一例として示す電子レンジ用容器10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電子レンジ用容器の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、容器本体11や上蓋13、中蓋14を分離して示すそれらの斜視図であり、図3は、図1の容器10Aの容器本体11の上面図である。図4は、図1の容器10Aの容器本体11の底面図であり、図5は、図4のA−A線矢視断面図である。図6は、図5の断面図の部分拡大図であり、図7は、図1の容器10Aの中蓋14の上面図である。図8は、容器本体11に中蓋14を嵌合させた状態で示すそれらの斜視図である。図1は、容器本体11の頂部開口12が上蓋13によって塞がれている。図2では、上下方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
この電子レンジ用容器10A(加熱用調理容器)は、食品を収容可能な所定容積の容器本体11と、容器本体11の頂部開口12を塞ぐ上蓋13と、容器本体11と上蓋13との間に着脱可能に設置される中蓋14とから形成されている。容器10Aは、容器本体11の後記する食品収容部23に収容された食品を電子レンジ(図示せず)で加熱するために使用される。電子レンジ用容器10Aは、食品の加熱のみならず、後記する米の炊飯に好適に使用される。なお、容器10A(容器10Bを含む)は、電子レンジの庫内に収容可能であって庫内のテーブル(回転式またはフラット式)に載置可能であれば、その形状について特に限定はない。
容器本体11は、所定厚みおよび所定面積を有する円形の底壁13と、底壁13の周縁から上方へ延びる周壁16とを有する。なお、容器本体11の形状を図示のそれに限定するものではなく、図示の形状を含むボール容器、桶、タライ、盆のいずれであってもよい。周壁16は、底壁15の周縁から容器本体11の中間部18に向かって上方へ延びる第1周壁20と、本体11の頂部19に位置して第1周壁20の周縁から径方向外方へ延びる円環状のフランジ21と、本体11の頂部19に位置してフランジ21の外周縁から上方へ延びる第2周壁22とから形成されている。容器本体11には、底壁15と第1周壁20とに囲繞された所定容積の食品収容部23が作られている。
第1周壁20は、底壁17を囲繞して容器本体11の底部17と中間部18との間に延びている。第1周壁20の上下方向の高さ寸法L1は、70〜90mmの範囲にある。なお、第1周壁20の好ましい高さ寸法L1は、85mmである。第2周壁22は、フランジ21を囲繞して容器本体11の頂部19に延びている。第2周壁22の上部には、互いに対向して径方向外方へ延びる2つの持ち手24が作られている。なお、底壁17(後記する凸部26を除く)や周壁16(第1周壁20、フランジ21、第2周壁22)は、それらの厚み寸法が略同一である。
容器本体11(底壁17(凸部26を除く)、第1周壁20、フランジ21、第2周壁22)の厚み寸法は、4〜6mmの範囲の範囲にある。なお、容器本体11の好ましい厚み寸法は、4〜4.5mmの範囲である。容器本体11では、底壁17(凸部26を含む)および周壁16(第1周壁20、フランジ21、第2周壁22、持ち手24)が一体成型され、それらがひと繋がりになっている。厚み寸法が4mm未満では、容器本体11の保形性が低く、本体11を手で持ったときに型くずれを容易に起こし、取り扱いが難しいが、本体11の厚み寸法が前記範囲にあり、本体11(底壁15、第1周壁20、フランジ21、第2周壁22、持ち手24)の保形性が高く、それを手で持ったときに型くずれを起こし難く、取り扱いが容易である。
底壁15の外面25には、旋回するにつれて中心から遠ざかるように延びるスパイラル状(渦巻き状)の凸部26が形成されている。凸部26は、底壁15の外面25から下方へ向かって延出し、底壁15の中央部27と周縁部28との間に延びており、底壁15の略全域に形成されている。凸部26は、図4に示すように、底壁15の中央部27から周縁部28に向かってひと繋がりになり、中央部27と周縁部28との間で分断されることなく、底壁15の外面25に一連に作られている。
凸部26は、底壁15の外面25から下方へ延びる両側面29と、両側面29の間に延びる底面30とを有する。凸部26の各側面29は、底壁15の外面25に対して略直交している。したがって、底壁15の外面25と各側面29とのなす角度が略直角である。容器本体11の底壁15の外面25全域にスパイラル状の凸部26を形成することによって、電子レンジのマイクロ波が底壁15に照射された場合、底壁15の外面25と交差(略直交)する各側面29の縁31(エッジ)にマイクロ波が集中するエッジランナウェイが発生する。
底壁15の径方向へ並ぶ凸部26の離間寸法L2は、2〜5mmの範囲にある。なお、底壁15の径方向へ隣接する凸部26の各離間寸法L2は同一である。離間寸法L2が2mm未満では、凸部26の離間寸法L2を2mm未満にした状態でスパイラル状の一連の凸部26を一体成型することが困難であることの他、凸部26の各側面29どうしが近付き過ぎることで、隣接する各側面29の縁31毎にエッジランナウェイを発生させることができない。離間寸法L2が5mmを超過すると、底壁15の外面25に凸部26を密に形成することができず、凸部26が粗となり、底壁15に十分なエッジランナウェイを発生させることができない。
