以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法について説明する。本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法は、ロール・ツー・ロール法を用いる。また、原版としては、フィルム状モールドを用いる。原版としてのフィルム状モールドを、第1のフィルム状モールドと言う。また、製造されるフィルム状モールドを第2のフィルム状モールドと言う。
第1のフィルム状モールドは、円筒状金型を原版として使用した、ロール・ツー・ロール法により製造できる。まず、第1のフィルム状モールドのためのフィルム状基材(以下、モールド基材と言う)の表面に光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。未硬化の光硬化性樹脂層に対して円筒状金型の周面上に設けられた微細凹凸構造を密着させ、その後、光硬化性樹脂層を光硬化させて、表面に微細凹凸構造が転写された樹脂硬化物層を形成する。
図1〜図2は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法に用いる第1のフィルム状モールドの作製方法の各工程を示す断面概略図及び平面概略図である。
まず、図1A及び図1Bに示すように、モールド基材11の表面に光硬化性樹脂を塗布し、光硬化性樹脂層12を形成する。光硬化性樹脂は、モールド基材11の走り方向(MD)に沿って略帯状に塗布される。モールド基材11の走り方向(MD)に対して略直交する方向を幅方向と呼び、この幅方向に沿った光硬化性樹脂層12の長さを第1の塗布幅W1と言う。
本実施の形態において、光硬化性樹脂は、離型性を良くするためにフッ素含有物質を含有している。
次に、未硬化の光硬化性樹脂層12に対して円筒状金型(図示しない)を押圧し、円筒状金型の周面上に形成された微細凹凸構造を密着させ、その後、光硬化性樹脂層12を光硬化させて、図2Aに示すように、表面に微細凹凸構造が転写された樹脂硬化物層13を設け、第1のフィルム状モールド10を得る。
円筒状金型を光硬化性樹脂層12に押圧したときに、図1A及び図1Bに示すように、光硬化性樹脂層12が幅方向に押し広げられ、樹脂硬化物層13に転写された微細凹凸構造の幅(以下、第1の転写幅W2と言う)は第1の塗布幅W1よりも大きくなる。樹脂硬化物層13の微細凹凸構造14が形成された表面(以下、凹凸形成面と言う)は、元々光硬化性樹脂が塗布された樹脂塗布領域13aと、光硬化性樹脂が押し広げられて新たに生じた拡張領域13bと、に区別することができる。
本発明者は、樹脂塗布領域13aと拡張領域13bとでは、表面のフッ素濃度が異なっていることを見出した。すなわち、光硬化性樹脂層12に含有されるフッ素含有物質は、空気面のような表面自由エネルギーの小さい界面との親和性が高いので、時間が経過するに従って、フッ素含有物質は光硬化性樹脂層12の空気層側に移動し、空気層と接触することにより、表面に偏析する。
光硬化性樹脂層12の樹脂塗布領域13aにおいては、光硬化性樹脂がモールド基材11の表面に塗布されてから、転写され光硬化するまでの間に、フッ素含有物質が光硬化性樹脂層12の空気層側に移動し、空気層に接触するのに充分な時間があるため、フッ素含有物質が表面に充分に偏析している。
一方、光硬化性樹脂層12の拡張領域13bにおいては、未硬化の光硬化性樹脂が金型によって押し広げられてから、光硬化するまで比較的短時間であるため、フッ素含有物質の移動時間が足らず、表面に充分に偏析していない。
後述するように、第2のフィルム状モールドを製造する際、第2のフィルム状モールドの樹脂硬化物層を第1のフィルム状モールドから剥離するが、フッ素含有物質が表面に充分に偏析している樹脂塗布領域13aではフッ素含有物質によって剥離性が高くなっているので、微細凹凸構造14の転写性に優れている。しかしながら、フッ素含有物質が表面に充分に偏析していない拡張領域13bではフッ素含有物質による剥離性の改善が不充分なので、微細凹凸構造14を転写できない。
図3及び図4は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法の一工程を示す断面概略図及び平面概略図である。
図3Aに示すように、第1のフィルム状モールド10から、第2のフィルム状モールドのためのフィルム基材(以下、被転写基材と言う)31の表面に形成された被転写樹脂層32へ、微細凹凸構造14を転写する。この際、被転写樹脂層32が樹脂硬化物層13の樹脂塗布領域13a内に収まるように、被転写樹脂層32の幅方向の長さ、すなわち第2の塗布幅W3を樹脂塗布領域13aの第1の塗布幅W1よりも小さくし、且つ、被転写樹脂層32を樹脂塗布領域13a内に貼り合わせる。その後、押圧しながら被転写樹脂層32を構成する光硬化性樹脂を光硬化して、図4に示すように、被転写基材31と共に光硬化後の被転写樹脂層32を剥離し、第2のフィルム状モールド30を得る。第2のフィルム状モールド30の被転写樹脂層32には、第1のフィルム状モールド10の微細凹凸構造14に対応した微細凹凸構造33が転写されている。
図4に示すように、押圧しながら光硬化して微細凹凸構造が転写され且つ硬化した後の被転写樹脂層32の幅を、第2の転写幅W4と言う。
なお、被転写樹脂層32は、フッ素含有物質を含む光硬化性樹脂を塗布して形成している。
上述のような本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法においては、フッ素含有物質の偏析の程度に偏りがある樹脂硬化物層13を備えた第1のフィルム状モールド10に対し、被転写基材31の表面に形成された、未硬化の光硬化性樹脂からなる被転写樹脂層32を貼り合わせる際、被転写樹脂層32の一部が拡張領域13bに及ぶと、フッ素含有物質が充分に偏析しておらず、フッ素濃度が低いので、光硬化後の被転写樹脂層32の第1のフィルム状モールド10の樹脂硬化物層13からの剥離性が悪く、微細凹凸構造の転写ができない。
しかしながら、被転写樹脂層32の第2の塗布幅W3を、第1のフィルム状モールド10の樹脂硬化物層13の第1の塗布幅W1も小さくし、且つ、被転写樹脂層32を樹脂塗布領域13a内に貼り合わせることにより、フッ素含有物質が充分に偏析し、表面のフッ素濃度が高い樹脂塗布領域13aの樹脂硬化物層13にのみ被転写樹脂層32を貼り合わせることができ、微細凹凸構造14の転写不良を防ぐことができる。
以下、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法についてさらに詳細に説明する。
(第1のフィルム状モールド作製工程)
図5は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法の第1のフィルム状モールドの作製工程に用いられる製造装置を示す概略図である。図5に示す製造装置100は、モールド基材101を送り出す原反ロール102と、第1のフィルム状モールド103を巻き取る巻き取りロール104とを備える。原反ロール102と巻き取りロール104との間には、モールド基材101の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、モールド基材101上に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段105と、ガイドロール106と、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型107と、モールド基材101上の光硬化性樹脂と円筒状金型107の外周面との間を密着させるニップロール108a及び108bからなる押圧手段108と、光硬化性樹脂に光を照射する光源109と、ガイドロール110と、が設けられている。
