以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る電子機器の筺体に対して取り付けられる端子台の構成を示す分解斜視図、図2は、筺体のうち端子台周辺の概略上面図である。また、図3は、端子台の右側面図(+X方向からの側面図)であり、図4は、端子台の左側面図(−X方向からの側面図)である。なお、以下の説明では、主に端子台の構造等を明確にする目的のため、XYZ軸を用いて説明を行う。
図1に示すように、本実施形態に係る電子機器100は、筺体10と、筺体10の側面に取り付けられる貫通型の端子台20と、を備える。筺体10は、底面と側壁11とを含んで構成される本体部と本体部を覆う蓋部とを含んで構成されるが、図1では、その本体部のみを示す。筺体10の内部には、電子機器100を構成する電子部品が配置される。
筺体10の内部に配置される電子部品は、電子機器100の機能に応じて適宜選択される。例えば、電子機器100がスイッチング電源装置である場合には、筺体10の内部には、入力コンデンサ、スイッチング素子、メイントランス、チョークインダクタ、制御基板、及び、出力コンデンサ等が収容され、これらの部品がバスバー等の導電性を有する導電部材により接続されることで、スイッチング電源装置として機能する。電子機器100がスイッチング電源装置である場合、端子台20は、例えば、低圧バッテリに対して接続される出力側の端子台として用いられる。
また、本実施形態に係る電子機器100は、特に気密性が必要な場合に好適に用いられる。気密性が必要な場合とは、例えば、電子機器100が車載用のスイッチング電源装置であり、エンジンルームに配置される場合である。この場合、塵埃や水、水滴、雨水、海水、ラジエータ液、ウィンドウォッシャー液、エンジンオイル等の複数種類の液体がエンジンルーム内に存在することから、これらの液体が筺体10から内部に侵入し、内部の部品を損傷させることがないようにする必要がある。本実施形態に係る電子機器100に取り付けられる端子台20は、このような気密性が必要な場においても好適に用いられる構成を有している。
なお、本実施形態に係る電子機器100の特徴をなす部分は、上述のように端子台20の構造であるので、電子機器100の筺体10の内部に収容される部品については図示を省略する。
端子台20は、筺体10の側壁11のうち、YZ平面に沿って広がる面に設けられた貫通孔12に対して取り付けられる。さらに側壁11には端子台20の本体が取り付けられる貫通孔12の近傍に、端子台20を側壁11に対してネジ固定するためのネジ穴13,14が設けられる。本実施形態に係る電子機器100では、端子台20の本体が取り付けられる貫通孔12と端子台20をネジ固定するためのネジ穴13,14が、電子機器100の筺体10における端子台20の取付け部として機能する。
側壁11の貫通孔12に取り付けられる端子台20は、図1〜図4に示すように、樹脂等の絶縁性の部材からなる略円筒形の樹脂部21と、略円筒形の樹脂部21の内部を貫通するように内挿された金属等からなる導電性の端子部材23と、外部端子(図示せず)と端子部材23とを接続するための接続部材25と、を含んで構成され、X軸方向に沿って側壁11の貫通孔12へ挿入される。
樹脂部21は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等の絶縁性材料からなり、X軸に沿って貫通孔12に対して挿入される挿入部21Aと、挿入部21Aに対してX軸に沿って連続して設けられ、挿入部21Aよりもその径が大きく、側壁11への取付け時に側壁11の外側の面11Aと当接する当接面211を備える本体部21Bと、本体部21Bに対してX軸に沿って連続して設けられ外部端子と接続するための接続部材25を取り囲むように形成された接続壁部21Cと、を含んで構成される。
このうち、本体部21Bには、端子台20の挿入方向であるX軸方向に対して垂直なYZ平面方向に沿って本体部21Bから延びるフランジ212,213を備え、フランジ212に設けられた貫通孔212Aに対して挿入されるネジ32が側壁のネジ穴13に対して固定されると共に、フランジ213に設けられた貫通孔213Aに対して挿入されるネジ33が側壁のネジ穴14に対して固定されることで、端子台20が側壁11に対して固定される。また、端子台20は、樹脂部21のうちの挿入部21Aに設けられた溝215にOリング216(シール材)を取り付けた状態で側壁11の貫通孔12に対して挿入されて取り付けられる。これにより、端子台20のうち側壁11と挿入部21Aとの間隙が塞がれ、端子台20と側壁11との間の封止がなされることにより、防水が図られている。本実施形態に係る端子台20では、端子部材23及び接続部材25と樹脂部21との間の封止について、樹脂部21のうちの挿入部21A側において構造的な特徴を有するが、この点は後述する。
次に、端子台20の端子部材23及び接続部材25について図5及び図6を用いて説明する。図5は、端子部材23及び接続部材25の構成を説明する概略斜視図であり、図6は、端子部材23及び接続部材25を樹脂部21により固定した端子台20の断面図である。
