JP2014176135A - モータドライブ装置、インバータ制御装置及びインバータ制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インバータの直流電圧の制御精度を向上させたモータドライブ装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の観点に従ったモータドライブ装置は、電動機と、インバータと、モータ電流を検出するモータ電流検出手段と、トルク指令に基づいて、前記モータ電流のDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、電流値最小位相と前記Q軸との間の値で、演算する電流位相角指令演算手段と、前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記DQ軸座標の電流指令を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令に基づいて、前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御するインバータ制御手段とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の観点に従ったモータドライブ装置は、電動機と、インバータと、モータ電流を検出するモータ電流検出手段と、トルク指令に基づいて、前記モータ電流のDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、電流値最小位相と前記Q軸との間の値で、演算する電流位相角指令演算手段と、前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記DQ軸座標の電流指令を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令に基づいて、前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御するインバータ制御手段とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、モータを駆動するモータドライブ装置、インバータ制御装置及びインバータ制御方法に関する。
近年、鉄道や電気自動車などのモータドライブ装置では、高効率である永久磁石同期電動機の適用が進んでいる。また、可変速範囲が広い用途には、磁石トルクとともにリラクタンストルクを併用する埋め込み磁石型モータが適用される。
リラクタンストルクと磁石トルクを併用するモータでは、モータ端子電圧が、回転数やトルク(負荷)によって、大きく変動する。無負荷や軽負荷ではモータ端子電圧が小さく、最大負荷ではモータ端子電圧が大きくなる。
一方、モータドライブ装置の全体の損失を低減するための様々な方法が知られている。例えば、永久磁石同期電動機にプラスD軸(磁石磁束方向)電流を流して強め界磁を行い、1パルス運転を行うことで、インバータのスイッチング損失を低減させることが開示されている。さらに、インバータに供給する直流電圧を増減させて、インバータを1パルス動作又は低パルス動作させることで、スイッチング損失を低減することが開示されている。
しかしながら、軽負荷状態で、上述のような損失の低減方法を用いても、モータドライブ装置の全体の損失が低減しない場合がある。
一般に、電動機の損失の方がインバータなどの電力変換器の損失より大きい。従って、インバータのスイッチング損失のみを低減した場合、逆に装置全体としては、損失が増加する場合もある。
例えば、高速域で巡航する鉄道車両又は高速道路を走行中の電気自動車は、通常、軽負荷状態であり、モータ端子電圧は高くはない。このような状態で電動機を運転する場合、装置全体として、損失が十分に低減されていないことがある。また、このように、高速で車両が巡航する状態は、長い時間継続することが多いため、このような状態での損失は、装置全体の損失として大きい。
そこで、本発明の実施形態の目的は、軽負荷状態で装置全体の損失を低減することのできるモータドライブ装置を提供することにある。
