JP2014161844A - 海水淡水化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】圧力容器中のバイオフィルムの発生度合いを精度よく検知可能な海水淡水化システムを提供する。
【解決手段】RO膜12を収容した膜監視用圧力容器11と、膜監視用圧力容器11の下流側に設けられ、膜監視用圧力容器11に収容したRO膜12より長い膜長のRO膜22を収容するとともに膜監視用圧力容器11から流出した濃縮水が通流する補助用圧力容器21と、膜監視用圧力容器11に流入する海水の流量を計測する膜監視用流量計61と、膜監視用圧力容器11から流出する濃縮水の流量を計測する補助用流量計62と、膜監視用流量計の計測値および補助用流量計の計測値に基づいて膜監視用圧力容器11の内部の逆浸透膜の透過水性能を評価する監視装置71と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、海水から淡水を得る海水淡水化システムに関する。
海水から淡水を製造し、飲用あるいは工業用として提供する海水淡水化システムとしては、蒸発法、逆浸透法など種々の方式が提案されている。例えば、蒸発法は,ボイラなどの熱源を用いて海水を熱して蒸気を得,さらにこの蒸気を冷却して淡水を得る方法である。一方、逆浸透法は,加圧した海水を逆浸透膜(RO:Reverse Osmosis膜)と呼ばれる濾過膜に通すことで海水から淡水(造水)を濾し出す方法である。
逆浸透法による海水淡水化システムでは、RO膜の濾過性能が造水(透過水)の製造量に大きく影響する。例えば、海水中には塩分、微量金属のほか有機物・微生物が含まれており、特に微生物は、有機物を餌としてRO膜の表面にバイオフィルム(バイオファウリングともいう)と呼ばれるコロニーを形成し、濾過能力を阻害する。一般にバイオフィルムが発生した海水淡水化システムでは、造水の製造量が大きく低下することが知られている。
バイオフィルムの発生を防止する方法としては、主に海水から微生物を除去するための前処理装置の設置が提案されている。前処理装置では、例えば、海水に薬品を投入することにより海水中の有機物を除去あるいは微生物を死滅させ、前処理装置内に沈殿・濾過させる方法が提案されている。一方、RO膜の表面からバイオフィルムを取り除く方法としては、RO膜の入口から薬品を投入し、化学的にバイオフィルムを除去する方法が提案されている。しかし、バイオフィルムの発生要因となる微生物の種類は多様であり、これらの方法によってバイオフィルムの発生を完全に防止することは困難である。
そこで、海水淡水化システムの圧力・流量・水の成分などを監視し、バイオフィルムの発生を検知する手法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、監視対象となるRO膜に対し、供給水圧力、供給水側の膜面浸透圧および透過水の流量を計測し、これらの計測値に基づいて膜の汚れを判定する運転方法が記載されている。この運転方法は、RO膜上に発生したバイオフィルムがRO膜を透過する水の流れを阻害するという特性を利用し、供給水側の圧力、膜面浸透圧および透過水の流量からバイオフィルムの発生度合いを間接的に評価するものである。
特開平8−39065号公報
しかしながら、RO膜を圧力容器中に水の流れ方向に沿って複数配置した構造を備える海水淡水化システムにおいては、海水および透過水の流量から直接的にRO膜の汚れを判定することは難しい。これは、RO膜上におけるバイオフィルムの発生・進展の度合いが、圧力容器上流側で高く、また圧力容器下流側で低いという特性による。このような特性下において、RO膜を透過する透過水の量は、圧力容器上流側で低下するものの圧力容器下流側において相対的に上昇する。その結果、圧力容器全体としての流量変化が僅少となり、バイオフィルム発生の早期検知が難しいという問題がある。
本発明は、前記した従来技術の問題を解決するものであり、圧力容器中のバイオフィルムの発生度合いを精度よく検知可能な海水淡水化システムを提供することを課題とする。
本発明は、海水を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプで加圧した海水から淡水となる透過水を得る逆浸透膜と、前記逆浸透膜を収容した第1圧力容器と、前記第1圧力容器の下流側に設けられ、前記第1圧力容器に収容した逆浸透膜より長い膜長の逆浸透膜を収容するとともに前記第1圧力容器から流出した濃縮水が通流する第2圧力容器と、前記第1圧力容器に流入する海水の流量を計測する第1流量計と、前記第1圧力容器から流出する濃縮水の流量を計測する第2流量計と、前記第1流量計の計測値および前記第2流量計の計測値に基づいて前記第1圧力容器の内部の逆浸透膜の透過水性能を評価する制御装置と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、圧力容器中のバイオフィルムの発生度合いを精度よく検知可能な海水淡水化システムを提供できる。
