転数や第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cの開度を決定する方法について説明する。
室外機制御手段200の記憶部220には、図2乃至図4に示す各種テーブルが記憶されている。具体的には、図2に示す必要能力・膨張弁開度テーブル300、図3に示す圧縮機回転数テーブル310、および、図4に示す運転状態テーブル320である。これらのうち、必要能力・膨張弁開度テーブル300と圧縮機回転数テーブル310とは、予め実施された試験の結果等に基づいて作成し記憶部220に記憶されているものであり、運転状態テーブル320は、室内機5a〜5cから取り込んだ運転情報や外気温度センサ37から取り込んだ外気温度、後述する各種算出結果に応じて、逐次書き換えられるものである。
尚、以下の説明では、室内機5a〜5cそれぞれの設定温度をTs(単位:℃)、室内機5a〜5cそれぞれの室内温度センサ63a〜63cで検出する室内温度をTi(単位:℃)、室外機2の外気温度センサ37で検出する外気温度をTo(単位:℃)、室内機5a〜5cそれぞれにおける室内温度Tiと外気温度Toとの温度差である室内外温度差をTr(算出式:Tr=Ti−To)、室内機5a〜5cそれぞれにおける室内外温度差Trの平均値である温度差平均をTra、室内機5a〜5cそれぞれにおける温度差偏差をTrd(算出式:Trd=Tr−Tra)、室内機5a〜5cのそれぞれで必要とされる運転能力をコード化した必要能力コードをCr、第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cの開度に対応したパルスモータに与える膨張弁パルスをP(単位:p(パルス))、圧縮機21の回転数をR(単位:rps)、としている。
まず、図4に示す運転状態テーブル320について説明する。運転状態テーブル320は、室内機5a〜5c毎に、運転モード(冷房/暖房)、設定温度Ts、室内温度Ti、室内外温度差Tr、温度差偏差Trd、必要能力コードCr、および、膨張弁パルスPが記憶されている。また、外気温度To、温度差平均Tra、および、圧縮機回転数Rが記憶されている。これらのうち、運転モードと設定温度Tsと室内温度Tiと外気温度Toと室内外温度差Trと温度差平均Traと温度差偏差Trdとが、使用者による設定や各種センサでの検出結果およびこれらに基づいて算出される値であり、必要能力コードCrと圧縮機回転数Rと膨張弁パルスPとが、後述する必要能力・膨張弁開度テーブル300や圧縮機回転数テーブル310を参照して決定される値である。
具体的には、室外機2のCPU210は、運転モードと設定温度Tsと室内温度Tiとを含んだ運転情報信号を、通信部230を介して室内機5a〜5cから定期的(例えば、30秒毎)に取り込んでおり、CPU210は、運転モードと設定温度Tsと室内温度Tiとを取り込む度に運転状態テーブル320を更新する。また、CPU210は、外気温度センサ37で検出した外気温度Toをセンサ入力部240を介して定期的(例えば、30秒毎)に取り込んでおり、外気温度Toを取り込む度に運転状態テーブル320を更新する。
そして、CPU210は、運転モード、設定温度Ts、室内温度Ti、および、外気温度Toを取り込む度に、室内外温度差Trと温度差平均Traと温度差偏差Trdとを算出して運転状態テーブル320を更新するとともに、これら算出結果を用い必要能力・膨張弁パルステーブル300や圧縮機回転数テーブル310を参照して、必要能力コードCrと膨張弁パルスPと圧縮機回転数Rとを決定し運転状態テーブル320を更新する。
尚、図4に示す運転状態テーブル320では、一例として、室内機5a〜5cが冷房運転を行っている場合について示しており、室内機5a、5bでは、設定温度Tsを26℃、室内温度Tiを28℃としており、室内機5cでは、設定温度Tsを28℃、室内温度Tiを30℃としている。また、外気温度Toを32℃としている。
次に、図2に示す必要能力・膨張弁開度テーブル300について説明する。必要能力・膨張弁開度テーブル300は、図2(A)に示す冷房運転時に使用する冷房運転時テーブル300Aと、図2(B)に示す暖房運転時に使用する暖房運転時テーブル300Bと、の2種類のテーブルで構成されており、各テーブルでは、温度差偏差Trd(単位:℃)に対応して、室内機5a〜5cでの必要能力コードCrと、この必要能力コードCrに応じた第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cに与える膨張弁パルスPとが定められている。
