JP2014172017A - 重力沈降槽および無灰炭の製造方法 - Google Patents
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【解決手段】重力沈降槽4は、石炭と溶剤とを混合および加熱してなるスラリーに含まれる固形分を沈降させて固形分濃縮液と上澄み液とに分離する圧力容器11と、圧力容器11にスラリーを供給する供給管12とを備える。そして、供給管12の先端部に形成されスラリーが吐出するノズル部31が、圧力容器11の内部に配置され、ノズル部31との間に間隙を有するように、ノズル部31の外周には外管13が設けられている。その結果、スラリー中に含まれる気泡は、ノズル部31と外管13との間隙に沿って上昇して気層21に逃げ、気泡による固形分の沈降の乱れが抑制される。
【選択図】図2
Description
無灰炭の製造装置1は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製槽2と、調製されたスラリーを加熱して溶剤可溶成分を抽出する抽出槽3と、溶剤可溶成分が抽出されたスラリーに含まれる固形分を沈降させて固形分濃縮液と上澄み液(溶剤可溶成分を含む溶液部)とに分離する重力沈降槽4と、分離された上澄み液から溶剤を蒸発分離して無灰炭(HPC:Hyper coal)を得る溶剤分離器5と、分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭(RC:Residue coal)を得る溶剤分離器6とを有している。なお、溶剤分離器6は必要に応じて設置されるものであり、なくてもよい。
次に、重力沈降槽4について図2及び図3を参照しつつ説明する。図2は、図1に示す無灰炭の製造装置1に使用される重力沈降槽4の断面図であり、図3は、図2の要部拡大図である。重力沈降槽4は、図2に示すように、圧力容器11、供給管12、外管13、排気管14、上澄み液排出管15、及び排出口16を有しており、排気管14には圧力調整弁17が接続されている。
圧力容器11は、抽出槽3(図1参照)にて溶剤可溶成分が抽出されたスラリーを固形分濃縮液と上澄み液とに分離する容器であり、円筒状の胴部11aと、胴部11aの下端に接続され下部に向かうにつれて縮径する構成の底部11bとを有する。また、胴部11aの上端には、この上端を密閉する蓋部11cが設けられている。スラリーの分離により、圧力容器11の内部は3層に分かれている。3層とは、上層から気層21、上澄み液層22、固形分濃縮液層23である。気層21には、空気の他、石炭の熱分解反応により生じるメタン、二酸化炭素、水蒸気等のガスが含まれる。なお、圧力容器11の底部11bは、胴部11aと同様、円筒状であってもよい。また、圧力容器11は、円筒形状に限られず、他の形状であってもよい。
上澄み液排出管15は、上澄み液を圧力容器11から排出するための配管であり、蓋部11c(胴部11aでもよい)に貫設されている。上澄み液は、上澄み液排出管15の先端に設けられた上澄み液排出口15aより圧力容器11の外部へ排出される。一方、排出口16は圧力容器11の下部に沈降した固形分濃縮液を重力沈降槽4から排出するための排出口であり、底部11bの下端に設けられている。なお、排出口16は、排出管であってもよく、本願の排出口には、排出管が含まれるものとする。
供給管12は、抽出槽3(図1参照)にて溶剤可溶成分が抽出されたスラリーを圧力容器11に供給するための配管である。スラリーは、供給管12の先端部に形成され圧力容器11の内部に位置するノズル部31から吐出される。具体的には、ノズル部31の先端32(即ち、供給管12の先端)が下方に向けて開口しており、スラリーはこの開口32aから吐出される。なお、開口32aが設けられる箇所は、先端32のみに限られず、ノズル部31であればどこでもよい。供給管12は、蓋部11c(胴部11aや底部11bでもよい)に貫設されており、先端32が圧力容器11の高さ方向において中間部付近(胴部11aの下部側付近)に位置している。また、先端32の開口32aは、上澄み液排出管15の上澄み液排出口15aより下方、且つ、排出口16の排出口上端16aよりも上方に位置している。なお、先端32は、底部11b領域に位置していてもよいし、胴部11aの上部側付近(境界面24に近い上澄み液層22)に位置していてもよい。また、供給管12の断面は円形であるが多角形等であってもよい。さらに、先端32は下方を向いているが、先端32が上方を向いていてもよいし、横向きであってもよい。また、先端32の開口32aは、上澄み液排出口15aより上方に位置していてもよい。
