JP2014177651A - グリース組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高荷重下による軸受摩耗及びフレッチング摩耗を同時に抑制して、長寿命化が可能なグリース組成物を提供する。
【解決手段】本発明のグリース組成物は、基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm/s以上2000mm/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物に関する。特に、風力発電装置に組み込まれる主軸を受けるメインベアリングや、羽軸を受けるピッチベアリングに使用されるグリース組成物に関する。
例えば、風力発電装置に組み込まれた主軸を受けるメインベアリングや羽軸を受けるピッチベアリングのように、大きな荷重を受けるベアリングの潤滑には、グリース組成物が使用されている。このようなメインベアリングやピッチベアリングでは、風速の変化や羽根の微小制御により、常に変動や微小な揺動を受けており、フレッチング摩耗が生じやすい環境にある。故障時のベアリングの交換には大きな手間と費用がかかるため、耐フレッチング性に優れ、長期間に亘ってベアリングの損傷が生じにくい潤滑剤が求められている。
そこで、耐フレッチング性の向上を目的として、100℃における動粘度が200〜2500mm/sであるエステル系合成油を基油としたグリース組成物が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、大きな荷重に対して、耐久性を向上させるために、グリース組成物用として高粘度基油を使用し、必要に応じ極圧剤を配合したグリース組成物も開示されている(非特許文献1,2参照)。
また、風力発電装置に使用されるグリース組成物としては、基油と増ちょう剤とオレオイルザルコシンとを含んだ組成物(特許文献2参照)や、40℃における動粘度が70〜250mm/sである基油と増ちょう剤とカルボン酸系防錆添加剤とを含有する組成物が提案されている(特許文献3参照)。
特開2003−206939号公報 特開2008−38088号公報 特開2007−63423号公報
「スラスト玉軸受に用いる潤滑グリースの耐フレッチング性評価に関する研究」トライボロジスト Vol.54 No.1(2009)64 「揺動スラスト玉軸受におけるリチウム石けんグリースの耐フレッチング摩耗特性」トライボロジスト Vol.42 No.6(1997)492
風力発電装置に使用されるメインベアリングやピッチベアリングは、主軸や羽軸の回転によるフレッチング摩耗のみならず、高重量の主軸や羽軸を受けることによる軸受摩耗の低減も同時に要求される。しかしながら、特許文献1〜3及び非特許文献1,2に開示されたグリース組成物では、軸受摩耗とフレッチング摩耗を同時に抑制することは困難である。また、高粘度基油を使用した場合、フレッチング摩耗が大きくなるという問題もある。
そこで、本発明の目的は、高荷重下による軸受摩耗及びフレッチング摩耗を同時に抑制して、長寿命化が可能なグリース組成物を提供することにある。
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のようなグリース組成物を提供するものである。
[1]基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm/s以上2000mm/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下であることを特徴とするグリース組成物。
[2]上記[1]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が、石けん系増ちょう剤であることを特徴とするグリース組成物。
[3]上記[1]又は上記[2]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が、組成物全量基準で17質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[4]上記[1]から上記[3]までのいずれかに記載のグリース組成物において、硫黄を含む極圧添加剤が組成物全量基準で0.01質量%以上10質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[5]上記[1]から上記[4]までのいずれかに記載のグリース組成物において、前記基油には、さらに、石油樹脂が組成物全量基準で0.5質量%以上30質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[6]上記[1]から[5]までのいずれかに記載のグリース組成物において、風力発電装置の羽が連結された主軸に連接されたメインベアリング、及び、前記羽に組み込まれた羽軸に連接されたピッチベアリングのうち少なくともいずれか一方に対して使用されることを特徴とするグリース組成物。
[7]上記[1]から上記[6]までのいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は、前記A成分中にてカルボン酸とアルカリとの反応を行うことにより製造されたものであることを特徴とするグリース組成物。
本発明のグリース組成物によれば、高荷重下による軸受摩耗及びフレッチング摩耗を同時に抑制して、長寿命化を図ることができるため、特に、風力発電装置のメインベアリング及びピッチベアリングに好適に用いることができる。
本発明の実施形態に係るグリース組成物が使用された風力発電装置を示す図。
