JP2014177651A - グリース組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のグリース組成物は、基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm2/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm2/s以上2000mm2/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下である。
【選択図】なし
Description
そこで、耐フレッチング性の向上を目的として、100℃における動粘度が200〜2500mm2/sであるエステル系合成油を基油としたグリース組成物が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、大きな荷重に対して、耐久性を向上させるために、グリース組成物用として高粘度基油を使用し、必要に応じ極圧剤を配合したグリース組成物も開示されている(非特許文献1,2参照)。
また、風力発電装置に使用されるグリース組成物としては、基油と増ちょう剤とオレオイルザルコシンとを含んだ組成物(特許文献2参照)や、40℃における動粘度が70〜250mm2/sである基油と増ちょう剤とカルボン酸系防錆添加剤とを含有する組成物が提案されている(特許文献3参照)。
[1]基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm2/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm2/s以上2000mm2/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下であることを特徴とするグリース組成物。
[2]上記[1]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が、石けん系増ちょう剤であることを特徴とするグリース組成物。
[3]上記[1]又は上記[2]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が、組成物全量基準で17質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[4]上記[1]から上記[3]までのいずれかに記載のグリース組成物において、硫黄を含む極圧添加剤が組成物全量基準で0.01質量%以上10質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[5]上記[1]から上記[4]までのいずれかに記載のグリース組成物において、前記基油には、さらに、石油樹脂が組成物全量基準で0.5質量%以上30質量%以下配合されていることを特徴とするグリース組成物。
[6]上記[1]から[5]までのいずれかに記載のグリース組成物において、風力発電装置の羽が連結された主軸に連接されたメインベアリング、及び、前記羽に組み込まれた羽軸に連接されたピッチベアリングのうち少なくともいずれか一方に対して使用されることを特徴とするグリース組成物。
[7]上記[1]から上記[6]までのいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は、前記A成分中にてカルボン酸とアルカリとの反応を行うことにより製造されたものであることを特徴とするグリース組成物。
本実施形態のグリース組成物(以下、「グリース」と略記する場合がある。)は、基油と、増ちょう剤とを含んで構成されている。
基油は、炭化水素系合成油から構成されていてもよく、炭化水素系合成油と鉱油を含んで構成されていてもよい。
鉱油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。
また、基油に占める炭化水素系合成油の割合は、40質量%以上である。ここで、基油に占める炭化水素系合成油の割合が40質量%未満の場合、高粘度と低温トルク性の両立が困難になる場合がある。それ故、基油に占める炭化水素系合成油の割合は、好ましくは、60質量%以上であり、さらに好ましくは、70質量%以上である。
また、基油に占めるA成分の割合が20質量%未満の場合、フレッチング摩耗や圧送性が悪化する場合がある。一方、A成分の割合が70質量%を超える場合、高粘度に調整することが困難になる場合がある。それ故、基油に占めるA成分の割合は、好ましくは、30質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは、40質量%以上65質量%以下である。
基油に占めるA成分は、例えば、炭素数が4〜18、好ましくは6〜14、更に好ましくは8〜12のα−オレフィン(単独でも混合でも可)のオリゴマー、1−デセンとエチレンのコオリゴマー等のオレフィンオリゴマーであり、それぞれ単独で使用してもよく、混合物として使用してもよい。これらのオレフィンオリゴマーは、既知の製法によって合成されたものでも、特願平5−282511(特開平07−133234号公報)及び特願平1−269082(特開平03−131612号公報)に記載のような製法によって合成されたものでも良い。また、A成分は、低温特性に悪影響を与えない範囲で鉱油を少量配合してもよい。
また、増ちょう剤としては、ウレア化合物、ベントナイト、シリカ、カーボンブラック等を使用してもよい。また、これらは単独でも、混合して使用してもよい。
ここで、増ちょう剤の配合量とは、石けん系増ちょう剤については、増ちょう剤を構成するカルボン酸の量として表す。ウレア系増ちょう剤は、イソシアネートとアミンの反応物量として表す。
また、増ちょう剤の製造方法としては、基油のA成分中でカルボン酸とアルカリを混合してけん化反応を行うことにより増ちょう剤を得ることが好ましい。
カルボン酸としては、油脂を加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸、テレフタル酸、サルチル酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。なお、カルボン酸のエステルを使用してもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記アルカリとしては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属水酸化物が挙げられる。金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられる。
このような極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、ジチオカルバミン(DTC)、チオフォスフェート、硫化油脂、チアジアゾールなどが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、硫黄系・ZnDTPなどの過酸化物分解剤等が挙げられ、これらは、通常0.05質量%以上10質量%以下の割合で使用される。
防錆剤としては、亜硝酸ナトリウム、スルホネート、ソルビタンモノオレエート、脂肪酸石けん、アミン化合物、コハク酸誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。
また、メインベアリング33及びピッチベアリング41には、図示しないパイプを介してグリースを供給するためのポンプが接続されていてもよい。ポンプを作動させることにより、簡単にメインベアリング33及びピッチベアリング41にグリースを供給することができる。そのため、高所での作業が不要になり、作業性が向上する。
(グリース組成物の製造)
実施例および比較例の各グリース組成物を、以下のようにして製造した。各グリース組成物の配合組成を表1〜3に示す。また、表1〜3に示した材料の性状などについて、表4に示す。