なお、溶媒を用いて光硬化性樹脂を塗布する場合には、光硬化性樹脂中の溶媒を乾燥する乾燥炉111をさらに備えていても良い。
上述のような構成からなる製造装置100を用いて、次のように第1のフィルム状モールドを作製する。まず、原反ロール102から送り出した光透過性のモールド基材101上に塗布手段105により光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。光硬化性樹脂層付きのモールド基材101は、ガイドロール106を経て円筒状金型107へ供給する。
次に、円筒状金型107を回転させながら、押圧手段108によって円筒状金型107の外周面を光硬化性樹脂層に密着させて光硬化性樹脂層の表面に微細凹凸構造を転写する。次に、光硬化性樹脂層に光源109から光を照射して光硬化性樹脂層を光硬化して樹脂硬化物層を形成して、第1のフィルム状モールド103を作製する。第1のフィルム状モールド103を、ガイドロール110を経て、巻き取りロール104で巻き取る。
なお、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、円筒状金型107から第1のフィルム状モールド103に転写された微細凹凸構造を保護するため、光硬化後の光硬化性樹脂層上に保護フィルム(カバーフィルム)をラミネートしてもよい。
第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、円筒状金型107と光硬化性樹脂層とを圧着する押圧手段108により円筒状金型107と光硬化性樹脂層とが密着した状態で、光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化する。円筒状金型107の外周面の微細凹凸構造と光硬化性樹脂層とが密着した状態であるため、円筒状金型107の外周面の微細凹凸構造を正確に光転写でき、また、酸素による硬化不足を回避することができる。
また、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、窒素雰囲気下において、円筒状金型107と光硬化性樹脂層とを密着させて光照射を行うことが好ましい。これにより、光硬化性樹脂層の光硬化性樹脂への大気中の酸素の接触を避けることができ、酸素による光重合反応の阻害を低減できるので、光硬化性樹脂を充分に硬化させることができるからである。
光硬化性樹脂層と円筒状金型107とを密着させて光を照射するためには、押圧手段108としてのニップロール108a、108bにより、光硬化性樹脂層と円筒状金型とを直接圧着して光を照射してもよい。また、巻出及び巻取制御によりモールド基材101の張力を制御して光硬化性樹脂層と円筒状金型とを圧着した状態で光を照射してもよい。これらの場合においては、光硬化性樹脂層の転写性により押し付け圧、張力は適宜調整することができる。
(第2のフィルム状モールドの複製工程)
図6は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法の第2のフィルム状モールドの複製工程に用いられる製造装置を示す概略図である。
図6に示す製造装置200は、被転写基材201を送り出すための第1の送り出しロール202と、完成した第2のフィルム状モールド203を巻き取るための第1の巻き取りロール204とを備える。第1の送り出しロール202と第1の巻き取りロール204との間には、第1のフィルム状モールド103の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、被転写基材201の表面に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段205と、第1のフィルム状モールド103を送り出すための第2の送り出しロール206と、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを貼り合わせるための貼合手段207と、ガイドロール208と、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを密着させるための押圧手段209と、光硬化性樹脂層に光を照射する光源210と、ガイドロール211と、第1のフィルム状モールド103を巻き取るための第2の巻き取りロール212が設けられている。
貼合手段207は、一対のラミネートロール207a、207bで構成されている。
押圧手段209は、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201がその外周面上を搬送されるゴムロール209aと、ゴムロール209aに第1のフィルム状モールド103と被転写基材201を押圧するニップロール209b、209cで構成されている。
また、光硬化性樹脂を溶媒に溶かして被転写基材201に塗布する場合には、塗布手段205の下流側に乾燥炉213を設けることができる。また、貼合手段207の下流側に乾燥炉214を設けても良い。
また、第1の送り出しロール202と、第2の送り出しロール206とを入れ替えても構わない。すなわち、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面上に光硬化性樹脂を塗布しても良い。
このような構成からなる製造装置200を用いて、次のように第2のフィルム状モールドの複製を行う。
まず、第1の送り出しロール202から、被転写基材201を送り出し、その表面上に、塗布手段205により光硬化性樹脂を直接塗布し、光硬化性樹脂層を形成する。
被転写基材201上に塗布する光硬化性樹脂の第2の塗布幅W3は、上述のように、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の第1の塗布幅W1よりも小さくする。
次に、貼合手段207によって第2の送り出しロール206から巻き出された第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面を、被転写基材201上の光硬化性樹脂層に貼り合わせる。
この際、被転写基材201上の光硬化性樹脂層は、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面の樹脂塗布領域内に張り合わせる。第1のフィルム状モールド103と被転写基材201との位置合わせは、例えば、フィルムの蛇行調整装置を設置することにより行うことができる。
第1のフィルム状モールド103及び被転写基材201を、ガイドロール208を経て、押圧手段209に供給する。押圧手段209において、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面を光硬化性樹脂層に密着させる。この状態で、光源210から光硬化性樹脂に光を照射し、光硬化性樹脂を光硬化させる。押圧手段209による密着によって酸素による未硬化を防止することができる。
この後、第1のフィルム状モールド103及び被転写基材201を、ガイドロール211まで搬送し、ここで、第1のフィルム状モールド103から表面に樹脂硬化物層が形成された被転写基材201、すなわち、第2のフィルム状モールド203を剥離する。このとき、第1のフィルム状モールド103の微細凹凸構造の反転形状が第2のフィルム状モールド203に転写される。