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
本実施形態のグリース組成物(以下、「グリース」と略記する場合がある。)は、基油と、増ちょう剤とを含んで構成されている。
基油は、炭化水素系合成油から構成されていてもよく、炭化水素系合成油と鉱油を含んで構成されていてもよい。
炭化水素系合成油としては、例えば、芳香族系油として、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、更にはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、更にはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンのコオリゴマー等のオレフィン系オリゴマーが挙げられる。
鉱油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。
上記の炭化水素系合成油は、それぞれ単独で使用してもよく、混合物として使用してもよい。また、基油は、40℃における動粘度が200mm/s以上2000mm/s以下である。動粘度が200mm/s未満の場合、フレッチング摩耗は小さくなるものの、軸受摩耗が大きく耐荷重性を担保できない場合がある。一方、動粘度が2000mm/sを超える場合、フレッチング摩耗が大きくなる場合がある。それ故、40℃における動粘度は、300mm/s以上1500mm/s以下が好ましく、より好ましくは400mm/s以上750mm/s以下である。
また、基油に占める炭化水素系合成油の割合は、40質量%以上である。ここで、基油に占める炭化水素系合成油の割合が40質量%未満の場合、高粘度と低温トルク性の両立が困難になる場合がある。それ故、基油に占める炭化水素系合成油の割合は、好ましくは、60質量%以上であり、さらに好ましくは、70質量%以上である。
また、基油は、40℃における動粘度が70mm/s以下の成分(A成分)を20質量%以上70質量%以下含んでいる。ここで、基油に占めるA成分の動粘度が小さい場合、製造中の基油蒸発が大きくなる場合がある。一方、A成分の動粘度が70mm/sを超える場合、フレッチング摩耗が大きくなる場合がある。それ故、基油に占めるA成分の40℃における動粘度は、好ましくは、10mm/s以上40mm/s以下であり、さらに好ましくは20mm/s以上40mm/s以下である。
また、基油に占めるA成分の割合が20質量%未満の場合、フレッチング摩耗や圧送性が悪化する場合がある。一方、A成分の割合が70質量%を超える場合、高粘度に調整することが困難になる場合がある。それ故、基油に占めるA成分の割合は、好ましくは、30質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは、40質量%以上65質量%以下である。
基油に占めるA成分は、例えば、炭素数が4〜18、好ましくは6〜14、更に好ましくは8〜12のα−オレフィン(単独でも混合でも可)のオリゴマー、1−デセンとエチレンのコオリゴマー等のオレフィンオリゴマーであり、それぞれ単独で使用してもよく、混合物として使用してもよい。これらのオレフィンオリゴマーは、既知の製法によって合成されたものでも、特願平5−282511(特開平07−133234号公報)及び特願平1−269082(特開平03−131612号公報)に記載のような製法によって合成されたものでも良い。また、A成分は、低温特性に悪影響を与えない範囲で鉱油を少量配合してもよい。
基油に配合される増ちょう剤は、有機系及び無機系の何れの増ちょう剤も使用できるが、石けん系増ちょう剤が好ましい。具体的には、好ましくは、Li石けん、Liコンプレックス石けん、Caスルホネートコンプレックス石けん,Caコンプレックス石けんのいずれかであり、より好ましくは、石けんを構成する脂肪酸に12−ヒドロキシステアリン酸塩を含むものである。中でも、石けんは、Liを含むことが好ましく、更に好ましくは、Liコンプレックス石けんである。Liコンプレックス石けんは低温から高温までの性能バランスに優れる。
また、増ちょう剤としては、ウレア化合物、ベントナイト、シリカ、カーボンブラック等を使用してもよい。また、これらは単独でも、混合して使用してもよい。
増ちょう剤の配合量は、上記基油とともにグリースを形成し維持できる範囲であれば制限はないが、組成物全量基準で17質量%以下であることが好ましい。ここで、増ちょう剤の配合量が組成物全量基準で17質量%を超えると、フレッチング摩耗が悪化する場合がある。また、圧送性も低下する場合がある。それ故、組成物全量基準で増ちょう剤の配合量は、さらに好ましくは、14質量%以下であり、特に好ましくは、12質量%以下である。
ここで、増ちょう剤の配合量とは、石けん系増ちょう剤については、増ちょう剤を構成するカルボン酸の量として表す。ウレア系増ちょう剤は、イソシアネートとアミンの反応物量として表す。
また、増ちょう剤の製造方法としては、基油のA成分中でカルボン酸とアルカリを混合してけん化反応を行うことにより増ちょう剤を得ることが好ましい。
カルボン酸としては、油脂を加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸、テレフタル酸、サルチル酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。なお、カルボン酸のエステルを使用してもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記アルカリとしては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属水酸化物が挙げられる。金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられる。