凸部26の側面29の底壁15の外面25から下方への延出寸法L3は、3〜6mmの範囲にある。なお、底壁15の径方向へ隣接する凸部26の各延出寸法L3は同一である。延出寸法L3が3mm未満では、延出寸法L3が3mm未満の凸部26を一体成型することが困難であることの他、底壁15の外面25に対して凸部26の各側面29を略直交させることができず、底壁15に十分なエッジランナウェイを発生させることができない。凸部26の底面15の底壁25の径方向への延出寸法L4は、3〜7mmの範囲にある。なお、底壁15の径方向へ隣接する凸部26の底面15の各延出寸法L4は同一である。延出寸法L4が7mmを超過すると、底壁15の外面25に凸部26を密に形成することができず、凸部26が粗となり、底壁15に十分なエッジランナウェイを発生させることができない。
上蓋13は、容器本体11の頂部開口12全域を塞ぐことが可能な面積を有する円形の上蓋天壁32と、上蓋天壁32の周縁から下方へ延びる周壁33とを有する。上蓋天壁32の中央には、上蓋13を持つときに使用する円形の摘み34が作られている。上蓋天壁32や周壁33は、それらの厚み寸法が略同一であり、容器本体11の厚み寸法と略同一である。上蓋13(上蓋天壁32、周壁33)の厚み寸法は、4〜6mmの範囲にある。なお、上蓋13の好ましい厚み寸法は、4〜4.5mmの範囲である。上蓋13では、上蓋天壁32、周壁33、摘み34が一体成型され、それらがひと繋がりになっている。上蓋13では、その厚み寸法が前記範囲にあり、上蓋13(上蓋天壁32、周壁33)の保形性が高く、それを手で持ったときに型くずれを起こし難く、取り扱いが容易である。
中蓋14は、容器本体11のフランジ21に囲繞された開口35を塞ぐことが可能な面積を有する円形の中蓋天壁36と、中蓋天壁36の周縁から上方へ延びる円環状の嵌合壁37と、嵌合壁37の周縁から径方向外方へ延びる円環状の当接フランジ38とを有する。当接フランジ38の径方向の寸法は、容器本体11のフランジ21のそれと略同一である。中蓋天壁36や嵌合壁37、当接フランジ38は、それらの厚み寸法が略同一であり、容器本体11や上蓋13の厚み寸法と略同一である。中蓋14(中蓋天壁36、嵌合壁37、当接フランジ38)の厚み寸法は、4〜6mmの範囲にある。なお、中蓋14の好ましい厚み寸法は、4〜4.5mmの範囲である。中蓋14では、その厚み寸法が前記範囲にあり、中蓋14(中蓋天壁36、嵌合壁37、当接フランジ38)の保形性が高く、それを手で持ったときに型くずれを起こし難く、取り扱いが容易である。
中蓋天壁36には、それを貫通する複数の貫通孔39が作られている。それら貫通孔39は、中蓋天壁36の中心からその周縁に向かって放射状に形成されている。容器10Aを利用した食品の電子レンジでの加熱中に、食品収納部23に発生した蒸気がそれら貫通孔39から中蓋14の外部に容易に排出される。中蓋14には、中蓋天壁36と嵌合壁37とにつながる一対の摘み40が作られている。それら摘み40は、嵌合壁37から中蓋14の径方向内方へ延びている。中蓋14では、中蓋天壁35、嵌合壁37、当接フランジ38、摘み40が一体成型され、それらがひと繋がりになっている。
中蓋14の摘み40を摘持して中蓋14を容器本体11のフランジ21の上に載せると、中蓋14の嵌合壁37が本体11の第1周壁20の内周面に摺動可能に嵌合するとともに、中蓋14の当接フランジ38が本体11のフランジ21の上に当接し、中蓋天壁36が第1周壁20の内側に位置して中蓋天壁36によって本体11のフランジ21に囲繞された開口35が塞がれる。次に、上蓋天壁32の摘み34を摘持して上蓋13を容器本体11の頂部19に載せると、上蓋13の周壁33が本体11の第2周壁22の内周面に摺動可能に接触し、上蓋天壁32によって本体11の頂部開口12(中蓋14を含む)が塞がれる。逆に、上蓋天壁32の摘み34を摘持して上蓋13を上方へ持ち上げると、上蓋13が容器本体11から上方へ離間して本体11の頂部開口12が開放され、中蓋14の摘み40を摘持して中蓋14を上方へ持ち上げると、中蓋14と容器本体11との嵌合が解除され、中蓋14が本体11から上方へ離間して本体11の開口35が開放される。
図9は、他の一例として示す電子レンジ用容器10Bの斜視図であり、図10は、図9の容器10Bの容器本体11や上蓋13、中蓋14を分離して示すそれらの斜視図である。図11は、図9の容器10Bの容器本体11の上面図であり、図12は、図9の容器10Bの容器本体11の底面図である。図13は、図12のB−B線矢視断面図であり、図14は、図9の容器10Bの中蓋14の上面図である。図15は、容器本体11に中蓋14を嵌合させた状態で示すそれらの斜視図である。この容器10Bが図1のそれと異なるところは容器本体11の上下方向の高さ寸法L1が容器10Aのそれよりも小さい点、中蓋14に形成された貫通孔39の径が図1の容器10Aの中蓋14のそれよりも小さい点であり、その他の構成は図1の容器10Aのそれらと同一である。
容器本体11は、図1の容器10Bと同様に、円形の底壁15と、底壁15の周縁から上方へ延びる周壁16とを有する。周壁16は、底壁15の周縁から容器本体11の中間部18に向かって上方へ延びる第1周壁20と、本体11の頂部19に位置して第1周壁20の周縁から径方向外方へ延びるフランジ21と、本体11の頂部19に位置してフランジ21の外周縁から上方へ延びる第2周壁22とから形成されている。容器本体11には、底壁15と第1周壁21とに囲繞された食品収容部23が作られている。
