JP2014181300A - プリプレグの製造方法 - Google Patents

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JP2014181300A JP2013057348A JP2013057348A JP2014181300A JP 2014181300 A JP2014181300 A JP 2014181300A JP 2013057348 A JP2013057348 A JP 2013057348A JP 2013057348 A JP2013057348 A JP 2013057348A JP 2014181300 A JP2014181300 A JP 2014181300A
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Masanori Yoshihara
眞紀 吉原
Takehiko Katayama
健彦 片山
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Abstract

【課題】強化繊維の表面側である第1樹脂層の厚みと強化繊維の裏面側である第2樹脂層の厚みとが異なるプリプレグを効率的に製造できるプリプレグの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のプリプレグの製造方法は、長尺状の強化繊維層を一定方向に沿って搬送する工程と、強化繊維層の表面側に第1樹脂材料を塗布する工程と、長尺状の強化繊維層の裏面側に第2樹脂材料を塗布する工程と、第1樹脂層における強化繊維層とは反対側に長尺状の第1支持体を積層するとともに、第2樹脂層における強化繊維層とは反対側に第1支持体とは厚みの異なる長尺状の第2支持体を積層した積層体を形成する工程と、所定間隙寸法で固定された一対のロール間に積層体を搬送してその厚みを調整する厚み調整工程とを備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、プリプレグの製造方法に関し、特に、配線埋込性が高いプリプレグを効率的に製造できるプリプレグの製造方法に関する。
近年の電子機器の小型化や通信の高速度化に伴い、電子回路基板にも小型化、多機能化が求められている。回路基板は、通常、エッチングなどによりパターン化された導体パターンを表面に備える基板上に、絶縁層となる樹脂層を積層し、これを加熱圧着することにより製造される。かかる回路基板を高周波領域で用いる場合、高周波における伝送損失を低減する観点から、絶縁層に用いられる樹脂は、誘電率および誘電正接が小さいことが求められる。
また、たとえば特許文献1では、導体パターンを絶縁層内に確実に埋め込む、すなわち配線埋込性を向上させる目的で、ガラス繊維で構成される繊維基材と、繊維基材の一方の面側の第1樹脂層と、繊維基材の他方の面側の第2樹脂層とを備えるプリプレグであって、第1樹脂層の厚みを第2樹脂層の厚みよりも大きくしたものが開示されている。このようなプリプレグは、キャリアフィルム(支持体)の表面にワニスを塗布して所定厚みの第1樹脂層を形成し、また、別のキャリアフィルムの表面にワニスを塗布して第1樹脂層とは異なる厚みを有する第2樹脂層を形成し、第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維基材(強化繊維層)を挟んだ状態でラミネートすることにより製造する。
特開2011−058004号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、配線埋込性を向上できる利点があるものの、支持体上に所定厚みに制御された樹脂層(第1樹脂層または第2樹脂層)を有する支持体を2つ用意し、繊維基材を挟んでこれらの樹脂層をラミネートさせる構成であるため、樹脂層の厚み制御を少なくとも二度行わなければならず、当該プリプレグの製造が必ずしも効率的ではないという問題がある。
本発明の目的は、配線埋込性が高いプリプレグを効率的に製造できるプリプレグの製造方法を提供することである。
本発明によれば、以下のプリプレグの製造方法に加えて、以下の複合体の製造方法、半硬化物の製造方法、および回路基板の製造方法が提示される。
(1)強化繊維を含んでなる長尺状の強化繊維層と、前記強化繊維層の表面側である第1樹脂層と、前記強化繊維層の裏面側である第2樹脂層と、を備え、前記第1樹脂層の平均厚みと前記第2樹脂層の平均厚みとが異なるプリプレグを製造するプリプレグの製造方法であって、前記長尺状の強化繊維層を一定方向に沿って搬送する工程と、 前記長尺状の強化繊維層の表面側に前記第1樹脂層を構成する第1樹脂材料を塗布する工程と、前記長尺状の強化繊維層の裏面側に前記第2樹脂層を構成する第2樹脂材料を塗布する工程と、前記第1樹脂層における前記強化繊維層とは反対側の面に、長尺状の第1支持体を積層するとともに、前記第2樹脂層における前記強化繊維層とは反対側の面に、前記第1支持体とは厚みの異なる、長尺状の第2支持体を積層して得られる積層体を形成する積層工程と、所定の間隙寸法で固定された一対のロール間に、前記積層工程で得られた積層体を搬送して前記積層体の厚みを調整する厚み調整工程と、を備えるプリプレグの製造方法、
(2)前記第1樹脂材料および前記第2樹脂材料は、同一の樹脂組成物である前記プリプレグの製造方法、
(3)前記樹脂組成物は、シクロオレフィンポリマーを含む前記プリプレグの製造方法、
(4)前記プリプレグの製造方法により得られた長尺状のプリプレグから第1の支持体および/または第2の支持体を剥離する工程と、剥離する工程により露出した樹脂層の表面に長尺状の金属箔を積層して複合体を得る積層工程とを備える複合体の製造方法、
(5)前記プリプレグの製造方法により得られた長尺状のプリプレグを半硬化させた半硬化物を得る工程をさらに備える半硬化物の製造方法、
(6)基板本体、および前記基板本体の少なくとも一方の面の少なくとも一部に形成される導体パターン層を備える基板と、前記プリプレグの製造方法により得られるプリプレグとを、前記第1樹脂層と前記導体パターン層が形成された面とが当接するように配置して積層する工程を備える回路基板の製造方法。
本発明によれば、厚みの異なる2枚の支持体(第1支持体および第2支持体)を、長尺状の強化繊維の表裏面に形成された樹脂層(第1樹脂層および第2樹脂層)上に積層した状態で、所定の間隙寸法に固定された一対のロール間を搬送するだけで、厚み調整がなされた長尺状のプリプレグを効率的に製造できる効果がある。また、このように形成されたプリプレグは、第1樹脂層の厚みと第2樹脂層の厚みが異なるが、この際、第1支持体および第2支持体の各厚みや、強化繊維の厚み、一対のロールの間隙寸法等を適宜調整するだけの簡単な操作で、厚みが大きい方の樹脂層の厚みを配線に対して所定寸法の厚みへと比較的簡単に制御でき、配線埋込性の高いプリプレグを効率よく製造できる。
本発明に係るプリプレグの一例を示す断面図である。 図2(A)は、本発明で用いる基板の一例を示す断面図、図2(B)は、本発明に係る回路基板の一例を示す断面図、図2(C)は、本発明で用いる基板の一例を示す上面図である。 本発明のプリプレグの製造方法の一例を説明するための図である。
本発明に係るプリプレグの製造方法により得られるプリプレグは、基板本体と、この基板本体の少なくとも一方の面の少なくとも一部に形成される導体パターン層とを備える基板における、導体パターン層が形成された面上に配置されるプリプレグであって、強化繊維を含んでなる強化繊維層と、前記強化繊維層の表面側である第1樹脂層と、前記強化繊維層の裏面側である第2樹脂層と、を備え、前記第1樹脂層は、前記導体パターン層に面するように配置される層であり、前記第1樹脂層の厚みをT1[μm]とし、前記第2樹脂層の厚みをT2[μm]とした際に、T1>T2である。