この後、第2のフィルム状モールド203を、第1の巻き取りロール204に巻き取る。一方、第1のフィルム状モールド103を、第2の巻き取りロール212に巻き取る。
以下、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法の構成要素についてさらに詳細に説明する。
(フィルム基材)
第1のフィルム状モールドの作製において用いられるモールド基材101や第2のフィルム状モールドの複製に用いられる被転写基材201には光透過性があるフィルム状基材を用いることができる。
フィルム状基材としては、紫外・可視光領域で使用する光源に対して実質的に光透過性を有する材料を主成分とするものであれば特に限定されないが、ハンドリング性、加工性に優れた樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリアセチルセルロール(TAC)樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
フィルム状基材は、ロール・ツー・ロール法に適用するためフィルム状であることが好ましい。
フィルム状基材の厚みは、材料にもよるが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。200μm以下であれば、光ナノインプリントの光源に使用される紫外線の透過率が良好であり、光硬化に充分な光量を得ることができる。20μmであれば、フィルムとしての剛性を保持することができるため、ハンドリングが容易である。
フィルム状基材の表面には、光硬化性樹脂との密着性向上のため、プライマー処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理を施すことができる。
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法において、上述のように、円筒状金型107又は第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に密着した状態で光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化させる。このため、使用する光硬化性樹脂にもよるが、フィルム状基材には、波長200nm〜500nmの範囲で良好な光透過率が求められる。使用する光硬化性樹脂の感光性にもよるため、波長200nm〜500nmの範囲で具体的な透過率の値については特に限定しないが、365nm、405nm及び全光線透過率が良好であれば、光硬化性樹脂が充分に光硬化するため好ましい。また、波長200nm〜500nmの範囲における透過率が良好であれば、光硬化性樹脂の硬化に要する光照射エネルギーを低減でき、且つ、転写の迅速化を達成することができる。
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂層は光硬化性樹脂で形成される。光硬化性樹脂は、転写性、原版からの剥離性、フィルム状基材との密着性、粘度、製膜特性、感光性、硬化後の力学特性、樹脂鋳型作製時の樹脂層との剥離性を考慮して選択する。
光硬化性樹脂層を光硬化して得られる樹脂硬化物層は、微細凹凸構造が形成された凹凸形成面の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)が、光硬化性樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高いことが好ましい。
これによれば、樹脂硬化物層における凹凸形成面側のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に高いことから、例えば、第2のフィルム状モールドの樹脂硬化物層の第1のフィルム状モールドからの離型性や、第2のフィルム状モールドから展開される微細構造付製品を作製する場合の第2のフィルム状モールドからの微細構造付製品の離型性が向上する。
樹脂硬化物層中のフッ素原子は、フッ素原子含有物質によって導入される。フッ素含有物質は、界面活性剤、フッ素含有重合性モノマー(アクリレート、メタクリレート、エポキシ)、離型剤、表面処理剤及びフッ素系溶媒を指す。光硬化性樹脂中での運動性の観点から、好ましくは、フッ素系界面活性剤及びフッ素含有重合性モノマーである。
本実施の形態に係るフィルム状モールドにおいては、樹脂硬化物層の凹凸形成面側の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなるように、すなわちフィルム基材側の表面部から凹凸形成面側の表面部に向けて濃度勾配を設けることが好ましい。これにより、樹脂硬化物層とフィルム基材との間の密着性を維持しつつ、樹脂硬化物層の微細凹凸構造からの被処理体の離型性が向上する。つまり、第1のフィルム状モールドからの第2のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドからの第3のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドから微細構造付製品の離型性が向上する。
なお、樹脂硬化物層の濃度勾配としては、凹凸形成面側の樹脂硬化物層のフッ素元素濃度(Es)が樹脂硬化物層中のフッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなる範囲となればどのようなものであってもよい。例えば、濃度勾配としては、樹脂硬化物層のフィルム基材側の表面部から凹凸形成面側の表面部に向けて連続的に無段階に変化するものであってもよく、階段状に段階的に変化するものであってもよい。また、樹脂硬化物層のフィルム基材側の表面部から凹凸形成面側への厚み方向において、フィルム状基材側の表面部から樹脂硬化物層の中央部までの濃度勾配と、樹脂硬化物層の中央部から凹凸形成面側の表面部までの濃度勾配とが同一であってもよく、異なる濃度勾配を有していてもよい。
本発明においては、樹脂硬化物層の表面部のフッ素元素濃度(Es)は、後述するXPS法により求めた値を採用する。本発明においては、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Es)としている。
一方、本明細書中、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)とは、仕込み量から計算した値、予め硬化樹脂表層を削り内面を露出してXPS法により求めた値、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析した値、又はイオンクロマトグラフ分析から解析した値を採用する。すなわち、樹脂硬化物層全体に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成されるフィルム状モールドの、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで光硬化性樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
光硬化性樹脂としては、例えば、光重合開始剤により重合可能な各種アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、シリコーン系化合物などを使用することができる。これらの中でも、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましく、アクリレート化合物、メタクリレート化合物を用いることがより好ましい。これらの化合物は単独種類で用いてもよく、エポキシ化合物とアクリレート化合物との組合せなど、複数種類を組合せて用いてもよい。
アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、フェノキシエチルアクリレート、及びベンジルアクリレートなどの芳香族系の(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの炭化水素系の(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートなどの官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、シリコーン系のアクリレートなどが挙げられる。
また、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、シリコーン系アクリレート化合物などが挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。これらは1種又は2種以上の組合せで用いることができる。また、市販のナノインプリント用樹脂であるPAKシリーズ(東亞合成社製)、NIFシリーズ(AGC社製)、NIACシリーズ(ダイセル化学工業社製)などを使用することができる。これらの中でも、PAK−02、NIAC−702が樹脂シートへの塗布特性とパターン転写性から特に好ましい。
また、光硬化性樹脂としては、上記アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリコーン系化合物のうち、炭化水素中の水素がフッ素に置換されたフッ素含有化合物を用いることができる。フッ素含有化合物を用いることにより、硬化後の表面自由エネルギーが減少し、転写工程における原版(円筒状金型107及び第1のフィルム状モールド103)からの被転写結果物(第1のフィルム状モールド103及び第2のフィルム状モールド203)の離型性が向上する。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性など)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有するとフィルム状基材との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基などが挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエンなどを用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2などのフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2などのフルオロジエンが挙げられる。
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は下記化学式(2)で示されるフッ素含有(メタ)アクリレートであることで、樹脂硬化物層の凹凸形成面の表面自由エネルギーをより低くできるので、樹脂硬化物層とフィルム状基材との間の密着性が向上する。また、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)を減少させ、樹脂硬化物層の強度を保つことができるため、繰り返し転写性がより向上するため好ましい。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性などの表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HLなど)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SFなど)、ダイキン社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」などが挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、重量平均分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から重量平均分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、重量平均分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
光硬化性樹脂としては、感光性を向上するため光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光重合開始剤は、使用する光源波長及び基材(透明シート)、諸物性などを考慮し、選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが好ましい。また、これらは、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。市販されている開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE」(例えば、IRGACURE651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「DAROCUR」(例えば、DAROCUR1173、MBF、TPO、4265)などが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、光感度向上のため増感剤を含むものが好ましい。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4’−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4’−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ベンズトリアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(tert−−ブチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられる。また、増感剤は、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。
光硬化性樹脂は、溶媒を添加して粘度を調整することができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの溶媒中でも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン及びメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールが好ましい。これらの溶媒は、光硬化性樹脂の塗布方法、塗布膜厚及び粘度に応じて、適宜添加することができ、限定されるものではないが、例えば、硬化性樹脂100重量部に対して溶媒を1重量部〜10000重量部添加することができる。
光硬化性樹脂は、例えば、光硬化、熱硬化、電子線による硬化及びマイクロウェーブにより硬化させることができる。これらの中でも、光硬化を用いることが好ましい。フィルム基材に光硬化性樹脂を上記塗布方法により塗布した後、所定波長における任意の光量で光硬化性樹脂に光を照射することにより、光硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。