第1周壁21の上下方向の高さ寸法L1は、40〜50mmの範囲にあり、好ましくは、45mmである。容器10Bの第1周壁21の高さ寸法L1は、容器10Aのそれに比較して30〜40mm小さい。したがって、食品収容部23の容積が容器10Aのそれよりも小さい。第2周壁22の上部には、互いに対向して径方向外方へ延びる持ち手24が作られている。なお、底壁15(凸部26を除く)や周壁16(第1周壁20、フランジ21、第2周壁22)は、それらの厚み寸法が略同一である。
容器本体11(底壁15(凸部26を除く)、第1周壁20、フランジ21、第2周壁22)の厚み寸法は、4〜6mmの範囲の範囲にあり、好ましくは、4〜4.5mmの範囲である。容器本体11では、底壁15(凸部26を含む)および周壁16(第1周壁21、フランジ22、第2周壁23、持ち手24)が一体成型され、それらがひと繋がりになっている。容器10Bは、容器本体11の厚み寸法が前記範囲にあるから、本体11(底壁15、第1周壁21、フランジ22、第2周壁23、持ち手24)の保形性が高く、それを手で持ったときに型くずれを起こし難く、取り扱いが容易である。
底壁15の外面25には、図1の容器10Aと同様に、旋回するにつれて中心から遠ざかるように延びるスパイラル状(渦巻き状)の凸部26が形成されている(図11,12参照)。凸部26は、底壁15の外面25から下方へ向かって延出し、底壁15の中央部27と周縁部28(周縁)との間に延びており、底壁15の略全域に形成されている。凸部26は、底壁15の中央部27から周縁部28(周縁)に向かってひと繋がりになり、底壁15の外面25に一連に作られている。
この容器10Bでも、凸部26の各側面29が底壁15の外面25に対して略直交し、底壁15の外面25と各側面29とのなす角度が略直角であり、電子レンジのマイクロ波が底壁15に照射された場合、底壁15の外面25と交差(略直交)する各側面29の縁31(エッジ)にマイクロ波が集中するエッジランナウェイが発生する。なお、底壁15の径方向へ並ぶ凸部26の離間寸法L2や凸部26の側面29の底壁15の外面25から下方への延出寸法L3、凸部26の底面30の底壁15の径方向への延出寸法L4は、図1の容器10Aにおいて説明したとおりであり、離間寸法L2が2〜5mmの範囲、延出寸法L3が3〜6mmの範囲にあり、延出寸法L4が3〜7mmの範囲にある。
上蓋13や中蓋14は、図1のそれらと同一であるから、それらの説明は省略するが、中蓋14には、図1の容器10Aの中蓋14に形成された貫通孔39の径よりも小さい径の複数の貫通孔39が作られている。それら貫通孔39は、中蓋天壁36の中心からその周縁に向かって放射状に形成され、天壁36の中心からその周縁に向かって直線状に並んでいる。なお、上蓋13(上蓋天壁32、周壁33)や中蓋14(中蓋天壁36、嵌合壁37、当接フランジ38)の厚み寸法は、4〜6mmの範囲にあり、好ましくは4〜4.5mmの範囲である。上蓋13や中蓋14では、その厚み寸法が前記範囲にあり、上蓋13(上蓋天壁32、周壁33)や中蓋14(中蓋天壁36、嵌合壁37、当接フランジ38)の保形性が高く、それを手で持ったときに型くずれを起こし難く、取り扱いが容易である。
この容器10Bでは、中蓋14の摘み40を摘持して中蓋14を容器本体11のフランジ21の上に載せた後、中蓋14を本体11の開口35から底壁15に向かって圧入する。中蓋14を本体11に圧入すると、中蓋14の嵌合壁37が本体11の第1周壁20の内周面に摺動可能に嵌合密着するとともに、中蓋14の当接フランジ38が本体11のフランジ21の上に当接し、中蓋天壁36が第1周壁20の内側に位置して中蓋天壁36によって本体11のフランジ21に囲繞された開口35が塞がれる。
図16は、それら容器10A,10Bに対するマイクロ波の吸収、反射、透過の一例を示す模式図であり、図17は、それら容器10A,10Bに対するマイクロ波の吸収、反射、透過の他の一例を示す模式図である。図18は、鉱物粉体の特性図である。図16は、大きい誘電率を有する酸化アルミニウムにおけるマイクロ波の吸収、反射、透過を示し、図17は、小さい誘電率を有する二酸化ケイ素や酸化第二鉄におけるマイクロ波の吸収、反射、透過を示す。図16,17では、それら容器10A,10Bを部分的に示す。図18では、縦軸に鉱物粉体の温度(℃)が表され、横軸に鉱物粉体の電子レンジによる加熱時間(分)が表されている。
それら電子レンジ用容器10A,10Bの容器本体11や上蓋13、中蓋14は、シリコーン樹脂と遠赤外線を放射可能な粉体とを材料とし、シリコーン樹脂に粉体を均一に混合した樹脂混合物(混合物)を所定の形状に成型加工することから作られている。成型加工の一例としては、容器本体11や上蓋13、中蓋14の外面形状をかたどった雌金型と本体11や上蓋13、中蓋14の内面形状をかたどった雄金型とを有するプレス機械を使用し、雌金型に樹脂混合物を充填した後、雄金型と雌金型とで樹脂混合物を所定の圧力および所定の温度で挟み込み(プレス)、樹脂混合物を塑性変形させることで作ることができる。
粉体には、鉱物粉体が使用されている。鉱物粉体は、加熱すると遠赤外線を放出する堆積鉱物を微粉砕した後、加熱処理を施すことによって作られている。鉱物粉体は、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)と酸化アルミニウム(アルミナ:AI2O3)と酸化第二鉄(Fe2O3)とを主成分とし、その他の成分として、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)を含有する。