第1実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。 各RO膜エレメントのバイオフィルムなしおよびバイオフィルム発生時における透過水量を示すグラフである。 各RO膜エレメントにおけるバイオフィルム発生時の透過水変化量を示す棒グラフである。 第2実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。 第3実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。 第4実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。
以下、本実施形態に係る海水淡水化システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下では、逆浸透膜をRO膜と略記している。
(第1実施形態)
図1に示すように、海水淡水化システム100Aは、RO膜モジュール10,20、高圧ポンプ30、配管41,42,43,44,45、バイパス配管46、切替弁(切替手段)51,52,53、膜監視用流量計(第1流量計)61、補助用流量計(第2流量計)62、監視装置(制御装置)71および表示装置72を含んで構成されている。
RO膜モジュール10は、円筒形状の膜監視用圧力容器(第1圧力容器)11(ベッセルともいう)内にRO膜12を含むエレメントを充填してモジュール化したものである。また、RO膜モジュール10は、RO膜12を含むエレメントを単数収容して構成されている。なお、エレメントは、RO膜12からなる膜と、この膜を透過した透過水を集水する集水管(不図示)とを含み、膜監視用圧力容器11に対して取り外し可能に構成されている。また、RO膜12の構造としては、スパイラル型、中空糸型などから選択できる。また、RO膜12の素材としては、セルロースやポリアミドなどから選択できる。
膜監視用圧力容器11には、その軸方向(水の流れ方向)の上流端(一端)に海水が導入される入口(導入口)11aが形成され、下流端(他端)に濃縮水が導出される出口(導出口)11bおよび透過水が導出される出口(導出口)11cが形成されている。なお、膜監視用圧力容器11は、例えば、高圧(5MPa以上)に耐え得るようにスーパーステンレス(PREN(孔食係数)が40以上の鋼種)によって構成されている。
このように構成されたRO膜モジュール10では、入口11aから海水Aが導入されると、RO膜12を透過しなかった海水Aは、膜監視用圧力容器11内を下流に向かうにしたがって徐々に塩分濃度が高められ、入口11aから導入された海水よりも塩分濃度の高い塩水(濃縮水B)が出口11bから排出される。また、入口11aから導入された海水Aは、RO膜12を透過することで透過水C(造水、淡水)として出口11cから排出される。
なお、RO膜モジュール10に導入される海水Aは、高圧ポンプ30の上流側に設けられた前処理装置によって前処理が行われる。この前処理装置としては、例えば、限外ろ過膜(UF(Ultra Filtration)膜)を用いたUF装置、精密ろ過膜(MF(Micro Filtration)膜)を用いたMF装置、砂ろ過装置などが用いられる。このように、取水された海水(原水)は、前処理装置によって、それに含まれる固形性物質などが除去される。
RO膜モジュール20は、円筒形状で前記膜監視用圧力容器11よりも軸方向に長く形成された補助用圧力容器(第2圧力容器)21内にRO膜22を含むエレメントを充填してモジュール化したものである。また、RO膜モジュール20は、RO膜22を含むエレメントを複数個(本実施形態では7個)、直列に接続して構成されている。なお、直列に接続とは、上流側のエレメントのRO膜22を透過しなかった海水Aは、次の段のエレメントのRO膜22の海水A側を通流し、上流側のエレメントのRO膜22を透過した透過水Cは、次の段のエレメントのRO膜22の透過水C側を通流するようにエレメント同士が接続されていることを意味する。また、RO膜22の構造および素材は、RO膜12と同様であり、各エレメントの形状は同じである。
補助用圧力容器21には、その軸方向の上流端(一端)に、RO膜モジュール10から流出した濃縮水Bが導入され入口(導入口)21aが形成され、下流端(他端)に濃縮水Bが導出される出口(導出口)21bおよび透過水Cが導出される出口(導出口)21cが形成されている。なお、補助用圧力容器21の材質は、膜監視用圧力容器11と同様である。
