JP2014169208A - 水酸化アルミニウム粉末 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水銀圧入法により測定された、細孔半径Rが0.01μm以上1μm以下の範囲における累積細孔容積Vが、0.2mL/g以上1.0mL/g未満である水酸化アルミニウム粉末。該水酸化アルミニウム粉末は、かさ密度が高く、焼成効率が高いため、高純度アルミナを生産性高く製造することができる。
【選択図】図1
Description
<1> 水銀圧入法により測定された、細孔半径Rが0.01μm以上1μm以下の範囲における累積細孔容積Vが、0.2mL/g以上1.0mL/g以下である水酸化アルミニウム粉末。
<2> 水銀圧入法により測定された、細孔半径Rと対数微分細孔容積(dV/dlogR)で表したときの細孔分布曲線において、Rが0.01μm以上1μm以下の全ての範囲において、dV/dlogRが0.05mL/g以上0.5mL/g以下である前記<1>に記載の水酸化アルミニウム粉末。
<3> 軽装かさ密度が0.30g/mL以上0.60g/mL以下である前記<1>または<2>に記載の水酸化アルミニウム粉末。
<4> Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量が、アルミナ中の不純物に換算したときにそれぞれ10重量ppm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の水酸化アルミニウム粉末。
本発明の水酸化アルミニウム粉末は、水銀圧入法により測定された、細孔半径Rが0.01μm以上1μm以下の範囲における累積細孔容積Vが、0.2mL/g以上1.0mL/g未満、好ましくは0.2mL/g以上0.6mL/g未満である。
そのため、累積細孔容積Vが、上記範囲にあることで焼成効率を維持したまま効率的な粉砕が可能となる。
なお、「焼成効率」とは原料から焼成物を得るための効率であり、同一の焼成設備(焼成炉、容器)を用いた際に、1回の焼成処理により得られる焼成物の量が多いほど焼成効率が高くなる。具体的な焼成効率の評価方法は、実施例にて後述する。
Washburn の式; 細孔半径R(m)=−2γcosθ/P
P:圧力(Pa)
γ:水銀の表面張力(482×10-3N/m)
θ:水銀の接触角(140deg)
更にこの水酸化アルミニウム粉末を成形して、約1100℃〜約1400℃で焼成するとα−アルミナ粉末が得られる。このようなα−アルミナ粉末は、不純物濃度が低いため、時計窓やLED基板用サファイア等の単結晶材料などの用途に好適である。
以下、本発明の水酸化アルミニウム粉末の好適な製造方法を例示する。
本発明の水酸化アルミニウム粉末の好適な製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)は、アルミニウムアルコキサイドを含む溶液に、水濃度が5重量%以上80重量%以下であるアルコール水溶液を、水/アルミニウムアルコキサイドモル比が2.5以上7.0以下の範囲となるように添加して加水分解する工程と、加水分解後の混合液から水とアルコールを除去して、水酸化アルミニウム粉末を回収する工程を含む。
具体的には、水/アルミニウムアルコキサイドモル比が1.5以上2.0以下の範囲となるように添加して加水分解する第1の加水分解工程と、第1の加水分解後の混合液を攪拌熟成する工程、水またはアルコール水溶液を、水/アルミニウムアルコキサイドモル比が1.0以上7.0以下の範囲となるように添加して加水分解する第2の加水分解工程を経ることにより所望の物性が得られる。なお、ここでの水/アルミニウムアルコキサイドモル比は、第1の加水分解工程で添加した水と、アルミニウムアルコキサイド初期仕込み量とのモル比である。
また、第一加水分解後に溶媒の回収を行ってもよい。
この中でも、アルミニウムイソプロポキサイドが好適である。
本発明の製造方法で使用されるアルコールとしては、炭素数が1〜8、好ましくは1〜4の一価のアルコールが挙げられる。具体的には、下記式(i)で表されるアルコールが挙げられる。この中でも、イソプロピルアルコールが特に好ましい。なお、これらのアルコールは1種で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
R1OH (i)
ここで、R1は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ネオブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ノルマルヘプチル基、イソヘプチル基、ネオヘプチル基、ノルマルオクチル基、イソオクチル基及びネオオクチル基でからなる群より選ばれる1種であり、好ましくは炭素数1〜4のメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ネオブチル基であり、より好ましくはイソプロピル基である。