具体的には、冷房運転時テーブル300Aでは、温度差偏差Trdが0℃未満であるときは、必要能力コードCrが基準値Crs、膨張弁パルスPが基準値Ps、となっている。また、温度差偏差Trdが0℃以上1℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−1、膨張弁パルスPがPs−5となっている。また、温度差偏差Trdが1℃以上2℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−2、膨張弁パルスPがPs−10となっている。また、温度差偏差Trdが2℃以上3℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−3、膨張弁パルスPがPs−15となっている。そして、温度差偏差Trdが3℃以上であるときは、必要能力コードCrがCrs−4、膨張弁パルスPがPs−20、となっている。
一方、暖房運転時テーブル300Bでは、温度差偏差Trdが0℃以上であるときは、必要能力コードCrが基準値Crs、膨張弁パルスPが基準値Ps、となっている。また、温度差偏差Trdが−1℃以上0℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−1、膨張弁パルスPがPs−5となっている。また、温度差偏差Trdが−2℃以上−1℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−2、膨張弁パルスPがPs−10となっている。また、温度差偏差Trdが−3℃以上−2℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−3、膨張弁パルスPがPs−15となっている。そして、温度差偏差Trdが−3℃未満であるときは、必要能力コードCrがCrs−4、膨張弁パルスPがPs−20、となっている。
ここで、必要能力コードCrの基準値Crsと膨張弁パルスPの基準値Psとは、本発明における所定の基準値であり、従来の空気調和装置で採用されていた方法、つまり、室内機5a〜5cにおける設定温度Tsと室内温度Tiとの温度差に応じて算出されるものである(算出方法についての説明は省略する)。
尚、必要能力・膨張弁開度テーブル300において、冷房運転時テーブル300Aでは温度差偏差Trdが大きくなるのにつれて必要能力コードCrや膨張弁パルスPが小さくなっているのに対し、暖房運転時テーブル300Bでは温度差偏差Trdが小さくなるのにつれて必要能力コードCrや膨張弁パルスPが小さくなっている。この違いは、温度差偏差Trdが、室内温度Tiから外気温度Toを引いて求める室内外温度差Trを用いて算出されていることに起因している。
具体的には、冷房運転時に温度差偏差Trdが大きくなるということは、前述した算出式:Trd=Tr−Traより、温度差平均Traより室内外温度差Trが大きくなる(つまり、必要となる冷房能力が小さくなる)ということであり、例えば、図4に示す運転状態テーブル320では、室内機5cで温度差平均Tra(−3.3℃)より室内外温度差Tr(−2℃)が大きくなっており、室内機5a,5bと比べて温度差偏差Trdが大きくなっているので、室内機5a,5bと比べて必要能力コードCrや膨張弁パルスPが小さくなる。また、暖房運転時に温度差偏差Trdが小さくなるということは、室内外温度差Trが小さくなる(つまり、必要となる暖房能力が小さくなる)ということなので(具体的な数値を挙げての説明は省略)、温度差偏差Trdが小さくなるにつれて、必要能力コードCrや膨張弁パルスPを小さくしている。
次に、図3に示す圧縮機回転数テーブル310について説明する。圧縮機回転数テーブル310は、必要能力・膨張弁開度テーブル300を使用して室内機5a〜5c毎に求められた必要能力コードCrを合算した全能力コードCrtに対応して、圧縮機21の回転数Rが定められている。具体的には、全能力コードCrtを0から72の範囲で13の段階に区分けして各区分毎に圧縮機回転数Rが定められており、例えば、全能力コードCrtが1以上6未満の場合の圧縮機回転数Rは20rps、全能力コードCrtが36以上42未満の場合の圧縮機回転数Rは53rps、全能力コードCrtが72以上の場合の圧縮機回転数Rは90rps、とされている。
以上説明した必要能力・膨張弁開度テーブル300と圧縮機回転数テーブル310とを用いて、各室内機5a〜5cの必要能力コードCrと膨張弁パルスPとを決定するとともに、必要能力コードCrの合算値である全能力コードCrtに基づいて圧縮機回転数Rが決定されて、運転状態テーブル320に記憶される。
次に、背景技術で説明した空気調和装置の圧縮機回転数Rの決定方法(以下、従来の方法と記載)と本発明の空気調和装置1による圧縮機回転数Rの決定方法(以下、本発明の方法と記載)との違いおよび本発明の圧縮機回転数Rの決定方法で生じる効果について説明する。従来の方法では、図4の運転状態テーブル320に記憶されている各室内機5a〜5cの設定温度Tsと室内温度Tiでは、室内外温度差Trが全て同じであるため、必要とされる運転能力は全て同じと算出され、例えば、必要能力コードCrは全て14とされ、また、第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cの膨張弁パルスPも全て200pとされる。また、この場合は、必要能力コードCrを合算した全能力コードが42となるので、圧縮機回転数テーブル310により圧縮機回転数Rは60rpsとなる。