本発明に係るプリプレグの製造方法について図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプリプレグの製造方法により製造される長尺状のプリプレグ1を示す断面図である。図1に示すように、長尺状のプリプレグ1は、強化繊維層30と、強化繊維層30の表面側である第1樹脂層10と、強化繊維層30の裏面側である第2樹脂層20とを備える。ここで、長尺状とは、長手方向の寸法が幅方向の寸法よりも長い、好ましくは10倍以上長いことを言う。
第1樹脂層10は、第1樹脂組成物を用いて形成される樹脂層である。第1樹脂組成物としては、液状の材料であれば特に限定されないが、たとえば重合体または重合性組成物を含有する液状の材料を用いることができる。重合体としては、たとえば硬化性樹脂(熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂等)を用いることができ、特に熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等を挙げることができる。また、重合性組成物としては、たとえばモノマーを含む組成物や、モノマーおよび重合触媒を含む組成物を用いることができる。なお、第1樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
前記モノマーとしては、各種のモノマーを用いることができるが、たとえばシクロオレフィンモノマーを用いることができる。シクロオレフィンモノマーとは、炭素原子で形成される脂環構造を有し、かつ該脂環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。本明細書において、「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(メタセシス開環重合、付加重合等)に関与する炭素−炭素二重結合をいう。
前記シクロオレフィンモノマーの脂環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環およびこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。前記シクロオレフィンモノマーとしては、得られる回路基板の機械的強度を向上させる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。各環構造を構成する炭素原子数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、およびアリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基や酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。
前記シクロオレフィンモノマーとしては、回路基板とした場合における械的強度を向上させる観点から、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するものが好適に用いられる。本明細書において、「架橋性炭素−炭素不飽和結合」とは、メタセシス開環重合にはほとんど関与せず、主として架橋反応に関与する炭素−炭素不飽和結合をいう。「架橋反応」とは橋架け構造を形成する反応をいう。また、「架橋反応」とは、通常、ラジカル架橋反応またはメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。
架橋性炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合または三重結合を挙げることができ、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合である。架橋性炭素−炭素不飽和結合を有するシクロオレフィンモノマー中、該不飽和結合の位置は特に限定されず、炭素原子で形成される脂環構造内の他、該脂環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。例えば、前記脂肪族炭素−炭素二重結合は、ビニル基(CH=CH−)、ビニリデン基(CH=C<)、またはビニレン基(−CH=CH−)として存在し得、良好にラジカル架橋性を発揮することから、ビニル基および/またはビニリデン基として存在するのが好ましく、ビニリデン基として存在するのがより好ましい。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーとしては、特に、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、およびテトラシクロドデセン類などが挙げられる。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができる。これらの中では、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するノルボルネン系モノマーが好ましい。
前記シクロオレフィンモノマーとしては、前記架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーの他、架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーが用いられる。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロドデセン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができる。これらの中でも、架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーが好ましい。
前記シクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、シクロオレフィンモノマーとして、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーと架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの混合物が用いられる。
前記第1樹脂組成物に用いるシクロオレフィンモノマー中、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーと架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択すればよいが、重量比(架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマー/架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜95/10、より好ましくは15/85〜90/15の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、耐熱性や機械的強度がバランス良く向上し、好適である。
また、前記重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーを重合可能な触媒であれば、特に限定されず、付加重合触媒や開環重合触媒を用いることができる。
ここで、シクロオレフィンモノマーを前記重合触媒にて重合して重合体を製造するにあたり、シクロオレフィンモノマーと、このシクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーとの存在下で重合して、シクロオレフィンモノマーを含む共重合体を得るようにしてもよい。
シクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーとの存在下で付加重合して、シクロオレフィンモノマーを含む付加共重合体を得る場合において、前記シクロオレフィンモノマーと共重合可能なその他の単量体としては、たとえば、しては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、およびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、およびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒など公知の触媒を用いることができる。
開環重合触媒としては、シクロオレフィンモノマーを開環重合させ得るものであればよく、たとえばメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる金属錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族および8族(長周期型周期表、以下同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、例えばタンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えばモリブデンおよびタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えばルテニウムおよびオスミウムが挙げられる。
これらの中でも、メタセシス触媒としては、8族のルテニウムやオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、ルテニウム原子にカルベン炭素が二重結合した構造(Ru=C)を有する錯体であり、重合時の触媒活性が優れる。このため、メタセシス重合触媒としてルテニウムカルベン錯体を含む重合性組成物を重合して架橋性樹脂成形体を製造する場合、得られる架橋性樹脂成形体には未反応のモノマーに由来する臭気が少ない。したがって、生産性良く良質な成形体が得られる。また、ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、メタセシス重合触媒の配合量等は、例えば特開2009−242568号公報に記載の内容とすることができる。
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶剤に溶解または懸濁して使用することができる。かかる溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、工業的に汎用な芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素の使用が好ましい。また、メタセシス重合触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、液状の可塑剤、液状のエラストマーを溶剤として用いてもよい。
メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用することもできる。
活性剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズの、アルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物およびアリールオキシ化物などを用いることができる。その具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
活性剤の使用量は、(触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
また、メタセシス重合触媒として、5族および6族の遷移金属原子の錯体を用いる場合には、メタセシス重合触媒および活性剤は、いずれもモノマーに溶解して用いるのが好ましいが、生成物の性質を本質的に損なわない範囲であれば少量の溶剤に懸濁または溶解させて用いることができる。
また、前記第1樹脂組成物には、前記重合性の樹脂組成物や前記樹脂組成物に加えて、所望により、充填剤、連鎖移動剤、架橋剤、架橋助剤、難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、反応性流動化剤、難燃剤、酸化防止剤、および着色料等のその他の配合剤を配合してもよい。
前記充填剤としては、有機物や無機物を用いることができるが、より高弾性率の回路基板を得る観点から、無機物を用いるのが好ましい。充填剤の形状は、特に限定されず、球状、粒状、不定形状、樹枝状、針状、棒状、および扁平状等のいかなる形状であってもよい。また、充填剤の平均粒子径も特に限定されず、レーザー散乱回折式粒度分布計で測定した全粒子の50体積%が含まれるメディアン径で、通常、0.001〜70μm、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.05〜15μm、特に好ましくは、0.1〜5μmである。
充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどが挙げられる。
充填剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、100〜600重量部、好ましくは150〜550重量部、より好ましくは200〜500重量部である。充填剤の含有量がかかる範囲にあれば、第1樹脂組成物中における分散性が優れ、強化繊維への含浸性が良好となる観点から、好ましい。
連鎖移動剤としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、および4−ビニルアニリンなどの、脂肪族炭素−炭素二重結合基を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸ヘキセニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、およびエチレングリコールジアクリレートなどの、脂肪族炭素−炭素二重結合基を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシランやアリルメチルジビニルシランなどの、脂肪族炭素−炭素二重結合基を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。連鎖移動剤の使用量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
また、前記第1樹脂組成物には、第1樹脂層10を後架橋可能な樹脂層とする観点から、架橋剤を含有させてもよい。ここで「後架橋可能な」とは、該樹脂を加熱することにより架橋反応を進行させて架橋樹脂になし得ることを意味する。架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物、および非極性ラジカル発生剤などが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;などが挙げられる。中でも、メタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類およびペルオキシケタール類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルホン、4,4’−ジアジドジフェニルメタン、2,2’−ジアジドスチルベンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上のラジカル発生剤を併用し、その量比を調整することで、プリプレグの基材樹脂のガラス転移温度や溶融状態を任意に制御することが可能である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度としては、特に限定はないが、通常、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の範囲である。ここで1分間半減期温度とは、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂株式会社)のカタログやホームページを参照すればよい。