本発明の観点に従ったモータドライブ装置は、リラクタンストルクと磁石トルクを併用する電動機と、前記電動機を駆動するための電力を供給するインバータと、前記電動機に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、前記電動機の磁石方向をD軸とし、前記D軸と垂直方向をQ軸とし、前記電動機のトルクを制御するためのトルク指令に基づいて、前記モータ電流の前記D軸と前記Q軸からなるDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、前記電動機の最大トルクを最小の前記モータ電流で得るための電流値最小位相と前記Q軸との間の値で、演算する電流位相角指令演算手段と、前記電流位相角指令演算手段により演算された前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記モータ電流を制御するための前記DQ軸座標の電流指令を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令演算手段により演算された前記電流指令に基づいて、前記モータ電流検出手段により検出された前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御するインバータ制御手段とを備える。
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータドライブ装置10の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータドライブ装置10の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
モータドライブ装置10には、鉄道車両の交流駆動システムが採用されている。
モータドライブ装置10は、インバータ制御装置1と、電動機2と、集電装置3と、車輪4と、主変圧器5と、コンバータ6と、平滑コンデンサ7と、インバータ8と、位置検出器11と、交流電流検出器12とを備える。
インバータ制御装置1は、要求されたトルク指令Tm*に合致したトルクが出力されるように、インバータ8を制御して、電動機2の駆動を制御する。
電動機2は、リラクタンストルクと磁石トルクを併用する埋め込み磁石型の永久磁石同期電動機である。
集電装置3は、架線から受電した単相交流電力を、主変圧器5を介してコンバータ6に供給する。集電装置3は、例えばパンタグラフである。車輪4は、単相交流電力を受電する高圧側の集電装置3に対して低圧側に位置する機器である。
主変圧器5は、集電装置3から受電した単相交流電圧をコンバータ6に供給するための電圧に変圧する。
コンバータ6は、主変圧器5を介して集電装置3から受電した交流電力を直流電力に変換して、インバータ8に供給する。
インバータ8は、直流側がコンバータ6の直流側と直流リンクで接続されている。インバータ8は、コンバータ6から供給された直流電力を電動機2を駆動するための三相交流電力に変換する。
平滑コンデンサ7は、コンバータ6とインバータ8を接続する直流リンクに設けられている。平滑コンデンサ7は、直流リンクに印加される直流電圧を平滑化する。
位置検出器11は、電動機2のロータの位相θmを検出する。位置検出器11は、検出したロータの位相θmをインバータ制御装置1に出力する。
交流電流検出器12は、電動機2に流れる三相のモータ電流Iu,Iwを検出する。なお、交流電流検出器12は、三相のうち二相の電流Iu,Iwを計測すればよい。交流電流検出器12は、検出したモータ電流Iu,Iwをインバータ制御装置1に出力する。
次に、インバータ制御装置1の構成について説明する。
インバータ制御装置1は、DQ軸電流位相角指令演算部21と、DQ軸電流指令演算部22と、電流制御部23と、座標変換部24と、PWM(pulse width modulation)制御部25と、座標変換部26と、回転数演算部27とを備える。
回転数演算部27には、位置検出器11により検出されたロータの位相θmが入力される。回転数演算部27は、入力されたロータの位相θmに基づいて、電動機2の回転数Nrを演算する。回転数演算部27は、演算した回転数NrをDQ軸電流位相角指令演算部21に出力する。
DQ軸電流位相角指令演算部21には、電動機2のトルクを制御するためのトルク指令Tm*、回転数演算部27により演算された回転数Nr、及び予め設定された直流電圧指令Vdc0*が入力される。直流電圧指令Vdc0*は、最大トルク時に必要となる電圧値に設定されている。DQ軸電流位相角指令演算部21は、トルク指令Tm*、回転数Nr、及び直流電圧指令Vdc0*に基づいて、DQ軸電流位相角指令θIdq*を演算する。DQ軸電流位相角指令演算部21は、演算したDQ軸電流位相角指令θIdq*をDQ軸電流指令演算部22に出力する。