なお、膜監視用圧力容器11に収容したRO膜12の膜長と、補助用圧力容器21に収容した1個分のエレメントのRO膜22の膜長とは同じ長さに設定されている。膜長とは、水(海水)の流れ方向に対するRO膜12,22の長さである。なお、膜長は、膜監視用圧力容器11に収容されるRO膜12および補助用圧力容器21に収容されるRO膜22の海水が接する表面積に比例している。図1に示す実施形態では、補助用圧力容器21内に収容されるRO膜22の膜長L1は、膜監視用圧力容器11に収容されるRO膜12の膜長L2よりも長く設定されている。換言すると、上流側である膜監視用圧力容器11内に収容したエレメント数に対して、補助用圧力容器21内に収容したエレメント数が多くなるように構成されている。
高圧ポンプ30は、海水AがRO膜モジュール10のRO膜12およびRO膜モジュール20のRO膜22に対して逆浸透する高い圧力、例えば3.5〜6MPa程度に昇圧されて、RO膜モジュール1の入口11aに供給されるように構成されている。
配管41は、高圧ポンプ30の吐出口と膜監視用圧力容器11の入口11aとを接続して、海水Aを膜監視用圧力容器11に導入する流路を構成している。
配管42は、膜監視用圧力容器11の出口11bと補助用圧力容器21の入口21aとを接続して、膜監視用圧力容器11から導出した濃縮水を、補助用圧力容器21に導入する流路を構成している。なお、入口21aは、例えば、補助用圧力容器21の上流側の端板に形成されている。
配管43は、その一端(上流端)が補助用圧力容器21の出口21bと接続され、他端(下流端)が海水淡水化システム100Aの外部と連通している(例えば、海に戻される)。
配管44は、補助用圧力容器21の出口21cと図示しない貯水槽等(不図示)と接続され、RO膜モジュール20から排出された透過水(造水、淡水)を貯水槽等に貯留して各種の用途に用いられる。なお、透過水Cは、生産水として外部のその水質レベルに応じた用途に供給される。また、出口21b,21cは、例えば、補助用圧力容器21の下流側の端板に形成されている。
配管45は、一端(上流端)が膜監視用圧力容器11の出口11cと接続され、他端(下流端)が配管44と合流するように接続され、透過水が通流する流路を構成している。
バイパス配管46は、上流端(一端)が配管41に接続され、下流端(他端)が配管42に接続され、RO膜モジュール10をバイパスする流路を構成している。
切替弁51は、配管41上のバイパス配管46の分岐点S1と膜監視用圧力容器11の入口11aとの間に設けられている。切替弁52は、配管42上の膜監視用圧力容器11の出口11bとバイパス配管46の合流点S2との間に設けられている。切替弁53は、バイパス配管46に設けられている。なお、切替弁51,52,53は、全開と全閉のいずれかに切り替えることができるオンオフ式(開閉式)の弁であり、モータ駆動の電動弁、電磁作動式の電磁弁、エアで作動するエア作動弁などを用いることができる。なお、本実施形態では、切替弁51,52,53によって切替手段が構成されている。
膜監視用流量計61は、配管41の高圧ポンプ30と切替弁51との間に設けられ、膜監視用圧力容器11に流入する海水Aの流量を計測する。補助用流量計62は、配管42の切替弁52と補助用圧力容器21との間に設けられ、膜監視用圧力容器11から流出する濃縮水Bの流量を計測する。
監視装置71は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を搭載したCPUボード、入出力インターフェースボード等を搭載し、高圧ポンプ30の駆動モータの回転速度、切替弁51,52,53のそれぞれの開閉動作を制御し、また膜監視用流量計61の計測値(流量)および補助用流量計62の計測値(流量)を取得する。
また、監視装置71は、膜監視用流量計61の計測値と、補助用流量計62の計測値とに基づいて膜監視用圧力容器11の内部のRO膜12の透過水性能を評価、つまりバイオフィルムの発生状態を推定し、その結果を表示装置72に出力する。なお、バイオフィルムの発生状態の推定方法(算出方法)については後記する。
なお、本実施形態では、切替弁51,52を閉じるとともに切替弁53を開くことにより、高圧ポンプ30からの海水Aをバイパス配管46に通流させ、海水Aを直接に補助用圧力容器21に導くことができる。これにより、膜監視用圧力容器11を開放してRO膜12を取り出して、RO膜12におけるバイオフィルムの発生状態を目視により確認することができる。
次に、圧力容器を、膜監視用圧力容器11に収容する(封入する)RO膜12と、補助用圧力容器21に収容する(封入する)RO膜22とに分割する方法について説明する。図2は、各RO膜エレメントのバイオフィルムなしおよびバイオフィルム発生時における透過水量を示すグラフ、図3は、各RO膜エレメントにおけるバイオフィルム発生時の透過水変化量を示す棒グラフである。
