JP2014173678A - 密封装置 - Google Patents

Abstract

【課題】密封装置が外輪に固定されることによるデフレクタの環状突部の変形を防止すること。
【解決手段】上記課題を解決する密封装置１０は、外輪２の端部内周面２０に嵌合して外輪２に固定される円筒部１６及び当該円筒部１６から径方向外方へ延びて外輪２の軸方向端面２０に当接する外円環部１７を有する芯金１１を備えている。また、外円環部１７に固定されている外固定部３５と、当該外固定部３５からフランジ８の側面２８に近づく側に延びて当該側面２８に隙間を有して対向する環状突部４１、及び、外固定部３５からフランジ８の側面２８と離れる側へ延びて外輪２の端部外周面２２ａに当接する円筒状の外リップ部４５とで構成されるデフレクタ４０を備えている。そして、芯金１１は、デフレクタ４０の内部において、外円環部１７からフランジ８の側面２８に近づく側に延びる環状部１５を備えている。
【選択図】 図２

Description

本発明は、車輪用転がり軸受装置が備えている内軸と外輪との間の環状空間に装着され、この環状空間に泥水（異物）が浸入するのを防ぐ密封装置に関する。

自動車等の車両に搭載され車輪を回転可能に支持する車輪用転がり軸受装置は、同心状に配置された径方向内側の内軸と径方向外側の外輪とを備えており、これら内軸と外輪との間に介在する転動体（玉やテーパローラ）によって、例えば、外輪に対して内軸が回転可能となる。内軸の軸方向端部には、径方向外方へ延びたフランジが設けられており、このフランジに車輪及びブレーキディスクが取り付けられる。

このような車輪用転がり軸受装置では、内軸と外輪との間に形成され転動体が配設されている環状空間に泥水（異物）が浸入するのを防ぐために、この環状空間の軸方向両端部に密封装置が装着されている。

環状空間１０９の軸方向車両外側Ａ２（図１参照）の端部に装着されている密封装置１１０として、図３に示すように、外輪１０２の端部内周面１２１に嵌合している芯金１１１と、この芯金１１１に固定されているシール部材１１２とを備えたものがある。

この芯金１１１は、外輪１０２の端部内周面１２１に嵌合して当該外輪１０２に固定される円筒部１１６、及び、当該円筒部１１６から径方向外方へ延びて外輪１０２の軸方向端面１２０に当接する外円環部１１７を有している。
また、シール部材１１２は、弾性部材からなり、第１シール部１１３と第２シール部１１４とで構成されている。第１シール部１１３は、円筒部１１６に固定されている内固定部１３０、及び、当該内固定部１３０から延びて内軸１０３に設けられているシール面１０６ａ，１２８ａに摺接する内リップ部１３１，１３２，１３３を有している。第２シール部１１４は、外円環部１１７に固定されている外固定部１３５、及び、当該外固定部１３５から軸方向に延びる円筒状のデフレクタ１４０を有している。デフレクタ１４０は、フランジ１０８の側面１２８に近づく側に延びて当該側面１２８に隙間を有して対向する環状突部１４１と、外固定部１３５からフランジ１０８の側面１２８と離れる側へ延びて外輪１０２の端部外周面１２２ａに当接する円筒状の外リップ部１４５とで構成されている。また、外リップ部１４５の先端部（軸方向端部）の内周部には、径方向内側へ突出する環状の突条部１４８が形成されている。

この密封装置１１０は、内リップ部１３１，１３２，１３３により、フランジ１０８の側面１２８ｂと外輪１０２の軸方向端面１２０との間の隙間Ｓを通った泥水が、転動体１０４が配設されている環状空間１０９へ浸入するのを防ぐことができる。
また、密封装置１１０は、外周面１２２上をフランジ１０８の側面１２８に向かって流れてくる泥水を、外リップ部１４５の先端面１４６（軸方向端面）で堰き止めて外輪１０２の周方向に沿って下方へ流すことで、泥水が隙間Ｓから侵入するのを抑制できる。

しかし、芯金１１１の円筒部１１６を外輪１０２の端部内周面１２１に嵌合して、外リップ部１４５が外輪１０２の端部外周面１２２ａに当接するように前記密封装置１１０を固定すると、環状突部１４１がフランジ１０８の側面１２８方向且つ径方向内方に向かって、すなわち図３において略右下方向に向かって変形することがある。このような変形が生じると環状突部１４１の先端面１４２（軸方向端面）とデフレクタ１０８の側面１２８ｂとの間隔ｓ１が狭くなって泥、砂、小石等の異物が詰まり易くなり、車輪用転がり軸受装置に不具合が生じる虞がある。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、密封装置が外輪に固定されることによるデフレクタの環状突部の変形を防止できる密封装置を提供することを目的とする。