(塗布手段)
塗布手段105、205によるフィルム状基材への光硬化性樹脂の塗布方法としては、公知の塗布コーター又は含浸塗布コーターを用いた塗布方法が挙げられる。具体的には、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ラミネーターなどを用いた塗布方法が挙げられる。これらの塗布方法は、必要に応じて1種の塗布方法を用いてもよく、2種以上の塗布方法を組合せて用いてもよい。また、これらの塗布方法は、生産性の観点から連続方式で塗布することが好ましい。また、ディップコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター又はラミネーターを使用した連続方式の塗布方法が特に好ましい。
(光源)
光硬化性樹脂への光照射に用いる光源109、210としては、特に制限されるものではなく、用途及び設備に応じて種々の光源を用いることができる。例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、LEDランプ、キセノンパルス紫外線ランプなどを用いることができる。また、光硬化性樹脂は、波長200nm〜500nmの紫外線又は可視光を露光量が100mJ/cm2〜2000mJ/cm2となるように照射することにより硬化することができる。また、酸素による光硬化反応の阻害を防止する観点から、光照射時には酸素濃度が低い状態で光を照射することが望ましい。
(円筒状金型)
第1のフィルム状モールド103の作製に用いる原版には、連続生産性や歩留まりの観点から円筒状金型107を用いることが好ましい。また、円筒状金型107は継ぎ目のないことがより好ましい。継ぎ目があった場合、最終的に得られる微細凹凸構造付製品において、継ぎ目部に対応する微細凹凸構造がない箇所を切り落とすため、歩留まりが悪化するだけでなく、切り落とす作業が余分に入るため連続生産性も悪化する。
円筒状金型107としては、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型を用いる。微細凹凸構造は、製造しようとする微細凹凸構造付製品の微細凹凸構造の形状に応じたものである。
円筒状金型107の微細凹凸構造は、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法などの加工方法により、円筒状の基材の外周面に直接形成することができる。これらの中でも、微細凹凸構造に継目のない円筒状金型を得る観点から、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。
また、円筒状金型107としては、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細構造を樹脂材料(フィルム)へ転写し、このフィルムを円筒状金型の外周面に位置精度よく張り合わせたものを用いてもよい。また、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細構造を電鋳法によりニッケルなどの薄膜に転写し、この薄膜をローラーに巻き付けたものを用いてもよい。
円筒状金型107の材料としては、微細凹凸構造の形成が容易であり、耐久性に優れた材料を用いることが望ましい。このような観点から、ガラスロール、石英ガラスロール、ニッケル電鋳ロール、クロム電鋳ロール、アルミロール、又はSUSロール(ステンレス鋼ロール)が好ましい。
ニッケル電鋳ロール及びクロム電鋳ロール用の母材としては、導電性を有する導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば、鉄、炭素鋼、クロム鋼、超硬合金、金型用鋼(例えば、マルエージング鋼など)、ステンレス鋼、アルミ合金などの材料が好適に用いられる。
円筒状金型107の表面には、離型処理を施すことが望ましい。離型処理を施すことにより、円筒状金型107の表面自由エネルギーを低下させることができるので、連続的に光硬化性樹脂へ転写した場合においても、良好な剥離性及び微細凹凸構造のパターン形状を保持することができる。また、第1のフィルム状モールド103から複製される第2のフィルム状モールド203まで、円筒状金型107の離型性が反映されるため、離型処理を行うことが好ましい。第1のフィルム状モールド103の作製には、対向する離型処理によって達成された低い表面自由エネルギーを有する円筒状金型107の表面に光硬化性樹脂が接触することで、フッ素成分が強く偏析される。第1のフィルム状モールド103から第2のフィルム状モールド203を複製する際にも、同様のメカニズムで進行するため、最初の第1のフィルム状モールド作製工程における金型の表面状態によって、後工程の離型性と転写性が支配される。
離型処理には、市販の離型剤及び表面処理剤を用いることができる。市販の離型剤及び表面処理剤としては、例えば、オプツール(ダイキン化学工業社製)、デュラサーフ(ダイキン化学工業社製)、ノベックシリーズ(3M社製)などが挙げられる。また、離型剤、表面処理材としては、円筒状金型107の材料の種類及び転写される光硬化性樹脂との組合せにより、適宜好適な離型剤、表面処理剤を選択することができる。
(塗布幅及び転写幅の関係と転写不良)
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法において、第1の塗布幅W1とは、塗布手段105から光硬化性樹脂をモールド基材101に塗布したときの幅を指す。この第1の塗布幅W1は、モールド基材101の幅よりも必ず狭くなる。
塗布手段105から第1の塗布幅W1で塗布された光硬化性樹脂中のフッ素原子含有物質は空気層と接することで、表面に偏析する。これは、表面自由エネルギーの小さい空気層側にフッ素原子含有物質が移動することが、光硬化性樹脂中に存在するよりもエネルギー的に安定だからである。フッ素原子含有物質の運動性を高めるために、塗布後の光硬化性樹脂に対し、加熱処理を施すことができる。
また、第1の転写幅W2とは、モールド基材101上に第1の塗布幅W1で塗布された光硬化性樹脂に、円筒状金型107及び押圧手段108によって、微細凹凸構造が転写される幅を指す。押圧手段108によって、光硬化前の光硬化性樹脂はモールド基材101の幅方向に沿って押し広げられ、第1の塗布幅W1よりも第1の転写幅W2は必ず大きくなる。
押圧手段108は、微細凹凸構造の転写に必要である。第1の転写幅W2は、モールド基材101の張力、フィルム基材の種類又は光硬化性樹脂の粘度によって適宜調整することができる。
押圧手段108によって、光硬化性樹脂がモールド基材101の裏面に回り込むのを防ぐため、モールド基材101の幅よりも第1の転写幅W2が小さくなることが好ましい。
また、押圧手段108による押圧は、限りなく弱いことが好ましい。この後に続く、第2のフィルム状モールド203の作製面積を大きくするためには、第1の転写幅W2を第1の塗布幅W1に近付ける必要があるためである。
本発明者は、第1の塗布幅W1と第1の転写幅W2との差分エリア、すなわち、上述の拡張領域13b(図2A及び図2B参照)は、微細凹凸構造が転写されてはいるが、表面フッ素濃度が第1の塗布幅W1のエリアに比べて低いことを突き止めた。これは、第1の塗布幅W1で塗布された光硬化性樹脂は空気層と接触することで、充分にフッ素含有物質が偏析しているが、差分エリアでは、光硬化性樹脂が押圧手段108によって後から塗り広げられているため、予め空気層と接触していたエリアではなく、フッ素偏析が充分ではないことを表している。