端子部材23は、図5に示すように、筺体10に対する端子台20の挿入方向であるX軸方向に沿って延び、一方の端部であって筺体10の外部に露出して外部機器からのケーブル等を介した外部端子が取り付けられる外端部23A(第1の端子)、外端部23Aとは逆側の端部であり筺体10の内部の部品とバスバー(導電部材)等を介して電気的に接続される内端部23B(第2の端子)、及び、外端部23Aと内端部23Bとを接続する折り曲げ部23Cを含んで構成される。外端部23Aは、内側に開口231を有し、YZ平面に沿って延びるドーナツ型の平板状の部材により形成される。また、内端部23Bは、内側にXY平面に沿って延びる平板状の部材により形成され、その端部には、内部の電子部品と接続するためのバスバー等を固定するための開口235が設けられている。この開口235は、内部の電子部品と接続できればよいことから、雄ねじや雌ねじ等でも代替可能である。
端子部材23は、一枚の平板状の導電材料を切り出して加工することにより作成することができ、折り曲げ部23Cは、YZ平面に対して平行な外端部23Aと、XY平面に対して平行にX軸方向に沿って延びる内端部23Bとを接続するために折り曲げられた領域であり、XY平面に平行な内端部23Bから見て、略垂直方向に下方に折り曲げられた後に、再度略水平方向に折り曲げられ、さらに、略垂直方向に上方に折り曲げられて、YZ平面に平行な外端部23Aとなる。外端部23Aのうち、内端部23B側の面232は接続部材25と当接し、面232の裏側となる面233は、外部に露出し、外部の機器と電気的に接続される面となる。
接続部材25は、X軸方向に沿って延びる略円柱状の鉄系の部材からなる本体部251と、本体部251のX軸方向に沿った中ほどから外方へ一様に延びる略円形のフランジ252とを備える。接続部材25は、本体部251が、端子部材23の外端部23Aに設けられた開口231に対して、内端部23B側から挿通される。フランジ252が外端部23Aの面232と当接した状態で端子部材23と接続部材25とを保持し、樹脂部21によって覆い、この樹脂部21が硬化することで端子部材23と接続部材25とが固定される。なお、接続部材25の本体部251は、鉄系の部材からなる構成について説明したが、所望の機械的強度があればよく、例えば樹脂等の絶縁部材で構成しても構わない。
図1に戻り、樹脂部21の接続壁部21Cは、端子部材23の外端部23Aの面233を露出した状態で、接続部材25の外端部23A側の端部を取り囲むように形成される。接続壁部21Cの形状は、外端部23Aと接続する外部機器のコネクタの形状等に応じて変更される。本実施形態に係る端子台20の場合、接続部材25と接続壁部21Cとの間に外部機器のコネクタが取り付けられ、コネクタに含まれる導電性の端子と、端子部材23の外端部23Aの面233とが当接することにより、外部機器との間で電気的な接続が行われる。
ここで、本実施形態に係る端子台20の技術的特徴の一つをなす部分である挿入部21A側の形状について、図4,図6,図7を主に用いて説明する。図7は、端子台20に係る挿入部21A側からの概略斜視図である。
端子台20の樹脂部21のうち、挿入部21Aは、図6に示すように、挿入部21Aの外形を形成する略円筒状の周縁部271の内側において周縁部271とは離間した位置で端子部材23の内端部23Bが露出している。また、挿入部21Aの周縁部271の内側は、隔壁273が設けられる。これにより、挿入部21Aの内部は、隔壁273と周縁部271とによって囲まれると共に内側の底面A11から端子部材23の内端部23Bが露出した凹形状を有する第1の領域A1と、第1の領域A1とは異なり隔壁273と周縁部271とによって囲まれた凹形状を有する第2の領域A2とに区画される。第1の領域A1及び第2の領域A2の内端部23B側の端部は開放されて、接続壁部21C側の本体部21Bの端部が閉じた凹部形状をなしている。
第2の領域A2の底面A21には、接続部材25の挿入部21A側の端面253と連通する貫通孔A22が形成される。この貫通孔A22は、図6に示す端子部材23及び接続部材25の配置を保ったまま樹脂部21の樹脂を固化させるために、端子部材23の面232に対して接続部材25のフランジ252を当接させるために用いられる。すなわち、端子部材23及び接続部材25を図6に示す状態で固定するために、貫通孔A22が用いられる。
上記の構成を有する端子台20においては、筺体10の外部(端子部材23の外端部23A側)に対する内部(端子部材の23の内端部23B側)の気密性を高めることが求められている。本実施形態に係る端子台20においては、外部からのリークが考えられるのは、端子部材23及び接続部材25と、樹脂部21との境界面である。具体的には、図6に示す接続部材25の周囲であって端子部材23の開口231から、接続部材25の貫通孔A22に至るルートと、端子部材23の開口231から端子部材23と樹脂部21の境界を伝って第1の領域A1に至るルートと、端子部材23の面233から端子部材23を伝って第1の領域A1に至るルートにおいてリークが発生する可能性が考えられる。