ここで、DQ軸電流位相角指令θIdq*は、図2に示すDQ軸電流位相角θIdqに対する指令値である。D軸は、磁石磁束方向である。Q軸は、磁石磁束方向と垂直方向である。DQ軸電流位相角θIdqは、電動機2に流れる電流IdqのD軸に対する位相角を表している。電動機2に流れる電流Idqは、D軸電流IdとQ軸電流Iqを合成した電流である。D軸電流Idは、D軸方向に流れる電流である。Q軸電流Iqは、Q軸方向に流れる電流である。
DQ軸電流指令演算部22には、トルク指令Tm*及びDQ軸電流位相角指令演算部21により演算されたDQ軸電流位相角指令θIdq*が入力される。DQ軸電流指令演算部22は、トルク指令Tm*及びDQ軸電流位相角指令θIdq*に基づいて、D軸電流指令Id*及びQ軸電流指令Iq*を演算する。DQ軸電流指令演算部22は、演算したDQ軸電流指令Id*,Iq*を電流制御部23に出力する。
座標変換部26には、交流電流検出器12により検出された電動機2の三相のモータ電流Iu,Iw及び位置検出器11により検出されたロータの位相θmが入力される。座標変換部26は、ロータの位相θmを用いて、三相のモータ電流Iu,IwをD軸電流IdとQ軸電流Iqに変換する。座標変換部26は、変換したDQ軸電流Id,Iqを電流制御部23に出力する。
電流制御部23には、DQ軸電流指令演算部22により演算されたDQ軸電流指令Id*,Iq*及び座標変換部26により演算されたDQ軸電流Id,Iqが入力される。電流制御部23は、DQ軸電流Id,IqがそれぞれのDQ軸電流指令Id*,Iq*に一致するように、DQ軸出力電圧指令Vd*,Vq*を制御する。D軸出力電圧指令Vd*は、インバータ8の出力電圧のD軸成分に対する指令値である。Q軸出力電圧指令Vq*は、インバータ8の出力電圧のQ軸成分に対する指令値である。電流制御部23は、演算した制御結果であるDQ軸出力電圧指令Vd*,Vq*を座標変換部24に出力する。
座標変換部24には、電流制御部23により演算されたDQ軸出力電圧指令Vd*,Vq*及び位置検出器11により検出されたロータの位相θmが入力される。座標変換部24は、ロータの位相θmを用いて、DQ軸出力電圧指令Vd*,Vq*を三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換する。三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*は、インバータ8の出力電圧の各相に対する指令値である。座標変換部24は、変換した三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*をPWM制御部25に出力する。
PWM制御部25は、座標変換部24から入力された三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいて、インバータ8のスイッチング素子をPWM(パルス幅変調)制御するためのゲート信号を生成する。このゲート信号により、インバータ8の出力電圧は、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に追従するように制御される。
図3は、DQ軸電流位相角指令演算部21の構成を示す構成図である。図4は、DQ軸電流位相角指令θIdq*と各種パラメータとの関係を示すグラフ図である。
DQ軸電流位相角指令演算部21は、DQ軸電流位相角基準演算部211と、位相制限値演算部212と、位相制限部213とを備える。
DQ軸電流位相角基準演算部211は、トルク指令Tm*に基づいて、DQ軸電流位相角基準θIdqrを演算する。DQ軸電流位相角基準演算部211は、演算したDQ軸電流位相角基準θIdqrを位相制限部213に出力する。
図4を参照して、DQ軸電流位相角基準θIdqrの演算方法について説明する。
トルク指令Tm*の絶対値が第1のトルクTm1よりも小さいときは、DQ軸電流位相角基準θIdqrは、90度とする。トルク指令Tm*の絶対値が第1のトルクTm1よりも小さいときとは、電動機2のトルクが略無負荷と判断されるときである。
トルク指令Tm*の絶対値が第2のトルクTm2よりも大きいときは、DQ軸電流位相角基準θIdqrは、電流値最小位相角θIdq0とする。トルク指令Tm*の絶対値が第2のトルクTm2よりも大きいときとは、電動機2のトルクが通常である(無負荷又は軽負荷ではない)と判断されるときである。また、DQ軸電流位相角基準θIdqrの初期値は、電流値最小位相角θIdq0に設定されている。
トルク指令Tm*の絶対値が第1のトルクTm1以上で第2のトルクTm2以下のとき(即ち、軽負荷のとき)は、DQ軸電流位相角基準θIdqrは、図4に示すように、トルク指令Tm*の絶対値の増加に従い、90度から電流値最小位相角θIdq0に近づくように決定する。