なお、粉体には、前記鉱物粉体の他に、セラミック粉体を使用することもできる。セラミック粉体は、二酸化ジルコニウム(ジルコミア)、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、ケイ酸塩鉱物(コージェライト)、アルミノケイ酸塩鉱物(ムライト)、酸化マグネシウム(マグネシア)、二酸化チタン(チタニア)から選択された少なくとも1種類以上のセラミックを微粉砕して作ることができる。それらの材質から作られたセラミック粉体は、電子レンジのマイクロ波を吸収して自己発熱し、遠赤外線を放射する。
鉱物粉体は、異なる振動波長域を有する二酸化ケイ素や酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムを含有し、それらがそれぞれ波長の異なる赤外線を放射する。鉱物粉体が単一の成分のみから作られている場合、放射波長はその成分の固有振動による波長のみとなり、放射効率が低くなるが、この鉱物粉体は、それぞれ波長の異なる赤外線を放射する各種複数の成分を含有するから、単一の成分のみから作られた場合と比較し、高い赤外線放射効率を有する。
鉱物粉体を100重量%としたときの二酸化ケイ素(SiO2)の割合は、50重量%以上であって60重量%以下の範囲、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化アルミニウム(AI2O3)の割合は、20重量%以上であって25重量%以下の範囲にあり、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化第二鉄(Fe2O3)の割合は、10重量%以上であって15重量%以下の範囲にある。なお、鉱物粉体を100重量%としたときの二酸化ケイ素の好ましい割合は56.40重量%、酸化アルミニウムアルミナの好ましい割合は21.20重量%、酸化第二鉄の好ましい割合は12.60重量%である。
鉱物粉体を100重量%としたときの酸化カルシウム(CaO)の割合は、3重量%以上であって7重量%以下の範囲、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化マグネシウム(MgO)の割合は、2重量%以上であって5重量%以下の範囲にあり、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化ナトリウム(Na2O)の割合は、0.2重量%以上であって0.7重量%以下の範囲、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化カリウム(K2O)の割合は、0.1重量%以上であって0.3重量%以下の範囲にある。なお、鉱物粉体を100重量%としたときの酸化カルシウムの好ましい割合は3.78重量%、酸化マグネシウムの好ましい割合は2.86重量%であり、酸化ナトリウムの好ましい割合は0.42重量%、酸化カリウムの好ましい割合は0.17重量%である。
鉱物粉体の主成分である二酸化ケイ素や酸化アルミニウム、酸化第二鉄は、所定の誘電率を有する誘電体である。二酸化ケイ素の誘電率は、3.5〜4.3F/mの範囲にあり、好ましくは、3.8〜4.0F/mの範囲である。酸化アルミニウムの誘電率は、9.0〜10.0F/mの範囲にあり、好ましくは、9.4〜9.6F/mの範囲である。酸化第二鉄の誘電率は、1.4〜1.8F/mの範囲にある。鉱物粉体では、酸化アルミニウムの誘電率が一番大きく、酸化アルミニウムの誘電率が二番目に大きく、酸化第二鉄の誘電率が一番小さい。したがって、誘電率の一番大きい酸化アルミニウムが電子レンジのマイクロ波を効率よく吸収してその温度が高くなり、その結果、鉱物粉体の温度が高くなる。
誘電率の一番大きい酸化アルミニウムは、電子レンジのマイクロ波を効率よく吸収するとともにマイクロ波の反射率が大きい一方、マイクロ波の透過率が小さい。大きい誘電率を有する酸化アルミニウムでは、図16に矢印N1で示すように、電子レンジのマイクロ波が容器10A,10Bに照射された場合、容器10A,10Bに多くのマイクロ波が吸収されるとともに、図16に矢印N2で示すように、多くのマイクロ波が容器10A,10Bにおいて反射され、図16に矢印N3で示すように、容器10A,10Bを透過するマイクロ波の量が少ない。
誘電率が二番目に大きい二酸化ケイ素は、電子レンジのマイクロ波を酸化アルミニウムほど吸収しない反面、マイクロ波の透過率が酸化アルミニウムのそれよりも大きい。また、誘電率が一番小さい酸化第二鉄は、電子レンジのマイクロ波をあまり吸収せず、マイクロ波の反射率も小さい反面、マイクロ波の透過率が高い。誘電率が酸化アルミニウムのそれよりも小さい二酸化ケイ素や酸化第二鉄では、図17に矢印N1で示すように、電子レンジのマイクロ波が容器10A,10Bに照射された場合、容器10A,10Bにマイクロ波があまり吸収されず、図17に矢印N2で示すように、容器10A,10Bにおいて反射されるマイクロ波が少なく、図17に矢印N3で示すように、容器10A,10Bを透過するマイクロ波の量が多い。容器10A,10Bでは、図16,17に矢印N4で示すように、シリコーン樹脂に均一に分散する鉱物粉体の酸化アルミニウムが電子レンジのマイクロ波によって自己発熱しつつ、容器10A,10Bから遠赤外線が放射される。