(1)表1、2に示す量の、PAO−A、12-ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)そして、水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。なお、実施例8,9では、混合物の温度が170℃に達した後、5分間保持し、実施例10では混合物の温度が185℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表1、2に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って実施例1〜10のグリース組成物を得た。
(1)1モルのジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)を、PAO−Aの2/3質量に加熱溶解し、原料1とした。
(2)また、残りのPAO−Aに、2モルのシクロヘキシルアミンを撹拌溶解し、原料2とした。
(3)次に、グリース反応釜中で原料1を50〜60℃で激しく撹拌しながら、原料2を徐々に投入した。
撹拌しながら加熱し、グリース組成物の温度が165℃に達した後、1時間保持した。(4)その後、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表2に示した量の酸化防止剤、極圧剤を配合混合した。室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って実施例11のグリース組成物を得た。
(1)PAO−Bの一部(出来上がりグリース量に対し50質量%分)及び、表3に示す量の、12-ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表3に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って比較例1、2のグリース組成物を得た。
(1)PAO−Aの一部(出来上がりグリース量に対し50質量%分)及び、表3に示す量の、12−ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸および防錆剤を反応釜中で、撹拌しながら95℃に加熱した。
(2)水酸化リチウム(1水和物)を、その5倍量(質量比)の水に溶解させた。この水溶液を(1)の溶液に配合し、加熱混合した。混合物の温度が195℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を配合した後、50℃/時間で80℃まで冷却し、表3に示した量の酸化防止剤、極圧剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行って比較例3のグリース組成物を得た。
なお、オレフィンオリゴマーの含有量が70質量%を超える場合では、低粘度油に、ごく僅かのポリマー基油を添加して増粘させる必要があり、粘度調整が困難であった。
上記した実施例・比較例のグリース組成物について性状、耐摩耗性を評価した。具体的な評価方法を以下に示す。
(1)混和ちょう度:JIS K 2220.7に規定される方法で測定した(25℃,60W)。
(2)滴点:JIS K 2220.8に規定される方法で測定した。
(3)フレッチング摩耗試験:ASTM D4170に規定される方法で測定した。(22±2℃)に制御した試験室に設置し試験開始後の温度制御は行わなかった。
(4)低温トルク試験:JIS K 2220.18に規定される方法で測定した。温度は−40℃で行った。
(5)高荷重軸受摩耗試験:DIN51819−2に規定された方法で測定した。
(試験条件 DIN51819-2-C-75/50-120, 荷重50KN,温度120℃、回転数75rpm)軌道輪(内輪+外輪)、転動体(コロ16個の合計)、保持器の重量を試験前後で測定し、軸受1個あたりのそれぞれの重量減をDIN51819−2.11に規定される50%摩耗確率(50%probabiLity of wear)として求めた。
(6)加圧離油度:IP121に規定される方法で測定した(40℃、42h)。
(7)グリース圧送性:グリースの自動給脂ポンプを用いてグリースを押しだす際の吐出圧力で評価した。自動給脂ポンプ(LINCOLN INDUSTRIAL社製、Quicklub Pump model 203)のグリース吐出口に、圧力計(吐出圧力測定用)、内径4mmの配管(10m)の順に接続し、更に分配弁を用いて2系統に分配する。それぞれの系統に、内径4mm×長さ4mの配管を接続し、更にリリーフ弁(12MPa)を経由してグリースは排出される。20〜25℃にコントロールした室内で、グリースをポンプ・配管内に満たし、吐出圧が安定してから2時間ポンプを運転し、この間の平均吐出圧力(MPa)を計測した。吐出圧力が小さいグリースほど、小さい圧力で押し出すことが出来るため、圧送性に優れる。
表1〜3の結果から明らかなように、実施例1〜12のグリース組成物は、いずれも軸受摩耗特性及びフレッチング摩耗特性に優れていることがわかる。また、特に実施例3、7では、低温トルク性にも優れることがわかり、屋外に設置される風力発電装置などにも好適に使用できることがわかる。一方、比較例1では、基油におけるA成分の配合量を20質量%未満にしたため、フレッチング摩耗性及び圧送性が劣り、低温トルクが大きくなる。比較例2では、A成分を配合していないため、フレッチング摩耗性及び圧送性が劣る。比較例3では、軸受摩耗が大きくなり、油分離性が低下する。
[1]基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、40℃における動粘度が70mm 2 /s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、前記基油の40℃における動粘度が200mm2/s以上2000mm2/s以下であり、該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下であることを特徴とする風力発電装置に組み込まれるベアリング用グリース組成物。
[2]上記[1]に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤が前記A成分中でカルボン酸とアルカリを混合してけん化反応を行うことにより製造されたものであることを特徴とするグリース組成物。
Claims (7)
- 基油及び増ちょう剤を含んで構成されたグリース組成物であって、
前記基油は、炭化水素系合成油を40質量%以上含有するとともに、
40℃における動粘度が70mm2/s以下であるA成分を20質量%以上70質量%以下含有し、
前記基油の40℃における動粘度が200mm2/s以上2000mm2/s以下であり、
該グリース組成物の混和ちょう度が220以上350以下である
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1に記載のグリース組成物において、
前記増ちょう剤が、石けん系増ちょう剤である
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、
前記増ちょう剤が、組成物全量基準で17質量%以下配合されている
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
硫黄を含む極圧添加剤が組成物全量基準で0.01質量%以上10質量%以下配合されている
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記基油には、さらに、石油樹脂が組成物全量基準で0.5質量%以上30質量%以下配合されている
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
風力発電装置の羽が連結された主軸に連接されたメインベアリング、及び、前記羽に組み込まれた羽軸に連接されたピッチベアリングのうち少なくともいずれか一方に対して使用される
ことを特徴とするグリース組成物。 - 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記増ちょう剤は、前記A成分中にてカルボン酸とアルカリとの反応を行うことにより製造されたものである
ことを特徴とするグリース組成物。
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