上記目的を達成する本発明は、同心状に配置された内軸と外輪とを備え、当該外輪の軸方向端面に隙間を有して対向する側面を有したフランジが前記内軸の端部に設けられた車輪用転がり軸受装置に用いられ、前記内軸と前記外輪との間の環状空間に泥水が浸入するのを防ぐ密封装置であって、
前記外輪の端部内周面に嵌合して当該外輪に固定される円筒部及び当該円筒部から径方向外方へ延びて前記外輪の軸方向端面に当接する外円環部を有する芯金と、
前記円筒部に固定されている内固定部と、当該内固定部から延びて前記内軸に設けられているシール面に摺接する内リップ部と、を有する第１シール部と、
前記外円環部に固定されている外固定部と、当該外固定部から前記フランジの前記側面に近づく側に延びて当該側面に隙間を有して対向する環状突部、及び、前記外固定部から前記フランジの前記側面と離れる側へ延びて前記外輪の端部外周面に当接する円筒状の外リップ部とで構成されるデフレクタと、を有する第２シール部と、を備え、
前記芯金は、前記デフレクタの内部において、前記外円環部から前記フランジの前記側面に近づく側に延びる環状部を備えていることを特徴とする。

本発明の密封装置において、芯金は外円環部からフランジの側面に近づく側に延びる環状部をデフレクタの内部に備えているので、デフレクタの環状突部が変形し難い。したがって、密封装置が外輪に固定されることによる環状突部の変形を防止することができる。その結果、環状突部の先端面（軸方向端面）とフランジの側面との間隔が狭くなって異物が詰まることを回避することができる。

本発明の密封装置によれば、密封装置が外輪に固定されることによるデフレクタの環状突部の変形を防止することができる。

本発明の一実施形態に係る密封装置が装着されている車輪転がり軸受装置の断面説明図である。 本発明の一実施形態に係る密封装置の断面説明図である。 従来の密封装置の断面説明図である。

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図１は、本発明の一実施形態に係る密封装置１０が用いられている車輪用転がり軸受装置１を示す断面説明図である。また、図２は、図１における密封装置１０の断面説明図である。図２では、外輪２及び内軸３（フランジ８及び軸本体部６）を二点鎖線により示している。図１に示すように、車輪用転がり軸受装置１（以下、単に「軸受装置」ともいう。）は、自動車の車体に設けられている懸架装置に対して車輪を回転可能に支持するためのものであり、径方向外側の外輪２と径方向内側の内軸３とを備えている。

外輪２は円筒形状の部材であり、車体側の懸架装置の一部５０に固定される。
内軸３は、軸本体部６と、この軸本体部６の車両内側Ａ１の端部に外嵌して固定されている環状の内輪部材７とを有している。外輪２と内軸３との間には２列で且つ各列に複数の玉４が介在している。外輪２と内軸３とは同心状に配置され、本実施形態では、外輪２に対して内軸３が回転自在となる。また、この軸受装置１は、複数の玉４を保持する保持器５を備えている。

内軸３の車両外側Ａ２の端部には、車輪及びブレーキディスク（図示せず）を取り付けるためのフランジ８が設けられている。このフランジ８が有する一方の側面２８の一部は、外輪２の軸方向端面２０と、隙間Ｓを有して対向している。
以上の構成により、軸受装置１は、複列のアンギュラ玉軸受を構成し、図示しない車輪及びブレーキディスクをフランジ８において固定した内軸３を、車両に対して回転可能に支持することができる。

ここで、フランジ８の側面２８を詳細に説明する。図２に示すように、側面２８は、軸本体部６の外周面６ａと滑らかに連続する第１側面２８ａと、この第１側面２８ａの径方向外方において第１側面２８ａよりも軸方向車両外側Ａ２に設けられている第２側面２８ｂと、この第２側面２８ｂの径方向外方において第２側面２８ｂよりもさらに軸方向車両外側２Ａに設けられている第３側面２８ｃとを有している。第１側面２８ａと第２側面２８ｂとの間には鈍角の第１角部２９ａが形成されており、第２側面２８ｂと第３側面２８ｃとの間には略直角の第２角部２９ｂが形成されている。第１側面２８ａは第１角部に至るまで滑らかに連続しており、第２側面２８ｂは第１角部２９ａから第２角部２９ｂに至るまで滑らかに連続している。また、フランジ８の側面２８は第２側面２８ｂと第３側面２８ｃとの間に外周面２８ｄを有しており、外周面２８ｄと第３側面２８ｃとは滑らかに連続している。

