JP2014167179A - 束状構造を有するゲルファイバー集合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】a)第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液を調製する工程;b)前記溶液をマイクロ流路に注入する工程;c)前記マイクロ流路中に第1の架橋剤を注入することにより、前記第1のプレゲル剤をゲル化させて、糸状に伸長した形状を有する鋳型ゲルファイバーを形成する工程;d)前記鋳型ゲルファイバーを含む溶液に第2の架橋剤を添加することにより、前記鋳型ゲルファイバーの骨格内部に束状の形状で保持された状態で前記第2のプレゲル剤を架橋させ、前記第2のプレゲル剤が架橋してなるゲルが前記鋳型ゲルファイバーに被覆された構造のゲルファイバー複合体を形成する工程;及びe)前記ゲルファイバー複合体を含む溶液にゲル除去剤を添加することによって前記鋳型ゲルファイバーを除去して、束状構造を有するゲルファイバー集合体を得る工程、を含む方法
【選択図】なし
Description
(1)1次元的に伸長した複数本のゲルファイバーが束状となった構造を有するゲルファイバー集合体の製造方法であって、a)第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液を調製する工程、ここで、前記第1のプレゲル剤は前記溶液中に溶解した状態であり、前記第2のプレゲル剤は前記溶液中に凝集した状態で存在する、当該工程;b)前記溶液をマイクロ流路に注入する工程;c)前記マイクロ流路中に第1の架橋剤を注入することによって、流れ場において前記第1のプレゲル剤をゲル化させて、糸状に伸長した形状を有する鋳型ゲルファイバーを形成する工程、ここで、前記第2のプレゲル剤は前記鋳型ゲルファイバーの骨格内部に束状の形状で保持される、当該工程;d)前記鋳型ゲルファイバーを含む溶液に第2の架橋剤を添加することによって、前記鋳型ゲルファイバーの骨格内部に束状の形状で保持された状態で前記第2のプレゲル剤を架橋させ、それにより、前記第2のプレゲル剤が架橋してなるゲルが前記鋳型ゲルファイバーに被覆された構造のゲルファイバー複合体を形成する、当該工程;及び、e)前記ゲルファイバー複合体を含む溶液にゲル除去剤を添加することによって前記鋳型ゲルファイバーを除去して、束状構造を有するゲルファイバー集合体を得る工程、を含む、該方法
に関する。
(2)前記ゲルファイバー集合体が、ハイドロゲルである、上記(1)に記載の方法、
(3)前記第1のプレゲル剤のゲル化速度が、前記第2のプレゲル剤のゲル化速度よりも速い、上記(1)又は(2)に記載の方法、
(4)前記第2のプレゲル剤が、相転移温度を有する高分子である、上記(1)乃至(3)のいずれか1に記載の方法、
(5)前記相転移温度を有する高分子が、疎水基と親水基を有する両親媒性高分子である、上記(4)に記載の方法、
(6)前記相転移温度を有する高分子が、糖鎖高分子である、上記(4)又は(5)に記載の方法、
(7)前記糖鎖高分子がヒドロキシプロピルセルロースである、上記(6)に記載の方法、
(8)前記第2の架橋剤が、ジビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、、エチレングルコールジメタクリレート、又はグルタルアルデヒドから選択される、上記(1)乃至(7)のいずれか1に記載の方法、
(9)前記第1のプレゲル剤が、イオン架橋によってゲル化し得る高分子である、上記(1)乃至(8)のいずれか1に記載の方法、
(10)前記イオン架橋によってゲル化し得る高分子が、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムであり、及び前記第1の架橋剤が、2価以上の金属イオンの塩である、上記(9)に記載の方法、
(11)前記ゲル除去剤が、キレート剤である、上記(10)に記載の方法、
(12)前記第1のプレゲル剤がアルギン酸ナトリウムであり、前記第2のプレゲル剤がヒドロキシプロピルセルロースである、上記(1)に記載の方法、
(13)前記工程a)で調製される第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液が、塩基性の水溶液である、上記(12)に記載の方法、
(14)前記塩基性の水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度が1.0wt%であり、及びヒドロキシプロピルセルロースの濃度が4.0wt%以上である、上記(13)に記載の方法、
に関する。
(15)1次元的に伸長した複数本のゲルファイバーが束状となった構造を有するゲルファイバー集合体であって、相転移温度を有する高分子が互いに共有結合で架橋された構造を有する、当該ゲルファイバー集合体、
に関する。
(16)前記ゲルファイバー集合体が、ハイドロゲルである、上記(15)に記載のゲルファイバー集合体、
(17)100〜500μmの外径を有する、上記(15)又は(16)に記載のゲルファイバー集合体、
(18)前記相転移温度を有する高分子が、下限臨界溶液温度(LCST)を有する高分子である、上記(15)乃至(17)のいずれか1に記載のゲルファイバー集合体、
(19)前記相転移温度を有する高分子が、ヒドロキシプロピルセルロースである、上記(18)に記載のゲルファイバー集合体、
(20)3kPa以上のヤング率を有する、上記(15)乃至(19)のいずれか1に記載のゲルファイバー集合体、
(21)5kPa以上の単位断面積あたりの破断荷重を有する、上記(15)乃至(19)のいずれか1に記載のゲルファイバー集合体、