鉱物粉体の加熱処理の温度は、200℃以上であって300℃以下の範囲にある。なお、鉱物粉体の加熱処理は、電気炉やガス炉等の加熱炉で鉱物粉体を所定時間加熱することによって行われる。鉱物粉体は、前記温度範囲で加熱処理されることにより、鉱物粉体に耐熱性が付与され、電子レンジのマイクロ波によって鉱物粉体が加熱されたとしても、その鉱物粉体の物性が変化することはない。たとえば、鉱物粉体を200℃で加熱処理した場合、鉱物粉体に200℃までの耐熱性を付与することができる。したがって、200℃で加熱処理された鉱物粉体を電子レンジに入れ、鉱物粉体が電子レンジのマイクロ波によって加熱されて鉱物粉体の温度が200℃まで上昇したとしても、その物性が変化することなく、物性が変化することによる鉱物粉体の遠赤外線放射効率の低下が防止される。
また、鉱物粉体を300℃で加熱処理した場合、鉱物粉体に300℃までの耐熱性を付与することができる。したがって、300℃で加熱処理された鉱物粉体を電子レンジに入れ、鉱物粉体が電子レンジのマイクロ波によって加熱されて鉱物粉体の温度が300℃まで上昇したとしても、その物性が変化することなく、物性が変化することによる鉱物粉体の遠赤外線放射効率の低下が防止される。
図18の特性図に示すように、鉱物粉体をレンジ出力が500Wの電子レンジを使用して所定時間加熱し、時間の経過に伴う鉱物粉体の温度変化を測定した。なお、図18のグラフ中、実線は200℃で加熱処理された鉱物粉体の0〜10分までの温度変化を示し、点線は250℃で加熱処理された鉱物粉体の0〜10分までの温度変化を示すとともに、二点鎖線は300℃で加熱処理された鉱物粉体の0〜10分までの温度変化を示す。
200℃で加熱処理された鉱物粉体は、電子レンジが稼働してから1分程度でその温度が100℃の達し、10分経過後にその温度が約130℃に達している。なお、この鉱物粉体の5分経過時の温度は約110℃である。250℃で加熱処理された鉱物粉体は、電子レンジが稼働してから1分程度でその温度が約75℃の達し、10分経過後にその温度が約100℃に達している。なお、この鉱物粉体の5分経過時の温度は約95℃である。300℃で加熱処理された鉱物粉体は、電子レンジが稼働してから1分程度でその温度が60℃の達し、10分経過後にその温度が約100℃に達している。なお、この鉱物粉体の5分経過時の温度は約85℃である。
図18の結果から、500Wのレンジ出力の電子レンジで5分間加熱したときの鉱物粉体の温度は、加熱処理温度200℃のそれが一番高く(約110℃)、加熱処理温度250℃のそれが二番目であり(約95℃)、加熱処理温度300℃のそれが一番低い(約85℃)。したがって、200℃で加熱処理した鉱物粉体が効率よく自己発熱する。発熱温度が高い程、遠赤外線の放射量が増加することから、鉱物粉体から放射される遠赤外線の量は、200℃で加熱処理した鉱物粉体が一番多く、250℃で加熱処理した鉱物粉体が二番目であり、300℃で加熱処理した鉱物粉体が一番少ない。
レンジ出力が500〜700Wの電子レンジに使用する容器10A,10Bでは、鉱物粉体を200以上であって300℃以下の範囲、好ましくは200℃で加熱処理する。レンジ出力が500〜700Wの電子レンジでは、その庫内に容器10A,10Bを入れて、電子レンジを稼働させ、電子レンジのマイクロ波が容器10A,10Bに照射された場合、容器10A,10Bを構成する鉱物粉体のうちの誘電率が高い酸化アルミニウムがマイクロ波を吸収し、酸化アルミニウムが自己発熱して鉱物粉体の温度(容器10A,10B自体の温度)が200〜250℃近傍まで上昇する場合がある。しかし、鉱物粉体を200〜300℃で加熱処理しているから、500〜700Wのレンジ出力の電子レンジで容器10A,10Bを使用したとしても、鉱物粉体の物性が変化することはなく、鉱物粉体(容器10A,10B)の遠赤外線放射効率の低下が防止される。
なお、図18でも明らかなように、200℃で加熱処理した鉱物粉体の遠赤外線放射効率が高いから、500〜700Wのレンジ出力の電子レンジで使用する容器10A,10Bでは、200℃で加熱処理した鉱物粉体を使用することが好ましい。鉱物粉体が200〜300℃で加熱処理された場合、鉱物粉体が200〜300℃までの耐熱性を有し、鉱物粉体の物性変化を防ぐことができ、鉱物粉体の物性が変化することによる鉱物粉体(容器10A,10B)の遠赤外線放射機能の低下を防ぐことができる。
レンジ出力が800〜1000Wの電子レンジに使用する容器10A,10Bでは、鉱物粉体を250以上であって300℃以下の範囲、好ましくは250℃で加熱処理する。レンジ出力が800〜1000Wの電子レンジでは、その庫内に容器10A,10Bを入れて、電子レンジを稼働させ、電子レンジのマイクロ波が容器10A,10Bに照射された場合、容器10A,10Bを構成する鉱物粉体のうちの誘電率が高い酸化アルミニウムがマイクロ波を吸収し、酸化アルミニウムが自己発熱して鉱物粉体の温度(容器10A,10B自体の温度)が250℃近傍まで上昇する場合がある。しかし、鉱物粉体を250〜300℃で加熱処理しているから、800〜1000Wのレンジ出力の電子レンジで容器10A,10Bを使用したとしても、鉱物粉体の物性が変化することはなく、鉱物粉体(容器10A,10B)の遠赤外線放射効率の低下が防止される。
なお、図18でも明らかなように、250℃で加熱処理した鉱物粉体の遠赤外線放射効率が300℃で加熱処理した鉱物粉体のそれよりも高いから、800〜1000Wのレンジ出力の電子レンジで使用する容器10A,10Bでは、250℃で加熱処理した鉱物粉体を使用することが好ましい。鉱物粉体が250〜300℃で加熱処理された場合、鉱物粉体が250〜300℃までの耐熱性を有し、鉱物粉体の物性変化を防ぐことができ、鉱物粉体の物性が変化することによる鉱物粉体(容器10A,10B)の遠赤外線放射機能の低下を防ぐことができる。