フッ素含有物質は、空気面や離型処理された円筒状金型のような表面自由エネルギーの小さい界面との親和性が高いため、空気面や円筒状金型107側に移動する。しかし、光硬化性樹脂が塗り広げられ混練された差分エリアでは、移動時間が足らず、充分に偏析しない。モールド基材101の線速を落とすことによって差分エリアでのフッ素偏析を促進させることは可能だが、これではスループットが向上しない。フッ素原子含有物質が充分に偏析していない差分エリアは、表面フッ素濃度が低く、その後の第2のフィルム状モールド203を作製することができない。よって、第2のフィルム状モールド203の第2の転写幅W4は、第1の塗布幅W1に依存し、第1の塗布幅W1よりも狭くする必要がある。
本実施の形態に係る第2の塗布幅W3とは、塗布手段205から光硬化性樹脂を被転写基材201に塗布した幅を指す。従って、被転写基材201の幅よりも第2の塗布幅W3は必ず狭くなる。塗布手段205から第2の塗布幅W3で塗布された光硬化性樹脂中のフッ素原子含有物質は、空気層と接することで、第1のフィルム状モールド103の作製時と同様に表面に偏析する。
本発明に係る第2の転写幅W4とは、被転写基材201上に第2の塗布幅W3で塗布された光硬化性樹脂に第1のフィルム状モールド103から押圧手段209によって微細凹凸構造が転写される幅を指す。
第1のフィルム状モールド103の作製時と異なり、フィルムとフィルムの転写貼合であるため、押圧手段209が弾性体のゴムロールであった場合、光硬化前の光硬化性樹脂は大きくは押し広がらない場合がある。これは、第1のフィルム状モールド103の作製時は、円筒状金型107が剛体であるため、押圧された光硬化前の光硬化性樹脂は、逃げ場がモールド基材101の両側部しかなく、幅方向に押し広げられる。一方、第2のフィルム状モールド203を複製する場合は、押圧手段209を構成するロールが剛体でない限り、押圧による圧力を吸収するので、光硬化性樹脂が押し広がらない。つまり、第2のフィルム状モールド203の複製時は、第2の塗布幅W3と第2の転写幅W4がほぼ同じになる場合がある。
押圧手段209は、微細凹凸構造の転写に必要である。第2の転写幅W4は、被転写基材201の張力、フィルム基材の種類又は光硬化性樹脂の粘度によって適宜調整することができる。
既に述べたが、フッ素原子含有物質が充分に偏析していない第1の塗布幅W1と第1の転写幅W2との差分エリアは、表面フッ素濃度が低く、その後の第2のフィルム状モールド203が複製できない。よって、第2のフィルム状モールド203の第2の転写幅W4は、第1の塗布幅W1よりも狭くする必要がある。第1のフィルム状モールド103のフッ素原子含有物質が充分に偏析していない差分エリアでは、第2のフィルム状モールド203の複製における塗布後の光硬化性樹脂のフッ素原子含有物質との親和性が低く、空気層と接触で偏析したフッ素原子含有物質が樹脂中に分散すると考えている。第1の塗布幅W1と第1の転写幅W2との差分エリアは、表面フッ素濃度が低いため、第2のフィルム状モールド203との離型性が悪く、転写できないことも考えられる。
押圧手段209によって、光硬化性樹脂が押し広げられ、第2の転写幅W4が第1の塗布幅W1より大きくなると、その差分エリアは転写不良になる。このため、第2のフィルム状モールド203の複製時の押圧手段209による押圧は、第1のフィルム状モールド103の作製時と同様に限りなく弱いことが好ましい。また、押圧手段209には、金属ロールなどの剛体ではなく、ゴム製のロールを用いることが好ましい。
ゴム製ロールの硬度としては、ショア硬度50度以下が好ましく、ショア硬度30度以下であればさらに好ましい。ショア硬度50度以下であれば、微細構造の転写が良好で、低圧で押圧すれば、光硬化性樹脂の広がりを抑制することができ、ショア硬度30度以下であれば、0.1MPaの押圧でも粘度40cP以上の光硬化性樹脂であれば広がらない。上述のゴム製ロールのゴム層の厚みは、10mm以上が好ましい。10mm以上であれば、ゴム製ロールの芯材に使用される剛体の影響を受けることがない。
(第nのフィルム状モールドの作製)
以上説明した本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法では、円筒状金型107から微細凹凸構造を転写して作製した第1のフィルム状モールド103を原版として第2のフィルム状モールド203を複製する場合について説明した。しかし、第2のフィルム状モールド203を原版として第3のフィルム状モールドをさらに複製することも可能である。すなわち、本発明は、第(n−1)(nは2以上の整数)のフィルム状モールドから第nのフィルム状モールドの製造方法に適用することが可能である。
図7は、本実施の形態に係る第nのフィルム状モールドの製造方法を示す説明図である。
図7に示すように、円筒状金型M−0を原版として第1のフィルム状モールドM−1を作製し、この第1のフィルム状モールドM−1を原版として第2のフィルム状モールドM−2を複製できる。さらに、第2のフィルム状モールドM−2を原版として第3のフィルム状モールドM−3を複製できる。同様にして、第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)を原版として、第nのフィルム状モールドM−nを複製できる。
つまり、第nのフィルム状モールドM−nを複製するために用いられた第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)は、一つ前の第(n−2)のフィルム状モールドM−(n−2)(図示せず)を原版として用いて作製されたものである。
このように、原版としての第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)から第nのフィルム状モールドM−nへの微細凹凸構造の転写において、上述のように、第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)の作製時の光硬化性樹脂の第1の塗布幅W1よりも、第nのフィルム状モールドM−nの複製時の第2の塗布幅W3を小さくし、且つ、第nのフィルム状モールドM−nのための被転写基材上に形成された光硬化性樹脂層を、第(n−1)のフィルム状モールドの樹脂硬化物層の凹凸形成面であって樹脂塗布領域13a内に貼り合わせる。これにより、第(n−1)のフィルム状モールドのフッ素含有物質が充分に偏析し、表面のフッ素濃度が高い樹脂塗布領域13aの樹脂硬化物層13にのみに第nのフィルム状モールドM−nの光硬化樹脂層を貼り合わせることができ、微細凹凸構造の転写不良を防ぐことができる。
上述のようにして製造された第2〜第nのフィルム状モールドM−2〜M−nのいずれも、これを原版として微細凹凸構造付き製品Pを量産するために使用することができる。
(第nのフィルム状モールドの応用例)
以上説明した本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法により得られた第nのフィルム状モールドは、例えば、反射防止材の製造、レジストマスクの作製、細胞培養培地、超撥水加工及び超親水加工に応用することができ、有用である。以下に、(1)反射防止材の製造及び(2)レジストマスクの作製への応用例について説明する。
(1)反射防止材の製造