なお、図2では、圧力容器に収容されたRO膜(エレメント)に対し、各RO膜(各エレメント)における透過水量の関係を示している。番号1で示すRO膜(エレメント)は、圧力容器の入口側を示し、番号8で示すRO膜は、圧力容器の出口側を示している。また、図2において、縦軸は、各RO膜(エレメント)における透過水量を上流側から流れ方向に沿って連続的に示している。
図2において実線で示すように、バイオフィルムなしの場合(バイオフィルムが発生していない場合)には、各エレメントにおける透過水量が上流から下流に向けて減衰する特性を有する。一方、図2において破線で示すように、バイオフィルム発生時には、透過水量の多い上流側でバイオフィルムの形成が促進されることから、上流側での透過水量が特に低下し、海水(供給水)の圧力が高い状態のまま下流に海水(供給水)が送られることで下流側での透過水量が高くなる特性となる。
ところで、一般にRO膜は、ポリアミドなどに代表される高分子素材により構成されており、その表面に空孔を有する構造である。海水は空孔を通して濾過されて淡水となるが、海水中の微生物はこの空孔を足がかりとしてコロニーを形成し、有機物を得て成長し、空孔の閉塞へと至る。
一方、RO膜の各エレメントにおける透過水量Fは、以下の式1に示すように、供給水圧力差Δpと各エレメントにおける膜面浸透圧Δπとの差、膜の透過係数A1、膜の面積Sに基づいて算出される。すなわち、透過水量Fは、供給水圧力差Δpと各エレメントにおける膜面浸透圧Δπとの差、膜の透過係数A1、膜の面積Sに、比例している。
F=A1×(Δp−Δπ)×S ・・・ (式1)
なお、透過水量Fは、標準状態での透過水量(FR)を示している。膜の透過係数A1(固定値)は、大きければ大きいほど流れ易く、小さければ小さいほど流れにくくなる。膜の面積Sは、海水が接触するときの面積(表面積)であり、大きければ大きいほど透過水量は多くなる。また、膜の面積Sは、膜のサイズで決まるので、固定値である。よって、透過水量Fは、供給水圧力差Δpと各エレメントにおける膜面浸透圧Δπとの差に基づいて変化する。
前記した式1に示す供給水圧力差Δpは、以下の式2に示すように、供給水圧力Pr、透過水圧力Ppおよび膜モジュール出入口の圧力差ΔPmに基づいて算出される。
Δp=Pr−ΔPm−Pp ・・・ (式2)
なお、供給水圧力差Δpは、供給水(海水)側から透過水側にかかる圧力である。供給水圧力Prは、膜監視用圧力容器11の上流側にかかる圧力である。透過水圧力Ppは、膜監視用圧力容器11の透過水が流出する側の下流側にかかる圧力である。膜モジュール出入口の圧力差ΔPmは、膜監視用圧力容器11の海水側の入口11aと出口11bの圧力差である。
前記した式1に示す膜面浸透圧Δπは、以下の式3に示すように、膜面平均浸透圧πaveおよび透過水浸透圧πpに基づいて算出される。
Δπ=πave−πp ・・・ (式3)
なお、膜面平均浸透圧πaveは、膜にかかる浸透圧である。透過水浸透圧πpは、透過水側でかかる浸透圧である。
これら式1〜式3により、透過水量Fは、供給水圧力Prが高く、かつ、膜面平均浸透圧πaveが低い(塩濃度が低い)上流側において高くなる一方で、供給水圧力Prが低く、かつ、膜面平均浸透圧πaveが高い(塩濃度が高い)下流側において低くなる特性を有する。
また、バイオフィルムの形成は、上流側で促進されることから、上流側でバイオフィルムの付着によって透過水量Fが低下したとしても下流側は清浄な状態であるので、流れ易い下流側で透過水量が増加する。また、バイオフィルムによって上流側で透過水量が低下すると、そのままの圧力(高い圧力のまま)で海水が流れるので、下流側で透過水量が増加する。このように、上流側では、汚れることで徐々に透過水量が減少するが、下流側では、むしろ透過水量が増加することになる。
そこで、海水淡水化システム100Aでは、図3に示すように、バイオフィルムの付着によって各エレメントにおいてその上流と下流との間における透過水量の変化が最も大きくなるエレメントの上流側と下流側の流量を計測する。すなわち、圧力容器を膜監視用圧力容器11と補助用圧力容器21とに二分割し、膜監視用圧力容器11に、透過水量の変化が最も高い番号1のエレメントを収容し(封入し)、補助用圧力容器21に、それ以外の番号2〜8のエレメントを収容する(封入する)。
また、海水淡水化システム100Aでは、膜監視用圧力容器11の上流(入口)に膜監視用流量計61を設けるとともに、下流(出口)に補助用流量計62を設けて、監視装置14によって膜の汚れ度(逆浸透膜の透過水性能)を係数ηとして推定する。膜の汚れ度ηは、以下の式4に示すように、膜監視用流量計61の計測値Fin、補助用流量計62の計測値Fout、基準透過水量FRに基づいて算出される。