シリコーン樹脂を100重量%としたときの鉱物粉体の混合割合は、20重量%以上であって40重量%以下の範囲にある(鉱物粉体以外の粉体の混合割合も同様)。なお、鉱物粉体の好ましい混合割合は、25重量%以上であって30重量%以下の範囲である。鉱物粉体の混合割合が20重量%未満では、容器10A,10Bから放射される遠赤外線の量が少なくなり、容器10A,10Bにおける遠赤外線放射効率が低下する。鉱物粉体の混合割合が40重量%を超過すると、流動性を示さない鉱物粉体がシリコーン樹脂の加工性や流動性(メルトフローレート)を低下させ、混合物を所望の容器形状に成型することが難しくなる場合がある。鉱物粉体の混合割合を前記範囲にすることで、それら電子レンジ用容器10A,10Bを使用した電子レンジによる食品の加熱中に、鉱物粉体から高い効率で十分な量の遠赤外線が食品に放射される。また、食品を収容可能な所望の容器形状に成型することが容易である。
鉱物粉体の平均粒径は、0.5μm以上であって220μm以下の範囲にある(鉱物粉体以外の粉体の平均粒径も同様)。なお、鉱物粉体の好ましい平均粒径は、90μm以上であって110μm以下の範囲である。鉱物粉体の平均粒径を小さくすることによってシリコーン樹脂と粉体との混合物の成型が容易になるが、鉱物粉体の平均粒径が0.5μm未満では、鉱物粉体から放射される遠赤外線の量が少なくなり、鉱物粉体(容器10A,10B)から十分な量の遠赤外線を放射させることができない。鉱物粉体の平均粒径を大きくすることによってその粉体から放射される遠赤外線の量が多くなるが、鉱物粉体の平均粒径が220μmを超過すると、流動性を示さない鉱物粉体がシリコーン樹脂の加工性や流動性(メルトフローレート)を低下させ、混合物を所望の容器形状に成型することが難しくなる場合がある。鉱物粉体の平均粒径を前記範囲にすることで、それら電子レンジ用容器10A,10Bを使用した電子レンジによる食品の加熱中に、鉱物粉体から高い効率で十分な量の遠赤外線が食品に放射される。また、食品を収容可能な所望の容器形状に成型することが容易である。
図1の電子レンジ用容器10Aを使用した米の炊飯手順を説明すると、以下のとおりである。なお、容器10Aを用いた米の炊飯では、レンジ出力が600Wの電子レンジを使用した。容器10Aには、300℃で加熱処理した鉱物粉体が含まれている。また、容器本体11の食品収容部15に収容する米は150g、水は200ccである。食品収容部15に米や水を入れると、米および水が容器本体11の第1周壁20の略下半分に位置し、第1周壁20の略上半分に空間が形成される。
容器本体11の食品収容部15に米および適量の水を入れた後、中蓋14の摘み27を摘持して中蓋14を容器本体11のフランジ22の上に載せるとともに、中蓋14の嵌合壁30を本体11の第1周壁21の内周面に嵌合させ、中蓋14で容器本体11の開口28を閉じる。次に、上蓋天壁25の摘み27を摘持して上蓋13を容器本体11の頂部20に載せ、上蓋13によって本体11の頂部開口12(中蓋14を含む)を閉じる。
容器本体11の持ち手24を持って容器10Aを電子レンジの庫内のテーブルに載せ、電子レンジのドアを閉めてレンジのスイッチを入れ、電子レンジで9分間加熱する。電子レンジから容器10Aにマイクロ波が照射されると、マイクロ波の大部分が誘電率や反射率の高い(透過率の低い)酸化アルミニウムに吸収され、酸化アルミニウムが自己発熱することで、鉱物粉体(容器本体11、上蓋13、中蓋14)の温度が上昇する。なお、誘電率や反射率の低い(透過率の高い)二酸化ケイ素や酸化第二鉄をマイクロ波の一部が透過し、そのマイクロ波が食品収容部15に達する。
酸化アルミニウムの自己発熱によって温度が上昇した鉱物粉体(容器10A)から遠赤外線が放射され、その遠赤外線が米や水に照射されるとともに、容器10Aを透過したマイクロ波の一部が米や水に照射されることで水が沸騰し、米の炊飯が開始される。なお、水が沸騰すると、発生した水蒸気によって食品収容部15の内部圧力が上昇するが、その水蒸気や空気が貫通孔39から食品収容部15の外部に排出されるから、水の沸騰によって米が食品収容部15において対流する。容器10Aでは、食品収容部15における米の対流によって米の全体に熱が加えられ、米全体がα化する。
容器10Aは、米の炊飯中に発生する水蒸気や空気を中蓋14に形成された貫通孔39から逃がすことができるから、食品収容部15の内部圧力が大きく上昇することはなく、沸騰水の中において米を対流させることができ、食品収容部15に収容された米の全体に熱を加えることができるとともに、食品収容部15に収容された全ての米を満遍なく加熱することができる。
電子レンジで容器10A(米および水)を9分間加熱した後、電子レンジのドアを開けて庫内から容器10Aを取り出し、約1分間蒸らすことで、炊飯が完了する。この容器10Aで米を炊飯する場合、その炊飯時間が約10分で済み、米の炊飯時間が大幅に短縮される。なお、IH炊飯器で炊飯する場合、炊飯が完了するまでに約60分を要するが、この容器10Aでは約10分で炊飯が完了するから、IH炊飯器と比較して炊飯時間を約50分短縮することができる。
電子レンジ用容器10Aは、電子レンジのマイクロ波を吸収した容器本体11や上蓋13、中蓋14から米や水に向かって遠赤外線が照射されるとともに、容器本体11や上蓋13、中蓋14を透過した電子レンジのマイクロ波の一部が米や水に照射され、食品収容部15に収容された米や水の全てが短時間に満遍なく加熱されるから、短い時間で米全体をα化することができ、米の炊飯時間を大幅に短縮することができる。