架橋剤の量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。架橋剤の量が前記範囲にあれば、本発明のプリプレグを硬化して得られる硬化物が充分な架橋密度を有し、所望の物性を有する回路基板が効率的に得られるので、好適である。
架橋助剤としては、開環重合に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が好ましい。このような架橋性炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特に、イソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましく、メタクリル基として存在するのがより好ましい。
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能化合物;ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、およびメトキシジエチレングリコールメタクリレートなどの、メタクリル基を1つ有する単官能化合物;ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびメトキシジエチレングリコールアクリレートなどの、アクリル基を1つ有する単官能化合物;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能化合物などを挙げることができる。架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
難燃剤としては、特に限定されるものではなく、公知の難燃剤、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、リン酸エステル難燃剤、窒素系難燃剤、および無機系難燃剤から、適宜選択して用いることができる。その配合量も、所望の効果が得られるよう適宜調整すればよい。
前記第1樹脂組成物は、前記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、たとえば、第1樹脂組成物としてシクロオレフィンモノマーおよび重合触媒を含む重合性の樹脂組成物を用いる場合には、重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を、シクロオレフィンモノマー、および所望により、その他の配合剤を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製できる。
本発明において、第1樹脂層10を形成する方法は、詳しくは後述するが、強化繊維層30上に、第1樹脂組成物を塗布することにより得ることができる。また、たとえば、第1樹脂組成物としてシクロオレフィンモノマーおよび重合触媒を含む重合性の樹脂組成物を用いる場合には、第1樹脂組成物中に含まれるシクロオレフィンモノマーを重合して形成できる。この場合、重合の態様は、溶液重合および塊状重合のいずれも採用できるが、揮発成分による成形不良が少ないことから塊状重合が好ましい。
なお、前記第1樹脂組成物に用いる前記重合性の組成物として、シクロオレフィンモノマーを例示して説明したが、他のモノマーを用いた場合においても同様な構成とすることができる。すなわち、たとえば、第1樹脂組成物として、シクロオレフィンモノマー以外の特定のモノマーを含む重合性の樹脂組成物を用いる場合には、この特定のモノマーに加えて、この特定のモノマーと共重合が可能な他のモノマーを含んでいてもよい。また、この重合性の樹脂組成物には、特定の重合触媒を含むことができる。また、各材料の配合量もシクロオレフィンモノマーの場合と同様とすることができる。
第2樹脂層20は、第2樹脂組成物を用いて形成される樹脂層である。第2樹脂組成物としては、特に限定されないが、前述した第1樹脂組成物と同様に、前記重合性の樹脂組成物または前記樹脂組成物を用いることができる。また、第2樹脂組成物は、前述した第1樹脂組成物と同様に、前記重合性の樹脂組成物または前記樹脂組成物の他に各種の配合剤を添加できる。ここで、第2樹脂組成物としては、前述した第1樹脂組成物と同じ組成を有するものを用いることもできるし、あるいは、異なる組成を有するものを用いることもできる。ここで、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とを同じ組成(完全同一)の樹脂組成物を用いた場合には、第1樹脂層10と第2樹脂層20の間に界面がない均一なプリプレグを得ることができる。また、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とを異なる組成の樹脂組成物を用いた場合には、第1樹脂層10に付与する機能と第2樹脂層20に付与する機能を分けることができる。第2樹脂層20を形成する方法は、前述した第1樹脂層10と同様である。
強化繊維層30は、強化繊維を含んでなる層である。強化繊維としては、無機系および/または有機系の繊維が使用でき、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、および液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、およびシリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、およびガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス、およびTガラス等の繊維を好適に用いることができる。強化繊維を構成する繊維束の粗密から生じるプリプレグの誘電率の局所的な差異を防ぐ観点から、樹脂層の誘電率と強化繊維を構成する材料の誘電率との差は小さい方が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。繊維状強化材の形状としては、特に限定されず、例えば、マット、クロス、および不織布などが挙げられる。また、強化繊維は、繊維束を開繊して用いてもよい。強化繊維の開繊度は特に限定はないが、通常、JIS規格 R 3420に定める通気度において20cm3/cm2/s以下、好ましくは15cm3/cm2/s以下である。強化繊維層の開繊度がかかる範囲にあれば、後述する強化繊維層の微視的な凹凸が軽減される観点から、好ましい。開繊の具体的な方法としては、例えば、高圧ウォータージェットによる方法、バイブロウォッシャーによる方法、超音波振動による方法、など様々な方法を用いることができる。
また、本発明においては、強化繊維層30上に、第1樹脂層10および/または第2樹脂層20を形成する際に、第1樹脂層10および/または第2樹脂層20を構成する第1樹脂組成物および/または第2樹脂組成物を含浸させて、強化繊維層30を樹脂含浸強化繊維層とすることが好ましい。
第1樹脂層10の平均厚みT1(μm)は、第2樹脂層20の平均厚みT2(μm)よりも大きい、すなわちT1>T2の関係を満たす。第1樹脂層10の平均厚みT1は、5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは30〜100μmである。第1樹脂層10の平均厚みT1が前記数値範囲を下回る場合には、配線埋込性が劣り、誘電率が増加する可能性がある。