添加するアルコール水溶液中の水濃度は、5〜80重量%であり、好ましくは、5〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
アルコール水溶液中の水濃度が、5重量%未満であると加水分解が不十分になり、80重量%を超えると、アルミニウムアルコキサイドと十分に混合できる前に反応が進み、加水分解が不均一となるため、焼成後のアルミナ粉末に凝集粒子が発生しやすく、粉砕性を損なう。
第1の加水分解工程におけるアルミニウムアルコキサイドと水のモル比が、上記範囲から外れると、アルミニウムアルコキサイドの加水分解反応が不完全、あるいは、進行しすぎて第2の加水分解工程前に加水分解が進みすぎるため、目的とする物性の水酸化アルミニウム粉末が得られない。
アルコールを含む場合のアルミニウムアルコキサイドを含む溶液における、アルコールとアルミニウムアルコキサイドのモル比〔アルコール/アルミニウムアルコキサイド〕は、第1の加水分解工程における加水分解反応に悪影響を及ぼさない範囲であれば、特に制限はないが、通常、0〜1.5である。
第1の加水分解後の混合液からアルコールを分離回収した後に加水分解を行うことで、目的とする物性を有する水酸化アルミニウムが生成する。
なお、添加される水は、水単独で加えることが好ましいが、アルコール水溶液として添加してもよい。この場合、アルコール水溶液の濃度は、含有するアルコールが第2の加水分解工程における加水分解反応に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はなく、通常、水濃度として、5〜100重量%である。
また、第1加水分解後にアルコールを回収する場合の分離回収量は適宜必要量を回収すればよい。
αアルミナ焼成物の粉砕は、例えば振動ミル、ボールミル、ジェットミルなどの公知の装置を用いて行うことができ、乾式状態で粉砕する方法、および、湿式状態で粉砕する方法のいずれも採用することができるが、ジェットミルによる粉砕が好ましい。ジェットミルで粉砕した場合、αアルミナ粉末に含まれる20μm以上の粗大粒子の含有量を10ppm以下にすることができる。
媒体撹拌ミルなどを用いて粉砕する場合は、これに用いられる粉砕媒体も、高純度のαアルミナの材質で構成されていることが好ましい。
なお、試料物性の評価は、次のようにして行った。
測定に供する試料を乾燥機にて120℃で4時間乾燥し、乾燥後の重量を精秤して試料重量とした。乾燥後の試料を、細孔容積測定装置(MICROMERITICS社製「オートポアIII9420」)のセル内にセットし、セル系内を50μmHg以下にした後、水銀を系内に満たし、次いで、セルに0.007MPaから414MPaまで段階的に圧力を加えていき、水銀の圧入平衡待ち時間を10秒として、各圧力における水銀圧入量を測定した。
累積細孔容積(mL/g)は、0.007MPaから414MPaまで圧力を加えたときの総水銀圧入量(mL)を試料重量(g)で除することにより求めた。
細孔半径R(μm)は、上述したWashburnの式に基づき、各圧力Pにおける水銀圧入量から各圧力Pにおける細孔半径R(μm)を算出した。さらに横軸にWashburnの式に基づき算出した各圧力Pにおける細孔半径(R[μm])をとり、縦軸に各圧力Pにおける水銀圧入量(dV/dlogR[mL/g])をとって、上記測定結果をプロットすることにより細孔分布曲線を得た。
軽装かさ密度は、以下の方法で測定した。
10mLのメスシリンダーに9〜10mLの試料を投入し、試料の重量(g)を測定し、メスシリンダーに蓋をして逆さにし、元に戻して静かに自由落下させたときの試料の容積(mL)を測定する。逆さにして戻すことを3回繰り返し、平均の容積(mL)を求める。試料重量÷試料平均容積の値を軽装かさ密度(mL/g)とする。
試料を1100℃で約1時間か焼した後、Ultra Carbon粉末と混合し、アクリル球を用いて粉砕後、混合試料を固体発光分析法(THERMO Jarrell Ash CID−DCA AURORAを使用)により測定し、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量を求めた。
実験例の水酸化アルミニウム粉末の焼成効率は、同一の焼成容器にそれぞれの水酸化アルミニウム粉末を同一体積充填し、焼成後に得られる焼成物(アルミナ)の重量をそれぞれ比較することで評価した。
試料中の粗粒子量は、湿式篩法にて20μm以上の粗粒子を捕集し、その重量を測定することで求めた。
実験例1
アルミニウムイソプロポキサイド100.0重量部とイソプロピルアルコール11.1重量部の混合溶液に、水44.1重量部とイソプロピルアルコール176.2重量部のアルコール水溶液を添加して加水分解させた(水/アルミニウムアルコキサイドモル比=5.0)。
次いで、蒸留によりイソプロピルアルコールを分離回収した後に、更に水19.0重量部を添加して加水分解した(水/アルミニウムアルコキサイドモル比=2.1)。なお、加水分解工程終了後のスラリー中の水濃度は、12.8重量%であった。