η=(Fin−Fout)/FR ・・・ (式4)
なお、基準透過水量FR(透過水量Fの基準値)は、エレメント(膜)交換直後における透過水量であり、前記した式1〜式3に基づいて算出することができる。また、海水淡水化システム100Aでは、最高効率で運転されることが適切であるので、供給水圧力Prが一定となるように運転されることが好ましい。このように、供給水圧力Prを一定として運転する場合には、式1〜式3を用いて基準透過水量FRを求めてもよい。
すなわち、式2に示す膜モジュール出入口の圧力差ΔPmおよび後記する式5に示す膜モジュール出入口の圧力差ΔPmRは、膜メーカが提示した近似式を用いて算出することができる。この近似式は、経験的に流速の関数として定義されており、膜監視用流量計61の計測値Finと補助用流量計62の計測値Foutの平均値[(Fin+Fout)/2]が用いられる。つまり、膜監視用圧力容器11の半径(内径)をDとすると、流速=平均値(m/s)÷流路断面積(m)=[(Fin+Fout)/2]×[1/πD]で表すことができる。
また、透過水圧力Ppは、境界条件(例えば、一定値)であり、基本的に大気圧に準じるものである。
また、式3に示す膜面平均浸透圧πaveおよび後記する式5に示す膜面平均浸透圧の基準値πaveRは、簡易式として三宅式(Chemical Studies of the Western Pacific Ocean. III. Freezing Point, Osmotic Pressure, Boiling Point,and Vapour Pressure of Sea Water/Yasuo Miyake/Journal:Bulletin of The Chemical Society of Japan-BULL CHEM SOC JPN,vol.14,no.3,pp.58-62,1939)を用いることができる。すなわち、膜面平均浸透圧およびその基準値は、πave(MPa)=((1.240・Clave+0.00454・Clave・t)・1.0332・10-3/10.19716に基づいて算出される。ここで、Claveは供給水と濃縮水の平均塩素濃度(mg/L)、tは水温(℃)である。また、透過水浸透圧πpおよびその基準値については、同様に透過水Cの塩モル濃度Cpmol(mol/L)および温度tから物性式(例えば、πp(MPa)=0.0787・(t+273.15)Cpmol/10.19716に基づいて求められる。なお、塩濃度に関しては、直接計測した値を用いてもよいが、計画値(設計時の海水濃度)の値を用いてもよい。
以上説明した海水淡水化システム100Aは、RO膜を収容した膜監視用圧力容器11と、膜監視用圧力容器11の下流側に膜監視用圧力容器11に収容したRO膜より長い膜長のRO膜を収容するとともに膜監視用圧力容器11から流出した濃縮水が通流する補助用圧力容器21と、膜監視用圧力容器11に流入する海水の流量を計測する膜監視用流量計61と、膜監視用圧力容器11から流出する濃縮水の流量を計測する補助用流量計62と、膜監視用流量計61の計測値Finおよび補助用流量計62の計測値Foutに基づいて膜監視用圧力容器11の内部のRO膜12の透過水性能を評価する監視装置71と、を備える。これによれば、最もバイオフィルムが成長する膜監視用圧力容器11中のRO膜12の透過水量を計測するため、バイオフィルムの発生初期段階からバイオフィルムの発生状況を検知することが可能となり、膜監視用圧力容器11中のバイオフィルムの発生度合いを精度よく検知できる。
また、海水淡水化システム100Aは、膜監視用圧力容器11に収容するRO膜12の膜長および補助用圧力容器21に収容するRO膜22の膜長を、RO膜の透過水量から決定する(図2および図3参照)。これによれば、膜監視用圧力容器11に収容するRO膜12の膜長L2を適切に設定することができ、膜監視用圧力容器11内の膜の汚れ度ηを膜監視用流量計61と補助用流量計62の各計測値から精度よく推定することが可能になる。
また、海水淡水化システム100Aは、バイパス配管46と、切替弁(切替手段)51,52,53とを備え、監視装置71によって、切替弁51,52を閉じるとともに切替弁53を開くことにより、膜監視用圧力容器11のみの通水を停止して膜監視用圧力容器11内を視認することによって、バイオフィルムの発生状況を容易に確認することができる。しかも、膜監視用圧力容器11の通水のみを停止し、補助用圧力容器21の通水を継続できるので、海水淡水化システム100Aとしての効率を大きく損なうことなく、バイオフィルムの発生状況を確認することができ、また必要に応じてRO膜12(エレメント)を新品に交換することができる。
(第2実施形態)