外管13は、図3に示すように、外管13の内周面13aとノズル部31の外周面31a(単に周面とも言う)との間に間隙を有するようにノズル部31の外周に設けられている。ノズル部31からスラリーと共に吐出された気泡を当該間隙から気層21側に逃がすことで、気泡が圧力容器11の内部に拡散するのを防ぐ役目を果たしている。即ち、外管13をノズル部31の外周に設けることにより、スラリーを圧力容器11に供給しながら、スラリー中に含まれる気泡を気層21側に抜くことができる。外管13は、金具等により供給管12(圧力容器11でもよい)に支持されており、上端13b及び下端13cが開口した断面が円形の配管である。また、外管13は上下方向に配置されている。「上下方向」とは、ノズル部31と同様、単に鉛直方向を意味するものでなく、水平面に対して傾斜していることを意味する。即ち、外管13が水平面に沿って(水平方向に)配置されていることを除く意味である。「上下方向」は、鉛直方向に対して例えば±45°の範囲内が好ましく、特に±15°の範囲内が好ましい。鉛直方向に対する角度が小さいほど、気泡が当該間隙に入りやすくなるからである。また、外管13は、気層21と上澄み液層22(液層)との境界面24を横切るように配置されていると共に、下端13cから境界面24まで連続的に延在している(即ち、下端13cから境界面24までは、外管13の周面に孔などの気泡の逃げ口が設けられていない)。外管13の上端13bは気層21に位置しており、外管13の下端13cはノズル部31の先端32よりも下方に位置している。なお、外管13の内周面13aとノズル部31の外周面31aとの間の間隙の大きさ、及び、外管13の下端13cの位置は、気泡が圧力容器11内に拡散するのを防ぐ観点から適宜の大きさに設定される。
排気管14は、気層21内の気体を排気するための配管であり、蓋部11c(胴部11aでもよい)に貫設され、排気口が気層21に位置するように配置されている。排気管14には、気層21内の圧力を機械的に自動調整する圧力調整弁17が接続されている。圧力調整弁17は、圧力容器11内の圧力が規定値以上になると自動的に作動し、気体を外に排出して圧力を調整する。そして、圧力が規定値以下に降下すれば、再び弁体が閉じる機能を有する。このような弁としては、例えばバネ式、てこ式の弁がある。圧力調整弁17により、圧力容器11内の圧力を一定値以下に維持することができる。なお、圧力調整弁17の調整(開状態、閉状態でのロック等)は、ユーザが行うようにしてもよい。
次に、石炭の熱分解反応により発生したメタン、二酸化炭素、水蒸気等の気泡(ガス)の流れについて図2を参照しつつ説明する。抽出槽3(図1参照)等にて発生した気泡は、溶剤可溶成分が抽出されたスラリーと共に供給管12を流れ、ノズル部31の先端32の開口32aから圧力容器11(重力沈降槽4)の内部に吐出される。そして、当該気泡は浮力によりノズル部31と外管13との間の間隙に沿って気層21まで上昇し、気層21に滞留する。なお、気泡はノズル部31の先端32から吐出されるため、気泡の多くは一旦先端32よりも下方側に達した後に上昇する。したがって、外管13のうち、先端32よりも下方にある外管13が壁の役目を果たし、下方側に達した気泡が拡散して外管13よりも外側に流れることを抑制している。なお、気層21に滞留した気泡は、圧力調整弁17の操作により、排気管14から圧力容器11の外部に排出される。
次に図4を参照しつつ本発明に係る重力沈降槽の変形例を説明する。図4(a)に示す重力沈降槽4a(第1変形例)は、前記した重力沈降槽4に対して、ノズル部31の先端部分が水平方向に折り曲げられていると共に先端32が横向きである点で異なり、その他の点で同じである。ノズル部31の先端32が横向きであっても、重力沈降槽4と同様に、気泡が圧力容器11内に拡散することを抑制できる。また、図4(b)に示す重力沈降槽4b(第2変形例)は、前記した重力沈降槽4に対して、供給管12が圧力容器11の胴部11aに貫接されていると共に外管13に貫接されており、外管13に貫接された後に供給管12が折り曲げられることでノズル部31が形成されている点で異なり、その他の点で同じである。供給管12が胴部11a(底部11bでもよい)に貫設されている場合であっても、重力沈降槽4と同様に、気泡が圧力容器11内に拡散することを抑制できる。なお、図4(a)、(b)において、図中の掛線部は、変形例それぞれにおけるノズル部31の範囲を示す。また、その他の変形例として、例えばノズル部31の周面31aのうち、外管13の内周面13aと対向する部分に複数の孔が形成されていてもよい。複数の孔により、気泡を複数の孔からも気層21に逃がすことができる。
次に、無灰炭の製造方法について説明する。本発明に係る無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程、抽出工程、分離工程、および無灰炭取得工程を備え、必要に応じて副生炭取得工程をさらに備えるものである。
スラリー調製工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製する工程であり、スラリー調製槽2で行われる。
抽出工程は、スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱して、溶剤可溶成分を抽出する工程であり、抽出槽3で行われる。スラリー調製槽2で調製されたスラリーは、ポンプ(不図示)によって、抽出槽3に供給され、抽出槽3に設けられた攪拌機3aで攪拌されながら所定温度に加熱保持されて抽出が行われる。なお、スラリーは、一旦予熱器(不図示)に供給されて所定温度まで加熱された後、抽出槽3に供給されてもよい。