外輪２の軸方向両端部と内軸３との間には、密封装置１０，６０が取り付けられている。これら密封装置１０，６０は、外輪２の径方向外側から外輪２と内軸３との間に形成される環状空間９に泥水（異物）が浸入するのを防ぐ役割を有する。そして、これら密封装置１０，６０のうち、車両外側Ａ２の密封装置１０に、以下の実施形態に係る密封装置が用いられている。
密封装置１０は、外輪２の軸方向一端部に固定されている円環状の芯金１１と、この芯金１１に取り付けられた第１シール部１３及び第２シール部１４を有するシール部材１２とを備えている。

芯金１１は、ＳＰＣＣ等の鋼板をプレス加工することによって環状に形成されている。芯金１１は、外輪２の端部内周面２１に嵌合して外輪２に固定されている円筒部１６と、この円筒部１６の軸方向車両外側Ａ２の端部から径方向外方へ延びて外輪２の軸方向端面２０に当接する外円環部１７とを有している。また、芯金１１は、外円環部１７の径方向外側の端部から軸方向のフランジ８の側面２８に近づく側（軸方向車両外側Ａ２）に延びる環状部１５を有している。この環状部１５は、全周に亘って連続的に形成されている。さらに、芯金１１は、円筒部１６の軸方向車両内側Ａ１の端部に連続する屈曲部１８と、この屈曲部１８から径方向内方へ延びる内円環部１９とを有している。

外円環部１７は、外輪２の軸方向端面２０に当接することで、密封装置１０全体を軸方向に関して位置決めする。また、外円環部１７は、軸方向端面２０に当接した状態で、フランジ８の第２側面２８ｂと、シール部材１２の一部（後述の外固定部３５）を挟んで、対向した配置となる。

シール部材１２は、ニトリルゴム等の弾性材を円環状に形成したものであり、芯金１１に加硫接着している。シール部材１２のうち、第１シール部１３は、芯金１１の円筒部１６、屈曲部１８及び内円環部１９に固定されている部分であり、また、第２シール部１４は、芯金１１の外円環部１７に固定されている部分及びその径方向外側の部分である。なお、本実施形態では、第１シール部１３と第２シール部１４とは一体である。

シール部材１２を詳細に説明すると、第１シール部１３は、芯金１１の円筒部１６、屈曲部１８及び内円環部１９に固定されている内固定部３０と、この内固定部３０から内軸３に向かって延びている内リップ部３１，３２，３３とを有している。そして、内リップ部３１，３２，３３は、内軸３に設けられているシール面に摺接する。

本実施形態では、第１の内リップ部３１が摺接するシール面は、フランジ８の側面２８（第１側面２８ａ）であり、第２及び第３の内リップ部３２，３３が摺接するシール面は、軸本体部６の外周面６ａである。これら内リップ部３１，３２，３３は、外輪２の径方向外方（つまり、外部）の泥水、砂、小石等の異物が浸入するのを防止する機能、及び、環状空間９に設けられている玉４用の潤滑剤が外部へ漏れるのを防止する機能を有している。

第２シール部１４は、芯金１１の外円環部１７に固定されている外固定部３５と、この外固定部３５と一体であるデフレクタ４０とを有している。外固定部３５は、外円環部１７のフランジ８側に固定されている。デフレクタ４０は、外固定部３５の径方向外側の端部から軸方向のフランジ８の側面２８に近づく側に延びる環状突部４１と、外固定部３５の径方向外側の端部から軸方向のフランジ８の側面２８と離れる側へ延びる外リップ部４５とで構成されている。デフレクタ４０は、数ミリ程度の厚さを有する円筒状に形成されている。芯金１１の環状部１５は、デフレクタ４０の内部に配設されており、外円環部１７の径方向外側の端部からデフレクタ４０の径方向中央部分まで径方向外方に延びて、デフレクタ４０の径方向中央部分においてさらにフランジ８の側面２８に近づく側に軸方向に沿って延びている。

デフレクタ４０の環状突部４１は、環状に形成されており、その先端部４２がフランジ８の側面２８と隙間を有して対向している。本実施形態では、先端部４２の内周縁４２ａは、図２に示すように、側面２８の第２角部２９ｂよりもやや径方向内側に位置しており、先端部４２は、内周縁４２ａ側の端部のみが第２側面２８ｂと対向している。このような配置とすることで外周面２８ｄに対してデフレクタ４０上を通過した泥水が降りかかる。そして、外周面２８ｄに降りかかった泥水は、遠心力により径方向外方へ飛ばされるので、泥水が隙間Ｓから浸入することを抑制できる。また、車両下側において、隙間Ｓから水が抜け易く、隙間Ｓに水が滞留することを防止できる。

密封装置１０を外輪２に装着した状態で、先端部４２の内周縁４２ａと側面２８の第２角部２９ｂとの軸方向の間隔ｓ１は、例えば１．０ｍｍ程度である。この程度の間隔を生じさせることで、高速回転（例えば１０００ｒｐｍ）時において、その内周面はこの先端部４２の内周縁４２ａとフランジ８の第２角部２９ｂとの間付近に表面張力による水の膜が形成され、この水の膜により泥水が内リップ部３１側へ浸入するのを防ぐことができる。