に関する。
本発明において用いられる第1のプレゲル剤は、ゲル化して鋳型ゲルファイバーを形成するものである。第1のプレゲル剤は、マイクロ流路の流れによって発生するシェアストレスによって、流路の流れ方向に配向して糸状に伸長した形状を有するゲルを形成し得るものであれば、人工物及び天然物のいずれであっても良く、親水性高分子、糖鎖高分子、多糖類などを含む当該技術分野において公知のプレゲル剤を用いることができる。しかしながら、マイクロ流路中でゲル化し得るためには、架橋剤の添加によって短時間で、好ましくは瞬時にゲル化し得るものであることが望ましい。好ましくは、第1のプレゲル剤は、イオン架橋によってゲル化し得る高分子であり、そのような高分子としては、例えば、2価の金属イオンの添加によって瞬時にゲル化する性質を有する、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウム等のアルギン酸塩が挙げられる。これらのなかでも、アルギン酸ナトリウムが好ましい。
本発明において用いられる第2のプレゲル剤は、ゲル化して、最終的に束状構造のゲルファイバー集合体を構成することとなる個々のゲルファイバーとなるものである。また、第2のプレゲル剤は、ハイドロゲルを形成し得ることが好ましく、特に、細胞培養用足場などに用いる場合は生分解性であることが好ましい。
上記のように、マイクロ流路の内流として射出される溶液(プレゲル溶液)は、第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液である。プレゲル溶液は、好ましくは水溶液であるが、水と混じりあう性質を有する水性有機溶媒、例えばエタノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどを含むこともできる。溶媒の組成は、用いる第1及び第2のプレゲル剤の種類に応じて、適宜選択することができる。
本発明において用いられるマイクロ流路デバイスは、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができるが、流路中で2層の流体流れを形成し得る同軸フロー型のマイクロ流路デバイスが好ましい。同軸フロー型マイクロ流路デバイスの構造は、例えば、Kiriyaら、Angew.Chem.Int.Ed.,2012,51,1553−1557等で具体的に説明されている。かかるマイクロ流路デバイスによれば、図3に示すように、2つの成分の異なる流体を同軸となるように内流及び外流に分けて射出することができる。マイクロ流路デバイスの内径は、100〜1000μmの範囲であることが好ましい。
本発明のゲルファイバー集合体は、1次元的に伸長した複数本のゲルファイバーが束状となった構造を有することを特徴とする。上記のように、好ましくは、ゲルファイバー集合体はハイドロゲルで構成される。「束状となった構造」とは、整列した2以上のゲルファイバーを含む集合体を形成していることを意味する。「整列した」という用語は、複数のゲルファイバーが全体として概ね平行関係を維持していることが好ましいが、2以上のゲルファイバーにおいて部分的に平行関係が失われている場合や、複数のゲルファイバーの一部又は全体がねじれて重なり合う場合なども含まれると解釈されるべきである。
第1のプレゲル剤としてアルギン酸ナトリウム(Na−Alg)、第2のプレゲル剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を用いて、マイクロ流路の内流として射出するプレゲル溶液の調製を行った。
図6に示す同軸フロー型のマイクロ流路デバイスを用いて、上記のように調製したNa−Alg及びHPCを含むプレゲル溶液を内流として射出し、HPCゲルファイバー集合体を作製した。プレゲル溶液は,所定量の蒸留水中にNa−Algが1.0wt%でかつHPCが2.0〜7.0wt%となるように溶解後、NaOHによってpHを13以上としたものを用いた。Na−Algをイオン架橋によってゲル化するための架橋剤として、塩化カルシウム(CaCl2)水溶液を用いた。また、HPCを共有結合によって架橋しゲル化させるための架橋剤として、ジビニルスルホン(DVS)水溶液を用いた。また、アルギン酸ゲルを除去するための除去剤として、クエン酸ナトリウム水溶液を用いた。
本発明の束状ゲルファイバー集合体の力学的特性を評価するため、水中における引張試験を行った。具体的には,最終濃度で1%のAlgと7%のHPCよりなる混合水溶液から調製した本発明の束状ゲルファイバー集合体(BF)、及びシリコーンチューブ内(7%HPC水溶液)で形成したHPCのみから構成される比較例の非束状ゲルを水中にて垂直方向に引き上げることで各ゲルが持つヤング率、破断強度を算出した。ファイバーの断面積は、NFでは調製の際に用いたシリコンチューブの内径(500μm)を、BFでは使用したマイクロ流路デバイスから作成される典型的なファイバーの直径(400μm)を用いた。
結果を図10に示す。
本発明の束状構造を有するゲルファイバー集合体の細胞培養の足場材料への適性を評価した。具体的には,ヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVECs)を本発明の束状ゲルファイバー集合体(BF)及びシリコーンチューブ内で形成したHPCのみから構成される比較例の非束状ゲル(NF)へそれぞれ播種し、培養2時間後及び48時間後の細胞の接着状況を観察した。
・ヒト臍帯静脈由来内皮細胞,EGM2培地
・リピジュア(細胞非接着性ポリマー)
・35mm ペトリディッシュ