ピラー形状、円錐形状、角錐形状、惰円錐形状を含む周期的な微細凹凸構造を有するものは、反射防止効果があるモスアイ構造の反射防止膜として用いることができる。ここで、モスアイ構造とは、サブミクロンオーダーのピラミッド状凹凸構造を蛾の目のような2次元パターンに配置した構造をいう。このような微細構造体においては、表面に形成されるナノオーダーの微細凹凸構造が滑らかな屈曲率傾斜を誘発し、界面の屈折率差で発生する反射が起きないため、反射防止膜として好適に用いることが可能となる。
図8は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いた反射防止材の製造の各工程を示す断面概略図である。
図8Aに示すように、第nのフィルム状モールド801を用意する。第nのフィルム状モールド801は、フィルム状基材802と、フィルム状基材802の表面に設けられた微細凹凸構造を有する樹脂硬化物層803とで構成されている。
次に、図8Bに示すように、第nのフィルム状モールド801の樹脂硬化物層803の微細凹凸構造に対して樹脂804を塗布する。この際、溶融樹脂であっても溶液であっても構わない。また、樹脂804が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂のいずれであっても構わない。
その後、図8Cに示すように、基材805を樹脂804上に積層する。さらに、樹脂804から第nのフィルム状モールド801を剥離することで、図8Dに示すように、反射防止材800を得ることができる。
(2)レジストマスクの作製
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法により得られた第nのフィルム状モールドを用い、エッチング対象である基板の表面にレジストマスクを作製できる。
図9は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いたレジストマスクの作製の各工程を示す断面概略図である。
図9Aに示すように、第nのフィルム状モールド901を用意する。第nのフィルム状モールド901は、フィルム状基材902と、フィルム状基材902の表面に設けられた微細凹凸構造を有する樹脂硬化物層903とで構成されている。
次に、図9Bに示すように、第nのフィルム状モールド901の樹脂硬化物層903の微細凹凸構造にレジスト材料904を塗布し、埋め込む。レジスト材料904は、使用する基板に合わせて選択できる。レジスト材料904が樹脂である場合には、溶融樹脂であっても溶液であっても構わない。樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱分解性樹脂、光硬化性樹脂又は光分解性樹脂のいずれであっても構わない。
その後、図9Cに示すように、基板905を、樹脂硬化物層903上に配置し、レジスト材料904を何らかの手法で貼り合わせる。さらに、第nのフィルム状モールド901を離型することで、図9Dに示すように、基板905の表面上に、微細凹凸構造の反転構造を有するレジストマスク906が形成される。
図10は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いたレジストマスク作製の他の例の各工程を示す断面概略図である。
図10Aに示すように、基板1001の表面上にレジスト材料1002を塗布する。次に、レジスト材料1002に対して、図10Bに示すように、第nのフィルム状モールド901の樹脂硬化物層903の凹凸形成面を貼り合わせ、押圧する。この後、第nのフィルム状モールド901を離型して、図10Cに示すように、基板1001の表面上に、微細凹凸構造の反転構造を有するレジストマスク1003が形成される。
なお、レジスト材料1002と基板1001との間に接着層を設けることや、もう一層レジスト材料を積層する二層レジストとすることもできる。
上述のようにして作製されたレジストマスク906、1003を用いて、基板905、1001をエッチングすることにより、基板905、1001に微細凹凸構造を形成できる。
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法によって得られた第nのフィルム状モールド801、901では、樹脂硬化物層803、903の凹凸形成面側の表面フッ素濃度が高いため、樹脂804やレジスト材料904、1002との離型性が良好となる。特に、第nのフィルム状モールド801、901は、押圧手段209に硬質な材料からなるロールを使用した場合、図3及び図4に示す第2のフィルム状モールド30と同様に、第2の塗布幅W3の範囲(樹脂塗布領域)内は、第2の塗布幅W3と第2の転写幅W4との差分エリア(拡張領域)に比べて表面フッ素濃度が高いので、樹脂804やレジスト材料904、1002との離型性及び転写性が優れる。
すなわち、本実施の形態に係るフィルム状モールドは、モールド基材と、前記モールド基材の表面上に設けられた樹脂硬化物層と、を具備し、前記樹脂硬化物層は、前記モールド基材の表面上に、フッ素含有物質を含有する光硬化性樹脂を第1の塗布幅で塗布して光硬化性樹脂層を形成し、前記光硬化性樹脂層を原版の微細凹凸構造に貼合し、前記原版へ前記光硬化性樹脂層を押圧しながら前記光硬化性樹脂層を光硬化して形成したフィルム状モールドであって、前記樹脂硬化物層の表面に転写された微細凹凸構造の幅が、前記第1の塗布幅よりも狭いことを特徴とする。
原版は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法に従って作製された第(n−1)のフィルム状モールドであることが好ましい。しかし、本実施の形態とは異なる方法で作製されたフィルム状モールドであっても良い。
また、光硬化性樹脂を原版へ押圧する押圧手段209に硬質な材料からなるロールを使用した場合に差分エリアが生じやすいので、本発明の効果である離型性及び転写性の向上は顕著に発揮される。
(微細凹凸構造)
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法において、微細凹凸構造とは、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凸部を複数含むピラー形状、又は、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凹部を複数含むホール形状或いはラインアンドスペース形状である。ここで、「ピラー形状」とは、「柱状体(錐状態)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。
微細凹凸構造のスケールに関しては、用いられる用途に依存するため、特に規定することはしないが、数十ナノメートルから数十ミクロンメートルを指す。またこのスケールは、微細構造体一つの大きさ、径、深さ、ピッチであっても構わない。また、ランダムな構造も微細構造体の一つとすることができる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
実施例及び比較例の説明で使用する「Es/Eb」とは、微細凹凸構造を表面に具備する樹脂モールドの、XPS法により測定される表面フッ素元素濃度(Es)と、平均フッ素元素濃度(Eb)の比率を意味する。
また、樹脂モールドの表面フッ素元素濃度はX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)にて測定した。XPSにおける、X線のサンプル表面への侵入長は数nmと非常に浅いため、XPSの測定値を本発明における樹脂モールド表面のフッ素元素濃度(Es)として採用した。樹脂モールドを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