グリースには、硫黄を含む極圧剤として、組成物全量基準で0.01質量%以上10質量%以下配合することが好ましい。ここで、配合量が0.01質量%未満である場合、または配合量が10%質量以上である場合、焼付きの防止などの配合効果を期待できない場合がある。
このような極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、ジチオカルバミン(DTC)、チオフォスフェート、硫化油脂、チアジアゾールなどが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
また、基油には、石油樹脂やポリエチレンなど、他の基油に可溶な樹脂・ワックス類が配合されていても良いが、中でも石油樹脂が好ましい。樹脂の配合量は、組成物全量基準で0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。組成物全量基準に占める樹脂の割合が0.5質量%未満であると、粘度が小さくなる場合がある。一方、樹脂の割合が30質量%を超えると、低温トルク性が低下する場合がある。それ故、組成物全量基準に占める樹脂の割合は、さらに好ましくは、1質量%以上25質量%以下であり、特に好ましくは、2質量%以上20質量%以下である。
石油樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン系が好ましく、シクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類とを熱共重合した物、これらを必要に応じて通常の方法で水素化した物、あるいはこれらの混合物が好ましい。
上記のシクロペンタジエン類としては、シクロペンタジエン、その多量体、それらのアルキル置換体、あるいはそれらの混合物を用いることができ、工業的にはナフサ等のスチームクラッキングにより得られるシクロペンタジエン類を約30質量%以上、好ましくは約50質量%以上含むシクロペンタジエン系留分(CPD留分)を用いることが有利である。このCPD留分は、これら脂環式ジエンと共重合可能なオレフィン性単量体を含んでいてもよい。このオレフィン性単量体としては、イソプレン、ピペリレンあるいはブタジエン等の脂肪族ジオレフィン、シクロペンテン等の脂環式オレフィンなどが挙げられる。これらオレフィン類の濃度は、低い方が好ましいが、シクロペンタジエン類当たり約10質量%以下であれば許容される。
シクロペンタジエン類との共重合原料であるα−オレフィン類としては、炭素数が4〜18、好ましくは4〜12のα−オレフィンや、それらの混合物が用いられ、中でも、エチレン、プロピレンあるいは1−ブテン等からの誘導体、あるいはパラフィンワックスの分解物等が好ましく用いられる。α−オレフィン類は、シクロペンタジエン類1モル当たり約4モル未満配合するのが工業的に好ましい。
他の共重合原料であるモノビニル芳香族炭化水素類としては、スチレン、o、m、p−ビニルトルエン、α、β−メチルスチレン等が用いられる。このモノビニル芳香族炭化水素類は、インデン、メチルインデンあるいはエチルインデン等のインデン類を含んでいてもよく、工業的にはナフサ等のスチームクラッキングより得られるいわゆるC9留分を用いることが有利である。モノビニル芳香族炭化水素類を共重合原料として用いる場合は、シクロペンタジエン類1モル当たり約3モル未満配合するのが工業的に好ましい。
本発明のグリースは、混和ちょう度が220以上350以下であり、好ましくは、250以上340以下であり、さらに好ましくは、265以上320以下である。ここで、混和ちょう度が220未満であると、グリースが硬くなり低温トルク特性が低下する場合がある。一方、混和ちょう度が350を超えると、グリースが柔らかくなり軸受摩耗、フレッチング摩耗が生じやすくなる場合がある。
本発明のグリースにおいては、本発明の目的が達成される範囲内で、必要に応じて、酸化防止剤、防錆剤、固体潤滑剤、充填剤、油性剤、金属不活性化剤、耐水剤、極圧剤、耐摩耗剤、粘度指数向上剤、着色剤等の添加剤を配合してもよい。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、硫黄系・ZnDTPなどの過酸化物分解剤等が挙げられ、これらは、通常0.05質量%以上10質量%以下の割合で使用される。
防錆剤としては、亜硝酸ナトリウム、スルホネート、ソルビタンモノオレエート、脂肪酸石けん、アミン化合物、コハク酸誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。
固体潤滑剤としては、ポリイミド、PTFE、黒鉛、金属酸化物、窒化硼素、メラミンシアヌレート(MCA)、二硫化モリブデン等が挙げられる。以上のような各種添加剤は、単独で、または数種組み合わせて配合してもよく、本発明の潤滑油添加剤はこれらの効果を阻害するものではない。