ここで、電流値最小位相角θIdq0について説明する。一般に、埋め込み磁石型永久磁石同期電動機では、最小の電流Idq0で最大のトルクを得るためのDQ軸電流位相角θIdqの最適値がある。この最適値が電流値最小位相角θIdq0である。電流値最小位相角θIdq0は、リラクタンストルクを利用するように、DQ軸電流の位相角をQ軸からマイナスD軸へと近づけた位置にある。電流値最小位相角θIdqの電流Idq0は、マイナスのD軸電流IdとプラスのQ軸電流Iqを同時に流した状態である。
位相制限値演算部212には、予め設定された直流電圧指令Vdc0*及び回転数演算部27により演算された回転数Nrが入力される。位相制限値演算部212は、直流電圧指令Vdc0*又は回転数Nrに基づいて、DQ軸電流位相角指令θIdq*を制限するための下限値である位相制限値θlimを演算する。位相制限値θlimは、インバータ8の出力電圧が飽和した状態からさらに上昇させないようにするための制限値である。位相制限値演算部212は、演算した位相制限値θlimを位相制限部213に出力する。
位相制限部213は、DQ軸電流位相角基準演算部211により演算されたDQ軸電流位相角基準θIdqrを位相制限値演算部212により演算された位相制限値θlimで制限する。位相制限部213は、位相制限値θlimで制限したDQ軸電流位相角基準θIdqrをDQ軸電流位相角指令θIdq*として、DQ軸電流指令演算部22に出力する。
図5は、本実施形態に係る電動機2のモータ端子電圧Vml,Vml0,Vmn,Vmhと回転数Nrとの関係を示すグラフ図である。モータ端子電圧とは、電動機2の端子に発生する電圧であり、インバータ8の出力電圧でもある。
モータ端子電圧Vmnは、トルクが無負荷のときを表している。モータ端子電圧Vmhは、DQ軸電流位相角θIdqが電流値最小位相角θIdq0で、最大トルクのときを表している。モータ端子電圧Vml0は、DQ軸電流位相角θIdqが電流値最小位相角θIdq0で、トルクが軽負荷のときを表している。モータ端子電圧Vmlは、DQ軸電流位相角θIdqがDQ軸電流位相角指令θIdq*に従った位相で、トルクが軽負荷のときを表している。即ち、モータ端子電圧Vmlは、インバータ制御装置1で制御された軽負荷時のモータ端子電圧である。
DQ軸電流位相角θIdqが電流値最小位相角θIdq0の場合、マイナスのD軸電流IdとプラスのQ軸電流Iqを流す。マイナスのD軸電流Idは、磁石磁束を打ち消す作用がある。このため、トルクが軽負荷の場合、無負荷時に比べてモータ端子電圧(即ち、DQ軸出力電圧)が減少する。更にトルクが増加すると、Q軸電流Iqが増加することによるD軸リアクタンスが増加し、モータ端子電圧(DQ軸出力電圧)は増加に転じる。
これらのモータ端子電圧の関係は、図5に示ように、横軸を回転数にとると、軽負荷時のモータ端子電圧Vml0(電流値最小位相角θIdq0)、無負荷時のモータ端子電圧Vmn、最大トルク時のモータ端子電圧Vmh、という順にモータ端子電圧が増加する。
インバータ制御装置1では、DQ軸電流位相角θIdqをDQ軸電流位相角指令θIdq*に従って変化させることで、軽負荷時のDQ軸電流位相角θIdqを電流値最小位相角θIdq0よりもQ軸に近づける方向に調整する。これにより、軽負荷時のモータ端子電圧Vmlは、無負荷時のモータ端子電圧Vmnに近い値まで増加する。このように、軽負荷時のモータ端子電圧Vmlを増加させることにより、電動機2の損失を低減する。
次に、位相制限値θlimにより、DQ軸電流位相角θIdqをQ軸に近づける制限をする理由について説明する。
モータ損失の点では、高速回転中のモータ損失の大部分は、銅損ではなく鉄損が占める。電動機2にD軸電流Idを流すことにより、モータ端子電圧に大きく寄与するギャップ磁束の基本波成分を増減させることができる。しかし、D軸電流Idを流しても、ギャップ磁束の低次高調波成分までは、制御することができない。このため、D軸電流Idを流すことで、ギャップ磁束の歪みが増加して、鉄損が増加する場合がある。
例えば、インバータ8の出力電圧が飽和すると、マイナスのD軸電流Idを流し、ギャップ磁束の基本波成分を低減する弱め界磁制御が行われる。この場合、ギャップ磁束の歪みは大きくなり、電動機2の低次高調波損失が増加する場合がある。また、プラスのD軸電流Idを流し過ぎても、その歪みにより損失が増加することがある。
即ち、出力電圧飽和が生じない又は出力電圧が丁度飽和する動作点で、DQ軸電流位相角θIdqをQ軸に近づける方向に調整することで、電動機2のモータ損失の低減が期待できる。