そこで、周縁部271及び隔壁273によって囲まれた第1の領域A1及び第2の領域A2のそれぞれに対して、樹脂部21とは異なる充填樹脂29A,29Bによってそれぞれ充填されることでこれらの領域は個別に封止される。これにより、上述のリークが発生する可能性が考えられるルートに沿ってリークが発生したとしても充填樹脂29A,29Bにより封止がなされる。これにより、端子部材23及び接続部材25と、樹脂部21との境界面に沿って端子台20の外側と内側との間でリークが発生することを防止することができる。なお、充填樹脂としては、エポキシ系樹脂材が好適に用いられる。
また、第1の領域A1の底面A11上で端子部材23が樹脂部21から露出する領域においては、樹脂部21と端子部材23との剥離を防止するために、傾斜が付けられて樹脂が盛られている肉盛り部275が形成されている。また、肉盛り部275のX軸方向に沿った底面A11からの高さは、周縁部271の底面A11からの高さよりも低い。これにより、第1の領域A1内を充填樹脂29Aによって満たした場合に、肉盛り部275が充填樹脂29Aの表面に露出することが防止される。
本実施形態に係る電子機器100の端子台20では、第1の領域A1と第2の領域A2とが隔壁273によって区画されていることによって、第1の領域A1の底面A11と、第2の領域A2の底面A21の位置が、端子部材23の延在方向(X軸方向)に沿って互いに異なる構成とすることができる。これにより、第1の領域A1及び第2の領域A2における充填樹脂の充填量をそれぞれ好適に調整することができる。例えば、端子台20では、図6に示すように、端子部材23の外端部23A側に接続部材25が突出する構成となっているので、内端部23B側の接続部材25の端面253は、端子部材23の内端部23BとX軸方向における位置が大きく異なる。
ここで、第1の領域A1と第2の領域A2とが隔壁273によって区画されておらず1つの凹型部として形成されている場合、充填樹脂によって、接続部材25の端面253と連通する貫通孔A22を塞ぎつつ且つ端子部材23と樹脂部21との境界部(肉盛り部275が形成されている部分)を塞ぐ必要があることから、充填樹脂を相当量準備する必要がある。気密性を高めるために用いられる充填樹脂は高価であり、使用量の増加は端子台製造のコストに直結する。
これに対して、本実施形態に係る電子機器100の端子台20では、隔壁273によって第1の領域A1と第2の領域A2とを区切ることで、貫通孔A22を塞ぐために必要な充填樹脂29Aと、端子部材23と樹脂部21との境界部を塞ぐための充填樹脂29Bとを個別に充填することができる。したがって、充填樹脂29A,29Bの充填量をそれぞれ調整することができるため、気密性を高めるために必要な充填樹脂を適切に充填することができると共に、封止のための充填樹脂の使用量を低減することが可能となる。
また、本実施形態に係る電子機器100の端子台20では、外端部23Aと内端部23Bとの間に折り曲げ部23が設けられていることにより、外端部23Aと内端部23Bとの間の端子部材23の形状が直線ではなく曲げられて形成されている。これにより、端子部材23と樹脂部21の境界面に沿ってリークが発生することを防止することができ、端子台20における気密性を高めることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る電子機器100は種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、端子部材23の外端部23Aが略垂直方向に延びる面に折り曲げられている場合について説明したが、外端部23Aの延びる方向は垂直方向でなくてもよい。同様に、端子部材23、接続部材25の形状は適宜変更することができる。例えば、端子部材23が折り曲げ部23Cを備える構成について説明したが、端子部材23が折り曲げ部23Cを備えない構成であってもよい。また、端子部材23が平板状の部材によって構成されていなくてもよい。また、端子部材23の折り曲げ部23Cは、斜め状に形成されていても良い。また、接続部材25は、雄ねじではなく雌ねじでも良い。
また、上記実施形態では、端子台20の端子部材23は、筺体10内部を流れる電流を外部の他の装置・機器に対して出力する機能を有する場合について説明したが、外部からの電流を筺体10の内部の部品に対して入力する入力端子として機能する構成であってもよい。この場合であっても、外部に対する気密性の向上は要求されるので、上記実施形態で示した構造を有することにより、気密性の向上と封止のための樹脂の使用量の低減とを達成することができる。
また、上記実施形態では、電子機器100に含まれる筺体10等の構成については適宜変更することができる。また、筺体10には内部の電子部品等を冷却するための冷却手段を備えていてもよい。
また、電子機器100は、スイッチング電源装置に限定されない。すなわち、本実施形態に係る電子機器100は、その内部と外部の他の電子機器とが電気的に接続される端子台20が用いられる構成であれば特に限定されない。