JP2014161519A

JP2014161519A - 歯科用部材

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Publication number: JP2014161519A
Application number: JP2013035166A
Authority: JP
Inventors: Kazumi Akatsu; 和三赤津
Original assignee: Shintec Co Ltd
Current assignee: Shintec Co Ltd
Priority date: 2013-02-25
Filing date: 2013-02-25
Publication date: 2014-09-08
Anticipated expiration: 2033-02-25
Also published as: JP6190993B2

Abstract

【課題】簡易な構成で耐久性に優れた歯科用部材を提供する。
【解決手段】表面に酸化被膜層１１を有する、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材１０とする歯科用部材であって、酸化被膜層１１の表面に、イオンプレーティングにより酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ〜１００ｎｍとなるように追加酸化被膜層１２を形成すると共に、追加酸化被膜層１２の表面にＴｉ，ＮｂおよびＴａのいずれか１つと、Ｃ，ＮおよびＯの少なくとも１種類とが化合した被膜であるコーティング層２０がイオンプレーティングにより形成されている。
【選択図】図１

Description

本発明は、母材が、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかである歯科用部材に関する。

従来、この種の歯科用部材としては、下記特許文献１に示すように、母材に対して、互いに異なる機能を有する下地層と表皮層とを備え、下地層が所望の色を呈するように構成すると共に、表皮層が下地層を透視可能に覆う構成としたものが知られている。

特許第４４７５４５８号公報

ここで、従来の歯科用部材では、歯科用品に要求される、審美性を満足させるための機能とその他の機能とを、単独の層ではなく、下地層と表皮層とに別々に分担させることができるものの、下地層と表皮層とを別々にコーティングしなくてはならないという問題があった。

さらに、下地層を透視可能な表皮層が磨耗した場合には、表皮層が担う機能が損なわれてしまうと共に、下地層の磨耗が急激に進行してしまうという問題があった。

上記の事情に鑑みて、本発明は、簡易な構成で耐久性に優れた歯科用部材を提供することを目的とする。

第１発明の歯科用部材は、表面に酸化被膜層を有する、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材とする歯科用部材であって、
前記酸化被膜層の表面に、イオンプレーティングにより酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ〜１００ｎｍとなるように追加酸化被膜層を形成すると共に、該追加酸化被膜層の表面にＴｉ，ＮｂおよびＴａのいずれか１つと、Ｃ，ＮおよびＯの少なくとも１種類とが化合した被膜であるコーティング層がイオンプレーティングにより形成されていることを特徴とする。

第１発明の歯科用部材によれば、空気中で表面に酸化被膜層が形成されるＮｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材し、酸化被膜層にさらに追加酸化被膜層をイオンプレーティングにより形成して、酸化被膜層全体が１０ｎｍ〜１００ｎｍとすることで、酸化被膜層に耐食性を担保させることができる。

さらに、同じイオンプレーティングにより追加酸化被膜層の表面に所定のコーティング層を設けることで、１つのコーティング層で、審美性等を有する有色層とすることができる。

また、コーティング層は、酸化被膜層との密着性が求められるところ、イオンプレーティングによりコーティング層を形成することで、酸化被膜層の内部までコーティング層の材料が突入し、酸化被膜層との密着性を確保することができる。

加えて、母材とコーティング層との間に酸化被膜層が介在するため、母材の金属とコーティング層の金属化合物との電位差腐食を抑制することができ、歯科用部材として用いた場合にも、金属アレルギーの発生を防止することができる。

このように、第１発明の歯科用部材によれば、簡易な構成で耐久性に優れた歯科用部材を提供することができる。

第２発明の歯科用部材は、前記酸化被膜層の表面に、イオンプレーティングにより酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ〜１００ｎｍとなるように追加酸化被膜層を形成すると共に、該追加酸化被膜層の表面にＰｔ，Ｐｄ，Ａｕ，ＡｇおよびＲｈのいずれか１種類または２種類以上からなる被膜であるコーティング層がイオンプレーティング形成されていることを特徴とする。

第２発明の歯科用部材によれば、第１発明と同様、空気中で表面に酸化被膜層が形成されるＮｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材し、酸化被膜層にさらに追加酸化被膜層をイオンプレーティングにより形成して、酸化被膜層全体が１０ｎｍ〜１００ｎｍとすることで、酸化被膜層に耐食性を担保させることができる。