尚、上記の説明では非水素供与性化合物を溶剤として用いる場合について述べたが、テトラリンを代表とする水素供与性の化合物(石炭液化油を含む)を溶剤として用いても良いことは勿論である。水素供与性溶剤を用いた場合、無灰炭の収率が向上する。
分離工程は、抽出工程にて得られたスラリーから、前記した重力沈降槽(4、4a、4b)のいずれかを用いて、固形分濃縮液と上澄み液とに分離する工程である。前記した重力沈降槽(4、4a、4b)のいずれかを用いているので、石炭の熱分解反応により発生したメタン、二酸化炭素、水蒸気等のガス(気泡)による固形分の沈降の乱れが抑制され、固形分が十分に除去された上澄み液が得られる。重力沈降槽(4、4a、4b)から排出された上澄み液は、必要に応じて設置される濾過フィルター(不図示)で濾過された後、溶剤分離器5へ排出される。一方、固形分濃縮液は、溶剤分離器6へ排出される。
無灰炭取得工程は、分離工程にて分離された上澄み液から溶剤を蒸発分離して無灰炭を得る工程であり、溶剤分離器5で行われる。
副生炭取得工程は、必要に応じて実施され、前記分離工程にて分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程であり、溶剤分離器6で実施される。副生炭は残渣炭とも称される。
次に、本発明に係る重力沈降槽およびそれを用いた無灰炭の製造方法の効果について説明する。本発明の重力沈降槽においては、供給管12の先端部に形成されスラリーが吐出するノズル部31が圧力容器11の内部に配置されており、ノズル部31との間に間隙を有するように、ノズル部31の外周に外管13が設けられている。よって、スラリーと共にノズル部31から吐出された気泡は、ノズル部31と外管13との間の間隙に沿って上昇する。そのため、気泡が重力沈降槽の内部に拡散することが抑制される。したがって、気泡が重力沈降槽の下部に沈降した固形分を攪拌したり、固形分の沈降を阻害したりすることがなく、固形分の沈降の乱れが抑制される。
2 スラリー調製槽
3 抽出槽
4、4a、4b 重力沈降槽
5、6 溶剤分離器
11 圧力容器
12 供給管
13 外管
13a 内周面
13b 上端
13c 下端
14 排気管
15 上澄み液排出管
15a 上澄み液排出口
16 排出口
17 圧力調整弁
21 気層
22上澄み液層(液層)
24 境界面
31 ノズル部
31a 外周面(周面)
32 先端
32a 開口
Claims (6)
- 石炭と溶剤とを混合および加熱してなるスラリーに含まれる固形分を沈降させて固形分濃縮液と上澄み液とに分離する圧力容器と、
前記圧力容器に前記スラリーを供給する供給管とを備え、
前記供給管の先端部に形成され前記スラリーが吐出するノズル部が、前記圧力容器の内部に配置され、
前記ノズル部との間に間隙を有するように、前記ノズル部の外周には外管が設けられていることを特徴とする重力沈降槽。 - 前記ノズル部は、先端が開口し、
前記外管の下端は、前記先端よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の重力沈降槽。 - 前記上澄み液を前記圧力容器の外部に排出する上澄み液排出管と、
前記固形分濃縮液を前記圧力容器の外部に排出する排出口とを有し、
前記先端の開口は、前記上澄み液排出管の上澄み液排出口よりも下方、且つ、前記排出口よりも上方に位置していることを特徴とする請求項2に記載の重力沈降槽。 - 前記外管は、前記圧力容器内の上部の気層と前記上澄み液を含む液層との境界面を横切るように配置されており、且つ、前記外管の下端から前記境界面まで延在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重力沈降槽。
- 前記圧力容器に取り付けられ、前記圧力容器内の上部の気層から気体を排気する排気管と、
前記排気管に接続され、前記圧力容器内の圧力を調整する圧力調整弁とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の重力沈降槽。 - 石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリー調製工程にて調製されたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて前記石炭成分が抽出されたスラリーを、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重力沈降槽により、固形分濃縮液と上澄み液とに分離する分離工程と、
前記分離工程にて分離された上澄み液から溶剤を蒸発分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程とを備えることを特徴とする無灰炭の製造方法。
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