図4は第2実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図4に示すように、海水淡水化システム100Bは、RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dを並列に接続して構成されている。RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dのうちの一つであるRO膜モジュール80Aは、RO膜12を収容した膜監視用圧力容器11(第1圧力容器)と、膜監視用圧力容器11の下流側に設けられ、膜監視用圧力容器11に収容したRO膜12より長い膜長のRO膜22を収容するとともに膜監視用圧力容器11から流出した濃縮水Bが通流する補助用圧力容器21(第2圧力容器)と、を備えている。
膜監視用圧力容器11は、透過水Cの出口(導出口)11cが、配管48を介して補助用圧力容器21の透過水の入口(導入口)21dと接続されている。すなわち、第2実施形態では、膜監視用圧力容器11から流出した濃縮水Bおよび透過水Cの双方が、補助用圧力容器21に流入するように構成されている。
RO膜モジュール80B,80C,80Dは、いずれも同じ構成であり、RO膜82を収容した(封入した)圧力容器81を備えている。このRO膜82は、RO膜モジュール80AにおけるRO膜12の膜長とRO膜22の膜長を加算した膜長に設定されている。なお、RO膜モジュール80B,80C,80Dの圧力容器81とRO膜モジュール80Aの膜監視用圧力容器11および補助用圧力容器21とが、圧力容器群80に対応している。
また、海水淡水化システム100Bは、高圧ポンプ30の吐出側(下流側)と圧力容器群80との間に海水側ヘッダ47を備え、海水側ヘッダ47が配管41を介して膜監視用圧力容器11と接続され、各配管93を介して各圧力容器81の海水の入口81aと接続されている。また、各配管93には、切替弁51と同様な切替弁91が設けられ、監視装置71によって開閉制御される。
また、海水淡水化システム100Bは、補助用圧力容器21および各圧力容器81と外部との間に濃縮水ヘッダ49を備えている。この濃縮水ヘッダ49は、配管43を介して補助用圧力容器21の出口21bと接続され、各配管94を介して各圧力容器81の濃縮水Bの出口81bと接続されている。また、配管94には、切替弁52と同様な切替弁92が設けられている。この切替弁92と前記切替弁91とを閉じることにより、通流が停止したRO膜モジュール80B(80C,80D)のRO膜82を新品に交換することができる。
また、各補助用圧力容器81の透過水Cの出口81cは、配管95を介して配管44に接続され、補助用圧力容器21および圧力容器81から流出した透過水Cが合流している。合流後の透過水(淡水、造水)は、図示しない貯水槽等に貯留され、各種の用途に用いられる。
以上のように、海水淡水化システム100Bは、圧力容器群80に収容したRO膜12,22,82におけるバイオフィルム発生状況(膜の汚れ度η、RO膜の透過水性能)を、膜監視用流量計61によって計測される膜監視用圧力容器11に流入する海水Aの流量、および補助用流量計62によって計測される膜監視用圧力容器11から流出する濃縮水Bの流量に基づいて推定する。これにより、海水淡水化システム100Aから得られる効果に加えて、海水淡水化システム100B全体(プラント全体)におけるバイオフィルムの発生状況(RO膜12の透過水性能、膜の汚れ度η)を、最小限の計測器(膜監視用流量計61および補助用流量計62)にて評価することが可能になる。
また、海水淡水化システム100Bは、膜監視用圧力容器11から流出した濃縮水Bを補助用圧力容器21に導入するだけでなく、さらに膜監視用圧力容器11から流出した透過水Cを補助用圧力容器21に導入している。これにより、海水淡水化システム100Bの配管の構成を簡略化することができ、つまり、膜監視用圧力容器11の出口11cから延びる配管48を補助用圧力容器21をバイパスして配管44に合流するように引き回す必要がないので、海水淡水化システム100Bを小型化することが可能になる。
なお、海水淡水化システム100Bでは、海水淡水化システム100Aと同様にして、バイパス配管46および切替弁53を追加してもよい。これにより、補助用圧力容器21への海水の流入を停止させることなく、膜監視用圧力容器11内のRO膜12を視認して、バイオフィルムの発生状況を確認することができる。
(第3実施形態)
図5は第3実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。海水淡水化システム100Cは、海水淡水化システム100Bの圧力容器群80の複数(すべて)を膜監視用圧力容器11と補助用圧力容器21とに分割して構成したものである。これは、各RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dにおいてヘッド差があり(鉛直方向の高さ位置が異なり)、各RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dに流入する海水の流量などに差が生じ、膜の汚れ度ηが異なる場合に適用することができる。