さらに、同じイオンプレーティングにより追加酸化被膜層の表面にコーティング層を設けることで、１つのコーティング層で、審美性等を有する有色層とすることができる。

加えて、母材とコーティング層との間に酸化被膜層が介在するため、母材の金属とコーティング層の金属（Ｐｔ，Ｐｄ，Ａｕ，ＡｇおよびＲｈ）との電位差腐食を抑制することができ、歯科用部材として用いた場合にも、金属アレルギーの発生を防止することができる。

このように、第２発明の歯科用部材によれば、コーティング層を異種金属とした場合にも、簡易な構成で耐久性に優れた歯科用部材を提供することができる。

本発明の実施形態の歯科用部材の構成を示す断面図。

図１に示すように、本実施形態の歯科用部材は、母材１０の表面にコーティング層２０を有する歯科用ワイヤやブラケットなどの歯科用部材である。

母材１０は、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかである。より具体的に、母材１０は、Ｎｉ合金としては、例えばＮｉ/Ｃｒ合金であり、Ｔｉ合金としては、例えば、Ｔｉ/Ｎｉ合金、Ｔｉ/Ｃｏ合金であり、これらは形状記憶合金であってもよい。

これらを材料とする母材１０は、その表面に酸化被膜層１１を有する。酸化被膜層１１は、空気中の酸素で母材１０の表面が酸化されることにより形成される。

ここで、一般的な湿式のめっき処理では、母材１０とコーティング材との密着性を高めるために、酸化被膜層１１を除去する必要があるが、本願発明者による鋭意の試験研究によれば、母材１０の表面の酸化被膜層１１が歯科用部材においては後述する重要な役割を果たすことを知見した。

かかる知見に基づいて、本実施形態の歯科用部材では、母材１０の酸化被膜層１１を残したまま、酸化被膜層１１の表面に（後述するコーティング層を形成するイオンプレーティングと同一の）イオンプレーティングにより、酸化被膜層１２が形成されている。

具体的に、酸化被膜層１１および追加酸化被膜層１２を合わせた酸化被膜層全体の厚さは、１０ｎｍ〜１００ｎｍとなっている。

酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ未満では、母材１０の耐食性を十分に担保できず、母材１０の劣化や溶出の可能性があるためである。一方、酸化被膜層全体の厚さが１００ｎｍを超える場合には、コーティング層２０との密着性やコーティング層２０自体の機能低下が懸念されるためである。

なお、酸化被膜層全体の厚さは、より好適には５０ｎｍ〜１００ｎｍとすることが好ましい。

次に、コーティング層２０は、Ｔｉ，ＮｂおよびＴａのいずれか１つと、Ｃ，ＮおよびＯの少なくとも１種類とが化合した被膜であってもよく、Ｐｔ，Ｐｄ，Ａｕ，ＡｇおよびＲｈのいずれか１種類または２種類以上からなる被膜でもよい。

より具体的に、コーティング層２０は、Ｔｉ，ＮｂおよびＴａのいずれか１つと、Ｃ，ＮおよびＯの少なくとも１種類とが化合した被膜としては、例えば、ＴｉＮ，ＴｉＣのほか、ＴｉＣＮである。

具体的に、コーティング層２０の厚さは、その材質に応じて任意（例えば、５０ｎｍ〜２０００ｎｍ）であり、イオンプレーティングにより形成される。

ここで、イオンプレーティングを採用するのは、酸化被膜層１１，１２との密着性の高いコーティング層２０を形成するためである。すなわち、イオンプレーティングによれば、（単に真空中でコーティング層の材料を蒸発（あるいは昇華)させて成膜させる蒸着法に比して、）蒸発粒子を、プラズマ中を通過させてプラスの電荷に帯電させると共に、母材１０側の基盤にマイナスの電荷を印加して、蒸発粒子を追加酸化被膜層１２の表面に加速衝突させて堆積させることができる。

本実施形態では、母材としてＴｉ/Ｎｉ合金のアーチワイヤを用いて、イオンプレーティング装置により実験を行った。

まず、イオンプレーティング装置を１０^−５Ｔｏｒｒに排気後、アルゴンガスを４×１０^−４まで導入してさらに１０^−５Ｔｏｒｒの酸素ガスを導入して試料に０．５ＫＶの電圧を付加してボンバードを行った。かかるボンバードにより、その処理時間と付加電圧によって酸化被膜層１１と追加酸化被膜層１２とを合わせた厚さを１０ｎｍ〜１００ｎｍにコントロールすることができる。

次に、追加酸化被膜層１２の表面にＲｈ（ロジウム）を用い、必要な厚さ（例えば１０００ｎｍ）のコーティング層２０をイオンプーイティングにより形成した。

このようにして形成されたコーティング層２０は、図１に拡大図で示すように、追加酸化被膜層１２の表面に、その表面形状にコーティング層２０を間隙なく密に積層させることができると共に、コーティング層２０の材料の粒子２１が追加酸化被膜層１２の表面側から内部に突入することで、酸化被膜層１１，１２とコーティング層２０との一体性を向上させることができる。