得られた水酸化アルミニウムと水とイソプロピルアルコールを含む懸濁液中の水とイソプロピルアルコールを除去して、実験例1の水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末のX線回折法による評価を行ったところ、水酸化アルミニウム以外の結晶相は確認されなかった。
第1加水分解時の溶媒を水44.1重量部とイソプロピルアルコール44.1重量部のアルコール水溶液とした以外は実験例1と同様の方法で実験例2の水酸化アルミニウム粉末を得た。なお、加水分解工程終了後のスラリー中の水濃度は、20.0重量%であった。
得られた水酸化アルミニウム粉末のX線回折法による評価を行ったところ、水酸化アルミニウム以外の結晶相は確認されなかった。
第1加水分解時の溶媒を水44.1重量部とイソプロピルアルコール11.0重量部のアルコール水溶液とした以外は実験例1と同様の方法で実験例3の水酸化アルミニウム粉末を得た。なお、加水分解工程終了後のスラリー中の水濃度は、24.5重量%であった。
得られた水酸化アルミニウム粉末のX線回折法による評価を行ったところ、水酸化アルミニウム以外の結晶相は確認されなかった。
アルミニウムイソプロポキサイド100.0重量部とイソプロピルアルコール11.1重量部の混合溶液に、水15.0重量部とイソプロピルアルコール165.7重量部のアルコール水溶液を添加して加水分解させた(水/アルミニウムアルコキサイドモル比=1.7)。
次いで、蒸留によりイソプロピルアルコール99.3重量部を分離回収した後に、更に水24.9重量部とイソプロピルアルコール64.2重量部のアルコール水溶液を添加して加水分解した(水/アルミニウムアルコキサイドモル比=2.8)。なお、加水分解工程終了後のスラリー中の水濃度は、7.8重量%であった。
得られた水酸化アルミニウムと水とイソプロピルアルコールを含む懸濁液中の水とイソプロピルアルコールを除去して、実験例4の水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末のX線回折法による評価を行ったところ、水酸化アルミニウム以外の結晶相は確認されなかった。
第1加水分解時の溶媒を44.1重量部の水とし、かつ、第2加水分解時の溶媒を44.1重量部の水とした以外は実験例1と同様の方法で実験例5の水酸化アルミニウム粉末を得た。なお、加水分解工程終了後のスラリー中の水濃度は、30.7重量%であった。
得られた水酸化アルミニウム粉末のX線回折法による評価を行ったところ、水酸化アルミニウム以外の結晶相は確認されなかった。
(細孔分布曲線)
図1に実験例1〜5の水酸化アルミニウム粉末の細孔分布曲線を示す。
実験例1〜3の細孔分布曲線では、細孔半径R:0.01〜1μmの全ての範囲において、dV/dlogRが0.05mL/g以上0.5mL/g以下の範囲であった。
実験例4(比較例)の細孔分布曲線では、R:0.01〜1μmの範囲でdV/dlogRが0.5mL/gを超えていた。また、実験例5(比較例)の細孔分布曲線では、R:0.01〜1μmの範囲でdV/dlogRが0.05mL/gを下回っていた。
実験例1〜5の水酸化アルミニウム粉末の不純物濃度を測定した結果、アルミナ換算でSi=3ppm、Na<5ppm、Ca<1ppm、Fe=4ppm、Cu<1ppm、Mg<1ppmであった。
実験例1〜3及び実験例4(比較例)の水酸化アルミニウムを1350℃で3時間焼成し、得られたα-アルミナをジェットミル(セイシン企業製、Co−Jet systemα)にて、0.45MPa、2.7g/min.の条件で粉砕したところ、20μm以上の粗粒量はそれぞれ0ppm、1ppm、7ppm、0ppmであった。
同様の条件にて実験例5(比較例)を粉砕したところ、20μm以上の粗粒量は180ppmであった。
Claims (4)
- 水銀圧入法により測定された、細孔半径Rが0.01μm以上1μm以下の範囲における累積細孔容積Vが、0.2mL/g以上1.0mL/g未満であることを特徴とする水酸化アルミニウム粉末。
- 水銀圧入法により測定された、細孔半径Rと対数微分細孔容積(dV/dlogR)で表したときの細孔分布曲線において、
Rが0.01μm以上1μm以下の全ての範囲において、dV/dlogRが0.05mL/g以上0.5mL/g以下である請求項1記載の水酸化アルミニウム粉末。 - 軽装かさ密度が0.30g/mL以上0.60g/mL以下である請求項1または2に記載の水酸化アルミニウム粉末。
- Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量が、アルミナ中の不純物に換算したときにそれぞれ10重量ppm以下である請求項1から3のいずれかに記載の水酸化アルミニウム粉末。
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