上述の構成を備えるグリース組成物は、風力発電装置1に好適に使用される。このような風力発電装置1は、図1に示すように、羽5と、この羽5を固定した主軸4と、この主軸4の回転によって駆動される発電機31と、主軸4に連接されたメインベアリング33及びヨーベアリング32を収納するナセル3と、ナセル3を支持するタワー2とを備えている。また、羽軸51には、ピッチベアリング41が連接される。例えば、羽軸51を回転させることにより、羽5に風を受けやすくさせたり、受けにくくさせることができるため、主軸4の回転が一定となる。これにより、発電機31から安定した電力を得ることができる。本発明のグリースは、メインベアリング33及びピッチベアリング41に対して使用されることが好ましい。メインベアリング33及びピッチベアリング41には、高重量の羽5や主軸4により高荷重による軸受摩耗が生じたり、回転などの変動や揺動によりフレッチング摩耗が生じやすいものの、本発明のグリースを使用することにより、軸受摩耗及びフレッチング摩耗を防止することができる。なお、風力発電装置1は、出力が300Kw未満の小型では、荷重が小さいため好ましくない。風力発電装置1は、好ましくは300Kw以上、さらに好ましくは700Kwの出力を有する中型や大型であることが好ましい。
また、メインベアリング33及びピッチベアリング41には、図示しないパイプを介してグリースを供給するためのポンプが接続されていてもよい。ポンプを作動させることにより、簡単にメインベアリング33及びピッチベアリング41にグリースを供給することができる。そのため、高所での作業が不要になり、作業性が向上する。
上述の構成を備えるグリースは、風力発電装置のほかに、ころがり軸受、ボールネジ、リニアガイド等、転がり運動を行う装置であって、高荷重用途に使用されても良い。例えば、電動シリンダ、電動式リニアアクチュエータ、ジャッキ、直線作動機などに用いることができる。
[実施例1〜12、比較例1〜3]
(グリース組成物の製造)
実施例および比較例の各グリース組成物を、以下のようにして製造した。各グリース組成物の配合組成を表1〜3に示す。また、表1〜3に示した材料の性状などについて、表4に示す。
<実施例1〜10、12>
(1)表1、2に示す量の、PAO−A、12-ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)そして、水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。なお、実施例8,9では、混合物の温度が170℃に達した後、5分間保持し、実施例10では混合物の温度が185℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表1、2に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って実施例1〜10のグリース組成物を得た。
<実施例11>
(1)1モルのジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)を、PAO−Aの2/3質量に加熱溶解し、原料1とした。
(2)また、残りのPAO−Aに、2モルのシクロヘキシルアミンを撹拌溶解し、原料2とした。
(3)次に、グリース反応釜中で原料1を50〜60℃で激しく撹拌しながら、原料2を徐々に投入した。
撹拌しながら加熱し、グリース組成物の温度が165℃に達した後、1時間保持した。(4)その後、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表2に示した量の酸化防止剤、極圧剤を配合混合した。室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って実施例11のグリース組成物を得た。
<比較例1,2>
(1)PAO−Bの一部(出来上がりグリース量に対し50質量%分)及び、表3に示す量の、12-ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表3に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って比較例1、2のグリース組成物を得た。
<比較例3>
(1)PAO−Aの一部(出来上がりグリース量に対し50質量%分)及び、表3に示す量の、12−ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表3に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って比較例3のグリース組成物を得た。
なお、オレフィンオリゴマーの含有量が70質量%を超える場合では、低粘度油に、ごく僅かのポリマー基油を添加して増粘させる必要があり、粘度調整が困難であった。
Figure 2014177651
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Figure 2014177651
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上記表1〜3において、増ちょう剤配合量は、カルボン酸量(12−ヒドロキシステアリン酸+アゼライン酸)として定義した。
[評価方法]
上記した実施例・比較例のグリース組成物について性状、耐摩耗性を評価した。具体的な評価方法を以下に示す。
(1)混和ちょう度:JIS K 2220.7に規定される方法で測定した(25℃,60W)。
(2)滴点:JIS K 2220.8に規定される方法で測定した。
(3)フレッチング摩耗試験:ASTM D4170に規定される方法で測定した。(22±2℃)に制御した試験室に設置し試験開始後の温度制御は行わなかった。
(4)低温トルク試験:JIS K 2220.18に規定される方法で測定した。温度は−40℃で行った。
(5)高荷重軸受摩耗試験:DIN51819−2に規定された方法で測定した。