従って、インバータ制御装置1では、DQ軸電流位相角θIdqの制御により、出力電圧飽和状態よりもさらにインバータ8の出力電圧が上昇しないように、位相制限値θlimで制限する。これにより、インバータ制御装置1は、弱め界磁制御をしないように、DQ軸電流位相角θIdqの制御をすることができる。
本実施形態によれば、電動機2のトルク指令Tm*に基づいて、DQ軸電流位相角θIdqを変化させることで、モータドライブ装置10の全体の損失を低減することができる。
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係るモータドライブ装置10Aの構成を示す構成図である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係るモータドライブ装置10Aの構成を示す構成図である。
モータドライブ装置10Aは、図1に示す第1の実施形態に係るモータドライブ装置10において、直流電圧検出器13、交流電流検出器14、交流電圧検出器15、及びコンバータ制御装置9を追加した構成である。インバータ制御装置1は、予め設定された直流電圧指令Vdc0*の代わりにコンバータ制御装置9で演算される直流電圧指令Vdc*を用いる。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
直流電圧検出器13は、インバータ8に入力される直流リンクの直流電圧Vdcを検出する。直流電圧検出器13は、検出した直流電圧Vdcをコンバータ制御装置9に出力する。
交流電流検出器14は、コンバータ6の交流側の交流電流Isを検出する。交流電流検出器14は、検出した交流電流Isを電流制御部95に出力する。
交流電圧検出器15は、主変圧器5の1次側の交流電圧Vsを検出する。交流電圧検出器15は、検出した交流電圧Vsをコンバータ制御装置9に出力する。
コンバータ制御装置9は、直流電圧検出器13により検出された直流電圧Vdc、交流電流検出器14により検出された交流電流Is、及び交流電圧検出器15により検出された交流電圧Vsに基づいて、コンバータ6を制御する。これにより、インバータ8に入力される直流リンクの直流電圧Vdcが制御される。
コンバータ制御装置9は、直流電圧下限演算部91と、直流電圧指令演算部92と、減算器93と、電圧制御部94と、電流制御部95と、PWM制御部96とを備える。
直流電圧下限演算部91には、交流電圧検出器15により検出された主変圧器5の1次側の交流電圧Vsが入力される。直流電圧下限演算部91は、入力された交流電圧Vsに基づいて、直流リンクに印加される直流電圧Vdcの下限値Vminを演算する。直流電圧下限演算部91は、演算した直流電圧下限値Vminを減算器93及びインバータ制御装置1の直流電圧指令演算部92に出力する。
直流電圧指令演算部92には、トルク指令Tm*、直流電圧下限演算部91により演算された直流電圧下限値Vmin、及び回転数演算部27により演算された回転数Nrが入力される。直流電圧指令演算部92は、トルク指令Tm*、直流電圧下限値Vmin、及び回転数Nrに基づいて、直流電圧Vdcを制御するための直流電圧指令Vdc*を演算する。直流電圧指令Vdc*は、直流電圧下限値Vminよりも大きい値にする。直流電圧指令演算部92は、演算した直流電圧指令Vdc*を減算器93及びインバータ制御装置1のDQ軸電流位相角指令演算部21に出力する。
減算器93には、直流電圧指令演算部92により演算された直流電圧指令Vdc*及び直流電圧検出器13により検出された直流電圧Vdcが入力される。減算器93は、直流電圧指令Vdc*から直流電圧Vdcを減算して、偏差を算出する。減算器93は、演算した直流電圧指令Vdc*と直流電圧Vdcとの偏差を電圧制御部94に出力する。
電圧制御部94は、減算器93により演算された偏差が零になるように、コンバータ6の交流電流Isの振幅指令IsAMP*を制御する。電圧制御部94は、演算した制御結果である振幅指令IsAMP*を電流制御部95に出力する。
電流制御部95には、交流電流検出器14により検出されたコンバータ6の交流電流Is、交流電圧検出器15により検出された交流電圧Vs、及び電圧制御部94により演算された振幅指令IsAMP*が入力される。電流制御部95は、交流電圧Vsに基づいて、位相を算出して、集電装置3が供給を受ける交流電源と同相になるように、交流電流指令を演算する。電流制御部95は、コンバータ6の交流電流Isが演算した交流電流指令と一致するように、コンバータ交流電圧指令Vc*を演算する。電流制御部95は、演算したコンバータ交流電圧指令Vc*をPWM制御部96に出力する。