これにより、１つのコーティング層２０であっても、酸化被膜層１１，１２が母材１０の耐食性を確保しつつ、審美性等を有する有色層とすることができる。

さらに、母材２０とコーティング層２０との間に酸化被膜層１１，１２が介在するため、母材の金属とコーティング層２０の金属（Ｒｈ）との電位差腐食を抑制することができ、歯科用部材として用いた場合にも、金属アレルギーの発生を防止することができる。

表１に実施例１として示すように、実際の人工唾液による溶出試験においても、母材１０側の金属成分、およびコーティング層２０の金属成分の溶出はなかった。また、審美性についても綺麗な白色優美な銀白色の仕上がりとなっていた。

なお、溶出試験の方法については、『JIS T 6002 4.1 静的浸せき試験』に基づくものであり、具体的には、試験溶液（乳酸(90%) 10.0±0.1g、塩化ナトリウム 5.85±0.005g、1000mL純水）でメスアップした。試験容量は、試験面積1cm²当たり1ccであり、１本３ｃｃを基準として５本で２０ｃｃと、これをガラス試験管に入れた。試験条件・期間は、37℃±1℃ 7日間±1時間で、ワイヤを５分割に切断したものを５本分そのまま浸漬させた。

さらに、上記表１に実施例２として示すように、コーティング層２０の材料を変えて、追加酸化被膜層１２の表面にＴａ（タンタル）を用いて５００ｎｍのコーティング層２０をイオンプレーティングにより形成した。なお、この場合には、窒素ガスを反応ガスとして使用した。

この場合にも、人工唾液による溶出試験の結果、特に母材１０側の金属成分およびコーティング層の金属成分の溶出はなく、綺麗な淡黄色の優美な仕上がりとなっていた。

一方、比較のために、比較例１に示すように、追加酸化被膜層１２を形成せずに（酸素ガスの導入なしに）、コーティング層２０を形成した。

その結果、外観は綺麗な白色優美な状態となったが、進行唾液による溶出試験では、特に素材の金属成分（Ｎｉ，Ｔｉ）の溶出が確認された。微量ではあるが素材が溶出されていることが確認され、金属アレルギーが懸念される状態であった。

さらに、上記表１に比較例２に示すように、脱脂、活性化により酸化被膜層１１を除去した上で、湿式鍍金法によりＲｈでコーティング層２０を形成した。

その結果、外観は綺麗な白色優美な状態で密着性も良好であったが、人工唾液による溶出試験の結果、特に素材の金属成分の溶出が高い数値で検出され、金属アレルギ−が懸念される状態であった。

以上詳しく説明したように、本実施形態の歯科用部材によれば、簡易な構成で耐久性に優れた歯科用部材を提供することができる。

具体的には、本実施形態の歯科用部材によれば、歯科用部材に要求される審美性を満足させるための機能と耐食性機能とを共に兼ね備え、ワイヤやブラケット等の歯科矯正具、差し歯や入れ歯等の擬似歯の材料、歯冠（歯冠前面のコーティング）、歯科補綴物クラスプ等の用途に好適に使用することができる。

１０…母材、１１…酸化被膜層、１２…追加酸化被膜層、２０…コーティング層。

Claims

表面に酸化被膜層を有する、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材とする歯科用部材であって、
前記酸化被膜層の表面に、イオンプレーティングにより酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ〜１００ｎｍとなるように追加酸化被膜層を形成すると共に、該追加酸化被膜層の表面にＴｉ，ＮｂおよびＴａのいずれか１つと、Ｃ，ＮおよびＯの少なくとも１種類とが化合した被膜であるコーティング層がイオンプレーティングにより形成されていることを特徴とする歯科用部材。
表面に酸化被膜層を有する、Ｎｉ合金，Ｔｉ，Ｔｉ合金およびステンレスのいずれかを母材とする歯科用部材であって、
前記酸化被膜層の表面に、イオンプレーティングにより酸化被膜層全体の厚さが１０ｎｍ〜１００ｎｍとなるように追加酸化被膜層を形成すると共に、該追加酸化被膜層の表面にＰｔ，Ｐｄ，Ａｕ，ＡｇおよびＲｈのいずれか１種類または２種類以上からなる被膜であるコーティング層がイオンプレーティング形成されていることを特徴とする歯科用部材。