・Live/Dead試薬(Calcein−AM,Ethidium homodimer−1)、Hoechst 33342(核染色)
を用いた。実験手順は、以下のとおりである。
1) リピジュア(10 w/v% in ethanol)を35mmペトリディッシュに上に50μL滴下し、クリーンベンチ内で風乾させた。
2) 1にEGM−2を加えBF及びNFファイバーを入れた。
3) 2に細胞を最終濃度100000cells/cm2となるように加えた。
4) シェーカー上でゆっくりと振とうさせながら培養を行った。
5) 倒立顕微鏡を用いて、2時間後、48時間後の細胞を観察した。48時間後については,核をHoecsht33342及びLive/Dead試薬で染色し、細胞の生死と接着形態を評価した。
Claims (21)
- 1次元的に伸長した複数本のゲルファイバーが束状となった構造を有するゲルファイバー集合体の製造方法であって、
a)第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液を調製する工程、ここで、前記第1のプレゲル剤は前記溶液中に溶解した状態であり、前記第2のプレゲル剤は前記溶液中に凝集した状態で存在する、当該工程、
b)前記溶液をマイクロ流路に注入する工程、
c)前記マイクロ流路中に第1の架橋剤を注入することによって、流れ場において前記第1のプレゲル剤をゲル化させて、糸状に伸長した形状を有する鋳型ゲルファイバーを形成する工程、ここで、前記第2のプレゲル剤は前記鋳型ゲルファイバーの骨格内部に束状の形状で保持される、当該工程、
d)前記鋳型ゲルファイバーを含む溶液に第2の架橋剤を添加することによって、前記鋳型ゲルファイバーの骨格内部に束状の形状で保持された状態で前記第2のプレゲル剤を架橋させ、それにより、前記第2のプレゲル剤が架橋してなるゲルが前記鋳型ゲルファイバーに被覆された構造のゲルファイバー複合体を形成する、当該工程、及び
e)前記ゲルファイバー複合体を含む溶液にゲル除去剤を添加することによって前記鋳型ゲルファイバーを除去して、束状構造を有するゲルファイバー集合体を得る工程、
を含む、該方法。 - 前記ゲルファイバー集合体が、ハイドロゲルである、請求項1に記載の方法。
- 前記第1のプレゲル剤のゲル化速度が、前記第2のプレゲル剤のゲル化速度よりも速い、請求項1又は請求項2に記載の方法。
- 前記第2のプレゲル剤が、相転移温度を有する高分子である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記相転移温度を有する高分子が、疎水基と親水基を有する両親媒性高分子である、請求項4に記載の方法。
- 前記相転移温度を有する高分子が、糖鎖高分子である、請求項4又は5に記載の方法。
- 前記糖鎖高分子がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項6に記載の方法。
- 前記第2の架橋剤が、ジビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、又はグルタルアルデヒドから選択される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第1のプレゲル剤が、イオン架橋によってゲル化し得る高分子である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記イオン架橋によってゲル化し得る高分子が、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムであり、及び前記第1の架橋剤が、2価以上の金属イオンの塩である、請求項9に記載の方法。
- 前記ゲル除去剤が、キレート剤である、請求項10に記載の方法。
- 前記第1のプレゲル剤がアルギン酸ナトリウムであり、前記第2のプレゲル剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1に記載の方法。
- 前記工程a)で調製される第1のプレゲル剤及び第2のプレゲル剤を含む溶液が、塩基性の水溶液である、請求項12に記載の方法。
- 前記塩基性の水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度が1.0wt%であり、及びヒドロキシプロピルセルロースの濃度が4.0wt%以上である、請求項13に記載の方法。
- 1次元的に伸長した複数本のゲルファイバーが束状となった構造を有するゲルファイバー集合体であって、相転移温度を有する高分子が互いに共有結合で架橋された構造を有する、当該ゲルファイバー集合体。
- 前記ゲルファイバー集合体が、ハイドロゲルである、請求項15に記載のゲルファイバー集合体。
- 100〜500μmの外径を有する、請求項15又は請求項16に記載のゲルファイバー集合体。
- 前記相転移温度を有する高分子が、下限臨界溶液温度(LCST)を有する高分子である、請求項15乃至17のいずれか1項に記載のゲルファイバー集合体。
- 前記相転移温度を有する高分子が、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項18に記載のゲルファイバー集合体。
- 3kPa以上のヤング率を有する、請求項15乃至19のいずれか1項に記載のゲルファイバー集合体。
- 5kPa以上の単位断面積あたりの破断荷重を有する、請求項15乃至19のいずれか1項に記載のゲルファイバー集合体。
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