第2樹脂層20の平均厚みT2(μm)は、第2樹脂層10の平均厚みT1より小さければよいが、5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは10〜100μmである。
第1樹脂層10の平均厚みT1と第2樹脂層20の平均厚みT2との比(T1/T2)は、1より大きい値であればよいが、1.1〜10.0であることが好ましく、1.5〜5.0であることがより好ましく、2.0〜4.0であることがさらに好ましい。平均厚み比が前記数値範囲を超える値である場合には、プリプレグ1を架橋した場合に、当該架橋体に反りが生じるおそれがある。なお、第1樹脂層10および第2樹脂層20は、いずれも単層であってもよいし、複数の層からなる多層であってもよい。
ここで、第1樹脂層10の最小厚みtr1の上限は、特に限定されないが、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。ここで、第1樹脂層10の最小厚みtr1とは、第1樹脂層10の表面から、強化繊維層30までの厚みのうち、最小のものを意味する。具体的には、強化繊維層30は、前述したように強化繊維を含有する層であり、このような強化繊維は繊維構造を有するため、通常、微細な凹凸を有する。このため、第1樹脂層10は、一見してその表面が平坦である場合でも、強化繊維層30を構成する強化繊維の影響により、微視的に見た場合に、場所によって厚みが異なることとなる。すなわち、強化繊維層30を構成する強化繊維の凹凸構造により、強化繊維の凹部に対応する位置の厚みは大きくなり、強化繊維の凸部に対応する位置の厚みは小さくなる。このため、本発明においては、前述した平均厚みとは別に、強化繊維の凹凸構造を考慮した最小厚みtr1を前記範囲とするものである。
また、プリプレグ1は、後述するように、図2(A)に示す基板2に積層され、図2(B)に示すような回路基板3を形成するために用いられる。ここで、図2(A)に示すように、基板2は、基板本体40と、基板本体40の一方の面に形成された複数の導体パターン層50a〜50dと、基板本体40の他方の面に形成された導体層60とを備える。プリプレグ1は、図2(B)に示すように、第1樹脂層10側が、基板2の導体パターン層50a〜50dが形成された面に積層されて、回路基板3とされる。すなわち、回路基板3は、基板2と、基板2における複数の導体パターン層50a〜50dが形成された面に、第1樹脂層10が当接するように配置(積層)されたプリプレグ1とを備えて構成される。なお、回路基板3を得る際には、第1樹脂層10および第2樹脂層20中に含有される重合体(シクロオレフィンポリマー)を架橋させてもよい。
プリプレグ1は、回路基板3の製造に用いられるものであるため、基板2の導体パターン層50a〜50dが形成された面に積層する第1樹脂層10の最小厚みtr1を、導体パターン層50a〜50dの厚みt、および、導体パターン層50a〜50dが形成された面における、導体パターン形成割合α(単位は「%」)との関係で、下記式(A)を満たすことが好ましい。また、本発明においては、下記式(B)を満たすことがより好ましい。
r1>{t×(100−α)} ・・・(A)
×(100−α)}×1.1≦tr1≦{t×(100−α)}×1.5 ・・・(B)
なお、導体パターン形成割合αは、図2(A)に示す基板2を、導体パターン層50a〜50dが形成されている面から見た上面図である図2(C)に示すように、導体パターン層50a〜50dが形成されている面の全面積に対する、導体パターン層が形成されている部分の面積の割合を百分率で表したものである。すなわち、導体パターン形成割合αは、下記式(C)にしたがって算出されるものである。
導体パターン形成割合α[%]=導体パターン層が形成されている部分の面積/(導体パターン層が形成されている部分の面積+導体パターン層が形成されていいない部分の面積) ・・・(C)
本発明においては、第1樹脂層10の最小厚みtr1を、導体パターン層50a〜50dの厚みt、および、導体パターン層50a〜50dが形成された面における、導体パターン形成割合αとの関係で、前記式(A)を満たすものとすることにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、第1樹脂層10を、基板2の導体パターン層50a〜50dが形成された面に積層した際には、各導体パターン層の間を埋め込むように、第1樹脂層10を構成する成分が流動することとなる。これに対し、本発明においては、このように、導体パターン層50a〜50dの間を埋め込むために、第1樹脂層10を構成する成分が消費された場合でも、本発明によれば、このような導体パターン層の間の埋め込みに消費される成分の量も加味して、第1樹脂層10の最小厚みtr1を設定するものである。すなわち、本発明においては、第1樹脂層10の最小厚みtr1を、前記式(A)を満たすものとすれば、回路基板3とした場合に、導体パターン層50a〜50dと、プリプレグ1中に含有される強化繊維層30を構成する強化繊維との距離を十分に保つことができる利点がある。
その結果として、次のような不具合、すなわち、回路基板3とした場合に、導体パターン層50a〜50dと、プリプレグ1中に含有される強化繊維層30を構成する強化繊維との距離が小さくなり、これらが接触あるいは近接することで、このような接触部分あるいは近接部分において強化繊維の影響が大きくなり、高周波における伝送損失が発生してしまうという不具合を適切に防止することができる。特に、強化繊維層30中に含有される強化繊維は、第1樹脂層10よりも誘電率や誘電正接が高く、そのため、このような導体パターン層50a〜50dと、強化繊維との接触あるいは近接が発生すると、強化繊維の影響により、回路基板3を用いて得られる回路基板の誘電率や誘電正接が高くなり、結果として、高周波における伝送損失が発生してしまうという不具合が発生してしまうこととなる。これに対し、第1樹脂層10の最小厚みtr1を、前記式(A)を満たすものとすることにより、このような不具合の発生を有効に防止することができる。なお、第1樹脂層10の最小厚みtr1は、前記式(A)を満たすものであることが好ましいが、導体パターン層50a〜50dと、強化繊維との接触あるいは近接をより有効に避けるという観点より、前記式(B)を満たすものであることがより好ましい。
第2樹脂層20は、その最小厚みtr2は、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは70μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。また、第2樹脂層20の最小厚みtr2の上限は、特に限定されないが、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。なお、第2樹脂層20の最小厚みtr2は、前述した第1樹脂層10の最小厚みtr1と同じであってもよいし、あるいは異なっていてもよい。
第2樹脂層20の厚みも、前述した第1樹脂層10と同様に、強化繊維層30を構成する強化繊維の凹凸構造により、微視的に見た場合に、場所によって厚みが異なることとなる。そのため、本発明においては、第2樹脂層20の厚みについても、このような強化繊維の凹凸構造の影響を考慮して、最小厚みtr2を前記範囲とする。第2樹脂層20の最小厚みtr2が、前記数値範囲未満であると、プリプレグ1中における、強化繊維層30の割合が相対的に増大し、強化繊維層30に含まれる強化繊維は誘電率および誘電正接が比較的高いものであることにより、結果として、プリプレグ1の誘電率および誘電正接が高くなってしまう可能性がある。