デフレクタ４０の外リップ部４５は、円筒状（環状）に形成されており、外輪２の端部外周面２２ａに当接している。外リップ部４５の軸方向端面、すなわちデフレクタ４０における軸方向車両内側Ａ１の端面には、端面溝４６が形成されている。端面溝４６は、外リップ部４５の周方向に沿って全周に亘って設けられている。また、端面溝４６は、軸方向車両外側Ａ２に向かって凹状に形成されている。
また、デフレクタ４０の外周面には、周面溝４７が軸方向に等間隔に複数（図示例では５つ）形成されている。周面溝４７は、外リップ部４５の周方向に沿って全周に亘って設けられている。また、周面溝４７は、径方向内側に向かって凹状に形成されている。

そして、外リップ部４５の先端部の内周部に、径方向内方へ突出した環状の突条部４８が形成されており、この突条部４８が外輪２の端部外周面２２ａに当接している。さらに、この突条部４８よりも外リップ部４５の基端側の部分は、端部外周面２２ａとの間に隙間が形成されている。これにより、突条部４８を端部外周面２２ａに全周にわたって線接触させることができ、密封性能を高めることが可能となる。

上述の実施形態に係る密封装置１０において、芯金１１は、外円環部１７の径方向外側の端部からデフレクタ４０の径方向中央部分まで径方向外方に延びて、さらにフランジ８の側面２８に近づく側に軸方向に沿って延びる環状部１５を、デフレクタ４０の内部に有している。これにより、デフレクタ８の環状突部４１が変形し難い。したがって、芯金１１の円筒部１６を外輪２の端部内周面２１に嵌合して、突条部４８が外輪２の端部外周面２２ａに当接することで密封装置１０が固定されることによる環状突部４１の変形を防止することができる。詳しくは、環状部１５がなければ、環状突部４１がフランジ８の側面２８方向且つ径方向内方に向かって、すなわち図２において略右下方向に向かって０．１ｍｍ程度変形することがあるが、環状部１５を備えることによりこのような変形を防止できる。その結果、環状突部４１の先端面４２（軸方向端面）とフランジ８の側面２８との間隔が狭くなって異物が詰まることを回避することができる。

［変形例］
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、環状部１５は、デフレクタ４０の内部であれば任意の軸方向寸法を有することができ、デフレクタ４０の環状突部４１の先端近傍まで達していてもよい。また、環状部１５は、全周に亘って形成されていなくともよく、周方向に沿って飛び飛びに形成されていてもよい。
さらに、環状突部４１における先端部４２の内周縁４２ａは、第２角部２９ｂと径方向位置が一致していてもよい。この場合、車両下側において、フランジ８の側面２８と外輪２の軸方向端面２０との間の隙間Ｓから水がさらに抜け易くなり、隙間Ｓに水が滞留することを防止できる。

１：車輪用転がり軸受装置、２：外輪、３：内軸、６ａ，２８ａ：シール面、８：フランジ、９：環状空間、１０：密封装置、１１：芯金、１３：第１シール部、１４：第２シール部、１５：環状部、１６：円筒部、１７：外円環部、２０：外輪の軸方向端面、２１：外輪の端部内周面、２２ａ：外輪の端部外周面、２８：側面、３０：内固定部、３１，３２，３３：内リップ部、３５：外固定部、４０：デフレクタ、４１：環状突部、４５：外リップ部、Ｓ：隙間

Claims (1)

1. 同心状に配置された内軸と外輪とを備え、当該外輪の軸方向端面に隙間を有して対向する側面を有したフランジが前記内軸の端部に設けられた車輪用転がり軸受装置に用いられ、前記内軸と前記外輪との間の環状空間に泥水が浸入するのを防ぐ密封装置であって、
   前記外輪の端部内周面に嵌合して当該外輪に固定される円筒部及び当該円筒部から径方向外方へ延びて前記外輪の軸方向端面に当接する外円環部を有する芯金と、
   前記円筒部に固定されている内固定部と、当該内固定部から延びて前記内軸に設けられているシール面に摺接する内リップ部と、を有する第１シール部と、
   前記外円環部に固定されている外固定部と、当該外固定部から前記フランジの前記側面に近づく側に延びて当該側面に隙間を有して対向する環状突部、及び、前記外固定部から前記フランジの前記側面と離れる側へ延びて前記外輪の端部外周面に当接する円筒状の外リップ部とで構成されるデフレクタと、を有する第２シール部と、を備え、
   前記芯金は、前記デフレクタの内部において、前記外円環部から前記フランジの前記側面に近づく側に延びる環状部を備えていることを特徴とする密封装置。

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