次に、図9の電子レンジ用容器10Bを使用した米の炊飯手順を説明すると、以下のとおりである。なお、容器10Bを用いた米の炊飯では、レンジ出力が600Wの電子レンジを使用した。容器10Bには、300℃で加熱処理した鉱物粉体が含まれている。また、容器本体11の食品収容部15に収容する米は150g、水は200ccである。
容器本体11の食品収容部15に米および適量の水を入れた後、中蓋14の摘み27を摘持して中蓋14を容器本体11のフランジ22の上に載せるとともに、中蓋14の嵌合壁30を食品収容部15に押し込むように押圧し、嵌合壁30を本体11の第1周壁21の内周面に嵌合密着させ、中蓋14で容器本体11の開口28を閉じる。次に、上蓋天壁25の摘み27を摘持して上蓋13を容器本体11の頂部20に載せ、上蓋13によって本体11の頂部開口12(中蓋14を含む)を閉じる。
容器本体11の持ち手24を持って容器10Bを電子レンジの庫内のテーブルに載せ、電子レンジのドアを閉めてレンジのスイッチを入れ、電子レンジで約5分間加熱する。電子レンジから容器10Bにマイクロ波が照射されると、マイクロ波の大部分が誘電率や反射率の高い(透過率の低い)酸化アルミニウムに吸収され、酸化アルミニウムが自己発熱することで、鉱物粉体(容器本体11、上蓋13、中蓋14)の温度が上昇する。なお、誘電率や反射率の低い(透過率の高い)二酸化ケイ素や酸化第二鉄をマイクロ波の一部が透過し、そのマイクロ波が食品収容部15に達する。
酸化アルミニウムの自己発熱によって温度が上昇した鉱物粉体(容器10B)から遠赤外線が放射され、その遠赤外線が米や水に照射されるとともに、容器10Aを透過したマイクロ波の一部が米や水に照射されることで水が沸騰し、米の炊飯が開始される。なお、水の沸騰によって食品収容部15の温度が上昇するとともに、食品収容部15の内部圧力が上昇する。中蓋14の嵌合壁30が本体11の第1周壁21に嵌合密着しているから、米の炊飯中に中蓋14が本体11から外れることはなく、食品収容部15の圧力が低下することはなく、食品収容部15の温度が低下することはない。
電子レンジで容器10B(米および水)を約5分間加熱した後、電子レンジのドアを開けて庫内から容器10Bを取り出し、上蓋天壁25の摘み27を摘持して上蓋13を上方へ持ち上げ、容器本体11の頂部開口12を開けるとともに、中蓋14の摘み33を摘持して中蓋14を上方へ持ち上げ、中蓋14と容器本体11との嵌合を解除し、本体11の開口28を開ける。次に、食品収容部15に収容された米を適当に掻き混ぜた後、中蓋14で開口28を閉じるとともに、上蓋13で頂部開口12を閉じ、容器10Aを再び電子レンジの庫内のテーブルに載せ、電子レンジで約4分間再び加熱する。
容器10Bは、中蓋14の嵌合壁30が容器本体11の第1周壁21の内周面に嵌合密着することで本体11と中蓋14とを確実に係合させることができるとともに、米の炊飯中に発生する水蒸気や空気を中蓋14に形成された貫通孔32から逃がすことができるから、米の炊飯中に発生する水蒸気や空気によって容器本体11と中蓋14との嵌合が不用意に解除されることはなく、容器本体11からの吹きこぼれを防止することができる他、容器本体11に収容された米の炊飯中における圧力低下や温度低下を防ぐことができ、本体11に収容された米の全てを満遍なく加熱することができる。
電子レンジで容器10B(米および水)を約4分間加熱した後、電子レンジのドアを開けて庫内から容器10Bを取り出し、約1分間蒸らすことで、炊飯が完了する。この容器10Bで米を炊飯する場合、その炊飯時間が約10分で済み、米の炊飯時間が大幅に短縮される。なお、IH炊飯器で炊飯する場合、炊飯が完了するまでに約60分を要するが、この容器10Bでは約10分で炊飯が完了するから、IH炊飯器と比較して炊飯時間を約50分短縮することができる。
電子レンジ用容器10Bは、電子レンジのマイクロ波を吸収した容器本体11や上蓋13、中蓋14から米や水に向かって遠赤外線が照射されるとともに、容器本体11や上蓋13、中蓋14を透過した電子レンジのマイクロ波の一部が米や水に照射され、食品収容部15に収容された米や水の全てが短時間に満遍なく加熱されるから、短い時間で米全体をα化することができ、米の炊飯時間を大幅に短縮することができる。
図19は、それら容器10A,10Bを使用して肉や野菜を加熱した場合の加熱時間を表した図である。図19では、シリコーン樹脂のみから作られた容器を使用した各食品の加熱時間を白の棒グラフで示し、容器10A,10Bを使用した各食品の加熱時間を黒の棒グラフで示す。米の他の食品(肉や野菜)を加熱調理する場合は、容器本体11の食品収容部15に加熱する食品を入れ、中蓋14を使用せず、上蓋13だけで頂部開口12を閉じた後、電子レンジで容器10A,10B(肉や野菜)を加熱する。容器10A,10Bでは、酸化アルミニウムの自己発熱によって温度が上昇した鉱物粉体(容器10A,10B)から遠赤外線が放射され、その遠赤外線が肉や野菜に照射されることで、肉や野菜が加熱される。
電子レンジ用容器10A,10Bを使用した肉や野菜の加熱では、図19から明らかなように、シリコーン樹脂のみから作られた容器の各食品に対する加熱時間に比較し、容器10A,10Bの各食品に対する加熱時間が短縮されている。図19に示すように、たとえば、ハンバーグ(肉類)の加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約4.6分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約3.9分であり、加熱時間が短縮されている。