すなわち、海水淡水化システム100Cは、RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dをそれぞれ膜監視用圧力容器11と補助用圧力容器21とに分割し、膜監視用圧力容器11の海水Aの流入側に膜監視用流量計61を設けるとともに、膜監視用圧力容器11の濃縮水Bの流出側に補助用流量計62を設けるように構成されている。
このように、RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dを並列に複数配置する場合において、RO膜モジュール80A,80B,80C,80D間においてヘッド差が生じるときには、圧力容器群80のうちすべての圧力容器を膜監視用圧力容器11と補助用圧力容器21とに分割し、各膜監視用圧力容器11の海水流入側の流量Finと濃縮水流出側の流量Foutとを検出して、バイオフィルムの発生状況(RO膜12の透過水性能、膜の汚れ度η)を検出するようにしてもよい。
これにより、海水淡水化システム100Cでは、それぞれのRO膜モジュール80A,80B,80C,80Dにおいて、バイオフィルムの発生状況(膜の汚れ度η)を精度よく検出することができる。その結果として、各RO膜モジュール80A,80B,80C,80Dを適切なタイミングで交換することができる。
なお、海水淡水化システム100Bでは、圧力容器群80のすべての圧力容器を、膜監視用圧力容器11と補助用圧力容器21とに分割して構成しているが、これに限定されるものではなく、図4に示すように少なくとも一つであればよく、圧力容器群80のうちの2つの圧力容器をそれぞれ前記のように分割してもよく、圧力容器群80のうちの3つの圧力容器をそれぞれ前記のように分割してもよい。また、圧力容器群80は、4つのRO膜モジュール80A,80B,80C,80Dを並列にする構成に限定されるものではなく、2つ、3つまたは5つ以上のRO膜モジュールを並列に構成するものであってもよい。
(第4実施形態)
図6は第4実施形態に係る海水淡水化システムを示す全体構成図である。この海水淡水化システム100Dは、海水淡水化システム100Aに、膜監視用圧力容器11の海水流入側に膜監視用圧力計(第1圧力計)63を設けるとともに、膜監視用圧力容器11の透過水流出側に補助用圧力計(第2圧力計)64を追加して構成したものである。なお、膜監視用圧力計63の計測値は、前記で説明した供給水圧力Prに対応し、補助用圧力計64の計測値は、前記で説明した透過水圧力Ppに対応する。
そして、これら供給水圧力Prおよび透過水圧力Ppを計測(実測)し、以下の式5に基づいて基準透過水量FRを算出してもよい。なお、ΔPmR、πaveRおよびπpRについては、例えば、式2で説明した近似式、式3で説明した三宅式と同様である。
FR=A×(Pr−ΔPmR−Pp−πaveR+πpR)×S ・・・ (式5)
海水淡水化システム100Dによれば、海水淡水化システム100Aによる得られる効果に加えて、供給水圧力Prと透過水圧力Ppとを計測(実測)することにより、供給水圧力Prや透過水圧力Ppが変化した場合でも、精度よく基準透過水量FRを計測することができる。基準透過水量FRを精度よく計測することにより、前記した式4において、基準透過水量FR、膜監視用流量計61の計測値Finおよび補助用流量計62の計測値Foutを適用することにより、RO膜12の膜の汚れ度ηを精度よく推定することが可能になる。
なお、前記した各実施形態では、単一のエレメント(膜長L2のRO膜12)と、7コのエレメント(膜長L1のRO膜22)とに分割した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、RO膜の特性に応じて、例えば、透過水量変化量が大きいRO膜エレメント番号が番号1と番号2の場合には、膜監視用圧力容器11に番号1と番号2のエレメント(RO膜)を収容し(封入し)、補助用圧力容器21に番号3〜8のエレメント(RO膜)を収容する(封入する)ようにしてもよく、適宜変更することができる。
また、膜の汚れ度ηにおける透過水量F(FR)を算出する方法としては、近似式を用いたり、三宅式を用いることに限定されるものではなく、膜監視用流量計61および補助用流量計62の各計測値を用いて算出できるものであれば、前記した実施形態に限定されるものではない。