これに対し、本発明の空気調和装置1では、外気温度Toと室内温度Tiとを用いて室内外温度差Trと温度差平均Traとを算出し、これらを用いて算出した温度差偏差Trdを用いて必要能力・膨張弁開度テーブル300を参照して必要能力コードCrと膨張弁パルスPとを決定する。具体的には、上述した背景技術の空気調和装置の方法で決定した必要能力コードCr従って、運転状態テーブル320に示すように、室外機5cにおける必要能力コードCrが12、第3膨張弁30cのに与える膨張弁パルスPが190pとなって、室内機5a、5bと比べて各々の値が小さくなるとともに、必要能力コードCrを合算した全能力コードが40となるので、圧縮機回転数テーブル310により圧縮機回転数Rは53rpsとなって、従来の空気調和装置と比べて圧縮機回転数Rが低くなり、省エネルギー性が向上できる。
また、室内機5cの必要能力コードCrの低下に伴って圧縮機回転数Rが低下したことにより、冷媒回路10を循環する冷媒量が低下するが、第1膨張弁30a、第2膨張弁30bおよび第3膨張弁30cのそれぞれの開度が、対応する各室内機5a〜5cでの必要能力コードCrに応じて決定される(具体的には、必要能力コードCrが室内機5a、5bと比べて小さい室内機5cに対応する第3膨張弁30cの開度を、第1膨張弁30a、第2膨張弁30bの開度と比べて小さくする(膨張弁パルスPを小さくする))ことにより、室内機5a〜5cでそれぞれ要求される冷房能力が発揮されるようにしている。
次に、図5および図6に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1で上述した必要能力コードCrや膨張弁パルスP,圧縮機回転数Rを決定するときに、室外機制御部200のCPU210および室内機制御手段500a〜500cのCPU510a〜510cが実行する処理について説明する。尚、図5および図6に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。
まず、図5を用いて、室外機制御部200のCPU210で、必要能力・膨張弁開度テーブル300と圧縮機回転数テーブル310と運転状態テーブル320とを用いて、必要能力コードCrや膨張弁パルスP、圧縮機回転数Rを決定する際の処理について説明する。
CPU210は、室内機5a〜5cが送信する運転開始信号を通信部230を介して受信したか否かを判断する(ST1)。運転開始信号を受信していなければ(ST1−No)、CPU210はST1に処理を戻し、運転開始信号を受信していれば(ST1−Yes)、CPU210は、室内機5a〜5cが送信する運転情報信号を通信部230を介して受信したか否かを判断する(ST2)。尚、前述したように、運転情報信号には各室内機5a〜5cの運転モードと設定温度Tsと室内温度Tiとが含まれている
運転情報信号を受信していなければ(ST2−No)、CPU210はST13に処理を進める。運転情報信号を受信していれば(ST2−Yes)、CPU210は、受信した運転情報信号に含まれている設定温度Tsと室内温度Tiとを抽出して記憶部220に記憶している運転状態テーブル320を更新するとともに、設定温度Tsと室内温度Tiとを用いて基準能力コードCrsと基準膨張弁開度Psとを決定する(ST3)。
次に、CPU210は、外気温度センサ37で検出した外気温度Toをセンサ入力部240を介して取り込み(ST4)、運転状態テーブル320を更新する。次に、CPU210は、運転状態テーブル320から室内温度Tiと外気温度Toとを抽出し、室内外温度差Trと温度差平均Traと温度差偏差Trdとを算出し(ST5)、運転状態テーブル320を更新する。
次に、CPU210は、運転状態テーブル320を参照して室内機5a〜5cが冷房運転を行っているか否かを判断する(ST6)。室内機5a〜5cが冷房運転を行っていれば(ST6−Yes)、CPU210は、記憶部に記憶している必要能力・膨張弁開度テーブル300の冷房運転時テーブル300Aを参照して、各室内機5a〜5cの必要能力コードCrと膨張弁パルスPとを決定し(ST7)、ST9に処理を進める。
一方、室内機5a〜5cが冷房運転を行っていなければ(ST6−No)、つまり、室内機5a〜5cが暖房運転を行っていれいば、CPU210は、記憶部に記憶している必要能力・膨張弁開度テーブル300の暖房運転時テーブル300Bを参照して、各室内機5a〜5cの必要能力コードCrと膨張弁パルスPとを決定し(ST8)、ST9に処理を進める。