レンジ出力500Wの電子レンジにおけるじゃがいもの加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約3.4分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約2.4分であり、加熱時間が短縮されている。レンジ出力800Wの電子レンジにおけるじゃがいもの加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約2.4分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約1.9分であり、加熱時間が短縮されている。
レンジ出力500Wの電子レンジにおけるにんじんの加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約2.9分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約2.4分であり、加熱時間が短縮されている。レンジ出力800Wの電子レンジにおけるにんじんの加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約1.9分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約1.4分であり、加熱時間が短縮されている。レンジ出力500Wの電子レンジにおけるかぼちゃの加熱では、シリコーン樹脂のみから作られた容器の加熱時間が約1.9分であるのに対し、容器10A,10Bの加熱時間が約1.4分であり、加熱時間が短縮されている。
電子レンジ用容器10A,10Bは、それがシリコーン樹脂と所定の温度で加熱処理された遠赤外線を放射可能な鉱物粉体とを材料とし、シリコーン樹脂に均一に分散する鉱物粉体(酸化アルミニウム)が電子レンジのマイクロ波を吸収することで、鉱物粉体が自己発熱して容器10A,10Bの温度が上昇し、容器10A,10Bから遠赤外線が放射されるから、容器10A,10Bを使用した電子レンジによる食品の加熱中に、容器10A,10Bから放射された遠赤外線が食品に満遍なく照射され、電子レンジのマイクロ波の一部とともに遠赤外線によって食品全体が満遍なく加熱される。
電子レンジ用容器10A,10Bは、食品が電子レンジのマイクロ波のみによって加熱される場合と比較し、容器10A,10Bにおいて食品が偏在したとしても、食品に対する加熱ムラが生じることはなく、食品全体を短時間に加熱することができる。電子レンジ用容器10A,10Bは、食品全体を短時間に加熱することができるから、食品の部分においてその旨味成分が破壊されることはなく、食品の旨味や芳味の低下を防ぐことができ、食品が本来有する食味を保持することができる。
電子レンジ用容器10A,10Bは、鉱物粉体の加熱処理の温度が200〜300℃の範囲にあり、鉱物粉体を200〜300℃で加熱処理することによって、鉱物粉体に200〜300℃までの耐熱性を付与することができるから、電子レンジのマイクロ波によって鉱物粉体の温度が200〜300℃近傍まで上昇したとしても、鉱物粉体の物性が変化することはなく、鉱物粉体の物性が変化することによる鉱物粉体の遠赤外線放射機能の低下(容器10A,10Bの遠赤外線放射機能の低下)を防ぐことができ、鉱物粉体(容器10A,10B)から放射される遠赤外線を利用して食品全体を短時間に満遍なく加熱することができる。
電子レンジ用容器10A,10Bは、鉱物粉体の混合割合が前記範囲、二酸化ケイ素や酸化アルミニウム、酸化第二鉄の割合が前記範囲、二酸化ケイ素や酸化アルミニウム、酸化第二鉄の誘電率が前記範囲にあり、容器10A,10Bから波長の異なる遠赤外線が放射され、容器10A,10Bを使用した電子レンジによる食品の加熱中に、鉱物粉体(容器10A,10B)から十分な量の遠赤外線を食品に放射することができるから、電子レンジのマイクロ波の一部とともに遠赤外線によって食品全体が満遍なく加熱され、食品に対する加熱ムラが生じることはなく、食品全体を短時間に加熱することができる。電子レンジ用容器10A,10Bは、誘電率が低い二酸化ケイ素や酸化第二鉄では電子レンジのマイクロ波の吸収が少なく、マイクロ波がそれら物質を透過して食品に照射されるから、遠赤外線のみならず、マイクロ波の一部によっても食品が加熱され、電子レンジ本来の加熱機能を利用して食品を加熱することもできる。
鉱物粉体から多くの遠赤外線を放射させるには鉱物粉体の平均粒径が大きい程よく、逆に、シリコーン樹脂と鉱物粉体との混合物の成型は鉱物粉体の平均粒径が小さい程よいが、電子レンジ用容器10A,10Bは、鉱物粉体の平均粒径が0.5〜220μmの範囲にあるから、遠赤外線の放射効率の向上と成型の容易性とを両立させることができ、遠赤外線を効率よく放射させることができるとともに、食品を収容可能な形状に容易に成型することができる。
電子レンジ用容器10A,10Bは、容器本体11や上蓋13、中蓋14の厚み寸法が4〜6mmの範囲、好ましくは4〜4.5mmの範囲にあり、それらの保形性が高く、手で持ったときに型くずれを起こし難く、容易に取り扱うことができる。容器10A,10Bは、容器本体11や上蓋13、中蓋14の厚み寸法が厚いから、容器本体11や上蓋13、中蓋14に多くの量の鉱物粉体を含むことができ、照射された電子レンジのマイクロ波によって容器本体11や上蓋13、中蓋14の温度が容易に上昇し、容器10A,10B全体から十分な量の遠赤外線を放射させることができる。