PWM制御部96は、電流制御部95により演算された交流電圧指令Vc*に基づいて、コンバータ6のスイッチング素子をPWM制御するためのゲート信号を生成する。このゲート信号により、コンバータ6から出力される直流電圧Vdcは、直流電圧指令Vdc*に追従するように制御される。これにより、直流リンクの直流電圧Vdcは、主変圧器5の2次電圧のピーク値(波高値)より高い電圧に制御される。
次に、直流電圧指令演算部92により演算される直流電圧指令Vdc*について説明する。
図7は、本実施形態に係る直流電圧指令Vdc*を示すグラフ図である。図7は、図2に示すグラフ図に、直流電圧指令Vdc*を加えたものである。図7に示す直流電圧指令Vdc*は、モータ端子電圧相当に換算した値で図示している。
コンバータ6のような、単相交流電圧を入力し直流電圧を出力するコンバータ方式の場合、入力される交流電圧の主変圧器5の2次換算値のピーク値以上の直流電圧Vdcを出力する必要がある。そこで、コンバータ制御装置9は、主変圧器5の1次側の交流電圧(架線電圧)Vsに基づいて、直流電圧Vdcの下限値Vminを演算して、この下限値Vminの範囲内で、直流電圧Vdcを低下させる。なお、直流電圧Vdcの上限値は、最大トルク時に必要となる電圧値であり、即ち、第1の実施形態に係る直流電圧指令Vdc0*である。
ここで、モータドライブ装置10Aの損失の低減について説明する。
コンバータ6及びインバータ8のスイッチングに起因する高次高調波鉄損は、入力される直流電圧Vdcが高いほど大きい。また、コンバータ6及びインバータ8のスイッチング損失は、入力される直流電圧Vdcが高いほど大きい。
コンバータ制御装置9は、直流電圧指令Vdc*に従って、インバータ8に入力される直流電圧Vdcを最大トルク時に必要な電圧よりも低下させることで、電動機2の鉄損、又はコンバータ6及びインバータ8のスイッチング損失を低減する。
また、直流電圧Vdcが低下し、変調率が1に近づく条件(即ち、出力電圧飽和の条件)になった場合、インバータ制御装置1は、インバータ8を1パルス運転又は3パルス運転などの低パルス運転をさせてもよい。これにより、インバータ8のスイッチング損失がさらに低減される。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
モータドライブ装置10Aは、コンバータ制御装置9により、インバータ8に入力される直流電圧Vdcを低下させることで、電動機2の鉄損、又はコンバータ6及びインバータ8のスイッチング損失を低減することができる。
なお、各実施形態では、モータドライブ装置10,10Aを鉄道車両に用いた場合について説明したが、電気自動車に用いてもよい。電気自動車に用いる場合は、インバータ8に供給する直流電力をコンバータ6の代わりに蓄電池などの直流電力を出力する別の電源を用いてもよい。
第2の実施形態において、インバータ8に入力される直流電圧Vdcは、システム(装置)構成又は外部条件によって制限される場合がある。従って、直流電圧下限演算部91により演算される直流電圧Vdcの下限値Vminの演算方法は、適用するシステムによって適宜変更してよい。このように変更されたシステムでも、インバータ8に入力される直流電圧Vdcを可能な範囲で下げるように制御することで、第2の実施形態と同様に、電動機2の鉄損、又はコンバータ6及びインバータ8のスイッチング損失を低減することができる。
各実施形態において、DQ軸電流位相角θIdqの制御方法は、説明したものに限らない。例えば、第2の実施形態のように、インバータ8に入力される直流電圧Vdcを可変に制御できる場合、モータ端子電圧もD軸電流Idにより制御することができることから、DQ軸電流位相角θIdqを決定する上で、二つの自由度が存在する。この両者の最適条件は、システム、機器、又は外部条件などに拠るものである。従って、回転数、トルク、又は設定可能な直流電圧(第2の実施形態では、架線電圧に依存する)などを入力として、システムの損失が最小化するように決定すればよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…インバータ制御装置、2…電動機、3…集電装置、4…車輪、5…主変圧器、6…コンバータ、7…平滑コンデンサ、8…インバータ、10…モータドライブ装置、11…位置検出器、12…交流電流検出器。
Claims (7)
- リラクタンストルクと磁石トルクを併用する電動機と、
前記電動機を駆動するための電力を供給するインバータと、