強化繊維層30の平均厚みTgcは、特に限定されないが、通常、5〜150μmであり、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
プリプレグ1中における、強化繊維層30を構成する強化繊維の含有割合は、15体積%以下であることが好ましく、より好ましくは2〜10体積%、さらに好ましくは5〜10体積%である。プリプレグ1における強化繊維の含有率が前記数値範囲であることにより、当該プリプレグ1を用いて回路基板を製造した際に、回路基板における伝送特性(SKEWが小さい)を十分に高めることができるとともに、機械的強度を十分に確保できる。
図3は、本発明に係るプリプレグの製造方法を説明するための図である。
図3に示すように、長尺状の強化繊維30aを、一対のダイヘッド70a,70b間に一定方向に沿って(たとえば、鉛直方向の下から上方へ)送り(搬送する工程)、この長尺状の強化繊維30aに対して、ダイヘッド70aから第1樹脂組成物を、ダイヘッド70bから第2樹脂組成物をそれぞれ塗布する(塗布する工程)。この際、強化繊維30aの表面に第1樹脂組成物からなる層10aを、強化繊維30aの裏面に第2樹脂組成物からなる層20aをそれぞれ形成する。なお、長尺状の強化繊維30aを鉛直方向に沿って搬送させるためには、例えば、強化繊維30aにある程度の張力をかけておくことが好ましい。
次いで、一対のロール80a,80b間において、第1樹脂組成物からなる層10aの表面(強化繊維30aとは反対側の面)に長尺状の第1支持体90aを、第2樹脂組成物からなる層20aの表面(強化繊維30aとは反対側の面)に長尺状の第2支持体90bをそれぞれ積層して積層体を得て(積層工程)、一対のロール80a,80bにより形成される間隙(ギャップ)を一定寸法に固定しておき、これによりプリプレグ1の厚み調節を行って(厚み調整工程)、長尺状のプリプレグ1を製造する。さらに、この状態でプリプレグを半硬化させる(たとえば加熱や電子線照射等により塊状重合する)ことで、長尺状の半硬化物を得ることができる。
ここで、第2支持体90bには、第1支持体90aよりも大きな厚みを有するものを用いる。一対のロール80a,80bの間隙寸法は一定の寸法に固定しておくため、強化繊維30aの搬送方向が図中の矢印に示すように鉛直方向の下から上方へと一定方向に沿う場合には、平均厚みが相対的に大きい支持体90b側の第2樹脂組成物からなる層20aの平均厚みT2は小さくなり、また、平均厚みが相対的に小さい支持体90a側の第1樹脂組成物からなる層10aの平均厚みT1は大きくなる。このため、本発明に示すような、第1樹脂組成物からなる層10aの平均厚みT1が第2樹脂組成物からなる層20aの平均厚みT2よりも大きなプリプレグ1を得ることができる。したがって、まず始めに、一対のロール80a,80bの間隙寸法を予め特定の寸法に設定しておき、次いで、各支持体90a,90bの厚みを適宜選択することにより、第1樹脂層10の平均厚みT1と、第2樹脂層20の平均厚みT2とを、それぞれ所望の厚みに調整できる。
なお、強化繊維30aへの第1樹脂組成物および/または第2樹脂組成物の含浸は、一対のダイヘッド70a,70bによりこれらを塗工した際、あるいは、一対のロール80a,80b間を通る際に、行われることとなる。第1樹脂層10および第2樹脂層20の各厚みは、塗工する樹脂組成物の粘度や塗工量等を調節して制御できる。
なお、前記各方法において、第1樹脂組成物、第2樹脂組成物を、一対のダイ70a,70bにより塗工する際には、第1樹脂組成物または第2樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤を添加してもよいが、ボイドによる成形不良を抑える観点からは溶剤を含まないことが好ましい。
また、前記各方法で用いる支持体(第1支持体および第2支持体)としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。なお、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。支持体は単層であっても積層体であってもよい。
前記支持体として金属箔を用いる場合、金属箔としては、その表面が平滑であるものが好ましく、通常、JISB0601で規定される10点平均粗さ(Rz)で5000nm未満、好ましくは3000nm未満、より好ましくは2000nm未満、さらに好ましくは1500nm 以下である。金属箔のRzが前記範囲にあれば、例えば、得られる高周波回路基板において、高周波伝送におけるノイズ、遅延、および伝送ロス等の発生が抑えられ、好ましい。また、金属箔の表面は、シランカップリング剤、チオールカップリング剤、およびチタネートカップリング剤などの公知のカップリング剤や接着剤などで処理されているのが好ましい。
さらに、前記各方法において、プリプレグ1の製造に用いる各支持体は、第1樹脂層10側および第2樹脂層20に含まれる樹脂を重合する前、あるいは、重合した後に剥離してもよいし、剥離せずに、支持体付きのプリプレグである複合体としてもよい。なお、支持体付きのプリプレグとする場合には、第1支持体および第2支持体の両方を残しておくような態様としてもよいし、あるいは、いずれか一方の支持体のみを残しておくような態様としてもよい。すなわち、本発明に係る複合体は、プリプレグ1と、プリプレグ1の少なくとも一方の面、特に第2樹脂層20a上に積層される金属箔とを備えて構成される。また、長尺状のプリプレグから第1の支持体および/または第2の支持体を剥離し、このような剥離により露出した樹脂層の表面に長尺状の金属箔を積層して複合体を製造してもよい。
このようにして得られるプリプレグ1は、低誘電率および低誘電正接を実現できる。具体的には、本発明のプリプレグ1は、周波数1GHzにおける誘電率が、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下に低減されたものである。また、周波数1GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.001以下に低減されたものである。
また、プリプレグ1は、第1樹脂層10の最小厚みtr1、導体パターン層50a〜50dの厚みt、および、導体パターン層50a〜50dが形成された面における、導体パターン形成割合αとの関係で、前記式(A)を満たすものとしているため、これにより、回路基板3とした場合に、導体パターン層50a〜50dと、プリプレグ1中に含有される強化繊維層30を構成する強化繊維との距離を十分に保つことができ、結果として、高周波における伝送損失を適切に低減できる。
本発明の回路基板は、基板本体の少なくとも一方の面の少なくとも一部に形成される導体パターン層を備える基板と、本発明のプリプレグを、第1樹脂層と導体パターン層が形成された面とが当接するように配置(積層)することにより得られる(積層する工程)。なお、以下においては、本発明の回路基板を、本発明の回路基板の一例としての図2(B)に示す回路基板3を例示して説明するが、このような構成に特に限定されるものではない。