一方、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定するには、樹脂中が露出するように物理的に切り出した切片を、上記表面フッ素濃度解析と同様にXPSによって、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定した。
[実施例1]
(第1のフィルム状モールド作製工程)
(a)円筒状金型作製
円筒状金型の基材には石英ガラスロールを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により微細凹凸構造を石英ガラスロールの表面に形成した。石英ガラスロールの表面に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(b)光硬化性樹脂
OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、Irgacure 184(Ciba社製)及びIrgacure 369(Ciba社製)を混合し、光硬化性樹脂を調液した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)は、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、100質量部に対し、10〜20質量部添加した。なお、後述する第1のフィルム状モールドから第2又は第3のフィルム状モールドを作るフィルム状モールド複製工程では、第1のフィルム状モールドを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用し、第2又は第3のフィルム状モールドを作製した。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1の塗布幅(W1)270mm、塗布膜厚4μmになるように光硬化性樹脂を塗布した。次いで、円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された第1のフィルム状モールド(長さ200m、第1の転写幅(W2)290mm)を得た。第1のフィルム状モールドの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は460nm、凸部高さは460nmであった。
得られた第1のフィルム状モールドの幅方向の中心付近の表面フッ素元素濃度(Es)は35atom%で、樹脂中のフッ素元素濃度(Eb)は9atom%、よって比率、Es/Ebは、3.89であった。
(第2のフィルム状モールド複製工程)
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1のフィルム状モールドを作製した際に使用した樹脂と同様の光硬化性樹脂を第2の塗布幅(W3)250mm、塗布膜厚4μmになるように塗布した。次いで、円筒状金型から直接転写し得られた第1のフィルム状モールドの微細凹凸構造面に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された、円筒状金型と同様の微細凹凸構造を具備する第2のフィルム状モールド(長さ180m、第2の転写幅(W4)255mm)を得た。第2のフィルム状モールドの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部の開口幅はφ230nm、凹部同士の隣接距離は460nm、凹部高さは460nmであった。
(第3のフィルム状モールド複製工程)
上記第2のフィルム状モールド複製工程と同様の手法で、原版として第2のフィルム状モールドを用い、又、第3の塗布幅(W5)が第2の塗布幅(W3)より狭くなるようにし、第3のフィルム状モールドを作製した。得られた第3のフィルム状モールド(長さ170m、第3の転写幅(W6)240mm)の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部の開口幅はφ230nm、凸部同士の隣接距離は460nm、凸部高さは460nmであった。
(比較例)
(第1のフィルム状モールド作製工程)
(a)円筒状金型作製
円筒状金型の基材には石英ガラスロールを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により微細凹凸構造を石英ガラスロールの表面に形成した。石英ガラスロールの表面に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(b)光硬化性樹脂
OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、Irgacure 184(Ciba社製)及びIrgacure 369(Ciba社製)を混合し、光硬化性樹脂を調液した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)は、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、100質量部に対し、10〜20質量部添加した。なお、後述する第1のフィルム状モールドから第2のフィルム状モールドを作るフィルム状モールド複製工程では、第1のフィルム状モールドを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用し、第2のフィルム状モールドを作製した。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1の塗布幅(W1)270mm、塗布膜厚4μmになるように光硬化性樹脂を塗布した。次いで、円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された第1のフィルム状モールド(長さ200m、第1の転写幅(W2)290mm)を得た。第1のフィルム状モールドの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は460nm、凸部高さは460nmであった。
得られた第1のフィルム状モールドの第1の塗布エリア付近の表面フッ素元素濃度(Es)は35atom%で、樹脂中のフッ素元素濃度(Eb)は9atom%、よって比率、Es/Ebは、3.89であった。
(第2のフィルム状モールド複製工程)
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1のフィルム状モールドを作製した際に使用した樹脂と同様の光硬化性樹脂を第2の塗布幅(W3)290mm、塗布膜厚4μmになるように塗布した。次いで、円筒状金型から直接転写し得られた第1のフィルム状モールドの微細凹凸構造面に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施した。
しかしながら、第2の塗布幅(W3)290mmと第1の塗布幅(W1)270mmの差分のエリアにおいて、剥離不良が発生した。
また、第2のフィルム状モールド作製時に剥離不良を誘発した第1のフィルム状モールドの第1の転写幅(W2)と第2の塗布幅(W3)との差分のエリアの表面フッ素元素濃度は、(Es)は27atom%で、樹脂中のフッ素元素濃度(Eb)は9atom%、よって比率、Es/Ebは、3.00であった。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。