前記電動機に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記電動機の磁石方向をD軸とし、前記D軸と垂直方向をQ軸とし、前記電動機のトルクを制御するためのトルク指令に基づいて、前記モータ電流の前記D軸と前記Q軸からなるDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、前記電動機の最大トルクを最小の前記モータ電流で得るための電流値最小位相と前記Q軸との間の値で、演算する電流位相角指令演算手段と、
前記電流位相角指令演算手段により演算された前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記モータ電流を制御するための前記DQ軸座標の電流指令を演算する電流指令演算手段と、
前記電流指令演算手段により演算された前記電流指令に基づいて、前記モータ電流検出手段により検出された前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御するインバータ制御手段と
を備えることを特徴とするモータドライブ装置。 - 前記電流位相角指令演算手段は、前記電動機に発生するモータ電圧が、前記電動機のトルクの無負荷時よりも低い場合に、前記モータ電圧が高くするように前記電流位相角指令を演算すること
を特徴とする請求項1に記載のモータドライブ装置。 - 交流電力を前記インバータに供給するための直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータから出力される直流電圧を制御する直流電圧制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータドライブ装置。 - 前記直流電圧制御手段は、前記トルク指令が前記最大トルクでない場合、前記最大トルクに必要な電圧よりも低い電圧に、前記直流電圧を低下させること
を特徴とする請求項3に記載のモータドライブ装置。 - 前記コンバータに印加される交流電圧を検出する交流電圧検出手段と、
前記交流電圧検出手段により検出された交流電圧に基づいて、前記コンバータから出力される直流電圧の下限値を演算する直流電圧下限値演算手段とを備え、
前記直流電圧制御手段は、前記コンバータから出力される直流電圧を前記直流電圧の下限値以上に制御すること
を特徴とする請求項4に記載のモータドライブ装置。 - リラクタンストルクと磁石トルクを併用する電動機を駆動するための電力を供給するインバータを制御するインバータ制御装置であって、
前記電動機に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記電動機の磁石方向をD軸とし、前記D軸と垂直方向をQ軸とし、前記電動機のトルクを制御するためのトルク指令に基づいて、前記モータ電流の前記D軸と前記Q軸からなるDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、前記電動機の最大トルクを最小の前記モータ電流で得るための電流値最小位相と前記Q軸との間の値で、演算する電流位相角指令演算手段と、
前記電流位相角指令演算手段により演算された前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記モータ電流を制御するための前記DQ軸座標の電流指令を演算する電流指令演算手段と、
前記電流指令演算手段により演算された前記電流指令に基づいて、前記モータ電流検出手段により検出された前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御するインバータ制御手段と
を備えることを特徴とするインバータ制御装置。 - リラクタンストルクと磁石トルクを併用する電動機を駆動するための電力を供給するインバータを制御するインバータ制御方法であって、
前記電動機に流れるモータ電流を検出し、
前記電動機の磁石方向をD軸とし、前記D軸と垂直方向をQ軸とし、前記電動機のトルクを制御するためのトルク指令に基づいて、前記モータ電流の前記D軸と前記Q軸からなるDQ軸座標の位相角に対する指令である電流位相角指令を、前記電動機の最大トルクを最小の前記モータ電流で得るための電流値最小位相と前記Q軸との間の値で演算し、
演算した前記電流位相角指令及び前記トルク指令に基づいて、前記モータ電流を制御するための前記DQ軸座標の電流指令を演算し、
演算した前記電流指令に基づいて、検出した前記モータ電流を制御するように、前記インバータを制御すること
を含むことを特徴とするインバータ制御方法。
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