図2(B)に示すように、回路基板3は、図1に示すプリプレグ1と、図2(A)に示す基板2とを、プリプレグ1の第1樹脂層10が、基板2の導体パターン層50a〜50dが形成された面と当接するように積層して形成される。図2(A)〜図2(C)に示すように、回路基板3の製造に用いる基板2における一方の面には、導体パターン層50a〜50dが形成されている。また、基板2における反対側の面には、導体層60が形成されている。導体パターン層50a〜50dは、図2(C)に示すように、基板2上においてパターン状に形成されている。導体層60は、基板2の反対側の面全体を覆うように形成されている。本発明の回路基板3は、このような基板2を用いることで、導体パターン層50a〜50dのうち、導体パターン層50b,50cが一対の伝送線(差動配線)として作用し、導体層60がシールドとして作用するマイクロストリップライン型の回路基板として動作する。具体的には、導体パターン層50b,50cに逆極性の信号を通し、受信側で電圧差を識別することで、導体パターン層50b,50cとで1ビットの信号を伝送するものである。なお、図2(B)に示す回路基板3は、本発明の回路基板の一例を示すものであり、このような構成に特に限定されるものではない。
本発明の回路基板3の製造に用いる基板2を構成する基板本体40としては、公知の電気絶縁材料(たとえば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものなどを用いることができる。また、導体パターン層50a〜50dは、特に限定されないが、通常、銅などの導電性金属等の導電体からなる層を基板本体40上に形成し、フォトリソグラフィ法などによりパターン化することにより形成することができる。なお、導体パターン層50a〜50dとしては、図2(A)〜図2(C)に示す構成に特に限定されるものではなく、所望の回路構成に応じて、そのパターン形状等を決定すればよい。また、導体層60は、銅などの導電性金属等の導電体で形成することができる。
伝送線を構成する導体パターン層50b,50cは強化繊維の長手方向(縦糸)または幅方向(横糸)に対して斜めに配置してもよい。
本発明で用いる基板2は、プリプレグ1の第1樹脂層10との密着性を向上させるために、導体パターン層50a〜50dの表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。例えば、導体パターン層50a〜50dが銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体パターン層50a〜50dにめっきを析出させて粗化する方法、導体パターン層50a〜50dに有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、および導体パターン層50a〜50dにチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらの内、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体パターン層50a〜50dに有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、および、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
図1に示すプリプレグ1と、図2(A)に示す基板2とを積層する際には、これらを加熱圧着して積層してもよい。加熱圧着の方法としては、プリプレグ1を、プリプレグ1を構成する第1樹脂層10が、基板2の導体パターン層50a〜50dに接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、導体パターン層50a〜50dとプリプレグ1との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜300℃、好ましくは70〜250℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、第1樹脂層10の、導体パターン層50a〜50dへの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
また、本発明の回路基板3は、図1に示すプリプレグ1と、図2(A)に示す基板2とを積層させることで形成されるものであるが、積層した後、必要に応じて、第1樹脂層10および第2樹脂層20中に含有される重合体(シクロオレフィンポリマー)を架橋させてもよい。
さらに、本発明においては、図2(B)に示すような回路基板3同士を積層することにより、あるいは、他の回路基板と積層することにより、多層回路基板としてもよい。
本発明の回路基板3は、前述した本発明のプリプレグ1を用いて得られるものであるため、導体パターン層50a〜50dと、プリプレグ1中に含有される強化繊維層30を構成する強化繊維とが接触あるいは近接することによる影響を抑えることができ、低誘電率およぶ低誘電正接を奏することができる。さらに、強化繊維の含有率が所定以下であるため、高周波における伝送損失を適切に低減できる。
なお、前記においては、本発明のプリプレグとして、図1に示すプリプレグ1を、また、本発明の回路基板として、図2(B)に示す回路基板3を、それぞれ例示して説明したが、本発明のプリプレグおよび回路基板は、これらの構成に何ら限定されない。すなわち、前記においては、本発明の回路基板の一例として、図2(B)に示すマイクロストリップライン型の回路基板を例示したが、このような構成に特に限定されるものではなく、たとえば、ストリップライン型の回路基板などの他の回路基板であってもよいのはもちろんである。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
(1)比誘電率
インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて周波数1GHzで20℃における誘電率(ε)を容量法で測定し、比誘電率(εr)を算出して以下の基準で評価した。
A:比誘電率が3.5未満
B:比誘電率が3.5以上、4.0未満
(2)誘電正接
インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて周波数1GHzで20℃における誘電正接を容量法にて測定し、以下の基準で評価した。
A:0.005以下
B:0.005超
(3)配線埋込性
回路基板を、配線方向に対し垂直な方向で任意に3か所切断した。得られた積層体の切断面を目視により観察し、回路基板上の樹脂層への配線埋め込み性について以下の基準で評価した。
A:埋込不良が2本以上
B:埋込不良が2本を超え、5本以下
C:埋込不良が5本超え
(4)絶縁信頼性
130℃で85%RHの環境下、回路基板に形成された櫛型パターンに50Vの直流電圧を所定時間印加し、導通が確認されるまでの時間を測定し、以下の評価基準に従って絶縁信頼性を評価した。
A:300時間以上
B:300時間未満
(5)Skew評価(伝送特性)
回路基板に形成された一対の伝送線路(一対のマイクロストリップライン、差動線路)の入力端に10GHzの差動信号を入力し、出力端における信号波形のピーク位置のずれから遅延特性を評価し、Skew評価(伝送特性)を評価した。
A:ピーク位置が一致している
B:ピーク位置が一致しない
(6)ボイド
回路基板から導体パターンを剥離し、プリプレグを目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、ボイドとは、樹脂の存在しない部分(空隙)であり、ここでは最大径が3μm以上のものを指す。
A:ボイドが確認されない
B:ボイドが確認される
<実施例1>
(樹脂組成物1の調製)
メタセシス重合触媒としてのベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド0.05部と、トリフェニルホスフィン0.01部とを、インデン1.51部に溶解させて触媒液を調製した。また、これとは別に、シクロオレフィンモノマーとしてのテトラシクロドデセン(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン/TCD)100部と、ラジカル発生剤としての3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン(1分間半減期温度205℃)2部と、架橋助剤としてのベンジルアクリレート20部と、酸化ケイ素粒子(平均粒子径0.5μm)100部と、連鎖移動剤としてのスチレン0.74部とを混合してモノマー液を調製した。次いで、得られたモノマー液に前記触媒液を混合することで重合性の樹脂組成物1を得た。