ST9に処理を進めたCPU210は、ST7もしくはST8で決定した膨張弁パルスPを第1膨張弁30a、第2膨張弁30b、および、第3膨張弁30cに与えて各膨張弁の開度制御を行う(ST9)。次に、CPU210は、ST7もしくはST8で決定した必要能力コードCrを合算して全能力コードCrtを算出する(ST10)。
次に、CPU210は、記憶部220に記憶している圧縮機回転数テーブル320を参照し、算出した全能力コードCrtに対応する圧縮機回転数Rを抽出する(ST11)。そして、CPU210は、抽出した圧縮機回転数Rとなるように圧縮機21の駆動制御を行う(ST12)。
次に、CPU210は、室内機5a〜5cが送信する運転停止信号を通信部230を介して受信したか否かを判断する(ST13)。運転停止信号を受信していなければ(ST13−No)、CPU210はST2に処理を戻し、運転停止信号を受信していれば(ST13−Yes)、CPU210は、圧縮機21を停止し(ST14)、処理を終了する。
次に、図6を用いて、室内機制御部500a〜500cのCPU510a〜510cで、設定温度Tsや室内温度Tiを室外機2に送信し、室外機2から室内膨張弁52a〜52cの膨張弁パルスPを受信しこれに基づいて室内膨張弁52a〜52cの開度制御を行う際の処理について説明する。
CPU510a〜510cは、使用者のリモコン操作等による運転開始指示があるか否かを判断する(ST21)。運転開始指示がなければ(ST21−No)、CPU510a〜510cはST21に処理を戻し、運転開始指示があれば(ST21−Yes)、CPU510a〜510cは、運転開始信号を通信部530a〜530cを介して室外機2に送信する(ST22)。
次に、CPU510a〜510cは、設定温度Tsが設定もしくは変更されたか否か、室内温度センサ63a〜63cからセンサ入力部540a〜540cを介して取り込んだ室内温度Tiが変わったか否か、等の運転情報が設定もしくは空調運転中に運転情報が変更されたか否かを判断する(ST23)。
運転情報が設定もしくは変更されていなければ(ST23−No)、CPU510a〜510cはST26に処理を進める。運転情報が設定もしくは変更されていれば(ST23−Yes)、CPU510a〜510cは、これら運転情報を含んだ運転情報信号を通信部530a〜530cを介して室外機2に送信する(ST24)。そして、CPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを駆動して室内機5a〜5cの空調運転を開始もしくは継続する(ST25)。
次に、CPU510a〜510cは、使用者のリモコン操作等による運転停止指示があるか否かを判断する(ST26)。運転停止指示がなければ(ST26−No)、CPU510a〜510cはST22に処理を戻し、運転停止指示があれば(ST26−Yes)、CPU510a〜510cは、運転停止信号を通信部530a〜530cを介して室外機2に送信する(ST27)。そして、CPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを停止するとともに室内膨張弁52a〜52cを全閉として室内機5a〜5cの空調運転を停止し(ST28)、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態における空気調和装置は、外気温度と各室内機で検出した室内温度との温度差を用いて、各室内機で必要とされる運転能力を決定しこれに応じて圧縮機の回転数および各室内機での冷媒流量を決定しているので、設定温度と室内温度との温度差によって運転能力を決定する場合と比べて、より各室内機の空調環境に則した運転能力とすることができ、この決定した運転能力に基づいて圧縮機の回転数を決定するので、省エネルギー性と快適性とを両立させることができる。
尚、以上説明した実施形態では、室外機制御手段200に必要能力・膨張弁開度テーブル300、圧縮機回転数テーブル310、および、運転状態テーブル320が記憶されており、室外機制御手段200が、外気温度Toと室内機制御手段500a〜500cから取り込んだ室内温度Tiとを用い上記各種テーブルを参照して、必要能力コードCrや膨張弁パルスP、圧縮機回転数Rを決定する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、各種テーブルが室内機制御手段500a〜500cのいずれかに記憶されており、室内機制御手段500a〜500cが必要能力コードCrや膨張弁パルスP、圧縮機回転数Rを決定してもよい。この場合は、室内機制御手段500a〜500cは、自己の必要能力コードCrや膨張弁パルスP以外の各値を他の室内機に送信するとともに、圧縮機回転数Rを室外機2に送信し、また、第1膨張弁30aと第2膨張弁30bと第3膨張弁30cの開度制御を決定した膨張弁パルスPにより行う。