また、海水淡水化システム100Dでは、海水淡水化システム100B,100Cと同様に、膜監視用圧力容器11から流出する透過水Cを、補助用圧力容器21に導入するように構成してもよい。
また、図示していないが、海水淡水化システム100A,100B,100C,100Dに、膜監視用圧力容器11内のRO膜12に付着したバイオフィルムを洗浄する洗浄装置を追加してもよい。この洗浄装置としては、例えば、膜監視用圧力容器11の出口11b側から洗浄水を導入する逆流洗浄を適用してもよい。また、洗浄装置としては、薬液(酸、アルカリ、キレート剤、界面活性剤など)による洗浄を適用または薬液による洗浄と逆流による洗浄とを併用してもよい。
また、第1実施形態ないし第4実施形態のうちの複数を適宜選択して構成してもよい。
100A,100B,100C,100D 海水淡水化システム
10 膜監視用RO膜モジュール
11 膜監視用圧力容器(第1圧力容器)
12 RO膜(逆浸透膜)
20 補助用RO膜モジュール
21 補助用圧力容器(第2圧力容器)
22 RO膜(逆浸透膜)
30 高圧ポンプ
41,42,43,44,45 配管
46 バイパス配管
51,52,53 切替弁(切替手段)
61 膜監視用流量計(第1流量計)
62 補助用流量計(第2流量計)
63 膜監視用圧力計(第1圧力計)
64 補助用圧力計(第2圧力計)
71 監視装置(制御装置)
80 圧力容器群
80A,80B,80C,80D RO膜モジュール
A 海水
B 濃縮水
C 透過水
L1,L2 膜長

Claims (6)

  1. 海水を加圧する高圧ポンプと、
    前記高圧ポンプで加圧した海水から淡水となる透過水を得る逆浸透膜と、
    前記逆浸透膜を収容した第1圧力容器と、
    前記第1圧力容器の下流側に設けられ、前記第1圧力容器に収容した逆浸透膜より長い膜長の逆浸透膜を収容するとともに前記第1圧力容器から流出した濃縮水が通流する第2圧力容器と、
    前記第1圧力容器に流入する海水の流量を計測する第1流量計と、
    前記第1圧力容器から流出する濃縮水の流量を計測する第2流量計と、
    前記第1流量計の計測値および前記第2流量計の計測値に基づいて前記第1圧力容器の内部の逆浸透膜の透過水性能を評価する制御装置と、
    を備えることを特徴とする海水淡水化システム。
  2. 海水を加圧する高圧ポンプと、
    前記高圧ポンプで加圧した海水から淡水となる透過水を得る逆浸透膜と、
    前記逆浸透膜を収容した圧力容器を並列に接続した圧力容器群と、を備え、
    前記圧力容器群の少なくともひとつは、
    前記圧力容器を分割して得られる第1圧力容器と、
    前記第1圧力容器の下流側に設けられ、前記第1圧力容器に収容した逆浸透膜より長い膜長の逆浸透膜を収容するとともに前記第1圧力容器から流出した濃縮水が通流する第2圧力容器と、
    前記第1圧力容器に流入する海水の流量を計測する第1流量計と、
    前記第1圧力容器から流出する濃縮水の流量を計測する第2流量計と、
    前記第1流量計の計測値および前記第2流量計の計測値に基づいて前記第1圧力容器の内部の逆浸透膜の透過水性能を評価する制御装置と、
    をさらに備えることを特徴とする海水淡水化システム。
  3. 前記第1圧力容器に収容する逆浸透膜の膜長および前記第2圧力容器に収容する逆浸透膜の膜長を、前記逆浸透膜の透過水量から決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の海水淡水化システム。
  4. 前記第1圧力容器に流入する海水の圧力を計測する第1圧力計と、
    前記第1圧力容器から流出する透過水の圧力を計測する第2圧力計と、を備え、
    前記制御装置は、前記第1流量計の計測値および前記第2流量計の計測値とともに、前記第1圧力計の計測値および前記第2圧力計の計測値に基づいて前記第1圧力容器の内部の逆浸透膜の透過水性能を評価することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の海水淡水化システム。
  5. 前記第1圧力容器から流出した前記透過水を、前記第2圧力容器に導入することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の海水淡水化システム。
  6. 前記高圧ポンプからの海水を、前記第1圧力容器をバイパスして前記第2圧力容器に導入するバイパス配管と、
    前記第1圧力容器への海水の導入を停止するとともに、前記バイパス配管に海水を導入する切替手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の海水淡水化システム。
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