(プリプレグ1の製造)
開繊処理がされた厚さ25μm、幅630mmの長尺状の強化繊維(Eガラス繊維)を準備し、前記にて得られた樹脂組成物1を用いて、図3に示す製造装置にて、プリプレグを製造した。具体的には、図3に示すように、長尺状の強化繊維を、搬送速度50mm/秒で送り出し、この強化繊維に、両面ダイコータを用いて、前記にて得られた樹脂組成物1を両面から連続塗工し、強化繊維に含浸させるとともに、強化繊維の両面に樹脂組成物1からなる層を形成した。次いで、厚さ25μm、幅500mmの帯状に連続したポリエチレンナフタレートフィルム90aを送り出し、強化繊維の表面側に形成された樹脂組成物1からなる層に重ねあわせ、また、厚さ55μm、幅500mmの帯状に連続したポリエチレンナフタレートフィルム90bを送り出し、強化繊維の裏面側に形成された樹脂組成物1からなる層に重ねあわせた。この状態で、間隙を155μmに調整した一対の金属ロールの間に通すことで、塗工後の全体厚みを75μmに調製した。
次いで、内部が均一に150±5℃に保たれた、長さ3,000mmの熱風加温装置に連続的に送り、熱風加温装置にて、樹脂組成物1を昇温速度50℃/分にて150℃まで昇温させ、塊状重合することでプリプレグ1を半硬化させ、支持体付きプリプレグ1を得た。得られたプリプレグ1は、支持体ごと巻き取った。得られたプリプレグ1について、第1樹脂層の平均厚みT1が43μmであり、第2樹脂層の平均厚みT2が13μmであった。該プリプレグ1における強化繊維の含有率は12体積%であった。また、強化繊維層の両面に形成された樹脂層(第1樹脂層および第2樹脂層)の最小厚みtr1,tr2を測定したところ、第1樹脂層の最小厚みtr1は40μmであり、第2樹脂層の最小厚みtr2は10μmであった。
(回路基板の製造)
次いで、前記にて得られた支持体付きのプリプレグ1を10cm角のシート状に切り出し、切り出したプリプレグシートから支持体を剥離しこれを6枚重ねて基板本体とした。次いで、基板本体の両面に、厚み35μm のF2銅箔(古河サーキットフォイル社製、シランカップリング剤処理電解銅箔、粗度Rz=1600nm)2枚を、銅箔の表面処理面がプリプレグシートと接触するように配置し、205℃で20分間、3MPaにて熱プレスを行い、複合体としての両面銅貼積層板を得た。
次いで、リソグラフィ法を用いて両面銅貼積層板の一方の銅箔に、所定のパターンでドライフィルムを被覆して、露光および現象プロセスによって、所望のエッチング部分のみを露出させた後、エッチング液でエッチングすることによって、導体間隔50μmの櫛形パターンおよび配線幅100μm、配線間隔100μmの一対の伝送線路(一対のマイクロストリップライン、差動線路)を含む導体パターンを有する基板を得た。なお、導体パターンを形成した面における、導体パターン形成割合α(残銅率)は50%とした。また、導体パターンの厚みtは35μmであった。
次いで、前記にて得られた支持体付きのプリプレグより10cm角にて切り出すことにより得られたプリプレグシートから支持体を剥離し、前記にて得られた導体パターンを有する基板の、導体パターン上に、プリプレグシートを重ね、次に、このプリプレグシート上に銅箔を重ね、210℃で20分間、3MPaにて加熱プレスを行うことで、回路基板を得た。
得られたプリプレグ、および回路基板を用いて、比誘電率、誘電正接、配線埋込性、絶縁信頼性、Skew評価(伝送特性)およびボイドの有無の各測定および評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例2>
プリプレグを製造する際に、長尺の強化繊維として、厚さ25μmの強化繊維の代わりに、開繊処理された厚さ43μmの強化繊維(Eガラス繊維)を用い、一対の金属ロールの間隙を213μmに変更し、塗工後の全体厚みを133μmに調製した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ2を得て、得られたプリプレグ2を用いた以外は、実施例1と同様にして、回路基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。得られたプリプレグ2について、第1樹脂層の平均厚みT1が66μmであり、第2樹脂層の平均厚みT2が36μmであった。該プリプレグ2における強化繊維の含有率は14体積%であった。また、強化繊維層の両面に形成された樹脂層(第1樹脂層および第2樹脂層)の最小厚みtr1,tr2を測定したところ、第1樹脂層の最小厚みtr1は60μmであり、第2樹脂層の最小厚みtr2は30μmであった。
<実施例3>
プリプレグを製造する際に、厚さ55μmの支持体の代わりに、厚さ85μmの支持体を用い、一対の金属ロールの間隙を215μmに変更し、塗工後の全体厚みを105μmに調製した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ3を得て、得られたプリプレグ3を用いた以外は、実施例1と同様にして、回路基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。得られたプリプレグ3について、第1樹脂層の平均厚みT1が73μmであり、第2樹脂層の平均厚みT2が13μmであった。該プリプレグ3における強化繊維の含有率は9体積%であった。また、強化繊維層の両面に形成された樹脂層(第1樹脂層および第2樹脂層)の最小厚みtr1,tr2を測定したところ、第1樹脂層の最小厚みtr1は70μmであり、第2樹脂層の最小厚みtr2は10μmであった。
Figure 2014181300
表1に示すように、第1樹脂層の平均厚みを第2樹脂層の平均厚みより大きくした実施例1〜3では、誘電率および誘電正接が低く、配線埋込性および絶縁信頼性が良好であり、高周波における伝送特性に優れ、かつボイドも少ないものであった。

Claims (3)

  1. 強化繊維を含んでなる長尺状の強化繊維層と、前記強化繊維層の表面側である第1樹脂層と、前記強化繊維層の裏面側である第2樹脂層と、を備え、前記第1樹脂層の平均厚みと前記第2樹脂層の平均厚みとが異なるプリプレグを製造するプリプレグの製造方法であって、
    前記長尺状の強化繊維層を一定方向に沿って搬送する工程と、
    前記長尺状の強化繊維層の表面側に前記第1樹脂層を構成する第1樹脂材料を塗布する工程と、
    前記長尺状の強化繊維層の裏面側に前記第2樹脂層を構成する第2樹脂材料を塗布する工程と、
    前記第1樹脂層における前記強化繊維層とは反対側の面に、長尺状の第1支持体を積層するとともに、前記第2樹脂層における前記強化繊維層とは反対側の面に、前記第1支持体とは厚みの異なる、長尺状の第2支持体を積層して得られる積層体を形成する積層工程と、
    所定の間隙寸法で固定された一対のロール間に、前記積層工程で得られた積層体を搬送して前記積層体の厚みを調整する厚み調整工程と、
    を備えるプリプレグの製造方法。
  2. 前記第1樹脂材料および前記第2樹脂材料は、同一の樹脂組成物である請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
  3. 前記樹脂組成物は、シクロオレフィンポリマーを含む請求項2に記載のプリプレグの製造方法。
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