(試験条件 DIN51819-2-C-75/50-120, 荷重50KN,温度120℃、回転数75rpm)軌道輪(内輪+外輪)、転動体(コロ16個の合計)、保持器の重量を試験前後で測定し、軸受1個あたりのそれぞれの重量減をDIN51819−2.11に規定される50%摩耗確率(50%probabiLity of wear)として求めた。
(6)加圧離油度:IP121に規定される方法で測定した(40℃、42h)。
(7)グリース圧送性:グリースの自動給脂ポンプを用いてグリースを押しだす際の吐出圧力で評価した。自動給脂ポンプ(LINCOLN INDUSTRIAL社製、Quicklub Pump model 203)のグリース吐出口に、圧力計(吐出圧力測定用)、内径4mmの配管(10m)の順に接続し、更に分配弁を用いて2系統に分配する。それぞれの系統に、内径4mm×長さ4mの配管を接続し、更にリリーフ弁(12MPa)を経由してグリースは排出される。20〜25℃にコントロールした室内で、グリースをポンプ・配管内に満たし、吐出圧が安定してから2時間ポンプを運転し、この間の平均吐出圧力(MPa)を計測した。吐出圧力が小さいグリースほど、小さい圧力で押し出すことが出来るため、圧送性に優れる。
[評価結果]
表1〜3の結果から明らかなように、実施例1〜12のグリース組成物は、いずれも軸受摩耗特性及びフレッチング摩耗特性に優れていることがわかる。また、特に実施例3、7では、低温トルク性にも優れることがわかり、屋外に設置される風力発電装置などにも好適に使用できることがわかる。一方、比較例1では、基油におけるA成分の配合量を20質量%未満にしたため、フレッチング摩耗性及び圧送性が劣り、低温トルクが大きくなる。比較例2では、A成分を配合していないため、フレッチング摩耗性及び圧送性が劣る。比較例3では、軸受摩耗が大きくなり、油分離性が低下する。
本発明は、風力発電装置などに組み込まれるメインベアリング及びピッチベアリングに使用されるグリース組成物として好適に使用することができる。
1…風力発電装置、2…タワー、3…ナセル、4…主軸、5…羽、31…発電機、32…ヨーベアリング、33…メインベアリング、41…ピッチベアリング、51…羽軸。
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のようなグリース組成物を提供するものである。
[1]基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm /s以下であるA成分20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm/s以上2000mm/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下であることを特徴とする風力発電装置に組み込まれるベアリング用グリース組成物。
[2]上記[1]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が前記A成分中でカルボン酸とアルカリを混合してけん化反応を行うことにより製造されたものであることを特徴とするグリース組成物。

Claims (7)

  1. 基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、
    前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、
    40℃における動粘度が70mm/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、
    前記基油の40℃における動粘度が200mm/s以上2000mm/s以下であり、
    該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下である
    ことを特徴とするグリース組成物。
  2. 請求項1に記載のグリース組成物において、
    前記増ちょう剤が、石けん系増ちょう剤である
    ことを特徴とするグリース組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、
    前記増ちょう剤が、組成物全量基準で17質量%以下配合されている
    ことを特徴とするグリース組成物。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
    硫黄を含む極圧添加剤が組成物全量基準で0.01質量%以上10質量%以下配合されている
    ことを特徴とするグリース組成物。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
    前記基油には、さらに、石油樹脂が組成物全量基準で0.5質量%以上30質量%以下配合されている
    ことを特徴とするグリース組成物。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
    風力発電装置の羽が連結された主軸に連接されたメインベアリング、及び、前記羽に組み込まれた羽軸に連接されたピッチベアリングのうち少なくともいずれか一方に対して使用される
    ことを特徴とするグリース組成物。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
    前記増ちょう剤は、前記A成分中にてカルボン酸とアルカリとの反応を行うことにより製造されたものである
    ことを特徴とするグリース組成物。
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